説明

アスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための方法

本発明は、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための、改善された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための、改善された方法に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンそのものは、養殖のサケを着色するための飼料添加物として主に使用される、需要のある色素である。
【化2】

【0003】
アスタキサンチンを製造するのに非常に効率的な方法は、とりわけ(非特許文献1)に記載されている通り、二当量の対応する式IIIのC15ホスホニウム塩を用いた、式IIの対称C10ジアルデヒドのダブルウィッティヒオレフィン化(double Wittig olefination)である。
【化3】

【0004】
この反応は、例えば、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を塩基として使用して、ジクロロメタン中で行う(特許文献1も参照)か、式II及び式IIIの構成成分を1,2−エポキシブタン中で加熱することによって行うことができる。
【0005】
魚餌におけるアスタキサンチンの貯蔵安定性を改善するために、様々なアスタキサンチンジエステルが、(特許文献2)で提示され、そこでは、とりわけ、式Iのアスタキサンチンジメチルジスクシネートが言及されている。
【0006】
それらのアスタキサンチンジエステルを製造するために、(特許文献2)によれば、結晶性アスタキサンチンを、不活性溶媒中で、有機塩基の存在下で、カルボン酸塩化物又はカルボン酸無水物と反応させる(特許文献2、7ページ、3行〜20行)。遊離酸を用いたアスタキサンチンのエステル化において、反応は、脱水試薬の存在下で進行する(特許文献2、7ページ、21行〜28行)。式Iのアスタキサンチンジメチルジスクシネートは、特許文献2の実施例5(13ページ、13行〜25行)に従って、49.9%の収率及び79.3%の純度で得られた。それに続く塩化メチレン/メタノールからの再結晶によって、そのジエステルは、98%の純度(HPLC後)で得ることができた。
【0007】
この手順の欠点は、エステル化に使用される出発材料が、結晶性アスタキサンチンであるということである。エステル化のための中間体として、結晶性アスタキサンチンを製造することは、結晶化、濾過、洗浄、乾燥、包装、保管、及びそれに続く段階での固体の計量に対して、かなりの製造費がかかることを意味する。加えて、アスタキサンチンの結晶化においては、母液中での価値ある生成物の残留溶解性(residual solubility)のせいで、収率の損失が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/128574号
【特許文献2】国際公開第2003/066583号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Helv. Chim. Acta 64, 7, 2445 (1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
式Iのアスタキサンチンジメチルジスクシネートの既知の合成の欠点を改善することが、本発明の一つの目的であった。式Iのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための方法は、簡略化されるべきであり、式Iのアスタキサンチンジメチルジスクシネートの収率及び純度は、改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための方法であって、
【化4】

【0012】
a)ジクロロメタンを含む溶媒中で、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドであるMOR又はM(ORのアルコールROH溶液
(式中、
は、Li、Na、K、又はRbであり、
は、Mg、Ca、Sr、又はBaであり、
は、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピルである)を
塩基として添加することによって、
式IIのC10ジアルデヒドを、
【化5】

【0013】
ダブルウィッティヒ反応により、式IIIのC15ホスホニウム塩
【化6】

【0014】
(式中、Xは、有機又は無機酸HXのアニオンである)
と反応させて、
式IVのアスタキサンチン
【化7】

【0015】
(式中、形成された二つの新しい二重結合は、Z立体配置だけでなく、E立体配置でも存在する)
を生成させ、
場合によっては、その後に、塩MX又はMを除去するために、その反応混合物を水系後処理(aqueous workup)する方法ステップと、
b)その反応混合物を水で繰り返し洗浄することによって、又はジクロロメタンとアルコールROHとを含む溶媒混合物を留去することによって、方法ステップa)の反応混合物からアルコールROHを除去し、
場合によっては、その後に、ジクロロメタンと水の共沸蒸留により水を除去することによって、反応混合物を乾燥させる方法ステップと、
c)ジクロロメタン中で、式Vの塩化メチルスクシノイル
【化8】

【0016】
及び有機窒素塩基を添加することによって、方法ステップb)において処理した反応混合物に存在する式IVのアスタキサンチンを反応させて、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネート
【化9】

