説明

アッセイツールおよびその使用方法

本発明は、試料中の生物学的または化学的な活性の検出のためのアッセイツールを提供する。本発明のアッセイツールは、アッセイツールの面上で発生した正のシグナルを使用した直接検出を提供する。これらのアッセイツールは、試料中の複数の作用剤(例えば酵素)を検出および/または同定するための、このような作用剤の基質特異性を分析するための、ならびにこのような作用剤の結合親和性および特異性を分析するための改善した方法を提供する。活性に際して、第1の固定された構築物から構成要素が遊離し、これが捕獲面により捕獲される。少なくとも2つの異なる固定された構築物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の生物学的および/または化学的な活性の検出のためのアッセイツールに関する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論において、ある物品および方法を、背景および導入目的のために記述する。本明細書に記載のいずれもが、先行技術の「容認」として解釈されるべきではない。本明細書で参照される物品および方法が、適用可能な法律の条項の下で先行技術を構成しないことを、出願人は、必要に応じて実証する権利を明確に保有する。
【0003】
ゲノムおよびトランスクリプトームを解析する堅牢な方法が開発されており、これらの方法は、遺伝学および遺伝子発現の無数の用途を利用する新たな未開発領域、例えば診断、予後、および進化傾向の研究領域を開いた。これらのツールはかなり強力なものであるが、このツールが提供する情報は完全ではない。というのも多くのタンパク質は、タンパク質生合成経路において後に、例えば翻訳後修飾により調節されるからである。このような翻訳後修飾には、酢酸塩、リン酸塩、種々の脂質および炭水化物等の他の生化学的官能基との、アミノ酸(例えば、シトルリン化)の化学的性質の変化による、またはジスルフィド結合の形成のような構造的変化を起こすことによる、結合が含まれる。また、酵素はタンパク質のアミノ末端からアミノ酸を除去するか、またはペプチド鎖を切断し翻訳された元のタンパク質の活性フラグメントを作成し得る。したがって、特定の遺伝子または転写物の存在またはレベルを測定する典型的な遺伝子発現解析は、タンパク質の細胞活動のレベルを示す十分な情報ではない場合が多い。したがって、プロテオームの機能解析は大変重要な未開発領域である。
【0004】
酵素は翻訳後修飾によって一般的に活性化されるタンパク質のクラスである。例えば、プロテアーゼは、翻訳後修飾によって調節されるものがほとんどである(非特許文献1)。大多数のプロテアーゼはチモーゲンとして合成され、特定の細胞内コンパートメントで、または刺激作用によってのみ活性化される。さらに、多くのプロテアーゼにはその有害な能力を弱毒化する内因性の阻害剤がある(非特許文献2)。プロテアーゼ活性のモニタリングは疾病の診断および予後において使用できるため(非特許文献3)、プロテアーゼの役割を完全に、例えば正常な状態、および疾病状態で理解するためにプロテアーゼ活性の直接的なアッセイが必要である。
【0005】
様々な酵素活性のアッセイは開発されているが、その多くには制限があり、複雑な生物学的混合物のハイスループットスクリーニングには適さないのが一般的である。例えば、個々のプロテアーゼのためのアッセイはよく確立されており、単一のプロテアーゼ活性アッセイ用の市販のキットが多数あり、これには化合物のライブラリスクリーニング用に設計され、プロテアーゼの薬剤候補の同定につながるものもある。単一のプロテアーゼアッセイは比較的直截なアッセイであるが、高価であり、試料1ユニット当たりの提供できる情報量が制限される。
【0006】
プロテアーゼ活性の多重の検出のためのアッセイは特許文献1等で提供されているが、多段階のプロセスおよびステップ間での試薬の移行が必要となる。
したがってアッセイ手順のコスト、ならびにステップ内、およびステップ間で誤差を生じるリスクの両方が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,229,769号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Turk,Nat Rev Drug Discov. 2006 Sep;5(9):785−99
【非特許文献2】Overall CM and Blobel CP,Nat Rev MoI Cell Biol.2007 Mar;8(3):245−57.Epub 2007 Feb 14
【非特許文献3】Hang HCおよびPloegh H、Chem Biol.2004 Oct;11(10):1328−30;Lopez−Otin CおよびOverall CM、Nat Rev MoI Cell Biol.2002 Jul;3(7):509−19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生体試料中の酵素活性の同定に使用できる、対費用効果の高い、高感度な多重アッセイが求められている。本発明はこの要求に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この「概要」は、数々のコンセプトを、以下の「詳細な説明」でさらに詳述される単純化した形態で紹介するために提供される。この「概要」は、特許請求される主題の重要なまたは基本的な特徴を同定することを意図しない。また特許請求される主題の範囲の限定も意図しない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性および利点は、添付された図面で説明され、添付された特許請求の範囲で限定された態様を含む以下の「詳細な説明」から明らかとなるであろう。
【0011】
本発明は、化学的または生物学的な切断現象および/または分子の競合的結合を検出するためのツールおよび方法を提供する。本発明のツールは、アッセイツールの面上で発生した正のシグナルを使用して、切断および/または競合的結合現象を検出できる。ある一般的な態様において、これらのツールは、試料中の複数の異なる切断剤(例えば化学物質、制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼ)の検出および/または同定のための改善された方法を提供する。別の一般的な態様において、活性切断剤を1つまたは数種、および複数の基質を使用した基質の選択性および/または適合性の同定にツールを使用できる。さらに別の一般的な態様において、競合結合アッセイのためのツールを使用して、特定の結合領域に対して望ましい親和性を有する結合成分を同定できる。
【0012】
一態様において、本発明は、試料中の生物学的または化学的な活性を検出するためのアッセイツールを提供し、ツールには、遊離可能な構成要素を含む少なくとも2つの異なる固定された構築物の1セット、および置換現象の際遊離可能な構成要素が結合する捕獲面を含む。所与の置換現象に際して、遊離可能な構成要素が固定された構築物から遊離し、捕獲面と相互作用して検出可能なシグナルを捕獲面に発生させることを可能にする。検出可能なシグナルは、例えば遊離可能な構成要素の一部である蛍光性成分の励起によって直接発生させることができ、または、例えば捕獲面上の遊離可能な構成要素に検出可能なマーカーが結合することによって間接的に発生させることができる。
【0013】
特定の態様において、捕獲面は、遊離可能な構成要素を選択的に結合するための1つまたは複数の捕獲剤を含む。この態様において、遊離可能な構成要素は、捕獲面上の捕獲剤に選択的に結合する親和性領域を含むことが好ましい。他の特定の態様において、置換現象は酵素的な切断現象である。
【0014】
別の態様において、本発明は、試料中の生物学的または化学的な活性を検出するためのアッセイツールを提供し、ツールは切断剤の基質領域、親和性領域、検出可能なマーカー、および捕獲面を有する少なくとも2つの異なる固定された構築物の1セットを有する。構築物の誘導切断が起こると、構築物の親和性領域および検出可能なマーカーが構築物から遊離し、遊離した親和性領域および検出可能なマーカーが捕獲面上に結合することにより、捕獲面上で正のシグナルの発生が可能となる。
【0015】
態様のいくつかにおいて、セットの固定された構築物は、同一の切断剤に対する基質領域を含む。他の態様において、セットの固定された構築物は、異なる切断剤に対する基質領域を含む。さらに他の態様において、セットの2つ以上の固定された構築物は異なる検出可能なマーカーを含む。さらに他の態様において、セットの2つ以上の構築物の検出可能なマーカーは、実質的に同一である。
【0016】
ある態様において、本発明で使用される捕獲面は1つまたは複数の捕獲剤を含む。好ましい態様において、捕獲剤は、固定された構築物の遊離可能な構成要素上の親和性領域に選択的に結合する。特定の態様において、セットの捕獲剤は実質的に同一であり、構築物は実質的に同一の親和性領域を含み得る。他の態様において、捕獲面は、異なる親和性領域を検出する2つ以上の異なる捕獲剤を含む。
【0017】
特定の態様において、本発明は、試料中の切断剤活性を検出するためのツールを提供し、このツールには、切断剤の基質領域、親和性領域および検出可能なマーカーを有する少なくとも2つの異なる固定された構築物の1セット、および捕獲剤の1セットを含み、遊離した検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルが発生する。構築物の誘導切断が起こると、構築物から親和性領域と検出可能なマーカーが遊離し、対応する捕獲剤に結合する。このツールは、同一の切断剤の基質領域または異なる切断剤に対する基質を有する構築物を有することができる。
【0018】
他の特定の態様において、本発明は、試料中の切断剤活性を検出するためのツールを提供し、このツールは、1)切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物の1セット、および2)基質の切断、および遊離した検出可能なマーカーの結合に起因して検出可能な正のシグナルを発生する固定された捕獲剤のセットを有する面を含む。遊離した親和性領域および検出可能なマーカーは、面上の対応する捕獲剤に選択的に結合し、捕獲剤のこの部位で正のシグナルを生成する。
【0019】
さらに他の態様において、本発明は、試料中の切断剤活性を検出するためのツールを提供し、ツールは1)第1面に固定された、切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む2つ以上の構築物の1セット、および2)第2面に固定された捕獲剤のセットを含む。構築物の誘導切断が起こると、親和性領域と検出可能なマーカーが構築物から遊離し、対応する捕獲剤に選択的に結合する。第1面と第2面は近接しているため、親和性領域および検出可能なマーカーが第2面上の特定の捕獲剤へ結合した結果発生する正のシグナルの検出が可能である。さらに他の態様において、本発明は、試料中の切断剤活性を検出するためのツールを提供し、ツールは2つ以上の固定された構築物の1セットを有する面を含み、この構築物は、1)検出可能な複合マーカーの第1の構成要素に関連した親和性領域、2)検出可能な複合マーカーの第2の構成要素に関連した捕獲剤、および、3)親和性領域と捕獲剤の間にある、切断剤によって切断されるための基質を含む。基質が切断されると親和性領域が遊離する。遊離した親和性領域は、基質切断に続いて捕獲剤に結合して、検出可能な複合マーカーの第1と第2の構成要素の相互作用の結果、正のシグナルを発生する。
【0020】
特定の態様において、本発明は、試料(例えば生体試料)中の酵素活性の検出のためのツールおよび方法を提供する。本発明のツールにより、アッセイツールの面上で発生した正のシグナルを使用した検出が可能となる。これらのツールは、試料中の複数の酵素(例えば制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼ)の検出および/または同定のための、または、酵素を1つまたは数種、および複数の基質を使用して、酵素の選択性および/または基質適合性の同定のための改善された方法を提供する。ある態様において、基質構築物はプロテアーゼ切断部位を有する。他の態様において、基質構築物は核酸切断部位を有する。
【0021】
特定の態様において、本発明は、試料中の酵素活性を検出するためのツールを提供し、このツールは、酵素基質領域、親和性領域および検出可能なマーカーを有する少なくとも2つの異なる固定された構築物の1セット、および遊離した検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生する捕獲剤の1セットが含まれる。構築物の酵素誘導切断が起こると、親和性領域と検出可能なマーカーが面から遊離し、対応する捕獲剤に選択的に結合する。このツールは、同一の酵素基質領域または異なる酵素に対する基質を有する構築物を有してもよい。ある態様において、基質構築物にはプロテアーゼ切断部位がある。他の態様において、基質構築物には核酸切断部位がある。
【0022】
別の態様において、本発明は、試料中の酵素活性を検出するためのツールを提供し、ツールは、1)酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物の1セット、および2)検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生する、同一面に固定された捕獲剤の1セットを有する面を含む。構築物の酵素誘導切断が起こると、親和性領域と検出可能なマーカーが面から遊離し、同一面上にある対応する捕獲剤に選択的に結合する。特定の態様において、捕獲剤は核酸を含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に相補的な核酸に関連している。別の特定の態様において、捕獲剤はペプチドを含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に特異的に結合するペプチドに関連している。構築物のセットを対応する検出可能な成分に近接させることにより、検出可能なマーカーの特定の捕獲剤への結合を検出できる。
