説明

アスファルト合材の貯蔵サイロ

【課題】 車両より直にアスファルト合材の投入を可能として投入装置を不要とし、装置コストが低廉で、設置や移設が容易な簡易型のアスファルト合材の貯蔵サイロを提供する。
【解決手段】 容器本体2の上側部を架台5上に起立及び横倒可能とした支持体6にて支持し、支持体6の上端部にシリンダー9のピストンロッド10の先端部を軸着する一方、シリンダー9の下端部を架台5に軸着した第一のリンク材12に軸着すると共に、第一のリンク材12の先端部に第二のリンク材15の一端部を軸着する一方、第二のリンク材15の他端部を支持体6の上端部に軸着するリンク機構を構成する。そして、シリンダー9を伸張させるとリンク機構を利用して容器本体2を起立姿勢としてアスファルト合材を車両に払い出し可能とする一方、シリンダー9を縮小させると容器本体2を地上面に横倒姿勢として車両より直にアスファルト合材を受け入れできるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトプラントで製造したアスファルト合材の供給を受けて一時的に貯蔵することのできる簡易型のアスファルト合材の貯蔵サイロに関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装材として用いられるアスファルト合材を製造するアスファルトプラント工場においては、施工現場への出荷をスムーズにするために、製造したアスファルト合材を大型の貯蔵サイロに一旦貯蔵することが一般的に行われている。また、都市部近郊の騒音規制の厳しい地域においてはアスファルトプラントの設置がなかなか難しいために、貯蔵サイロを都市部近郊に設置し、該貯蔵サイロに都市部より離れた場所に設置したアスファルトプラントにおいて製造したアスファルト合材を供給し、この貯蔵サイロを販売拠点としてアスファルトを販売することがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−204816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の貯蔵サイロは、いずれも定置式で、かつ自立式の大型のサイロであって、装置コストも高価なものであった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑み、車両より直にアスファルト合材の投入を可能として投入装置を不要とし、装置コストが低廉で、設置や移設が容易な簡易型のアスファルト合材の貯蔵サイロを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の貯蔵サイロでは、上部に投入ゲートを、下部に排出ゲートを備え、加熱保温構造とした容器本体の上側部を架台上に起立及び横倒可能とした支持体にて支持し、該支持体をシリンダーとリンク機構の組み合わせによって起立及び横倒自在とすると共に、容器本体の下側部に摺動ローラを備え、該摺動ローラを摺動させて容器本体を起立及び横倒させるように案内するガイドレールを配設し、前記シリンダーのピストンロッドを伸張すると容器本体下側部の摺動ローラがガイドレールに案内されながらリンク機構によって前記支持体を起立させて容器本体を起立姿勢としてアスファルト合材を車両に払い出し可能とする一方、シリンダーのピストンロッドを縮小させると前記支持体を横倒させて容器本体を地上面に横倒姿勢として車両より直にアスファルト合材を受け入れできる構成としたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載のアスファルト合材の貯蔵サイロでは、前記シリンダーとリンク機構の構成は、支持体の上端部にシリンダーのピストンロッドの先端部を軸着する一方、シリンダーの下端部を架台に軸着した第一のリンク材に軸着すると共に、第一のリンク材の先端部に第二のリンク材の一端部を軸着する一方、第二のリンク材の他端部を前記支持体の上端部に軸着するようにしたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項3記載のアスファルト合材の貯蔵サイロでは、容器本体の起立姿勢時に容器本体下側部の摺動ローラを下方より支持する支持材を進退自在に配設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るアスファルト合材の貯蔵サイロによれば、上部に投入ゲートを、下部に排出ゲートを備え、加熱保温構造とした容器本体の上側部を架台上に起立及び横倒