説明

アダプタ、情報機器、情報システム及び通信方法

【課題】 高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、機器間の情報通信において、要輻射(EMI)を低減することができるアダプタを提供する。
【解決手段】 カードアダプタは、ボード、該ボードの一端近傍に設けられたカードエッジコネクタ315、該ボード上に実装された2つのトランシーバソケット(312A、312B)、変換素子317、及び4つのコネクタなどを有している。そして、変換素子317は、カードエッジコネクタ315と2つのトランシーバソケット(312A、312B)との間を電気的に接続する複数の配線パターンの途中に設けられ、該複数の配線パターンのクロックドメインを、クロックがスペクトラム拡散クロックであるクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックであるクロックドメインとに分割している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタ、情報機器、情報システム及び通信方法に係り、更に詳しくは、光通信に用いられるアダプタ、該アダプタが装着された情報機器及び情報システム、並びに情報通信を光伝送媒体を介して行なう通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、情報機器間でデータ通信を行うための規格の1つとしてとして、IEEE802.3が広く普及している。
【0003】
一方、近年、パソコンの高速ローカル・バスの規格である、PCI(Peripheral Component Interconnect)の後継となる規格として、PCI Express(登録商標)が提案された。
【0004】
PCI Expressの伝送路は、2対(上り用と下り用)の信号線、すなわち4本の信号線を1レーンとし、レーン単位で全二重双方向のシリアル転送が可能である。また、実効転送速度は、1レーンの一方向あたり250Mバイト/sが可能である。そこで、例えば、8レーンを有する場合は、一方向あたり2Gバイト/sの実効転送速度が可能である。
【0005】
そして、PCI Expressの規格に対応したソケットを搭載したワークステーションやパソコンなどの情報機器が市販されるようになった。
【0006】
例えば、特許文献1には、データ処理システムから離れたところにあるPCI Express機能カードの機能を実行するためのデータ処理システムが開示されている。このデータ処理システムは、回路基板と、回路基板と比較した場合、離れたところに位置していて、回路基板から見た場合、アーキテクチャ的に回路基板のところに位置しているように見えるPCI Express機能カードと、を備えている。
【0007】
また、特許文献2には、第1の拡張インターフェースを備える第1のコンピュータと、第1の拡張インターフェースに接続する第1のNIC(Network Interface Card)装置と、第2の拡張インターフェースを備える第2のコンピュータと、第2の拡張インターフェースに接続する第2のNIC装置と、第1のNIC装置及び第2のNIC装置に接続するネットワークケーブルと、からなるネットワークシステムが開示されている。このネットワークシステムでは、第1のNIC装置は、第1の拡張インターフェースから供給された所定の信号を保存する送信用バッファ手段と、送信用バッファ手段に保存した信号を、ネットワークケーブルに対して、所定のタイミングで送信する第1の送信手段と、を備え、第2のNIC装置は、ケーブルから送信されてきた信号を保存する受信用バッファ手段と、受信用バッファ手段に保存した信号を第2の拡張インターフェースに送信する第2の送信手段と、を備えている。
【0008】
なお、PCI Expressのケーブル接続技術は、PCI Expressの規格制定団体であるPCI−SIG(Special Interest Group)によって2007年1月に制定された規格である(非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電子機器及びそれを含むシステムにおいて、それらから発せられる不要輻射(ElectroMagnetic Interference(EMI))をより厳しい方向に制限することが決定されている。そこで、今後、比較的短距離(1メートル程度から数十メートル)でも、不要輻射(EMI)が出にくい光通信の普及が進むことが予想される。
【0010】
従来の光通信では、例えば、PCI Expressの規格に対応したソケットを搭載した情報機器間でデータ通信を行おうとすると、送信側の情報機器では、送信情報をPCI Expressの規格からIEEE802.3の規格に変換して送出し、受信側の情報機器では、受信情報をIEEE802.3の規格からPCI Expressの規格に変換して取り込む必要があった。これは、PCI Expressの規格に対応したソケットに挿入される通信アダプタに上記変換処理を高速で行うためのチップを搭載する必要があり、コストが高いという不都合があった。また、IEEE802.3の規格に変換する際に各種ヘッダ情報が付加されるため、実効転送速度が低下するという不都合があった。
