説明

アゼピン核を含むヒスタミン受容体拮抗物質

本発明は、式(I)


で表される化合物、及びその塩、それらの調製方法に関し、それらを含む組成物、さらにはさまざまな障害、例えばアレルギー性鼻炎、の治療におけるその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、その調製方法、それを含有する医薬組成物に関し、さらにはさまざまな疾患、特に呼吸器気道の炎症性及び/又はアレルギー性の疾患の治療におけるその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎、肺炎及びうっ血は、多くの場合、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎などの他の状態が関与している病気状態である。一般に、これらの状態には、さまざまな細胞(特にマスト細胞)からのヒスタミンの放出が関与している炎症が、少なくとも一部、介在している。
【0003】
「枯草熱(hay fever)」とも呼ばれるアレルギー性鼻炎は、世界中で、人口の大部分に影響を及ぼしている。アレルギー性鼻炎には二つのタイプがあり、季節性と通年性である。季節性のアレルギー性鼻炎の臨床症状としては、典型的には、鼻の痒みと刺激、クシャミ、及び多くの場合鼻うっ血を伴う水様鼻汁が挙げられる。通年性のアレルギー性鼻炎の臨床症状は、鼻の閉塞がよりひどくなり得る以外は似たようなものである。どちらのタイプのアレルギー性鼻炎も、喉及び/又は眼の痒み、流涙、眼の周りの浮腫のような他の症状も引き起こし得る。アレルギー性鼻炎の症状は、その程度は、迷惑レベルから衰弱まで、変化し得る。
【0004】
アレルギー性鼻炎及び他のアレルギー状態には、さまざまな細胞系、中でも特にマスト細胞からのヒスタミンの放出が関与している。ヒスタミンの生理的な影響には、古典学的には、H1、H2及びH3と呼ばれる3つの受容体サブタイプが介在している。H1受容体は中枢神経系及び末梢神経系全体に亘って広く分布しており、覚醒状態及び急性炎症に関与している。H2受容体は、ヒスタミンに応答して、胃酸分泌に介在している。H3受容体は、中枢神経系及び末梢神経系のいずれの神経終末上にも存在しており、神経伝達物質放出の抑制に介在している[非特許文献1]。最近、ヒスタミン受容体ファミリーの第4のメンバーが明らかにされ、H4受容体と命名された[非特許文献2]。H4受容体の分布は免疫系及び炎症系の細胞に限られているように見えるが、この受容体についての生理学的な役割はまだ明らかになっていない。
【0005】
血管及び神経終末中のH1受容体の活性化は、多くのアレルギー性鼻炎の症状の原因となっている。そのような症状としては、痒み、クシャミ、及び水様鼻汁産生が挙げられる。選択的H1受容体拮抗薬である、クロルフェニラミン(chlorphenyramine)、セチリジン(cetirizine)、デスロラチジン(desloratidine)及びフェキソフェナジン(fexofenadine)のような経口抗ヒスタミン化合物、並びにアゼラスチン(azelastine)及びレボカバスチン(levocabastine)のような鼻内抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎が関与している痒み、クシャミ及び鼻汁を治療するのには有効であるが、鼻うっ血症状に対しては有効でない[非特許文献3]。つまり、アレルギー性鼻炎の鼻うっ血症状を治療するためには、H1受容体拮抗薬は、プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)又はオキシメタゾリン(oxymetazoline)のような交感神経作用薬との組み合わせで投与されてきた。これらの薬物は、鼻粘膜中のβ−アドレナリン受容体を活性化して、血管の脈管緊張を高めることによって脱うっ血作用を生み出していると考えられている。鼻うっ血を治療するのに交感神経作用薬を用いることは、多くの場合、その中枢神経系への刺激特性、及びその血圧及び心拍数への影響により、限定されている。それゆえ、中枢神経系及び心血管系への影響なしに鼻うっ血を低下させる治療法は、既存の治療法を凌駕する利点を提供し得る。
【0006】
ヒスタミンH3受容体は、中枢神経系終末及び末梢神経終末のいずれにも広く発現しており、神経伝達物質放出の抑制に介在している。単離されたヒト伏在静脈中の末梢交感神経をインビトロ電気刺激すると、ノルアドレナリン放出と平滑筋収縮の増大を生じるが、これは、ヒスタミンH3受容体作動物質によって抑制され得る[非特許文献4;非特許文献5]。H3受容体作動物質はまた、ブタ鼻粘膜における血管緊張に対する交感神経活性化の影響も抑制する[非特許文献6]。インビボでは、H3受容体作動物質は、交感神経活性化によって生じる鼻気道抵抗における低下を抑制する[非特許文献7]。ヒト鼻粘膜中のヒスタミンH3受容体の活性化は、交感神経性血管収縮を抑制する[非特許文献8]。さらに、H3受容体拮抗物質は、ヒスタミンH1受容体拮抗物質との組み合わせで、鼻うっ血の指標である鼻気道抵抗及び鼻腔体積に及ぼすマスト細胞活性化の影響を逆転させることが明らかになっており[非特許文献9]、さらにはヒスタミン誘発鼻閉塞に対してのH3受容体の寄与についてのさらなる証拠が、正常なヒト被験者に対して行われた、ヒスタミンを鼻に負荷して行った研究によって提供されている[非特許文献10]。この点に関してのH3の機序は、新規で、前例がないように見えるが、最終的には、臨床的には何も言ってないということになるかも知れない。
【0007】
特許文献1には、置換されたピペラジン、(1,4)ジアゼピン、及び2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンが、ヒスタミンH3もしくはヒスタミンH1/H3デュアル拮抗物質又は逆作動物質として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/035556号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hill et al., Pharmacol. Rev., 49:253-278, (1997)
【非特許文献2】Hough, Mol. Pharmacol., 59:415-419, (2001)
【非特許文献3】Aaronson, Ann. Allergy, 67:541-547, (1991)
【非特許文献4】Molderings et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch. Pharmacol., 346:46-50, (1992)
【非特許文献5】Valentine et al., Eur. J. Pharmacol., 366:73-78, (1999)
【非特許文献6】Varty & Hey., Eur. J. Pharmacol., 452:339-345, (2002)
【非特許文献7】Hey et al., Arzneim-Forsch Drug Res., 48:881-888, (1998)
【非特許文献8】Varty et al., Eur. J. Pharmacol., 484:83-89, (2004)
【非特許文献9】Mcleod et al., Am. J. Rhinol., 13:391-399, (1999)
【非特許文献10】Taylor-Clark et al., British J. Pharmacol., 1-8, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
デュアルヒスタミンH1及びH3受容体拮抗物質である新規な化合物の群が見出された。「デュアル」ヒスタミンH1及びH3受容体拮抗物質とは、化合物が、いずれの受容体サブタイプにおいても活性を有していることを意味する。例えば、H1受容体における活性は、H3受容体における活性の、およそ100倍以内であり得、例えばおよそ10倍未満であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
つまり、本発明の第1の態様では、式(I)
【化1】

【0012】
[式中、
キノリニル環は、2又は3位においてRにより、5、6、又は7位においてRにより置換され得;
は、−CHCHCOOH、−CH=C(CH)COOH又は−CH=CHCOOHを表し;
は、C1〜6アルキル、アリール又は−C1〜6アルキルアリールを表し;
nは、0又は1を表す]
で表される化合物又はその塩が提供される。
【0013】
式(I)の化合物は、さまざまな疾患、特に、呼吸器気道の炎症性及び/又はアレルギー性の疾患のような炎症性及び/又はアレルギー性疾患、例えば、マスト細胞のような細胞からのヒスタミンの放出が関与しているアレルギー性鼻炎の治療に有用であると期待され得る。さらに、式(I)の化合物は、以下の特性の1つ以上を有し得るという点で、改善されたプロファイルを示し得る:
(i)pKi(pKb)が約7よりも大きい(例えば約8よりも大きい)H3拮抗及び/又は逆作動活性;
(ii)pKi(pKb)が約7よりも大きい(例えば約8よりも大きい)H1受容体拮抗及び/又は逆作動活性;
(iii)より低いCNS浸透。
【0014】
そのようなプロファイルを有する化合物は、鼻内送達に適し得、及び/又は1日1回の投与が可能となり得、及び/又はさらには他の既存の治療薬と比較して改善された副作用プロファイルを有し得る。
【0015】
もう1つの態様では、キノリニル環が、2位においてRによって置換された式(I)の化合物が提供される。
【0016】
もう1つの態様では、Rが、−CHCHCOOHを表す式(I)の化合物が提供される。
【0017】
もう1つの態様では、キノリニル環が、6位においてRによって置換された式(I)の化合物が提供される。
【0018】
もう1つの態様では、Rが、C1〜4アルキル(例えばメチル又はエチル)、フェニル、又は−C1〜4アルキルフェニル(例えば−メチルフェニル)を表す式(I)の化合物が提供される。
【0019】
もう1つの態様では、nは、1である。
【0020】
もう1つの態様では、3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である化合物又はその塩、特に薬学的に許容されるその塩、が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の代表的な化合物としては、限定するものではないが、本明細書に記載されている実施例1〜6の化合物ならびにその塩が挙げられる。
【0022】
本発明では、本明細書に記載した基、態様及び置換基のあらゆるあり得る組み合わせも包含されることは理解すべきである。
【0023】
1〜6アルキルは、単独であれ、又は別の基の一部としてであれ、直鎖又は分枝であり得る。代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル及びn−ヘキシルが挙げられる。好ましいアルキル基は、メチル及びエチルのようなC1〜4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチル)である。
【0024】
本発明は、式(I)の化合物を、遊離塩基として、ならびにその塩として(例えば薬学的に許容される塩として)保護するものであることは理解すべきである。
【0025】
さらに、本明細書の以下の記載における、本発明の化合物又は式(I)の化合物との記載は、遊離塩基としての、又は塩としての、又は溶媒和物としての式(I)の化合物を意味することも理解すべきである。
【0026】
式(I)の化合物の塩は、医薬に使用される可能性があるので、望ましくは、薬学的に許容されるものである。適している薬学的に許容される塩としては、酸又は塩基付加塩が挙げられ得る。用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使われる場合、受容者に投与した場合、式(I)の化合物を(直接的に又は間接的に)提供することができる本発明の化合物の薬学的に許容される任意の塩又は溶媒和物を意味する。適している塩についてのレビューについては、Berge et al., J. Pharm. Sci., 66:1-19, (1977)を参照されたい。薬学的に許容される塩は、典型的には、所望の酸又は塩基を適宜用いることにより容易に調製され得るものである。得られる塩は、溶液から沈殿し得、そして濾過により捕集され得、あるいは溶媒を蒸発させることにより、回収され得る。
【0027】
薬学的に許容される塩基付加塩は、場合によっては適している溶媒中で、式(I)の化合物を適している無機又は有機の塩基、例えばトリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン、アルギニン、リシン又はヒスチジンと反応させて、その塩基付加塩(これは、通常、例えば、結晶化及び濾過により単離される)を得ることにより生成され得る。薬学的に許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩のようなアリカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ならびに有機塩基との塩(例えば、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN−メチル−D−グルカミンのような一級、二級及び三級アミンとの塩)が挙げられる。
【0028】
薬学的に許容される酸付加塩は、場合によっては有機溶媒のような適している溶媒中で、式(I)の化合物を、適している無機又は有機の酸(例えば臭化水素酸、塩化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸のようなナフタレンスルホン酸、又はヘキサン酸)と反応させて、その塩(これは、通常、例えば、結晶化及び濾過により単離される)を得ることにより生成され得る。式(I)の化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、例えば、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば2−ナフタレンスルホン酸塩)又はヘキサン酸塩を含み得る、又はそれらであり得る。
【0029】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はそのギ酸塩が提供される。
【0030】
他の薬学的に許容されない塩、例えばシュウ酸塩やトリフルオロ酢酸塩は、例えば式(I)の化合物を単離するのに用いられ得るので、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
本発明では、その範囲内に、式(I)の化合物の塩の、あらゆるあり得る化学量論形態及び非化学量論形態が含まれる。
【0032】
多くの有機化合物は、その化合物の反応が行われる、又はその化合物の沈殿又は結晶化が行われる溶媒と、複合体を形成し得ることは理解されるだろう。このような複合体は、「溶媒和物」と呼ばれる。例えば、水との複合体は、「水和物」と呼ばれる。溶媒和物を形成させるためには、水、キシレン、N−メチルピロリドン、メタノール及びエタノールのような高沸点を有する、及び/又は水素結合を形成することができる溶媒が用いられ得る。溶媒和物の特定方法としては、限定するものではないが、NMR及び微量分析が挙げられる。式(I)の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内に入る。
【0033】
式(I)の化合物は、結晶又は非晶の形態であり得る。さらに、式(I)の化合物の一部の結晶形態は、多形体としても存在し得、これも、本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物の最も熱力学的に安定な多形体が、特に、関心の対象である。
【0034】
式(I)の化合物の多形形態は、限定するものではないが、X線粉末回折(XPRD)パターン、赤外(IR)スペクトル、ラマンスペクトル、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)及び固体状態核磁気共鳴(NMR)を含めた、多くの慣用の分析手法を用いて、特性評価及び区別され得る。
【0035】
さらに、本発明には、式(I)の化合物の、シス配置及びトランス配置も含めた幾何異性体、及びエキソ二重結合及びエンド二重結合(例えば−CH=C(CH)COOH及び−CH−C(=CH)COOH)も含めた位置異性体が、実質的に他の異性体を含まないように単離された(すなわち純粋な)個々の異性体としてであれ、あるいはそれらの混合物としてであれ、いずれにしても包含されることは理解されるだろう。つまり、例えば、本発明には、他の異性体が10%未満、例えば1%未満や0.1%未満で存在しているような、実質的に他の異性体を含まない(すなわち純粋な)ように単離された個々の異性体が、包含されている。幾何異性体の分離は、慣用の手法により、例えば分別結晶化、クロマトグラフィー又はHPLCを用いて、達成され得る。
【0036】
一部の式(I)の化合物は、いくつかある互変形態のうちの1つの形態で存在し得る。本発明では、式(I)の化合物のあらゆる互変体が、個々の互変体としてであれ、あるいはそれらの混合物としてであれ、いずれにしても包含されることは、理解されるだろう。
【0037】
上記から、本発明の範囲内に含まれるのは、式(I)の化合物及びその塩の溶媒和物、水和物、複合体、異性体及び多形体であることは理解されるだろう。
【0038】
本発明は、また、式(I)の化合物又はその塩の調製方法も提供する。
【0039】
第1の方法Aによれば、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物を脱保護することにより、調製され得る:
【化2】

【0040】
[式中、
キノリニル環は、2又は3位においてR1aによって、さらには5、6、又は7位においてRによって置換されており;
1aは、Rのエステルのような、Rの保護された誘導体、例えば、−CHCHCOOR、−CH=C(CH)COOR又は−CH=CHCOOR[式中、Rは、独立して、C〜Cアルキル(例えばメチル、エチル又はt−ブチル、特にメチル)及びその異性体のような保護基を表す]を表し;R及びnは、先に式(I)で定義したとおりである]。
【0041】
脱保護は、標準的な条件下で行われ得る。つまり、カルボン酸エステルの加水分解は、適している塩基、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの存在下に、メタノール/水又はテトラヒドロフラン/水のような適している水性溶媒系中で、場合によっては還流のような高められた温度で、行われ得る。あるいは、カルボン酸エステルの加水分解、例えば、t−ブチルエステルの加水分解は、塩化水素のような適している酸の存在下に、ジオキサン中で、酸加水分解のための標準的な条件下で、行われ得る。
【0042】
式(Ia)の化合物は、式(II)
【化3】

【0043】
[式中、キノリニル環は、本明細書において先に定義したとおりに置換されており、R1a、R及びnは、本明細書において先に定義したとおりである]
の化合物を、式(III)
【化4】