可能とした支持体にて支持し、該支持体をシリンダーとリンク機構の組み合わせによって起立及び横倒自在とすると共に、容器本体の下側部に摺動ローラを備え、該摺動ローラを摺動させて容器本体を起立及び横倒させるように案内するガイドレールを配設し、前記シリンダーのピストンロッドを伸張すると容器本体下側部の摺動ローラがガイドレールに案内されながらリンク機構によって前記支持体を起立させて容器本体を起立姿勢としてアスファルト合材を車両に払い出し可能とする一方、シリンダーのピストンロッドを縮小させると前記支持体を横倒させて容器本体を地上面に横倒姿勢として車両より直にアスファルト合材を受け入れできる構成としたので、車両より直にアスファルト合材の投入を可能として投入装置が不要となって装置コストも低廉となり、また、設置や移設も容易に行うことができる簡易型サイロとなる。
【0009】
また、請求項2記載のアスファルト合材の貯蔵サイロによれば、前記シリンダーとリンク機構の構成は、支持体の上端部にシリンダーのピストンロッドの先端部を軸着する一方、シリンダーの下端部を架台に軸着した第一のリンク材に軸着すると共に、第一のリンク材の先端部に第二のリンク材の一端部を軸着する一方、第二のリンク材の他端部を前記支持体の上端部に軸着するようにしたので、ストロークの短いシリンダーでも容器本体を起立及び横倒可能となり、車両より直にアスファルト合材の投入を可能として投入装置が不要となって装置コストも低廉となる。
【0010】
また、請求項3記載のアスファルト合材の貯蔵サイロによれば、容器本体の起立姿勢時に容器本体下側部の摺動ローラを下方より支持する支持材を進退自在に配設したので、容器本体の起立姿勢を確実に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るアスファルト合材の貯蔵サイロにあっては、上部に投入ゲートを、下部に排出ゲートを備え、加熱保温構造とした容器本体を有し、該容器本体の上側部を架台上に起立及び横倒自在とした支持体にて支持し、該支持体を起立させて容器本体を起立姿勢としてアスファルト合材を車両に払い出し可能とする一方、前記支持体を横倒させて容器本体を地上面に横倒姿勢として車両より直にアスファルト合材を受け入れできる構成としている。この貯蔵サイロは、例えば、約20トン程度の少量の貯蔵容量とし、サイロ高さは約8m未満程度とする。
【0012】
前記容器本体を支持する支持体の起立及び横倒手段は、油圧シリンダーとリンク機構の適宜の組み合わせによって行う。例えば、支持体の上端部に油圧シリンダーのピストンロッドの先端部を軸着する一方、油圧シリンダーの下端部を架台に軸着した第一のリンク材に軸着すると共に、第一のリンク材の先端部に第二のリンク材の一端部を軸着する一方、第二のリンク材の他端部を前記支持体の上端部に軸着するリンク機構を採用する。このリンク機構では、油圧シリンダーのピストンロッドを伸張して支持体を起立させていくと、支持体に軸着した第二のリンク材が引っ張られていき、この第二のリンク材が第一のリンク材を引き起こすことで、第一のリンク材に軸着した油圧シリンダーが上昇していき、ストロークの短い油圧シリンダーでも容器本体を起立できる。
【0013】
また、容器本体の左右下側部に摺動ローラを備え、該摺動ローラを摺動させて容器本体を起立及び横倒させるように案内するガイドレールを配設している。また、容器本体の起立姿勢時に容器本体下側部の摺動ローラを下方から支持する支持材を進退自在に配設している。
【0014】
そして、容器本体内にアスファルト合材を投入するときには、上記油圧シリンダーのピストンロッドを縮小させることによって支持体を横倒させていけば、容器本体の下側部の摺動ローラがガイドレールに沿って摺動しながらリンク機構が折り畳まれて容器本体が地上面に横倒姿勢となる。容器本体が横倒姿勢となれば、投入ゲートを開放し、車両に積載したアスファルト合材を開放された投入口から容器本体内に直に投入する。
【0015】
また、アスファルト合材の投入が完了すれば、投入ゲートを閉鎖した後、油圧シリンダーのピストンロッドを伸張すると容器本体下側部の摺動ローラがガイドレールに案内されながらリンク機構が立ち上がって支持体を起立させて容器本体を起立姿勢とし、投入したアスファルト合材を容器本体の底部側に落とし込んで貯蔵保管する。そして、アスファルト合材の出荷時には容器本体の下位に車両を進入させてから排出ゲートを開放し、所定量計量して車両に払い出す。
【0016】
