説明

アスパラギン酸由来アミノ酸および化学物質の改善された生産のための改変グリオキシル酸シャント

本発明は、アスパラギン酸由来のアミノ酸及び化学物質を生成するための改善された特性を保持する微生物菌株を提供する。このような菌株を作製する方法が提供される。これらの方法は、aceBAKオペロン、glcB遺伝子、又はそれらの両方の発現を変化させることを含む。発現の変化は、転写の増大、天然転写制御の解除、及び/又はその他の手段により達成される場合がある。これらの遺伝子の天然プロモーターを置換することも考慮される;例えば、天然プロモーターは、tacプロモーター(Ptac)によって置換される場合がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、係属中の米国仮特許出願第60/692,341号(出願日2005年6月20日)への優先権を主張する。上記出願は、あたかも本明細書に完全に再記載されているかのように参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
以下には、本発明を理解するのに有用な場合がある情報が含まれる。但し、本明細書に提供される情報の何れかが、本明細書において記載又は請求される発明の従来技術又は材料であることも、或いは具体的又は暗示的に言及される何れかの刊行物又は文書が従来技術であることも認めることはない。
【0003】
本発明は、微生物学及び微生物遺伝学の分野に関するが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、新規の細菌株、新規のヌクレオチド配列、新規のアミノ酸配列、並びにL−スレオニン、L−リシン、L−ホモセリン及びL−イソロイシンを含むがこれらに限定されないアミノ酸を発酵生成するために、これらの細菌株、新規のヌクレオチド配列、及び/又は新規のアミノ酸配列を使用するプロセスに関する。好ましくは、L−スレオニンが生成されるのがよい。本発明は又、動物飼料添加物の生成にも関する。本発明は又、上に列挙したアミノ酸を含むがこれらに限定されない微小化学物質の発酵及び合成にも関する。
【0004】
大腸菌では、アミノ酸であるL−スレオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、L−リシン及びL−メチオニンが、共通の生合成経路を介してアスパラギン酸塩(アスパラギン酸)から炭素原子の全て又は一部を誘導する(G. N. Cohen, “The Common Pathway to Lysine, Methionine and Threonine”, pp.147−171 in Amino Acids: Biosynthesis and Genetic Regulation, K. M. Herrmann and R. L. Somerville, eds., Addison−Wesley Publishing Co., Inc., Reading, Mass. (1983))。
【0005】
【化1】

そして、アスパラギン酸塩はオキサロ酢酸(OAA)に由来する。Gokarn等の特許文献1で報告されている通り、好気性発酵を使用して、オキサロ酢酸誘導アミノ酸を生成することができる。残念ながら、プロセスの収率は、炭素フローのストリンジェントな代謝調節によって制限される場合がある。一般的に、OAAに向かう炭素フラックスは、代謝システムへの摂動に関係なく、一定のままであると言われる(J. Vallinoら、Biotechnol. Bioeng., 41:633, 646 (1993))。この代謝調節を克服することが、OAA由来のアミノ酸及びその他の産物の生成を増大させるに当たって有利であると考えられる。
【0006】
好気性細菌の代謝では、グルコースの炭素原子は、クエン酸サイクル又はクレブスサイクルとしても知られるトリカルボン酸サイクル(TCA)において二酸化炭素に完全に酸化される場合がある。TCAサイクルは、OAAがアセチル−CoAと組み合わされてクエン酸塩を形成するときに始まる。細菌大腸菌における好気性代謝経路の一例が、図1に示されている。TCAサイクルにおける1次分子としての役割に加えて、OAAは、L−アスパラギン、L−メチオニン、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、及びL−リシンを含めて、アミノ酸を合成する先駆物質として使用される場合がある。
【0007】
TCAサイクルに対するOAAの重要性が与えられると、アミノ酸の生合成に使用されるOAAは、TCAサイクルが更に進行することを可能にするように置換されるべきである。従って、多くの有機体は、TCAサイクルにおいて使用される中間物を再生成する「アナプレロティック経路」を展開した。幾つかの植物及び微生物において等、幾つかの有機体では、TCAサイクル中間物は、「グリオキシル酸シャント」、又「グリオキシル酸塩バイパス」又は「グリオキシル酸塩サイクル」としても知られるアナプレロティック経路を介して、アセチル−CoAから形成される場合がある。大腸菌におけるグリオキシル酸シャントが、図2に示されている。
【0008】
グリオキシル酸シャントにより、特定の基質(例えば、酢酸塩、脂肪酸、又は幾つかの長鎖アルカン)の上に成長する有機体が、そのOAAを補充することが可能になる。このような機序は有用であるが、その理由は、このような基質は、TCAサイクルにおいて必要とされるOAAを形成するためにカルボキシル化することができる3−炭素中間物を提供しないからである。TCAサイクルとグリオキシル酸シャントの間の炭素フラックスの分岐点は、イソクエン酸塩であると言われる(K. Walshら、J. Biol. Chem. 259:15, 9646−9654(1984))。
【0009】
グリオキシル酸シャントにおいて、TCAサイクル由来のイソクエン酸塩は、酵素イソクエン酸リアーゼによってグリオキシル酸塩及びコハク酸塩に開裂される。次いで、酵素リンゴ酸シンターゼが、グリオキシル酸塩をアセチル−CoAと組み合わせて、リンゴ酸塩を形成するために使用される。コハク酸塩及びリンゴ酸塩の両方が、TCAサイクルによりOAAを生成するために使用される場合がある。一般的に、グリオキシル酸バイパス酵素をコードする遺伝子の発現は、厳密に制御されると言われ、それにより、これらの遺伝子は、特定の3−炭素化合物がTCAサイクルにおいて利用可能である場合、抑制される場合がある。
【0010】
以下の反応が観測される場合がある。
【0011】
aceA、イソクエン酸リアーゼ:イソクエン酸塩<・・・>グリオキシル酸塩+コハク酸塩
aceB、リンゴ酸シンターゼA:アセチル−CoA+HO+グリコキシレート<・・・>リンゴ酸塩+CoA
glcB、リンゴ酸シンターゼG:アセチル−CoA+HO+グリコキシレート<・・・>リンゴ酸塩+CoA
大腸菌では、グリオキシル酸シャント酵素をコードする遺伝子は、aceBAKオペロンに位置する。遺伝子は、例えば、IclR(A. Sunnarborgら、J. Bact., 172:2642−2649 (1990))、FadR(S. Maloyら、J. Bact. 148:83−90 (1981))、FruR(A. Chiaら、J. Bact., 171:2424−2434 (1989))、及びArcAB(S. Iuchiら、J. Bact., 171:868−873 (1989))を含めて、幾つかの転写調節因子によって制御されると言われる。
【0012】
aceBAKオペロンは、aceBの上流であるα70−タイプのプロモーターから発現することが報告されている(E. Resnikら、J. Bact. 178:9, 2715−2717 (1996))。大腸菌の菌株K−12のaceBAKオペロンのヌクレオチド配列が、配列番号1において述べられている。Keseler, I.M.ら、Nue. Acids Res., 33:D334−357 (2005)。オペロンは、iclRから発現したリプレッサータンパク質によって調節され、酢酸塩又は脂肪酸の上に成長することによって活性化されると言われる(E. Resnikら、前掲)。aceA遺伝子(配列番号2)(Keseler, I.M.ら、前掲)は、イソクエン酸リアーゼ(配列番号3(Keseler, I.M.ら、前掲))をコードすることが報告されており、aceB遺伝子(配列番号4)(Keseler, I.M.ら、前掲)は、リンゴ酸シンターゼA(配列番号5)(Keseler, I.M.ら、前掲)を生成することが報告されている。glcDFGBオペロンの最後の遺伝子(配列番号6)(Keseler, I.M.ら、前掲)、glcB(配列番号7)(Keseler, I.M.ら、前掲)は、リンゴ酸シンターゼG(配列番号8)(Keseler, I.M.ら、前掲)をコードすることが報告されており、これは、リンゴ酸シンターゼAが欠如している場合に、グリオキシル酸シャントにおいてリンゴ酸シンターゼAと置換する場合がある(L.N. Ornstonら、J. Bact., 98:2, 1098−1108 (1969); W. Farmerら、App. & Env. Microbiol., 63:8, 3205−3210 (1997); M. Ohら、J. Biol. Chem., 277:15, 13175−13183 (2002))。
【0013】
大腸菌の野生型菌株の多くの特徴が報告されている。例えば、大腸菌の菌株K−12のゲノムが、F.R. Blattnerら、Science, 1997 Sep 5; 277(5331):1453−74で報告されている。何人かの著者が、炭素フローをOAAに向かって逸らす試行を報告しているが、その理由は、OAAに向かう炭素のフローを増大させることにより、先駆物質としてOAAで合成される場合がある生化学物質の生成が増大することが仮定されたからである。試行は、aceBAKリプレッサーとして作用する遺伝子のノックアウト、又はaceBAKを阻害する遺伝子の促進を含んでいた(グリオキシル酸シャントの中への炭素フローを回避するため)。例えば、Rieping等の特許文献2は、酵素リンゴ酸塩:キノリン酸化還元酵素を生成するmqo遺伝子の過剰発現による腸内細菌におけるスレオニンの生成の増大を報告している。
【0014】
Park等の特許文献3は、fadR遺伝子がノックアウトされている微生物を使用するL−スレオニンの生成を報告している。Rieping等の特許文献4、及びRieping等の特許文献5は、aceA遺伝子又はaceA遺伝子をコードするヌクレオチド配列が減衰又はスイッチオフされる腸内細菌の発酵を含むL−スレオニンを生成するプロセスを報告している。
【0015】
Rieping等の特許文献6は、何れもaceBAKオペロンの転写制御因子であるfadR遺伝子産物及び/又はiclR遺伝子産物の活性レベルを向上させるように修正された細菌を使用してL−スレオニンを生成するプロセスを報告している。Hermannの特許文献7は、aceK遺伝子産物の発現が減衰されるように修正されている腸内細菌ファミリの細菌の発酵を含むL−スレオニンを生成するプロセスを報告している。
【0016】