【0044】
[式中、Lは、活性化されたヒドロキシル(例えばメシレートやトシレート)のような脱離基を表す]
の化合物と反応させることにより調製され得る。この三級アミンは、本明細書に記載するような二級アミンのN−アルキル化のための標準的な条件下で、典型的には塩基(例えば炭酸水素ナトリウム)及びアセトニトリルのような適している溶媒の存在下に、約80℃のような高められた温度で、調製され得る。
【0045】
式(III)の化合物は、以下の一般反応スキームに従って調製され得る:
【化5】

【0046】
試薬及び反応条件:(i)適している塩基例えば炭酸カリウム(KCO)、溶媒例えば2−ブタノン、通常高められた温度で、場合によりマイクロ波照射を用いて、さらには場合により触媒量の活性化作用物質例えばヨウ化カリウムを用いて;(ii)適している活性化作用物質例えば塩化トシル(TsCl)又は塩化メシル(MsCl)、適切な塩基例えばジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、適している溶媒(例えばジクロロメタン(DCM))中で。
【0047】
1−ブロモ−3−クロロプロパン、ヘキサヒドロ−1H−アゼピン及び式Vの化合物(2−(4−ヒドロキシフェニル)エタノール)は、例えば、Aldrichから、市販されている。
【0048】
式(II)の化合物は、以下の反応スキーム(スキーム1〜3)に従って、調製され得る:
スキーム1
【化6】

【0049】
[式中、キノリニル環は、3位においてCHによって置換されており、さらにはnが1である場合は、5、6、又は7位においてBrによって置換されており、R1aは、本明細書において先に定義したとおりであり、Pは、ベンジルカルバメート(cbz)やジ−tert−ブチルジカルボネート(BOC)のような保護基を表す]。
【0050】
試薬及び反応条件:(i)炭酸カリウムのような適している塩基の存在下にある適している溶媒例えばジメチルスルホキシド中でのピペラジンとの反応、高められた温度例えば約100℃〜約150℃で;(ii)ベンジルクロロホルメート又はジ−tert−ブチルジカルボネートを用いてのcbz又はBOCのような適している保護基による保護、典型的にはトリエチルアミン及び/又はジメチルアミノピリジンのような適している塩基の存在下に、ジクロロメタン(DCM)のような適切な溶媒中で;(iii)二酸化セレンのような適している酸化剤による酸化、ジオキサンのような適切な溶媒中で、約55℃〜約80℃のような高められた温度で、窒素下で;(iv)テトラヒドロフラン(THF)のような適している溶媒中でのメチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート又はカルボエトキシメチレントリフェニルホスホランのような適しているリンイリドとのウィッティッヒ(Wittig)反応、約65℃のような高められた温度で;(v)トリエチルボラン又はB−ベンジル−9−ボラビシクロノナンのような適切なアルキルボロンによるアルキル化、典型的にはパラジウムの触媒作用下で、適している塩基例えば炭酸カリウムの存在下に、DMFのような適している溶媒中で、場合によっては高められた温度で、又は、THF:N−メチルピロリジノン(9:1)のような溶媒中でアセト酢酸鉄(III)(Fe(acac))のような鉄触媒の存在下で適切なグリニャール試薬から行う別の方法では、典型的には5℃〜20℃で;(vi)トリフルオロ酢酸、又は、BOC脱保護の場合は、塩化水素/ジオキサンのような適している酸の存在下のような標準的な条件下での脱保護。
【0051】
式(XI)の化合物は、公知又は市販の物質から作出され得る。メチル基が2位にある式(XI)の化合物は、スクラウプ(Skraup)キノリン合成(典型的には、5M塩化水素のような強酸の存在下、適している溶媒例えばトルエン中、約100℃のような適切な高められた温度でのクロトンアルデヒドと適切なアニリンとの反応が、含まれる)によって調製され得る。入手可能なアニリンとしては、4−ブロモ−2−フルオロアニリン及び5−ブロモ−2−フルオロアニリンが挙げられ、これらは、例えば、Fluorochemから市販されている。3−ブロモ−2−フルオロニトロベンゼンが、Acta Chem. Scand. Series B, 1975, B29, 981-2に開示されているが、これは、当業者には周知の方法を用いて、例えば、適切な還元剤(例えば塩化スズもしくは鉄)を用いて、そのニトロ基を、適切な酸、例えば塩酸で還元することによって、3−ブロモ−2−フルオロアニリンに変換され得る。
【0052】
スキーム1中にある、nが0である式(VII)の化合物は、以下の反応スキームによっても調製され得る(スキーム2):
スキーム2
【化7】

【0053】
[式中、キノリニル環は、表示されているように、2又は3位においてCHO又はR1aによって置換されており、R1aは、本明細書中先に定義したとおりである]。
【0054】
試薬及び反応条件:(i)先に述べたイリドのような適しているイリドを用いたウィッティッヒ(Wittig)反応、トルエンのような適している溶媒中で、場合によっては高められた温度例えば約50℃で;(ii)酢酸エチルのような適している溶媒中の10%w/wパラジウム/炭素の存在下での場合による水素化により、R1aが−CH−CHCOOR[式中、Rは、本明細書中先に定義したとおりである]を表す化合物を得る;(iii)適している活性化剤例えばN−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンアミド)による活性化、適している塩基例えばトリエチルアミンの存在下で、DMFのような適している溶媒中で、又は、ピリジンの存在下で、低められた温度例えば約0℃での無水トリフルオロメタンスルホン酸による活性化;(iv)適している溶媒(例えばTHF)の存在下、1,1−ジメチルエチル1−ピペラジンカルボキシレート、炭酸セシウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルによるアルキル化、場合によっては高められた温度で。
【0055】
式(XV)の化合物、例えば8−ヒドロキシキノリン−2−カルボキシアルデヒドは、Acrosから市販されているが、公知の物質からも調製され得る。つまり、例えば、アルデヒド基が3位にある式(XV)の化合物は、対応するメチルキノリン(これは、Tetrahedron, 1996, 52, 2937-2944(scheme 2, compound 2aを参照されたい)に開示されている)から、適切な酸化剤(例えば二酸化セレン)で酸化させることにより調製され得る。
【0056】
式(VII)の化合物は、本明細書に記載したような標準的な条件下での水素化のような慣用の相互転換手順を用いた、式(VII)の他の化合物からの相互転換によっても、さらには、これも本明細書に記載した、幾何異性体の異性化によっても、調製され得ることは、理解されるだろう。
【0057】
nが0である、スキーム1中にある式(VII)の化合物は、以下の反応スキームによっても調製され得る(スキーム3):
スキーム3
【化8】

【0058】
[式中、キノリニル環は、表示されているように、3位においてI又はR1aによって置換されており、R1aは、本明細書中、先に記載したとおりである]。
【0059】
試薬及び反応条件:(i)ピペラジンとの反応、適している溶媒例えばジメチルスルホキシド中で、炭酸カリウムのような適している塩基の存在下に、約100℃〜約150℃のような高められた温度で;(ii)ジ−tert−ブチルジカルボネートを用いた、BOCのような適している保護基による保護、典型的にはトリエチルアミン及び/又はジメチルアミノピリジンのような適している塩基の存在下に、DCMのような適切な溶媒中で;(iii)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート又はt−ブチルメタクリレートのようなアクリル酸エステル、トリエチルアミンのような適している塩基、トリフェニルホスフィンのようなホスフィン、酢酸パラジウム(II)のような適している触媒によるヘック(Heck)反応、DMFのような適している溶媒中で、高められた温度(例えば約100℃)で。
【0060】
3位にヨウ素が置換している式(XVIII)の化合物(すなわち8−フルオロ−3−ヨードキノリン)は、国際特許出願である国際公開第05/095346号パンフレット(Description 1, page 12を参照)に開示されており、及び/又は国際特許出願である国際公開第2007039220号パンフレット(page 16, Description 1を参照されたい)に記載されている。
【0061】
アクリル酸エステルは公知であり、及び/又は市販もされている。つまり、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びt−ブチルメタクリレートは、Aldrich及び/又はAcrosから入手可能である。
【0062】
別の方法では、nが0である式(Ia)の化合物は、式(XII)の化合物又は式(XIX)
【化9】

【0063】
[式中、キノリニル環は、2又は3位においてR1aによって置換されている]
の化合物を、式(XX)
【化10】

【0064】
の化合物と反応させることによって調製され得る。
【0065】
このブッフバルト(Buechwald)反応は、典型的には、適している塩基例えば炭酸セシウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)のようなパラジウム触媒、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルのようなリガンドの存在下に、THFのような適している溶媒中、高められた温度例えば還流で行われる。
【0066】
式(XIX)の化合物は、先に述べたウィッティッヒ(Wittig)反応と同じような条件下で、式(XXI):
【化11】

【0067】
の化合物を適切なリンイリドと反応させるウィッティッヒ(Wittig)反応によって調製され得る。
【0068】
式(XXI)の化合物は、適切なメチルキノリンを、本明細書に記載したようにして酸化させることによって、調製され得る。メチルキノリンは、市販されている、及び/又は公知であり、例えば、8−ブロモ−2−メチルキノリンはACB Blocksから入手可能であり、又はLeir, C. M., J. Org. Chem. 42(5):911-913 (1977)(Table 1を参照されたい)によって記載されている方法によっても調製され得る。8−ヨード−2−メチルキノリンは、Maybridgeから入手可能であり、8−ブロモ−3−メチルキノリンは、国際特許出願である国際公開第2002/010131号パンフレットに開示されている。
【0069】
式(XX)の化合物は、以下の反応スキームに従って調製され得る:
【化12】

