説明

アスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材

【課題】表面の平滑度を粗くすることにより、アスファルト合材との付着面積を増やすことができ、その結果として、芯材として性能を向上させ、成形品であるアスファルトマットの強度、変形量を増加させることが可能となるアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材を提供する。
【解決手段】ガラス繊維製のテープを用いて、縦方向テープ13と横方向テープ14によるテープ補強部材12を構成してなるアスファルトマットの合材もしくはその成形品の内部補強部材において、テープはたて糸にガラスロービング、たてからみやよこ糸にバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた織物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンのような構造物を用いて構築する防波堤や岸壁、護岸等の海洋構造物に関し、基礎捨石マウンドの上での摩擦力を増大させるために構造物の底に配置するアスファルト合材もしくはその成形品であるアスファルトマットの内部に配置する内部補強部材として、特に、ガラス繊維等により構成されたテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
潮流の速度が速い海域で、捨石基礎を保護するためには、例えば、下記特許文献1等に示されるように、アスファルト合材であるアスファルトマスチックを捨石基礎の斜面部に打設することが知られている。
【特許文献1】特公平7−42701号公報
【0003】
捨石基礎の斜面部にアスファルトマスチックによる被覆を形成することにより、潮流の速い場所で、捨石基礎を構成する石が潮流により流されたりすることを防止でき、構造物の支持作用を良好に発揮できるものとされる。また、海底にアスファルトマスチックの層を形成することは、捨石基礎を不透水層として構成するためにも行われているもので、例えば、廃棄物を埋め立てるための管理型護岸等においても、アスファルトマスチックを所定の厚さの層として打設することが行われている。そして、アスファルトマスチックを捨石基礎の表面等に直接打設する工法を用いる場合には、シート状の止水材料を用いる場合に比較して、止水層構築作業を容易に行うことができるとともに、止水層の安定性を向上させることができる。
【0004】
また、海底地盤を洗掘から保護するためや、海中構造物の基礎の支持のために、従来よりアスファルトマットが使用されており、海底地盤上に敷設する大サイズのマットにおいては、長さが10〜20m、巾が5.5m程度で、厚さが5〜20cm程度に構成されている。
【0005】
前記アスファルトマットは、例えば、図4に示すように構成されるもので、厚さ方向の中間部に内部補強部材4を埋設して設け、荷役に使用するワイヤロープ3……を一定の間隔で配置して、アスファルトマット1を構成している。
【0006】
図3はかかるアスファルトマット1の作成要領を示すもので、アスファルトプラント7によりアスファルト合材(ストレートアスファルト+ブローンアスファルト等に対して、フィラー、細骨材等を混合して形成する)の混合を行い、このアスファルト合材を合材保温バケット8により運搬する。
【0007】
運搬されたアスファルト合材は合材保温バケット8からアスファルトクッカー9に供給され、ここでアスファルトマスチックの稠合・混練が行われる。
【0008】
アスファルト合材の打設として、予めセットした型枠10に、図4の下部層のアスファルト2aを所定の厚さで施工し、その下部層2aのマットの上に所定の間隔でワイヤ3を配置し、鉄板等の止め板部材3b……を置いてから、その上にガラステープやガラスクロスを用いた内部補強部材4を一体に配置する。
【0009】
さらに、前記内部補強部材4の上面に上部層2のアスファルト合材を施工して、前記内部補強部材を介して上下部層のアスファルト合材層を、前記内部補強部材と一体化する状態で接続している。
【0010】
前記アスファルト層の中間部に配置するワイヤ3は、マットの外側に突出させた部分の端部にアイ部3aを設けている。
【0011】
前記ワイヤ3に対して、マット内部には止め板部材3b……を所定の間隔で配置して、マットの内部でのワイヤの固定作用を発揮させる。
【0012】
前述したようにしてワイヤ3をマット内部に固定することにより、マットの荷役を行う際に、張力が付与されたワイヤ3がマットの上部層を破って突き抜けたりすることを防止し、大サイズで、重量の大きなマットを吊り上げて荷役する際の安全性を持たせている。
【0013】
このように成形したアスファルトマット1は、水平吊金具11により水平状態で吊り上げ、仮置きされる。
【0014】
前記図4に示した内部補強部材4としては、例えば、下記特許文献2では、図5に示すようなガラステープ5を用いており、このガラステープ5は、ガラス繊維の縦糸群を、細い横糸により編み込んで構成するテープ6を用いている。
【特許文献2】実公昭60−3135号公報
【0015】
この特許文献2では、テープ6は一定間隔で平行に並べ、これと直交する糸7群で連結され、開口部8が列状に配置されている。テープ6は、両側により糸を配してほつれ防止と幅を確保している。
【0016】
さらに、下記特許文献3には、前記ガラス繊維製のテープ6を用いて、テープ補強部材12を構成して、マットの内部補強部材として使用する場合を示している。
【特許文献3】特開平10−168853号公報
【0017】
前記テープ補強部材12において、縦方向テープ13と横方向テープ14は、平織、綾織り等の織り方により、任意の巾を有するテープとして構成されている。
【0018】
前記テープ補強部材12を作成する際には、図5に示すようなガラステープ5を2枚重ね合わせ、テープ6同士を相互に直交するように置けばよい。
【0019】
下部層のアスファルト合材を施工した上に縦方向テープ13を所定の間隔で敷き並べるようにして施工し、その後に、前記縦方向テープ13に対して直交させる状態で、横方向テープ14を一定の間隔で配置する。
【0020】
この場合には、前記縦横のテープ13、14はアスファルトまたは樹脂材料で含浸されているものである。
【0021】
このようにすれば、図6に示すように、縦方向テープ13と横方向テープ14の配置による格子状のテープ補強部材12を構成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
下記表1は従来のテープ6、すなわち、テープ補強部材12としての縦方向テープ13および横方向テープ14の組成をしめすものである。
【0023】
[表1]