細菌細胞の成長、隔離されたDNA分子の宿主細胞への導入、並びに隔離された核酸分子の隔離、クローン化及び配列化等の方法及び技法が、一般的には当業者に既知である場合がある。これらの方法及び技法は、以下に示す多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている:Davisら、Basic Methods In Molecular Biology (1986), Miller, J.H., Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1972); Miller, J.H., A Short Course in Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1992); Singer M. and Berg, P., Genes & Genomes, University Science Books, Mill Valley, Calif. (1991); Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Kaufman, P.B.ら、Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Boca Raton, Fla. (1995); Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R. and Thompson, J.E. eds., CRC Pres, Boca Raton, Fla. (1993); Smith−Keary, P.F. Molecular Genetics of Escherichia coli, The Guilford Press, New York, N.Y. 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【0017】
以上の参考文献のそれぞれ、及び以下の説明における参考文献は、当業者が、本開示内容によって提供される更なる教示内容を理解又は実施するのを助けるのに必要な程度において、本明細書で参考として援用されている。
【特許文献1】米国特許第6,455,284号明細書
【特許文献2】米国特許第6,630,332号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1408123号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第03/0059903号明細書
【特許文献5】国際公開第02/081722号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/038106号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/008616号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
培養可能であり、且つL−スレオニン、L−メチオニン、L−リシン、L−ホモセリン、及びL−イソロイシン等のアミノ酸の増大量を生成する微生物菌株が、当技術分野で依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(要旨)
本明細書に記載及び請求される本発明は、多くの属性を有し、この概要において述べられるものを非限定的に含めて、多くの実施形態を含む。本明細書に記載及び請求される本発明は、単に例示であって、限定を目的とせずに含まれているこの概要において識別される特徴又は実施形態に限定されず、或いはそれによって限定されるものではない。
【0020】
本発明の一態様は、1つ以上のアミノ酸(例えば、L−スレオニン、L−リシン、L−メチオニン、L−ホモセリン、及び/又はL−イソロイシン)を大量に及び/又は高収率で効率的に生成する細菌を提供する。一般的に、本発明の細菌は、非通例的なアミノ酸栄養要件を有さないが、当然、非通例的な栄養要件(例えば、1つ以上のアミノ酸が供給されるという要件、或いは細菌が特定の媒地の上に成長するという要件を含む)が存在することができる。本発明の細菌は、大腸菌の菌株を含む属エシェキリアの細菌を含めて、ファミリ腸内細菌科からである場合がある。本発明の細菌は又、コリネバクテリウム・グルタミカム、ブレビバクテリウム・フレバム、及びブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタムの菌株を含む属コリネバクテリウム又はブレビバクテリウムの細菌を含めて、ファミリ・コリネバクテリアセエに由来する場合もある。コリネバクテリウムとブレビバクテリウムの違いは僅かであり、研究者の中には、これらの細菌は実際には同じ属であると主張する者もいる。その違いの精度は、アミノ酸を生成するために培養することができる細菌の任意の菌株で実施される場合がある本発明の態様には決定的ではない。
【0021】
一態様において、本発明は、細菌の菌株を含み、菌株の少なくとも1つの染色体は、少なくとも1つの非天然プロモーターに操作可能に結合された少なくとも1つのglcB遺伝子、及び/又はaceA遺伝子、並びに/或いはaceB遺伝子を含み、菌株は、L−スレオニン、L−メチオニン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、及び/又はL−リシンを過剰生成する。菌株は、大腸菌菌株K−12等の大腸菌の野生型菌株によるL−スレオニン生成と比較して、及び/又は親株と比較して、L−スレオニンを過剰生成する場合がある。
【0022】
本発明の他の態様において、大腸菌の菌株は、前記aceB、aceA、及び/又はglcB遺伝子、並びに前記非天然プロモーターに操作可能に結合された非天然リボソーム結合部位を更に含む。非天然リボソーム結合部位は、例えば、lacリボソーム結合部位、thrAリボソーム結合部位、folAリボソーム結合部位、araCリボソーム結合部位、araBリボソーム結合部位、galEリボソーム結合部位、ompAリボソーム結合部位、trpEリボソーム結合部位、lamBリボソーム結合部位、MS2コートリボソーム結合部位、及びQPコートリボソーム結合部位から選択される場合があるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の一態様において、本発明において使用される非天然リボソーム結合部位は、大腸菌の菌株から選択される。例えば、非天然リボソーム結合部位は、大腸菌菌株s4370−69−2から選択される場合がある。リボソーム結合部位への言及は、コンセンサス配列、天然に見られる配列、及び突然変異配列を含む場合があるが、これらに限定されない。
【0024】
非天然プロモーター及び/又は非天然リボソーム結合部位は、例えば、天然のaceBAK又はglcBプロモーター或いは結合部位を組み合わせる、又は突然変異生成することによって導入される場合がある。
【0025】
本発明の他の態様において、以前に考察された非天然プロモーターは、例えばtacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、lppプロモーター、trpプロモーター、ラムダ−P−プロモーター、ラムダ−Pプロモーター、lacUV5プロモーター、araBADプロモーター、及びlpp−lacプロモーターからなる群の少なくとも1つから選択される場合がある。プロモーターへの言及は、コンセンサス配列及び突然変異配列を含む場合があるが、これらに限定されない。当業者であれば、本開示内容の利益、並びにBrosiusら、前掲及びMulliganら、前掲の利益をもとに、同様の結果が、tacプロモーターの使用を教示する例においてtrcプロモーターを使用して得られる場合があることを理解する場合がある。
【0026】
一態様において、本発明は、L−アミノ酸を生成し、aceBAKオペロンの遺伝子及びglcB遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を細菌において過剰発現するように操作可能に構成された組換え核酸構築物を含む細菌を発酵媒地において成長させること、発酵媒地及び細菌の少なくとも一方においてL−アミノ酸を豊富にすること、並びに、L−アミノ酸産物を生成するために、発酵媒地及び細菌の少なくとも一方からL−アミノ酸を隔離することを含む、発酵によってL−アミノ酸産物を生成するプロセスを含む。本発明の他の態様において、上述の細菌の属は、エシェリキア、コリネバクテリウム、及びブレビバクテリウムからなる群から選択される。細菌は、例えば大腸菌である場合がある。
【0027】
本発明の他の態様において、組換え核酸は、aceBAKオペロンの少なくとも1つの遺伝子及び/又はglcB遺伝子の上流に非天然プロモーター配列を含み、非天然プロモーターは、aceBAKオペロンの少なくとも1つの遺伝子及び/又はglcB遺伝子に操作可能に結合される。プロモーターは、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、lppプロモーター、trpプロモーター、ラムダPプロモーター、及びラムダPプロモーター、又は本開示内容の利益を有する当業者であれば理解する他のプロモーターから選択される場合がある。
【0028】
過剰発現した遺伝子は、aceB、aceA、及びglcBから選択される場合がある。非天然プロモーターは、オペロンの天然プロモーターと置換する場合があり、天然プロモーターは、欠失される、中断される、又は部分的に欠失される、及び部分的に中断される。非天然プロモーターは、オペロンの天然プロモーターに加えて挿入される場合がある。
【0029】
本発明の他の態様において、L−アミノ酸産物を生成するプロセスが上記のように提供され、aceBAK遺伝子産物及びglcB遺伝子産物の少なくとも一方は、微生物において過剰発現した唯一の遺伝子産物である。
【0030】
本発明の他の態様において、L−アミノ酸は、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、L−リシン、及びL−メチオニンからなる群から選択される。他の態様において、L−アミノ酸はL−スレオニンである。
【0031】
他の態様において、本発明は、aceBAKオペロンの少なくとも1つの遺伝子及びglcB遺伝子が過剰発現される細菌を含む。微生物の属は、エシェリキア、コリネバクテリウム、及びブレビバクテリウムからなる群から選択される場合がある。細菌は、大腸菌の菌株である場合がある。本開示内容の利益を有する当業者であれば、イソクエン酸リアーゼ及びリンゴ酸シンターゼG、並びに大腸菌においてそれらをコードする遺伝子に適用可能な本明細書の技法は、コリネバクテリウムのイソクエン酸リアーゼ及びリンゴ酸シンターゼGに適用される場合があることを理解するであろう。コリネバクテリウム・グルタミカム菌株ATTC13032(glcB)のリンゴ酸シンターゼGをコードする遺伝子は、配列番号26において見られる。コリネバクテリウム・グルタミカム菌株ATTC13032(aceA)のイソクエン酸リアーゼをコードする遺伝子は、配列番号27において見られる。
【0032】
本発明の他の態様において、細菌は、大腸菌、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム、ブレビバクテリウム・フレバム、又はコリネバクテリウム・グルタミカムの菌株である。
【0033】
本発明の他の態様において、細菌は、非天然プロモーターによって調節されるaceBAKオペロンの少なくとも1つの遺伝子、及び/又はglcB遺伝子を含む。他の態様において、本発明の細菌の非天然プロモーターは、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、lppプロモーター、trpプロモーター、ラムダPプロモーター、及びラムダPプロモーターから選択される。本発明の他の態様において、非天然プロモーターは、tacプロモーター(Ptac)である。
【0034】
本発明の他の態様は、aceBAKオペロンの天然プロモーターが、非天然プロモーターによって置換される、中断される、又は部分的に置換される、及び部分的に中断される細菌を含む。本発明の他の態様において、本発明の細菌は、aceBAKオペロンの天然プロモーターを置換又は中断することなく、aceBAKオペロンに挿入された非天然プロモーターを含む。本発明の他の態様において、本発明の細菌では、glcDFGBオペロンの天然プロモーターは、glcB遺伝子に操作可能に関連している非天然プロモーターによって置換又は中断されている。本発明の他の態様において、glcDFGBオペロンの天然プロモーターを置換又は中断することなく、非天然プロモーターが、glcB遺伝子と操作可能に関連しているglcDFGBオペロンに挿入されている、本発明の細菌が提供される。