【0070】
試薬及び反応条件:(i)塩基例えば重炭酸ナトリウム、溶媒例えばアセトニトリル、場合によっては高められた温度例えば還流で;(ii)脱保護例えばテトラブチルアンモニウムフルオリドの存在下にある適している溶媒例えばテトラヒドロフラン中で;(iii)適している塩基例えば炭酸カリウム、適している溶媒例えば2−ブタノンの存在下での1−ブロモ−3−クロロプロパンによるアルキル化;(iv)適している塩基例えば炭酸カリウム、適している溶媒例えば2−ブタノンの存在下でのホモピペラジンによるアルキル化、場合によっては活性化剤例えばヨウ化カリウムの存在下、さらには場合によっては高められた温度例えば還流で;(v)脱保護例えばトリフルオロ酢酸の存在下で。
【0071】
第2の方法(B)によれば、式(I)の化合物は、
(i)式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(Ia)の化合物を生成させる;及び
(ii)式(Ia)の化合物を脱保護させて、式(I)の化合物を生成させる;
ことによって調製され得る。方法(B)では、中間体化合物である式(Ia)を、単離する必要がない。
【0072】
第3の方法、C、によれば、式(I)の化合物は、式(I)の他の化合物からの相互転換によって調製され得る。つまり、式(I)の化合物は、幾何異性体の異性化例えばシスとトランス異性体間の相互転換やエキソ二重結合とエンド二重結合との相互転換のような慣用の相互転換手順、例えば−CH=C(CH)COOHと−CH−C(=CH)COOHとの相互転換を用いて、式(I)の他の化合物からも調製され得る。つまり、式(I)の他の化合物からの相互転換(方法C)は、本発明のなおさらなる態様を形成する。
【0073】
第4の方法、D、によれば、式(I)の化合物の塩は、対イオンの交換、つまり遊離塩基から得られるそのような塩の沈殿によって、調製され得る。
【0074】
記載した合成経路に用いられ得る保護基の例ならびにその除去方法は、T. W. Greene ‘Protective Groups in Organic Synthesis' (3rd edition, J. Wiley and Sons, 1999)に記載されている。適しているアミン保護基としては、スルホニル(例えばトシル)、アシル(例えばアセチル、2’,2’,2’−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はt−ブトキシカルボニル)及びアリールアルキル(例えばベンジル)が挙げられ、これらは、適宜、加水分解により(例えば、塩化水素/ジオキサンや、トリフルオロ酢酸/ジクロロメタンのような酸を用いて)、又は還元的(例えば、ベンジル基の水素化分解や、亜鉛/酢酸を用いた2’,2’,2’−トリクロロエトキシカルボニル基の還元的除去)に除去され得る。他の適しているアミン保護基としては、トリフルオロアセチル(−COCF)(これは、塩基触媒加水分解により除去され得る)、又は固相樹脂結合ベンジル基(例えばメリフィールド(Merrifield)樹脂結合2,6−ジメトキシベンジル基(エルマン(Ellman)リンカー)(これは、酸開裂により、例えばトリフルオロ酢酸で、除去され得る)が挙げられる。
【0075】
本明細書に記載した新規な中間体は、本発明のもう1つの態様を形成することは、理解されるだろう。
【0076】
式(I)の化合物(又はその薬学的に許容される塩)が、有効な抗炎症及び/又は抗アレルギー効果を有していると期待され得る疾患状態の例としては、呼吸器気道の炎症及び/又はアレルギー疾患、例えば気管支炎(慢性気管支炎も含めて)、喘息(アレルゲン誘発喘息反応も含めて)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、副鼻腔炎及びアレルギー性鼻炎(季節性及び通年性)のようなアレルギー性鼻炎や他の疾患が挙げられる。
【0077】
さらに、本発明の化合物は、腎炎、乾癬のような皮膚疾患、湿疹、アレルギー性皮膚炎、及び超過敏反応、の治療に有用であり得る。さらには、式(I)の化合物は、虫刺されの治療にも有用であり得る。
【0078】
式(I)の化合物は、鼻腔ポリープ症、結膜炎又は掻痒の治療にも、有用であり得る。
【0079】
特に関心の対象となる疾患は、アレルギー性鼻炎である。
【0080】
ヒスタミンが病理生理的な役割を有し得る他の疾患としては、非アレルギー性鼻炎、さらには、炎症性腸疾患(例えばクローン病又は潰瘍性大腸炎)、及び放射線曝露又はアレルゲン曝露に続発性の腸管炎症疾患も含めた腸管炎症疾患のような胃腸管の疾患、も挙げられる。
【0081】
本明細書で治療又は治療薬を言及する場合は、確立された病態の治療と並んで予防にも及ぶことは、当業者なら理解するだろう。
【0082】
上記したように、式(I)の化合物は、治療薬として有用であり得る。つまり、治療で使用するための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0083】
もう1つの実施形態では、3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である、治療で使用するための化合物、又はその薬学的に許容される塩、が提供される。
【0084】
もう1つの実施形態では、上記疾患のいずれかを治療するための医薬を製造するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0085】
もう1つの実施形態では、上記疾患のいずれかを治療するための医薬を製造するための、3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である化合物、又はその薬学的に許容される塩、の使用が提供される。
【0086】
もう1つの実施形態では、上記疾患のいずれかの治療方法が提供され、該方法には、治療を必要とするヒト又は動物対象に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することが含まれる。
【0087】
もう1つの実施形態では、上記疾患のいずれかの治療方法が提供され、該方法には、治療を必要とするヒト又は動物対象に、3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である化合物、又はその薬学的に許容される塩、の有効量を投与することが含まれる。
【0088】
治療で使用する場合、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、典型的には、適している組成物に製剤化され得る。そのような組成物は、標準的な手順を用いて、調製され得る。
【0089】
つまり、場合により1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物が提供される。
【0090】
さらに、場合により1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である化合物、又はその薬学的に許容される塩、を含む組成物も提供される。
【0091】
好適には環境温度及び大気圧での混合により調製され得る、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物は、局所投与(これには、経皮投与、吸入投与、鼻腔内投与又は経眼投与が含まれる)、経腸投与(これには、経口投与及び経直腸投与が含まれる)、又は非経口投与(例えば注射又は輸液による)に適し得る。関心の対象となるのは、局所投与に適した、特に、鼻腔内投与に適した、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物である。
【0092】
一般に、組成物は、投与の経路からの必要性に応じ、溶液もしくは懸濁液(水性又は非水性)、錠剤、カプセル、経口用液体調製物、粉末、顆粒、ロゼンジ、ローション、クリーム、軟膏、ジェル、フォーム、再組成可能粉末、又は坐剤の形態であり得る。
【0093】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物は、一般に、約0.1%〜99%(w/w)、例えば約10〜60%(w/w)(組成物の全体重量を基準にして)の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み得るが、投与の経路によっても左右される。前記した疾患の治療に使用される本化合物の用量は、慣例のとおり、疾患の重症度、病人の体重、さらには他の似たような要因により、変わるものである。しかしながら、一般的な指針としては、適している単位用量は、約0.05〜1000mg、例えば約0.05〜200mgであり得、さらにはそのような単位用量は、1日あたり1回よりも多く、例えば1日あたり2回又は3回あるいは望まれるとおりに、投与され得る。このような治療は、何週間あるいは何ヶ月にも及び得る。
【0094】
局所用組成物中の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の割合は、調製される組成物の正確な種類及び投与の具体的な経路によって左右されるものであるが、一般には、組成物の全体重量を基準にして、約0.001〜10%(w/w)の範囲内にあるものである。しかしながら、ほとんどの種類の調製物にとっては、その割合は、一般には、組成物の全体重量を基準にして約0.005〜1%(w/w)、例えば約0.01〜1%(w/w)、あるいは約0.01〜0.5%(w/w)の範囲内にあるものである。しかしながら、吸入用の粉末では、用いられる割合は、一般には、組成物の全体重量を基準にして約0.1〜5%(w/w)の範囲内にあるものである。
【0095】
一般には、鼻腔内投与又は吸入投与に適した組成物は、都合よくは、場合によっては水性もしくは非水性ビヒクル、増粘剤、等張性調整剤、抗酸化剤、及び/又は防腐薬などの1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒にして、エアロゾル、溶液、懸濁液、ドロップ、ジェル、又は乾燥粉末として製剤化され得る。
【0096】
鼻腔内投与又は吸入投与に適した組成物では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、典型的には、粒子サイズが小さくされた形態であり得るが、これは、慣用の手法、例えば、マイクロナイゼーション、ミリングによって、調製され得る。一般には、サイズが小さくなった(例えば、マイクロナイゼーションされた)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、D50値が、約0.5〜10ミクロン、例えば約2〜4ミクロン(例えば、レーザー回折を用いて測定した場合)であると定義され得る。
【0097】
1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物は、鼻腔内投与に適している。式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む鼻腔内用組成物は、その化合物を、鼻腔のあらゆる部分(その標的組織)に、さらにはそれを超えて、送達させ得、またその化合物を、標的組織と長期間接触を続けさせ得る。鼻腔内用組成物のための1つの適している投与方法は、患者が、鼻腔をきれいにした後、鼻からゆっくり吸入する方法であろう。投与の際は、組成物は、一方の外鼻孔を手で押さえつけながらもう一方の外鼻孔に投与されるものである。この後、この手順は、もう一方の外鼻孔に対して繰り返されるものである。典型的には、外鼻孔あたり1回又は2回のスプレーが、上記手順により、それぞれの日あたり2回又は3回まで(原則的には1日1回)投与されるものである。特に関心の対象となるのは、1日1回の投与に適した鼻腔内用組成物である。
【0098】
鼻腔内用組成物は、場合により、1種以上の懸濁化剤、1種以上の防腐薬、1種以上の湿潤剤及び/又は1種以上の等張性調整剤を所望どおりに含み得る。鼻腔内投与に適した組成物は、場合により、抗酸化剤(例えばメタ重亜硫酸ナトリウム)、味覚マスキング剤(例えばメントール)及び甘味料(例えば、デキストロース、グリセロール、サッカリン及び/又はソルビトール)のような他の賦形剤をさらに含み得る。
【0099】
懸濁化剤は、含まれる場合は、典型的には、組成物の全体重量を基準にして約0.1〜5%(w/w)、例えば約1.5%〜2.4%(w/w)の量で存在するものである。懸濁化剤の例としては、Avicel(登録商標)、カルボキシメチルセルロース、ビーガム(veegum)、トラガント、ベントナイト、メチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられ、例えば微結晶セルロースやカルボキシメチルセルロースナトリウムである。懸濁化剤は、吸入投与、経眼投与及び経口投与に適した組成物にも適宜含まれ得る。
【0100】
安定性のために、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む鼻腔内用組成物は、防腐薬を含ませることにより微生物又は菌類による汚染及び増殖から保護され得る。薬学的に許容される抗微生物薬つまり防腐薬の例としては、四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド(cetrimide)、及び塩化セチルピリジニウム)、水銀剤(例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、及びチメロサール(thimerosal))、アルコール剤(例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、及びベンジルアルコール)、抗菌エステル(例えば、パラヒドロキシ安息香酸のエステル)、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム(EDTA)のようなキレート剤、さらにはクロロヘキシジン、クロロクレゾール、ソルビン酸及びその塩(例えばソルビン酸カリウム)ならびにポリミキシンのような他の抗微生物薬が挙げられ得る。薬学的に許容される抗菌剤つまり防腐薬の例としては安息香酸ナトリウムも挙げられ得る。防腐薬は、含まれる場合は、組成物の全体重量を基準にして約0.001〜1%(w/w)、例えば約0.015%(w/w)、の量で存在し得る。防腐薬は、他の投与の経路に適した組成物にも適宜含まれ得る。
【0101】
懸濁化された医薬を含む組成物は、医薬粒子を湿潤化させて、組成物水相中でのその分散を容易にするように働く薬学的に許容される湿潤剤を含み得る。用いる湿潤剤の量は、典型的には、混合の際に分散物の泡立ちを引き起こさないような量にするものである。湿潤剤の例としては、脂肪アルコール、エステル及びエーテル、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Polysorbate80)が挙げられる。湿潤剤は、鼻腔内用組成物中には、組成物の全体重量を基準にして約0.001〜0.05%(w/w)、例えば約0.025%(w/w)、の量で存在し得る。湿潤剤は、他の投与の経路、例えば吸入投与及び/又は経眼投与に適した組成物中にも適宜含まれ得る。
【0102】
体液(例えば鼻腔液)との等張性を確立させるための等張性調整剤が含まれていると、刺激のレベルが低くなり得る。等張性調整剤の例としては、塩化ナトリウム、デキストロース、キシリトール及び塩化カルシウムが挙げられる。等張性調整剤は、組成物の全体重量を基準にして約0.1〜10%(w/w)、例えば約5.0%(w/w)、の量で鼻腔内用組成物中に含まれ得る。等張性調整剤は、他の投与の経路に適した組成物中、例えば吸入投与、経眼投与、経口液体投与、ならびに非経口投与に適した組成物中にも適宜含まれ得る。
【0103】
さらに、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む鼻腔内用組成物は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、リン酸二ナトリウム(例えばその十二水和物、七水和物、二水和物及び無水物形態)やリン酸ナトリウムのようなリン酸塩、及びこれらの混合物のような適している緩衝剤を加えることによって緩衝化され得る。緩衝剤は、他の投与の経路に適した組成物中にも適宜含まれ得る。
【0104】
鼻炎を治療するために、例えば鼻又は肺に局所的に投与するための組成物としては、加圧式エアゾール組成物、及びポンプ加圧により鼻腔に送達される水性組成物が挙げられる。非加圧式であり、且つ局所的に鼻腔に投与されるように適応されている組成物は、特に、関心の対象である。この目的のために、適している組成物は、水を希釈剤又は担体として含んでいる。肺又は鼻に投与するための水性組成物は、緩衝剤、等張性調整剤などのような慣用の賦形剤と一緒にして、提供され得る。水性組成物は、噴霧によっても、鼻に投与され得る。
【0105】
鼻腔に流体組成物を送達させるためには、典型的には、流体ディスペンサーが用いられ得る。流体組成物は水性又は非水性であり得るが、典型的には水性である。そのような流体ディスペンサーは、放出ノズル又は放出オリフィスを有し得、流体ディスペンサーのポンプ機構に使用者が加える力が加えられると、ここから流体組成物の計量用量が放出される。そのような流体ディスペンサーは、一般に、流体組成物の複数計量用量の貯槽を具備しており、ポンプを連続的に動かすとその用量が放出可能となっている。放出ノズル又はオリフィスは、流体組成物が鼻腔の中にスプレー放出されるよう、使用者の外鼻孔の中に挿入される形に設計され得る。上記したタイプの流体ディスペンサーは、国際公開第05/044354号パンフレット(これの全内容をここにおいて参照により本明細書に組み込む)に記載・説明されている。このディスペンサーは、ハウジングを有しており、ハウジングの中には流体吐出装置が収容されており、流体吐出装置は圧縮ポンプを有しており、この圧縮ポンプは流体組成物を入れるための容器に取り付けられている。ハウジングは少なくとも1個の、指で操作できるサイドレバーを有しており、このサイドレバーはハウジングに対して中の方へ動かせるようになっていて、容器を、ハウジングの中を上の方へカム移動させ、それによってポンプが圧縮され、組成物の計量用量がポンプステムからハウジングの鼻腔ノズルを通って吐出されるようになっている。1つの実施形態では、この流体ディスペンサーは、国際公開第05/044354号パンフレットの図30〜40に図示されている一般的なタイプのものである。
【0106】
1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む鼻腔内用組成物が提供される。もう1つの態様では、そのような鼻腔内用組成物は、塩化ベンザルコニウムを含まないものである。
【0107】
吸入投与には、肺への局所投与、例えばエアゾール組成物又は乾燥粉末組成物による肺への局所投与も含まれる。
【0108】
吸入投与に適したエアゾール組成物は、化合物の、薬学的に許容される水性又は非水性溶媒溶液又は微細懸濁液を含み得る。吸入に適したエアゾール組成物は、懸濁液か又は溶液であり得、一般には、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、フルオロカーボン又は水素含有クロロフルオロカーボンあるいはこれらの混合物、例えばヒドロフルオロアルカン、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン又はこれらの混合物、のような適している推進剤とを含む。エアゾール組成物は、場合によっては、界面活性剤や共溶媒のような当技術分野で周知のさらなる賦形剤も含み得る。界面活性剤の例としては、限定するものではないが、オレイン酸、レシチン、例えば国際公開第94/21229号パンフレット及び国際公開第98/34596号パンフレットに記載のオリゴ乳酸又は誘導体が挙げられる。共溶媒の例としては、限定するものではないが、エタノールが挙げられる。エアゾール組成物は、1回用量又は複数回用量の量で、滅菌形態にて密封容器に入れて提供され得、該密封容器は、噴霧装置又は吸入器と一緒に使用するためのカートリッジ又はリフィルの形態を取り得る。あるいは、密封容器は、単一用量鼻腔内吸入器や計量バルブが装着されたエアゾールディスペンサー(計量用量吸入器)のような、一旦容器の内容物が使い果たされると廃棄されることになる一体型放出装置であり得る。
【0109】
乾燥粉末吸入可能組成物は、吸入器又は吹き入れ器に入れて使用するための、例えばゼラチンでできたカプセル又はカートリッジの形態、あるいは例えば積層アルミフォイルでできたブリスターの形態、をとり得る。そのような組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とラクトースやデンプンのような適している粉末基剤との粉末ミックスを含めて、製剤化され得る。
【0110】
乾燥粉末吸入可能組成物では、場合により、吸入投与に適した組成物は、適している吸入装置内部にあるストリップ又はリボンの長さ方向に取り付けられた複数の密封された用量容器(例えば、乾燥粉末組成物が、含まれている)の中に組み込まれ得る。この容器は、オンデマンドで開裂可能又は剥離開口可能となっており、例えば乾燥粉末組成物の用量が、DISKUS(商標)装置(GlaxoSmithKlineから販売されている)のような装置を介して吸入により投与され得る。このDISKUS(商標)吸入装置は、例えば、英国特許出願公開第2242134号明細書に記載されており、さらにはそのような装置においては、粉末形態にある組成物のための少なくとも1個の容器(この容器(1個又は複数個)は、例えば、ストリップ又はリボンの長さ方向に取り付けられた複数の密封された用量容器であり得る)が、互いに剥離可能に貼り付けられた2枚の部材間に画定されており、該装置は、そのような容器(1個又は複数個)のための開口部場を画定する手段;その開口部場で部材を剥ぎ離して容器を開口するための手段;及びその開口された容器と連通している放出口(この放出口を通して、使用者は、その開口された容器から、粉末形態にある組成物を吸入することができる);を有している。
【0111】
エアゾール組成物は、典型的には、エアゾールの各計量用量又は「一吸い(puff)」が、約20μg〜2000μg、特に約20μg〜500μg、の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含むように準備される。投与は1日1回又は1日数回(例えば2、3、4又は8回)であり得、各回1、2又は3用量が与えられ得る。エアゾールによる1日あたりの全体用量は、約100μg〜10mgの範囲内、例えば約200μg〜2000μg、となるだろう。吸入器又は吹き入れ器中のカプセル及びカートリッジによって送達される1日あたりの全体用量及び計量用量は、一般には、エアゾール組成物によるものの二倍になるだろう。
【0112】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、経皮投与に適している組成物が提供される。1日あたり1回以上の塗布により、冒された部分(例えば皮膚)に塗布されることになる経皮組成物は、例えば、軟膏、クリーム、エマルジョン、ローション、フォーム、スプレー、水性ジェル、又はマイクロエマルジョンの形態にあり得る。そのような組成物は、1種以上の可溶化剤、皮膚浸透促進剤、界面活性剤、芳香剤、防腐薬、又は乳化剤を、場合により含み得る。
【0113】
軟膏剤、クリーム剤、及びジェル剤は、例えば、適している増粘剤及び/又はゲル化剤及び/又は溶媒を加えて水性又は油性の基剤と一緒にして、製剤化され得る。つまり、そのような基剤としては、例えば、水、及び/又は液状パラフィンのような油、又は落花生油やひまし油のような植物油、あるいはポリエチレングリコールのような溶媒が挙げられ得る。基剤の特質に応じて用いられ得る増粘剤及びゲル化剤としては、軟パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、蜜蝋、カルボキシポリメチレン、及びセルロース誘導体、及び/又はモノステアリン酸グリセリル、及び/又は非イオン性乳化剤が挙げられる。ローション剤は水性又は油性基剤と一緒にして製剤化され得、一般に、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、又は増粘剤も含むものである。
【0114】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、経眼投与に適している組成物が提供される。そのような組成物は、1種以上の懸濁化剤、1種以上の防腐薬、1種以上の湿潤/潤滑剤、及び/又は1種以上の等張性調整剤を、場合により含み得る。眼湿潤/潤滑剤の例としては、セルロース誘導体であるデキストラン70、ゼラチン、液状ポリオール、ポリビニルアルコール、ならびにセルロース誘導体、及びポリオールのようなポビドンが挙げられ得る。
【0115】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、経口投与に適している組成物が提供される。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、単位投与形態にあり得、さらには慣用の賦形剤、例えば結合剤、増量剤、錠剤潤滑剤、崩壊剤、及び許容される湿潤剤、を含み得る。錠剤は、通常の製薬の実務においてよく知られている方法に従って、被覆され得る。
【0116】
経口液体調製物は、例えば、水性又は油性の懸濁液剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤又はエリキシル剤の形態であり得、あるいは使用前に水又は他の適しているビヒクルと一緒にして再構成される乾燥製剤の形態であり得る。そのような液体調製物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(これには食用油が挙げられ得る)、防腐薬、及び、所望なら、慣用の矯味矯臭剤や着色剤、のような慣用の添加剤を含み得る。
【0117】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、非経口投与に適している組成物が提供される。非経口投与に適した流体単位投与形態は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、滅菌ビヒクル(これは水ベース、又は油ベースであり得る)とを用いて調製され得る。化合物は、用いるビヒクル及び濃度にも左右されるが、ビヒクル中に懸濁か、又は溶解され得る。溶液剤を調製する際は、注射用には、化合物は、溶解され、濾過滅菌された後、適しているバイアル又はアンプルの中に充填されて、密封され得る。場合により、局所麻酔剤、防腐薬及び緩衝剤のような佐剤がビヒクル中に溶解され得る。安定性を増すために、組成物は、バイアルの中に充填した後凍結させて、その水を、真空下で除去し得る。凍結乾燥された非経口用組成物は、投与直前に適している溶媒と一緒にして、再構成され得る。非経口用懸濁液剤は、化合物がビヒクル中に溶解されるのではなくて懸濁される以外は、実質的に同じようにして調製され得るが、滅菌は、濾過によっては行うことができない。化合物は、滅菌ビヒクル中に懸濁させる前に、エチレンオキサイドに晒すことによって滅菌され得る。化合物の均一な分散を促進させるために、組成物には界面活性剤又は湿潤剤を含ませ得る。
【0118】
式(I)の化合物を含む医薬組成物は、1種以上の他の治療薬、例えば、他の抗ヒスタミン薬(例えばH4受容体拮抗薬)、抗コリン薬、抗炎症薬(例えばコルチコステロイド(例えば、フルチカゾンプロピオネート、ベクロメタゾンジプロピオネート、モメタゾンフロエート、トリアムシノロンアセトニド、ブデゾニド及びフルチカゾンフロエート))又は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えば、ナトリウムクロモグリケート、ネドクロミルナトリウム)、PDE−4阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、ケモカイン拮抗薬(例えば、CCR3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR8、CXCR1、CXCR2)、IKK拮抗薬、iNOS阻害薬、トリプターゼ及びエラスターゼ阻害薬、ベータ−2インテグリン拮抗薬、及びアデノシン2a作動薬;又はベータアドレナリン作動薬(例えば、サルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、フェノテロール、テルブタリン、ならびに国際公開第02/66422号パンフレット、国際公開第02/270490号パンフレット、国際公開第02/076933号パンフレット、国際公開第03/024439号パンフレット及び国際公開第03/072539号パンフレットに記載されているベータ作動薬及びその塩);又は抗感染症薬(例えば抗生剤(例えばレタパムリン))及び抗ウイルス剤;との組み合わせでも用いられ得るし、又はそれらを含み得る。
【0119】
上記他の治療薬は、適切な場合は、塩の形態で(例えば、アルカリ金属もしくはアミン塩、又は酸付加塩として)、又はプロドラッグの形態で、又はエステル(例えば低級アルキルエステル)として、又は溶媒和物(例えば水和物)として用いて、その治療薬の活性及び/又は安定性及び/又は物理特性(例えば溶解度)を至適化し得ることは、当業者には明らかであろう。適切な場合は、上記治療薬は、光学的に純粋な形態で用いられ得ることも明らかであろう。
【0120】
もう1つの態様では、1種以上(例えば1種又は2種、例えば1種)の他の治療的に有効な薬物と一緒の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、場合により1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に含む組み合わせが提供される。
【0121】
単独で用いられ得る、又デュアルH1/H3受容体拮抗薬との組み合わせでも用いられ得る他のヒスタミン受容体拮抗薬としては、H4受容体の拮抗薬(及び/又は逆作動薬)、例えば、Jablonowski et al., J. Med. Chem. 46:3957-3960 (2003)に開示されている化合物が挙げられる。
【0122】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とβ−アドレナリン受容体作動薬とを含む組み合わせが提供される。
【0123】
β−アドレナリン受容体作動薬の例としては、サルメテロール(これは、ラセミ化合物、又は単一エナンチオマー(例えばR−エナンチオマー)であり得る)、サルブタモール(これは、ラセミ化合物、又は単一エナンチオマー(例えばR−エナンチオマー)であり得る)、ホルモテロール(これは、ラセミ化合物、又は単一ジアステレオマー(例えばR,R−ジアステレオマー)であり得る)、サルメファモール、フェノテロール、カルモテロール、エタンテロール、ナミンテロール、クレンブテロール、ピルブテロール、フルエルブテロール、レプロテロール、バムブテロール、インダカテロール、テルブタリン、ならびにこれらの塩、例えばサルメテロールのキシナホ酸(1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸)塩、サルブタモールの硫酸塩又は遊離塩基、又はホルモテロールのフマル酸塩が挙げられる。1つの実施形態では、式(I)の化合物を含む組み合わせには、長期作用性β−アドレナリン受容体作動薬、例えば、約12時間以上の気管支拡張効果をもたらす化合物が、含まれ得る。
【0124】
他のβ−アドレナリン受容体作動薬としては、国際公開第02/066422号パンフレット、国際公開第02/070490号パンフレット、国際公開第02/076933号パンフレット、国際公開第03/024439号パンフレット、国際公開第03/072539号パンフレット、国際公開第03/091204号パンフレット、国際公開第04/016578号パンフレット、国際公開第2004/022547号パンフレット、国際公開第2004/037807号パンフレット、国際公開第2004/037773号パンフレット、国際公開第2004/037768号パンフレット、国際公開第2004/039762号パンフレット、国際公開第2004/039766号パンフレット、国際公開第01/42193号パンフレット及び国際公開第03/042160号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【0125】
β−アドレナリン受容体作動薬の例としては:
3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド;
3−(3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}−アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミド;
4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシルメチル)フェノール;
4−{(1R)−2−[(6−{4−[3−(シクロペンチルスルホニル)フェニル]ブトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシルメチル)フェノール;
N−[2−ヒドロキシl−5−[(1R)−1−ヒドロキシ−2−[[2−4−[[(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]アミノ]フェニル]エチル]アミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド;
N−2{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシシフェニル)アミノフェニル]エチル}−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミン;及び
5−[(R)−2−(2−{4−[4−(2−アミノ−2−メチル−プロポキシ)−フェニルアミノ]−フェニル}−エチルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン;
が挙げられる。
【0126】
β−アドレナリン受容体作動薬は、硫酸、塩酸、フマル酸、ヒドロキシナフトエ酸(例えば、1−もしくは3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、シンナム酸、置換されたシンナム酸、トリフェニル酢酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ナフタレンアクリル酸、安息香酸、4−メトキシ安息香酸、2−もしくは4−ヒドロキシ安息香酸、4−クロロ安息香酸、及び4−フェニル安息香酸から選択される薬学的に許容される酸と形成される塩の形態であり得る。
【0127】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と抗炎症薬とを含む組み合わせが提供される。
【0128】
抗炎症薬としてはコルチコステロイドが挙げられる。式(I)の化合物との組み合わせで用いられ得る適しているコルチコステロイドは、抗炎症活性を有している経口用及び吸入用のコルチコステロイド及びそのプロドラッグである。例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾンプロピオネート、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル(フルチカゾンフロエート)、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17β−(2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−シアノメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17β−(1−メチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、ベクロメタゾンエステル(例えばその17−プロピオン酸エステル又はその17,21−ジプロピオン酸エステル)、ブデゾニド、フルニゾリド、モメタゾンエステル(例えばモメタゾンフロエート)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド(16α,17−[[(R)−シクロヘキシルメチレン]ビス(オキシ)]−11β,21−ジヒドロキシ−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)、ブチキソコルトプロピオネート、RPR−106541、及びST−126が挙げられる。特に関心の対象となるコルチコステロイドとしては、フルチカゾンプロピオネート、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17β−(2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−シアノメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17β−(1−メチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、及びモメタゾンフロエートが挙げられ得る。1つの実施形態では、コルチコステロイドは、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル(フルチカゾンフロエート)、又はモメタゾンフロエートである。
【0129】
もう1つの態様では、コルチコステロイド、例えばフルチカゾンプロピオネート又は6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル(フルチカゾンフロエート)又はモメタゾンフロエート、と一緒に式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組み合わせが提供される。そのような組み合わせは、鼻腔内投与では、特に関心の対象となり得る。
【0130】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とグルココルチコイド系作動薬とを含む組み合わせが提供される。
【0131】
転写促進よりも転写抑制に対して選択性をもっていると思われる、且つ組み合わせ療法で有用であり得る、グルココルチコイド作動性を有する非ステロイド系化合物としては、以下の特許出願及び特許:国際公開第03/082827号パンフレット、国際公開第98/54159号パンフレット、国際公開第04/005229号パンフレット、国際公開第04/009017号パンフレット、国際公開第04/018429号パンフレット、国際公開第03/104195号パンフレット、国際公開第03/082787号パンフレット、国際公開第03/082280号パンフレット、国際公開第03/059899号パンフレット、国際公開第03/101932号パンフレット、国際公開第02/02565号パンフレット、国際公開第01/16128号パンフレット、国際公開第00/66590号パンフレット、国際公開第03/086294号パンフレット、国際公開第04/026248号パンフレット、国際公開第03/061651号パンフレット、国際公開第03/08277号パンフレット、国際公開第06/000401号パンフレット、国際公開第06/000398号パンフレット及び国際公開第06/015870号パンフレット、で保護されているものが挙げられる。
【0132】
抗炎症薬としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)も挙げられる。
【0133】
NSAIDとしては、ナトリウムクロモグリケート、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(例えば、テオフィリン、PDE4阻害薬、又は混合PDE3/PDE4阻害薬)、ロイコトリエン拮抗薬、ロイコトリエン合成阻害薬(例えばモンテルカスト)、iNOS(誘導性酸化窒素シンターゼ)阻害薬(例えば経口iNOS阻害薬)、IKK拮抗薬、トリプターゼ及びエラスターゼ阻害薬、ベータ−2インテグリン拮抗薬及びアデノシン受容体作動薬又は拮抗薬(例えばアデノシン2a作動薬)、サイトカイン拮抗薬(例えばケモカイン拮抗薬、例えばCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、又はCCR8拮抗薬)又はサイトカイン合成阻害薬、又は5−リポキシゲナーゼ阻害薬が挙げられる。iNOS阻害薬としては、国際公開第93/13055号パンフレット、国際公開第98/30537号パンフレット、国際公開第02/50021号パンフレット、国際公開第95/34534号パンフレット及び国際公開第99/62875号パンフレットに開示されているものが挙げられる。
【0134】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩とホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬とを含む組み合わせが提供される。この実施形態で有用なPDE4特異的阻害薬は、PDE4酵素を阻害することが知られている、つまりPDE4阻害薬として作用することが見出されており、且つPDE4のみの阻害薬であって、PDEファミリーの他のメンバー、例えばPDE3及びPDE5を、PDE4と同じように阻害する化合物ではない、任意の化合物であり得る。
【0135】
関心の対象となり得る化合物としては、シス−4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシシ−4−ジフルオロメトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−オン及びシス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシシ−4−ジフルオロメトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−オール]が挙げられる。また、シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸(シロミラストとも呼ばれる)及びその塩、エステル、プロドラッグ又は物理形態も挙げられ、これは1996年9月3日発行の米国特許第5552438号明細書に記載されている。
【0136】
他のPDE4阻害薬としては、Elbion社が提供のAWD−12−281(Hofgen, N. et al. 15th EFMC Int Symp Med Chem (Sept 6-10, Edinburgh) 1998, Abst P.98; CAS reference No. 247584020-9);9−ベンジルアデニン誘導体指定NCS−613(INSERM社);Chiroscience及びSchering−Plough社が提供のD−4418;CI−1018(PD−168787)と識別され、Pfizer社のものであるとされるベンゾジアゼピンPDE4阻害薬;Kyowa Hakko社が国際公開第99/16766号パンフレットに開示しているベンゾジオキソール誘導体;Kyowa Hakko社が提供のK−34;Napp社が提供のV−11294A(Landells, L.J. et al., Eur. Resp. J. [Ann. Cong. Eur. Resp. Soc. (Sept 19-23, Geneva) 1998] 1998, 12 (Suppl. 28): Abst P2393);Byk−Gulden社が提供のロフルミラスト(roflumilast)(CAS reference No 162401-32-3)及びフタラジノン(pthalazinone)(国際公開第99/47505号パンフレット);プマフェントリン(Pumafentrine)、Byk−Gulden社(現在はAltana社)が調製し、発表している混合PDE3/PDE4阻害薬である(−)−p−[(4aR,10bS)−9−エトキシシ−1,2,3,4,4a,10b−ヘキサヒドロ−8−メトキシシ−2−メチルベンゾ[c][1,6]ナフチリジン−6−イル]−N,N−ジイソプロピルベンズアミド;Almirall−Prodesfarma社が開発中のアロフィリン(arofylline);Vernalis社が提供のVM554/UM565;又はT−440(Tanabe Seiyaku; Fuji, K. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 284(1):162, 1998)、及びT2585が挙げられる。
【0137】
関心の対象となり得るさらなる化合物が、公開された国際特許出願である国際公開第04/024728号パンフレット(Glaxo Group Ltd)、国際公開第04/056823号パンフレット(Glaxo Group Ltd)及び国際公開第04/103998号パンフレット(Glaxo Group Ltd)に開示されている。
【0138】
もう1つの態様では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と抗コリン薬とを含む組み合わせが提供される。
【0139】
抗コリン薬は、ムスカリン性受容体のところで拮抗薬として作用する化合物であり、特に、M受容体又はM受容体の拮抗薬、M/M受容体又はM/M受容体のデュアル拮抗薬、又はM/M/M受容体のパン(汎)拮抗薬である化合物である。吸入による投与用の化合物の例としては、イプラトロピウム(例えば、その臭化物として、CAS 22254-24-6、商品名「Atrovent」で販売されている)、オキシトロピウム(例えば、その臭化物として、CAS 30286-75-0)、及びチオトロピウム(例えば、その臭化物として、CAS 136310-93-5、商品名「Spiriva」で販売されている)が挙げられる。また、レバトロペート(例えば、その臭化水素酸塩として、CAS 262586-79-8)、及び国際公開第01/04118号パンフレットに開示されているLAS−34273も関心の対象である。経口投与用の化合物の例としては、ピレンゼピン(例えば、CAS 28797-61-7)、ダリフェナシン(例えば、CAS 133099-04-4、又は商品名「Enablex」で販売されているその臭化水素酸塩であるCAS 133099-07-7)、オキシブチニン(例えば、CAS 5633-20-5、商品名「Ditropan」で販売されている)、テロジリン(例えば、CAS 15793-40-5)、トルテロジン(例えば、CAS 124937-51-5、又はその酒石酸塩であるCAS 124937-52-6、商品名「Detrol」で販売されている)、オチロニウム(例えば、その臭化物として、CAS 26095-59-0、商品名「Spasmomen」で販売されている)、トロスピウムクロリド(例えば、CAS 10405-02-4)、及びソリフェナシン(例えば、CAS 242478-37-1、又はCAS 242478-38-2、又はYM−905とも呼ばれ且つ商品名「Vesicare」で販売されているそのコハク酸塩)が挙げられる。
【0140】
他の抗コリン薬としては、米国特許出願第60/487981号明細書に開示されている式(XXI)の化合物:
【化13】

