説明

アスファルト混合物

【課題】わだち掘れやねじれ破壊を防止し、かつ耐油性が高い舗装を得ることができるアスファルト混合物であって、舗装面に油漏れがあっても、舗装の破壊を防止し、わだち掘れやねじれ破壊などの発生を防ぐことができるアスファルト混合物を提供すること。
【解決手段】骨材、ポリアミド樹脂、及びアスファルトを含むアスファルト混合物であって、前記ポリアミド樹脂の軟化点が60℃以上150℃以下であり、当該ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で3〜90質量%であることを特徴とするアスファルト混合物。
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物に関し、さらに詳しくは、耐油性が高く、耐久性に優れる舗装を可能にするアスファルト混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道などの舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむため、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が多く行われている。例えば、現在のわが国の自動車道では、全舗装路面の95%がアスファルト舗装となっている。
このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されており、良好な硬度や耐久性を有している。
しかしながら、アスファルトは、石油の精製により製造されるものであるため、同じ石油精製品であるガソリン、軽油、重油、灯油、エンジン用潤滑油などに溶解する性質を持っている。そのため、車両などからの燃料や潤滑油が漏れるなどの原因でこれらの油が路面に漏れた場合、早期にアスファルトが溶解し、アスファルト混合物が侵され、ポットホールなどの舗装破壊につながっていた。したがって、舗装の補修を行う必要が生じ、維持費用が増大するとともに、自動車の交通に大きな影響を与える結果となっていた。
【0003】
このような問題の対策としては、セメントコンクリート舗装がアスファルト舗装と比較して耐油性があり、耐久性に優れているが、セメントの養生時間が長く必要なため施工速度が遅く、かつ補修の際にコンクリート板の撤去が必要であるなど、交通への大きな影響を回避することは極めて困難であるため採用しがたいのが現状である。
これに対し、施工速度が速いアスファルト系混合物を使用する方法として、比較的耐油性を有する半たわみ性混合物による舗装が考えられる。これは、開粒度のアスファルト混合物の空隙に、セメントミルクを充填して硬化させたものである。半たわみ性混合物を用いる舗装は、セメントの硬化によりわだち掘れに強く、耐久性に優れた舗装である。しかしながら、半たわみ性混合物は、通常のアスファルト混合物と比較すると耐油性が認められるものの、母体開粒度アスファルト混合物を施工した後に、アスファルト混合物の空隙内にセメントミルクを注入するという工程が必要であることから施工が煩雑であり、通常のアスファルト混合物と比較して2倍以上の施工時間を要するというセメントコンクリート舗装と同様の欠点がある。
また、別のアスファルト系混合物を使用する方法として、比較的耐油性を有するエポキシ樹脂を使用するエポキシアスファルト混合物がある。これは、アスファルトのおよそ15〜30%をエポキシ樹脂に置き換えたものである。ここで使用するエポキシ樹脂は、主剤と硬化剤の2液からなる反応性樹脂である。エポキシ樹脂硬化物は油に溶けないため、比較的耐油性があるとともに、エポキシ樹脂の硬化によりわだち掘れに強く、耐久性に優れた舗装となる。
しかしながら、エポキシアスファルト混合物は、エポキシ樹脂の反応により硬化するため、混合時の温度により施工性が大きく左右され、混合温度が高すぎると早期に硬化して施工ができない場合があったり、混合温度が低すぎると硬化が遅れて交通開放時間が伸びたり、交通解放後に早期にわだち掘れが発生するなど問題がある。また、2液性であるためエポキシ樹脂の添加に特殊な装置が必要ある。
また、さらに別の対策としては、アスファルトにSBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)などに代表される熱可塑性エラストマーを配合することからなる改質アスファルトを利用することが考えられる。事実、改質アスファルトは、アスファルト舗装のわだち掘れやひび割れに対する抵抗性を高める効果があり、近年、多くの利用実績がある。しかしながら、改質アスファルトは、粘性が高いためストレートアスファルトよりは耐油性が高いと考えられるが、多くの熱可塑性エラストマーは石油製品であることから、石油系油に溶けやすい性質があり、ポットホール等の破壊の発生は避けられない。
このように、従来から知られた方法では、上記問題の解決は困難な状況にある。
【0004】
一方、アスファルト舗装の物性強化策としては、種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、アスファルト合材の補強材料として、繊維径が12μの芳香族ポリアミド繊維の繊維束を塩化ビニル樹脂にて被覆した面状態からなる網状体を用い、それをアスファルト合材中にグリッド状に配置することによってアスファルト合材のわだち防止性を高めることができることを開示している。