【0023】
さらに他の態様において、本発明は、試料中の2つ以上の酵素の活性を検出するためのアッセイツールを提供し、ツールは酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを有する、第1面に固定された2つ以上の固定された構築物の1セット、および検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生する、第2面に固定された捕獲剤の1セットを含む。第1面と第2面をツール内で近接して設置するため、検出可能なマーカーが第2面上の特定の捕獲剤へ結合できる。特定の態様において、捕獲剤は核酸を含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に相補的な核酸に関連している。別の特定の態様において、捕獲剤はペプチドを含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に特異的に結合するペプチドに関連している。構築物のセットを対応する検出可能な成分に近接させることにより、特定の捕獲剤に対する検出可能なマーカーの結合を検出できる。
【0024】
ある態様において、本発明は、一連の分子の競合的結合を検出するためのアッセイツールを提供し、このツールは、親和性領域、親和性領域に結合した作用剤を含む2つ以上の固定された構築物の1セットを有する面、および構築物の近接にある固定された捕獲剤の1セットを含み、競合的結合および結合した作用剤の親和性領域からの遊離により、検出可能な正のシグナルを発生する。態様のいくつかにおいて、結合した作用剤を検出可能なマーカーで直接標識する。他の態様において、結合した作用剤は、構築物からの置換および捕獲剤への結合後に検出される。
【0025】
別の特定の態様において、本発明は、試料中の分子の競合的結合を検出するためのアッセイツールを提供し、このツールは、1)親和性領域および、親和性領域に結合する検出
可能なマーカーを含む作用剤を含む、第1面に固定された2つ以上の構築物の1セット、および2)第2面に固定された捕獲剤のセットを含む。第1面と第2面は近接しているため、競合的結合および作用剤の親和性領域からの遊離により生成した正のシグナルを検出でき、競合的結合および結合した作用剤の親和性領域からの遊離の結果、検出可能な正のシグナルが発生する。態様のいくつかにおいて、検出可能なマーカーで結合した作用剤を直接標識する。他の態様において、結合剤は、構築物からの置換および捕獲剤への結合後に検出される。
【0026】
ある態様において、競合的結合は、目的の分子が結合する部位と実質的に同一の結合部位に対してより高度な親和性を有する分子により作用剤が置換されることを指し、つまり、親和性領域の実質的に同一の部位で結合した作用剤が新しい作用剤へ置き換えられることを指す。別の態様において、競合的結合はアロステリックな結合、すなわち構築物の立体構造変化によって作用剤の遊離が引き起こされる、親和性領域の第二の位置または構築物の別の部分での結合を指す。
【0027】
1つの態様において、本発明は酵素活性の調節物質を検出するための方法を提供し、この方法は切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、第1面に固定された、2つ以上の構築物の1セット、および第2面に固定された捕獲剤の1セットを含むアッセイツールを提供することを含む。第1面を酵素および酵素の調節物質または、推定調節物質に暴露させる。酵素活性の調節は、第2面上の正のシグナルの存在、または非存在により検出できる。好ましい態様では、方法は調節物質の存在下、酵素により作成された正のシグナルを、調節物質の非存在下で、または調節物質が異なる濃度で存在する状態で、同一の切断剤基質上で酵素により作成された正のシグナルと比較することをさらに含み、調節物質の存在下または非存在下、もしくは調節物質が異なる濃度で存在する状態で発生したシグナルの比較により活性を決定する。
【0028】
また別の特定の態様において、本発明は、酵素活性の阻害剤を検出するためのアッセイツールを提供し、このツールは、酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを有する、第1面に固定された、2つ以上の固定化した構築物の1セット、および第2面に固定された、検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生させる固定された捕獲剤の1セットを含む。アッセイは、1つまたは複数の固定された構築物にある遊離可能な構築物の置換現象を引き起こし得る1セットの酵素を利用して実行する。酵素の阻害剤または推定阻害剤の存在下および/または非存在下で固定された構築物に酵素を導入して、あるアッセイ条件下で異なる酵素が抑制される度合いを同定できる。創薬での利用が考えられ、一度に1つのプロテアーゼに対してスクリーニングする代わりに、多数の標的候補に対して、例えば非特異的な影響があるかスクリーニングできる。
【0029】
切断および/または競合的結合活性の同定に使用する捕獲剤は、本発明のアッセイツール中の反応対の任意のメンバーであり得、反応対の他方のメンバーと相互作用する。特定の態様において、捕獲剤は核酸を含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に相補的な、標識された核酸に関連している。別の態様において、捕獲剤はペプチドを含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に特異的に結合するペプチドに関連している。
【0030】
特定の態様において、捕獲剤は核酸を含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に相補的な核酸に関連している。別の特定の態様において、捕獲剤はペプチドを含み、検出可能なマーカーは捕獲剤に特異的に結合するペプチドに関連している。構築物のセットを対応する検出可能な成分へ近接させることで、特定の捕獲剤への検出可能なマーカーの結合を検出できる。
【0031】
本発明のツールにおいて、アッセイは2つ以上の実質的に同一の構築物の定義された領
域を含む。特定の例において、面は、物理的および/または化学的な障壁により隔てられる2つ以上の同一の構築物を含む。特定の一実施形態では、同一の構築物が、面上のイオンチャネルに分けられる。
【0032】
記載されたツールに加えて、本発明は、さらに試料中の切断剤の活性を検出する方法を提供する。このような方法を、複合試料中の異なる切断剤の存在、1つまたは数種のこのような切断剤の基質特異性、基質の切断に対する異なるアッセイ条件の影響などを判定するために使用できる。
【0033】
一態様において、本発明は、試料中の切断剤の活性を検出するための方法を提供し、この方法は、1)i)切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、2つ以上の固定された構築物の1セット、およびii)検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生する固定された捕獲剤の1セットを有する面を提供すること、2)試料中の切断剤が構築物上で作用できる条件下で面を試料に暴露させること、および3)試料中の構築物上での切断剤の活性により発生した面上の1つまたは複数の正のシグナルを検出することを含む。検出された正のシグナルは、試料中の切断剤の活性を示す。
【0034】
別の態様において、本発明は、試料中の切断剤の活性を検出するための方法を提供し、この方法は、1)i)切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、第1面に固定された、2つ以上の構築物の1セット、およびii)第2面に固定された捕獲剤の1セットを含むアッセイツールを提供し、ここで第1面と第2面は、近接しているため、検出可能なマーカーが第2面上の特定の捕獲剤へ結合した結果発生する正のシグナルの検出が可能であり、2)試料中の切断剤が構築物上で作用できる条件下で面を試料に暴露させること、および3)固定された構築物上での試料中にある切断剤の活性の結果発生する面上の1つまたは複数の正のシグナルを直接検出することを含む。検出された正のシグナルは、試料中の切断剤の活性を示す。
【0035】
さらに別の態様において、本発明は、試料中の作用剤の競合的結合を検出するための方法を提供する。競合的結合により、実質的に同一の結合部位でのより高度な親和性の相互作用、結合された作用剤の遊離をもたらす構築物とのアロステリックな相互作用等を示し得る。
【0036】
一態様において、本発明は、試料中の競合的結合を検出するための方法を提供し、この方法は、1)i)親和性領域、および親和性領域に関連する検出可能なマーカーを含む作用剤を含む2つ以上の固定された構築物の1セット、およびii)構築物の近接にある固定された捕獲剤の1セットを有する面を提供することであって、ここで競合的結合および作用剤の親和性領域からの遊離の際に発生する検出可能な正のシグナルが発生し、2)試料中の作用剤が構築物に結合できる条件下で面を試料に暴露させること、および3)試料中の作用剤の競合的結合の結果発生する、面上の1つまたは複数の正のシグナルを検出することを含む。検出された正のシグナルは、試料中の作用剤の競合的結合活性を示す。
【0037】
別の態様において、本発明は、試料中の競合的結合を検出するための方法を提供し、この方法は1)親和性領域および、親和性領域に関連する検出可能なマーカーを含む作用剤を含む、第1面に固定された2つ以上の構築物の1セット、および第2面に固定された捕獲剤の1セットを含むアッセイツールを提供することであって、ここで、第1面と第2面が近接しているため、競合的結合および作用剤の親和性領域からの遊離の結果発生する正のシグナルの検出が可能であり、2)試料中の作用剤が構築物に結合できる条件下で面を試料に暴露させること、および試料中の作用剤の競合的結合の結果発生する面上の1つまたは複数の正のシグナルを検出することを含む。検出された正のシグナルは、試料中の作用剤の競合的結合活性を示す。
【0038】
本発明は、さらに試料中の酵素活性を検出するための方法を提供し、この方法は、1)酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物の1セット、および2)検出可能なマーカーの結合の結果、検出可能な正のシグナルを発生させる固定された捕獲剤の1セットを有する面を提供すること、試料中の酵素が構築物上で作用できる条件下で面を試料に暴露させること、および試料中の構築物上での酵素の活性により生成される面上の1つまたは複数の正のシグナルを検出することを含み、検出された正のシグナルは、試料中の酵素の活性を示す。
【0039】
本発明はさらに試料中の酵素活性を検出する方法を提供し、この方法は、酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物の1セットを有する第1面を提供すること、第2面を第1面へ近接させることであって、ここで第2面は、第1面から遊離した検出可能なマーカーの結合の際に検出可能な正のシグナルを生成する固定された捕獲剤の1セットを含み、試料中の酵素が構築物上で作用できる条件下で少なくとも第1面を試料に暴露させること、および試料中の構築物での酵素の活性により生成される第2面上の1つまたは複数の正のシグナルを直接検出することを含む。
【0040】
本発明の特定の態様において、本発明の構築物は単一のプロテアーゼにより切断可能である。別の態様において、本発明の構築物はプロテアーゼの選択されたサブセット、例えばプロテアーゼクラスの2つ以上のメンバーまたは定義した活性を有する2つ以上のプロテアーゼにより切断可能である。さらに他の態様において、構築物は、プロテアーゼの新規の活性、または存在することが知られていないプロテアーゼにより切断可能である。
【0041】
アッセイツールの面上で検出される正のシグナルは、単一の検出可能なマーカーを使用して発生させることが好ましい。しかしながら、ある態様においては、切断された基質の捕獲剤への結合の際に生成される検出可能な複合マーカーを使用して、正のシグナルを生成できる。さらに別の態様において、高次(2°、3°など)の標識スキーム(例えば二次抗体ラベリング)によって正のシグナルを発生させることができる。
【0042】
特定の態様において、構築物のサブセットを面上で、例えば物理的および/または化学的な障壁により物理的に分ける。これにより、異なるサブセット領域を個別に処理でき、または異なる試験試料を面上の異なる部分に導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の2面ツールの第1の一般的な模式図。
【図2】図1のツールの特定の態様を示す図。一般的な検出面、単一の検出可能なマーカー、および異なる切断剤基質を含む構築物がある。
【図3】図1のツールの特定の態様を示す図。一般的な検出面、異なる検出可能なマーカー、および異なる切断剤基質を含む構築物がある。
【図4】図1のツールの特定の態様を示す図。2つ以上の捕獲剤および親和性領域、単一の検出可能なマーカー、および異なる切断剤基質を含む構築物がある。
【図5】図1のツールの特定の態様を示す図。2つ以上の捕獲剤および親和性領域、異なる検出可能なマーカー、および異なる切断剤基質を含む構築物がある。