【0011】
そして、特許文献1に開示されているデータ処理システム及び特許文献2に開示されているネットワークシステムでは、不要輻射(EMI)に関しては何ら考慮されていなかった。
【0012】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、機器間の情報通信において不要輻射(EMI)を低減することができるアダプタを提供することにある。
【0013】
また、本発明の第2の目的は、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことができる情報機器を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第3の目的は、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことができる情報システムを提供することにある。
【0015】
また、本発明の第4の目的は、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことができる通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第1の観点からすると、機器間の情報通信を光伝送媒体を介して行う際に、前記光伝送媒体と機器との間に設けられるアダプタであって、前記光伝送媒体と接続される光トランシーバが挿入される少なくとも1つのソケットと;前記少なくとも1つのソケットが実装され、機器に接続されるコネクタを有し、該コネクタと前記少なくとも1つのソケットとを電気的に接続する配線パターンが設けられているボードと;前記配線パターンの途中に設けられ、前記配線パターンのクロックドメインを、クロックがスペクトラム拡散クロックである第1のクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックである第2のクロックドメインとに分割する素子と;を備えるアダプタである。
【0017】
これによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、機器間の情報通信において不要輻射(EMI)を低減することが可能となる。
【0018】
本発明は、第2の観点からすると、外部機器に対する情報の送信及び受信の少なくとも一方を行うことができる情報機器であって、少なくとも1つのソケットが搭載されている基板と;前記少なくとも1つのソケットに挿入された少なくとも1つの本発明のアダプタと;を備える情報機器である。
【0019】
これによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことが可能となる。
【0020】
本発明は、第3の観点からすると、第1の情報機器と第2の情報機器が光伝送媒体を介して接続されている情報システムであって、前記第1の情報機器として、外部機器に対する情報の送信及び受信のうち少なくとも送信を行うことができる本発明の情報機器と;前記第2の情報機器として、外部機器に対する情報の送信及び受信のうち少なくとも受信を行うことができる本発明の情報機器と;前記第1の情報機器の少なくとも1つのアダプタに挿入された少なくとも1つの光トランシーバと;前記第2の情報機器の少なくとも1つのアダプタに挿入された少なくとも1つの光トランシーバと;前記第1の情報機器の少なくとも1つの光トランシーバに一端が接続され、前記第2の情報機器の少なくとも1つの光トランシーバに他端が接続されている光伝送媒体と;を備える情報システムである。
【0021】
これによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことが可能となる。
【0022】
本発明は、第4の観点からすると、機器間の情報通信を光伝送媒体を介して行う通信方法であって、前記光伝送媒体と機器との間に、クロックがスペクトラム拡散クロックである第1のクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックである第2のクロックドメインとを有するアダプタを設けることを特徴とする通信方法である。
【0023】
これによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリントシステムの概略構成を説明するための図である。
【図2】サーバ及びプリンタにおけるPCI Expressツリーを説明するための図(その1)である。
【図3】サーバ及びプリンタにおけるPCI Expressツリーを説明するための図(その2)である。
【図4】サーバとプリンタとの間の伝送路を説明するための図である。
【図5】サーバにおけるコントローラの構成を説明するためのブロック図である。
【図6】プリンタにおけるコントローラの構成を説明するためのブロック図である。
【図7】カードアダプタの平面図である。
【図8】カードエッジコネクタの複数の端子を説明するための図である。
【図9】トランシーバソケットの複数の端子を説明するための図である。