【0017】
を形成させる方法ステップと、
d)水溶性の塩を除去するために、方法ステップc)の反応混合物を水系後処理する方法ステップと、
e)蒸留によって、方法ステップd)の反応混合物からジクロロメタンを除去し、アルコールROH(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピルである)を、反応混合物に添加することによって、ジクロロメタンをアルコールROHと溶媒交換する方法ステップと、
f)反応混合物の全体積に対して水10〜90体積%という含水率を有する、方法ステップe)のROH含有反応混合物を、少なくとも50℃に加熱することによって、方法ステップc)で生成した式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを熱異性化させ、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを生成させる方法ステップであって、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートが、結晶形で生じ、場合により、それに続いて単離される方法ステップと
を含む方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による方法の方法ステップa)では、
ジクロロメタンを含む溶媒中で、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドであるMOR又はM(OR、好ましくはアルカリ金属アルコキシドMORのアルコールROH溶液
(式中、
は、Li、Na、K、又はRb、好ましくはLi又はNa、特にNaであり、
は、Mg、Ca、Sr、又はBa、好ましくはMgであり、
は、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピル、好ましくはメチル又はエチル、特にメチルである)を
塩基として添加することによって、
式IIのC10ジアルデヒドを、
【化10】

【0019】
ダブルウィッティヒ反応により、式IIIのC15ホスホニウム塩
【化11】

【0020】
(式中、Xは、例えば、塩化水素、臭化水素、もしくはヨウ化水素、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸もしくはトリクロロ酢酸等のトリハロ酢酸等の、有機又は無機酸HXのアニオンである)
と反応させて、
式IVのアスタキサンチン
【化12】

【0021】
(式中、形成された二つの新しい二重結合は、Z立体配置だけでなく、E立体配置でも存在する)
を生成させ、
場合によっては、その後に、塩MX又はMを除去するために、反応混合物を水系後処理する。
【0022】
好ましくは、アニオンXは、塩化物又は臭化物アニオンである。
【0023】
方法ステップa)では、好ましくは、式IIのC10ジアルデヒド及び式IIIのC15ホスホニウム塩は、最初に、溶媒の全体積に対して、90体積%超、特に好ましくは、95体積%超のジクロロメタンを含む溶媒、特に、純粋なジクロロメタン、すなわち、純度が99体積%より高いジクロロメタンに溶解させる。
【0024】
その次に、方法ステップa)では、式II及び式IIIの化合物は、好ましくは、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を塩基として添加することによって縮合されて、式IVのアスタキサンチンを与える。
【0025】
式IVのアスタキサンチンにおいて、新しく形成された二つの二重結合は、Z立体配置だけでなく、E立体配置でも存在する。式IVのアスタキサンチンにおいて新しく形成された二つの二重結合は、主として、すなわち、50%超で、E,E立体配置を有する。Z立体配置を有する新しく形成された二重結合の部分は、式IVのアスタキサンチンの混合物の25%以下である。
【0026】
好ましくは、方法ステップa)において、反応混合物は、塩MX又はMを除去するために、水系後処理に付される。
【0027】
水系後処理後、得られた反応混合物は、式IVのアスタキサンチンのジクロロメタン粗溶液であり、その溶液は、水飽和し、アルコールROH、特にメタノールの残留物を含む。
【0028】
本発明による方法の方法ステップb)では、アルコールROHは、その反応混合物を水で繰り返し洗浄することによって、又はジクロロメタンとアルコールROHとを含む溶媒混合物を留去することによって、特に、ジクロロメタンとアルコールROHとを含む溶媒混合物を留去することによって、方法ステップa)の反応混合物から除去され、場合によっては、その後に、ジクロロメタンと水の共沸蒸留により水を除去することによって、反応混合物を乾燥させる。
【0029】
好ましくは、方法ステップb)において、アルコールROH、特にメタノールは、蒸留を繰り返し、留出物を水で洗浄し、洗浄した留出物を粗アスタキサンチン溶液に再循環させることによって除去される。
【0030】
メタノールの場合には、メタノールは、これまでに記述した通りの反応混合物から、複数の段階で、断続的に除去することができる。工業的方法において、反応混合物からのメタノールの除去は、好ましくは、ミキサー/セトラー装置内で、メタノール含有ジクロロメタンの留出物を水で連続洗浄することにより、反応混合物からメタノールを除去することによって連続的に行われる。この場合には、粗アスタキサンチン溶液がメタノールを含まなくなるまで、下方の有機相を、粗アスタキサンチン溶液に連続的に再循環させる。
【0031】
好ましくは、メタノールの除去が完了した後に、水飽和粗アスタキサンチン溶液を、当業者に公知の方法によって、好ましくは、共沸蒸留(ジクロロメタン/水の異相共沸混合物)によって乾燥させる。これは、単純な部分蒸発によって、又は適切に組み立てられた水分離器で水を取り除くことによって実施することができる。
【0032】
すべての蒸留ステップは、好ましくは、大気圧下で行うが、減圧下で行うこともできる。しかし、実際上の理由(ジクロロメタン共沸混合物の凝縮性)で、300mbarを下回る圧力は用いられない。
【0033】
本発明による方法の方法ステップc)では、ジクロロメタン中で、式Vの塩化メチルスクシノイル
【化13】

