説明

アスファルト系シート状制振材

【課題】 アスファルト系の制振材において、制振材としての機能を低下させることなく、焼却残渣を低減することが可能な制振材を提供することを目的とする。
【解決手段】 アスファルトを含有するアスファルト系シート状制振材であって、前記制振材の全量中、アスファルトを40〜65重量%、及び、充填剤として鱗片状黒鉛を30〜55重量%を含有することを特徴とする。
充填材として鱗片状黒鉛を用いることで、シートの制振性を一定以上とできる。鱗片状黒鉛の特徴として、板状結晶のため、マイカと同様、制振性をシートに付与できる。また、酸化燃焼により90%以上が二酸化炭素に変わるため、焼却残渣の少ない材料である。一定量以上の鱗片状黒鉛を配合することで制振性を持ち、リサイクル性に考慮したシートとなすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行時の振動を抑える為に、自動車の鋼板に熱融着させて使用する制振材について、サーマルリサイクルで発生する焼却残渣の低減に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一般的なアスファルト系制振材料は、主材料となるアスファルトに、充填材として炭酸カルシウムやマイカ、補強材として繊維や古紙を配合してつくられる(例えば、特許文献1参照)。特に、アスペクト比の高いマイカを増やすことで制振性の向上を望むことができると分かっている。
一方、自動車に用いられるアスファルトをベースとする制振材は、車体に熱融着され解体時に回収することは困難であるため、破砕残渣として、サーマルリサイクルされるか、埋め立て処分される。制振材のうち、焼却後に残渣となるのは配合成分の30〜60%にあたる充填材である。一般的に充填材は無機物で構成されているため、熱分解するには1000度以上の温度が必要である。残渣を減らすには、配合成分を無機質から有機質へ転換する必要があるが、ゴムや樹脂の配合の割合を増加させると、アスファルトが車体に融着することを阻害してしまうという問題がある。また、木粉等の有機充填材を添加することが、例えば、特許文献2において提案されているが、剛性が維持されず、制振性能の低下につながるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−285007号公報
【特許文献2】特開2006−316096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、アスファルト系の制振材において、制振材としての機能を低下させることなく、焼却残渣を低減することが可能な制振材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、上記課題を解決できることを知見し、以下の通り解決手段を見出した。
本発明のアスファルト系シート状制振材は、請求項1に記載の通り、アスファルトを含有するアスファルト系シート状制振材であって、前記制振材の全量中、アスファルトを40〜65重量%、及び、充填剤として鱗片状黒鉛を30〜55重量%を含有することを特徴とする。
また、請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のアスファルト系シート状制振材において、前記鱗片状黒鉛以外に、他の充填材を含有させ、前記充填材の全量中、前記鱗片状黒鉛の割合を95重量%以上とすることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2に記載のアスファルト系シート状制振材において、前記鱗片状黒鉛の粒径を100〜500μmとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
充填材として鱗片状黒鉛を用いることで、シートの制振性を一定以上とできる。鱗片状黒鉛の特徴として、板状結晶のため、マイカと同様、制振性をシートに付与できる。また、酸化燃焼により90%以上が二酸化炭素に変わるため、焼却残渣の少ない材料である。一定量以上の鱗片状黒鉛を配合することで制振性を持ち、リサイクル性に考慮したシートとなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1及び比較例1の200Hzの周波数帯域の損失係数を測定した結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のシート状の制振材を構成するアスファルトは、ストレートアスファルト及び/又はブロンアスファルト等のアスファルトが使用できる。アスファルトは、制振材の全量中40〜65重量%となるように配合する。
本発明では、制振材の全量中に、充填剤として鱗片状黒鉛を30〜55重量%を配合する。30重量%未満であると制振効果が十分に得られず、55重量%を超えるとシート形状を維持できなくなるからである。