【図10】カードエッジコネクタにおけるシリアル信号用端子と変換素子と2つのトランシーバソケットにおけるシリアル信号用端子とを電気的に接続する複数の配線パターンを説明するための図である。
【図11】コネクタ311に関する配線パターンを説明するための図である。
【図12】サーバ側のコネクタ311とプリンタ側のコネクタ311との間の伝送路を説明するための図である。
【図13】2つのトランシーバソケットにおける光トランシーバの制御信号用の端子と2つのコネクタとを電気的に接続する複数の配線パターンを説明するための図である。
【図14】コネクタ313及びコネクタ314と外部装置(光トランシーバ制御装置)との接続状態を説明するための図である。
【図15】カードアダプタを、1レーン用、4レーン用、8レーン用のいずれとするかを設定するためのスイッチSW8を説明するための図である。
【図16】光トランシーバを説明するための図(その1)である。
【図17】光トランシーバを説明するための図(その2)である。
【図18】変換素子317の効果を説明するための図(その1)である。
【図19】変換素子317の効果を説明するための図(その2)である。
【図20】カードアダプタの変形例を説明するための図(その1)である。
【図21】カードアダプタの変形例を説明するための図(その1)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る情報システムとしてのプリントシステム100の概略構成が示されている。
【0026】
このプリントシステム100は、サーバ200、プリンタ400、光ケーブル500、複数の端末800、ネットワーク900などを備えている。
【0027】
サーバ200は、いわゆるプリントサーバであり、ネットワーク900を介して複数の端末(例えば、パソコン)800と接続されている。
【0028】
サーバ200及びプリンタ400は、一例として図2に示されるように、それぞれ、PCI Expressの規格にて規定されたツリー構造のトポロジに従って接続されたデバイス群を有する。PCI Expressの規格にて規定されたツリー構造のトポロジとは、一例として図3に示されるように、ルートコンプレックスを頂点としたツリー型の構成であり、ルートコンプレックスとエンドポイントとが接続されるトポロジである。
【0029】
サーバ200は、図4に示されるように、そのマザーボードにPCI Expressの規格に準拠したソケット(PCI Expressソケット)が搭載されている。そして、該PCI Expressソケットには、カードアダプタ300が装着されている。
【0030】
プリンタ400は、図4に示されるように、そのマザーボードにPCI Expressの規格に準拠したソケット(PCI Expressソケット)が搭載されている。そして、該PCI Expressソケットには、カードアダプタ300が装着されている。
【0031】
また、各カードアダプタ300には、それぞれ光トランシーバ600が取り付けられている。
【0032】
そして、サーバ側の光トランシーバ600とプリンタ側の光トランシーバ600は、光ケーブル500によって接続されている。
【0033】
ここでは、画像情報(ブラックの画像情報、シアンの画像情報、マゼンタの画像情報、及びイエローの画像情報)が、ラスターイメージの可逆圧縮データの形で、サーバ200からプリンタ400に伝送される。
【0034】
そして、プリンタ400は、受信した画像情報に応じてカラーの画像を形成し、出力する。
【0035】
サーバ200は、一例として図5に示されるように、端末800からの要求に応じて、該端末800からの画像情報をプリンタ400に向けて出力するコントローラ210を備えている。
【0036】
このコントローラ210は、2つの通信制御回路(211、216)、画像処理回路212、データ圧縮回路213、メモリ214、及びメモリ制御回路215などを有している。
【0037】
通信制御回路211は、ネットワーク900を介した複数の端末800との通信を制御する。
【0038】
画像処理回路212は、通信制御回路211で受信した端末800からの画像情報を、ラスターイメージデータに変換する。
【0039】
データ圧縮回路213は、画像処理回路212からのラスターイメージデータを可逆圧縮し、メモリ214に一時的に格納する。
【0040】
メモリ制御回路215は、メモリ214に蓄積されたデータを監視し、データが揃うと通信制御回路216を介して出力する。
【0041】
プリンタ400は、一例として図6に示されるように、サーバ200からのラスターイメージの可逆圧縮データを印刷装置に出力するコントローラ410を備えている。
【0042】
このコントローラ410は、通信制御回路411、メモリ412、メモリ制御回路413、データ伸長回路414、及び印刷制御回路415などを有している。
【0043】
通信制御回路411は、受信したラスターイメージの可逆圧縮データをメモリ412に一時的に格納する。
【0044】
メモリ制御回路413は、メモリ412に蓄積されたデータを監視し、データが揃うとデータ伸長回路414に出力する。
【0045】
データ伸長回路414は、メモリ412からのラスターイメージの可逆圧縮データを伸長する。
【0046】
