説明

アスベストに関する知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システム

【課題】 模擬訓練施設等を用いて、アスベストの知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システムを提供すること。
【解決手段】 アスベストの知識を伝達する知識段階の教育システム、アスベストの分析段階の教育システム及びアスベストの除去段階の教育システムからなり、前記除去段階の教育システムは、アスベストに似せた擬似アスベスト3と、前記擬似アスベスト3に湿気を付与する湿潤手段30と、前記擬似アスベスト3の除去対象場所31を密閉する養生手段32と、前記養生手段32により密閉された空間(除去対象場所31)に対して負圧を形成させる負圧形成手段33とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストの知識教育、調査及び除去工事に関する教育をシミュレータ(模擬訓練施設)等によって行うアスベストに関する知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石綿(アスベスト)は、人体に与える悪影響が明らかになり現在では原則として製造等が禁止されているが、以前より建物等の防音材、断熱材、保温材として使用されてきた。その結果、今日では建物の解体等でのアスベストの飛散や、その吸込が大きな社会問題となっている。
【0003】
出願人は、このようなアスベスト等が引きおこす社会問題の解決のため、従来より種々の技術開発を行い、且つ、アスベストの除去技術を特許出願等により積極的に公開している。
【特許文献1】特開2007−247367
【特許文献2】実用新案登録3116813
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際的な課題としてアスベストの使用されている建物の管理者等が必ずしも正確なアスベストに関する知識を有しているとは限らない。
また現実的な課題としてアスベストの除去作業を担当する作業員についても必ずしもアスベストの正確な知識を有しているとは限らないし、また除去作業の意義や除去手順の内容を正確に理解しているとは限らない。
このような管理者、作業員等のアスベストに携わる関係者の不正確な認識により、不完全なアスベストの調査、分析が行われる恐れがある。
また、アスベストの調査及び分析が正確であっても、アスベストの不十分な除去作業が行われた場合、作業員自身への健康被害のみならず、建物の周辺の住民への健康被害も懸念される。
【0005】
そこで、かかる課題を解決し、アスベストの知識教育、調査及び除去の模擬訓練施設等を用いて、アスベストの知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システムを提供することとする。
そして上記関係者に対して、アスベストに関する基礎知識の教授、アスベストの調査、分析及び除去作業の模擬作業を可能にする。
さらに、模擬訓練施設等を利用して可能となる定期的な監視教育、調査、分析及び除去模擬作業の繰返しによる教育を施すことを目的とする。
ひいては、上記関係者のみならず、建物の周辺の住民の健康被害を根絶することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アスベストに関連する情報が記載されているアスベスト記載書類と、アスベストに関連する情報が格納されているアスベスト情報格納手段と、
該情報格納手段から必要な情報を選択して表示するアスベスト情報表示手段と、アスベスト記載書類に記載され又はアスベスト情報格納手段に格納されている情報に対応し、且つ、アスベスト除去作業に必要な装置とを備えたことを特徴とするアスベストに関する知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システムとした(請求項1の発明)。
【0007】
上記発明のアスベストの標本と、該標本を分析する分析装置を備えたことを特徴とするアスベスト教育システムとした(請求項2の発明)。
【0008】
上記発明のアスベストに似せた擬似アスベストと、前記擬似アスベストに湿気を付与する湿潤手段と、前記擬似アスベストの除去対象場所を密閉する養生手段と、前記養生手段により養生が行われる空間に対して負圧を形成させる負圧形成手段とを備えたことを特徴とするアスベスト教育システムとした(請求項3の発明)。
【発明の効果】
【0009】
(1) 本発明のアスベストの教育システムを通じて、一貫したアスベスト教育が可能となり、上記関係者等に対し効率的にアスベストに関連する知識を吸収させることができる。
(2) また、実際のアスベストの除去作業に移行する前に、アスベスト除去工事の擬似体験が可能となり、その擬似体験を基礎にして実際のアスベストの除去作業を行うことができる。よって除去工事の安全性が高まる。
(3) アスベストの教育システムを経て、実際のアスベストの調査・分析、アスベストの除去作業を経験し、再びアスベストの教育システムに戻る(再教育)というサイクルを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係るアスベストの教育システムを図面に基づき説明する。