このように、上記アスファルト合材の貯蔵サイロは、油圧シリンダーとリンク機構の組み合わせによって容器本体を起立及び横倒できる簡易型の貯蔵サイロであって、アスファルト合材を投入するときには容器本体を地上面に横倒させることで車両から直に投入可能となり、投入装置を不要として装置コストの低廉化を図ると共に、簡易型の貯蔵サイロとして設置や移設も容易に行うことが可能である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0018】
図中の1はアスファルト合材貯蔵用の貯蔵サイロであって、アスファルト合材を貯蔵する容器本体2は、例えば、略20t程度の貯蔵容量で、高さは略8m未満程度としたコンパクトサイズとし、貯蔵物であるアスファルト合材の温度低下による硬化・劣化を極力防止するためにその周壁には加熱保温構造を施していると共に、容器本体2の下部は下方に向けて先細りとした逆截頭円錐状としてその下端には排出ゲート3を開閉自在に備えている一方、容器本体2の天井部は、その一部を切り欠いたような形状としており、その切り欠き部分にはアスファルト合材投入用の投入ゲート4をシリンダー(図示せず)によって開閉自在に取り付けている。
【0019】
前記容器本体2は略門形状とした架台5上に設置されるもので、該架台5はアスファルト合材搬入及び搬出用の車両が進入可能な程度の幅を有している。前記架台5には容器本体2の上側部を支持する支持体6の一対の支柱6aの下端部のそれぞれが軸体7にて回動自在に軸着されている一方、一対の支柱6aの上端部間に掛け渡した横材6bと容器本体2とは軸体8にて2カ所ほど軸着して回動自在としている。
【0020】
前記支持体6を起立及び横倒させるために、支持体6の上端の横材6bの両端側に油圧シリンダー9のピストンロッド10の先端部を軸体11にて回動自在に軸着する一方、油圧シリンダー9の下端部を略三角形状をした第一のリンク材12の中間部付近に軸体13にて回動自在に軸着すると共に、第一のリンク材12の下端部を架台5に軸体14にて回動自在に軸着している。また、第一のリンク材12の先端部に第二のリンク材15の一端部を軸体16にて回動自在に軸着する一方、第二のリンク材15の他端部を支持体6の上端の横材6bに軸体17にて回動自在に軸着するリンク機構としている。
【0021】
前記第一のリンク材12及び第二のリンク材15によるリンク機構を採用しているのは、油圧シリンダー9のみによって容器本体2を起立させるにはシリンダーストロークが短いためであり、油圧シリンダー9のピストンロッド10を伸張して支持体6を起立させていくと、支持体6に軸着した第二のリンク材15が引っ張られていき、この第二のリンク材15が第一のリンク材12を引き起こすようになり、これによって油圧シリンダー9が上昇していき、ストロークの短い油圧シリンダー9でも容器本体2を起立できるようにしている。
【0022】
容器本体2の左右下側部には一対の摺動ローラ18を取り付けていると共に、容器本体2の横倒及び起立時に前記摺動ローラ18を案内する一対のガイドレール19を架台5上に配設している。そして、油圧シリンダー9のピストンロッド10を縮小すると、図4のように、第一のリンク材12と第二のリンク材15が折り畳まれていくと同時に一対の摺動ローラー18がガイドレール19に案内されて容器本体2の横倒がスムーズに行われる。また、容器本体2の起立時に摺動ローラ18を下方から支持するための支持材20がシリンダー21により進退自在に取り付けられている。なお、22は支持体6を水平に横倒させたときに支える支持台である。
【0023】
次に、上記貯蔵サイロ1の容器本体2へのアスファルト合材の投入及び排出手順について説明する。先ず、アスファルト合材を容器本体2に投入するときには、図6に示すように、油圧シリンダー9のピストンロッド10を縮小して第一のリンク材12と第二のリンク材15を折り畳みながら支持体6を傾倒させていくと、容器本体2の摺動ローラ18がガイドレール19に案内されながら容器本体2が次第に横倒しとなり、地上面まで降下したときには、容器本体2は略90度回転して横倒姿勢の状態となる。
【0024】
続いて、容器本体2の投入ゲート4を開放した後、車両Aに搭載したアスファルト合材を直に容器本体2内に投入する。アスファルト合材を所定量だけ投入すると油圧シリンダ9のピストンロッド10を少し伸張させて容器本体2を少し起きあがらせてアスファルト合材を容器本体2の底部側へと落とし込む。その後、再度、油圧シリンダ9のピストンロッド10を縮小させて容器本体2を横倒姿勢として車両Aからアスファルト合材を再度投入する。この動作を何回か繰り返して車両Aに搭載したアスファルト合材の全てを容器本体2内に投入する。