印刷制御回路415は、データ伸長回路414で伸長されたラスターイメージを印刷装置に出力する。
【0047】
次に、カードアダプタ300の詳細について説明する。カードアダプタ300の平面図が、一例として図7に示されている。
【0048】
このカードアダプタ300は、ボード310上に、2つのトランシーバソケット(312A、312B)、4つのコネクタ(311、313、314、316)、変換素子317などが実装されている。なお、2つのトランシーバソケットを区別する必要がないときは、総称してトランシーバソケット312ともいう。
【0049】
また、ボード310の一端部近傍には、両面にカードエッジコネクタ315が形成されている。ここでは、便宜上、トランシーバソケット312が実装されている面をA面とし、それと反対側の面をB面という。なお、図7における符号L11は105mm、符号L12は130mmである。
【0050】
また、図7には、ボード310上におけるシリアル信号線が最優先で配線されている領域がハッチングで示されている。このシリアル信号線とは、PCI Expressの伝送路であり、具体的には、カードエッジコネクタ315と変換素子317との間、変換素子317とトランシーバソケット312Aとの間、及び変換素子317とトランシーバソケット312Bとの間の配線である。なお、該配線領域に対応するB面側の領域も配線領域である。
【0051】
コネクタ316は、冷却ファンを取り付ける際に、該冷却ファンに電力を供給するためのコネクタである。なお、該電力は、カードエッジコネクタ315を介してサーバ200又はプリンタ400から供給される。
【0052】
ここでは、カードエッジコネクタ315は、8レーンに対応している。そして、各トランシーバソケットは、それぞれ4レーンに対応している。
【0053】
図8には、カードエッジコネクタ315における複数の端子が示されている。第1のレーンのシリアル信号用端子は、PET0P、PET0N、PER0P、PER0Nの4つである。PET0PとPET0Nは送信用、PER0PとPER0Nは受信用である。
【0054】
第2のレーンのシリアル信号用端子は、PET1P、PET1N、PER1P、PER1Nの4つである。PET1PとPET1Nは送信用、PER1PとPER1Nは受信用である。
【0055】
第3のレーンのシリアル信号用端子は、PET2P、PET2N、PER2P、PER2Nの4つである。PET2PとPET2Nは送信用、PER2PとPER2Nは受信用である。
【0056】
第4のレーンのシリアル信号用端子は、PET3P、PET3N、PER3P、PER3Nの4つである。PET3PとPET3Nは送信用、PER3PとPER3Nは受信用である。
【0057】
第5のレーンのシリアル信号用端子は、PET4P、PET4N、PER4P、PER4Nの4つである。PET4PとPET4Nは送信用、PER4PとPER4Nは受信用である。
【0058】
第6のレーンのシリアル信号用端子は、PET5P、PET5N、PER5P、PER5Nの4つである。PET5PとPET5Nは送信用、PER5PとPER5Nは受信用である。
【0059】
第7のレーンのシリアル信号用端子は、PET6P、PET6N、PER6P、PER6Nの4つである。PET6PとPET6Nは送信用、PER6PとPER6Nは受信用である。
【0060】
第8のレーンのシリアル信号用端子は、PET7P、PET7N、PER7P、PER7Nの4つである。PET7PとPET7Nは送信用、PER7PとPER7Nは受信用である。
【0061】
また、図9には、トランシーバソケット312における複数の端子が示されている。第1のレーンのシリアル信号用端子は、TX1p、TX1n、RX1p、RX1nの4つである。TX1pとTX1nは送信用、RX1pとRX1nは受信用である。
【0062】
第2のレーンのシリアル信号用端子は、TX2p、TX2n、RX2p、RX2nの4つである。TX2pとTX2nは送信用、RX2pとRX2nは受信用である。
【0063】
第3のレーンのシリアル信号用端子は、TX3p、TX3n、RX3p、RX3nの4つである。TX3pとTX3nは送信用、RX3pとRX3nは受信用である。
【0064】
第4のレーンのシリアル信号用端子は、TX4p、TX4n、RX4p、RX4nの4つである。TX4pとTX4nは送信用、RX4pとRX4nは受信用である。
【0065】
図10には、カードエッジコネクタ315におけるシリアル信号用端子(合計32個)と変換素子317とを電気的に接続する複数の配線パターンからなる配線群A、変換素子317とトランシーバソケット312Aにおけるシリアル信号用端子(合計16個)とを電気的に接続する複数の配線パターンからなる配線群B、変換素子317とトランシーバソケット312Bにおけるシリアル信号用端子(合計16個)とを電気的に接続する複数の配線パターンからなる配線群Cが示されている。
【0066】
ここでは、配線群A、配線群B及び配線群Cでのクロックは、いずれも5GHzである。
【0067】
また、配線群Aでは、クロックはスペクトラム拡散クロックであり、配線群B及び配線群Cでは、クロックは非スペクトラム拡散クロックである。スペクトラム拡散クロックとは、クロック信号の周波数スペクトラムのピーク値を下げて放射ノイズを軽減するためにクロック周波数がわずかに変動されているクロックである。また、非スペクトラム拡散クロックとは、クロック周波数に変動が無い固定周波数のクロックである。