ガラス繊維(グラスファイバー)には大きく分けて長繊維、短繊維があり、長繊維は融けたガラスを高速ワインダーで巻き取った糸状のものをいい、短繊維とは、融けたガラスを遠心力または火炎で吹き飛ばし、綿状にしたものをいう。ガラスヤーンおよびガラスロービングは長繊維である。
【0024】
前記表1に示す従来のテープ6は、使用糸はたて糸にはガラスロービング、たてからみには、綿混紡糸、よこ糸にはガラスヤーンを使用している。
【0025】
ガラスヤーンは、原料のガラスを千数百度の高温下で細いフィラメント(単繊維)に溶融紡糸し、その50〜200本を集束剤で集束したものをストランドと呼び、これに撚りをかけたもの、ガラスロービングは撚りをかけずに多数本引き揃えたものである。
【0026】
前記テープ組立補強部材のガラス繊維製のテープ6は、表面が平滑であり、アスファルト合材との付着が十分でない。
【0027】
前記アスファルトマットの内部にテープ組立補強部材を配置する場合に、テープ部材は上下部のアスファルト層に対してアスファルト成分を介して接着されるものであり、マットに衝撃が加えられたりして、アスファルト層からテープ部材を引き剥がすような作用が付与された場合に、テープが容易に剥がれることがある。
【0028】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、表面の平滑度を粗くすることにより、アスファルト合材との付着面積を増やすことができ、その結果として、芯材として性能を向上させ、アスファルトの強度、変形量を増加させることが可能となるアスファルトマットの内部補強部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は前記目的を達成するため、たて糸にガラスロービング、よこ糸にバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた織物であること、もしくは、たて糸のうち、たてからみにもバルキー加工を施したガラスヤーンを用いる織物であること、さらに、織物は、平織であること、もしくは、8枚朱込織であることを要旨とするものである。
【0030】
バルキー加工は嵩高加工であり、ガラスヤーンの撚糸(撚り)加工時にエアージェットを吹きかけストランドを不均一化し、嵩を増した加工である。
【0031】
本発明によれば、ガラス繊維製のテープを用いて、縦方向テープと横方向テープによるテープ補強部材を構成してなるアスファルトマットの内部補強部材において、テープはたて糸にガラスロービング、よこ糸にバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた織物、もしくは、たてからみにもバルキー加工を施したガラスヤーンを用いる織物からなるので、嵩高性、断熱性、柔軟性、樹脂含浸性、クッション性、または、FRP層間剥離強さ、装飾性などに優れたものとなる。
【発明の効果】
【0032】
以上述べたように本発明のアスファルトマットの内部補強部材は、ガラス繊維製のテープを用いて、縦方向テープと横方向テープによるテープ補強部材を構成してなるアスファルトマットの内部補強部材において、テープの表面の平滑度を粗くすることにより、アスファルト合材との付着性を向上させ、付着面積を増やすことができ、その結果として、芯材として性能を向上させ、アスファルト合材の強度、変形量を増加させることが可能となるものである。
【0033】
また、テープのアスファルト合材との付着性を向上させることで、テープはテープ補強部材として、上下部のアスファルト層に対してアスファルト成分を介して接着されるものであり、マットに衝撃が加えられたりして、アスファルト層からテープ部材を引き剥がすような作用が付与された場合でも、テープが容易に剥がれることがない。
【0034】
したがって、アスファルトマットに要求される耐衝撃性に十分に対処させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のアスファルトマットの内部補強部材も、図5、図6に示すような、ガラス繊維製のテープを用いて、縦方向テープ13と横方向テープ14による格子状のテープ補強部材12を構成してなるものである。
【0036】
このテープ補強部材12をアスファルトマットの内部補強部材として使用する場合には、開口部16の大きさを任意に設定できるものであるから、アスファルトマットを構成する上下部のアスファルト層が直接に接する面積を、自由に選択することが可能である。
【0037】
また、前記テープは、任意の巾と厚さを有するものとして構成できるものであることから、アスファルトマットが受ける衝撃の大きさに対応させて、テープの強度を適宜選択することが可能であり、テープ補強部材を形成する作業も容易にできるものである。
【0038】
一例として前記ガラス繊維製のテープは、幅2cm程度で、テープ組立補強部材12は縦方向テープ13と横方向テープ14を目(開口部16)の間隔1cm以上、4cm以下で格子状に配列したものとする。
【0039】
本発明は、これら縦方向テープ13と横方向テープ14のテープはたて糸にガラスロービング、よこ糸およびたてからみにバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた平織の織物からなるものとした。図1に平織の構造と組織を示す。
【0040】
平織は、たて(縦)糸とよこ(横)糸を交互に浮き沈みさせて織る最も単純な織物組織で、摩擦や引張に強い。
【0041】
下記表2にテープの組成を示す。
[表2]
(平織)