【0141】
[式中、トロパン環に結合しているアルキル鎖の好ましい方向はエンドであり;
31及びR32は、独立に、例えば1〜6個の炭素原子を有している直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、5〜6個の炭素原子を有しているシクロアルキル基、6〜10個の炭素原子を有しているシクロアルキル−アルキル、2−チエニル、2−ピリジル、フェニル、4個より多い炭素原子を有していないアルキル基で置換されたフェニル、及び4個より多い炭素原子を有していないアルコキシ基で置換されたフェニルからなる群から選択され;
は、N原子の正電荷と会合している陰イオンを表し、Xは、限定するものではないが、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、及びトルエンスルホン酸イオンであり得る]
が挙げられ、例えば:
(3−エンド)−3−(2,2−ジ−2−チエニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン4−メチルベンゼンスルホネート;
(3−エンド)−8,8−ジメチル−3−[2−フェニル−2−(2−チエニル)エテニル]−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;及び/又は
(3−エンド)−8,8−ジメチル−3−[2−フェニル−2−(2−ピリジニル)エテニル]−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
が挙げられる。
【0142】
さらなる抗コリン薬としては、米国特許出願第60/511009号に開示されている式(XXII)又は式(XXIII)の化合物:
【化14】

【0143】
[式中、
矢印で示されているH原子は、エキソ配置にあり;
41−は、N原子の正電荷と会合している陰イオンを表し、R41−は、限定するものではないが、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、及びトルエンスルホン酸イオンであり得;
42及びR43は、(例えば1〜6個の炭素原子を有している)直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、(5〜6個の炭素原子を有している)シクロアルキル基、(6〜10個の炭素原子を有している)シクロアルキル−アルキル、(5〜6個の炭素原子及びヘテロ原子としてのN又はOを有している)ヘテロシクロアルキル、(6〜10個の炭素原子及びヘテロ原子としてのN又はOを有している)ヘテロシクロアルキル−アルキル、アリール、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、及び置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から、独立に選択され;
44は、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリール、−OR45、−CHOR45、−CHOH、−CN、−CF、−CHO(CO)R46、−CO47、−CHNH、−CHN(R47)SO45、−SON(R47)(R48)、−CON(R47)(R48)、−CHN(R48)CO(R46)、−CHN(R48)SO(R46)、−CHN(R48)CO(R45)、−CHN(R48)CONH(R47)からなる群から選択され;
45は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から選択され;
46は、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から選択され;
47及びR48は、H、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−アリール、及び(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から、独立に選択される]
が挙げられ、例えば:
(エンド)−3−(2−メトキシシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオニトリル;
(エンド)−8−メチル−3−(2,2,2−トリフェニル−エチル)−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオンアミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオン酸;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロパン−1−オール;
N−ベンジル−3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオンアミド;
(エンド)−3−(2−カルバモイル−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
1−ベンジル−3−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
1−エチル−3−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−ベンズアミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−プロピオニトリル;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド;
[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−メタンスルホンアミド;及び/又は
(エンド)−3−{2,2−ジフェニル−3−[(1−フェニル−メタノイル)−アミノ]−プロピル}−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
が挙げられる。
【0144】
有用であり得る好ましい抗コリン化合物としては:
(エンド)−3−(2−メトキシシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(エンド)−3−(2−カルバモイル−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;及び/又は
(エンド)−3−{2,2−ジフェニル−3−[(1−フェニル−メタノイル)−アミノ]−プロピル}−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
が挙げられる。
【0145】
上記に記載した組み合わせは、使用のためには医薬組成物の形態で都合よく提供され得る、つまり、上記に定義した組み合わせを、場合によっては薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0146】
そのような組み合わせの個々の化合物は、別々の医薬組成物で順次に、及び組み合わせの医薬組成物で同時に、のいずれでも投与され得る。追加の治療活性成分は、式(I)の化合物と一緒に、組成物中に懸濁され得る。公知の治療薬の適切な用量は、当業者なら、容易に解るものである。
【実施例】
【0147】
本発明の化合物は、以下に記載する方法、又は同じような方法によって、調製され得る。つまり、以下の中間体及び化合物の実施例は、本発明の化合物の調製を説明するためのものであって、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものと、とるべきでない。
【0148】
一般実験事項
実施例をとおして、以下の略記号が使われ得る。
【0149】
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeOH:メタノール
THF:テトラヒドロフラン
MgSO:硫酸マグネシウム
EtN:トリエチルアミン
B−ベンジル−9−BBN:B−ベンジル−9−ボラビシクロノナン
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分光分析
MDAP:質量直結自動分取HPLC
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
RT:保持時間
h:時
min:分
【0150】
フラッシュシリカゲルとは、Merck Art No.9385を指し;シリカゲルとは、Merck Art No.7734を指す。
【0151】
SCXカートリッジとは、静止相が高分子ベンゼンスルホン酸であるIon Exchange SPEカラムである。これらは、アミンを単離するのに用いられる。
【0152】
SCX2カートリッジは、静止相が高分子プロピルスルホン酸であるIon Exchange SPEカラムである。これらは、アミンを単離するのに用いられる。
【0153】
有機溶液は、例えば硫酸マグネシウムか、又は硫酸ナトリウムで乾燥させた。
【0154】
LCMSは、0.1%HCOH及び0.01M酢酸アンモニウム/水(溶媒A)と、0.05%HCOH及び5%水/アセトニトリル(溶媒B)とで溶離するSupelcosil LCABZ+PLUSカラム(3.3cm×4.6mm ID)で行い、流量3mL/minで以下の溶離勾配:0.0〜0.7min 0%B;0.7〜4.2min 100%B;4.2〜5.3min 0%B;5.3〜5.5min 0%Bを用いた。マススペクトルは、エレクトロスプレーポジティブ及びネガティブモード(ES+ve及びES−ve)を用いるFisons VG Platform分光計で記録した。
【0155】
FlashmasterIIは、Argonaut Technologies Ltdから入手可能な自動マルチユーザー型フラッシュクロマトグラフィー装置であり、使い捨て順相SPEカートリッジ(2g〜100g)が使用されている。四元オンライン溶媒混合が可能になっていて、勾配法を行うことができるようになっている。サンプルは、溶媒、流量、勾配プロファイル及びコレクション条件を管理する多機能オープンアクセスソフトウェアを用いて、列に並べられる。この装置には、Knauer波長可変式UV検出器及びGilson FC204フラクションコレクターが装着されていて、自動的なピークカット、コレクション及びトラッキングが可能になっている。
【0156】
質量直結自動分取HPLC(MDAP)は、Waters FractionLynx装置で行った。この装置は、ポンプ揚程が延長されたWaters600ポンプ、Waters2700自動サンプラー、Waters996ダイオードアレイ、及び10cm×内径2.54cmABZ+カラム上のGilson202フラクションコレクターから構成されており、0.1%ギ酸/水(溶媒A)と0.1%ギ酸/MeCN(溶媒B)とで溶離し、流量20ml/minで15minに亘る溶離勾配を適宜用い、室温にて200〜320nmで検出した。質量スペクトルは、エレクトロスプレーポジティブ及びネガティブモード(オルタネートスキャン)を用いるMicromass ZMD質量分光計で記録した。用いたソフトウエアは、OpenLynx及びFractionLynxのオプションが付いたMassLynx3.5であった。
【0157】
反応は、当業者にはよく知られている方法、例えばTLC、LCMS及び/又はHPLCにより、定期的にモニタリングした。そのような方法は、反応が完結まで行ったかどうかを判定するのに用いられるので、それによって、反応時間は、変えられ得る。
【0158】
中間体化合物及び実施例化合物は、ACD/Name PRO 6.02化学物質命名ソフトウエア(Advanced Chemistry Developments Inc.; Toronto, Ontario, M5H2L3, Canada)を用いて命名した。
【0159】
中間体
(中間体1)
6−ブロモ−8−フルオロ−2−メチルキノリン
トルエン(40ml)及びクロトンアルデヒド(例えば、Aldrichから市販されている)(4.95ml)を、4−ブロモ−2−フルオロアニリン(例えば、Aldrichから市販されている)(5.7g)の5M塩酸(135ml)攪拌溶液に加え、得られた混合物を3時間100℃で加熱した。この混合物を放冷させ、その層を分離させた。この水相を5M水酸化ナトリウム溶液で塩基性にすると、紫色の固形物が沈殿した。この固形物を濾過により捕集し、水で洗浄し、DCMに溶解させて、100gシリカFlashmasterIIカートリッジに負荷した。カートリッジを、60分かけて0〜100%EtOAc/シクロヘキサン勾配で溶離した。適切な画分から溶媒を蒸発させて、表題の化合物(3.64g)を得た(LCMS RT=2.96分、ES+ve m/z 240/242 [M+H])。
【0160】
溶媒を、さらなる画分の群から蒸発させて残留物を得、これを、0〜50%EtOAc/シクロヘキサン勾配を用いる50gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより40分かけて精製した。適切な画分から溶媒を蒸発させて、表題の化合物(428mg)を得た(LCMS RT=2.96分、ES+ve m/z 240/242 [M+H])。
【0161】
(中間体2)
6−ブロモ−2−メチル−8−(1−ピペラジニル)キノリン
6−ブロモ−8−フルオロ−2−メチルキノリン(例えば、中間体1で調製した)(1.43g)とピペラジン(例えば、Aldrichから市販されている)(5.134g)との混合物を、Smith Creatorマイクロ波オーブン中で、マイクロ波照射により30分間150℃で加熱した。冷却させたこの混合物を、DCM(50ml)と水(50ml)とに分配させ、その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表題の化合物(2.055g)を得た(LCMS RT=2.08分、ES+ve m/z 306/308 [M+H])。
【0162】
(中間体3)
1,1−ジメチルエチル4−(6−ブロモ−2−メチル−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート
0℃にある6−ブロモ−2−メチル−8−(1−ピペラジニル)キノリン(例えば、中間体2で調製した)(2g)、4−ジメチルアミノピリジン(例えば、Aldrichから市販されている)(80mg)及びEtN(2.73ml)のアセトニトリル(26ml)中攪拌混合物に、ジ−tert−ブチルジカルボネート(2.14g)のアセトニトリル(4ml)溶液を加えた。この混合物を、0℃で15分間、その後室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、その残留物をDCM(100ml)と水(100ml)とに分配させた。有機層をMgSOで乾燥させ、その溶媒を蒸発させた。この残留物を、0〜100%EtOAc/DCMを用いる100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより40分かけて精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(2.1708g)を得た(LCMS RT=3.78分、ES+ve m/z 406/408 [M+H])。
【0163】
(中間体4)
1,1−ジメチルエチル4−(6−ブロモ−2−ホルミル−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート
窒素雰囲気下の55℃にある二酸化セレン(494mg)の1,4−ジオキサン(20ml)攪拌溶液に、1,1−ジメチルエチル4−(6−ブロモ−2−メチル−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体3で調製した)(1g)の1,4−ジオキサン(7.5ml)溶液を2時間かけて滴下で加えた。得られた混合物を80℃で一晩攪拌し、濾過し、蒸発させて、残留物を得、これをDCMに溶解させ、20gシリカSPEカートリッジに負荷した。カートリッジをDCMで溶離し、溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物 (1.02g)を得た(LCMS RT=3.74分、ES+ve m/z 420/422 [M+H])。
【0164】
(中間体5)
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−(6−ブロモ−2−ホルミル−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体4で調製した)(1g)とメチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(例えば、Aldrichから市販されている)(875mg)との無水THF(15ml)中混合物を、窒素雰囲気下の65℃で18時間攪拌した。さらなる量のイリド(850mg)を加え、この混合物をさらに22時間加熱した。この混合物をトルエン(20ml)で希釈し、20gシリカSPEカートリッジに負荷した。カートリッジをトルエンで溶離し、溶媒を、適切な画分から蒸発させた。この残留物を、0〜100%EtOAc/シクロヘキサン勾配を用いる70gシリカカートリッジでのFlashmasterIIによりさらに精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(802mg)を得た(LCMS RT=3.95分、ES+ve m/z 476/478 [M+H])。
【0165】
(中間体6)
1,1−ジメチルエチル4−[2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−6−(フェニルメチル)−8−キノリニル]−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体5で調製した)(200mg)、炭酸カリウム(116.1mg)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド(15.4mg、5モル%)のDMF(1.3ml)中混合物をB−ベンジル−9−BBN(THF中0.5M溶液の1.68ml)で処理した。この混合物を、密封されたReactivial(商標)中で、3時間65℃で加熱した。さらなる量の[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)]パラジウム(II)クロリド(15mg)及びB−ベンジル−9BBN(THF中0.5M溶液の1.68ml)を加え、混合物をさらに92時間攪拌した。溶媒を反応混合物から蒸発させて、表題の化合物を得、さらに精製することなくこれを用いた(LCMS RT=4.01分、ES+ve m/z 488 (M+H))。
【0166】
(中間体7)
メチル(2E)−3−[6−(フェニルメチル)−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]−2−プロペノエート
1,1−ジメチルエチル4−[2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−6−(フェニルメチル)−8−キノリニル]−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体6で調製した)のDCM(10ml)溶液をトリフルオロ酢酸(3ml)で処理し、得られた混合物を窒素雰囲気下の室温で20分間攪拌した。この混合物を蒸発させて残留物を得、これをトルエンで処理して、再蒸発させた。この残留物を最小量のMeOHに溶解させ、MeOH調整済みSCXイオン交換カートリッジ(20g)に負荷した。カートリッジを、MeOH(3カラム体積)で、その後2Mアンモニア/MeOH(3カラム体積)で溶離した。このアンモニア含有画分から溶媒を蒸発させて、表題化合物の粗製サンプルを得、これをさらに精製することなく用いた(LCMS RT=2.65分、ES+ve m/z 388 [M+H])。
【0167】
(中間体8)
メチル3−[6−(フェニルメチル)−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート
メチル(2E)−3−[6−(フェニルメチル)−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]−2−プロペノエート(例えば、中間体7で調製した)、酢酸(1ml)及び10%パラジウム/活性炭(200mg)のEtOAc(25ml)中混合物を、大気圧で2時間水素化した。この混合物をセライトで濾過し、その溶媒を蒸発させた。この残留物を、5%(2Mアンモニア/MeOH)/DCMで溶離する12M KP−SilカートリッジでのBiotage Flash Chromatographyにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題化合物の粗製サンプル(55mg)を得た(LCMS RT=2.57分、ES+ve m/z 390 [M+H])。
【0168】
(中間体9)
メチル3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパノエート
メチル3−[6−(フェニルメチル)−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体8で調製した)(55mg)、重炭酸ナトリウム(25mg)及び2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩(例えば、中間体15で調製した)(50mg)のアセトニトリル(1.5ml)中混合物を、窒素雰囲気下の80℃で65時間加熱した。この反応混合物を濾過して、蒸発させた。この残留物をMeOH−DMSO(1:1、2ml)に溶解させて、MDAPにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(33mg)を得た(LCMS RT=2.51分、ES+ve m/z 649 [M+H])。
【0169】
(中間体10)
1,1−ジメチルエチル4−{6−エチル−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体5で調製した)(200mg)、炭酸カリウム(116.1mg)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(15.4mg、5モル%)のDMF(1.3ml)中混合物を、トリエチルボラン(THF中1.0M溶液0.84ml)で処理した。この混合物を、密封されたReactivial(商標)中で、65℃で3時間加熱した。さらなる量の[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)]パラジウム(II)クロリド(15mg)及びトリエチルボラン(THF中1.0M溶液0.84ml)を加え、混合物をさらに92時間攪拌した。反応混合物から溶媒を蒸発させ、その残留物をDCMに溶解させ、シリカFlashmasterカートリッジ(20g)に負荷した。このカートリッジを0〜100%EtOAc/シクロヘキサン勾配で40分かけて溶離した。適切な画分を合わせ、溶媒を蒸発させて、表題の化合物(98mg)を得た(LCMS RT=3.91分、ES+ve m/z 426 [M+H])。
【0170】
(中間体11)
メチル3−[6−エチル−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート
1,1−ジメチルエチル4−{6−エチル−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体10で調製した)(97mg)のDCM(10ml)溶液をトリフルオロ酢酸(2ml)で処理し、得られた混合物を窒素雰囲気下の室温で1時間攪拌した。この混合物を蒸発させて残留物を得、これをトルエンで処理して、再蒸発させた。この残留物を、EtOAc(20ml)及び酢酸(1ml)の混合物に溶解させて、10%パラジウム/活性炭(100mg)の存在下に1時間大気圧で水素化した。反応混合物をセライトカートリッジで濾過し、濾液を蒸発させた。この残留物をMeOHに溶解させて、MeOH調整SCXイオン交換カートリッジ(10g)に負荷した。カートリッジを、MeOHで、その後2Mアンモニア/MeOHで溶離した。溶媒をアンモニア含有画分から蒸発させて、表題の化合物(73mg)を得た(LCMS RT=2.22分、ES+ve m/z 328 [M+H])。
【0171】
(中間体12)
メチル3−(6−エチル−8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート
メチル3−[6−(エチル)−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体11で調製した)(72.9mg)、重炭酸ナトリウム(50mg)及び2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩(例えば、中間体15で調製した)(80mg)のアセトニトリル(2ml)中混合物を攪拌しながら80℃で20時間加熱した。この反応混合物をDCM(10ml)で希釈し、MP−イソシアネートレジン(200mg、負荷=1.56ミリモル/g)を加えた。この混合物を4時間震盪し、濾過し、蒸発させて、表題化合物の粗製サンプルを得、これを、さらに精製することなく用いた。
【0172】
(中間体13)
2−{4−[(3−クロロプロピル)オキシ]フェニル}エタノール
4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール)(例えばAldrichから市販されている)(10g、72ミリモル)を2−ブタノン(250ml)に溶解させ、その後炭酸カリウム(19.9g、0.144モル)を加え、その後1−ブロモ−3−クロロプロパン(例えば、Aldrichから市販されている)(8.54ml、0.144モル)を加え、この反応混合物を18時間80℃で加熱した。冷却させたこの反応混合物を水(500ml)で希釈して、層を分離させ、水相をDCM(2×200ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥させ(MgSO)、真空で蒸発させ、Flashmaster(3×100gシリカカートリッジ)により0〜100%EtOAc−シクロヘキサンで40分かけて溶離して、表題の化合物(14.12g)を得た(LCMS RT=2.84分 ES+ve m/z 232 (M+NH4))。
【0173】
(中間体14)
2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エタノール
2−{4−[(3−クロロプロピル)オキシ]フェニル}エタノール(例えば、中間体13で調製した)(14g、0.065モル)の2−ブタノン(200ml)溶液を炭酸カリウム(17.96g、0.13モル)、ヨウ化カリウム(1.24g、7.5ミリモル)、ヘキサヒドロ−1H−アゼピン(例えば、Aldrichから市販されている)(14.71ml、0.1308モル)で処理し、窒素下の80℃で18時間加熱した。冷却させたこの反応混合物を水(300ml)で希釈して、層を分離させ、その水相をDCM(2×200ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥させ(MgSO)、真空で蒸発させて、黄色の油状物(23g)を得た。この一部(10g)を、0〜100%EtOAc−シクロヘキサンで15分かけて、その後100%EtOAcで10分間、その後0〜10%(10%アンモニア水溶液−MeOH)−DCMで15分間、その後10%(10%アンモニア水溶液−MeOH)−DCMで10分間溶離するFlashmaster(100gシリカカートリッジ)により精製して、表題の化合物(5.3g)を得た(LCMS RT=1.9分、ES+ve m/z 278 (M+H))。
【0174】
(中間体15)
2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩
2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エタノール(例えば、中間体14で調製した)(80mg、0.29ミリモル)のDCM(2ml)及びジイソプロピルエチルアミン(0.06ml、0.34ミリモル)中溶液をメタンスルホニルクロリド(0.026ml、0.34ミリモル)で20℃にて処理し、この混合物を2時間攪拌した。この溶液をDCM(10ml)及び飽和重炭酸ナトリウム溶液(10ml)で希釈して、その相を、疎水性フリットを用いて分離させた。この有機相を減圧下で濃縮して、表題の化合物(0.101g、100%)を得た(LCMS RT=2.18分、ES+ve m/z 356 (M+H))。
【0175】
(中間体16)
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−{[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート
N−tert−ブトキシカルボニルピペラジン(例えば、Lancasterから市販されている)(75.74g、407ミリモル)のアセトニトリル(500ml)溶液を重炭酸ナトリウム(45.57g、542ミリモル)で処理し、この混合物を15分間攪拌した。2−(4−{[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩(国際公開第2003091204号パンフレットに開示されている;ページ61、実施例28のパート(ii)を参照されたい)(103.32g、313ミリモル)のアセトニトリル(600ml)溶液をこの混合物に20分かけて加え、窒素下で23時間還流に加熱した。HPLCにより、9%の出発物質がまだ存在していることが示されたので、この混合物をさらに19時間還流に加熱した。混合物を室温まで放冷させ、そのアセトニトリルを減圧下で除去した。この残留物を、EtOAc(500ml)と水(500ml)とに分配させた。水相をEtOAc(100ml)で抽出し、合わせた有機溶液をブライン(4×50ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。残留物を、EtOAc−シクロヘキサン(1:4〜1:1)で溶離するシリカでのクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(101.7g)NMR δ (CDCl3) 7.05 (2H, d), 6.76 (2H, d), 3.48-3.44 (4H, m), 2.76-2.71 (2H, m), 2.60-2.54 (2H, m), 2.49-2.43 (4H, m), 1.47 (9H, s), 0.98 (9H, s), 0.19 (6H, s)、及び純度の低いバッチ(5.5g)を得た。
【0176】