【0035】
本発明の他の態様は、2005年5月11日に寄託され、寄託番号NRRLB−30844、NRRLB−30845、NRRLB−30846、NRRLB−30847、NRRLB−30848、NRRLB−30849、NRRLB−3085、及びNRRLB−30851が付与された細菌株を提供する。実施形態は又、それらの寄託微生物の誘導体である細菌株をも提供する。例えば、当業者であれば、aceBAKオペロン又はglcB遺伝子の過剰発現を減少させることなく、代謝流入の他の修正並びに栄養要件に対する変更を含めて、種々の修正が、寄託菌株について実施される場合があることを理解するであろう。
【0036】
他の態様において、本発明は、細菌において大腸菌のaceAタンパク質、aceBタンパク質、及びglcBタンパク質の少なくとも1つをコードする遺伝子を過剰発現するように操作可能に構成された非天然プロモーターを含む組換え核酸であって、前記遺伝子は、
a)配列番号3、5、8からなる群から選択されるタンパク質をコードするDNA;
b)配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25の少なくとも1つによる核酸;
c)b)による核酸の遺伝子コードに関してのみ縮重している核酸;
d)a)又はb)による核酸の非表現突然変異を含む核酸;
e)b)の核酸と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一である核酸;及び
f)b)によるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
の少なくとも1つを含む、組換え核酸を含む。
【0037】
更なる態様において、本発明は、先行段落のa)、b)、c)、d)、又はe)に記載した少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0038】
表1は、本文書に示す菌株の菌株数及び該当する遺伝子型を示す。表1には又、本文書に列挙する菌株を構築するために使用されるDNAのPCR増幅において使用されるプライマー及びテンプレートも示す。
【0039】
表2は、tacプロモーター融合を担持する種々の菌株のリンゴ酸シンターゼ(MS)及びイソクエン酸リアーゼ(ICL)に特有の活性を列挙する。
【0040】
表3、表4及び表5は、tacプロモーター融合菌株のスレオニンの力価及び収率を測定する振盪フラスコ実験の結果を列挙する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(詳細な説明)
以下で考察する通り、本発明は、アスパラギン酸由来のアミノ酸及び化学物質を生成するための微生物菌株処理向上特性を提供する。このような菌株を作製する方法が提供される。これらの方法は、aceBAKオペロン、aceA遺伝子、aceB遺伝子、glcB遺伝子、又はその組み合わせの発現を変化させることを含む。発現の変化は、転写の増大、及び/又は天然転写制御の軽減により達成される場合がある。これらの遺伝子の天然プロモーターの置換も考慮される。例えば、その天然プロモーターが、tacプロモーター(Ptac)によって置換される場合がある。ベクターを含めて、本発明の新規の特徴を提供する遺伝子構築物も提供され、このようなベクターは、プラスミド、コスミド、ウィルス、ファージ、トランスポゾン、又は微小染色体である場合があるが、これらに限定されない。
【0042】
I.定義
本明細書で使用される特定の用語は、当業者によって使用され、このような者によって一般的に理解される通常の意味を有する。このような通常の意味の最も完全な範囲が、本明細書に包含されるものとして意図される。しかし、本明細書及び特許請求の範囲の用語に与えられる範囲を含め、これらの文書に対する理解を明確且つ一貫したものにするために、以下の定義が提供される。本明細書で提供される定義と競合する場合がある意味が主張された場合は、提供した定義が優先される。“a”又は“an”の冠詞を伴う実体は、その実体の1つ以上を指すことに留意されたい。例えば、“a polynucleotide”という表現は、1つ以上のポリヌクレオチドを表すものとして理解される。従って、“a”、“an”、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0043】
染色体の統合:本明細書で使用される「染色体の統合」という用語は、外因性DNA断片を宿主有機体の染色体に挿入することを指す。
【0044】
構成:本明細書で使用される「構成」という用語は、発現し、且つ発現を完全に停止する調節を受けることが知られていない、即ち、常に「オン」であるプロモーターを指す。
【0045】
内因性:本明細書で使用される「内因性」という用語は、有機体内で天然に生じている有機体内のDNA配列を指す。
【0046】
aceA遺伝子:本明細書で使用される「aceA遺伝子」という用語は、イソクエン酸リアーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を指す。イソクエン酸リアーゼは、グリオキシル酸サイクルにおけるグリオキシル酸塩及びコハク酸塩へのイソクエン酸塩の可逆開裂に触媒作用を及ぼす。aceA遺伝子の一例は、配列番号3によるタンパク質をコードする。種々の細菌株に由来するイソクエン酸リアーゼ遺伝子のその他の例には、配列番号28〜35によるタンパク質をコードするものが含まれる。A遺伝子の通常の例には、配列番号2及び配列番号27に列挙された核酸配列が含まれる。種々の細菌株に由来するaceA遺伝子のその他の例には、配列番号36〜41によるものが含まれる。
【0047】
aceB遺伝子:本明細書で使用される「aceB遺伝子」という用語は、リンゴ酸シンターゼA活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を指す。この活性は、アセチル−CoAがグリオキシル酸塩及び水とS−リンゴ酸塩及びCoAを形成する反応に触媒作用を及ぼす。種々の細菌株に由来するaceB遺伝子の例には、配列番号42から48によるタンパク質をコードするものが含まれる。aceB遺伝子の通常の例には、配列番号4及び配列番号26に列挙された核酸配列が含まれる。種々の細菌に由来するaceB遺伝子の他の通常の例には、配列番号49から53によるものが含まれる。
【0048】
glcB遺伝子:本明細書で使用される「glcB遺伝子」は、リンゴ酸シンターゼG活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を指す。この活性も、アセチル−CoAがグリオキシル酸塩及び水と反応してS−リンゴ酸塩及びCoAを形成する反応に触媒作用を及ぼす。glcB遺伝子の一例は、配列番号8によるタンパク質である。リンゴ酸シンターゼG活性を有するタンパク質配列は、配列番号42より配列番号8に対して優れたアミノ酸配列同一性を有することによって、リンゴ酸シンターゼA活性を有するものから区別される場合がある。種々の細菌株に由来するglcB遺伝子の通常の例には、配列番号7によるタンパク質をコードするものが含まれる。種々の細菌株に由来するglcB遺伝子のその他の通常の例には、配列番号58から60によるものが含まれる。
【0049】
異種:本明細書で使用される「異種」という用語は、異なる供給源に由来する、又は同じ供給源内の異なる位置に由来する構造を指す。
【0050】
誘導物質:本明細書で使用される「誘導物質」という用語は、誘導可能プロモーターからの転写を刺激するように作用する分子を指す。誘導物質の存在(常にではないが、通常、外部分子)は、転写を刺激する。
【0051】
隔離されたポリヌクレオチド:本明細書で使用される「隔離されたポリヌクレオチド」という用語は、天然の環境から除去されたポリヌクレオチド、DNA、又はRNAを指す。例えば、ベクターに含まれる組換えDNA分子は、隔離されていると見なされる。隔離DNA分子の他の例には、異種宿主細胞において維持された組換えDNA分子、又は溶液の精製された(部分的に又は実質的に)DAN分子が含まれる。混合クローンライブラリのメンバーであり、且つライブラリの他のクローンから隔離されていないメンバーであるクローン、或いは細胞又は細胞溶解産物から隔離又は除去されていない染色体に含まれる核酸分子は、「隔離」されていない。隔離されたRNA分子には、本発明に含まれるDNA分子のin vivo又はin vitroのRNAの写しが含まれる。隔離されたDNAには又、PCRの増幅によって生成されるDNAも含まれる。
【0052】
組換え核酸:本明細書で使用される「組換え核酸」という用語は、異種供給源に由来する核酸を共に融合するように操作されているポリヌクレオチド配列を意味する。
【0053】
天然プロモーター:本明細書で使用される「天然プロモーター」という用語は、親株の遺伝子に操作可能に結合された内因性プロモーターを指す。
【0054】
非天然プロモーター:本明細書で使用される「非天然プロモーター」という用語は、天然に見られるように微生物に操作可能に結合される遺伝子とは異なる遺伝子に操作可能に結合される内因性プロモーターであるプロモーターを指す。非天然プロモーターは又、異種プロモーターである場合もある。
【0055】
非天然プロモーターは又、その配列が親株に関して変更、欠失、置換、及び/又は突然変異されているプロモーターである場合もある。このような変更、欠失、置換、及び/又は突然変異は、任意の機序により生じる場合がある。幾つかの可能な機序には、化学的突然変異、紫外線突然変異、組換え、又は当業者が認識するであろうその他の手段が含まれるが、これらに限定されない。非天然プロモーターは、1つ以上の変更、欠失、置換、又は突然変異によって創出される場合がある。非天然プロモーターは、一連の親株に対する複数の及び/又は連続する突然変異、変更、欠失、及び/又は置換によって創出される場合がある。
【0056】
操作可能に結合:本明細書で使用される「操作可能に結合」、「操作可能に連結」、及び「操作可能に構成」という用語は、交換可能に使用され、機能関係における核酸要素の結合を指す。核酸配列は、他の核酸配列との機能関係に置かれるとき、他の核酸配列に「操作可能に結合」される。例えば、プロモーターは、ポリペプチドコード領域の転写に影響を与える場合、ポリペプチドコード領域に操作可能に結合される。操作可能に結合された核酸は、オペロンにおいてのように、通常、共に接近又は隣接し、必要、最適、又は有用である場合、2つのポリペプチドコード領域を連続して且つ共通の転写制御下において接合する。
【0057】
オペロン:本明細書で使用される「オペロン」という用語は、mRNAをコードする核酸配列の連続部分を指し、ポリペプチドをコードする2つ以上の開読取りフレームが、マルチシストロンメッセンジャーRNAとして転写され、シス作用プロモーター及び可能であれば転写の分子制御について動作する他のシス作用調節配列によって制御される。
【0058】
プロモーター:本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼの結合及び転写の開始を提供するDNA配列の一部を表し、従って、細胞におけるコード化配列又は他の機能RNAの発現を促進することができるDNA配列を指す。プロモーター配列は、常にではないが、一般的に、ポリペプチドをコードする1つ以上の開読取りフレームの上流にある遺伝子の5’非コード化領域において見られる。転写の開始において機能するプロモーター内の配列要素は、しばしば、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴付けられる。プロモーターの配列は、近位及びより遠位の上流要素の両方を含む場合がある。細菌プロモーターにおいて維持された近位要素の例には、転写開始点の上流にある、10塩基35塩基がそれぞれ配置された−10領域及び−35領域が含まれる。プロモーターは、例えば、構成的、誘導性、又は環境応答性である場合がある。
