説明

アスファルトコンクリート層の養生期間短縮方法

【課題】 アスファルトコンクリート層を打設し、その上に舗装層を打設する弾性舗装において、従来の舗装施工ではアスファルトコンクリート層を打設後、2週間以上の養生期間を要して、自然環境下に放置し、アスファルトコンクリート層の表面を劣化させて舗装層を施工していたものを、養生期間を短縮させて舗装工事の期間を短縮できる方法を提供することである。
【解決手段】 舗装施工に於いて基盤上に打設されるアスファルトコンクリート層の表面をブラッシングすることを特徴とするアスファルトコンクリート層養生期間の短縮方法であり、プラスチック製又はワイヤー製ブラシを装備したスイーパーをアスコン層上に走行させ、表面を必要により砂や水を撒布して洗浄しながらブラッシングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトコンクリート層(以下、アスコン層と言う)を含む舗装の施工におけるアスコン層の養生期間短縮方法に関する。詳しくは、基盤上にアスコン層を打設して舗装層を施工するに際して、アスコン層表面をブラッシングすることによりアスコン層の養生期間を短縮する方法に関し、この方法により舗装施工期間を大幅に短縮することができる。
【背景技術】
【0002】
通常、舗装施工では、基盤上にアスコン層を打設し、更にその上に、所要の舗装材料を用いて舗装層を積層して舗装施工を終えている。
アスコンは、砂利、砂等の骨材を、アスファルトをバインダーとして接着し構成されるものであり、舗装施工においては、通常、基盤上にアスコン層を打設して、その上に舗装層を積層している。
従来、舗装施工においては、アスコン層に舗装層を強固に積層するために、基盤上にアスコン層を打設後、2週間以上自然放置してアスコン層を養生し、その後、アスコン層上に各種舗装材料を打設し舗装層を形成している。この方法により、アスコン層とその上に打設される舗装層、例えば、ウレタン弾性層とが剥離しないような強固な舗装層が施工できる。
このような実用されている施工法では、アスコン層の長期に及ぶ養生期間中、舗装施工は待機せざるを得ないのが現状であり、施工効率を大きく低下させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、舗装施工において、基盤上にアスコン層を打設し、その上に舗装層を積層するに際し、アスコン層の養生期間を短縮する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記方法について鋭意検討し、打設したアスコン層の表面を洗浄しながらブラッシングすることにより、打設して2〜3日後に該アスコン層上に舗装層を施工しても、驚くべきことに、従来の長期間アスコン層を養生後に舗装層を施工した場合と同様の効果が得られ、その結果、舗装施工期間を大幅に短縮できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、舗装施工に於いて基盤上に打設されたアスファルトコンクリート層の表面を洗浄しながらブラッシングすることを特徴とするアスファルトコンクリート層の養生期間短縮方法であり、プラスチック製又はワイヤー製ブラシを装備した床洗浄機をアスファルトコンクリート層表面上に水又は砂を撒布しながら走行させるアスファルトコンクリート層の養生期間短縮方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法によれば、舗装施工工事に於いて、基盤上に打設されるアスコン層と該層上に積層される舗装層とを強固に施工するために不可欠とされているアスコン層の養生期間が大幅に短縮できるので、本発明の方法は舗装施工を短期間の工事で効率的に進められ、実用的な価値が極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における舗装施工工事とは、一般的に実施される公知の各種舗装工事を言う。例えば、ウレタン材料を用いる各種の陸上グラウンド、テニスコート等の競技場、その他各種球技場、並びにその周囲の舗装、道路、歩行路等の舗装が挙げられる。
このような舗装において、一般に基盤上にアスコン層を打設し、この層上にウレタン弾性層、エンボス層及びトップコート層等の所望の層を含む舗装層が積層施工される。
本発明に係るアスコン層とは、このような舗装に於いて、基盤層の上に打設される層である。アスコン層のアスファルトとしては、通常、舗装用として用いられるアスファルトであれば特に限定はない。石油系のストレートアスファルト、ゴム、樹脂などを改質剤として加えた改質アスファルト等が用いられる。
アスコンは、このようなアスファルトをバインダーとして用い、砂利、砂等の骨材と混合した混合物である。
【0007】
このように、アスファルトと砂利、砂等の骨材と混合物であるアスコンは、砂利、砂等の粒径、粒度分布の違いによる密粒度アスコン、粗粒度アスコン、開粒度アスコン等を含むが、本発明の方法ではいずれのアスコンであっても適用できる。
通常の舗装施工において、上記アスコン層の施工は、公知のアスファルト舗装要綱に準じ、砂利、砂等の骨材とアスファルトとの混合物を高温に加熱した加熱合材を舗装基盤上に敷き均し、その上をローラー等で転圧しアスコンを締め固め、密度を上げている。
【0008】
