説明

アスベストを含有する吹き付け層の処理方法および装置

【課題】
本発明は、アスベストを含有する吹き付け層に対して、安全性を確保しながら、湿潤、剥ぎ取りおよび剥ぎ取り後の鉄骨などの後処理を1つの工程で行えるようにすること、また、その剥ぎ取り物を圧縮、成型して扱いやすい形にすることを可能にするための方法およびそれに用いる装置に関する。
【解決手段】
アスベストを含有する吹き付け層に対して、2つあるいは3の口から、シリコーン樹脂濃度の異なる液体を同時に吹き出す処理を行う。その作業のために、液体の種類、流量および吹き付け方向を独立に制御できる複数の吹き出し具を一体化して、それにバンド部を取り付け、そのバンドを作業者の肩あるいは腰にかけて吹き付ける時の支点を固定できるようにした装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを含有する吹き付け層をアスベスト繊維の飛散がないように、かつ作業者の負担が少ない状態で効率的に剥離し、また剥離後の各種の処理を環境に悪影響を及ぼさないように実施できるようにするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストを含有するものは,耐熱性、断熱性などに優れた特性を持っているために、建築関係では、断熱、耐火、吸音用などに吹き付けによる被覆材として広く採用されてきた。しかし、最近になって、アスベストに起因すると思われる肺ガンや中皮腫患者が増加して大きな社会問題になっている。これまで使われたアスベスト含有被覆材には、吸音、結露防止用にはアスべスト約70%、耐火被覆用にはアスべスト約60%、それ以外のアスベスト含有吹き付け材としては、アスベスト30%以下あるいは5%以下などがある。現在はアスベスト含有量が0.1%以上のものは使用禁止となっている。そして、すでに施工されているものについては、除去作業中にアスベスト繊維が飛散しないように除去し、除去されたアスベスト含有物が散らばるおそれがないような最終処分することが求められている。
アスベストを含有する吹き付け層の剥離、除去に関しては、従来、湿潤という前処理、剥ぎ取り処理および剥ぎ取り後の鉄骨表面などに残留した物が飛散しないための後処理の3つが別々の工程として行われてきた。また、剥離されたアスベスト含有物を、環境に悪影響を及ぼさないように最終処分することが必要である。これらの作業において改善が望まれる課題は、現場における剥ぎ取りや、その前後の作業を効率的に行い、安全性を保ちながらも作業量を軽減すること、および剥ぎ取り物の嵩を小さくして、最終処分のための費用(輸送、最終処分場への埋め立て用など)を軽減することである。そのような観点から、目指すべき方向として、安全性を確保しながら湿潤、剥ぎ取り、剥ぎ取り後の鉄骨などの後処理を1つの工程で行うこと、また、その剥ぎ取り物を圧縮、成型して処理しやすいものにすることを合理的に組み合わせたものにすることが挙げられる。
【0003】
剥ぎ取りについては、従来、ヘラ、ブラシ、スクレーパーなどを用いた手作業で行われてきた。これに対して、より効率的に行うために高圧水を使う方法が示されている。たとえば、特許文献1には、圧縮エアーと高圧水の混合ジェット噴流による直接洗浄を行う手段によって剥離するとともに、隔離養生内を噴霧状態にして剥離された石綿(アスベスト)と噴霧水滴が交じり合って落下することによって泥状になる方法が示されている。しかし、この方法では養生空間の雰囲気は作業者にとってはかなり過酷と思われる。また、特許文献2には、耐火性被覆材を剥離する水の周囲を、同じく耐火性被覆材に吹き付けられる圧力水によって形成される水カーテンで囲み、剥離された耐火被覆材を水カーテンで外に飛散しないようにして、剥離した耐火被覆材を水とともに回収して固液分離処理する方法が示されている。また、特許文献3には、高圧ジェット噴射混合処理工法用装置で、水・エアー噴射ノズル2つ及び硬化材ノズルを2つ設け、水・エアー噴射ノズルは上下で位置をわずかにずらして注入管軸直方向で相互に反対方向に向くように対に設ける方法が示されている。
剥ぎ取られたものの処理方法としては、本発明と同一発明者による特許文献4において、剥ぎ取り前のアスベスト吹き付け層の湿潤材としてシリコーン樹脂乳化液を用いてアスベスト繊維の飛散を防止しつつ従来法での剥ぎ取りを行い、剥ぎ取られたものを圧縮・減容する方法が示されている。
【特許文献1】特開2007−92387号公報
【特許文献2】特開2007−63807号公報