(中間体17)
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−{[(1,1−ジメチルエチル)(ジメチル)シリル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体16で調製した)(101.7g、242ミリモル)のTHF(1L)溶液をフッ化テトラブチルアンモニウムTHF溶液(1M、266ml)で処理し、この混合物を室温にて3時間窒素下で攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、その残留物を、水(300ml)とEtOAc(300ml)とに分配させた。この分離漏斗中で結晶化が起こったので、その結晶を濾過により捕集し、EtOAcで洗浄して、表題の化合物(29.16g)を得た。濾液を水とEtOAcとに分配させた。水相をEtOAcで再抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。この残留物をジエチルエーテルで希釈し、得られた固形物を濾過により捕集して、表題の化合物(36.39g)1H NMR δ (CDCl3) 7.05 (2H, d, J 8 Hz), 6.75 (2H, d, J 8 Hz) 5.08 (1H, br), 3.48 (4H, m), 2.77-2.71 (2H, m), 2.61-2.55 (2H, m), 2.50-2.45 (4H, m), 1.47 (9H, s)を得た。
【0177】
(中間体18)
1,1−ジメチルエチル4−(2−{4−[(3−クロロプロピル)オキシ]フェニル}エチル)−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体17で調製した)(36.39g、119ミリモル)のメチルエチルケトン(300ml)溶液を炭酸カリウム(18.05g、131ミリモル)で処理し、この混合物を室温にて1時間攪拌した。1−ブロモ−3−クロロプロパン(例えば、Aldrichから市販されている)(18.1ml、183ミリモル)を加え、この混合物を窒素下の室温にて一晩攪拌し、その後さらに24時間還流に加熱した。混合物を室温まで放冷させ、EtOAc(200ml)で希釈し、水酸化ナトリウム溶液(2M、50ml)及びその後ブラインで4回洗浄した。この溶液をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。この残留物(49.12g)を、EtOAc−シクロヘキサン(1:1)で溶離するシリカでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(25.78g)1H NMR δ (CDCl3) 7.12 (2H, d, J 8 Hz), 6.84 (2H, d, J 8 Hz), 4.10 (2H, t, J 6 Hz), 3.75 (2H, t, J 6 Hz), 3.47 (4H, m), 2.78-2.71 (2H, m), 2.60-2.54 (2H, m), 2.46 (4H, m), 2.23 (2H, m), 1.47 (9H, s)を得た。
【0178】
(中間体19)
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−(2−{4−[(3−クロロプロピル)オキシ]フェニル}エチル)−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体18で調製した)(11.5g、30ミリモル)、ホモピペラジン(例えば、Aldrichから市販されている)(5.07ml、45ミリモル)、ヨウ化カリウム(0.1g)、炭酸カリウム(8.3g、60ミリモル)の2−ブタノン(100ml)中混合物を16時間還流に加熱し、その後室温まで放冷させた。この反応混合物を、DCMと水とに分配させた。この有機相を乾燥(疎水フリット)させて、濃縮した。この残留物を、EtOAc、その後0〜10%MeOH(1%のEtNを含有)/DCMの勾配で溶離するbiotageカートリッジでのクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(11.6g)LCMS RT=1.92分、ES+ve m/z 446 (M+H)を得た。
【0179】
(中間体20)
1−[3−({4−[2−(1−ピペラジニル)エチル]フェニル}オキシ)プロピル]ヘキサヒドロ−1H−アゼピン
1,1−ジメチルエチル4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体19で調製した)(11.6g、26.06ミリモル)のDCM(100ml)溶液をトリフルオロ酢酸(20ml)で処理し、この混合物を3時間攪拌した。さらなるトリフルオロ酢酸(30ml)を加え、この反応混合物をさらに2時間攪拌した。反応混合物を真空で濃縮し、その後SCXカートリッジに適用し、MeOHで洗浄し、その後2Mアンモニア/MeOHで溶離した。塩基性の画分を減圧下で濃縮して、表題の化合物(9g)を得た(LCMS RT=1.1分、m/z 346 (M+H))。
【0180】
(中間体21)
エチル(2E)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエート
(エトキシカルボニルメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(例えば、Aldrichから市販されている)(5.3g、12.3ミリモル)の無水THF(50ml)溶液を窒素下で0℃まで冷却させ、その後水素化ナトリウム(60%油分散物、0.51g、12.7ミリモル)を加え、この混合物を30分間攪拌した。8−ヒドロキシキノリン−2−カルボキシアルデヒド(例えば、Acrosから市販されている)(2.0g、11.5ミリモル)のTHF(50ml)溶液を上記溶液に滴下で加え、その混合物を1時間攪拌した。混合物を水で希釈し、その水層をDCM(3×)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。この残留物を、0〜20%MeOH/DCMで溶離するクロマトグラフィー(Flashmaster)により精製して、表題の化合物(2.19g)を得た(LCMS RT=2.82分および3.19分、(1:4、Z及びE異性体)、ES+ve m/z 244 (M+H))。
【0181】
(中間体22)
エチル(2E)−3−(8−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−2−キノリニル)−2−プロペノエート
エチル(2E/Z)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエート(例えば、中間体21で調製した)(1g、4.11ミリモル)の無水ピリジン(5ml)溶液を窒素下で0℃まで冷却させた。無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.04ml、6.18ミリモル)を加え、この混合物を45分間0℃にて攪拌した。反応混合物を室温まで昇温させ、一晩攪拌し、その後氷に注いだ。この混合物をDCM(3×)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させた。この残留物を、0〜3%EtOAc/DCMで溶離するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(1.86g)(LCMS RT=3.57分 ES+ve m/z 376 (M+H))を得た。
【0182】
(中間体23)
メチル(2E)−3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペノエート及びエチル(2E)−3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペノエート
1−[3−({4−[2−(1−ピペラジニル)エチル]フェニル}オキシ)プロピル]ヘキサヒドロ−1H−アゼピン(例えば、中間体20で調製した)(1.68g、4.87ミリモル)、炭酸セシウム(4.33g、13.3ミリモル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(39mg、0.097ミリモル)及び2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(77mg、0.195ミリモル)の混合物をエチル(2E)−3−(8−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−2−キノリニル)−2−プロペノエート(例えば、中間体22で調製した)(1.66g、4.43ミリモル)の無水THF(25ml)溶液で処理し、この混合物を一晩窒素下で還流に加熱した。溶媒を減圧下で除去し、その残留物を、EtOAc、続いて0〜10%MeOH(1%のEtNを含有)−DCMで溶離するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物の混合物(1.68g)を得た(LCMS RT=2.13分 ES+ve m/z 557 (M+H)およびRT=2.22分 ES+ve m/z 571 (M+H))。
【0183】
(中間体24)
メチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート及びエチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート
メチル(2E)−3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペノエートとエチル(2E)−3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペノエート(例えば、中間体23で調製した)(400mg、0.72ミリモル)との混合物のEtOAc(15ml)中溶液を10%パラジウム/炭素(80mg)で一晩水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液を蒸発させて、表題の化合物(370mg)(LCMS RT=2.07分 ES+ve m/z 559 (M+H)およびRT=2.16分 ES+ve m/z 573 (M+H))を得た。
【0184】
(中間体25)
メチル(2E)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエート及びメチル(2Z)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエート
8−ヒドロキシ−2−キノリンカルバルデヒド(例えば、Fluka及び/又はAcrosから市販されている)(3.81g)の無水トルエン(40ml)溶液を(カルボメトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(例えば、Aldrich及び/又はAlfa Alsarから市販されている)(7.36g)で少しずつ処理し、得られた混合物を1時間50℃で加熱した。溶媒を蒸発させ、その残留物をMeOHに溶解させ、70g SCX−2イオン交換カートリッジで精製して、表題化合物の混合物(4.98g)を得た(LCMS RT=3.09分、ES+ve m/z 230 [M+H]およびRT=2.64分、ES+ve m/z 230 [M+H])。
【0185】
(中間体26)
メチル3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)プロパノエート
メチル(2E)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエートとメチル(2Z)−3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)−2−プロペノエート(例えば、中間体25で調製した)(4.98g)との混合物のEtOAc(100ml)中溶液を10%w/wパラジウム/炭素(3.8g)の存在下で1時間水素化した。反応混合物をセライトで濾過し、溶媒を蒸発させて、表題の化合物(4.72g)を得た(LCMS RT=2.40分、ES+ve m/z 232 [M+H])。
【0186】
(中間体27)
メチル3−(8−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−2−キノリニル)プロパノエート
メチル3−(8−ヒドロキシ−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体26で調製した)(4.72g)のDMF(50ml)溶液をN−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(例えば、Aldrichから市販されている)(8.75g)及びEtN(3ml)で処理した。得られた混合物を室温にて24時間攪拌した。さらなる量のN−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(3.65g)及びEtN(1.42ml)を加え、この混合物をさらに6時間攪拌した。反応混合物を水とトルエンとに分配させ、その有機相を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。得られた残留物のサンプル4gを、0〜100%のDCM−シクロヘキサン勾配を用いる100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物 (1.76g)を得た(LCMS RT=3.44分、ES+ve m/z 364 [M+H])。この粗製物質のさらなるサンプル5.5gを、0〜100%EtOAc−シクロヘキサン勾配を用いる100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物 (1.70g)を得た(LCMS RT=3.43分、ES+ve m/z 364 [M+H])。上記精製のいずれからも不純画分を合わせ、0〜50%EtOAc/シクロヘキサン勾配を用いる100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより再精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物 (2.67g)を得た(LCMS RT=3.43分、ES+ve m/z 364 [M+H])。
【0187】
(中間体28)
1,1−ジメチルエチル4−{2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
メチル3−(8−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ}−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体で調製した27)(417mg)、1,1−ジメチルエチル1−ピペラジンカルボキシレート(例えばAldrichから市販されている)(235mg)、炭酸セシウム(1.124g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(23mg)及び[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)]ビフェニル(20mg)のTHF(6ml)中混合物をReacti−Vial(商標)中で80℃にて一晩加熱した。反応を、2M塩酸を加えることによりクエンチし、その後重炭酸ナトリウム溶液で中和した。この混合物をDCMで抽出し、抽出液を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、表題の化合物(510mg)を得た(LCMS RT=3.36分、ES+ve m/z 400 [M+H])。
【0188】
(中間体29)
メチル3−[8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート
1,1−ジメチルエチル4−{2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体28で調製した)(510mg)のDCM(30ml)溶液をトリフルオロ酢酸(5ml)で処理し、この混合物を30分間室温にて攪拌した。溶媒を蒸発させて残留物を得、これをMeOHに溶解させ、10g SCXイオン交換カートリッジで精製して、表題の化合物(330mg)を得た(LCMS RT=1.99分、ES+ve m/z 300 [M+H])。
【0189】
(中間体30)
メチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート
メチル3−[8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体29で調製した)(93mg)及び重炭酸ナトリウム(52mg)を2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩(例えば、中間体15で調製した)(111mg)のアセトニトリル(2ml)溶液に加え、得られた混合物を一晩80℃にて攪拌した。混合物を濾過(Varian Bond Elut Reservoir)し、MDAPにより精製して、表題の化合物(34mg)を得た(LCMS RT=2.20分、ES+ve m/z 559 [M+H])。
【0190】
(中間体31)
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば中間体5で調製した)(2.38g)のTHF(50ml)攪拌溶液に、水(1.8ml)、続いてヒドリド(トリフェニルホスフィン)銅(I)六量体(2.35g)を加えた。この混合物を室温にて45分間攪拌し、その後さらなる量のヒドリド(トリフェニルホスフィン)銅(I)六量体(1.18g)を加え、攪拌を1時間続けた。混合物をセライトのパッドで濾過し、濾液を蒸発させた。この残留物を、40分かけて0〜50%EtOAc/シクロヘキサン勾配で溶離する100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(2.29g)を得た(LCMS RT=3.75分、ES+ve m/z 478/480 [M+H])。
【0191】
(中間体32)
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブチル−2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
窒素雰囲気下にある1,1−ジメチルエチル4−{6−ブロモ−2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体31で調製した)(2.06g)の無水THF(25ml)攪拌溶液に、炭酸カリウム(1.19g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(0.35g)及びトリブチルボラン(例えば、Aldrichから市販されている)(THF中1M溶液、6.5ml)を加えた。この混合物を70℃で5時間加熱し、その後室温まで冷却させ、セライトのパッドで濾過し、蒸発させた。この残留物を、40分かけて0〜50%EtOAc−シクロヘキサン勾配で溶離する100gシリカカートリッジでのFlashmasterIIにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(1.79g)を得た(LCMS RT=3.89分、ES+ve m/z 456 [M+H])。
【0192】
(中間体33)
メチル3−[6−ブチル−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート
1,1−ジメチルエチル4−{6−ブチル−2−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体32で調製した)(1.77g)のDCM(30ml)攪拌溶液にトリフルオロ酢酸(15ml)を加えた。30分後、この混合物を蒸発させて、その残留物をDCM(100ml)に再溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。この残留物を、MeOH前調整済20g SCX−2イオン交換カートリッジに適用して、カートリッジをMeOH、その後2Mアンモニア/MeOHで溶離した。このアンモニア含有画分から溶媒を蒸発させて、表題の化合物(1.28g)を得た(LCMS RT=2.51分、ES+ve m/z 356 [M+H])。
【0193】
(中間体34)
メチル3−(6−ブチル−8−{4−[(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)アセチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート
窒素雰囲気下にある2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)酢酸塩酸塩(例えば、中間体41で調製した)(656mg)のアセトニトリル(15ml)攪拌懸濁液に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(384mg)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(306mg)及びEtN(0.55ml)を加えた。20分後、メチル3−[6−ブチル−8−(1−ピペラジニル)−2−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体33で調製した)(500mg)のアセトニトリル(5ml)溶液を加えた。攪拌を室温にて4時間続け、その後この混合物を蒸発させた。この残留物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)とEtOAc(50ml)とに分配させた。層を分離させ、水相をEtOAc(50ml)でさらに抽出した。合わせた有機抽出液を水(50ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(30ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させた。この残留物をDCMから再蒸発させて、表題の化合物(874mg)を得た(LCMS RT=2.91分、ES+ve m/z 629 [M+H])。
【0194】
(中間体35)
3−ヨード−8−(1−ピペラジニル)キノリン
8−フルオロ−3−ヨードキノリン(国際特許出願である国際公開第2007/039220号パンフレットに開示されている、page 16, Description 1を参照されたい)(1.36g、5ミリモル)、炭酸カリウム(0.69g、5ミリモル)及びピペラジン(3.44g、40ミリモル)の混合物をDMSO(7ml)で処理し、その懸濁液を22.5時間100℃に加熱した。反応混合物を室温まで放冷させ、DCM(50ml)及び水で希釈した。この有機溶液を水(2×50ml)で洗浄した。有機相を、4M塩化水素溶液(50ml)で抽出した。水層をDCM(10ml)で洗浄し、その後固体炭酸カリウム(30g、217ミリモル)に加えた。水(50ml)及びDCM(50ml)を加え、有機相を分離した。水相をもう一度DCM(20ml)で洗浄し、合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、減圧下で蒸発させて、表題の化合物(1.3g、77%)を得た(LCMS RT=2.10分、ES+ve m/z 340 (M+H))。
【0195】
(中間体36)
1,1−ジメチルエチル4−(3−ヨード−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート
3−ヨード−8−(1−ピペラジニル)キノリン(例えば、中間体35で調製した)(1.3g、3.8ミリモル)のDCM(6ml)及びNEt(1.07ml、7.66ミリモル)中溶液をジ−tert−ブチルジカルボネート(1.04g、4.75ミリモル)で処理し、この混合物を室温で3日間放置しておいた。反応混合物をDCMで希釈し、2M塩化水素溶液、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で蒸発させた。この残留物をDCMで希釈し、シリカカートリッジ(70g)に適用し、60分かけて0〜100%EtOAc−シクロヘキサンで溶離するFlashmaster2でのクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、減圧下で蒸発させて、表題の化合物(1.45g、87%)を得た(LCMS RT=3.71分、ES+ve m/z 440 (M+H))。
【0196】
(中間体37)
1,1−ジメチルエチル4−{3−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−(3−ヨード−8−キノリニル)−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体36で調製した)(555mg、1.26ミリモル)、メチルアクリレート(例えば、Aldrichから市販されている)(0.345ml、3.8ミリモル)、NEt(1.14ml、8.2ミリモル)、トリフェニルホスフィン(33mg、0.12ミリモル)、酢酸パラジウム(II)(18mg、0.12ミリモル)のDMF(15ml)中混合物を一晩100℃に加熱した。この混合物を減圧下で濃縮して、その残留物を、MeOHで溶離するSCXカートリッジ(20g)に負荷した。適切な画分を合わせ、減圧下で蒸発させて、表題の化合物(90mg)(LCMS RT=3.49分、ES+ve m/z 398 (M+H))を得た。
【0197】
(中間体38)
1,1−ジメチルエチル4−{3−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート
1,1−ジメチルエチル4−{3−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体37で調製した)(350mg、0.88ミリモル)のEtOAc(15ml)溶液を10%パラジウム/炭素(100mg)で1.5時間室温にて水素下した。さらなる触媒(50mg)を加え、この混合物をさらに4時間水素化した。触媒を、セライトカートリッジを通す濾過により除去して、濾液を減圧下で濃縮して、表題の化合物(293mg)(LCMS RT=3.14分、ES+ve m/z 400 (M+H))を得た。
【0198】
(中間体39)
メチル3−[8−(1−ピペラジニル)−3−キノリニル]プロパノエート
1,1−ジメチルエチル4−{3−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−8−キノリニル}−1−ピペラジンカルボキシレート(例えば、中間体38で調製した)(293mg、0.73ミリモル)のDCM(10ml)溶液をトリフルオロ酢酸(3ml)で処理し、この混合物を、窒素下室温にて1時間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、その残留物をトルエンに溶解させて再蒸発させた(2×30ml)。この残留物(330mg)を、MeOHで、続いて2Nアンモニア/MeOHで溶離するSCXカートリッジ(10g)に適用した。適切な画分を合わせ、蒸発させて、SCXカートリッジに再適用し、先と同じように溶離して、表題の化合物(203mg)(LCMS RT=1.93分、ES+ve m/z 300 (M+H))を得た。
【0199】
(中間体40)
メチル(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)アセテート
ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート(2.55g、11.1ミリモル)とトリフェニルホスフィン(2.91g、11.1ミリモル)とのTHF(20ml)中混合物を窒素下で−20℃〜−25℃に冷却した。この間に、3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)−1−プロパノール(例えば、E. L. Strogryn, J. Med. Chem. 1970, 13, 864-6によって調製されている、及び/又は、例えば、ChemBridgeから市販されている)(1.80g、11.4ミリモル)及びメチル4−ヒドロキシフェニルアセテート(例えば、Aldrichから市販されている)(1.67g、10.0ミリモル)をTHF(30ml)に懸濁させて、10分後に最初の溶液に加えた。混合物を、室温まで昇温させ、一晩窒素下で攪拌した。反応混合物をジエチルエーテルとブラインとに分配させた。水層をエーテルで2回抽出し、合わせた有機溶液を乾燥させ(MgSO)、減圧下で蒸発させた。この残留物をSCX−2カートリッジ(70g)に適用し、MeOHで、続いて10%0.88アンモニア水溶液/MeOHで溶離した。アンモニア性溶液を合わせ、蒸発させた。この残留物(2.59g)を、60分かけて0〜30%MeOH(1%のEtNを含有)−DCMで溶離するシリカカートリッジ(100g)でのFlashmaster2クロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、減圧下で蒸発させて、表題の化合物(1.77g、57%)(LCMS RT=2.08分、ES+ve m/z 306 (M+H))を得た。
【0200】
(中間体41)
(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)酢酸、塩酸塩
メチル(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)アセテート(例えば、中間体40で調製した)(1.379g、4.51ミリモル)のMeOH(12ml)溶液を2M水酸化ナトリウム溶液(6ml)で処理し、得られた混合物を一晩周囲温度にて攪拌した。溶媒を蒸発させて残留物を得、これを、希塩酸(9mlの2Mを水で25mlに希釈)と3:1クロロホルム−イソプロパノール(25ml)とに分配させた。水相を、さらにクロロホルム−イソプロパノール混合物で抽出した(4×25ml)。合わせた抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させて、表題の化合物を白色の固形物(1.4646g)として得た(LCMS RT=1.96分、ES+ve m/z 292 [M+H])。
【0201】
実施例
(実施例1)
3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸、ギ酸塩
【化15】