本発明の方法に於いては、その後、打設されたアスコン層の表面をブラッシングする。
アスコン層の表面をブラッシングするとは、アスコン層を打設後、放置冷却し、ブラシを取り付けた(予め装備されたものを含む)床洗浄機をアスコン層表面上に走行させブラッシングすることを言い、その際、必要により砂又は水を撒布して洗浄しながらブラッシングする。床洗浄機の走行は特に限定されず、任意の方向に、しかし均等に走行させる。通常、舗層面の長手方向に走行させる。
ブラッシングは、必要により硅砂、川砂等の砂を予め撒布又は撒布しながら、或いは水を予め撒布し、又は流しながら行なう。
アスコン層表面のブラッシングには、床洗浄用として多用されている各種の小規模床洗浄機から産業用床洗浄機(以下、本発明ではこれらの床洗浄機をスイーパーと言う)の中から、また対象となるアスコン層表面面積の大きさに対応して手動式から搭乗式等の各種スイーパーから、舗装施工の規模、作業に合わせて選択したスイーパーを適用することができる。
【0009】
これらのスイーパーには、舗装表面をブラッシングするためのブラシが取り付けられる。ブラシは特に限定されず、スイーパーに取り付け可能な、各種材料、例えばナイロン、ポリプロピレン、ファイバーやワイヤーなどで作られたブラシを使用できる。好ましくは、ナイロン、ポリプロピレン等のプラスチック製ブラシ又はワイヤー製ブラシ、特に好ましくはワイヤー製ブラシが用いられる。また、ブラシの形状は、特に限定されるものではなく、スイーパーに取り付け可能で、アスコン層表面上を旋回又は回転してブラッシングする効果を奏するものであればよい。係るブラシであれば、スイーパーに予め装備されているブラシであってもよい。
【0010】
なお、スイーパーとしては、例えば、アマノ株式会社製搭乗式掃除機(例えば、クリーンパワーJN−1200HV)、又は、テナントカンパニ社製の手動式、歩行式、乗用式等の各種スイーパーが挙げられ、またブラシとしてはこれらのスイーパーに具備する、又は取り付けられるナイロン、ポリプロピレン等のプラスチック製ブラシやワイヤーブラシなど、好ましくはワイヤー製ブラシである。これらのスイーパーに取り付けられるブラシは、アスコン層上を旋回するもの、又はスイーパーの進行方向に逆回転するもの等であり、スイーパーは、これらのブラシのいずれかを取り付けたものであっても、共に取り付けたものであってもよい。
【0011】
アスコン層上でスイーパーを走行させる方向、速度、及びブラシの回転数等には特に限定はない。スイーパーはアスコン層表面が縦横いずれの方向にも万遍なく、均一にブラッシングされるように走行させる。
この際、砂及び/又は水を撒布して、アスコン層を洗浄しながらスイーパーを走行させるとブラッシングの効果を高めることができる。しかしながら、砂及び/又は水の撒布は必ずしも必要ではない。
洗浄用の砂及び/又は水の撒布の手段は、特に限定されるものではなく、スイーパー走行と同時、又は事前に撒布してもよい。
以上のアスコン層表面のブラッシング処理を行なった後、通常、アスコン層表面を下地処理剤により下地処理し、その下地処理剤層の上に、更に舗装、特に弾性舗装を行なう。
舗装層は、例えば、弾性舗装では、舗装で好ましく常用されているポリウレタン舗装材を用いて舗装する。更に、舗装層にはエンボス層、更にその上にはトップコート層等が施工されてもよい。いずれも、公知の材料を用い、公知の方法で施工できる。
【0012】
本発明方法の具体的例は、実施例で詳しく説明するが、一般的な実施の態様は次のようである。
例えば、ウレタン材料を用いるテニスコート等の弾性舗装では、まず、舗装施工する路盤上に更に基盤となる層を施工し、その上に密粒度アスコンの加熱合材を打設する。アスコン層の表面は、ローラーを用い押圧し締め固め、表面を平らにする。
打設後、放置冷却し、冷却後、ポリプロピレンやナイロン等のプラスチック製ブラシ、又はワイヤーブラシを取り付けた、例えば、搭乗式スイーパーを散水しているアスコン層表面を舗装の長手方向に万遍なく均等に走行させ、アスコン層の表面を洗浄しながらブラッシングする施工を終える。
該表面が乾燥した後、アスコン層の表面にウレタン舗装のための下地処理剤を塗布し、その下地処理剤層の上に、ポリウレタン材料を用いて弾性舗装層の施工を行なう。
下地処理剤及びポリウレタン材料は特に限定されるものではなく、弾性舗装に好ましく使用される公知の材料が使用できる。
【0013】
従来、実施されている施工法では、アスコン層を打設後2週間以上、自然の環境下に放置し、天日、雨水に暴露して、アスコン層表面を劣化させ、このアスコン層上に舗装層を積層させていた。すなわち、アスコン層の打設からウレタン舗装層の打設まで15〜17日を要して、所望の剥離強度を示す弾性舗装層をアスコン層上に施工していた。
これに対して、本発明の方法によれば、アスコン層打設後、ウレタン舗装層を打設しても、従来、アスコン層打設後2週間以上自然放置し養生した後、ウレタン舗装層を打設していたものと同等の舗装効果が得られる。
すなわち、アスコン層を打設した翌日に、本発明の方法によりアスコン層表面を処理すると、アスコン層を14日間以上養生することなく、所望の剥離強度を有するウレタン舗装層を施工できる。