【0034】
及び有機窒素塩基を添加することによって、方法ステップb)において処理した反応混合物に存在する式IVのアスタキサンチンを反応させて、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネート
【化14】

【0035】
を形成させる。
【0036】
OHを含まない、好ましくは水も含まない、特に、メタノール及び水を含まない、方法ステップb)において得られた、粗アスタキサンチンのジクロロメタン溶液を、それ自体が既知である方法で、有機塩基の存在下で、式Vの塩化メチルスクシノイルと反応させて、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを生成させる。この文脈における、水を含まない、又は、ROHを含まないとは、反応混合物の質量に対して、0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に0.075重量%未満の水又はROHという、反応混合物における含水率又はROH含有率を意味する。
【0037】
有機の窒素塩基としては、例えば、一級、二級、もしくは三級アルキルアミンもしくはアリールアミン等のアミン、又はピリジンもしくはピリジン誘導体等の塩基性の含窒素ヘテロ芳香族化合物を使用することができる。好ましくは、使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、ピリジン、又は、例えば、4−ジメチルアミノピリジン等のジアルキルアミノピリジンである。特に好ましくは、方法ステップc)において、有機窒素塩基は、ピリジン又はピリジン誘導体である。
【0038】
アスタキサンチン:塩化メチルスクシノイルのモル比は、1:2.0〜1:3.0、好ましくは、1:2.1〜1:2.5の範囲にある。塩基は、酸塩化物に対して、少なくとも化学量論的に、好ましくは、塩化メチルスクシノイルに対して、10〜50mol%過剰で使用される。反応温度は、−10℃から反応混合物の還流温度までであり得る。好ましくは、反応は、0〜25℃の温度範囲で行われる。
【0039】
本発明による方法の方法ステップd)では、方法ステップc)の反応混合物は、水溶性の塩を除去するために、水系条件下で後処理される。このプロセスでは、有機窒素塩基の塩酸塩は、ジクロロメタン含有反応混合物からほぼ除去され、また、依然として存在する、方法ステップa)で形成されたいかなる塩MX又はMも同様である。
【0040】
本発明による方法の方法ステップe)では、溶媒ジクロロメタンは、蒸留、及び反応混合物へのアルコールROHの添加(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピル、特にメチルである)により、方法ステップd)の反応混合物からジクロロメタンを除去することによって、アルコールROHと交換される。
【0041】
好ましくは、方法ステップe)において、アルコールROHはメタノールである。
【0042】
溶媒交換は、ジクロロメタンが、所望の量で、好ましくは、完全に除去されるまで、ある量のジクロロメタンを留去し、それをある量のアルコールROHと交換し、この手順を繰り返すことによって、段階的に実施することができる。あるいは、蒸留によって除去されるジクロロメタンは、対応する容量のアルコールROHと連続的に交換することもできる(等容法)。上述の文脈における、ジクロロメタンの完全な除去とは、ジクロロメタンの残留含有率が、反応混合物の質量に対して、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に0.05重量%未満のジクロロメタンであることを意味する。
【0043】
溶媒交換は、ジクロロメタンに容易に溶ける、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネート、特に、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを、アルコールROHから晶出できるように行われ、そこでは、依然として存在する、方法ステップa)からのトリフェニルホスフィンオキシドは溶液中に残ったままであり、したがって、結晶性生成物から容易に分離させることができる。
【0044】
好ましくは、水が、アルコールROH、特にメタノールに添加される。そこでは、トリフェニルホスフィンオキシドが、まだ沈殿しないように、水の量が選択される。原理的には、溶媒交換(方法ステップe))の前でさえ、水を、少なくともいくらか反応混合物に添加できた可能性がある。所望の含水率に必要とされる水の量を、より簡単に計算し、決定するために、ジクロロメタンとアルコールROH、特にメタノールの溶媒交換の後まで、水は、反応混合物に添加されない。好ましくは、反応混合物の全体積に対して、10〜90体積%、特に好ましくは30〜70体積%、非常に特定すれば、好ましくは40〜60体積%、特に45〜55体積%という含水率が定まる。
【0045】