しかしながら、通常このような繊維形状のものは、ポリアミドの配合量を増やすことは困難であり、作業性を考慮すると、アスファルトに対して多くとも数%程度の配合が限界である。また、このような繊維状ポリアミドを配合したアスファルトは、加熱混合及び締固を行って舗装してもポリアミド繊維が均一に分散することは困難である。その結果、油が舗装面に漏れた場合に耐油性を発揮できない。さらに、特許文献1に記載の施工方法は、繊維と熱可塑性樹脂で一体化した網状体を道路の路面上に敷設し、その上からアスファルト合材を敷設する方法が用いられるため、施工工程が多く施工に多くの時間がかかる欠点もある。
このようなことから、敷設が比較的容易であり、施工速度が速く、舗装作業開始から交通開始までの時間が短いなどの利点を生かした上で、耐油性が優れ、耐久性が高い舗装を実現できるアスファルト混合物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−17304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、わだち掘れやねじれ破壊を防止し、かつ耐油性が高い舗装を得ることができるアスファルト混合物であって、舗装面に油漏れがあっても、舗装の破壊を防止し、わだち掘れやねじれ破壊などの発生を防ぐことができるアスファルト混合物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の優れたアスファルト混合物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、骨材、特定のポリアミド樹脂、及びアスファルトを配合したアスファルト混合物が、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕骨材、ポリアミド樹脂、及びアスファルトを含むアスファルト混合物であって、前記ポリアミド樹脂の軟化点が60℃以上150℃以下であり、当該ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で3〜90質量%であることを特徴とするアスファルト混合物、
〔2〕ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で10〜70質量%である前記〔1〕に記載のアスファルト混合物、
〔3〕ポリアミド樹脂の軟化点が、70℃以上140℃以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載のアスファルト混合物、
〔4〕ポリアミド樹脂の180℃における溶融粘度が、2000mPa・s以下のものである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のアスファルト混合物、
〔5〕ポリアミド樹脂の180℃における溶融粘度が、1000mPa・s以下のものである前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のアスファルト混合物、
〔6〕ポリアミド樹脂が、脂肪族モノカルボン酸及び重合脂肪酸を含むカルボン酸成分とポリアミンを含むアミン成分とを縮合させて得られたものである前記[1]〜〔5〕のいずれかに記載のアスファルト混合物、
〔7〕前記カルボン酸成分の脂肪族モノカルボン酸が、カルボン酸成分全量基準で、10〜50モル当量%である前記〔6〕記載のアスファルト混合物、
〔8〕前記脂肪族モノカルボン酸が、炭素数1〜4の脂肪族モノカルボン酸と炭素数12〜22の脂肪族モノカルボン酸との混合物である前記〔6〕又は〔7〕に記載のアスファルト混合物、
〔9〕前記アミン成分のポリアミンが、脂肪族ジアミンと脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ポリアミンとの混合物である前記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載のアスファルト混合物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、わだち掘れやねじれ破壊を防止し、かつ耐油性が高い舗装を得ることができるアスファルト混合物であって、舗装面に油漏れがあっても、舗装の破壊を防止し、わだち掘れやねじれ破壊などの発生を防ぐことができるアスファルト混合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、骨材、ポリアミド樹脂、及びアスファルトを含むアスファルト混合物である。以下、これらの各成分について説明する。
〔ポリアミド樹脂〕
本発明で用いるポリアミド樹脂(熱可塑性ポリアミド樹脂)は、軟化点が60℃以上150℃以下であることが必要である。軟化点が60℃未満のものを用いると、夏季において、舗装路面が上昇した場合にわだち掘れの発生を抑制できないことがある。また、軟化点が150℃を越えるものを用いると、アスファルト混合物の粘度が上昇し、作業性(施工性)を阻害することがあり、また、適切な密度を有する舗装が得られず、耐久性が不足することがある。したがって、ポリアミド樹脂の軟化点は、70℃以上140℃以下であることがより好ましく、90℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、さらに180℃における溶融粘度が2000mPa・s以下であることが好ましい。180℃における溶融粘度が2000mPa・s以下であれば、作業性(施工性)を阻害することがなく、適切な密度で、耐久性が良好な舗装を得ることができる。180℃における溶融粘度は、1000mPa・s以下であることがより好ましい。一方、180℃における溶融粘度は、50mPa・s以上であることが好ましい。50mPa・s以上であればポリアミド樹脂とアスファルトとの分散性を良好に保つことができる。