その結果、舗装施工の工期は著しく短縮されその効果は極めて大きい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例により詳しく説明する。なお、実施例及び比較例は某所における実際の舗装施工に際し、当事者以外の第3者に知られることのない状態で、併行して試験を実施した。
実施例1
基盤上に密粒度アスファルトコンクリート(13)を打設した。
打設後にナイロンブラシを取り付けた搭乗式スイーパー(クリーンパワーJN−1200HV、アマノ社製)をアスコン層表面上に散水しながら、縦横に均一に走行させて、アスコン層表面をブラッシングした。
さらにアスコン層表面が乾燥したのを確認して、舗装層の剥離試験用試料を調整した。
試料の調整は、基盤上に密粒度アスファルトコンクリートを打設する際、基盤上に採取する試料の数に応じた矩形の木枠を設置し、その上からアスコン層を打設した。
アスコン層をブラッシングした後、木枠から試料を取り外し、試験室に搬入し次の処理を行い、剥離強度を測定した。
すなわち、アスコン層の表面上に、次の下地処理剤を1.2kg/mで塗布した。
下地処理剤の処方
ストラクトボンド 2031(三井化学(社)製:エマルション) 27重量%
ポルトランドセメント 40〃
硅砂#7 40〃
水 5〜7〃
【0015】
更に、この下地処理を施した表面に次の処方のウレタン舗装材を打設した。
1)硬化剤Aの調製
硬化剤Aの組成
MOCA 15.0重量部
Diol−3000 25.0 〃
DOP 23.5 〃
タルク 16.0 〃
炭酸カルシウム 20.0 〃
LL690−D 0.5 〃
計 100.0重量部
なお、上記成分中、
MOCA:3,3’−ジクロル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
Diol−3000:三井武田ケミカル(株)製 ポリプロピレングリコール(OH価37.5)
DOP:ジオクチルフタレート
LL690−D:三共有機合成社製 ウレタン化触媒(Pb=17%)
である。
得られた硬化剤A100重量部を主剤P306(三井武田ケミカル(株)製、ウレタンプレポリマーNCO含有率2.9%)100重量部と攪拌混合する。
このウレタン材料を下地処理剤層上に6kg/mで打設した。
【0016】
ウレタン材料を打設して7日後に、得られた舗装層の90°剥離試験をJIS K 6854−1に準じ、温度20℃で行なった。
結果を実施例2、比較例1及び比較例2の結果と共に表1に示す。
【0017】
実施例2
実施例1におけるスイーパーにワイヤーブラシを取り付けた以外は実施例1と同様の方法で、アスコン層をブラッシングし、ついで同様にウレタン材料を打設し、さらに舗装層の90°剥離試験を行なった。結果を表1に纏めて示す。
【0018】
比較例1
実施例1と同様の方法で、基盤上に密粒度アスコン層を打設した。打設後、そのままの何も処理しないアスコン層上に、実施例1と同じ方法で下地処理剤を塗布し、さらにウレタン材料を打設した。ウレタン材料を打設して7日後、得られた舗装層の90°剥離試験を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に纏めて示す。
【0019】
比較例2
実施例1と同様の方法で、基盤上に密粒度アスコン層を打設した。打設後14日間屋外暴露し、そのままの何も処理しないアスコン層上に、実施例1と同じ方法で下地処理剤を塗布し、さらにウレタン舗装材を打設した。ウレタン材料を打設して7日後に、得られた舗装層の90°剥離試験を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に纏めて示す。
【0020】
【表1】

【0021】
上記実施例及び比較例より、アスコン層の後処理と養生期間のない比較例1では、アスコン層に打設された舗装層は、剥離強度が4.5kgf/25mmと極めて低い。従来、アスコン層の打設後2週間以上屋外暴露して舗装層を打設しているが、比較例2に示すように、アスコン層打設後17日間屋外暴露をした場合、剥離強度は16.1kgf/25mmである。
本発明の方法によれば、アスコン層打設後に、アスコン層表面に水を流しながらナイロンブラシを取り付けたスイーパーでブラッシングすると、剥離強度は15.3kgf/25mmであり、ワイヤーブラシを取り付けたスイーパーでブラッシングすると16.2kgf/25mmであり、17日間の屋外暴露の場合と同程度の剥離強度が得られる。
すなわち、本発明の方法によれば、アスコン層の打設から舗装層の打設までの期間がほぼ2週間短縮できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の方法は、舗装施工工事のアスコン層の打設から舗装層打設までの期間を、従来の施工に比べ大幅に短縮することができるので、舗装施工工事の合理化に大きく貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装施工に於いて基盤上に打設されたアスファルトコンクリート層の表面をブラッシングすることを特徴とするアスファルトコンクリート層の養生期間短縮方法。
【請求項2】
プラスチック製又はワイヤー製ブラシを装備した床洗浄機をアスファルトコンクリート層表面上に走行させ、表面を洗浄しながらブラッシングすることを特徴とする請求項1記載のアスファルトコンクリート層の養生期間短縮方法。