【0068】
すなわち、変換素子317は、カードエッジコネクタ315と2つのトランシーバソケットとの間を電気的に接続する複数の配線パターンの途中に設けられ、該複数の配線パターンのクロックドメインを、クロックがスペクトラム拡散クロックであるクロックドメイン(第1のクロックドメイン)と、クロックが非スペクトラム拡散クロックであるクロックドメイン(第2のクロックドメイン)とに分割している。
【0069】
また、変換素子317は、スイッチ機能を有している。スイッチ機能とは、当該スイッチの有する複数のポート間におけるパケットルーティングを実行する機能である。さらに、変換素子317は、いわゆるノントランスペアレントタイプ(NTブリッジ:図3参照)のブリッジとしての機能も有している。変換素子317がノントランスペアレントタイプのブリッジとして機能すると、サーバ200側のCPU及びプリンタ400側のCPUは、お互いに邪魔されることなく、それぞれ個別に初期化などを行うことができる。また、各CPUは、別々に動作しながら、お互いのリソースにアクセスすることができる。
【0070】
配線群B及び配線群Cにおける各配線長は、クロック周波数の整数倍、クロック周波数の1/2倍、1/4倍のいずれとも異なるように設定されている。具体的には、クロック周波数が5GHzなので、各配線長は、1.5cm、3cm、6cm、及び12cmなどにならないように設定されている。なお、クロック周波数が2.5GHzの場合には、各配線長は、3cm、6cm、12cm、及び24cmなどにならないように設定する。そこで、5GHzと2.5GHzの両方に対応させる場合には、例えば、各配線長は、1cmなどが好ましい。
【0071】
カードエッジコネクタ315における第1のレーンから第4のレーンまでのシリアル信号用端子(合計16個)は、変換素子317を介して、トランシーバソケット312Aにおけるシリアル信号用端子(合計16個)と接続されている。
【0072】
具体的には、PET0PとTX1p、PET0NとTX1p、PER0PとRX1p、PER0NとRX1nが接続されている。また、PET1PとTX2p、PET1NとTX2p、PER1PとRX2p、PER1NとRX2nが接続されている。また、PET2PとTX3p、PET2NとTX3p、PER2PとRX3p、PER2NとRX3nが接続されている。また、PET3PとTX4p、PET3NとTX4p、PER3PとRX4p、PER3NとRX4nが接続されている。
【0073】
そして、カードエッジコネクタ315における第5のレーンから第8のレーンまでのシリアル信号用端子(合計16個)は、変換素子317を介して、トランシーバソケット312Bにおけるシリアル信号用端子(合計16個)と接続されている。
【0074】
具体的には、PET4PとTX1p、PET4NとTX1p、PER4PとRX1p、PER4NとRX1nが接続されている。また、PET5PとTX2p、PET5NとTX2p、PER5PとRX2p、PER5NとRX2nが接続されている。また、PET6PとTX3p、PET6NとTX3p、PER6PとRX3p、PER6NとRX3nが接続されている。また、PET7PとTX4p、PET7NとTX4p、PER7PとRX4p、PER7NとRX4nが接続されている。
【0075】
図11には、コネクタ311に関する配線パターンが示されている。このコネクタ311としては、RJ(Registered Jack)45タイプのモジュラージャックを用いることができる。
【0076】
コネクタ311は、カードエッジコネクタ315におけるサイドバンド信号用の2つの端子(WAKE_N、PERST_N)と接続されている。これにより、一例として図12に示されるように、それほど高速で送る必要がないサイドバンド信号を、シリアル信号とは別の伝送媒体(例えば、IEEE802.3の規格に準拠したケーブル)700を介して送信することができる。その結果、低コスト化を図ることができる。
【0077】
また、コネクタ311は、カードエッジコネクタ315における+3.3V用の端子と接続されている。これにより、相手側の機器にカードアダプタ300が装着されているか否かを知ることができる。
【0078】
また、コネクタ311の2つの端子は、ボード310上でループされている。これにより、自分側の機器にカードアダプタ300が装着されているか否かを知ることができる。
【0079】
図13には、2つのトランシーバソケット(312A、312B)における光トランシーバの制御信号用の端子(LPMode、IntL、ModPrsL、ModSelL、ResetL、SCL、SDA)と2つのコネクタ(313、314)とを電気的に接続する複数の配線パターンが示されている。ここでは、コネクタ313は、トランシーバソケット312Aに挿入される光トランシーバを制御する信号を外部装置(光トランシーバ制御装置)から入力するためのコネクタである(図14参照)。また、コネクタ314は、トランシーバソケット312Bに挿入される光トランシーバを制御する信号を外部装置(光トランシーバ制御装置)から入力するためのコネクタである(図14参照)。