【0202】
メチル3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体9で調製した)(32mg)のMeOH(5ml)溶液を2N水酸化ナトリウム溶液(1ml)で処理し、得られた混合物を1時間65℃で加熱した。反応混合物を2N塩酸(1ml)で処理し、溶媒を蒸発させた。この残留物をMeOH−DMSO(1:1、1ml)に溶解させ、MDAPにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(11.5mg)を得た。LCMS RT=2.39分、ES+ve m/z 635 [M+H]1H NMR δ (400 MHz, MeOD) 1.71 (s, 4 H), 1.89 (s, 4 H), 2.15 - 2.22 (m, 2 H), 2.80 (t, J=7.03 Hz, 2 H), 2.90 - 2.97 (m, 2 H), 3.02 - 3.09 (m, 2 H), 3.18 - 3.23 (m, 4 H), 3.23 - 3.26 (m, J=7.03 Hz, 2 H), 3.27 - 3.29 (m, 2 H), 3.31 - 3.34 (m, 4 H), 3.48 (s, 4 H), 4.02 - 4.08 (m, 4 H), 6.89 (d, J=8.53 Hz, 2 H), 7.03 (d, J=2.00 Hz, 1 H), 7.16 - 7.27 (m, 7 H), 7.28 - 7.30 (m, 1 H), 7.35 (d, J=8.53 Hz, 1 H), 8.02 (d, J=8.53 Hz, 1 H), 8.52 (s, 1 H)。
【0203】
(実施例2)
3−(6−エチル−8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパン酸、ギ酸塩
【化16】