【図6】図1のツールの特定の態様を示す図。物理的な障壁、例えばスペーサーユニットにより構築物と捕獲剤が分けられている。
【図7】同一の面に固定化した構築物および捕獲剤を含む本発明の1面ツールの一般的な模式図。
【図8】検出可能な複合マーカーを使用した、検出可能な成分の検出を含む図7の1面ツールの1つの一般的な模式図。
【図9】複合検出剤を使用した、検出可能な成分の検出を含む図7の1面ツールの別の一般的な模式図。構築物が親和性領域および捕獲剤の両方の機能を果たす。
【図10】ペプチド切断部位、オリゴヌクレオチド捕獲剤および単一の検出可能なマーカーを有する構築物を含む図7の1面ツールの特定の態様を示す図。
【図11】核酸切断部位、オリゴヌクレオチド捕獲剤および単一の検出可能なマーカーを有する構築物を含む図7の1面ツールの特定の態様を示す図。
【図12】ペプチド切断部位、捕獲剤および単一の検出剤を有する構築物を含む図7の1面ツールの特定の態様を示す図。
【図13】構築物に対する結合親和性に基づいて2つ以上の分子の競合的結合を測定する2面ツールの第1の態様を示す図。
【図14】構築物に対する結合親和性に基づいて2つ以上の分子の競合的結合を測定する2面ツールの第2の態様を説明する図。
【図15】構築物に対する結合親和性に基づいて2つ以上の分子の競合的結合を測定する2面ツールの第3の態様を示す図。
【図16】平坦な面上にくぼんだ領域を作るために面にパターンを形成する1面ツールの特定の態様を示す図。
【図17】平坦な面上にくぼんだ領域を作るために面にパターンを形成し、構築物がくぼんだ領域にある1面ツールの第2の特定の態様を示す図。
【図18】平坦な面上にくぼんだ領域を作るために面にパターンを形成し、構築物と捕獲剤がくぼんだ領域にある1面ツールの第2の特定の態様を示す図。
【図19】固定された構築物を有するビーズを面上に含む1面ツールの特定の態様を示す図。
【図20】複数の構築物の特徴および/または複数のリポーター領域を本発明の面上に含む本発明の1面アッセイの代表的な模式図。
【図21】本発明のアッセイツールの組み立てに使用されるカートリッジの模式図。
【図22】トロンビンプロテアーゼまたはTEVプロテアーゼの一方を使用した、トロンビンプロテアーゼ基質およびTEV基質の両方を含む面上の蛍光検出を説明する写真。
【図23】2つのプロテアーゼおよび2つの基質を使用したプロテアーゼアッセイについて、達成されたシグナル対バックグラウンドを説明する棒グラフ。
【図24】バックグラウンドと比較した、面上の切断の蛍光検出レベルを説明する棒グラフ。
【図25】トロンビンプロテアーゼだけを使用した、2つの基質を含む面上の蛍光検出を説明する写真。
【発明を実施するための形態】
【0044】
定義
本明細書に使用される用語は、当業者が理解するような明白な一般的な意味を有することを目的とする。以下の定義は、読者が本発明を理解するのを助けることを目的とするが、そのような用語の意味を変えることも、限定することも意図しない。
【0045】
用語「結合対」は、互いに選択的に結合することが知られているあらゆる2つの分子を意味する。2つのタンパク質の場合には、本明細書でより詳細に記述するように、分子が選択的に高親和性で互いに結合する。例えば、ビオチンとアビジン;ビオチンとストレプトアビジン;抗体およびその特定の抗原決定基;等の特異的な相互作用があるが、これらに限定されない。他の例には、非特異性の相互作用も含まれ、例えば、疎水性相互作用、静電気、分子(ファンデルワールス)等もあるがこれらに限定されない。この用語には、望ましい融解温度で、またはその融解温度以上で選択的にハイブリダイズする相補的な核酸分子も含まれる。
【0046】
用語「相補的な」は、核酸結合対の相互作用面の形態上の互換性または双方向性の構造
を指す。好ましい相補的構造は、互いに結合親和性を有し、核酸が互いに有する相補性の程度が高くなるほど、構造間のハイブリダイゼーションがより強くなる。
【0047】
用語「診断ツール」は、本明細書で使用される場合、患者の試料の診断テストまたはアッセイを実行するために使用される本発明のあらゆる構成物またはアッセイを指す。診断ツールとして、本発明の構成物を分析物に特異的な試薬の集合と考えてもよく、これを用いて、米国連邦または州関係機関によって規制される診断テストの一部を形成してもよい。本発明の組成物を診断ツールとして使用することは、治療薬の開発においてこの組成物を使用することとの関連を意図しない。
【0048】
用語「置換現象」は、固定された構築物から遊離可能な構成要素を遊離させる任意の現象を指し、例えばプロテアーゼが引き起こす切断現象等の酵素的現象、遊離可能な構成要素を遊離させる結果となる分子の競合的結合等を指す。例えば、分解(例えば熱的および化学的(すなわちpH))、分離(例えば静電気誘導および二本鎖核酸の融解)、断片化(例えば質量分析法等の高エネルギー)および消化(例えば複数の酵素)があるがこれらに限定しない。
【0049】
用語「酵素誘導切断」は、直接的または間接的に基質の切断を導くあらゆる酵素活性を含む。この用語が本明細書で使用される場合、酵素による基質の直接的な切断を含み、これには例えば、プロテアーゼによるペプチド基質の切断、または制限エンドヌクレアーゼによる核酸基質の切断がある。同様に、酵素による間接的な切断も含み、これには例えば、酵素の基質への結合により、切断を誘導する補因子が結合できるようになること、または酵素が切断を誘導する別の補因子に結合することも含む。酵素誘導切断には、さらに基質の酵素的な修飾も含み、例えば、基質を別の酵素により切断され易くするホスファターゼによる脱リン酸化がある。
【0050】
用語「誘導切断」は、直接的または間接的に基質の切断を導く切断剤のあらゆる活性を含む。この用語が本明細書で使用される場合、化学的な成分、タンパク質、リボザイム、または他の類似の天然の、合成のもしくは組換分子による基質の直接的な切断が含まれる。誘導切断にはさらに物理的相互作用、例えば光誘導切断が含まれるが、これらに限定しない。
【0051】
「核酸」および「オリゴヌクレオチド」を、ヌクレオチドモノマーの重合体を意味するために本明細書で使用する。この用語が本明細書で使用される場合、一本鎖または二本鎖の形態を指す場合がある。核酸とオリゴヌクレオチドを形成するモノマーは、天然のポリヌクレオチドに特異的に結合できるが、これはワトソンクリック型の塩基対形成、塩基スタッキング、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型の塩基対形成等の、モノマー同士の規則的な型の相互作用による結合であり、この結合によって二本鎖または三重鎖の形態を作り上げる。このようなモノマーおよびこのヌクレオシド間結合は天然でもよく、またはその類似体、例えば天然もしくは非天然の類似体でもよい。非天然の類似体にはペプチド核酸、ロックド核酸、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、蛍光体、もしくはハプテン等の標識が結合できる結合基等を含む塩基がある。オリゴヌクレオチドまたは核酸の使用において、ポリメラーゼによる伸張およびリガーゼによるライゲーション等の、酵素によるプロセシングが必要となる場合は常に、ヌクレオシド間結合、糖成分または塩基のある種の類似体が酵素反応と適合しない場合、上記のようなオリゴヌクレオチドまたは核酸には、どの位置にもそのような類似体を含めないことを当業者は理解するだろう。核酸の大きさは典型的には少数のモノマー単位、例えば5から40の範囲であり、数十万以上のモノマー単位の場合には通常「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる。核酸またはオリゴヌクレオチドを文字の配列(大文字か小文字)よって、例えば「ATGCCTG、」等で表す場合は常に、別記しない限り、または文脈から明らかな場合、ヌクレオチドは5
’から3方向へ、左から右に記載され、「A」はデオキシアデノシン、「C」はデオキシシチジン、「G」はデオキシグアノシン、および「T」はデオキシチミジン、「I」はデオキシイノシン、「U」はウリジンを表すと理解される。通常、核酸は、ホスホジエステル結合によってつながった天然のヌクレオシド(例えばDNAのデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはこれらに対応するRNAのリボース)を含む;しかしながら、非天然のヌクレオチド類似体、例えば修飾塩基、糖類、ヌクレオシド間の結合を含んでもよい。酵素が活性に必要な特定のオリゴヌクレオチドまたは核酸基質、例えば一本鎖DNA、RNA/DNA二本鎖等を有する場合、オリゴヌクレオチドまたは核酸基質に適切な組成物は、当業者の知識を持って選択でき、特にSambrookら,Molecular Cloning,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1989)等の専門書や同様の参照文献の手引きも参考にできる。
【0052】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」等は本明細書では交換可能に使用し、任意の長さのアミノ酸の重合形態を指す。これにはコードされた、およびコードされないアミノ酸、化学的または生物化学的に修飾した、または誘導したアミノ酸、およびペプチド骨格を改変したポリペプチドがある。
【0053】
用語「正のシグナル」は、捕獲面に結合する遊離可能な構成要素に関連して発生したあらゆるシグナルを意味し、つまり切断産物と捕獲面の間の相互作用に起因する「シグナルゲイン」である。この用語には、捕獲面上での直接的な正のシグナルの発生も含まれる。これは例えば、捕獲面への結合で検出可能なシグナル(例えば化学発光)をそれ自体が発生する分解産物の捕獲による、または、親和性領域と捕獲剤との間の相互作用(例えばFRET検出)によるシグナルの発生である。また、この用語には、分解産物と捕獲面との相互作用の後に、分解産物に結合する捕獲剤、例えば分解産物に選択的に結合する標識抗体の使用による間接的な正のシグナルの発生も含む。検出可能な正のシグナルには、蛍光、化学発光、放射活性または従来の技術を使用して容易に検出できる別の物質における増加があるが、これらに限定しない。
【0054】
用語「反応対」は、本明細書で使用される場合、捕獲剤と構築物の分解産物、または、構築物において置換された別の分子、例えば試料中の分子との競合的結合により構築物で置換された分子との結合を示すために相互作用する2つのあらゆる分子を指す。反応対には、結合対および、共有結合を生成する化学反応を引き起こす分子等の相互作用する他の分子も含まれる。
【0055】
用語「遊離可能な構成要素」は、置換現象で遊離される固定された構築物の一部分を指す。
用語「研究ツール」は、本明細書で使用される場合、本発明のあらゆる構成物またはアッセイを指し、これらは薬品による治療及び/又は生物学的な治療の開発等の、自然界を対象とした科学的、学術的、または商業的な研究で使用される。本発明の研究ツールの意図は、治療用ではなく、規制認可の対象とすることでもない。むしろ、本発明の研究ツールは、開発事業での研究を容易にし、開発活動を支援することを意図し、この活動には、規制当局への提出をサポートするための情報を作成するために実施されるあらゆる活動が含まれる。
【0056】
用語「選択的に結合する」、「選択的結合」は、本明細書で使用され、結合対(例えば、タンパク質、核酸、抗体等)を指す場合、指定のアッセイ条件下で統計学的に有意な正のシグナルを生成する、2つ以上の結合対の結合反応を指す。典型的に、相互作用によって、望まれない相互作用(バックグラウンド)の結果生成されたあらゆるシグナルの標準偏差の少なくとも2倍である、検知可能なシグナルが生成されることとなる。
【0057】
用語、近接は構成物と結合部分との空間的関係を定義するために使用し、この空間的関係により、アッセイの物理的な性質によって妨げられることのない、拡散、流体の流れおよび/または、任意の輸送手段のいずれかによって、分解産物が結合部分と相互作用できる。
【0058】
用語「T」は「融解温度」に関して使用する。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団の半分が一本鎖へと分離される温度である。核酸のTを計算するための等式がいくつかあり、当該技術分野においてよく知られている。標準的な基準に示されているように、核酸が1MのNaCl水溶液中にある場合、T値の単純な推定値を、等式、T=81.5+0.41(%G+C)で計算できる。(例えば、AndersonおよびYoung、Quantitative Filter Hybridization,in Nucleic Acid Hybridization(1985)参照のこと。)他の参照文献には(例えば、Allawi,H.T.およびSantaLucia,J.,Jr.、Biochemistry 36,10581−94(1997))は、Tを計算するために、配列特性と同様、構造および環境特性をも考慮に入れる別の計算方法が記載されている。
【0059】
本明細書に記述された技術の実行にあたり、別記しない限り、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組み換え技術を含む)、細胞生物学、生化学および配列決定技術の従来の技術および記述を採用する場合がある。これらは当該分野の範囲内である。このような従来の技術には、ポリマーアレイ合成、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよびライゲーション、標識を使用したハイブリダイゼーションの検出がある。適切な技術の特定の例示は、以下の例に参考として含まれ得る。しかし、他の等価な従来手順もまた、当然ながら使用され得る。そのような従来の技術および記述は、標準的な実験マニュアルにおいて見出すことができる。例えば、DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual;Mount(2004)、Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis;Sambrook and Russell(2006)、Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual;およびSambrook and Russell(2002)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(全てCold