【0080】
LPModeは、低パワーモードを設定する端子であり、IntLは、割り込みを設定する端子である。ModPrsLは、光トランシーバの存在を設定する端子であり、ModSelLは、光トランシーバの選択を設定する端子である。ResetLは、光トランシーバをリセットする端子である。SCLは、シリアル・インターフェース・クロックを設定する端子であり、SDAは、シリアル・インターフェース・データを設定する端子である。
【0081】
また、ボード310上には、コネクタ313とトランシーバソケット312Aとを電気的に接続する配線パターンと、コネクタ314とトランシーバソケット312Bとを電気的に接続する配線パターンとを電気的に連結することができるチップジャンパ(JP1〜JP5)が設けられている。これにより、コネクタ313及びコネクタ314のいずれか一方に接続された外部装置から、トランシーバソケット312A及びトランシーバソケット312Bに挿入された各光トランシーバを同時に制御することが可能となる。
【0082】
また、ボード310上には、2つのディップスイッチ(SW2、SW5)が設けられている。ディップスイッチSW2は、トランシーバソケット312Aに挿入される光トランシーバの動作条件をボード310上で設定する際に用いられる。ディップスイッチSW5は、トランシーバソケット312Bに挿入される光トランシーバの動作条件をボード310上で設定する際に用いられる。
【0083】
また、ボード310上には、図15に示されるように、カードアダプタ300を、1レーン用、4レーン用、8レーン用のいずれとするかを設定するためのスイッチ(SW8)が設けられている。
【0084】
各光トランシーバ600は、QSFP(Quad Small Form−factor Pluggable)規格に準拠した光トランシーバであり、一例として図16及び図17に示されるように、TX1n〜TX4n、TX1p〜TX4pに入力された信号(電気信号)を光信号に変換し、光ケーブル500に出力する第1の変換回路601、及び光ケーブル500から入力された信号(光信号)を電気信号に変換し、RX1n〜RX4n、RX1p〜RX4pに出力する第2の変換回路602を有している。
【0085】
これにより、サーバ側のTX1n〜TX4nから出力された各データは、プリンタ側のRX1n〜RX4nにそれぞれ伝送され、サーバ側のTX1p〜TX4pから出力された各データは、プリンタ側のRX1p〜RX4pにそれぞれ伝送される。
【0086】
同様に、プリンタ側のTX1n〜TX4nから出力された各データは、サーバ側のRX1n〜RX4nにそれぞれ伝送され、プリンタ側のTX1p〜TX4pから出力された各データは、サーバ側のRX1p〜RX4pにそれぞれ伝送される。
【0087】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るプリントシステム100では、サーバ200によって、本発明の情報システムにおける第1の情報機器が構成され、プリンタ400によって、第2の情報機器が構成され、光ケーブル500によって光伝送媒体が構成されている。また、カードアダプタ300によって、本発明のアダプタが構成されている。
【0088】
また、カードアダプタ300において、本発明の通信方法が実施されている。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係るプリントシステム100によると、サーバ200とプリンタ400が光ケーブル500によって接続されている。
【0090】
サーバ200及びプリンタ400は、いずれもPCI Expressの規格に準拠したPCI Expressソケットを備えており、該PCI Expressソケットには、それぞれカードアダプタ300が挿入されている。
【0091】
カードアダプタ300は、ボード310、該ボード310の一端近傍に設けられたカードエッジコネクタ315、該ボード310上に実装された2つのトランシーバソケット(312A、312B)、変換素子317、及び4つのコネクタ(311、313、314、316)などを有している。
【0092】
そして、変換素子317は、カードエッジコネクタ315と2つのトランシーバソケットとの間を電気的に接続する複数の配線パターンの途中に設けられ、該複数の配線パターンのクロックドメインを、クロックがスペクトラム拡散クロックであるクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックであるクロックドメインとに分割している。
【0093】
この場合は、マザーボードと変換素子317との間のクロックをスペクトラム拡散クロックとすることができ、クロックが非スペクトラム拡散クロックであるドメインを短くすることができる。さらに、変換素子317と光トランシーバソケットとの間のクロックを非スペクトラム拡散クロックとすることで、通信相手と同期をとることが可能となるとともに、さらに、光トランシーバソケットに光ケーブルを挿入して通信相手と接続するので、通信相手との通信に非スペクトラム拡散クロックを用いているものの不要輻射(EMI)を低減することが可能となる。