【0059】
プロモーターは、天然遺伝子から完全に誘導される場合もあれば、ハイブリッドプロモーターである場合もある。ハイブリッドプロモーターは、天然に見られる異なるプロモーターから誘導された異なる要素からなり、及び/又は合成DANセグメントを含む場合がある。
【0060】
過剰生成:本明細書で使用される「過剰生成」という用語は、基準菌株によって生成される量より多い量で細胞によって化合物が生成されることを指す。基準菌株は、例えば、本発明の菌株を生成するために使用される親株である場合がある。基準菌株は又、野生型菌株である場合もある。
【0061】
過剰発現:本明細書で使用される「過剰発現」という用語は、遺伝子産物(RNA及び/又はタンパク質)が、突然変異、交差、又は組換えDANの技法によって操作されている後代有機体において、そのように操作されていない野生型菌株又は親有機体に対して、過剰生成されることを意味する。
【0062】
菌株:本明細書で使用される「菌株」という用語は、同一又はほぼ同一の表現型及び遺伝子型の特徴を有する特定の種の細菌を指す。特に指示がない限り、「菌株」及び「細胞」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0063】
サプレッサー及びリプレッサー。本明細書で使用される「サプレッサー」及び「リプレッサー」という用語は、抑制可能なプロモーターからの転写を遮断又は低減するように作用する異なるタイプの分子を指す。サプレッサーは、特定の種類の受容体タンパク質に結合する小分子であり、この結合により、遺伝子の発現が抑制される。リプレッサーは、プロモーターのシス作用転写調節要素に結合するタンパク質であり、この結合により、プロモーターからの転写が抑制される。サプレッサー及びリプレッサーは、宿主細胞内で生成されることが多い。サプレッサーは、宿主細胞が成長している、又は成長する媒質に追加される場合がある。
【0064】
合成プロモーター。本明細書で使用される「合成プロモーター」という用語は、プロモーター活性を有し、且つ天然に見られることが知られていないヌクレオチド配列を意味する。
【0065】
収率:本明細書で使用される「収率」という用語は、消費された粗材料の量に関する生成された産物の量を指す。微生物によって生成されたアミノ酸に関して、収率は、プロセスによって消費された粗材料の量に関する生成されたアミノ酸の量を指す。例えば、100グラムのショ糖が、25グラムのL−イソロイシンを生成する微生物によって消費されるとき、ショ糖に関するL−イソロイシンの収率は25%である。
【0066】
コスミド:本明細書で使用される「コスミド」という用語は、プラスミド配列及びバクテリオファージ・ラムダの粘着末端からなるハイブリッドベクターを指す。
【0067】
外因性:本明細書で使用される「外因性」という用語は、有機体内で天然に生じていない有機体内のDNA配列を指す。
【0068】
染色体外要素:本明細書で使用される「染色体外要素」という用語は、染色体に結合されていない要素を指す。本発明の染色体外要素には、例えば、ベクターが含まれるが、これに限定されない。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウィルス、ファージトランスポゾン、又は微小染色体である場合があるが、これらに限定されない。
【0069】
相同:本明細書で使用される「相同」という用語は、同じ供給源に由来する構造、或いは同じ展開の構造又は機能を有する構造を指す。
【0070】
相同組換え:本明細書で使用される「相同組換え」という用語は、2つのDNA分子間において相同又はほぼ相同の配列を交換することを指す。
【0071】
親株:本明細書で使用される「親株」という用語は、本発明の菌株又は宿主細胞を提供するように突然変異、電気穿孔、又は変更されている菌株、或いは本発明の菌株又は宿主細胞を提供するように突然変異、電気穿孔、又は変更されている菌株に先行する菌株を指す。
【0072】
プラスミド:本明細書で使用される「プラスミド」という用語は、クローニングのベクターとして使用される場合がある円形染色体外要素を指す。
【0073】
内因性プロモーター:本明細書で使用される「内因性プロモーター」という用語は、野生型の選択宿主微生物内の天然のプロモーター配列であるプロモーター配列を指す。
【0074】
異種プロモーター:本明細書で使用される「異種プロモーター」という用語は、選択宿主微生物内の非天然のプロモーター配列であるプロモーター配列を指す。非天然のプロモーター配列は、任意の原核有機体又は真核有機体に由来する場合がある。
【0075】
調節:本明細書で使用される「調節」という用語は、分子信号に応答して幾つかの遺伝子産物のレベルを上げる、及びレベルを下げることを指す。これらの遺伝子産物は、例えば、非限定的にタンパク質及びmRNAである場合がある。調節は、遺伝子産物が特定の環境下において増大する「正の調節」(「又は誘導」)である場合がある。調節は、遺伝子産物が特定の環境下において減少する「負の調節」(又は「抑制」)である場合がある。
【0076】
リボソーム結合部位(RBS):本明細書で使用される「リボソーム結合部位」という用語は、転写を開始するためにリボソームと結合するmRNAの領域を指す。
【0077】
ベクター:本明細書で使用される「ベクター」という用語は、宿主有機体において複製することができるDNA分子を指す。
【0078】
特に指示がない限り、本明細書に新たに記載する全てのヌクレオチド配列は、自動DNAシーケンサー(Applied Biosystems, Inc. のModel373等)を使用して決定された。従って、当技術分野で既知の通り、この自動手法によって決定された任意のDNA配列について、本明細書で決定した任意のヌクレオチド配列が、同じエラーを含む場合がある。自動化によって決定されたヌクレオチド配列は、配列DNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、一般的には少なくとも約90%同一であり、より一般的には少なくとも約95%から少なくとも約99.9%同一である。
【0079】
II.菌株及びヌクレオチド
本発明の態様は、1つ以上のアミノ酸を過剰生成する細胞を生成する方法、並びにそれらの方法によって生成された細胞、それらの細胞の子孫、及び同様の特徴を有する細胞の両方を含む。本発明は、L−スレオニンの生成の文脈において本明細書では考察されるが、本発明の方法、菌株、及び構成は、非限定的にL−メチオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、及びL−リシンを含めて、アスパラギン酸塩から誘導された他のアミノ酸又は化学物質を生成するために使用される場合がある。
【0080】
本発明の細菌及び方法は、既存のプロモーター又は遺伝子の「ノックアウト」を有して、又は有さずに作製される場合がある。「ノックアウト」は、プロモーター又は遺伝子が非機能的であるように、挿入又は欠失によってプロモーター又は遺伝子を物理的に置き換える。非天然プロモーターがaceBAKオペロン又はglcB遺伝子に操作可能に結合される場合、天然プロモーターは、中断又は欠失される場合がある(全体又は一部において)。代替として、非天然プロモーターは、天然プロモーターの機能活性をノックアウトすることなく、非天然プロモーターが操作可能に結合される遺伝子の天然プロモーターの上流又は下流に配置される場合がある。しかし、このような場合、非天然プロモーターは、天然プロモーターとは無関係の方式で転写を促進するようにも機能する。
【0081】
幾つかのプロモーターが、本発明に適している。これらには、例えば、プロモーターであるtac、trc、lac、lpp、trp、ラムダP、ラムダP、lacUV5、araBAD、lpp−lac、phoA、recA、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、cspA、T7、T7lac、T3lac、T−lac、T4gene32、nprAllac、VHb、及びタンパク質Aが含まれるが、これらに限定されない。tacプロモーター(配列番号9)(Proc. Natl. Acad. Sci. 80:21−25、de Boerら)の例示的なヌクレオチド配列が、図5に示されている。他のプロモーターの配列は、当業者に既知であり、本発明におけるその使用は、本開示内容の利益を有することにより明らかになるであろう。
【0082】
本発明の菌株の1つ以上の染色体は、2つ以上のaceBAKオペロン及び/又はglcDFGBオペロン若しくはglcB遺伝子を含む場合があり、各オペロン又は遺伝子は、オペロン又は遺伝子に操作可能に結合された非天然又は天然プロモーターを独立して有する場合がある。染色体において2つ以上のaceBAKオペロン、glcDFGBオペロン、及び/又はglcB遺伝子が存在する場合、これらは、同じ又は異なる非天然プロモーターを含む場合がある。
【0083】
少なくとも1つのaceBAKオペロン、glcDFGBオペロン、及び/又はglcB遺伝子に操作可能に結合された天然のaceBAKオペロン、glcDFGBオペロン、及び/又はglcB遺伝子のプロモーターではないプロモーターを含むことに加えて、本発明の菌株は、aceBAKオペロン、glcDFGBオペロン、及び/又はglcB遺伝子、並びに非天然プロモーターに操作可能に結合されたリボソーム結合部位を含む場合があり、リボソーム結合部位は、天然aceBAKオペロン、glcDFGBオペロン及び/又はglcB遺伝子リボソーム結合部位、或いは非天然リボソーム結合部位である。本発明において使用される非天然リボソーム結合部位は、lac、thrA、folA、arac、araB、galE、ompA、trypE、lamB、MS2コート、及びQBコートに由来するリボソーム結合部位を含む。
【0084】
本開示内容を通して、本発明において開示されるヌクレオチド配列及び/又はプロモーターは、それらの配列及び/又はプロモーターのコンセンサス、並びに本発明の幾つかの態様では、開示された配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列の両方を含むと解釈されなければならないことが理解されなければならない。
【0085】
実際には、任意の特定のヌクレオチド配列が、少なくとも1つのヌクレオチド配列又は相補ヌクレオチド配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるかは、従来から、Oxford Molecular, Ltd.(英国オックスフォード)から入手可能なWindows(登録商標)用のOMIGA(登録商標) Version2.0等、配列分析コンピュータプログラムを使用して決定することができる。OMIGA(登録商標)は、2つのヌクレオチド配列の間で最適な整列を見つけるために、10の開ギャップペナルティ及び5.0の拡張ギャップペナルティのデフォルトパラメータを有するスローフル動的プログラミング整列方法を使用するCLUSTAL W整列アルゴリズムを使用する。特定の配列が例えば基準配列に95%同一であるかを決定するために、CLUSTAL W又は別の配列整列プログラムを使用する場合、パラメータは、同一のパーセンテージが基準ヌクレオチド配列の全長にわたって計算されるように設定される場合があり、それにより、基準配列におけるヌクレオチドの総数の最高で5%のギャップ、不整合、又は挿入が可能になる。当技術分野で既知の他の配列分析方法及びプログラムが、本発明において使用される場合がある。
【0086】