Spring Harbor Laboratory Press);Stryer,L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)W.H.Freeman,New York N.Y.;Gait,”Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach”1984,IRL Press,London; Nelson and Cox(2000)、Lehninger, Principles of Biochemistry 3rd Ed.,W.H. Freeman Pub.,New York, N.Y.;およびBergら(2002) Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York,N.Y.があり、全文献を全目的のため本明細書に参照して組み込む。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形(「a」「an」および「the」)は、文脈が明らかに別途指示しないかぎり、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「基質」に言及する場合、基質の1つまたは複数のコピーを指し、「分析」に言及する場合、当業者等が認識している同等なステップおよび方法への言及も含まれる。
【0060】
別に定義しない限り、本明細書で使用される技術および科学用語はすべて本発明が属する業界の関係者により一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書で言及する
全文献を、本明細書に参照して完全に組み込むが、その目的は本発明に関連して使用され得る、デバイス、調剤および方法を説明および開示するためである。
【0061】
ある値の範囲が示されるが、各介在値、その範囲の上限値および下限値、ならびに表示範囲内の他の表示値または介在値が、本発明に包含されるものと理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限は独立して、より狭い範囲に含まれてよく、表示範囲における任意の特定除外限度を条件として、これらも本発明の範囲に含まれる。表示範囲が一方または両方の限度を含む場合、それら包含される限度の一方または両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0062】
以下の記述において、本発明を徹底的に理解するために、特定の詳細を多数提示する。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細を1つまたは複数欠いても実行し得ることは当業者には明らかであろう。他の例において、本発明を不明瞭にしないため当業者によく知られた特徴および方法は記述していない。
【0063】
発明の概略
本発明は、1つまたは複数の酵素、特に核酸またはタンパク質の切断に関与する酵素との反応現象後に、固定されたペプチドの遊離可能な一部分の置換を測定する強力な方法を提供する。本発明は、試料中の1つまたは複数の特定の酵素の活性を同定しかつ/または検出する、正のシグナルの検出(すなわち「シグナルゲイン」検出)を提供する。本発明の特定の例は、切断活性に対する切断部位と捕獲面に結合する親和性領域を含む、固定された基質の切断部分(すなわち遊離可能な構成要素)の遊離である。固定された構築物の遊離可能な部分(例えば切断部分)の分離に際して、遊離可能な部分を捕獲面へ結合させて捕獲する。特定の態様では、遊離可能な部分の親和性領域は、捕獲面に付着している捕獲剤に選択的に結合する。したがって、ある態様において本発明は、切断剤活性のハイスループットな分析のためのアッセイを提供し、これは、対応する捕獲剤へ結合して、正のシグナルを発生する検出可能な分解産物の生成によるアッセイである。
【0064】
酵素活性を検出する方法は他にもあるが、本発明は現在の最先端技術に著しい改善をもたらす多数の特性を有する。例えば、本発明のアッセイおよび方法により、試料中の1つのクラスの複数の酵素の検出(例えば複数の制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼの同定および/または検出)のみでなく、ユーザは、異なる比活性を有する酵素の活性の存在または非存在を識別できるようになる。ハイスループットな方法で異なる酵素の活性を識別できるため、単独のアッセイツールで、生体試料等の試料をより包括的に分析できる。
【0065】
特定の態様において、本発明は試料中のプロテアーゼ活性を検出する、ハイスループットな方法を提供する。「ユニバーサルペプチド」アレイ等の複数のプロテアーゼのプロテアーゼ活性を同定するために現在利用できるツールでは、異なるいくつかのプロテアーゼが引き起こし得るプロテアーゼ活性を検出できるが、試料中に複数の潜在的なプロテアーゼがある場合、どのプロテアーゼがどの活性の原因であるか区別できない。米国特許7,229,769号明細書で記述されたような多重プロテアーゼ活性分析を行うアッセイでは、シグナルの検出に先立って精製ステップ等の複数のステップを必要とする。このような複数のステップが必要なハイスループットなアッセイ技術と比較して、本発明のアッセイツールが提供するシグナルゲインの直接検出により、アッセイ方法が大幅に単純化され、アッセイの実施に必要な時間とコストを減少できる。
【0066】
固定された構築物が過剰に存在すると、シグナルロス(「LOS」)アッセイが妨害される場合があり、アッセイのダイナミックレンジを縮小する。本発明のアッセイでは構築物が大量に存在しても制限されることはなく、実際、多くの構築物が存在することにより
感受性および他の利益を獲得し得る。LOSアッセイではさらに、固定された不活性な構築物、例えば低品質の合成ペプチド、または未精製のペプチドを有する構築物によるバックグラウンドが問題となる場合がある。このような不活性構築物は常にバックグランドとなりえるため、不活性構築物はLOS分析の主要な問題となりえる。
【0067】
本発明のGOSアッセイでは、産物は分離せず、捕獲面へも移動しないため、切断されることのない産物によるこのバックグラウンドの問題は存在しない。本発明のアッセイは、非常に感度がよく、堅牢で、用途が広く、対費用効率が高いため、従来のアレイに基づいたプロテアーゼ活性分析に著しい改善をもたらす。
【0068】
本発明は、固定された構築物の遊離可能な部分にある単一検出剤または2つ以上の構成要素を含む検出スキームのいずれかを利用するツールを提供する。単一検出剤を使用する態様は、試料中の2つ以上のプロテアーゼを検出する、一般的により対費用効率が高い方法であり、酵素活性の同定に、複雑な合成技術、多重化および/または解読手順を必要としないため好ましい。
【0069】
試料中の複数の酵素の活性試験に加えて、本発明は、面上の多くのペプチド基質に対する、1つまたは複数の、目的の個々の酵素(例えば単一のプロテアーゼ)の活性を分析するアッセイツールを提供する。これは、様々な基質に対する個々の酵素または酵素のクラスの選択を可能とし、さらに特定のアッセイ条件下で酵素活性に最適な基質の同定を支援できる。
【0070】
ある態様では、本発明は、酵素活性の阻害剤、例えばプロテアーゼ活性の一般的な、または特定の阻害剤を検出するためのアッセイツールを提供する。このようなアッセイは、置換現象を引き起こし得る1セットの酵素を利用して実行するが、この置換現象は、例えば、1つまたは複数の固定された構築物の遊離可能な構成要素を遊離させる切断現象により起こる。例えば、プロテアーゼ阻害剤または推定上の阻害剤の存在下、プロテアーゼまたは一群のプロテアーゼを固定された構築物に導入できる。阻害剤または推定上の阻害剤の存在下、または非存在下で発生したシグナルを比較することにより、阻害の特異性および効率を決定できる。この態様は例えば薬剤開発において使用でき、このアッセイにより、複数の阻害剤または推定上の阻害剤に対する複数のプロテアーゼおよび切断基質のスクリーニングが促進されるであろう。標的の同定に加えて、潜在的な非特異的な影響に関する安全データの提供も支援するであろう。
【0071】
ある態様において、本発明は、酵素活性の活性剤を検出するためのアッセイツールを提供し、この活性剤には、一般的および/または特定の促進剤がある。これは、例えば、酵素前駆体を酵素の活性体に変換する作用剤等の、酵素活性を活性化する補因子または作用剤を必要とする。このようなアッセイは、置換現象を引き起こし得る1セットの酵素を利用して実行するが、この置換現象により、1つまたは複数の固定された構築物の遊離可能な構成要素を遊離させる。この態様は、例えば既知のまたは潜在的な薬剤の促進剤の同定に、または治療薬の予期せぬ副作用のリスクを増加させる因子の同定に使用できる。
【0072】
したがって本発明のアッセイツールを、酵素活性を調節するあらゆる作用剤に対して効果的に使用できる。本発明のアッセイツールを、タンパク質のアゴニストとアンタゴニスト、および多数の小分子、ペプチドまたは別のタイプの活性剤および阻害剤のスクリーニングに使用できる。
【0073】
シグナルの減少ではなく増加を検出する能力は、あらゆるバックグラウンドシグナルまたはノイズを大幅に減少させることで、アッセイシステムの感受性をより高め、複合試料中に存在し得るわずかな量の酵素を同定できる。さらに、これらのアッセイでは少量の試
料しか必要としないことも有利な点である。これにより、従来の方法を使用すれば大変困難で、高コストとなり実用的ではない大規模な実験が可能となる。ハイスループットなアッセイにより、細胞の機能と制御に関する研究の研究ツールの発見を速めるであろう。
【0074】
本発明のアッセイツールはさらに、切断または置換活性のための基質を同定しかつ/または最適化するためのツールおよび方法を提供する。例えば、ツール上の構築物は、切断可能な成分の様々な構造および/または内容を変更して分子のライブラリーを表すことができ、ツールを使用して、特定の条件、例えば光、pH、イオン濃度、特定の反応種の存在状態等の条件において、作用剤の切断活性をスクリーニングできる。
【0075】
別の態様においては、ツールを、競合性結合剤をスクリーニングするために使用できる。そのような態様において、例えば、構築物の親和性領域へのより高い結合親和性による分子の置換を使用してシグナルを検出できる。別の例において、構築物が立体構造を変化させて作用剤の遊離を引き起こす、親和性領域上の第二の位置での、または構築物の他の部分での、アロステリックな結合を検出することができる。
【0076】
競合的結合に関して試験できる相互作用には、ペプチド+ペプチド;核酸+核酸;標的+アプタマー等の巨大分子の相互作用、または薬剤+標的、ハプテン+抗体小分子の相互作用も含まれる。
【0077】
本発明で使用する捕獲面
本発明で使用する捕獲面は、1つまたは複数の遊離した親和性領域を捕獲し、正のシグナルを発生させるために設計された面である。本発明で使用する捕獲面には、遊離した親和性領域を捕獲する様々なメカニズムおよび/または捕獲剤を使用できる。例えば、疎水性または親水性の作用剤を有する遊離した親和性領域に暴露させる面をコーティングして、捕獲面を疎水性かまたは親水性となるように改変してもよく、親和性領域を面との相互作用によって直接捕獲してもよい。別の例において、捕獲面を、アビジンまたはストレプトアビジン等の単一の捕獲剤を複数用いて実質的に一様にコーティングしてもよい。さらに別の例では、捕獲面には、捕獲領域を有する特定の領域があってもよく、例えば限定された捕獲領域内に単一の捕獲剤を有する面があってもよい。ある態様において、捕獲面には、異なる親和性領域に特異的な異なる捕獲剤を有する隣接した捕獲領域を含んでもよい。別の態様において、捕獲領域は、遊離可能な構成要素に結合しない非機能的なまたはブロックされた捕獲面上の領域に隣接するか、またはその領域に囲まれていてもよい。これらの捕獲領域はそれぞれ単一の捕獲剤を有してもよく、または、2つ以上の遊離した親和性領域に選択的に結合できる2つ以上の捕獲剤を有してもよい。
【0078】
アッセイに適切な面は、捕獲面への結合により切断産物を検出できるあらゆる幾何学的形状であってもよく、および/または方向性があってもよい。態様のいくつかにおいて、本発明の面は機能を持ち、生体適合性であり、特定のアッセイの容量および物理的性質(拡散距離など)に適する形状と相対配向を持つ。適切な面には、ガラス、シリコン、石英、ポリアクリルアミドコートガラス、陶磁器、珪土、各種プラスチック等の物質がある。態様のいくつかにおいて、面に機能を持たせず、切断剤は非特異的な結合により、捕獲面と相互作用する。別の態様において、面の1つまたは複数の領域に、または「捕獲領域」に機能を持たせる。別の態様において、捕獲面上全体で、または実質的に捕獲面上全体で捕獲機構を機能させる。
【0079】
捕獲面それ自体は、例えば、実質的に平坦な面、ウェルまたは高台、粒子、ビーズまたはマイクロスフェアであってもよい。一態様において、面はビーズである。別の態様において、面は平坦な面である。さらに別の態様において、多数の面を使用するアッセイでは形を任意に組み合わせてもよい。通常、従来の用途に対しては、平坦な面の大きさは0.