したがって、作業性(施工性)並びにポリアミド樹脂とアスファルトとの分散性の観点から、180℃における溶融粘度は50〜2000mPa・sであることが好ましく、50〜1000mPa・sであることがより好ましい。
なお、ポリアミド樹脂の軟化点は、JIS K 2531−1960に基づく環球法で測定することができる。また、ポリアミド樹脂の溶融粘度は、振動式粘度計CJV−2000(秩父セメント社製)を用いて測定することができる。
【0012】
上記の物性を有するポリアミド樹脂としては、アミド結合(−CONH−)を有する高分子化合物であれば、いかなる化学構造を有するポリアミド樹脂を使用してもよい。したがって、例えば、主として脂肪族骨格からなるナイロンであっても、主として芳香族骨格をもつアラミドであってもよく、さらにはそれら以外のものでもよい。
これらのポリアミド樹脂の多くは市販されていて、所望の物性を有するものを容易に入手することができる。
【0013】
ポリアミド樹脂は、通常環状ラクタムの開環重合反応や、アミノ酸やその誘導体の自己縮合反応、ポリカルボン酸とアミン化合物との縮重合反応などにより得られる。
ポリカルボン酸とアミン化合物との縮重合反応によるポリアミド樹脂は、例えば以下のようにして製造される。
縮重合反応の一方の原料であるポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸(好ましくはアルケニル基が炭素数4〜20のアルケニルコハク酸)、ダイマー酸(例えば、植物油脂から得られるダイマー酸など)、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの二価カルボン酸、さらには、2,4−ベンゼントリカルボン酸などの三価カルボン酸などが挙げられる。
また、縮重合反応の他方の原料であるアミン化合物としては、ポリアミン、アミノカルボン酸、アミノアルコールなどが挙げられる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族トリアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミンが挙げられる。アミノカルボン酸としては、メチルグリシン、トリメチルグリシン、6−アミノカプロン酸、δ−アミノカプリル酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、プロパノールアミンなどが挙げられる。
これら原料として使用される各化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
上記ポリカルボン酸とアミン化合物とを縮合(縮重合)反応させてポリアミド樹脂を得る。
【0014】
さらに本発明においては、前記ポリカルボン酸に換えて、脂肪族モノカルボン酸と重合脂肪酸を含むカルボン酸成分を用い、前記アミン化合物としてポリアミンを含むアミン成分を用い、それらカルボン酸成分とアミン成分とを縮合させて得られるポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
このようなポリアミド樹脂であれば、本発明に用いるポリアミド樹脂に要求される軟化点や溶融粘度などの特性を満たすものを容易に見出すことができ、わだち掘れやねじれ破壊の防止及び耐油性の向上をさらに図ることができる。
例えば、カルボン酸成分として脂肪族モノカルボン酸と重合脂肪酸とを用いることによって、得られるポリアミド樹脂の溶融粘度を調整することが容易となる。通常、脂肪族モノカルボン酸の割合を多くすると溶融粘度が低下する傾向がある。
【0015】
前記カルボン酸成分を構成する脂肪族モノカルボン酸と重合脂肪酸の配合割合は、カルボン酸成分全量基準で、前者が10〜50モル当量%、後者が50〜90モル当量%であることが好ましく、前者が10〜30モル当量%、後者が90〜70モル当量%あることがより好ましい。
また、前記カルボン酸成分には、脂肪族モノカルボン酸及び重合脂肪酸以外にその他のカルボン酸を加えてもよい。その他のカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族カルボン酸が挙げられる。当該その他のカルボン酸は、カルボン酸成分全量基準で0〜40モル当量%の範囲で配合することが好ましく、0〜20モル当量%の範囲で配合することがより好ましい。
【0016】
前記脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜22の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素数3〜20の脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。
当該脂肪族モノカルボン酸は、さらに炭素数1〜4の脂肪族モノカルボン酸と炭素数12〜22の脂肪族モノカルボン酸との混合物であることがより好ましく、炭素数2〜4の脂肪族モノカルボン酸と炭素数14〜20の脂肪族モノカルボン酸との混合物であることがさらに好ましい。
脂肪族モノカルボン酸としてこのような脂肪族モノカルボン酸の混合物を用いることにより、ポリアミド樹脂の結晶性が低下し、ポリアミド樹脂の軟化点を150℃以下にするなど軟化点の調整が容易になる。