本開示内容に記載の実験では、Accelrys(登録商標)から入手可能な配列決定プログラムである、GCG(登録商標) Wisconsin Package(Wisconsin Package Version 10.3又は11.1、Accelrys Inc.[米国カリフォルニア州サンディエゴ];SeqLAbの一部は、当初イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校微生物学科で開発され、GCGにライセンスが付与された“Genetic Data Environment(GDE)”をベースとする)を使用した。使用したWisconsin Package(登録商標)のエレメントには、GAP、SSEARCH、FASTA、及びBLASTが含まれる。
【0087】
National Center for Agricultural Utilization Research(米国イリノイ州ピオリア)にて2005年5月11日に寄託され、それぞれ、寄託番号NRRLB−30844、NRRLB−30845、NRRLB−30846、NRRLB−30847、NRRLB−30848、NRRLB−30849、NRRLB−30850、及びNRRLB−30851が付与された、細菌株s4397−184−1、s4480−140−5、s4480−148−1、s4480−199−1、s4538−003−1、s4480−199−4、s4397−109−2、及びs4538−006−2は、本発明の種々の態様を実証する。例えば、s4397−184−1では、tacプロモーターは、大腸菌のaceBAKオペロンに操作可能に結合されていた。この菌株は、振盪フラスコにて試験されるとき、野生型大腸菌におけるリンゴ酸シンターゼ活性及びスレオニン力価と比較して、リンゴ酸シンターゼA活性を増大させ、且つスレオニン力価を増大させることができる。これらの菌株の結果は、以下の例4及び例5においてより完全に述べられている。
【0088】
尚更なる態様において、本発明は、aceA遺伝子、aceB遺伝子、及びglcB遺伝子の少なくとも1つに操作可能に結合された非天然プロモーターを含む核酸を含み、核酸は、イソクエン酸リアーゼ、リンゴ酸シンターゼA、又はリンゴ酸シンターゼGの少なくとも1つをそれぞれコードする。aceA遺伝子に対応するポリペプチドの非限定的な例には、配列番号3及び配列番号28から35によるタンパク質が含まれる。aceA遺伝子の通常の例には、配列番号2及び配列番号27において列挙された核酸配列が含まれる。種々の細菌株に由来するaceA遺伝子のその他の例には、配列番号36から41によるものが含まれる。aceB遺伝子に対応するポリペプチドの非限定的な例には、配列番号42から48によるタンパク質が含まれる。glcB遺伝子に対応するポリペプチドの非限定的な例には、配列番号8及び配列番号54から57によるタンパク質が含まれる。以上のポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号36〜41、配列番号45〜53、及び配列番号58〜60による核酸である。
【0089】
ポリヌクレオチドは又、遺伝コードに関して縮重である選考ポリヌクレオチド配列の1つによるDNA、又は異常の配列の非表現突然変異を含むDNAである場合もある。このような非表現突然変異は、Bowie, J.U.ら、“Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions”, Science 247:1306−1310 (1990)で考察されている。ポリヌクレオチドは又、DNAと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一であるDNA、縮重変性を有するDNA、又は上で考察したような沈黙変性を有するDNA、或いは上で考察した何れかのDNAとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである場合もある。本発明は又、本段落に記載のポリヌクレオチドの何れかを提供するベクターを含む場合もある。
【0090】
III.DNA構築物
別の態様において、本発明は、天然ではない少なくとも1つのプロモーターに操作可能に結合された、glcB遺伝子、aceA遺伝子、及び/又はaceB遺伝子等、大腸菌aceBAKオペロン及び/又はオペロンの少なくとも一部を含むDNA構築物(例えば、ベクター)を含む。本発明のDNA構築物は、lacリボソーム結合部位等、含まれている遺伝子の天然大腸菌遺伝子リボソーム結合部位ではないリボソーム結合部位を更に含む場合がある。本発明のDNA構築物は、当業者に既知の他の調節要素又は追加のDNA要素を含む場合がある。
【0091】
本発明のDNA構築物は、1つ以上のベクターである場合がある。本発明のベクターは、少なくとも1つの調節要素を含む場合がある。例えば、調節要素は、プロモーター、オペレータ、活性化体、リプレッサー、及び/又はエンハンサーである場合がある。ベクターは又、1つ以上の開始配列、及び/又は1つ以上のリボソーム結合部位を含む場合もある。ベクターは、選択マーカーを更に含む場合がある。調節要素は、宿主細胞の染色体の上及び/又はその他のベクターの内部に配置される場合がある。
【0092】
本発明の一態様において、大腸菌に異種の少なくとも1つのプロモーターに操作可能に結合されたaceA遺伝子、aceB遺伝子、又はglcB遺伝子を含むDNA構築物が提供される。本発明の更なる態様において、DNA構築物は、aceA遺伝子、aceB遺伝子、又はglcB遺伝子に操作可能に結合された少なくとも1つのリボソーム結合部位、及び天然大腸菌aceA、aceB、又はglcBプロモーターではないプロモーターを更に備え、前記少なくとも1つのリボソーム結合部位は、それらの遺伝子の天然大腸菌リボソーム結合部位ではない。
【0093】
本発明のベクターは、プラスミド、コスミド、ウィルス、ファージ、トランスポゾン、又は微小染色体である場合があるが、これらに限定されない。本発明の更なる態様において、DNA構築物においてaceA遺伝子、aceB遺伝子、又はglcB遺伝子に操作可能に結合されたプロモーターは、例えば、tac、trc、lac、lpp、trp、ラムダP、ラムダP、lacUV5、araBAD、lpp−lac、phoA、recA、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、cspA、T7、T7lac、T3lac、T−lac、T4遺伝子32、nprMlac, VHb、及びタンパク質Aである場合があるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の更なる態様においては、本発明のDNA構築物を含む宿主細胞が提供される。宿主細胞は、例えば大腸菌を含めて、微生物である場合があり、当業者によって所望される場合がある他の修正又は包含を含む場合がある。宿主細胞は、L−スレオニンを生成する場合がある。一態様において、宿主細胞は、本発明の少なくとも1つのDNA構築物を担持しない親細胞より高い収率でL−スレオニンを生成する。
【0095】
IV.アミノ酸を生成するための培養媒地及びプロセス
本発明は又、全般的にアミノ酸を生成する発酵プロセスにおいて上述され、且つ以下において請求される菌株及び宿主細胞を使用することも対象とする。このようなアミノ酸は、アスパラギン酸塩ファミリのアミノ酸を含む場合がある。スパラギン酸塩ファミリのアミノ酸は、例えば、L−スレオニン、L−メチオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、及びL−リシンを含む場合がある。アミノ酸は、例えば、少なくとも1つの炭素供給源、少なくとも1つの窒素供給源、及び適切であれば無機塩、成長因子等を含む合成媒地又は天然媒地において本発明の菌株又は宿主細胞を培養することによって得られる場合がある。
【0096】
適切な炭素供給源の例には、ブドウ糖、果糖、スターチ、ショ糖、スターチ加水分解産物、セルロース加水分解産物、及び糖蜜等の炭水化物;酢酸、プロピオン酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、及びフマル酸等の有機酸;並びにグリセロール及びエタノール等のアルコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
適切な窒素供給源の例には、アンモニア気体及び水溶性アンモニアを含むアンモニア、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、及び酢酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩;並びに肉エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解産物、大豆かす加水分解産物、及び酵母エキスを含む他の窒素包含物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の共に使用するのに適切な培養媒地には、以下の媒質が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
1. 最小培地。デイビス最小培地(1リットル当たり、7.0gのリン酸二カリウム、2.0gのリン酸一カリウム、0.5g/Lのクエン酸ナトリウム、0.1硫酸マグネシウム、1.0gの硫酸アンモニウム、pH7.0で、炭素供給源(通常はブドウ糖)が0.1%(w/v)に補足され、必要であればアミノ酸供給源(通常は0.1%カザミノ酸(w/v)又は0.15%酵母エキス(w/v))が補足されている)。
【0100】
2. LB(10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl)
3. BTY2(1.0g/LのK2HPO4、10.0g/Lの(NHSO、40.8g/LのBis−Tris、15 g/Lの酵母エキス(Difco)、32.5g/Lのショ糖、及び1.2g/LのMgSO−7HO pH7.0)
3. BTC3(1.0g/LのKHPO、10.0g/Lの(NHSO、40.8g/LのBis−Tris、20m1/1の50%固体コーンスティープリカー(Sigma)、25.0g/Lのショ糖、及び1.2g/LのMgSO−7HO、pH7.0で、必要であればアミノ酸供給源(通常は0.1%カザミノ酸(w/v)又は1.5%酵母エキス(w/v))が補足されている。
【0101】
アミノ酸は、例えばバッチタイプ又は供給バッチタイプの発酵プロセス等において、本発明の菌株を使用して商用的に生成される場合がある。バッチタイプの発酵では、栄養源が、発酵の開始に追加される。供給バッチ又は拡張供給バッチのタイプの発酵では、1つ以上の栄養源が、(1)培養物に連続的に、(2)発酵の開始から、若しくは培養物がある年齢に到達した後、及び/又は(3)供給される栄養源が培養基から枯渇するとき、供給される。
【0102】
供給バッチタイプ発酵の拡張バッチの変形形態は、反復供給バッチ発酵又は充填及び抽出発酵であり、発酵槽の含有物の一つが、栄養源の供給を続行しながら、特定の時間(例えば、発酵槽が満杯のとき)に除去される場合がある。このようにして、発酵は、このような方法が使用されないときと比較してより長い時間に延長することができる。
【0103】
他のタイプの発酵である連続発酵又はケモスタット培養は、完全培地の連続供給を使用し、一方、培養物流体は、発酵槽のブロスの容積がほぼ一定であるように連続的又は半連続的に抽出される。連続発酵は、理論的には、無限の時間期間維持することができる。
【0104】
バッチ発酵では、培養された有機体は、培地の本質的な栄養源の1つが枯渇するまで、又は発酵条件が不利益になる(例えば、pHが微生物の成長を阻害する値に減少する)まで、成長する。供給バッチ発酵では、測定は、有益な成長条件を維持するように通常は行われ(例えば、pH制御を使用して)、1つ以上の栄養源の枯渇は、これらの栄養源を培養物に供給することによって防止される。培養された微生物は、通常、栄養源の供給率によって決定される率で成長し続ける。
【0105】