本発明による方法の方法ステップf)では、反応混合物の全体積に対して、10〜90体積%、特に好ましくは30〜70体積%、とりわけ特定すれば、好ましくは40〜60体積%、特に45〜55体積%の水という含水率を有する、方法ステップe)のROH含有反応混合物を、少なくとも50℃に加熱することによって、ステップc)で生成した式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを熱異性化させて、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを生成させ、そこでは、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートが、結晶形で生じ、場合により、それに続いて単離される。
【0046】
方法ステップe)からの反応混合物は、80℃と120℃の間、特に好ましくは90℃と110℃の間の温度で、好ましくは異性化される。所望の温度が、大気圧下での、溶媒又は溶媒混合物の沸点を超える場合、反応混合物は、増大する過大圧力に適した密閉系内で加熱される。
【0047】
好ましくは、方法ステップf)において、熱異性化は、密閉装置内で、固有圧力下、80℃と120℃の間、特に好ましくは90℃と110℃の間で、水性メタノール中で行われる。
【0048】
反応混合物は、通常、80℃と120℃の間で、1〜20時間熱異性化される。それより低い温度では、この時間は、より長くなる可能性もある。
【0049】
好ましくは、方法プロセスf)で規定される含水率は、方法ステップe)の後に続いて、反応混合物に水を添加することによって設定される。
【0050】
熱異性化の後、混合物は、通常、0〜25℃、好ましくは0〜12℃に冷却され、晶出した式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートは、濾過によって高い収率及び純度で単離できる。
【0051】
本発明による上記の方法は、まず、all−Eアスタキサンチンが単離され、次いで、この結晶性生成物が、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートに変換される、二段階プロセスの欠点を回避する。驚いたことに、式IIのC10ジアルデヒドと式IIIのC15ホスホニウム塩から生成される、式IVのアスタキサンチンは、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートへの変換のために、溶媒を含まないように単離される必要がないが、トリフェニルホスフィンオキシド、及び合成からの他の不純物の存在下で、粗溶液として、式Vの塩化メチルスクシノイル(4−クロロ−4−オキソ酪酸メチル)と直接反応して、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを与えることができ、そこから、熱異性化の後、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを、高い収率及び純度で結晶形で得ることができることが判明した。
【実施例】
【0052】
以下の実施例によって、本発明を説明するつもりであるが、本発明は限定されない。
【0053】
(実施例1)
ジクロロメタン中で、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を使用して、IIをIIIと反応させることによって、粗アスタキサンチン溶液を生成した(Helv. Chim. Acta 64, 7, 2445 (1981)参照)。その溶液は、4.56重量%のアスタキサンチン(HPLC分析)と0.8重量%のメタノール(GC分析)、及び0.55重量%の水(カールフィッシャー滴定)も含んでいた。
【0054】
この溶液982g(アスタキサンチン75mmolと同等)を装入した。大気圧下で、350mlの溶媒をNormagカラムヘッドで留去した。留出物の上方の水性相を分離し、下方の層を175gの水で洗浄した。それらの相を分け、下方の有機相を蒸留ボトムに再循環した。
【0055】
この手順をさらに二回繰り返した。その次に、350mlの溶媒を大気圧下で留去した。残った蒸留残留物は、もはやメタノールを含んでいなかった。その含水率は、0.051重量%であった。
【0056】
20℃で、21.36g(270mmol)のピリジンを蒸留残留物に添加した。その次に、20℃で、34.92g(225.0mmol)の塩化メチルスクシノイル(4−クロロ−4−オキソ酪酸メチル)を、30分の間に滴下した。さらに、反応混合物を、20〜25℃で3時間撹拌した。次いで、100mlの水を添加することによって、反応混合物を加水分解した。水性相を分離し、有機相を、各回100mlの水で二回洗浄した。その次に、ジクロロメタンを、Normagカラムヘッドを介して留去した。転移温度が65℃に達するまで、留出物をメタノールと同時交換した(等容法)。混合物を300mlの水と混合し、さらに、固有圧力下で、100℃で4時間撹拌し、10℃に冷却し、10℃で1時間撹拌することにより抽出した。析出生成物を濾過し、各回50mlの冷えた(10℃の)メタノールで二回洗浄し、真空乾燥キャビネット内で、10mbar以下で、50℃で、一晩中乾燥させた。
【0057】
サンプルの重量:52.5gのAx−DMDS(粗溶液中のアスタキサンチンに対して84.9%)
m.p.:115〜117℃
純度:94.6%(HPLC面積%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを製造するための方法であって、
【化1】