【0204】
メチル3−(6−エチル−8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体12で調製した)のMeOH(5ml)溶液を2N水酸化ナトリウム溶液(1ml)で処理し、得られた混合物を攪拌しながら2時間65℃で加熱した。反応混合物を2N塩酸(1ml)で処理し、溶媒を蒸発させて残留物を得、これを、MeOH−DMSO(1:1、2ml)に懸濁させた。この懸濁液を濾過し、濾液をMDAPにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(35mg)を得た(LCMS RT=2.10分、ES+ve m/z 573 [M+H], 287 (M/2+H))。
【0205】
(実施例3)
3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパン酸、ギ酸塩(1:2)
【化17】

【0206】
(a)メチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート及びエチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体24で調製した)(370mg)のTHF(10ml)中混合物を水酸化ナトリウム溶液(2M、10ml)で処理し、この混合物を室温にて一晩攪拌した。酢酸(10ml)を加え、この混合物を濃縮した。その残留物をSCX−2カートリッジ(10g)に適用し、MeOHで洗浄し、メタノール性アンモニアで溶離した。生成物がすべての画分で見出されたので、それらを合わせ、蒸発させた。この粗製生成物をMeOH(5ml)に再溶解させ、水酸化ナトリウム溶液(2ml)でもう一度処理し、4時間攪拌した。酢酸(2ml)を加え、この混合物を濃縮した。この残留物を、先ずMeOHで、その後アンモニア/MeOHで溶離するSCX−2カートリッジ(20g)に適用した。塩基性の画分を合わせ、蒸発させて、表題化合物の遊離塩基を得た(347mg)(LCMS RT=2.00分、ES+ve m/z 545 (M+H), 273 (M/2+H))。この遊離塩基の一部をMDAPによりさらに精製して、表題の化合物を得た(LCMS RT=1.87分、ES+ve m/z 545 (M+H), 273/274 (M/2+H))。
【0207】
(b)3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパン酸、ギ酸塩
メチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体30で調製した)(34mg)をMeOH(8ml)に溶解させ、2M水酸化ナトリウム溶液(1ml)を加えた。この混合物を70℃で4時間攪拌した時点で2M塩酸(1ml)を加えた。この混合物を濾過し、濾液をMDAPにより精製して、表題の化合物(23mg)を得た(LCMS RT=2.06分、ES+ve m/z 545 [M+H])。
【0208】
(実施例4)
(2E)−3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペン酸−ギ酸(1:1)
【化18】

【0209】
メチル3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)−2−プロペノエート−ギ酸(1:1)(例えば、中間体23で調製した)(15.2mg、0.0252ミリモル)を無水THF(1ml)に溶解させ、2N NaOH(1ml)で処理した。反応混合物を室温にて2日間攪拌した。反応を酢酸(0.5ml)でクエンチし、2g SCX−2カートリッジに負荷し、これを、MeOH、続いて2Mメタノール性アンモニアで溶離した。一部の生成物は、MeOH画分中に溶離した。したがって、MeOH画分とMeOH/アンモニア画分のいずれをも合わせて、蒸発させた。この粗製物質をMDAPにより精製した。適切な画分を合わせ、蒸発させて、表題の化合物(2.9mg)を得た(LCMS RT=2.15分、ES+ve m/z 272 (M/2+H), 543 (M+H))。
【0210】
(実施例5)
3−(8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−3−キノリニル)プロパン酸、ギ酸塩
【化19】

【0211】
実施例1の化合物で述べた方法と同じような方法により実施例5の化合物を調製した。2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチルメタンスルホン酸塩(例えば、中間体15で調製した)とメチル3−[8−(1−ピペラジニル)−3−キノリニル]プロパノエート(例えば、中間体39で調製した)との反応を、中間体9で述べたと同じようにして行い、続いてその生成物のエステル加水分解を、実施例1で述べた方法に従って行った。
【0212】
(実施例6)
3−(6−ブチル−8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパン酸、ギ酸塩
【化20】