【特許文献3】特開2001−303542号公報
【特許文献4】特開国際出願PCT/JP2006−319520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アスベストを含有する吹き付け層に対して、安全性を確保しながら、湿潤、剥ぎ取りおよび剥ぎ取り後の鉄骨などの後処理を1つの工程で行えるようにすること、また、その剥ぎ取り物を圧縮、成型して扱いやすい形にするための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段の第1は、アスベストを含有する吹き付け層に対して、2つあるいは3つの口から、乳化したシリコーン樹脂を含む液体を同時に吹き出すことである。
【0006】
第2の手段は、0005の作業を行うのに用いる液体の、乳化したシリコーン樹脂の濃度、流量および吹き付け方向を独立に制御できる2つあるいは3つの吹き出し具を一体化して、それにバンド部を取り付け、そのバンドを作業者の肩あるいは腰にかけて吹き付ける時の支点を固定できるようにした装置を用いることである。
【0007】
第3の手段は、0005の方法で剥離されたアスベスト含有物を、圧縮、成型しシリコーン樹脂分を硬化させることである。
【発明の効果】
【0008】
0005,0006の手段によって,アスベスト含有物に対して、安全性を確保しながら、湿潤、剥ぎ取りおよび剥ぎ取り後の鉄骨などの後処理を1つの工程で行うことができる。また、0007の手段によって、その剥ぎ取り物を圧縮、成型、硬化して最終処分まで扱いやすい形にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本処理の対象物は、アスベストを0.1%以上含有する吹き付け層であって剥ぎ取り処理することが必要になったものである。この剥ぎ取りを行う第1の実施形態は、図1に示すような2つの吹き出し口を持つ装置を用いて行う。このうち高圧液体吹き付け器具1は、乳化したシリコーン樹脂を2.5〜45.0重量%含む液体を高圧で噴出させて、アスベスト含有吹き付け層を剥離するためのものであるが、吹き付け点で飛散した液体の1部が液滴として周辺のアスベスト含有吹きつけ層に降りかかり、その表面に付着し、それがアスベスト含有する層を湿潤して、剥ぎ取り時のアスベスト繊維の飛散を防止する作用も有している。また、後処理用シリコーン樹脂液吹き付け器具2は、アスベスト含有層が剥離されたあとの鉄骨や壁材の表面に乳化したシリコーン樹脂を20〜59重量%を含む液体を吹き付けて、表面に残っているおそれがあるアスベスト繊維を飛散しないように固定するためのものである。この2つの吹き出し具が束ねるもの8によって一体化されて、並行して3つの機能を持つ作業が行えるようになっている。なお、作業者の負荷を軽減するために、この一体化された吹き付け具は、バンド7によって作業者の肩や腰にかけることができるようになっており、作業者は取っ手9を持つことによって容易に支点を定め、安定した吹き付け作業が行えるようになっている。
【0010】
ここで言うシリコーン樹脂とは、オルガノクロロシラン類を加水分解し重合して得られる三次元網目構造を有するポリマーであり、一般式としてRSiO4−nと表すことができる。通常、RSiO1/2単位、SiO単位、RSiO単位、およびRSiO3/2単位から選択される単位の組み合わせからなるものであることが好ましい。なお、ここでRとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロへキシル基などのシクロアルキル基、またはフェニル基などから選択される1種または2種以上の炭素数1〜6の1価炭化水素基を挙げることができる。制限はされないが、全体の80%モル以上がメチル基であるシリコーン樹脂を好適に用いることができる。シリコーン樹脂には、通常オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型などがある。制限されないが、本発明で用いられるシリコーン樹脂は、好ましくは水と併用することができるエマルジョン型(O/W型エマルジョン)および自己乳化型である。特に好ましくはエマルジョン型であり、中でも架橋反応により硬化し、シリコーン皮膜を形成する反応性のエマルジョン型シリコーン樹脂が好適に使用できる。ここで反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)は、シリコーン樹脂のベースポリマーおよび架橋ポリマーに触媒や乳化剤を加え、上記ポリマーを水に乳化分散させたものである。