図1は、建物等に使用されているアスベストの「調査・診断」からアスベストの除去の「工事完了報告」までの手順を図示したフロー図、図2は同フロー図の「調査・診断」の詳細なフロー図、図3は図1のフロー図に示された除去工事のより詳細な除去処理工事のフロー図である。
このような流れに対応させて、実施形態に係るアスベストの教育システムにおいては、アスベストに関する知識を伝授する知識教育段階の教育システムと、この知識を前提にアスベストの分析を通じて実際のアスベストを認識する機会とする分析段階の教育システムと、擬似アスベストを用いてアスベストの模擬的な除去作業を通じてアスベストの除去工事を体験させる除去段階の教育システムに区分される。
図4は知識教育段階の教育システムの構成図、図5は分析段階の教育システムの構成図、図6は除去段階の教育システムの構成図である。
なお、前記各図及び後述の各図において、同一の符号は同一の構成を示すものとし、重複した説明は避けることとする。
【0011】
前記知識教育段階のシステムは、図4に示したように、アスベストに関連する情報が記載されているアスベスト記載書類1と、アスベストに関連する情報が格納されているアスベスト情報格納手段10と、該情報格納手段10から必要な情報を選択して表示するアスベスト情報表示手段11と、アスベスト記載書類1に記載され又はアスベスト情報格納手段10に格納されている情報に対応し、且つ、アスベスト除去作業に必要なアスベスト関連機器12とを備えている。
【0012】
アスベスト記載書類1は、図1及び図2に示した調査診断に関する教育のための建物等の施工図、仕上確認表のサンプル等、アスベストの概論的な情報、アスベストの性質、有害性に関する情報、アスベストによる健康障害に関する情報、アスベストの使用状況、アスベストの除去作業に必要な各種機器、例えば保護具に関する情報、アスベストの除去工事に関する情報、例えば暴露防止の対策及び方法の情報、アスベストの除去工事の事故例に関する情報、例えば実際に起こった事故を基に擬似アスベストを用いてスタジオで撮影した事故情報等を記載した書籍、メモ、ノート等から構成される。
【0013】
アスベスト情報格納手段10は、上記各情報が電子化され、メモリ、ビデオ、CD等の各種の記憶媒体に格納されて構成されている。そしてこれらの情報は、アスベスト情報表示手段11としての電子計算機、ディスプレイ等の映像再生機器等を介して利用できるようになっている。
【0014】
アスベスト関連機器12には、図2に示した室内環境濃度を測定する計測器、分析段階の教育システムで使用される各種測定器、除去段階の教育システムで使用される各種機器から構成される。
【0015】
以上のように構成される教育システムは、特定の場所(アスベストアカデミーと称し、以下アカデミーと略称する)に設けられており、上記各情報はアカデミーの受講者が書籍等を直接見ることにより、電子計算機等を利用することにより、或いはアカデミーの講師の講義を介して受講者に利用される。
【0016】
以上の知識教育段階の教育システムによれば、アスベストに関する情報等のソフトウエアの面、その情報に関連する機械設備、機材、機器等のハードウエアの面の各面において、アスベストに関する教育に必要な情報がアカデミーに結集されているので、関係者が効率よくアスベストに関する知識を習得することができる。
【0017】
分析段階の教育システムは、図5に示したように、アスベストの標本2と、この標本2を分析する分析装置としての位相差顕微鏡20、X線回析装置21から構成されている。
アスベストの標本2は、アスベスト標準試料としてのクリソタイル、アモサイト、クロシドライト、トレモライト、アンソフィライト、アクチノライトの6種類を用いる。
これらの標本は、分散染色法により位相差顕微鏡20にてアスベストの形態、色調等の特長が観察される。
また、これらの標本を用いてX線回析装置21により、定性、定量分析を行いアスベストに対する認識を深めることができる。
さらにこれらの機器の操作練度の向上を図ることができる。
【0018】
以上の分析段階の教育システムによれば、前記知識段階の教育システムに引続き、その知識を基礎にして、アスベストの標本に触れることで、アスベストに対する認識を確実なものにすることができる。
【0019】
除去段階の教育システムは、アスベストに似せた擬似アスベスト3と、前記擬似アスベスト3に湿気を付与する湿潤手段30(図示せず)と、前記擬似アスベスト3の除去対象場所31を密閉する養生手段32と、前記養生手段32により密閉された空間(除去対象場所31)に対して負圧を形成させる負圧形成手段33と少なくとも備え、図6のようにアカデミーに備えられている模擬訓練施設(シミュレータ)4に配置されている。なお、図6中の矢印は、空気の流れを示す。
【0020】
実際のアスベストの除去処理工事の手順は、図3に図示された手順に従うが、これらの手順の内、除去段階の教育システムでは、重要な内容であるアスベストの湿潤化、養生、負圧状況を確認できる状況で、体験作業を実施する。
【0021】
アスベストは単繊維の集合体であることから、擬似アスベスト3はアスベストに似たロックウール、グラスウール、ナイロン、ポリエチレン等の繊維状のものを用いる。