幾つかの場合、単一の栄養源、非常にしばしば炭素供給源が、成長を限定する。同じ原理が、連続発酵中に当てはまり、培地供給の1つの栄養源が制限的である場合があり、且つ他の栄養源の全てが過剰である。微生物が成長を停止した後、制限栄養源は、一般的に、過度に低い濃度で培養物流体に存在する。
【0106】
異なるタイプの栄養源の制限を使用することができるが、炭素源の制限が、最もしばしば使用される。制限栄養源の他の例には、窒素、硫黄、リン、微量金属、及び酸素の供給源が含まれる。ビタミン及びアミノ酸も、具体的には培養されている微生物が制限アミノ酸又は制限ビタミンについて栄養要求性である場合、制限栄養源である場合がある。
【0107】
培養後、培養物ブロスにおいて累積したアミノ酸(例えば、L−スレオニン、L−メチオニン、L−ホモセリン、L−リシン、又はL−イソロイシン)は、種々の方法の1つ以上により、ブロスから部分的に又は完全に分離される場合がある。例えば、イオン交換樹脂が、米国特許第5,342,766号に記載された方法により、L−スレオニンを精製するために使用される場合があることが報告されている。この方法は、まず、遠心分離によって微生物を培養ブロスから除去し、次いで、塩酸を使用してブロスのpHを約2に調節することを含む。その後、酸性化された溶液は、強酸陽イオン交換樹脂を通過し、吸着剤が、希釈水性アンモニアを使用して溶出する。アンモニアは、真空下において蒸発によって除去され、得られた溶液は濃縮される。アルコールを追加し、その後冷却することにより、L−スレオニンの結晶が提供される。培養基からL−イソロイシンを精製する他の方法が、米国特許第5,474,918号で報告されている。
【実施例】
【0108】
VI.実施例
以下の実施例は、本発明の幾つかの態様を単に代表するものである。当業者であれば、本明細書に記載の通り、本発明を種々の微生物及びプロモーターで実施できることを理解するであろう。本明細書で使用されるこれらの実施例及び菌株は、特許請求の範囲で明示的に言及していない何れかの方式で本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【0109】
(実施例1)
実施例1は、aceBAKオペロンの遺伝子の発現を増大させる方式で、aceBの上流の位置にtacプロモーターを挿入することによって、リンゴ酸シンターゼ及びイソクエン酸リアーゼを過剰生成する菌株を生成することを記載する。
【0110】
プラスミドpKD4由来のカナマイシン耐性遺伝子をコードする線形DNAで菌株4370−69−2を形質変換することによって、tacプロモーター(de Boerら、1983及び図5)を野生型aceB遺伝子の上流に挿入した(Datsenko and Wanner, 2000)(図3)。菌株4370−69−2である親株には抗生物質耐性マーカーがない。これを、National Center for Agricultural Utilization Research(米国イリノイ州ピオリア)にて2005年5月11日に寄託し、寄託番号rNRRL−B−30843を付与した。プライマーaceBUS−kan4(配列番号10)及びプロモーター構築物特有プライマー(tacaceB−kan3(配列番号11)、tac(2)aceB−kan3(配列番号12)、又はtac(3)aceB−kan3(配列番号13))を使用するポリメラーゼ鎖反応(PCR)において、プラスミドpKD4をテンプレートとして使用した。全てのプライマー配列を図4に列挙する。代替として、プライマーaceBUS−kan4(配列番号10)及びプロモーター構築物特有プライマー(tac(4)aceB(配列番号14)、tac(5)aceB(配列番号15)、又はaceB−tac\lacrev(配列番号16))を使用するテンプレートとして、菌株s4397−184−1(Ptac−aceBAK)(表1)の染色体DNAを使用した。これらのPCR産物は、菌株MG1655のaceBアレルの配列(Blattnerら、1997)と相同の配列が側面に位置するカナマイシン耐性遺伝子を含み、tacプロモーターをaceBAKプロモーター(Chungら、1988)の代用とした。PCRは、製造業者の指示に従ってAdvantage HFTM PCRキット(Clontech)を使用して実施した。50ulの反応は、5μLの10X HF PCR反応緩衝液(Clontech専売処方)、5μLの10X HF dNTPミックス(Clontech専売処方)、1μL 50X Advantage−HFポリメラーゼミックス(これは、50%のグリセロール、40mMのTris−HCL(pH7.5)、50mMのKCl、25mMの(NHSO、1mMのEDTA、5mMの2−メルカプトエタノール、0.25%のThesit、1.1μg/μLのTaqStart抗体、Clontech専売量のKlenTaq−1DNAポリメラーゼ、専売量のDeep VentTM DNAポリメラーゼからなる)、0.5μLの各プライマー(100pmol/u1)、及び1μLのテンプレートDNA(1−50pg/μL)を含んでいた。Applied Biosystems 9700サーモサイクラーにおいて、循環を以下のように実施した:94℃にて4分の事前処置、次いで、94℃にて10秒、55℃にて30秒、及び68℃にて90秒の25サイクル。
【0111】
【表1】

表1.8つの異なる過剰発現菌株の構成。各プロモーター遺伝子融合を導入するために使用されるプライマー及びテンプレート、並びに結果として得られる菌株の菌株名称を列挙する。
【0112】
次いで、PCR産物を使用して、以前に記載されたプロトコル(Datsenko and Wanner, 2000)に従ってプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−69−2を形質変換したが、以下が修正されている:オービタルフラスコ上で30℃にて成長するプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−69−2の50mLのLB(Difco)培養物を250mLバフル振盪フラスコにて0.4のOD600に成長させた。次いで、0.5mLの20%(w/v)アラビノースを追加し、Datsenko and Wanner (2000)のプロトコルに従って細胞がエレクトロコンピテントになる時間である2.0時間、更に成長することを可能にした。1.0〜3.0μgの沈殿したPCR産物を45□のエレクトロコンピテント細胞に懸濁させ、混合物を0.1cmのエレクトロポレーションキュベットに移送することによって、エレクトロポレーションを実施した。次いで、キュベットを、1.8kV、250F、及び200ΩでBio−Rad Gene Pulser(登録商標) IIにおいてパルス化した。次いで、細胞を1mLの2YT(Difco)において4時間37℃で成長させ、1mL全体を50□g/mLカナマイシンと共にLBアガー(Difco)の上に平板培養し、37℃にて1〜2日培養した。Datsenko and Wanner (2000)に記載の通り、得られたカナマイシン耐性菌株をプラスミドpKD46から除き、菌株s4397−184−1(Ptac−aceBAK)、s4480−140−5(Ptacp−aceBAK)、s4480−148−1(Ptac(3)−aceBAK)、s4480−199−1(Ptac(4)−aceBAK)、s4538−003−1(Ptac(5)−aceBAK)、及びs4480−199−4(Ptac\lac−aceBAK)(表1)を得た。
【0113】
(実施例2)
以下の実施例では、glcB遺伝子産物の発現を増大させるように配置された大腸菌のglcBの上流にtacプロモーターを導入することによってリンゴ酸シンターゼを過剰生成する菌株の生成を説明する。
【0114】
tacプロモーター(de Boerら、1983年及び図5)をglcB遺伝子の上流に挿入し、プラスミドpBSL−175(Alexeyevら、1995)に由来するスペクチノマイシン耐性遺伝子をコードする線形DNAで菌株s4370−69−2を形質変換することによって、GlcBの発現を駆動する(図3)。プライマーgIcBUS−spc2(配列番号18)及びtac−glcB−spcl(配列番号17)を使用するPCRにおいて、プラスミドpBSL175をテンプレートとして使用した(全てのプライマー配列を図4に列挙する)。このPCR産物は、MG1655(Blattnerら、1997)のglcBアレルの配列と相同の配列が側面に位置するスペクチノマイシン耐性遺伝子を含んでおり、tacプロモーターをglcB遺伝子のすぐ上流にあるDNAの代用とした。製造業者の指示に従って、Advantage HFTM PCRキット(Clontech)を使用してPCRを実施した。50μLの反応は、5μLの10X HF PCR反応緩衝液(Clontech専売処方)、5μLの10X HF dNTP ミックス(Clontech専売処方)、1μL 50X Advantage−HFポリメラーゼミックス(これは、50%のグリセロール、40mMのTris−HCL(pH7.5)、50mMのKCl、25mMの(NHSO、1mMのEDTA、5mMの2−メルカプトエタノール、0.25%のThesit、1.1μg/μLのTaqStart抗体、専売量のKlenTaq−1DNAポリメラーゼ、及び専売量のDeep VentTM DNAポリメラーゼからなる)、0.5μLの各プライマー(100pmol/u1)、及びlμLのテンプレートDNA(1−50pg/μL)を含んでいた。Applied Biosystems9700サーモサイクルラにおいて、循環を以下のように実施した:94℃にて4分の事前処置、次いで、94℃にて10秒、55℃にて30秒、及び68℃にて90秒の25サイクル。
【0115】
次いで、PCR産物を使用して、以前に記載したプロトコル(Datsenko and Wanner, 2000)に従ってプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−69−2を形質変換したが、以下が修正されている:オービタルフラスコ上で30℃にて成長するプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−69−2の50mLのLB(Difco)培養物を(250mLバフル振盪フラスコにて)0.4のOD600に成長させた。次いで、0.5mLの20%(w/v)アラビノースを追加し、Datsenko and Wanner (2000)のプロトコルに従って細胞がエレクトロコンピテントになる時間である2.0時間、更に成長することを可能にした。1.0−3.0μgの沈殿したPCR産物を45□のエレクトロコンピテント細胞に懸濁させ、混合物を0.1cmのエレクトロポレーションキュベットに移送することによって、エレクトロポレーションを実施した。次いで、キュベットを、1.8kV、25□F、及び200ΩでBio−Rad Gene Pulser(登録商標)IIにおいてパルス化した。次いで、細胞を1mLの2YT(Difco)において4時間37℃で成長させ、1mL全体を50□g/mLカナマイシンと共にLBアガー(Difco)の上に平板培養し、37℃にて2〜3日培養した。Datsenko and Wanner (2000)に記載の通り、得られたカナマイシン耐性菌株をプラスミドpKD46から除き、菌株s4397−109−2を得た。
【0116】
(実施例3)
以下の実施例では、glcB及びaceBAK遺伝子産物を構成的に過剰発現するように配置された大腸菌のglcBの上流及びaceBAKオペロンの上流にtacプロモーターを導入することによって、リンゴ酸シンターゼ及びイソクエン酸リアーゼを過剰生成する菌株の生成を説明する。
【0117】