当該乳化液の中でベースポリマーと架橋ポリマーはそれぞれマイクロカプセルの状態で存在しており、アスベスト含有被覆層などのアスベスト含有物に対して良好な濡れ性を発揮して速やかに浸透浸潤するが、水が蒸散してマイクロカプセルが壊れると、架橋反応が生じて硬化が進行して繊維表面に皮膜が形成される。商業的に入手できる反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)としては、制限されないが、信越化学工業株式会社のPolon MF−20(商品名)、Polon MF−23(商品名)、Polon MF−56(商品名)、Polon MK−206(商品名)、Polon MWS(商品名)、KM2002T(商品名)、およびKM20002L−1(商品名)などを例示することができる。このシリコーン樹脂を乳化させた液体は、アスベスト含有物の表面を濡らす、被覆層またはアスベスト含有物に速やかに浸透浸潤して、かつ被覆層内またはアスベスト含有物内で粘着剤としての性質を発揮してアスベスト繊維を他の繊維と結びつけることができる。また水が蒸散して乾燥すると(または必要に応じて加熱すると)、上記するようにマイクロカプセルが壊れること等によって架橋反応が生じて硬化し、アスベスト繊維をシリコーン樹脂内に安定して保持することができる。
【0011】
高圧液体吹き付け器具1で用いる液体が、乳化したシリコーン樹脂を2.5〜45.0重量%含むものにする理由は次ぎの通りである。2.5重量%未満の場合は、粘度と界面張力の関係でアスベスト含有層の表面に付着できる液体の量が少なすぎて、層内部を十分に湿潤できない。したがって、2.5重量%以上にすることが必要である。
一方、これが45.0重量%超であると、アスベスト含有層の表面に付着した液体が
層内に湿潤する速度が小さすぎて、その部分の剥ぎ取りが行われるまでの間に内部まで十分に湿潤されず、剥ぎ取り時にアスベスト繊維の飛散が起こるおそれがあるので好ましくない。一方、後処理用シリコーン樹脂吹き付け器具2で用いるのは、乳化したシリコーン樹脂を20〜59重量%を含む液体である理由は次の通りである。20%未満であれば、その液体が乾燥後、シリコーン樹脂が硬化してできた膜が薄過ぎて、鉄骨などの表面に残留したアスベスト繊維を安定して捕捉するのに十分でない。一方、59重量%超であると、液体を霧状化しにくくなるので、処理後の樹脂が硬化したあとの鉄骨などの表面に凸凹ができるので好ましくない。
【0012】
高圧液体吹き付け器具1に供給される液体は、供給液体槽6−1からポンプ(例えばビストンポンプ)5−1、プランジャーセラミックポンプなどによって圧縮され吐出圧2.5MPa以上、望ましくは6.0MPa以上,10.0MPa以下にして、1時間50リットル以上、3500リットル以下である。高圧液体吹き付け器具1としてはインサートグリップ銃(カプラー付き、あるいはニップル付き)スパット銃(ニップル付き)などが用いられる。これを用いてのアスベスト含有層の剥離は、アスベスト含有物の吹き付け層と鉄骨の間に高圧水による力を加えて吹き付け層を剥離させて、細かく砕きすぎない方が有利であるので、まず、吹き付け層の1部を高圧水あるいは人力によって剥離させて、そのあとは鉄骨との境界面に高圧水を当てて剥ぎ取るという方式が適している。この液体を供給する器具は先端部を除いて、まっすぐな管で形成されている。一方、後処理用シリコーン樹脂液吹き付け器具2は、通常の噴霧用に用いられるポンプに連結したものであるが、管が曲げることができる構造部分4になっていて、液体が剥ぎ取り後の鉄骨などの表面に向かうように、方向が自由に設定できるようになっている。なお、器具1,2の液体流量は、弁10の操作によって独立して制御できる。
【0013】
剥ぎ取りに用いた液体および剥ぎ取り物は、高圧液体吹き付け部の下に設けられた受け口、あるいは下に敷いたシートなどを介して回収される。それを、まず槽内で静置して沈殿分離し、ついでフィルターを用いてのろ過、さらに必要によっては遠心分離機にかけて、固体分の大半を取り除き、得られた液体分は第1の用途として、高圧液体吹き付け器具1に供給される液体として循環使用される。その場合にシリコーン樹脂の濃度は、特に再調整する必要はない。なお、作業現場における剥離の作業と、回収された液体からの固体分離作業の時間差のために、その作業現場における剥離作業で使用できなかった固液分離処理後の液体については、容器に収めておいて別の現場での剥離作業に使用することができる。