02〜20cm以上の範囲で、使用する検出方法、面上の異なる構築物および/または構築物の領域を分解能力(例えば、蛍光性のマーカーの場合には、光学的に分解する能力)により決定される。
【0080】
固定された構築物
本発明で使用する固定された構築物は、作用剤の導入により遊離可能な構成要素を遊離させる置換領域を含む。特定の態様において、固定された構築物には酵素基質領域と親和性領域があり、酵素基質領域は適切な酵素との暴露により構築物の一部分の酵素的置換または遊離をもたらし、親和性領域は酵素との暴露により遊離される構築物の一部分にあり、捕獲基質に結合する領域である。別の特定の態様において、置換領域は、固定された構築物内の遊離可能な構成要素を効果的に置換する作用剤の結合で、遊離可能な構成要素が遊離する領域である。これらの態様のいずれかにおいて、この領域は個別の領域であってもよく、または、親和性領域が遊離の際十分に無傷で、アッセイの目的に照らして、捕獲面へ十分な親和性を持って結合できる場合には、基質領域と親和性領域の間で重複した構造であってもよい。
【0081】
ある態様において、固定された構築物は結合領域、酵素基質領域、ならびに親和性領域および検出可能なマーカーを含む遊離可能な構成要素を含む。検出可能なマーカーにより、置換現象の結果として遊離可能な構成要素が遊離して捕獲面へ結合した後、この構成要素を捕獲面上で検出できる。親和性領域は、検出可能なマーカーとは異なっていてもよく、検出可能なマーカーを有する構造と重複していてもよく、または、ある態様においては、検出可能なマーカーそれ自体が、遊離可能な構成要素を捕獲面へ結合するよう促進する親和性領域でもよい。
【0082】
構築物の酵素基質部分は、ペプチド、核酸、多糖類または別の型の酵素切断可能な結合を含む分子であり得る。
ペプチド、およびペプチドグリカン等の関連基質に作用できる酵素には、例えばプロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコヒドラーゼ(例えばリゾチーム)等がある。核酸基質には、例えば、DNAまたはRNAの酵素、例えば制限エンドヌクレアーゼ等で切断できるオリゴヌクレオチド領域がある。
【0083】
遊離可能な構成要素の親和性領域が捕獲面へ結合した後のシグナルの検出は、単一の面から直接的に読み出すことが可能であり、または、2面の態様の場合には、2つの面を分けた後、例えば標準的なマイクロアレイスキャナー、化学発光検出キット、質量分析法、または当業者が利用できる他の従来の方法で読み出すことができる。しかしながら、ある特定の態様においては、2面の態様でのシグナルの検出を、2つの機能を有する面を分けずに読み出すことができる。例えば、被写界深度が浅い共焦点タイプのスキャナーを使用して捕獲剤を含む面からシグナルを収集できる。別の例において、エバネッセント光を使用して捕獲剤を含む面上の分子を励起できる。このような方法は、リアルタイムで、または特定の間隔でシグナルを検出できる利点を有し、捕獲面上の反応対および/または結合対の反応の動力学についての情報を提供し得る。
【0084】
本発明の異なるツールにおいて、リンカーを使用して面に捕獲剤および/または構築物を結合させてもよい。多数のタイプのリンカーを使用でき、リンカーは、一般に、構築物のタイプ(アミノ酸、核酸等)、リンカーの望ましい特性(長さ、柔軟性)、および同様の別の特性によって選別できるであろう。そのようなリンカーにはヌクレオチド、ポリペプチドまたは適切な合成材料を含み得る。
【0085】
リンカー構造は、生体適合性の高分子材料(例えばポリエチレングリコール)で構成される炭化水素ベースのポリマーであることが好ましい。
ある態様において、面に固定された構築物および/または捕獲剤には、面に直接結合している切断可能なリンカーを含み、構築物の別の構成要素を面から分離させるが、これは酵素基質部位でのあらゆる切断現象とは別のものである。態様のいくつかにおいて、切断可能なリンカーは面に固定された構築物のすべてに対して同様であるか、または同一のものである。他の態様において、面上の構築物のサブセットは同一の切断可能なリンカーを有し、このリンカーは、同一面上の他のサブセットの切断可能なリンカーとは異なっている。
【0086】
検出可能なマーカー
本発明で使用する検出可能なマーカーは、親和性領域が捕獲面へ結合する際に正のシグナルを発生する、または発生させることを許容するあらゆる分子であり得る。そのような検出可能なマーカーには、抗体、放射性同位体、蛍光性化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、分子マーカーならびに光学的標識、例えば金および/または銀ナノ粒子の蓄積による可視化があるが、これらに限定しない。検出可能なマーカーと親和性領域とは同一物であり得る。好ましい態様において、検出可能なマーカーは蛍光色素である。本発明で使用される適切な色素には、ユウロピウムやテルビウム等の蛍光性のランタニド複合体、フルオレセン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオジン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade Blue(商標)、Texas Red、およびRichard P.Haugland著Molecular Probes Handbookの第6版に記載のものがあるが、これらに限定しない。
【0087】
ある態様において、検出可能なマーカーは、別の分子と相互作用して正のシグナルを生成する分子を2つ以上含む検出可能な複合マーカーである。これらの態様において、検出可能なマーカーは、相互作用してフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)を起こす色素でありえる。適切なFRET色素には、クマリン標識したリン脂質(CC2−DMPE)、ビス(1,3−ジアルキルチオバルビツール酸)−トリメチンオキソノールおよびDisBac(GonzalezおよびMaher、Receptors and Channels8を参照のこと)があるが、これらに限定しない。検出可能な複合マーカーには、さらに標識された分子の結合によって検出きる成分、例えばハプテンとその担体、導入された標識抗体を使用して検出可能なリガンド等がある。
【0088】
核酸の場合には、種々の部位でヌクレオチドに標識を付けることができ、リンカーで、またはリンカーなしで結合部を作製できる。核酸を蛍光体で標識するために使用する従来のヌクレオチド類似体では、一般的にヌクレオチド基質分子の塩基部分に蛍光性の成分を付着させる。また、糖成分(例えばデオキシリボース)またはアルファリン酸にも付着できる。Zhuら「Directly Labelled DNA Probes Using Fluorescent Nucleotides with Different Length Linkers」Nucleic Acids Res.22:3418−3422(1994)を参照のこと。この文献を本明細書に参照して組み込む。
【0089】
アッセイツール:2面構成
本発明の1つの態様において、アッセイツールは既知の一定の空間的関係を有する2つの面からなる。ある態様において、面は、平坦な面、フィルム、ビーズまたはその組み合わせ等の固体担体であり、既知の一定の空間的関係を有する。本発明の好ましい態様では、2つの平坦な面が提供される。図1から4にこのような態様の異なる特定の例を図示する。
【0090】
ある態様において、アッセイツールは、図1に図示するように、固定されたペプチド構築物の1セットを有する第1面、および固定された捕獲剤の1セットを有する第2面から
構築される。図に示すように、第1面113には、酵素の切断剤基質107、検出可能なマーカー109および親和性領域105を含む構築物101が付着しており、親和性領域105は捕獲剤117に特異的に結合するが、捕獲剤117は構築物101の直近にある第2面115上に固定化した103である。構築物101の酵素基質107が切断される前は、親和性領域105および捕獲剤117はそれぞれの面に固定されているため離れている。酵素基質107の切断後、親和性領域と検出可能なマーカーが第1面113から遊離し近接の捕獲剤へ拡散するが、この捕獲剤は第2面115上の近位にある。本発明のある態様において、親和性領域105および捕獲剤117は反応対を含む。反応対は化学反応、例えば共有結合により結合され、結合している検出可能なマーカーによって反応対を検出できる。
【0091】
本発明の他の態様において、親和性領域105および捕獲剤117は特定のタンパク結合対を含む。さらに他の態様において、親和性領域105および捕獲剤117は相補的な核酸を含む。このような検出には多数の結合対が利用でき、このことは本開示を読めば当業者には明らかであろう。
【0092】
本発明のこの態様では、シグナルが酵素基質から検出面へ効果的に移行し、捕獲面上のシグナルのゲイン検出によって正のシグナルが生成される。この移行は固定された酵素基質の切断に特異的であり、特定の酵素基質の切断により試料中にこの酵素が存在することが示される。
【0093】
ある態様において、アッセイツールは、異なる切断剤基質を有する2つ以上の固定された構築物の1セットがある第1面、および同一の捕獲剤が2コピー以上ある第2の検出面から構築される。第2面上の捕獲剤に一般に、結合対または反応対の一方の構成要素である捕獲構築物を含み、対のもう一方を第1面上の構築物の親和性領域に置く。図2および図3は、この態様の特定の例を図示する。図2において、第1面213には、ビオチン親和性領域205、および異なる切断剤基質207、227を有する2つ以上の固定された構築物201および221の1セットがあり、第2面215には、その上に固定されたストレプトアビジン分子217を含む捕獲剤203の1セットがあり、第1面213を第2面215に近接させる。標的切断剤で基質207が切断されると202、構築物の一部分219は第1面に残る一方、ビオチン205および検出可能なマーカー209は捕獲面215上の捕獲剤217へ拡散する。ビオチン205および検出可能なマーカーの捕獲剤217への結合により、切断現象を検出できる。図2において、検出可能な標識209の各々は同一であり、アッセイツール上での正のシグナルの空間的な位置を使用して、分析中に切断された特定の基質を同定し、検査した試料に切断剤が存在したことを示す。
【0094】
図3は異なる構築物に異なる検出可能なマーカーが採用されていること以外は図2に類似している。図3において、第1面313には、双方がビオチン親和性領域305、および異なる切断剤基質307、327を有する2つ以上の固定された構築物301および321の1セットがあり、第2面315には、その上に固定されたストレプトアビジン分子317を含む捕獲剤303の1セットがあり、第1面313を第2面315に近接させる。標的切断剤で基質307が切断されると302、構築物の一部分319は第1面に残る一方、ビオチン305および検出可能なマーカー309は捕獲面315上の捕獲剤317へ拡散する。ビオチン305および検出可能なマーカーの捕獲剤317への結合により、切断現象を検出できる。図3において、検出可能な標識309、329は少なくとも2つ以上の構築物において異なっており、発生した正のシグナルを(ある態様では空間的位置も)使用して、アッセイ中に切断された特定の基質を同定し、検査した試料に切断剤が存在したことを示す。
【0095】
本発明の他の態様において、異なる構築物に異なる捕獲剤および親和性領域を採用して
、第2面で反応対(例えば結合対)を相互作用させる。図4において、2つ以上の固定された構築物401、421の1セットを有する第1面413、および固定された捕獲剤403および423の1セットを有する第2面415でアッセイツールを構成する。固定された捕獲剤403および423は異なる捕獲剤(それぞれ417および433)を含む。第2面415は第1面413に近接した位置にある。図に示すように、第1面413上には、異なる切断剤基質407、427および同一の検出可能なマーカー409、異なる親和性領域405、425を含む構築物401、421が固定されている。親和性領域405、425は、対応する捕獲剤(それぞれ403および423)に特異的に結合する。構築物が切断されると402、構築物の一部分419は第1面に残り、親和性領域405および検出可能なマーカー409を含む切断産物は拡散し、第2面415上の直近にある対応する捕獲剤417に結合する。第2面上で発生した正のシグナルおよびこのシグナルの空間的な位置を使用して、アッセイ中に切断された特定の基質を同定し、検査した試料に切断剤が存在したことを示す。
【0096】