【0094】
ところで、マザーボードにPCI Expressスイッチが搭載されている場合に、変換素子317を有していないカードアダプタを装着すると、一例として図18に示されるように、PCI Expressスイッチとカードアダプタのソケットとの間は、クロックが非スペクトラム拡散クロックであるドメインとなる。
【0095】
一方、本実施形態に係るカードアダプタ300を装着すると、一例として図19に示されるように、マザーボードと変換素子317との間は、クロックがスペクトラム拡散クロックであるドメインとすることができる。
【0096】
従って、情報通信において不要輻射(EMI)を低減することができる。
【0097】
また、カードアダプタ300は、送信情報及び受信情報を高速で変換するためのチップが不要であり、低コスト化を図ることができる。また、PCI Expressの規格に準拠した送受信が可能なため、PCI Expressの実効転送速度を維持した送受信が可能である。
【0098】
すなわち、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、PCI Expressの規格に準拠したインターフェースを有する機器間の情報通信を行うことができる。
【0099】
なお、上記実施形態におけるコネクタ等の実装位置は一例であり、これに限定されるものではない。
【0100】
また、例えば、サーバ200から出力されるシリアルデータのクロックが2.5GHzであり、該シリアルデータを5GHzのクロックでプリンタ400に転送する場合には、前記変換素子317に代えて、一例として図20及び図21に示されるように、クロック周波数を変更する機能、及びブリッジ機能が付加された変換素子317’を用いれば良い。この場合は、トランシーバソケットは1つで良い。
【0101】
また、上記実施形態では、各光トランシーバがQSFP規格に準拠した光トランシーバである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各光トランシーバが、SFP(Small Form−factor Pluggable)規格、SFP+規格、QSFP+規格、及びXFP(10Gigabit Small Form−factor Pluggable)規格のいずれかに対応していても良い。
【0102】
また、上記実施形態では、カードエッジコネクタ315が、8レーンに対応している場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0103】
また、上記実施形態におけるクロック周波数は一例であり、これに限定されるものではない。
【0104】
また、上記実施形態では、PCI Expressの規格に準拠した情報通信を行う場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本発明のアダプタによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、機器間の情報通信において不要輻射(EMI)を低減するのに適している。また、本発明の情報機器によれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うのに適している。また、本発明の情報システムによれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うのに適している。また、本発明の通信方法によれば、高価格化及び実効転送速度の低下を招くことなく、不要輻射(EMI)を低減した情報通信を行うのに適している。
【符号の説明】
【0106】
100…プリントシステム(情報システム)、200…サーバ(第1の情報機器)、300…カードアダプタ(アダプタ)、310…ボード、311…コネクタ(ケーブルソケット)、312A…トランシーバソケット(ソケット)、312B…トランシーバソケット(ソケット)、313…コネクタ(入力端子)、314…コネクタ(入力端子)、315…カードエッジコネクタ、316…コネクタ(電源用端子)、317…変換素子(素子)、317’…変換素子(素子)、400…プリンタ(第2の情報機器)、500…光ケーブル(光伝送媒体)、600…光トランシーバ、800…端末、900…ネットワーク。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2008−65818号公報
【特許文献2】特開2009−94778号公報
【非特許文献】
【0108】
【非特許文献1】「PCI Express External Cabling 1.0 Specification」、PCI−SIG、2007年1月26日、インターネット〈URL:http://www.pcisig.com/specifications/pciexpress/pcie_cabling1.0/〉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器間の情報通信を光伝送媒体を介して行う際に、前記光伝送媒体と機器との間に設けられるアダプタであって、
前記光伝送媒体と接続される光トランシーバが挿入される少なくとも1つのソケットと;