【0014】
一方、0013の処理で分離されたアスベストを含有する固体分は通常、水分を50重量%以上、多い場合には65重量%以上含んでいる。これは手で握ると水が滴り落ちる状態であるであるが、これを圧縮・成型する装置を図2示す。アスベスト含有物が投入される槽11の部分、そのアスベスト含有物をスクリューコンベア15により所定量ずつ切り出し供給する部分12、およびそのアスベスト含有物を受け、押圧機で圧縮する収容体13の部分から構成される。槽11は支持台16によって支持されている。収容体13は、槽11およびスクリューコンベアにより所定量ずつ切り出し供給する部分12が1つに対して3つ設けて、回転によって、収容、プレスによる圧縮、および圧縮成型物の取り出しを並行して行えようにする。具体的には、収容体13は、軸線が鉛直方向を向くように配置されており、円形の回転板230に貫通孔14を設けて取り付けられ軸線周りに回転可能に構成されている。収容体13の下面は固定された基板240に接しており、回転時には摺動する。回転板230が回転することによって収容体13が軸線周りに回転し、収容体13は、3つの位置に配置されるようになっている。第1の位置は、スクリュー13内に投入される。第2の位置は、第1の位置で投入されたアスベスト含有体がこの位置で圧縮される。つまり、第2の位置の上方には、プレスのような押圧具250が配置されており、上方から収容体13に進入可能となっている。そして、第2の位置に隣接する第3の位置の下方には、ベルトコンベア270が配置されている。一方、第3の位置の上方には、上下動可能に支持された押し出し具280が配置されており、第3の位置に収容体13内に進入し、圧縮成型物をベルトコンベア270上に押し出すようになっている。なお、基板240の圧縮成型物が下方へと押し出されるようになっている。また、液体分の回収容器260、ベルトコンベア270、及び収容体3を回転させるモーター290は、支持台16の内部に収容されている。まず、収容体13は鉄などの金属で作られた円柱体であるが、その壁面に複数個の孔を設けられている。その孔は、圧縮時に水をスムースに排出するとともに、できるだけアスベスト含有物が収容体の外に出るのを抑制するという役割をする。そのために、その孔7の断面積は、収容体の壁面の内部より外部の方が大きいものとする。このように孔の断面積を変えるには、孔に断面が円形でテーパーを設けても、あるいは2段階あるいはそれ以上の階段状であってもよい。収容体の内面に開いた部分の直径は、1mm以上、3mm以下(円形でない場合は断面積として、3.2mm以上、28.8mm 以下とする。一方、収容体3の外面に開けられた孔の部分は、2mm以上、8mm以下(円形でない場合は断面積として、12.8mm以上、205mm以下とする。このように、収容体から出てきた一部、泥状のアスベスト含有物を含む水分は、基板240に取り付けられた遮蔽版12によって、基板から外に流れ出るのを押さえられ、基板240に設けられた開口部から下に流れ落ち、回収装置260に集められる。なお、収容体13を支える基板240にも同様の孔を設けて水を排出する。
次に上記のように構成された処理装置用いた圧縮・成型の処理工程について説明する。槽11にアスベスト含有の処理対象物を投入すると、このアスベスト含有体は、スクリューコンベア15によって所定量ずつ下方に落下していき収容体3において第1の位置にある収容体13に投入される。所定量のアスベスト含有体が投入されると、収容体13は回転板230とともに回転し、アスベスト含有体が収容された収容体13が第2の位置に移動される。続いて、第2の位置では、押圧具250が下降し、収容体13内のアスベスト含有体を圧縮する。この過程において、アスベスト含有体に含有されていた水分が、収容体13の壁面に設けられ孔などを通して絞り出され、基板240の開口部から流れ出し、回収容器260で回収される。所定の圧縮が完了すれば、収容体13がさらに回転し、成型物が入っている収容体13が第3の位置へ移動される。そして、この位置においては、押し出し具280が下降して、収容体13内の成型物をベルトコンベア270上に落下させる。こうして、圧縮成型物60はベルトコンベア270によって搬送されていく。各収容体3でこの処理が1つづつずれて並行して行われる。そのため、アスベスト含有体の圧縮は、半連続的に行われる。斯くしてアスベスト含有物(乾燥時の見かけ比重:0.3−0.4程度)であったものを、見かけ比重1.5以上、好ましくは1.8〜2.1程度にまで増すことができ、アスベスト含有物の見かけ容積(乾燥時)を1/5〜1/7程度まで減らすことができる。なお、回収容器中の泥状のアスベストを含有する水は、0013で述べた回収液体処理に加えて行うことができる。