前記湿潤手段30は、擬似アスベスト3に水分等の液体を付与して湿潤させるためのもので、水分等を噴霧させるスプレーノズル等から構成される。
前記養生手段32は、床シート32a及び壁面シート32bからなる。
負圧形成手段33は、負圧集塵機を用いる。
【0022】
前記シミュレータ4の部屋40の天井41には擬似アスベスト3が吹付けされている。
詳細な除去手順は図3に従うが、除去段階の教育システムの主な手順は次の通りである。
前記部屋40に対し、まず前記養生手段32を用いて、床及び壁面の養生を行う。
次に、受講者等が保護服5を着用して足場6の設置、エアロック室7の設置、前記負圧集塵機33、その他の機器を設置する。
次に、湿潤手段30を用いた湿潤処理の後に、擬似アスベスト3の除去処理を行い、除去した擬似アスベスト3を袋詰して搬出する。
【0023】
上記除去手順のなかで、図6に示した各所A〜Dにおいて正しい作業が実施されている否かを機器を用いてリアルタイムで確認しなから作業を行う。
A所では、エアーロック室7から内部の粉じんが漏れてないかをチェックする。
B所では、擬似アスベスト3が湿潤されているか、飛散していないどうかチェックする。
C所では、養生が完全かどうか、養生部分から擬似アスベスト3が飛散しいないいなかをチェックする。
D所では、負圧集塵機が正常に作動しているか、そのフィルターが正常に機能しているか、粉じんの漏れがないかどうかもチェックする。
これらのチェックにより許容値以上の数値が検知された場合には、警報装置(図示せず)が作動する。
【0024】
以上の除去段階の教育システムによれば、健康被害の危険を伴う実際の除去工事の前に、正しいアスベストの除去作業方法を体験することができる。
また、その模擬体験の中での失敗例を実体験させることで、実際の除去工事においての正しい作業方法を理解させることができる。
特に、上記知識教育段階及び分析段階の各システムを経由することで、知識と実体験を融合させることができる。
【0025】
図7に示したように、以上のようにアカデミーの一貫し、且つ、集中的な新規教育の教育システムを経て、実際のアスベストの調査、分析、除去工事を経験し、再びアカデミーで再教育の上記教育システムを実施するサイクルを形成することができる。
また、アカデミーのアスベストの教育システムを経て、実際の除去工事を経験し、再びアカデミーで上記教育システムを実施するサイクルも形成することができる。
このようなサイクルにより、アスベストの除去作業が安全に行われ、作業員自身の健康のみならず、建物の周辺の住民への健康被害を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】アスベストの「調査・診断」からアスベストの除去の「工事完了報告」までの手順を図示したフロー図、
【図2】同フロー図の「調査・診断」の詳細なフロー図、
【図3】図1のフロー図に示された除去工事のより詳細な除去処理工事のフロー図、
【図4】知識教育段階の教育システムの構成図、
【図5】分析段階の教育システムの構成図、
【図6】除去段階の教育システムの構成図、
【図7】教育システムのサイクルを示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 アスベスト記載書類 10 アスベスト情報格納手段
11 アスベスト情報表示手段 12 アスベスト関連機器
2 アスベストの標本 20 位相差顕微鏡
21 X線回析装置
3 擬似アスベスト 30 湿潤手段
31 除去対象場所 32 養生手段
33 負圧形成手段
32a 床シート 32b 壁面シート

4 模擬訓練施設(シミュレータ) 40 部屋
41 天井
5 保護服
6 足場
7 エアロック室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストに関連する情報が記載されているアスベスト記載書類と、
アスベストに関連する情報が格納されているアスベスト情報格納手段と、
該情報格納手段から必要な情報を選択して表示するアスベスト情報表示手段と、
アスベスト記載書類に記載され又はアスベスト情報格納手段に格納されている情報に対応し、且つ、アスベスト除去作業に必要な装置とを備えたことを特徴とするアスベストに関する知識教育、調査及び除去までのアスベスト教育システム。
【請求項2】
アスベストの標本と、
該標本を分析する分析装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト教育システム。
【請求項3】
アスベストに似せた擬似アスベストと、
前記擬似アスベストに湿気を付与する湿潤手段と、
前記擬似アスベストの除去対象場所を密閉する養生手段と、
前記養生手段により養生が行われる空間に対して負圧を形成させる負圧形成手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のアスベスト教育システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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