図5は異なる構築物に異なる検出可能なマーカーが採用され得ること以外は図4に類似している。本発明の他の態様において、異なる構築物に異なる捕獲剤および親和性領域を採用して、第2面で反応対(例えば結合対)を相互作用させる。図5において、2つ以上の固定された構築物501、521の1セットを有する第1面513、および固定された捕獲剤503および523の1セットを有する第2面515でアッセイツールを構成する。固定された捕獲剤503および523は異なる捕獲剤(それぞれ517および533)を含んでいる。第2面515は第1面513に近接した位置にある。図に示すように、第1面513上には、異なる切断剤基質507、527、異なる検出可能なマーカー509、529、および異なる親和性領域505、525を含む構築物501、521が固定されている。親和性領域505、525は、対応する捕獲剤(それぞれ503および523)に特異的に結合する。構築物が切断されると502、構築物の一部分519は第1面に残り、親和性領域505および検出可能なマーカー509を含む切断産物は拡散し、捕獲面515の上の直接近傍にある対応する捕獲剤517に結合する。第2面上で発生した正のシグナルを(ある態様では空間的位置も)を使用して、分析中に切断された特定の基質を同定し、検査した試料に切断剤が存在したことを示す。
【0097】
本発明のある態様において、異なる構築物および/または捕獲剤を物理的に分けておくことが望ましい場合がある。これには、本明細書内に記述される構築物/捕獲剤のあらゆる組み合わせがある。ツールの一例を図6に図示する。アッセイツールは、実質的に同一な2つ以上の固定された構築物601の1セットを有する第1面613、および1セットの捕獲剤617をその上に固定された1セットを有する第2面615で構築され、第2面615を第1面613の近接に設置する。図に示すように、第1面613上には、切断剤基質607、検出可能なマーカー609、および親和性領域605を有する構築物601が付着しており、親和性領域605は、対応する捕獲剤617に特異的に結合する。障壁631は異なる構築物および捕獲剤を物理的に隔てる。障壁は、プラスチック微細加工において一般に使用される技術で形成できる。この技術には例えば、射出成形、化学析出、フォトリソグラフィ、シルクスクリーニングおよび化学的加工および/または機械的加工があるが、これらに限定されない。構築物601が切断されると602、構築物の一部分619は第1面に残り、親和性領域605および検出可能なマーカー609を含む切断産物は拡散し、第2面615上の直近にある対応する捕獲剤617に結合する。
【0098】
アッセイツール:1面構成
本発明の他の態様において、単一の面の別々の領域上に構築物と捕獲剤の両方を固定化する。図7から12に切断ベースのアッセイツールの1面構成の態様における異なる特定の例を図示する。これら様々な態様を1つの機能を有する面として図示するが、アッセイツールはそれ自体第二の不活性な面を有することが好ましい。第二の不活性な面により、
部分的にまたは完全に閉じた容器が作製され、検査されている試薬および試料を捕獲する。したがって、用語「1面構成」は、スライドガラスまたはカバーガラス等の他の面の使用を含むことを意図し、他の面は分析を実施する際に実用的な機能(例えば試薬の保護、光学的方法を使用した検出、試料の積載、湿潤性)を果たすが、本発明の構築物または捕獲剤は含まない。
【0099】
図7は本発明の1面アッセイツールの一般的な構成要素を説明する模式図であり、単一の検出可能なマーカーを使用している。面には、酵素基質703、検出可能なマーカー709および捕獲剤707に結合する親和性領域701を有する構築物700の1セットがある。特定の構築物700への親和性を有する捕獲剤を、これに対応する構築物の近くに固定するが、対応する構築物に隣接するが構築物とは別の領域に固定するのが好ましい。構築物700の酵素基質703が切断されると、親和性領域701および検出可能なマーカー709は面から遊離する。遊離した親和性領域および検出可能なマーカーは、対応する近接の捕獲剤707へ拡散し704、捕獲剤707に結合してこの部位で正のシグナルが発生する。ある態様において、構築物700の親和性領域に結合する領域は、酵素基質のすべてまたは一部分に重複してもよい。さらに、構築物をリンカー分子を有する面に任意に付着させてもよく、特定の態様では、リンカー分子は切断可能なリンカーとなる。
【0100】
図8は本発明の1面アッセイツールの一般的な構成要素を説明する模式図であり、分子検出スキームを2つ使用している。図7に示すように、面には、酵素基質803、第1の検出可能なマーカー809、および捕獲剤807に結合する親和性領域801を有する構築物800の1セットがある。特定の構築物への親和性を有する検出部分を、これに対応する構築物の近くに固定するが、対応する構築物に隣接するが構築物とは別の領域に固定するのが好ましい。検出部分807はさらに、第1の検出可能なマーカー809と相互作用と相互作用し、例えばFRETに基づいたシグナル等のシグナルを生成する、第2の検出可能なマーカー811を含む。構築物の酵素基質803が切断されると、親和性領域801および第1の検出可能なマーカー809は面から遊離する802。遊離した親和性領域801および検出可能なマーカーの第1構成要素809は、近くにあり、対応する捕獲剤807へ拡散し804、捕獲剤807に結合して、検出可能な複合マーカーの第1と第2構成要素の相互作用によって捕獲剤807のこの部位で正のシグナルが発生する。
【0101】
図9は本発明の1面アッセイツールの一般的な構成要素を説明する模式図であり、分子検出スキームを2つ、結合構築物、捕獲剤を1つずつ使用している。面には、酵素基質905、検出可能なマーカーの第1構成要素909、および捕獲剤領域907に結合する親和性領域901を有する構築物903の1セットがあり、捕獲剤領域907は、面の方を向いて設置されている。構築物903は、構築物の捕獲剤部分907に関連した検出可能な複合マーカーの第2構成要素911をさらに含む。構築物が切断されると902、親和性領域901を含む構築物の上部と検出可能なマーカーの第1構成要素909が遊離し、その後、この遊離の構成要素は残る固定された捕獲剤に結合し904、検出可能なマーカー909の第1と第2構成要素により、FRETに基づいたシグナル等のシグナルが発生する。そのような態様において、構築物909および/または構築物と捕獲剤の構成は、構築物が対応しない検出可能なマーカーと相互作用しないように、または切断剤がない場合に対応する検出可能なマーカーと相互作用しないように、設計しなければならない。したがって、構築物および/または面上の要素の構成により、構築物には柔軟性を持たせず設計すること、構築物と検出可能なマーカーの間の間隔は、上記のような偶然の相互作用を十分阻止する間隔であること等が確実とならねばならない。本発明の特定の態様の1つにおいて、親和性領域と捕獲剤には、ペプチド基質の切断の際ハイブリダイズする相補的な核酸がある。図10は、本発明のこの態様を図示する。面には、プロテアーゼ基質1003、検出可能なマーカー1009およびオリゴヌクレオチド捕獲剤1007に結合する核酸親和性領域1001を有する構築物1000の1セットがある。オリゴヌクレオチド
検出部分1007を相補的な核酸親和性領域を有する、検出部分に対応する構築物の近くに固定するが、対応する構築物に隣接するが構築物とは別の領域にオリゴヌクレオチドを固定するのが好ましい。構築物の酵素基質1003が切断されると、親和性領域1001および検出可能なマーカー1009は面から遊離する1002。遊離した核酸親和性領域1001および検出可能なマーカー1009は、近くにある、対応する捕獲剤1007へ拡散し1004、捕獲剤1007に結合してこの部位で正のシグナルが発生する。
【0102】
本発明の別の特定の態様において、親和性領域と捕獲剤は、核酸基質の酵素による切断、例えば制限酵素での切断の際にハイブリダイズする相補的な核酸がある。図11は、本発明のこの態様を図示する。面には、核酸酵素基質1103、捕獲剤1109、およびオリゴヌクレオチド捕獲剤1107に結合する核酸親和性領域1101を有する構築物1100の1セットがある。オリゴヌクレオチド捕獲剤1107を、相補的な核酸親和性領域を有する対応する構築物の近くに固定する。構築物1100の酵素基質1103が切断されると、親和性領域1101および検出可能なマーカー1109が面から遊離する1102。遊離した核酸親和性領域1101および検出可能なマーカー1109は、近くにある、対応する捕獲剤1107へ拡散し1104、捕獲剤1107に結合してこの部位で正のシグナルが発生する。
【0103】
本発明のさらに別の特定の態様において、親和性領域と捕獲剤はタンパク質結合対のメンバーを含む。これはペプチド基質の酵素による切断、例えばプロテアーゼによる切断の際に、高度な親和性で互いに特異的に結合する。図12は、本発明のこの態様を図示する。面には、タンパク質結合基質1205、捕獲剤1209、および捕獲成分(ここではストレプトアビジン)1207に結合するタンパク質結合対のメンバー(ここではビオチン)1201を有する構築物1203の1セットがある。ペプチド検出部分1207を、これに対応する結合対構築物に近接させて固定するが、対応する結合対構築物に隣接するが構築物とは別の領域に固定するのが好ましい。構築物1203のペプチド基質1205が切断されると、親和性領域1201および検出可能なマーカー1209は面から遊離する1202。遊離したペプチド親和性領域1201および検出可能なマーカー1209は、近くにある、対応するペプチド捕獲剤1207へ拡散し1204、捕獲剤1207に結合してこの部位で正のシグナルが発生する。
【0104】
競合結合アッセイ
ある態様において、本発明のアッセイツールを関心領域の競合的結合を検出するために使用できる。結合分子を単一の構成要素として下記の図内に示すが、様々な構成要素を有する結合分子を包含することを意図している。例えば様々に異なる分子を単一の捕獲剤で分析を促進するために、試料中の目的の作用剤により置換される結合分子はキメラでもよく、捕獲剤に結合するための特異的な部分を有する。この結合部分はペプチド、小分子または他の任意の結合対のメンバー(例えばビオチン)でありえる。図13から15にこの態様の例を図示する。
【0105】
図13において、第1面1313に固定された構築物1303の親和性領域1305は、構築物上の関心領域の結合領域に結合した第1の結合分子1309を含む。捕獲剤1317は、第2面1315に固定された捕獲分子1311を含む。親和性領域1305に対して第1結合分子1309より高度な親和性を有する第2結合分子1319を導入すると1302、結合分子1309は遊離し1308、新しい結合分子は親和性領域1305のその場所に結合する。遊離した分子1309は対応する捕獲剤1311へ拡散し1306、捕獲剤1311と結合する。第1結合分子1309は、検出可能なマーカーにより標識され、分子1309の捕獲剤1311への結合の際に第2面上で直接検出できる。
【0106】
別の態様において、第1結合分子は直接標識され、両方とも捕獲剤に特異的に結合する
第3成分に関連している。第1面1413に固定された構築物1403の親和性領域1405は、構築物上の目的の結合領域に結合した第1結合分子1409を含み、第1結合分子1409には、捕獲剤1417の捕獲分子1411と特異的に結合する結合対の構成要素1427が付着している。反応対にはあらゆるメンバーを使用できるが、ここでは捕獲分子はストレプトアビジンであり、第1結合分子に付着した分子はビオチンである。捕獲剤1417は、第2面1415に固定された捕獲分子1411を含む。親和性領域1405に対して第1結合分子1409より高度な親和性を有する第2結合分子1419を導入すると1402、結合分子1409は遊離し1408、新しい結合分子は親和性領域1405のその場所に結合する。遊離した分子1409とビオチン1427は対応する捕獲剤1411へ拡散し1406、ストレプトアビジン1411と結合する。第1結合分子1409は、検出可能なマーカーにより標識され、ビオチン1427のストレプトアビジン1411への結合の際に第2面上で直接検出できる。
【0107】
図15に図示したさらに別の態様では、第1面1513に固定された構築物1503の親和性領域1505は、構築物上の目的の結合領域に結合した第1結合分子1509を含む。捕獲剤1517は、第2面1515に固定された捕獲分子1511を含む。親和性領域1505に対して第1結合分子1509より高度な親和性を有する第2結合分子1519を導入すると1502、結合分子1509は遊離し1508、新しい結合分子は親和性領域1505のその場所に結合する。遊離した分子1509は、対応する捕獲剤1511へ拡散し1506、捕獲剤1511と結合する。この態様において第1結合分子は直接標識されないが、遊離した分子1509と特異的に結合する検出分子1521の導入1512により検出される。検出分子1521は、分子:捕獲剤の複合体に結合し、捕獲剤1517のこの部位で正のシグナルを生成する。