【0015】
第2の実施形態は、図3に示すような装置を用いて行う。実施例1の場合と異なるのは湿潤用シリコーン樹脂吹き付け器具3を加えたことである。これは、高圧液体吹き付け器具1による剥ぎ取りに先行して、アスベスト繊維の飛散を防止するために湿潤を行うためのものであり、乳化したシリコーン樹脂を2.5〜45.0重量%含む液体を吹き付けること以外は、0012で述べた後処理用シリコーン樹脂吹き付け器具3と類似している。これによる吹き付けから5分以上、24時間以内に高圧液体吹き付け器具1による剥ぎ取りが行われるようにすれば剥ぎ取り時のアスベスト繊維の飛散を防止できる。なお、これを行うことによって、圧液体吹き付け器具1で用いる液体は乳化したシリコーン樹脂を含むものでなくてもようが、45.0重量%以下の乳化したシリコーン樹脂を含んでいても問題はない。したがって、0013で述べたように回収された固体分を含む液体を処理して得られた液体を高圧液体吹き付け器具1で用いる液体として循環使用することができる。また、分離された固体分を圧縮、成型することは、0014で述べたのと同じ方法で行うことができる。
【0016】
0014で得られた圧縮・成型物60は最終処分に向けての処理が加えられる。その1つは、ビニール袋につめて密封してから、管理型最終処分場に埋め立てる方法である。もう1つは、成型物を加熱してアスベスト繊維を無害な形態にする方法である。。後者のための1つの方法は、成型物の融点以上に加熱して溶解する方法である。この融点は、アスベスト含有物の成分によって異なり1400あるいは1500℃程度である。溶融する方法は通常の方法では、この高温までの加熱過程でアスベスト繊維がダストとして飛散しやすくその対応が問題である。本発明のように、圧縮・成型した状態で溶融のための装置に加える方法は、このダスト生成を減少させるための有効な手段である。圧縮、成型されたものを利用して、より効率的にアスベスト繊維を無害なものにする方法は、成型物を所定温度以上に加熱して、原子の移動を起こさせ繊維組織を粒状化することである。このための温度は1000あるいは1100℃以上である。この焼成工程においては、圧縮・成型してシリコーン樹脂の硬化作用を利用できるようにしたことは加熱時の伝熱促進、ダスト生成防止などの本質的な意味を持っている。この焼成工程で得られたものは、必要によって粉砕して、例えばセメントなどを加えて成型すれば、ブロックなどに有効利用できる。
【実施例1】
【0017】
体育館の天井の施されたアスベスト剥ぎ取り処理を図1に示した装置を用いて行った。高圧液体吹き付け器具1に供給される液体は、シリコーン樹脂乳化液(エマルジョン型シリコーン樹脂(商品名Polon MF56 信越化学(株)製、樹脂含量46重量%)の重量1に対して、乳化液を重量5の割合で配合したものをプランジャーセラミックポンプによって圧縮された吐出圧7.5MPa、1時間2500リットルを、ホース、インサートグリップ銃(カプラー付き)を通して供給し吹き付けた。一方、後処理用シリコーン樹脂吹き付け具2に供給されるのは、同じシリコーン樹脂の重量1に対して、乳化液を重量1の割合で配合したものを吐出圧1.5MPa、1時間20リットルを、ホース、スプレイ口を通して供給し、剥ぎ取り後の鉄骨表面に吹き付けた。高圧液体吹き付け器具1に対する角度は約45°である。この剥離作業時の雰囲気ガスの試料を採取して5ミクロン以上のアスベスト繊維の数は3本/リットル以下であった。剥離物は水とともに集めて、沈殿とろ過法によって、水分含有量が65重量%の固体剥ぎ取り物を得た。この固体剥ぎ取り物をシリコーン樹脂分は0.5〜1.5重量%含まれていた。これを図2に示した圧縮・成型機にかけて、直径70mm、高さ15〜25mm、見かけ比重1.9の成型物を得た。なお、このときに分離した液体分は、吹き付け後の回収物に合わせて固体分、液体分の分離を処理を行った。成型物は、そしてビニール袋に密封して最終処分場に埋め立てた。一方、回収されたものから固体分を分離して得られた液体は、液体供給槽6−1に戻され、高圧液体吹き付け器具1からの噴出液体に利用された。なお、作業時間の関係でその現場で使用できなかった液体は容器に収めて移動し、別の剥ぎ取り現場で、高圧液体吹き付け器具1に供給する液体として利用された。なお、アスベスト含有層剥ぎ取り後の鉄骨表面には7日後には滑らかなシリコーン樹脂硬化層が観察された。