炭素数1〜4の脂肪族モノカルボン酸と炭素数12〜22の脂肪族モノカルボン酸との混合割合は、脂肪族モノカルボン酸全量を基準として、前者が10〜90モル当量%、後者が90〜10モル当量%であることが好ましく、前者が40〜80モル当量%、後者が20〜60モル当量%であることがより好ましく、前者が45〜75モル当量%、後者が55〜25モル当量%であることが特に好ましい。
【0017】
前記炭素数1〜4の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用しもよい。
前記炭素数12〜22の脂肪族モノカルボン酸としては、飽和又は不飽和のものが使用できる。飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。また、不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、天然油脂より得られる混合脂肪酸(トール油脂肪酸、米ヌカ脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸等)などが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用しもよい。
【0018】
前記重合脂肪酸は、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸若しくはそのエステル化物を重合して得られる重合物である。
当該不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸としては、通常1〜3の不飽和結合を有する総炭素数が8〜24の不飽和脂肪酸が用いられる。例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及び天然の乾性もしくは半乾性油脂肪酸などの脂肪酸が挙げられる。また、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステルとしては、上記不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸と脂肪族アルコール、好ましくは、炭素数1〜3の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
前記不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸若しくはそのエステル化物の重合体である重合脂肪酸は、二量体を主成分とするものが好ましい。例えば、炭素数18の不飽和脂肪酸の重合物として、その組成が、炭素数18の一塩基酸(単量体)0〜10質量%、炭素数36の二塩基酸(二量体)60〜99質量%、炭素数54の三塩基酸以上の酸(三量体以上)30質量%以下のものが市販品として入手できる。
【0019】
次に、前記カルボン酸成分とともに用いるアミン成分に含まれるポリアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂肪族トリアミン及び芳香族ジアミンが好ましく、これらの中から選ばれる一種又は二種以上を混合して用いることが好ましい。
中でも、アミン成分における前記各ポリアミンの配合割合が、アミン成分全量基準で、脂肪族ジアミンが20〜100モル当量%、脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ジアミンが0〜80モル当量%であることが好ましく、脂肪族ジアミンが50〜95モル当量%、脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ジアミンが50〜5モル当量%であることがより好ましく、脂肪族ジアミンが70〜90モル当量%、脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ジアミンが10〜30モル当量%であることが特に好ましい。
また、脂肪族トリアミンと芳香族ジアミンの中では、芳香族ジアミンがより好ましい。
脂肪族ジアミンと脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ジアミンを併用することにより、ポリアミド樹脂の軟化点と溶融粘度をさらに好適に調整することができる。
例えば、アミン化合物中の脂肪族トリアミン若しくは芳香族ポリアミンの量を多くすると軟化点が低くなる傾向があり、脂肪族ジアミンの量を多くすると軟化点が高くなる傾向がある。
【0020】
前記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜4の脂肪族ジアミンが好ましく、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミンなどが例示できる。
前記脂肪族トリアミンとしては、炭素数2〜8の脂肪族トリアミンが好ましく、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミンなどが例示できる。
前記芳香族ジアミンとしては、炭素数6〜7の芳香族ジアミンが好ましく、キシリレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、フェニレンジアミンなどが例示できる。
【0021】