【0108】
本発明のある態様、つまり2面の態様および1面の態様の両方において、例えばウェル、高くした領域、台座、エッチング穴等を有する面を使用することは好ましいであろう。このような面を、拡散の過程を最適化するために、考えられる相互汚染を防ぐために、切断活性を検出するための距離を最適化するために設計してもよい。
【0109】
本発明のある態様において、ツールの面のうちの1つはこのような表面の態様を含む。図16に図示した特定の例の1つにおいて、アッセイツールは、2つ以上の固定された構築物の1セット1601および1621を有する、第1のパターン化された面1613から構成され、固定された構築物にはそれぞれ対応する捕獲剤1611および1631がある。ある他の態様(図示せず)において、両方の構築物で捕獲剤を1つだけ、すなわち1611のみ有すること、および構築物1601と1621の間のくぼみ面1615の1つまたは複数の領域を有することは好ましいであろう。図17に図示し別の例において、アッセイツールには、一連のウェル1725をパターン形成した第1面1715がある。ウェル1713の底面には、2つ以上の固定された構築物1701、1721の1セットがあり、共通の親和性剤に対応する単一の捕獲剤1711のセット、または特定の構築物(データを示さず)に対応する異なる捕獲剤が、各ウェルの上部の面に位置している。図18に図示した別の例において、アッセイツールには、一連のウェル1825をパターン形成した第1面1815がある。ウェル1813の底面には、2つ以上の固定された構築物1803、1805の1セットがあり、ウェルは多数の方法を使用してパターン形成できる。この方法には、非暴露分配(ピエゾ、ソレノイド)、分子印刷または予備堆積があるがこれらに限定しない。パターン形成は、ウェル内の構築物の上部に物理的に位置している共通の親和性剤に対応する単一の捕獲剤1811のセット、または特定の構築物(データを示さず)に対応する異なる捕獲剤のどちらかの固定化に先立って、実施する。
【0110】
態様のいくつかにおいて、アッセイツールの面のうち1つには、構築物および/または捕獲剤を固定するビーズがあってもよい。これらのビーズは、ウェル等のパターン化され
た面に付着させてもよく、または、ビーズが平坦な面上で高くなった面を効果的に形成するよう、平坦な面に付着させてもよい。この態様の1つの例を図19に図示するが、構築物1921を有する一連のビーズ1923を、平坦な面1913上に、対応する捕獲剤1931に近接させて設置する。先の図で説明されるように、切断およびそのような切断の検出は本質的なことである。
【0111】
好ましい態様の1つにおいて、ビーズを平坦な面にあるウェルに設置し、構築物をこのビーズ上に固定する。特定の態様において、ビーズがあるウェルの表面に捕獲剤を固定する。切断後、ビーズ上の構築物からの検出可能な物質をウェルの表面上で捕らえる。その後、ビーズを任意に除去し、ウェルの表面上の正のシグナルを検知する。
【0112】
別の態様において、構築物をウェルの表面上に固定し、ウェルにあるビーズ上に捕獲剤を固定する。切断後、検出可能なマーカーがウェルの表面から遊離し、ビーズ上の捕獲剤に結合する。検出可能な標識がビーズ上の捕獲剤に結合することで発生した正のシグナルは、例えば、フローサイトメトリー等の技術を使用して検知できる。特定の例において、各ウェル中のビーズ上の正のシグナルは連続的に読みだされ、(したがってウェルの位置により同定される)および/もしくは、ビーズをコード化でき(例えばxMAP(商標)技術(Luminex Corp.Austin,Texas)またはVeraCode(商標)技術(Illumina,San Diego,CA)を使用)、単一のアッセイ中の複数の活性の検出が可能となる。このアッセイはウェル内で別々に実施してもよく、任意で、活性判定のための検出後にプールできる。
【0113】
さらに別の態様において、ウェルは不活性面であってもよく、異なる固定された構築物および/または捕獲剤を有する上記のように任意に標識した2つ以上のビーズを個々のウェルで混在させてもよい。例えば、個々のウェルには、固定された構築物を有するビーズ、および固定された捕獲剤を有するビーズがあってもよく、これは基質の切断または1ビーズ上での基質の競合的結合で他のビーズの捕獲剤に移動し、これがビーズの標識に関連したシグナルの発生により検出される。
【0114】
本発明のある態様において、切断産物または、競合的結合等によって構築物から除去された分子の拡散を促進するために、流体フローまたは他のタイプの能動輸送、例えば電気的な力での輸送を使用するこのような態様において、異なる構築物に対応する捕獲剤を、流体フローに基づいて、一般的に構築物の下流に設置してもよい。これらの態様は、異なる構築物と捕獲剤の間の潜在的な相互汚染を回避するため、スペーシングユニットを含む態様と合わせてもよい。
【0115】
単一の面を使用する本発明の態様において、例えば、平均化によるシグナル−ノイズ比を増加させるため、面上に単一の酵素基質の複数のコピーおよび/または捕獲剤の複数のコピーを有することも有益かもしれない。例えば、構築物の個々のコピーを複数を含む複数の特徴を使用してもよい。他の例において、面上の異なる領域において同一の分子の複数のコピーを使用できる。図20に図示した特定の態様のいくつかにおいて、1つの領域は隣接の領域に囲まれ、検出領域(または「リポーター領域」)を最大化する。態様には、単一の基質領域を囲む別々のリポーター領域2002、単一のリポーター領域を囲む別々の基質領域2004、連続的な基質領域2006に囲まれた単一のリポーター領域、および、連続的なリポーター領域2008に囲まれた単一の基質領域が含まれる。基質領域とリポーター領域の間の何も無い空領域は任意であり、面上の捕獲剤を検出するために使用する特定の検出メカニズムの制限に依存する。
【0116】
面上にくぼんだ領域、例えばウェルを含む態様において、基質領域は、ウェル内(および好ましくはウェルの底面に)にあってもよく、リポーター領域は、切断産物の捕獲を最
大化するためにウェルの側面、つまり、ウェルを囲む上部に、またはウェルそれ自体の内側に事実上であってもよい。この構成において、図20の底面の図は、ウェルの側面および/または底面を表し得る。
【0117】
他の態様は、本発明の開示を読めば当業者には明らかであろう。共通の特質の1つは、リポーター領域が、試料中の酵素活性への暴露における基質の切断に直接関連し得ることである。
【0118】
切断部位を同定するための質量分析法(MS)の使用
ある状況では、プロテアーゼ活性の確認後、ペプチド基質上のプロテアーゼ切断位置を同定することは重要である。本発明のある態様において、切断部位の位置を酵素基質の配列の領域上で質量分析器(「MS」)検出を使用して、検出できる。アッセイを行った後、MSを利用してリポーター領域を画像化し、MS測定のためのアッセイデータを取得できる。このような画像法を使用して、例えば酵素基質のプロテアーゼ切断後に残った切断フラグメントの分子量に関する情報を取得できる。よって、ペプチド基質内の切断部位を同定できる。いくつかの論文において、マイクロアレイをMS技術と併用する方法が記載されており(Isolaら、2001)(Brandtら、2003)(Yuら、2006)、マイクロアレイ上の相補配列にハイブリダイズするDNA断片の分子量を、質量分析を使用して測定できることが実証されている。
【0119】
本発明で使用する酵素
本発明のツールおよび方法は、直接的にまたは間接的に切断現象をもたらすあらゆる酵素の活性の検出に有益である。本発明のツールおよび方法を使用して検査することができる酵素には、プロテアーゼ、ホスファターゼ、ニッカーゼ、ヌクレアーゼおよびグリコシラーゼがあるがこれらに限定しない。
【0120】
プロテアーゼ
セリンプロテアーゼは、研究または治療目的のための合成化学阻害剤、および天然のタンパク質性阻害剤等の阻害剤の種々のグループにより抑制される。「セルピン」(セリンプロテアーゼ阻害剤の略)と呼ばれる天然の阻害剤の1ファミリーは、セリンプロテアーゼと共有結合を形成して、その機能を抑制できる。最も研究されたセルピンは抗トロンビンおよびα1−アンチトリプシンであり、血液凝固/血栓症および気腫/A1ATそれぞれで、その役割が研究された。人工の不可逆的な小型分子の阻害剤にはAEBSFとPMSFがある。
【0121】
プロテアソーム加水分解酵素は、スレオニンプロテアーゼのユニークなファミリーを構成する。保存されたN末端のスレオニンは、各活性部位で触媒作用に関与している。タンパク質前駆体として3つの触媒サブユニットが合成される。これはN末端が切断される場合に、スレオニンをN末端にして活性化する。細胞間隙面に触媒作用のあるスレオニンが出現する。
【0122】
システインプロテアーゼには触媒3残基で求核的なシステインのチオールに関与する共通の触媒メカニズムを有する。第一段階では、酵素の活性部位にあるチオールが塩基性側鎖を有する隣接するアミノ酸、通常ヒスチジン残基により脱プロトン化される。次のステップでは、脱プロトン化されたシステインのアニオン性硫黄により基質のカルボニル炭素を求核攻撃する。このステップで、基質のフラグメントがアミン末端として遊離し、プロテアーゼのヒスチジン残基が脱プロトン化された形態に回復し、基質の新しいカルボキシ末端をシステインチオールに結合するチオエステル中間体を形成する。続いてチオエステル結合が加水分解され、残る基質フラグメントのカルボン酸成分が発生し、遊離酵素が再生成する。システインプロテアーゼには例えばパパイン、カテプシン、カスパーゼおよび
カルパインがある。
【0123】
アスパラギン酸プロテアーゼは真核生物のプロテアーゼ酵素の一ファミリーであり、そのペプチド基質の触媒作用にアスパラギン酸残基を利用する。一般に、アスパラギン酸プロテアーゼは活性部位に高度に保存された2つのアスパラギン酸を有し、酸性pHで最適な活性を有する。ペプスタチンは既知のアスパルチルプロテアーゼのほとんどを阻害する。
【0124】
真核生物のアスパラギン酸プロテアーゼにはペプシン、カテプシンおよびレニンがある。これらには2つのドメイン構造があり、これは祖先遺伝子の重複に起因することがほぼ確実である。レトロウイルスおよびレトロトランスポゾンプロテアーゼはかなり低分子で、真核生物のアスパルチルプロテアーゼの単一のドメインに相同であるようである。
【0125】
メタロプロテイナーゼは、活性構造の一部に亜鉛イオンを含む、タンパク質を加水分解するエンドペプチダーゼの一ファミリーである。メタロプロテイナーゼには2つサブグループがあり、メタロエキソペプチダーゼとメタロエンドペプチダーゼがある。よく知られているメタロエンドペプチダーゼにはADAMタンパク質およびマトリックスメタロプロテイナーゼがある。
【0126】
ホスファターゼ
ホスファターゼは、リン酸モノエステルをリン酸イオンおよび遊離のヒドロキシル基を有する分子へ加水分解することで、その基質からリン酸基を除去する酵素である。ある状況において、ホスファターゼは、保護的なリン酸を除去することにより、別の酵素、例えばプロテアーゼに対するペプチド基質の感受性を改変することができる。例えば、分子アルファIIスペクトリンからリン酸を除去することにより、遍在性のCa2+依存性プロテアーゼであるカルパインにより切断されやすくなる。Nicolas Gら、Molecular and Cellular Biology,May 2002、p.3527−3536、Vol.22、No.10。
【0127】
本発明の構築物に使用する酵素基質の切断を増強するために使用できるホスファターゼは、基質特異性により分類できる。このホスファターゼには、チロシン特異的ホスファターゼ、セリン/トレオニン特異的ホスファターゼ、二重特異性ホスファターゼ(リン酸チロシン/セリン/トレオニン、ヒスチジンホスファターゼおよび脂質ホスファターゼを認識する)があるが、これらに限定しない。
【0128】
DNAグリコシラーゼ
態様のいくつかにおいて、DNAグリコシラーゼを使用して、塩基とデオキシリボースの間のN−グリコシド結合を切断し、酵素基質から幅広い領域のポリヌクレオチド塩基を除去できる。除去によって、脱塩基部位が生じる(例えばKrokanら、(1997)Biochem.J.325:1−16を参照のこと)。本発明に使用するDNAグリコシラーゼには、ウラシルDNAグリコシラーゼ、G/T(U)不適正塩基対DNAグリコシラーゼ、アルキル塩基DNAグリコシラーゼ、5−メチルシトシンDNAグリコシラーゼ、アデニン特異的不適正塩基対DNAグリコシラーゼ、酸化ピリミジン特異的DNAグリコシラーゼ、酸化プリン特異的DNAグリコシラーゼ、EndoVIII、EndoIX、ヒドロキシメチルDNAグリコシラーゼ、ホルミルウラシルDNAグリコシラーゼ、ピリミジン二量体DNAグリコシラーゼがあるがこれらに限定しない。