【0213】
窒素雰囲気下にあるメチル3−(6−ブチル−8−{4−[(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)アセチル]−1−ピペラジニル}−2−キノリニル)プロパノエート(例えば、中間体34で調製した)(867mg)の無水THF(15ml)攪拌溶液に、カルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(63mg)及びジフェニルシラン(0.54ml)を加えた。1時間攪拌した後、さらなる量のカルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(25mg)及びジフェニルシラン(0.22ml)を加えた。この混合物を30分間攪拌し、その後エーテル(30ml)で希釈して、1M塩酸(40ml)で抽出した。飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えることにより水層を塩基性にし、その後EtOAc(2×30ml)で抽出した。合わせたEtOAc抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させた。この残留物をDCMから再蒸発させ、その後MeOH(8ml)に溶解させ、2M水酸化ナトリウム(2ml)で処理した。この混合物を1時間70℃で加熱し、その後室温まで冷却させた。2M塩酸を加えることにより混合物をpH8に調整し、水(40ml)で希釈し、EtOAc(3×30ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させた。この残留物をDCMから再蒸発させ、その後MeOH−DMSO(1:1)に溶解させて、MDAPにより精製した。溶媒を適切な画分から蒸発させて、表題の化合物(336mg)(LCMS RT=2.38分、ES+ve m/z 601 [M+H])を得た。
【0214】
生物学的データ
本発明の化合物は、例えば、以下のアッセイ(又は同じようなアッセイ)に従って、インビトロ生物学的活性について試験され得る。
【0215】
H1受容体細胞系作出及びFLIPRアッセイプロトコル
【0216】
1.ヒスタミンH1細胞系の作出
ヒトH1受容体を、文献[Biochem. Biophys. Res. Commun., 201(2):894 (1994)]に記載されている既知の手順を用いてクローン化する。ヒトH1受容体を安定に発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、文献[Br. J. Pharmacol., 117(6):1071 (1996)]に記載されている既知の手順に従って作出する。
【0217】
(ヒスタミンH1機能的拮抗物質アッセイ:機能的pKi値の決定)
ヒスタミンH1細胞系を、非コート黒色壁透明底384ウェル組織培養プレート中の、10%透析ウシ胎仔血清(Gibco/Invitrogenカタログ番号12480−021)及び2mM L−グルタミン(Gibco/Invitrogenカタログ番号25030−024)が補充されたアルファ最小必須培地(Gibco/Invitrogen、カタログ番号22561−021)に接種し、5%CO、37℃で一晩保持する。
【0218】
各ウェルから過剰の培地を除去して10μlを残す。30μlの負荷染料(Tyrodes緩衝液+プロベネシド(145mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、10mM D−グルコース、1.2mM MgCl、1.5mM CaCl、2.5mMプロベネシド、pHはNaOH 1.0Mで7.40に調整)中に希釈された250μM Brilliant Black及び2μM Fluo−4)を各ウェルに加え、プレートを、5%CO、37℃で60分間インキュベートする。
【0219】
Tyrodes緩衝液+プロベネシド中に必要とされる濃度まで希釈された10μlの試験化合物(又は対照としての10μlのTyrodes緩衝液+プロベネシド)を各ウェルに加え、プレートを、37℃、5%COで30分間インキュベートする。プレートを、この後FLIPR(商標)(Molecular Devices、UK)の中に入れて、Sullivan et al.(Lambert DG (ed.), Calcium Signaling Protocols, New Jersey: Humana Press, 1999, 125-136中)に記載されている方法で、ヒスタミンの最終アッセイ濃度がEC80である結果をもたらす濃度のヒスタミン10μlを加える前及び後の、細胞蛍光発光(λex=488nm、λEM=540nm)をモニタリングする。
【0220】
機能的拮抗は、FLIPR(商標)装置(Molecular Devices)により測定されるヒスタミン誘発蛍光発光増加の低下によって示される。濃度効果曲線から、標準的な薬理数学解析を用いて、機能的アフィニティーを決定する。
【0221】
(ヒスタミンH1機能的拮抗物質アッセイ:拮抗物質pA2及び持続時間の決定)
ヒスタミンH1受容体発現CHO細胞を、先に述べたようにして非コート黒色壁透明底96ウェル組織培養プレート中に接種する。
【0222】
一晩培養させた後、各ウェルから増殖培地を除去し、200μlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、50μlの負荷染料(Tyrodes緩衝液+プロベネシド(145mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、10mM D−グルコース、1.2mM MgCl、1.5mM CaCl、2.5mMプロベネシド、pHはNaOH 1.0Mで7.40に調整)に希釈された250μM Brilliant Black及び1μM Fluo−4)で置き換える。細胞を、37℃で45分間インキュベートする。負荷緩衝液を除去し、細胞を先と同じようにして洗浄し、90μlのTyrodes緩衝液+プロベネシドを各ウェルに加える。Tyrodes緩衝液+プロベネシド中に必要とされる濃度まで希釈された10μlの試験化合物(又は対照としての10μlのTyrodes緩衝液+プロベネシド)を各ウェルに加え、プレートを、37℃、5%COで30分間インキュベートする。
【0223】
プレートをこの後FLIPR(商標)(Molecular Devices、UK)の中に入れて、Sullivan et al.(Lambert DG (ed.), Calcium Signaling Protocols, New Jersey: Humana Press, 1999, 125-136中)に記載されている方法で、1mM〜0.1nMの濃度範囲に亘るヒスタミン50μlを加える前及び後の、細胞蛍光発光(λex=488nm、λEM=540nm)をモニタリングする。得られる濃度応答曲線を、標準的な4パラメータ論理式を用いて非線型回帰により解析して、ヒスタミンEC50(ヒスタミンに対する最大応答の50%応答を生じるのに必要とされるヒスタミン濃度)を決定する。拮抗物質pA2を、以下の標準式:pA2=log(DR−1)−log[B](式中、DR=用量比で、EC50拮抗物質-処理/EC50対照と定義され、[B]=拮抗物質の濃度)を用いて計算する。
【0224】
拮抗物質の持続時間を決定するためには、非コート黒色壁透明底96ウェル組織培養プレート中で細胞を一晩培養し、PBSで洗浄し、およそのDRが30〜300の範囲にあるように選択された濃度の拮抗物質と一緒にしてインキュベートする。30分の拮抗物質インキュベーション期間が過ぎた後、細胞を、2回又は3回、200μlのPBSで洗浄し、次いで100μlのTyrodes緩衝液を各ウェルに加えて、拮抗物質の解離を開始させる。予め決められた時間に亘る、典型的には30〜270minに亘る、37℃でのインキュベーションが過ぎた後、先に記載したようにして、細胞を、次いで、200μlのPBSでもう一度洗浄して、Brilliant Black、プロベネシド及びFluo−4を含む100μlのTyrodes緩衝液と一緒にして、37℃で45min間インキュベートする。この期間が過ぎた後、先に記載したようにしてFLIPR(商標)中で細胞をヒスタミンで負荷試験する。各時間点における用量比を用いて、以下の式:受容体占拠率=(DR−1)/DRにより、H1受容体占拠率を決定する。受容体占拠の時間と共にの低下はほぼ直線と同じになるので、線型回帰で解析する。この直線近似の勾配は、拮抗物質解離速度の指標として用いられる。拮抗物質処理細胞での用量比、及び各時間点での拮抗物質処理及び洗浄細胞での用量比を用いて、相対用量比(rel DR)を計算する(これは、拮抗物質持続時間の指標としても用いられる)。長い作用持続時間を有する拮抗物質は、1に近いrel DR値を生じ、一方短い作用持続時間を有する拮抗物質は、拮抗物質処理のみで得られる用量比の値に近いrel DR値を生じる。
【0225】
2.H3受容体細胞系作出、膜調製、及び機能的GTPγSアッセイプロトコル
【0226】
(ヒスタミンH3細胞系の作出)
酵素BamH1及びNot−1によるプラスミドDNAの制限消化により、ヒスタミンH3 cDNAを、その保有ベクターであるpCDNA3.1 TOPO(InVitrogen)から単離し、同じ酵素で消化した誘導発現ベクターpGene(InVitrogen)中にライゲーションする。GeneSwitch(商標)装置(誘導物質の不存在下では導入遺伝子発現がスイッチオフされ、誘導物質の存在下ではスイッチオンされる装置)を、米国特許第5364791号、第5874534号及び第5935934号明細書に記載されているようにして、実行する。ライゲーションされたDNAをコンピテントDH5α E.coli宿主細菌細胞中に形質導入し、Zeocin(商標)(pGene及びpSwitch上に存在するsh ble遺伝子を発現している細胞のセレクションを可能にする抗生物質)を50μg/ml含むLuria Broth(LB)寒天上に植え付ける。再ライゲーションされたプラスミドを含むコロニーを、制限分析により特定する。このpGeneH3プラスミドを含んでいる宿主細菌の250ml培養液から、哺乳動物細胞中へトランスフェクションされるためのDNAを調製し、DNA調製キット(Qiagen Midi−Prep)を用いて、製造業者ガイドライン(Qiagen)のとおりにして、単離する。
【0227】
pSwitch調節プラスミド(InVitrogen)が前もってトランスフェクションされたCHO K1細胞を、10%v/v透析ウシ胎仔血清、L−グルタミン、及びハイグロマイシン(100μg/ml)が補充されたHams F12(GIBCOBRL、Life Technologies)培地を含有しているComplete Mediumに、使用の24時間前に、T75フラスコ1個あたり2×10細胞で接種する。この細胞の中に、プラスミドDNAを、Lipofectamine plusを用いて製造者のガイドライン(InVitrogen)に従ってトランスフェクションする。トランスフェクションの48時間後に、細胞を、500μg/mlのZeocin(商標)が補充された完全培地の中に入れる。
【0228】
セレクションの10〜14日後に、10nMのMifepristone(InVitrogen)を培養培地に加えて、受容体の発現を誘導する。誘導の18時間後に、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA;1:5000;InVitrogen)を用いて細胞をフラスコから引き離し、続いてPBS(pH7.4)で数回洗浄した後、フェノールレッドを含まない、且つEarles塩及び3%Foetal CloneII(Hyclone)が補充された、Minimum Essential Medium(MEM)を含むSorting Medium中に再懸濁させる。ヒスタミンH3受容体のN−末端ドメインに対して作製されたウサギポリクローナル抗体(4a)で染色することにより、およそ1×10個の細胞を受容体発現について調べ、氷上で60分間インキュベートし、続いてsorting medium中で2回洗浄する。受容体結合抗体を、Alexa 488蛍光発光マーカー(Molecular Probes)がコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体と一緒に氷上で60分間細胞をインキュベートすることにより検出する。Sorting Mediumでさらに2回洗浄した後、細胞を50μm Filcon(商標)(BD Biosciences)で濾過し、その後、Automatic Cell Deposition Unitが装着されたFACS Vantage SE Flow Cytometerで分析を行う。対照の細胞は、同じような方法で処理された非誘導細胞である。陽性に染色された細胞を、500μg/mlのZeocin(商標)を含むComplete Mediumが入っている96ウェルプレート中に単一種細胞としてソートし、増殖させてから、受容体発現について抗体とリガンドとの結合研究により再分析する。膜調製用に1つのクローン(3H3)を選択する。
【0229】
(培養細胞からの膜調製)
このプロトコルの全てのステップは、4℃で、且つ予冷却された試薬を用いて行う。細胞ペレットを10体積の均質化緩衝液(50mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、1mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、KOHでpH7.4、10−6Mロイペプチン(アセチル−ロイシル−ロイシル−アルギナル;Sigma L2884)、25μg/mlバシトラシン(Sigma B0125)、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、及び2×10−6MペプスタインA(Sigma))に再懸濁させる。細胞をこの後1リットルガラス製Waringブレンダー中で2×15秒間バーストすることによりホモジナイズし、続いて500gで20分間遠心分離する。上澄み液をこの後48,000gで30分間遠心する。5秒間ボルテックスすることにより、ペレットを均質化緩衝液(4×元の細胞ペレットの体積)に再懸濁させ、続いてDounceホモジナイザー(10〜15ストローク)でホモジナイズする。この時点で調製物をポリプロピレン試験管中にアリコートし、−80℃で保存する。
【0230】
(ヒスタミンH3機能的拮抗物質アッセイ)
アッセイされている各化合物(単白色384ウェルプレート中にある)について:
(a)DMSO中に必要とされる濃度まで希釈された0.5μlの試験化合物(又は対照としての0.5μlのDMSO);
(b)Wheat Germ Agglutinin Polystyrene LeadSeeker(登録商標)(WGA PS LS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズを膜(上述した方法に従って調製)と混合し、アッセイ緩衝液(20mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)+100mM NaCl+10mM MgCl、pH7.4 NaOH)中に希釈して、5μgの蛋白、1ウェルあたり0.25mgのビーズ、及び10μM最終アッセイ濃度のグアノシン5’ジホスフェート(GDP)(Sigma、アッセイ緩衝液中に希釈)を含む30μlの最終体積を得、これをローラー上で60分間室温にてインキュベートすることによって調製される30μlのビーズ/膜/GDPミックス;
(c)15μlの0.38nM[35S]−GTPγS(Amersham;放射能濃度=37MBq/ml;比放射能=1160Ci/ミリモル)、ヒスタミン(ヒスタミンの最終アッセイ濃度がEC80である結果をもたらす濃度のもの);
を加える。
【0231】
2〜6時間後、プレートを1500rpmで5分間遠心分離し、613/55フィルターを用いるViewluxカウンターで1プレートあたり5分間カウントする。データを、4パラメーター論理式を用いて解析する。基底活性、すなわちヒスタミンがウェルに加えられていないものを、最小値として用いる。
【0232】
(ボーラス投与によるCNS浸透)
化合物を、雄CD Sprague Dawleyラットに、1mg/kgの見かけ用量濃度で静脈内的に投与する。化合物は、5%DMSO/45%PEG200/50%水中に製剤化する。投与5分後に、血液サンプルを、イソフルランによる終末麻酔下に採取し、脳も、脳浸透を評価するために取り出す。血液サンプルは、直接ヘパリン試験管の中に採取する。血液サンプルは、分析のためには、蛋白質沈殿を用いて調製し、脳サンプルは、ホモジナイゼーション及びそれに続いての蛋白質沈殿を用いる脳からの薬物抽出により調製する。血液及び脳抽出物中の親薬物の濃度を、化合物特異的質量転移を用いる定量LC−MS/MS分析によって決定する。
【0233】
結果
実施例1〜6の化合物を、上記の(又は同じような)アッセイ/方法により試験した。以下の結果が得られた。
【0234】
(i)7.0よりも大きい平均pK(pK)。
【0235】
(ii)8.0より大きいH3における平均pK(pK)。
【0236】
(iii)実施例5は、およそ7.0よりも大きい平均pA2値を有していた。実施例1、2、3a及び6は、およそ8.0よりも大きい平均pA2値を有していた。
【0237】
(iv)実施例1、2及び3は、低CNS浸透を示した。他の化合物は、低CNS浸透を有していると、予測される。
【0238】
引用したすべての文献、刊行物、特許及び特許出願の内容は、本明細書にその全部が組み込まれているのと同じように、扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
キノリニル環は、2又は3位においてRにより、5、6、又は7位においてRにより置換され得;
は、−CHCHCOOH、−CH=C(CH)COOH又は−CH=CHCOOHを表し;
は、C1〜6アルキル、アリール又は−C1〜6アルキルアリールを表し;
nは、0又は1を表す]
で表される化合物及びその塩。
【請求項2】
キノリニル環が、2位においてRにより置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、−CHCHCOOHを表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、C1〜4アルキル、フェニル、又は−C1〜4アルキルフェニルを表す、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
3−[8−{4−[2−(4−{[3−(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)プロピル]オキシ}フェニル)エチル]−1−ピペラジニル}−6−(フェニルメチル)−2−キノリニル]プロパン酸である化合物、又はその塩。
【請求項6】
治療で使用するための、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
炎症及び/又はアレルギー疾患の治療で使用するための、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
アレルギー性鼻炎の治療で使用するための、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、場合により1種以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に含む、組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1種以上の他の治療用化合物とを含む、組み合わせ。
【請求項11】
炎症及び/又はアレルギー疾患を治療又は予防するための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
障害が、アレルギー性鼻炎である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
炎症及び/又はアレルギー疾患を治療又は予防する方法であって、それを必要としている患者に、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
本明細書に開示されている方法A〜Dから選択される、請求項1に記載の化合物の調製方法。

【公表番号】特表2009−537488(P2009−537488A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510464(P2009−510464)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054807
【国際公開番号】WO2007/135081
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】