本発明においては、前記脂肪族ジアミン、脂肪族トリアミン及び芳香族ジアミン以外の他のアミン成分を0〜30モル当量%の範囲で配合することができる。そのような他のアミン成分としては、炭素数1〜4の脂肪族モノアミン、3価以上の芳香族ポリアミン、及び脂環式ポリアミンなどが挙げられる。
前記炭素数1〜4の脂肪族モノアミンとしては、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどが挙げられる。
前記3価以上の芳香族ポリアミンとしては、トリアミノベンゼン、トリアミノフェノール、テトラアミノベンゼンなどの炭素数6〜10の芳香族アミン化合物が挙げられる。
前記脂環式ポリアミンとしては、1,2-ジアミノシクロヘキサン、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4'-メチレンビス(メチルシクロヘキシルアミン)、4,4'-メチレンビス(エチルシクロヘキシルアミン)、1,8-ジアミノメンタンなど炭素数6〜17の脂環式ポリアミンが挙げられる。
【0022】
ポリアミド樹脂は、前記各原料化合物を公知の反応条件下で縮合反応させることにより製造することができる。例えば、モノカルボン酸やポリカルボン酸などのカルボン酸成分とポリアミン化合物などのアミン成分とをモル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)1.0/1.2〜1.2/1.0で混合、加熱し、例えば、180〜250℃で縮合反応させればよい。その場合各原料を適宣選択し、反応時間や反応温度等の条件を調整することにより所望の性状や物性値のポリアミド樹脂を得ることができる。
【0023】
本発明のアスファルト混合物における前記ポリアミド樹脂の配合割合は、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で3質量%以上90質量%以下であることが必要である。ポリアミド樹脂の配合割合がアスファルトとの合計量の3質量%未満では、耐油性の効果を充分に発現しないことがある。このポリアミド樹脂の配合効果は、その配合割合が増加するにつれて高くなる。したがって、ポリアミド樹脂の配合割合は、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で5質量%以上であることが好ましく、さらには10質量%以上、特に15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上が一層好ましい。
一方、ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で90質量%を越えると、耐油性については配合量のさらなる増加に見合った効果の向上が認められず、経済的に不利であるとともに、可とう性(たわみ性)が低下し、ひび割れが発生する恐れがある。さらに、製造上の問題から、すなわち、ポリアミド樹脂の配合量にあわせて通常より高温で加熱混合処理することが必要になるため、ポリアミド樹脂の熱劣化をもたらすことがある。また、ポリアミド樹脂の配合量が多くなるとアスファルト混合物の締固めが困難になるなど、施工時の作業性が低下する。したがって、ポリアミド樹脂の配合割合は、80質量%以下であることが好ましく、さらには70質量%以下、特に60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
このようなことから、ポリアミド樹脂の配合割合は、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
本発明において上記のポリアミド樹脂を配合すると、舗装のわだち掘れやねじれ破壊を防止し、耐油性が向上する作用機構については、以下のように考えられる。
本発明で規定する物性を有するポリアミド樹脂を含むアスファルト混合物は、ポリアミド樹脂自身が石油系の油に溶解しない性質を有するとともに、アスファルト混合物が加熱混合されると、特定の軟化点を有するポリアミド樹脂がアスファルト混合物中に均質に分散されやすい。したがって、ポリアミド樹脂が均質に分散した状態の混合物が締固めされて舗装が完成する。その結果、舗装の表面層にポリアミド樹脂が均質に存在し、舗装表面層の全面がポリアミド樹脂によって保護されることになる。すなわち、弾性が高く耐油性に優れるポリアミド樹脂が、車重等による変形を吸収することにより、舗装のわだち掘れやねじれ破壊を防止し、かつ耐油性を発揮すると考えられる。
したがって、舗装の表面層における均質に分散したポリアミド樹脂の濃度が高まるにつれて耐油性は増大し、ポリアミド樹脂の配合割合がポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で3質量%以上で効果が認められ、10質量%以上で効果が著しく高まり、15質量%以上で格段の効果の上昇が認められ、20質量%以上でさらなる効果の上昇が認められる。
なお、ここでいう「均質に分散した」の意味は、アスファルト混合物として、均質に分散したという意味である。アスファルト混合物は、骨材や種々のアスファルトを含むことから、厳密な意味での均質な分散は存在し得ない。したがって、ここでは、アスファルト混合物として、概略均質に分散した状態のことを意味している。
〔アスファルト〕
【0025】
本発明に用いるアスファルトとしては、特に制限はなく、種々のアスファルトが使用でき、例えば、舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトのほか、スチレン・ブタジエン・ブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体(SIS)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)など熱可塑性エラストマーなど高分子材料で改質した改質アスファルトなども含まれる。