プラスミドpKD4に由来するカナマイシン抵抗遺伝子をコードする線形DNAで菌株s4370−69−2を形質変換することによって、tacプロモーター(de Boerら、1983及び図5)を菌株s4397−109−2の野生型aceB遺伝子の上流に挿入した(Datsenko and Wanner)(図3)。プライマーaceBUS−kan4(配列番号10)及びtacaceB−kan3(配列番号11)を使用するPCRにおいて、プラスミドpKD4をテンプレートとして使用した(全てのプライマー配列を図4に列挙する)。このPCR産物は、MG1655(Blattnerら、1997)に由来するglcBアレルの配列と相同の配列が側面に位置するスペクチノマイシン耐性遺伝子を含んでおり、tacプロモーターをaceBAKプロモーターの代用とした(Chungら、1988)。製造業者の指示に従って、Advantage HFTM PCRキット(Clontech)を使用してPCRを実施した。50μLの反応は、5μLの10X HF PCR反応緩衝液(Clontech専売処方)、5μLの10X HF dNTP ミックス(Clontech専売処方)、1μL 50X Advantage−HFポリメラーゼミックス(これは、50%のグリセロール、40mMのTris−HCL(pH7.5)、50mMのKCl、25mMの(NHSO、1mMのEDTA、5mMの2−メルカプトエタノール、0.25%のThesit、1.1μg/μLのTaqStart抗体、専売量のKlenTaq−1DNAポリメラーゼ、及び専売量のDeep VentTM DNAポリメラーゼからなる)、0.5μLの各プライマー(100pmol/uL)、並びにlμLのテンプレートDNA(1−50pg/μL)を含んでいた。Applied Biosystems9700サーモサイクルラにおいて、循環を以下のように実施した:94℃にて4分の事前処置、次いで、94℃にて10秒、55℃にて30秒、及び68℃にて90秒の25サイクル。
【0118】
次いで、PCR産物を使用して、以前に記載したプロトコル(Datsenko and Wanner, 2000)に従ってプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−109−1を形質変換したが、以下が修正されている:オービタルフラスコ上で30℃にて成長するプラスミドpKD46を担持する菌株s4370−109−1の50mLのLB(Difco)培養物を(250mLバフル振盪フラスコにて)0.4のOD600に成長させた。次いで、0.5mLの20%(w/v)アラビノースを追加し、Datsenko and Wanner (2000)のプロトコルに従って細胞がエレクトロコンピテントになる時間である2.0時間、更に成長することを可能にした。1.0−3.0μgの沈殿したPCR産物を45□Lのエレクトロコンピテント細胞に懸濁させ、混合物を0.1cmのエレクトロポレーションキュベットに移送することによって、エレクトロポレーションを実施した。次いで、キュベットを、1.8kV、25OF、及び200ΩでBio−Rad Gene Pulser(登録商標) IIにおいてパルス化した。次いで、細胞を1mLの2YT(Difco)において4時間37℃で成長させ、1mL全体を50□g/mLカナマイシンと共にLBアガー(Difco)の上に平板培養し、37℃にて1〜2日培養した。
【0119】
Datsenko and Wanner (2000)に記載の通り、得られたカナマイシン耐性菌株をプラスミドpKD46から除き、菌株s4538−006−1を得た。
【0120】
(実施例4)
以下の実施例は、構成的に高レベルのグリオキシル酸シャント酵素を提供するために、glcB及びaceBAKオペロンの上流にtacプロモーターを配置して、発現を駆動する使用法を示す。
【0121】
リンゴ酸シンターゼ及びイソクエン酸リアーゼの酵素特有活性を測定することによって、グリオキシル酸シャント遺伝子の発現レベルを評価した。240rpmで37℃のNew Brunswick G53振盪機で250mLバッフルフラスコにおいて、0.1%(w/v)のカザミノ酸(Difco)及び0.4%(w/v)ショ糖又は0.4%(w/v)グリセロールと0.4%酢酸ナトリウム(w/v)の組み合わせが補足された50mLデイビス最小培地(Difco)で酵素検定の培養物を成長させた。Ornston and Ornston (1969)の方法に従って、アセチル−CoAに由来する遊離CoAのグリオキシル酸塩依存放出を追跡することによって、リンゴ酸シンターゼのレベルを測定した。Maloy, et al. (1980)の方法に従って、グリオキシル酸塩のイソクエン酸塩依存生成を追跡することによって、イソクエン酸リアーゼのレベルを測定した。表2は、野生型に対してショ糖又はグリセロール更に酢酸塩が補足されて成長したかに関係なく、aceB遺伝子の前にtacプロモーターを導入することにより、リンゴ酸シンターゼ及びイソクエン酸リアーゼの両方の酵素レベルが上昇することを示す。表2は又、glcB遺伝子の前にtacプロモーターを導入することにより、リンゴ酸シンターゼのレベルは上昇するが、イソクエン酸リアーゼのレベルは変化しないことを示す。
【0122】
【表2】

表2:7つの過剰発現菌株並びに親株(s4370−69−2)のリンゴ酸シンターゼ及びイソクエン酸リアーゼ特有の活性。各菌株/培地の組み合わせを最小限6回検定し、平均を示す。0.1%カザミノ酸(Difco)が補足されたデイビス最小培地(Difco)において、菌株を成長させた。炭素供給源は、0.4%ショ糖又は0.4%グリセロール+0.4%酢酸ナトリウムであった。
【0123】
(実施例5)
以下の実施例は、スレオニンの収率及びスレオニン生成菌株における力価を増大させるために、グリオキシル酸シャントの酵素を過剰発現させる有用性を示す。
【0124】
培地BTC3(1.0g/LのK2HPO4、10.0g/Lの(NHSO、40.8g/LのBis−Tris、20m1/150%固体コーンスティープリカー(Sigma)、25.0g/Lのショ糖、及び1.2g/LのMgSO4−7H2OpH7.0)を使用して、過剰発現菌株の性能を振盪フラスコにて試験した。培地BTY2(1.0g/LのK2HPO4、10.0g/Lの(NHSO、40.8g/LのBis−Tris、15g/Lの酵母エキス(Difco)、32.5g/Lのショ糖、及び1.2g/LのMgSO4−7H2OpH7.0)(0.1mLを20mL BTY2の中へ)を接種するために、能動的に成長するLB(Difco)培養物を使用した。18時間後、0.25mLのBTY2を20mLのBTC3の中に通した。24時間後、BTC3培養物を収穫し、スレオニン及びショ糖の濃度を決定した。240rpmで37℃に設定されたNew Brunswick G53振盪機で250mLバッフルフラスコにおいて、全ての培養物を成長させた。結果を表3、4、及び5に示す。
【0125】
表3、表4及び表5:振盪フラスコにおける突然変異菌株のスレオニン生成。培養物を培地BTC3において成長させ、スレオニン及びショ糖の濃度を決定した。示された代表的な実験は、各菌株の6つのフラスコの平均である。異なる表が同じ菌株を示すが、結果は、1週だけ離れている。
【0126】
【表3】

(実施例6)
実施例6は、大腸菌の天然glcBプロモーターに操作可能に結合されたlacプロモーターを含むプラスミドを導入することによってリンゴ酸シンターゼGを過剰生成する菌株の生成を含む。実施例6は、予測的な実施例である。実施例6の実験及び手順は実施されておらず、単に例示的なものとして意図される。
【0127】
プラスミドのlacプロモーターに操作可能に結合された大腸菌菌株s4370−69−2由来のglcB遺伝子を含むpUC系ラスミドを構築する。プラスミドの構築は、当業者に既知であり、且つ本開示内容の利益を有する方法によって実施される。エレクトロポレーションによってlac::glcBプラスミドをs4370−69−2親株に導入し、lacプロモーターの動作によってglcBを過剰発現する菌株を生成する。プラスミドを含むことは、制約マッピング及びサザンブロット分析によって実証されている。
【0128】
glcBの発現レベルを示すために、この実施例において生成された菌株を適切な培地において培養する。このような培地は、カザミノ酸及びショ糖又はグリセロールと酢酸ナトリウムの組み合わせが補足されたデイビス最小培地である場合があるが、これらに限定されない。リンゴ酸シンターゼGのレベルは、2程度に低い比活性から親株における比活性より75倍高い比活性によって実証されるように、親株での同様の実験に対して上昇する。
【0129】
上述のBTC3等の成長培地における修正菌株の培養によって示される通り、リンゴ酸シンターゼGのレベルの上昇により、親株におけるL−スレオニンの生成と比較して、修正菌株におけるL−スレオニンの生成が増大する。修正プラスミド包含菌株の培養のL−スレオニン収率は、親株の収率に対して10%程度も増大する。
【0130】
本明細書で参照又は言及される特許、特許出願、刊行物、科学論文、書籍、ウェブサイト、並びにその他の文書及び資料は、本発明が属する業界の当業者の技能レベルを示すものである。このように参照した文献及び資料はそれぞれ、全体が個別に参考として援用されるか、或いは全体が本明細書に記載又は翻刻される場合と同じように、参考として本明細書で援用される。更に、本出願における全ての請求、並びに元の請求を含むがこれらに限定されない全ての優先出願は、全体が本発明の記載された説明で援用されるか、又はその一部を形成する。出願者等は、このような特許、出願、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、及びその他の参考資料又は文書から引用した何れか全ての資料及び情報を本明細書で物理的に援用する権利を留保する。出願者等は、記載された説明の何れの部分も含め、記載された説明の何れの部分にも、何れの元の請求も含むがこれらの限定されない上述の請求を物理的に組み込む権利を留保する。
【0131】
本明細書において本発明を広範且つ概略的に説明してきた。包括的な開示内容の範囲内に含まれるより狭い範囲の種及び亜族群もそれぞれ、これらの発明の一部を形成する。これには各発明の包括的な説明が含まれ、従ってこれには、実施された材料又は選択肢が本明細書で具体的に言及又は同定されているかにかかわらず、本発明のあらゆる請求項を含め、何れかの主題を属から削除するか、場合により削除することを可能にする但し書き又は否定的制限が含まれ、且つこのような変更全てが、本発明の記載された元の説明の一部を構成する。更に、本発明の特徴又は態様がMarkushグループの観点から記載されている場合は、本発明が、Markushグループの個々のメンバー又はメンバーのサブグループの全て及び何れかの観点から記載されているものとして理解されなければならない。
【0132】
本明細書に例示的に記載及び請求される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない、又は本明細書に本質として記載されていない何れか1つ以上の要素、1つ以上の制限がない状態で適切に実施することができる。従って、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「例えば」等の用語は、拡張的且つ非限定的に読まなければならない。本発明の請求において、本発明者等は、何れかの変形的な句をその他何れかの変形的な句で代用する権利を留保しており、本発明は、このような代用した移行を含み、本発明の記載された元の説明の一部を構成することが理解されなければならない。従って、例えば、「含む(comprising)」という用語は、「本質的に〜からなる」又は「からなる」という変形的な句の何れかで置き換えられる場合がある。
【0133】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数冠詞“a”、“an”、及び“the”は、特に文脈において明示的な指示がない限り、複数の言及を含む。
【0134】