【0025】
アスファルト合材の投入が完了すると、図7に示すように、投入ゲート4を閉塞してから油圧シリンダー9のピストンロッド10を伸張して支持体6を起こすことで、容器本体2の摺動ローラ18をガイドレール19に沿わせながら容器本体2を起こしていき、第二のリンク材15の立ち上げによって第一のリンク材12を引き上げて油圧シリンダー9を上昇させながら容器本体2を起立姿勢とする。そして、アスファルト合材を出荷するときには、車両Aを進入させて容器本体2の下位へ配置させた後、排出ゲート3を開放して計量機構(図示せず)にて払い出し量を計量しつつ所定量のアスファルト合材を車両Aに払い出して出荷する。
【0026】
このように、貯蔵サイロ1は、容器本体2を油圧シリンダー9とリンク材12、15のリンク機構を利用して起立及び横倒自在とした簡易型のコンパクトな構造とし、容器本体2へのアスファルト合材投入装置である垂直搬送装置を不要としたので、装置コストも低廉で、かつ設置や移設も容易に行える。また、サイロ高さを8m未満とすれば工作物の許可申請が不要となり、かつコンパクトな構造であるので、都市部のどこへでも設置または移設してアスファルト合材の販売拠点とすることができて好都合なものとなる。
【0027】
なお、容器本体2を起立及び横倒させるシリンダー9とリンク機構の組み合わせは、上述の実施例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るアスファルト合材の貯蔵サイロの一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図1の貯蔵サイロの容器本体を横倒姿勢とした正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】容器本体を横倒姿勢として地上面に降下させ、アスファルト合材を投入する状態を示す図である。
【図7】容器本体を起立姿勢とし、車両にアスファルト合材を排出する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1…貯蔵サイロ 2…容器本体
3…排出ゲート 4…投入ゲート
5…架台 6…支持体
9…油圧シリンダー 10…ピストンロッド
12…第一のリンク材 15…第二のリンク材
18…摺動ローラ 19…ガイドレール
20…支持材 21…シリンダー
A…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に投入ゲートを、下部に排出ゲートを備え、加熱保温構造とした容器本体の上側部を架台上に起立及び横倒可能とした支持体にて支持し、該支持体をシリンダーとリンク機構の組み合わせによって起立及び横倒自在とすると共に、容器本体の下側部に摺動ローラを備え、該摺動ローラを摺動させて容器本体を起立及び横倒させるように案内するガイドレールを配設し、前記シリンダーのピストンロッドを伸張すると容器本体下側部の摺動ローラがガイドレールに案内されながらリンク機構によって前記支持体を起立させて容器本体を起立姿勢としてアスファルト合材を車両に払い出し可能とする一方、シリンダーのピストンロッドを縮小させると前記支持体を横倒させて容器本体を地上面に横倒姿勢として車両より直にアスファルト合材を受け入れできる構成としたことを特徴とするアスファルト合材の貯蔵サイロ。
【請求項2】
前記シリンダーとリンク機構の構成は、支持体の上端部にシリンダーのピストンロッドの先端部を軸着する一方、シリンダーの下端部を架台に軸着した第一のリンク材に軸着すると共に、第一のリンク材の先端部に第二のリンク材の一端部を軸着する一方、第二のリンク材の他端部を前記支持体の上端部に軸着するようにしたことを特徴とする請求項1記載のアスファルト合材の貯蔵サイロ。
【請求項3】
容器本体の起立姿勢時に容器本体下側部の摺動ローラを下方より支持する支持材を進退自在に配設したことを特徴とする請求項1または2記載のアスファルト合材の貯蔵サイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144540(P2008−144540A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335600(P2006−335600)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【Fターム(参考)】