前記少なくとも1つのソケットが実装され、機器に接続されるコネクタを有し、該コネクタと前記少なくとも1つのソケットとを電気的に接続する配線パターンが設けられているボードと;
前記配線パターンの途中に設けられ、前記配線パターンのクロックドメインを、クロックがスペクトラム拡散クロックである第1のクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックである第2のクロックドメインとに分割する素子と;を備えるアダプタ。
【請求項2】
前記第1のクロックドメインは、前記素子と前記コネクタとの間に位置する配線パターンのクロックドメインであり、前記第2のクロックドメインは、前記素子と前記少なくとも1つのソケットとの間に位置する配線パターンのクロックドメインであることを特徴とする請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記第1のクロックドメインのクロック周波数と、前記第2のクロックドメインのクロック周波数とは互いに異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記情報通信は、PCI Expressの規格に準拠した情報通信であり、
前記素子は、ノントランスペアレントタイプのブリッジ機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記情報通信は、PCI Expressの規格に準拠した情報通信であり、
前記ボードに実装され、サイドバンド信号を出力する端子を有するケーブルソケットを更に備え、
前記複数の配線パターンは、前記コネクタにおけるサイドバンド信号用の端子と前記ケーブルソケットにおけるサイドバンド信号を出力する端子とを電気的に接続する配線パターンを更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項6】
前記ケーブルソケットは、ハイレベル信号用の端子を更に有することを特徴とする請求項5に記載のアダプタ。
【請求項7】
前記ケーブルソケットは、前記ボード上で互いに電気的に接続されている2つの端子を更に有することを特徴とする請求項5又は6に記載のアダプタ。
【請求項8】
前記ボードは、外形が矩形状の板状部材であり、
前記コネクタ及び前記少なくとも1つのソケットは、互いに隣接する辺近傍にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項9】
前記コネクタは、カードエッジコネクタであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのソケットは、SFP規格、SFP+規格、QSFP規格、QSFP+規格、及びXFP規格のいずれかに対応していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項11】
前記ボードは、冷却用ファンを取付可能な電源用端子を更に有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のアダプタ。
【請求項12】
外部機器に対する情報の送信及び受信の少なくとも一方を行うことができる情報機器であって、
少なくとも1つのソケットが搭載されている基板と;
前記少なくとも1つのソケットに挿入された少なくとも1つの請求項1〜11のいずれか一項に記載のアダプタと;を備える情報機器。
【請求項13】
第1の情報機器と第2の情報機器が光伝送媒体を介して接続されている情報システムであって、
前記第1の情報機器として、外部機器に対する情報の送信及び受信のうち少なくとも送信を行うことができる請求項12に記載の情報機器と;
前記第2の情報機器として、外部機器に対する情報の送信及び受信のうち少なくとも受信を行うことができる請求項12に記載の情報機器と;
前記第1の情報機器の少なくとも1つのアダプタに挿入された少なくとも1つの光トランシーバと;
前記第2の情報機器の少なくとも1つのアダプタに挿入された少なくとも1つの光トランシーバと;
前記第1の情報機器の少なくとも1つの光トランシーバに一端が接続され、前記第2の情報機器の少なくとも1つの光トランシーバに他端が接続されている光伝送媒体と;を備える情報システム。
【請求項14】
機器間の情報通信を光伝送媒体を介して行う通信方法であって、
前記光伝送媒体と機器との間に、クロックがスペクトラム拡散クロックである第1のクロックドメインと、クロックが非スペクトラム拡散クロックである第2のクロックドメインとを有するアダプタを設けることを特徴とする通信方法。
【請求項15】
前記情報通信は、PCI Expressの規格に準拠した情報通信であることを特徴とする請求項14に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−186968(P2011−186968A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53945(P2010−53945)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】