何れに場合にも、本特許は、本明細書に具体的に開示される特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されるものとして解釈してはならない。又、何れに場合にも、本特許は、特許商標庁の何れかの調査官又はその他何れかの職員若しくは従業者による何れかの声明が、発行前に本特許を導き出した出願に具体的に関連する応答文書において出願人により具体的に、且つ制限又は留保なく明示的に採用されない限り、このような声明によって限定されるものとして解釈してはならない。
【0135】
本明細書で使用される用語及び表現は、例示するものとして使用され、限定するものとして使用されておらず、このような用語及び表現又はそれらの何れか一部を使用するに当たって、現在既知であるか、今後開発される何れかの等価物が、本明細書に定められているか、示されているか、記載されているか、或いはこのような等価物が、予測可能であると見なされているかにかかわらず、このような等価物を除外することを意図することはなく、本発明の請求が何らかの理由で変更又は修正を伴って又は伴わずに発行されているかにかかわらず、種々の改変が、本発明の請求する適用範囲内に含まれることを理解されたい。従って、本発明を、好ましい実施形態及び任意の特徴を使用して具体的に開示してきたが、これらで実現された、又は本明細書に開示された本発明の改変及び変更は、当業者によって採用することができ、このような改変及び変更は、本明細書で開示及び請求された本発明の適用範囲内に含まれるものとして見なされる。
【0136】
本明細書に記載の具体的な方法及び組成物は、好ましい実施形態を表し、例示的なものであり、本発明の適用範囲を限定するものとして意図されない。その他の目的、態様及び実施形態も、本明細書を考慮すると当業者が思い付くものであり、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨の範囲内に包含される。実施例が提供される場合、説明はこれらの実施例を含むが、これらの実施例のみに限定するものではないと解釈されなければならない。又、本発明に開示された発明の種々の代用及び改変が、本明細書で例示的に述べられたものを含め、本発明の適用範囲及び趣旨から、並びに本発明の説明から逸脱することなく行われる場合があることが、当業者には容易に明らかになり、適用範囲から逸脱することなく本発明の概念を実施するために、種々の修正及び等価物を使用できることが明らかである。当業者であれば、本発明の趣旨及び適用範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更を行うことができることを理解するであろう。記載した実施形態は、何れの点においても例示するものとして見なされ、限定するものとしては見なされない。従って、例えば、更なる実施形態が、本発明の適用範囲内及び以下の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】大腸菌の図のトリカルボン酸サイクルを示す図である(L.N. Ornstonら、J. Bact., 98:2, 1098−1108 (1969)から引用した図)。
【図2】大腸菌のグリオキシル酸シャントを示す図である(K. Walshら、J. Biol, Chem. 259:15, 9646−9654 (1984)から引用し、修正した図)。
【図3】抗生物質マーカー及びtacプロモーターを担持するPCR産物の染色体への統合を示す図である。相同組換えは、aceBAK及びglcB遺伝子を発現するのに使用されるプロモーターを交換するために使用される。spcR=スペクチノマイシン耐性カートリッジ、kanR=カナマイシン耐性カートリッジ。右向きの矢印は、異種プロモーター(Ptac)の近似位置を示す。spcR又はkanR及びtacプロモーターを含む線形PCR産物(上部の線)が、染色体(中間線)に交差して、異種プロモーターを有する菌株をもたらし、異種プロモーター(下部の線)のすぐ上流にある抗生物質耐性遺伝子でaceBAK又はglcBの発現を駆動している。
【図4】本文書に列挙する菌株の構築に使用されるプライマーの5’−3’配列を示す。下線の残留物が、aceBアレル又はglcBアレルに対する配列相同性を提供し、相同組換えにより染色体に挿入することを可能にする。太字の残留物が、tacプロモーターをコードする。
【図5】tacプロモーター(Ptac)(配列番号9)の配列、及び囲んだ開始コドン(ATG)を有する7種類のPtac挿入構築物のプロモーター領域の配列を含む、tacプロモーター及び7種類のPtac−遺伝子の融合を示す。Ptac−aceBAK(配列番号19)は、菌株s4397−184−1及び菌株s4538−006−1において見られる通りに示している。Ptae(2)−aceB(配列番号20)は、菌株s4480−140−5において見られる通りに示している。Ptac(3)−aceBAK(配列番号21)は、菌株s4480−148−1において見られる通りに示している。Ptac(4)−aceBAK(配列番号22)は、菌株s4480−199−1において見られる通りに示している。Ptac(5)−aceBAK(配列番号23)は、菌株s4538−003−1において見られる通りに示している。Ptac\lac−aceBAK(配列番号24)は、菌株s4480−199−4において見られる通りに示している。Ptac−glcB(配列番号25)は、菌株s4397−109−2及び菌株s4538−006−1において見られる通りに示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵によってL−アミノ酸産物を生成するためのプロセスであって、
(a)該L−アミノ酸を生成し、aceBAKオペロン内の遺伝子及びglcB遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を細菌において過剰発現するように操作可能に構成された組換え核酸構築物を含む該細菌を、発酵培地において増殖させる工程;
(b)該発酵培地及び該細菌の少なくとも一方において該L−アミノ酸を富化させる工程;並びに
(c)該L−アミノ酸を該発酵培地及び該細菌の少なくとも一方から単離する工程を含む、プロセス。
【請求項2】
前記細菌が大腸菌の菌株である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記組換え核酸が、前記少なくとも1つの遺伝子の上流に操作可能に連結された前記aceBAKオペロン又は前記glcB遺伝子に対して非天然であるプロモーター配列を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プロモーターが、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、ラムダ−Pプロモーター、ラムダ−Pプロモーター、lacUV5プロモーター、araBADプロモーター、lppプロモーター、及びlpp−lacプロモーターからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの遺伝子が、aceB、aceA及びglcBからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記非天然プロモーターが、前記aceBAKオペロン及びglcB遺伝子の少なくとも一方の天然プロモーターと置き換わり、該天然プロモーターが欠失又は中断される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記非天然プロモーターが、前記aceBAKオペロン及びglcB遺伝子の少なくとも一方の天然プロモーターを欠失することなく挿入される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの遺伝子のみが、前記細菌において過剰発現される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記L−アミノ酸が、L−スレオニン、L−イソロイシン、L−ホモセリン、L−リシン、及びL−メチオニンからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
aceBAKオペロン内の遺伝子及びglcB遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を細菌において過剰発現するように操作可能に構成された組換え核酸を含む細菌。
【請求項11】
前記細菌が大腸菌の菌株である、請求項10に記載の細菌。
【請求項12】
前記組換え核酸が、前記少なくとも1つの遺伝子の上流に操作可能に連結された前記aceBAKオペロン又はglcB遺伝子に対して非天然であるプロモーター配列を含む、請求項10に記載の細菌。
【請求項13】
前記非天然プロモーターが、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、ラムダ−P−プロモーター、ラムダ−Pプロモーター、lacUV5プロモーター、araBADプロモーター、lppプロモーター、及びlpp−lacプロモーターからなる群から選択される、請求項12に記載の細菌。
【請求項14】
前記aceBAKオペロンの天然プロモーターが、前記非天然プロモーターによって置き換えられる、請求項12に記載の細菌。
【請求項15】
前記非天然プロモーターが、前記aceBAKオペロンの天然プロモーターを置換又は中断することなく、該aceBAKオペロンにおいて挿入される、請求項12に記載の細菌。
【請求項16】
前記glcB遺伝子の天然プロモーターが、前記非天然プロモーターによって置き換えられる、請求項13に記載の細菌。
【請求項17】
該非天然プロモーターが、前記glcB遺伝子に操作可能に結合された天然プロモーターと置き換わることなく、該glcB遺伝子に操作可能に連結される、請求項13に記載の細菌。
【請求項18】
寄託番号NRRLB−30843、NRRLB−30844、NRRLB−30845、NRRLB−30846、NRRLB−30847、NRRLB−30848、NRRLB−30849、NRRLB−30850、NRRLB−30851を有する菌株、及びそれらの誘導体からなる群から選択される細菌株。
【請求項19】
大腸菌のaceAタンパク質、aceBタンパク質、及びglcBタンパク質の少なくとも1つをコードする遺伝子を細菌において過剰発現するように操作可能に構成された非天然プロモーターを含む組換え核酸であって、該遺伝子が:
a)配列番号3、配列番号5、及び配列番号8からなる群から選択されるタンパク質をコードするDNA;
b)配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25の少なくとも1つによる核酸;
c)b)による核酸の遺伝子コードに関してのみ縮重である核酸;
c)a)又はb)による核酸の非表現突然変異を含む核酸;
d)b)の核酸と少なくとも80%同一である核酸;或いは
e)b)によるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸
の少なくとも1つを含む、組換え核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の少なくとも1つの核酸を含むベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−543330(P2008−543330A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518279(P2008−518279)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/023809
【国際公開番号】WO2007/001982
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(501183976)アーカー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー (12)
【Fターム(参考)】