〔骨材等〕
本発明で用いる骨材としては、特に制限はなく、砕石、玉石、砂利、再生骨材、セラミックスなどを任意に選択して用いることができる。
本発明においては、さらに必要に応じて、その他の配合剤を配合することができる。
【0026】
本発明における骨材の量と、アスファルト及びポリアミド樹脂の合計量との割合については、特に制限はないが、通常骨材が98〜85質量%、アスファルト及びポリアミド樹脂の合計が2〜15質量%の範囲であるのが好ましく、骨材が97〜90質量%、アスファルト及びポリアミド樹脂の合計が3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト混合物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に準じて決定している。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及びポリアミド樹脂の合計量に相当する。したがって、通常、前記最適アスファルト量を、アスファルト及びポリアミド樹脂の合計配合量とすることが好ましい。
但し、もちろん「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定しても良い。
【0027】
本発明のアスファルト混合物は、水を実質的に含まない加熱アスファルト混合物として使用してもよく、また、上記アスファルト混合物に乳化剤や水を配合してアスファルト乳剤とし、常温アスファルト混合物として使用してもよい。
特に、本発明のアスファルト混合物は、ポリアミド樹脂がアスファルト混合物中に均一に分散しやすい性質を有するため、加熱アスファルト混合物として使用すれば、その特徴を有効に発揮することができる。
【0028】
本発明のアスファルト混合物を加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の製造方法については、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、通常、骨材とアスファルトとを含むアスファルト混合物の製造方法に準じて行えばよい。
この場合、骨材、ポリアミド樹脂及びアスファルトを混合する温度は、ポリアミド樹脂の軟化点よりも高い温度が好ましい。具体的には、100〜200℃の範囲であることが好ましく、120〜200℃であることがより好ましく、140〜190℃であることがさらに好ましい。
具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス(プレミックス)方式といわれるアスファルト混合物の製造方法で、骨材とアスファルトを混合する工程に於いて、アスファルトとともに、ポリアミド樹脂(通常ペレット状)をそれぞれ投入すればよい。但し、この場合、ポリアミド樹脂を溶融するために、骨材を通常より高温にしておくことが好ましい。
また、アスファルトとポリアミド樹脂を高温、例えば、150℃以上で事前に攪拌しながら混合して、その混合物を投入してもよい(プレミックス法)。
上記のように、ポリアミド樹脂を配合するアスファルト混合物の製造方法においては、ポリアミド樹脂は高温に曝されることになる。その高温の程度は、ポリアミド樹脂の配合割合が高いほど高くすることが必要である。したがって、ポリアミド樹脂の配合割合が高い場合は、アスファルト混合物はより高温になり、ポリアミド樹脂が熱劣化する場合がある。この現象は、用いるポリアミド樹脂の軟化点が高いほど、発生しやすい。
本発明では、比較的軟化点が低いポリアミド樹脂を使用すると共に、好ましくはポリアミド樹脂の配合割合を抑制したアスファルト混合物であることから、熱劣化の恐れがない良好な舗装を得ることができる。
なお、ポリアミド樹脂を配合したアスファルト混合物は、通常のアスファルト混合物と同様の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の締固め温度は、ポリアミド樹脂の軟化点よりも高い温度が好ましく、具体的には100〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、130〜170℃がさらに好ましい。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、アスファルト混合物の物性及び作業性の評価は、下記の方法に従って求めた。
(1)マーシャル安定度試験
社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験便覧」に記載される「マーシャル安定度試験」に準拠して行った。
(2)ホイールトラッキング試験
社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験便覧」に記載される「ホイールトラッキング試験」に準拠して行った。使用した試験機の測定限界値(上限)は、63000回/mmである。
(3)曲げ試験
社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験便覧」に記載される「曲げ試験」に準拠して行った。
(4)ねじれ抵抗性試験