また、鱗片状黒鉛の粒径は、100〜500μmの範囲とすることが好ましい。100μm未満であると飛散しやすいためアスファルトに分散しにくく、500μmを超えるとシートの平滑性を損なうからである。
【0009】
尚、アスファルト及び充填剤以外の成分として、補強材成分として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン、麻、綿、古紙の粉砕物等を1〜10重量%を配合してもよい。更に、必要に応じて、吸湿防止剤、軟化剤、発泡剤等の添加剤を配合してもよい。
【0010】
前記鱗片状黒鉛以外に、他の充填材を含有させ、前記充填材の全量中、前記鱗片状黒鉛の割合を95重量%以上とすることが好ましい。より焼却残渣を少なくすることができるからである。他の充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0011】
本発明の制振材を作製するにあたり、上記の各配合物をオープンニーダーにて分散混練りした後、カレンダーロールで圧延してシート状となした。上記設備にとどまらず、バンバリーミキサー、押出機等の公知の混練機械を用いて作製できる。
【実施例】
【0012】
次に、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
(実施例1)
本配合全体を100重量%となるようにして、実施例1のアスファルト系のシート状制振材を作製した。具体的には、140℃に加熱されたオープンニーダーで、アスファルトを溶融撹拌したのち、さらに充填材、補強材を投入し、均一に分散するまで撹拌する。撹拌後取り出した生地を、カレンダーロールに通し膜厚2mmのシートに圧延した。
・アスファルト:「ブローンアスファルト」(会社名:昭和シェル石油株式会社)
配合量:65重量%
・鱗片状黒鉛:「Z+80」(会社名:伊藤黒鉛工業株式会社)
配合量:30重量%
平均粒径:250μm(200〜300μm)
・補強材:故紙粉砕品
配合量: 5重量%
【0013】
(比較例1)
実施例の鱗片状黒鉛に代えて、マイカ(「C−40」(会社名:レプコ株式会社))を使用した以外は、実施例1と同様にしてシート状の制振材を作製した。
【0014】
次に、実施例1及び比較例1の制振材(膜厚2mm)を、厚さ0.8mmの鋼板に載置し、140℃で加熱して鋼板に融着させたものに対して、損失係数の測定を行った。
これらの結果を図1に示す。
図1に示すように、実施例1の鱗片状黒鉛を使用したものは、比較例1のマイカと同様の制振効果を発揮することが分かった。
【0015】
上記実施例1と同様の手段で、アスファルトと鱗片状黒鉛またはマイカの比率を変えた配合を、それぞれ実施例2から3、比較例2から4としてシートを作成した。
【0016】
上記実施例1〜3及び比較例1〜4の配合組成、損失係数(20℃及び40℃)、シートの融着状態、予想される灰分及び実際に焼却した場合の灰分について評価した結果を表1に示す。
尚、灰分の測定は、JIS M8511「天然黒鉛の工業分析及び試験方法」に順じて行っている。具体的には、各シートから5mgを量り取ったものを試料とし、電気炉を用いて900℃で4時間加熱焼却している。
【0017】
【表1】

【0018】
表1から、マイカから鱗辺状黒鉛に置き換えることでシート全体焼却残渣を30〜40%から2〜3%まで低減できることが判る。また、マイカ配合量が30重量%を超えると密着不良になるのに対し、鱗片状黒鉛は50重量%まで配合することが可能である。
従って、鱗片状黒鉛を使用することにより制振材の焼却残渣を低減し、マイカと同様の制振効果が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、自動車の他、建築、家電の分野等をはじめとして広く産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトを含有するアスファルト系シート状制振材であって、前記制振材の全量中、アスファルトを40〜65重量%、及び、充填剤として鱗片状黒鉛を30〜55重量%を含有することを特徴とするアスファルト系シート状制振材。
【請求項2】
前記鱗片状黒鉛以外に、他の充填材を含有させ、前記充填材の全量中、前記鱗片状黒鉛の割合を95重量%以上とすることで焼却残渣を20%以下とすることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト系シート状制振材。
【請求項3】
前記鱗片状黒鉛の平均粒径を100〜500μmとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアスファルト系シート状制振材。

【図1】
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