【0042】
本発明は、前記のようによこ糸のみならず、たてからみにもバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた。なお、たてからみには、綿混紡糸も用いる。
【0043】
バルキー加工は、嵩高加工であり、ガラスヤーンの撚糸(撚り)加工時にエアージェットを吹きかけストランドを不均一化し、嵩を増した加工である。
【0044】
ガラスヤーンは融けたガラスを高速ワインダーで巻き取った糸状のものをいい長繊維であり、原料のガラスを千数百度の高温下で細いフィラメント(単繊維)に溶融紡糸し、その50〜200本を集束剤で集束したものをストランドと呼び、これに撚りをかけたものである。
【0045】
たてからみは、テープのほつれ防止と幅を確保するものであるが、よこ糸のみならず、このたてからみにもバルキー加工を施したガラスヤーンを用いることで、アスファルト合材との付着性をより向上させることができる。
【0046】
また、下記表3は前記表1での従来例との押し抜き試験での比較を示すものである。この押し抜き試験は前記幅2cm程度のガラス繊維製のテープで、縦方向テープ13と横方向テープ14を目(開口部16)の間隔1cm以上、4cm以下で格子状に配列したテープ補強部材12を使用したアスファルトマットによるものである。
[表3]
押し抜き試験結果

最大荷重(kN)と変位量(mm)の結果を示す。ただし、結果は従来タイプの平均値を1.00とした場合に対する比率で示す。
【0047】
本発明の第2実施形態として、テープを構成する織物は、8枚朱込織とした。8枚朱込織はたて(縦)糸・よこ(横)糸8本から構成される織物組織であり、たて・よこのどちらかの糸の浮が非常に少なく、組織点が平織や綾織のように規則的に連続せず、たて糸またはよこ糸のみが表に表れるように見える。密度が高く、地は厚いが、柔軟性に長け、光沢が強い。図2に組織図を示す。
【0048】
下記表4にテープの組成を示す。
[表4]
(8枚朱込織)

【0049】
また、下記表5は前記表4での従来例と本発明品のテープによる組立補強部材を使用したアスファルトマットの押し抜き試験での比較を示すものである。
[表5]
押抜き試験結果

最大荷重(kN)と変位量(mm)の結果を示す。ただし、結果は従来タイプの平均値を1.00とした場合に対する比率で示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のアスファルトマットの内部補強部材のテープの平織の構造と組織を示す説明図である。
【図2】本発明のアスファルトマットの内部補強部材のテープの8枚朱込織の組織を示す説明図である。
【図3】アスファルトマットの作成要領を示す説明図である。
【図4】一般的なアスファルトマットの構成を示す説明図である。
【図5】ガラステープの構成を示す説明図である。
【図6】テープ補強部材の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1…アスファルトマット
3 …ワイヤ
4 …内部補強部材
5 …ガラステープ
6…テープ
7…糸
12…テープ補強部材
13…縦方向テープ
14…横方向テープ
16…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維製のテープを用いて、縦方向テープと横方向テープによるテープ補強部材を構成してなるアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材において、テープはたて糸にガラスロービング、よこ糸にバルキー加工を施したガラスヤーンを用いた織物からなることを特徴としたアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材。
【請求項2】
たて糸のうち、たてからみにも、バルキー加工を施したガラスヤーンを用いる請求項1記載のアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材。
【請求項3】
織物は、平織である請求項1または請求項2記載のアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材。
【請求項4】
織物は、8枚朱込織である請求項1または請求項2記載のアスファルト合材もしくはその成形品の内部補強部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−1932(P2012−1932A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136346(P2010−136346)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000230711)日本海上工事株式会社 (25)
【Fターム(参考)】