社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験便覧」に記載される「ねじれ抵抗性試験」に準拠して行った。
(5)灯油浸漬後の試験(耐油性の評価)
試料(アスファルト混合物)を常温の灯油に24時間浸漬した後、上記の各物性試験を行った。
(6)施工時の作業性
150℃に加熱状態の試料(アスファルト混合物)について、スコップを用いて舗装を施工した場合の作業性を以下の評価基準で判定した。
<評価基準>
○:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して作業性に問題がなく、適切な締固めができる
△:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して作業が困難と感じ、施工時間が長くなる
×:一般の密粒度アスファルト混合物と比較して作業性が悪く、適切な締固めが困難である
【0030】
実施例1〜5
密粒型粒度の骨材と最適アスファルト量のストレートアスファルト60/80との混合物(密粒度アスファルト混合物;「密粒ストアス」と称する)において、前記アスファルトの3%、10%、20%、40%、及び90%(いずれも質量%)を下記の製造方法で得られたポリアミド樹脂A(花王株式会社製「レオマイドS−8400」)に置換えた混合物を得た。これらの混合物をミキサーにて150〜160℃で混合し、次いで135〜145℃で締固めして、実施例1〜5のアスファルト混合物を得た。これらアスファルト混合物の配合、初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価を行った。結果を表−1に示した。
なお、上記及び表−1中の最適アスファルト量、混合温度、締固め温度は、「舗装設計施工指針」に準拠して求めた最適アスファルト量、最適混合温度、最適締固め温度である。
<ポリアミド樹脂Aの製造方法と物性>
ポリアミド樹脂Aは、プロピオン酸、トール油脂肪酸及び重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)を含むカルボン酸成分と、エチレンジアミン及びm−キシリレンジアミンを含むアミン成分とを縮合させて得られたものである。それぞれの含有割合は、カルボン酸成分については、カルボン酸成分1モル当量あたりプロピオン酸とトール油脂肪酸の合計量が0.25モル当量、重合脂肪酸が0.75モル当量であり、アミン成分については、アミン成分1モル当量あたりエチレンジアミンが0.86モル当量、m−キシリレンジアミンが0.14モル当量である。また、カルボン酸成分とアミン成分の割合は、モル当量比(カルボン酸成分/アミン成分)で、1.0/1.0である。
ポリアミド樹脂Aの物性は、軟化点123℃、180℃溶融粘度210mPa・sであった。
【0031】
実施例6
砕石マスチック型粒度の骨材と最適アスファルト量のポリマー改質アスファルトII型との混合物(砕石マスチックアスファルト混合物;「SMAII型」と称する。)において、前記アスファルトの20質量%をポリアミド樹脂Aに置換えた混合物を得た。この混合物を、最適混合温度である170〜180℃で混合し、次いで最適締固め温度である155〜165℃で締固めて、実施例6のアスファルト混合物を得た。このアスファルト混合物の配合、初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価を行った。結果を表−1に示した。
実施例7
ポーラス型粒度の骨材と最適アスファルト量のポリマー改質アスファルトH型との混合物(ポーラスアスファルト混合物;「ポーラスH型」と称する。)において、前記アスファルトの20質量%をポリアミド樹脂Aに置換えた混合物を得た。この混合物を、最適混合温度である165〜175で混合し、次いで最適締固め温度である140〜150℃で締固めして、実施例6のアスファルト混合物を得た。このアスファルト混合物の配合、初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価を行った。結果を表−1に示した。
【0032】
実施例8
ポリアミド樹脂Aの代わりに下記の方法で製造したポリアミド樹脂Dを用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例8のアスファルト混合物を得られた。このアスファルト混合物の配合、混合物の初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価結果を表−1に示した。
<ポリアミド樹脂Dの製造方法と物性>
プロピオン酸0.19モル当量、トール油脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハートールFA-1」0.06モル当量、重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)0.75モル当量、エチレンジアミン0.90モル当量及びm‐キシリレンジアミン0.10モル当量からなる原料を温度計、攪拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコにいれ、混合物を攪拌し、内容物の着色防止のため僅かの窒素を流した後、210℃で3時間、さらに減圧下(13.3kPa)2時間反応させ、冷却後、粉砕してポリアミド樹脂Dを得た。
ポリアミド樹脂Dの物性は、軟化点135℃、180℃溶融粘度220mPa・sであった。
なお、ポリアミド樹脂Dの製造原料と物性は、別表にまとめて示した。