【実施例2】
【0018】
駐車場の天井に施されたアスベストを15重量%の割合で含むロックウール層(アスベスト含有被覆層、平均厚さ35mm)を、図3に示した吹き付け器具を用いて剥離作業を行った。高圧液体吹き付け器具1に供給する液体は、水と、吹き付け後、固体分を分離して得られた液体分の混合物である。その吹き付け条件は0017で述べたのと同じである。湿潤用シリコーン樹脂液吹き付け器具3に供給する液体は、シリコーン樹脂乳化液(エマルジョン型シリコーン樹脂(商品名Polon MF56 信越化学(株)製、樹脂含量46重量%)の重量1に対して、乳化液を重量2の割合で配合したものであり、吐出圧1.5MPa、1時間30リットルを、ホース、スプレイ口を通して供給し、剥ぎ取り前のアスベスト含有層に面に吹き付けた。高圧液体吹き付け器具1に対する角度は約40°である。後処理用シリコーン樹脂吹き付け具2からの液体の供給条件は、実施例(0017)と同じである。吹き付け時の作業者近傍の大気中に含まれる5ミクロン以上のアスベスト繊維数は1本/リットル以下であった。剥離物を水とともに集めて、沈殿とろ過法によって、水分含有量が65重量%の固体剥ぎ取り物を得た。なお、剥離物の中の、細かい泥状のものの割合は、22重量%であった。この固体分を、図2に示す圧縮・成型機にかけて、直径70mm、厚さ15〜25mm、見かけ比重1.8の成型物を得た。この成型物は、工場に運んで樹脂硬化後、焼成炉で1110℃以上、1時間加熱し、アスベスト繊維の組織を粒状に変えることによって無害化した。これは試験的に安定型処分場に埋め立てて、経過を追跡して問題のないことを確認した。なお、高圧水吹き付け後の水、および圧縮・成型時に分離した水から沈殿とろ過で固体分を分離した水分の処分は0017で述べたのと同じである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の方法は、アスベスト含有吹き付け層の処理だけでなく、アスベストを実質的に含まない吹き付け層の処理にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態で用いる、一体化された2つの吹き付け器具からなる装置を示す。
【図2】本発明の剥ぎ取り物の圧縮、成型に用いる装置の1例を示す。
【図3】本発明の第2の実施形態で用いる、一体化された3つの吹き付け器具からなる装置を示す
【符号の説明】
【0021】
1 高圧液体吹き付け器具
2 後処理用シリコーン樹脂液吹き付け器具
3 湿潤用シリコーン樹脂液吹き付け器具
4 管が曲げることができる構造部分
5−1,5−2,5−3 ポンプ
6−1,6−2,6−3 供給液体槽
7. バンド
8 吹き付け器具を束ねるもの
9 取っ手
10 弁
11 槽
12 所定量づつ切り出し供給する部分
13 収容体
14 貫通孔
15 スクリューコンベア
16 支持台
60 圧縮・成型物
230 回転板
240 基板
250 押圧具
260 液体分の回収容器
270 ベルトコンベア
280 押し出し具
290 モーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つあるいは3つの口から、乳化したシリコーン樹脂を含む液体を同時に吹き出すことを特徴とするアスベストを含有する吹き付け層の処理方法。
【請求項2】
請求項1の作業を行うために用いる液体の、乳化したシリコーン樹脂の濃度、流量および吹き付け方向を独立に制御できる2つあるいは3つの吹き出し具を一体化して、それにバンド部を取り付け、そのバンドを作業者の肩あるいは腰にかけて吹き付ける時の支点を固定できるようにしたことを特徴とするアスベストを含有する吹き付け層の処理に用いる装置。
【請求項3】
請求項1の方法で剥離されたアスベスト含有物を、圧縮、成型しシリコーン樹脂分を硬化させることを特徴とするアスベストを含有する吹き付け層の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−297768(P2008−297768A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143765(P2007−143765)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(300057492)
【Fターム(参考)】