a)ジクロロメタンを含む溶媒中で、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドであるMOR又はM(ORのアルコールROH溶液
(式中、
は、Li、Na、K、又はRbであり、
は、Mg、Ca、Sr、又はBaであり、
は、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピルである)を
塩基として添加することによって、
式IIのC10ジアルデヒドを、
【化2】

ダブルウィッティヒ反応により、式IIIのC15ホスホニウム塩
【化3】

(式中、Xは、有機又は無機酸HXのアニオンである)
と反応させて、
式IVのアスタキサンチン
【化4】

(式中、形成された二つの新しい二重結合は、Z立体配置だけでなく、E立体配置でも存在する)
を生成させ、
場合によっては、その後に、塩MX又はMを除去するために、その反応混合物を水系後処理する方法ステップと、
b)その反応混合物を水で繰り返し洗浄することによって、又はジクロロメタン及びアルコールROHを含む溶媒混合物を留去することによって、方法ステップa)の反応混合物からアルコールROHを除去し、
場合によっては、その後に、ジクロロメタンと水の共沸蒸留により水を除去することによって、反応混合物を乾燥させる方法ステップと、
c)ジクロロメタン中で、式Vの塩化メチルスクシノイル
【化5】

及び有機窒素塩基を添加することによって、方法ステップb)において処理した反応混合物に存在する式IVのアスタキサンチンを反応させて、式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネート
【化6】

を形成させる方法ステップと、
d)水溶性の塩を除去するために、方法ステップc)の反応混合物を水系後処理する方法ステップと、
e)蒸留によって、方法ステップd)の反応混合物からジクロロメタンを除去し、アルコールROH(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピルである)を反応混合物に添加することによって、ジクロロメタンをアルコールROHと溶媒交換する方法ステップと、
f)反応混合物の全体積に対して水10〜90体積%という含水率を有する、方法ステップe)のROH含有反応混合物を、少なくとも50℃に加熱することによって、方法ステップc)で生成した式Iaのアスタキサンチンジメチルジスクシネートを熱異性化させ、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートを生成させる方法ステップであって、式Iのall−Eアスタキサンチンジメチルジスクシネートが、結晶形で生じ、場合により、それに続いて単離される方法ステップと
を含む前記方法。
【請求項2】
方法ステップa)において、塩基が、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップb)において、ミキサー/セトラー装置内で、メタノール含有ジクロロメタンの留出物を水で連続洗浄することによって、メタノールが反応混合物から除去される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
方法ステップc)において、有機窒素塩基が、ピリジン又はピリジン誘導体である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
方法ステップe)において、アルコールROHが、メタノールである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
方法ステップf)において、熱異性化が、密閉装置内で、固有圧力下、80℃と120℃の間で、水性メタノール中で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップf)で規定する含水率が、方法ステップe)の後に続いて、反応混合物に水を添加することによって設定される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−518856(P2013−518856A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551629(P2012−551629)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051618
【国際公開番号】WO2011/095571
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】