【0033】
比較例1〜3
実施例1,6,及び7において、ポリアミド樹脂Aを配合しなかったこと以外は、それぞれと同様にして、比較例1、2、3のアスファルト混合物を得た。それらの配合、初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価を行った。結果を表−2に示した
比較例4,5
ポリアミド樹脂Aの代わりにポリアミド樹脂B、ポリアミド樹脂Cを用いたこと以外は、実施例6と同様にして比較例4,5のアスファルト混合物を得た。このアスファルト混合物の配合、初期物性、灯油浸漬後の物性、及び作業性の評価結果を表−2に示した。
なお、ポリアミド樹脂Bは、原料として、トール油脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハートールFA-1」)0.22モル当量、ドデカン二酸0.78モル当量、エチレンジアミン0.475モル当量及びm‐キシリレンジアミン0.475モル当量を用いた以外はポリアミド樹脂Dと同様に製造した軟化点180℃、180℃、溶融粘度400mPa・sのポリアミド樹脂である。
また、ポリアミド樹脂Cは、原料としてアジピン酸0.30モル当量、重合脂肪酸(ハリマ化成社製、「ハリダイマー250」)0.70モル当量、エチレンジアミン0.85モル当量及びm‐キシリレンジアミン0.07モル当量を用いた以外はポリアミド樹脂Dと同様に製造した軟化点170℃、180℃、溶融粘度4000mPa・sのポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂B及びポリアミド樹脂Cの製造原料と物性は、別表にまとめて示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
[注]
表中の略語
1)密粒ストアス:密粒度アスファルト混合物(13)でストレートアスファルト60/80を使用
2)SMAII型 :砕石マスチックアスファルト混合物(13)でポリマー改質アスファルトII型を使用
3)ポーラスH型:空隙率20%のポーラスアスファルト混合物(13)でポリマー改質アスファルトH型を使用
※(13)は骨材の最大粒径が13mmであることを意味する。
【0038】
表−1及び表−2から分かるように、特定の軟化点を有するポリアミド樹脂を配合した本発明のアスファルト混合物は、マーシャル安定度、ホイールトラッキング試験における動的安定度、ねじれ抵抗性、曲げなどの初期物性がいずれも高く、それらの灯油浸漬後の物性の低下も極めて小さい。また施工時の作業性も良好である(実施例1〜8)。これに対して特定のポリアミド樹脂を用いない、もしくは、異なるポリアミド樹脂を用いた比較例のアスファルト混合物は、それらの性能を有しない(比較例1〜5)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のアスファルト混合物は、わだち掘れやねじれ破壊を防止し、かつ耐油性が高い舗装を得ることができるアスファルト混合物であって、舗装面に油漏れがあっても、舗装の破壊を防止し、わだち掘れやねじれ破壊などの発生を防ぐことができるアスファルト混合物である。しかも、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短かいなどの利点を有する。したがって、舗装用アスファルト混合物として有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材、ポリアミド樹脂、及びアスファルトを含むアスファルト混合物であって、前記ポリアミド樹脂の軟化点が60℃以上150℃以下であり、当該ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で3〜90質量%であることを特徴とするアスファルト混合物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂の配合割合が、ポリアミド樹脂とアスファルトとの合計量基準で10〜70質量%である請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂の軟化点が、70℃以上140℃以下のものである請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂の180℃における溶融粘度が、2000mPa・s以下のものである請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルト混合物。
【請求項5】
ポリアミド樹脂の180℃における溶融粘度が、1000mPa・s以下のものである請求項1〜4のいずれかに記載のアスファルト混合物。
【請求項6】
ポリアミド樹脂が、脂肪族モノカルボン酸及び重合脂肪酸を含むカルボン酸成分とポリアミンを含むアミン成分とを縮合させて得られたものである請求項1〜5のいずれかに記載のアスファルト混合物。
【請求項7】
前記カルボン酸成分の脂肪族モノカルボン酸が、カルボン酸成分全量基準で、10〜50モル当量%である請求項6記載のアスファルト混合物。
【請求項8】
前記脂肪族モノカルボン酸が、炭素数1〜4の脂肪族モノカルボン酸と炭素数12〜22の脂肪族モノカルボン酸との混合物である請求項6又は7に記載のアスファルト混合物。
【請求項9】
前記アミン成分のポリアミンが、脂肪族ジアミンと脂肪族トリアミン及び/又は芳香族ジアミンとの混合物である請求項6〜8のいずれかに記載のアスファルト混合物。