【0129】
ある態様において、核酸基質に合成的にウラシルを組み入れてチミンを置換してもよく、ウラシルはウラシルDNAグリコシラーゼで処理して除去できる(例えばKunkel,T.A.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:488−
492;Lindahl(1990)Mutat.Res.238:305−311;公開された米国特許出願公開第20050208538号明細書)。
【0130】
上記の各態様では、その後、核酸鎖上の脱塩基の部位を大腸菌(E.coli)エンドヌクレアーゼIVによって、切断してもよい。
制限エンドヌクレアーゼ
本発明のある態様において、本発明のツールおよび方法において使用される構築物は、制限エンドヌクレアーゼによる切断部位を含む。制限エンドヌクレアーゼは、制限部位として知られている特異的認識ヌクレオチド配列で、二本鎖または一本鎖の核酸酵素基質を切断できる酵素である。本発明のツールおよび方法は、制限エンドヌクレアーゼが切断する特異的制限部位を有する核酸酵素基質を含む構築物を利用して、試料内の制限エンドヌクレアーゼ活性を検出できる。制限エンドヌクレアーゼは、その組成物と酵素補因子の必要性、標的配列の性質、および標的配列に関連したそれらのDNA切断部位の位置に基づいて、3つの一般的なグループ(I、IIおよびIII型)に分類される。本発明の酵素基質の切断に使用する制限エンドヌクレアーゼの例には、REBASE(http://rebase.neb.com/rebase/rebase.html、制限エンドヌクレアーゼデータベース)で公開されているものがあるが、これらに限定しない。
【0131】
態様のいくつかにおいて、本発明の酵素基質は、I型エンドヌクレアーゼが切断する部位を含む。各酵素の切断部位は異なり、酵素の認識部位からいくらか(少なくとも1000bp)離れている。認識部位は非対称的で、3から4個のヌクレオチドを含む部分と、4から5個のヌクレオチドを含む部分との2つの部分からなり、約6から8個のヌクレオチドのスペーサーにより隔てられている。
【0132】
他の態様において、本発明の酵素基質は、II型エンドヌクレアーゼが切断する部位を含む。3000を超えるII型制限エンドヌクレアーゼが発見されている。これは、短く、通常回文構造の4から8bpの配列を認識し、Mg2+存在下、認識配列に隣接する、または認識配列内のDNAを切断する。一般的なII型酵素は回文構造部位を認識するホモダイマーである。
【0133】
ある他の態様において、本発明の酵素基質は、II型エンドヌクレアーゼが切断する部位を含む。代表的なII型制限エンドヌクレアーゼには、Eco57M I、Mme I、Acu I、Bpm I、BceA I、Bbv I、BciV I、BpuE I、BseM II、BseR I、Bsg I、BsmF I、BtgZ I、Eci I、EcoP15 I、Eco57M I、Fok I、Hga I、Hph I、Mbo
II、MnI I、SfaN I、TspDT I、TspDW I、Taq II等があるが、これらに限定しない。
【0134】
ニッカーゼ
関連する態様において、二本鎖の核酸酵素基質を切断するためにニッカーゼを使用できる。ニッカーゼは、二本鎖DNA内の特異的認識配列を認識し、前記認識配列に関する特異的な部位で1本の鎖を切断するエンドヌクレアーゼである。これにより二本鎖核酸の一本鎖に切れ目が生じる。一旦ニッカーゼにより基質の鎖が切断されれば、二本鎖基質を変性させるためにアッセイ条件を変更してもよい。また、ニックの入った鎖は自由に捕獲剤へ拡散でき、核酸分子の残りは面に固定し続ける。ニッカーゼには、Nb.BsrDI、Nb.Bsml、Nt.BbvCI、Nb.BbvCI、Nb.BtsIおよびNt.BstNBIがあるが、これらに限定しない。
【0135】
結合対の親和性
ペプチド結合対
ペプチド結合対の相互作用の強度は、所与の結合部位に対する、または、結合対の一方のメンバーの抗原決定基に対する、結合対の他方の「結合親和性」により特徴づけられる。例えば、免疫学の分野において、抗体は、所与の結合部位または抗原決定基に対する抗体の「結合親和性」により特徴づけられる。抗体はすべてアミノ酸の特別な3次元構造から成り、エピトープまたは抗原と呼ばれる別の構造に結合する。
【0136】
結合相手の組成物への選択的な結合は、単一の二分子による可逆反応であり、抗体の抗原への結合とは異なる。例えば、抗体をAbで、抗原をAgで表す場合、標準的な速度論によりこの反応を分析できる。単一の結合部位を想定すると、反応は以下のように等式Iにより表される:
【0137】
【数1】

式中Ag−Abは結合した複合体である。速度定数kおよびkは正結合反応と逆結合反応をそれぞれ表す。抗原に対する抗体の「結合親和力」は、平衡状態での遊離の反応体と生成物との比により測定する。平衡状態における反応体の濃度が低いほど、抗原に対する抗体の結合親和力は高い。免疫学の分野では、結合親和力は「結合定数」によって表され、シンボル「K」で表され、「K」と呼ばれることもある。「K」を等式IIにより以下のように定義する:
【0138】
【数2】

式中角括弧は、モル毎リットル、リットル毎モルの濃度を意味する。
【0139】
結合親和力Kの典型的な値は「K」とも呼ばれ、典型的な抗体の「結合定数」であるが、これは約10〜1011リットル毎モルの範囲にある。Kは、抗原を含む溶液中にある抗体の結合部位の半分と結合するために必要とされる遊離の抗原の濃度である。リットル毎モルで測定したK、つまり結合定数が高い場合(例えば1011)、溶媒が多く、遊離の抗原が非常に低濃度であることを意味し、したがって抗体が抗原決定基に対して高い結合親和力を所有していることが示される。
【0140】
リットル毎モルで測定したKが低い場合(例えば10−11)、抗体結合部位の半分と結合する必要がある遊離の抗原の濃縮溶液が少なく、したがって高い結合親和力を示す。
【0141】
を測定するために平衡状態を達成する。より具体的には、Kは、抗原に結合した抗体[Ag−Ab]の濃度が、抗体[Ab]の濃度と等しい時に測定する。したがって、[Ag−Ab]を[Ab]で割ると、1に等しくなる。
【0142】
よって、上記の等式IIは以下のように等式IIIに分解できる:
【0143】
【数3】

等式IIIにおいて、Kの単位はリットル毎モルである。リットル毎モルの典型的な値は、約10から約1011リットル毎モルの範囲である。
【0144】
上記の等式の逆数はK=[Ag]であり、Kの単位はモル毎リットルであり、典型的な値は、10−6から約10−12リットルの範囲である。
上記は、典型的な結合親和性が6桁超える範囲で変動することを示す。したがって、有益と考えられる抗体は、有益と考えられる別の抗体の結合親和力と比較して、100,000倍超の結合親和力を有している可能性がある。
【0145】
核酸結合対
核酸結合対および核酸結合対の塩基形成間の相補性の程度により、二本鎖のTが決定され、対のメンバー間のハイブリダイゼーションの強弱が決定されることとなる。ハイブリダイゼーションは、一本鎖の2つのポリヌクレオチドが非共有結合的に結合し、安定的な二本鎖のポリヌクレオチドを形成する過程を指す。本発明で使用する核酸結合対は、好ましくはストリンジェントな条件下つまり、結合対の一方が結合対のもう一方に選択的に結合する条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、様々な状況によって異なる。長いフラグメントほど特異的にハイブリダイズするために高い温度が必要である。他の因子、例えば相補鎖の塩基組成、長さ、有機溶媒の存在、および不適正塩基の程度がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを影響するため、パラメータの組合せは、ある1つの絶対尺度よりも重要である。一般的には、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおける特異的な配列のTより約5℃低い。代表的なストリンジェント条件は、pH7.0〜8.3、少なくとも25℃において、0.01Mから1M以下のナトリウムイオン(または他の塩の)濃度である。例えば5×SSPE(750mMの塩化ナトリウム、50mMのリン酸ナトリウム、5mMのEDTA、pH7.4)、温度25から30℃がアレル特異的なプローブハイブリダイゼーションに適切である。ストリンジェントな条件については、例えば、Sambrook、FritscheおよびManiatis.「Molecular Cloning:A laboratory Manual」2nd Ed.Cold Spring Harbor
Press (1989)ならびにAnderson「Nucleic Acid Hybridization」1st Ed.、BIOS Scientific Publishers Limited(1999)を参照のこと。「〜に特異的にハイブリダイズする」等の表現は、配列が混合物(例えば細胞内DNAおよび/またはRNAを含む試料)の中にある場合、ストリンジェントな条件下で、分子が実質的に、または特定のヌクレオチド配列もしくは配列のみと結合する、二重になる、ハイブリダイズすることを指す。
【0146】
実施例
以下の実施例は、本発明をいかにして作成及び使用するかの完全な開示及び記載を当業者に提供するために示されるものであり、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を制限するためのものではないし、下記の実験が実施した実験の全てや唯一のものであることを示す、または意味するためのものでない。当業者は、特定の実施形態において示したように、広く記載されている本発明の精神または範囲から逸脱せず本発明の多数のバリエーションおよび/または改変を作製し得ることを理解するだろう。したがって、本発明の実施形態は限定ではなく説明のために提示されたと考えられるべきである。
【0147】
使用された数(例えば、量、温度等)に関しては正確さを保証すべく努力がなされたが、いくつかの実験の誤差及び偏差は斟酌されるべきである。特記しない限り、部分は重量部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近の圧力である。
【0148】
実施例1:ペプチド合成
ペプチドは、Fmoc−glycine Wang樹脂固相担体(Advanced Chemtech)を使用して、フリットシリンジ内で手動でFmocベースのペプチド合成によって合成した。(Fieldsら、Biochemistry.1990 Jul 17;29(28):6670−7;Chan Dら、J Cell Physiol.2000 Dec;185(3):339−47)。Fmoc−L−プロパルギルグリシン(Advanced Chemtech)をペプチド合成の第一段階で使用し、ペプチドのC末端でアルキン基を導入した。Fmoc−Lys(biotin)−OH(EMD Chemicals)をN末端のビオチン残基を導入するために最終アミノ酸として使用した。ペプチド合成後、Fmocを脱保護し、蛍光色素(6−カルボキシ−テトラメチルローダミン、TAMRA、EMD Chemicals)と結合させた。ペプチドの分子量を、ProteinPlex SELDIレーザ脱離/イオン化法TOF質量分析法ベースの分析システム(Bio−Rad)で確認した。我々はモデルペプチドとして、TEVおよびトロンビンプロテアーゼを標的とするペプチド基質GAENLYFQGAおよびGALVPRGSAGを使用した。プロテアーゼ認識部位は太字で示す。N末端とC末端のアミノ酸残基をこのペプチドに追加して追加のスペースを作り、より効果的なプロテアーゼ結合を実現した。
【0149】
ペプチドをC末端で固相担体に付着させた。プロテアーゼ分析がこの向きでよく働くことが知られている。(Salisbury CMら、J Am Chem Soc.2002 Dec 18;124(50):14868−70.2002)。得られたペプチド基質は溶液内でTEVおよびトロンビンプロテアーゼによって特異的に切断されることが確認された。個々のペプチドは溶液内で切断され、切断反応産物はレーザ脱離/イオン化法TOF質量分析法を使用して解析された。分子量は計算値に一致していた。TEVプロテアーゼ(20U/μl)によりTEVペプチド基質は完全に切断されたことが確認されたが、トロンビンペプチド基質は切断されなかった。トロンビンプロテアーゼ(200nM)は特異的にトロンビンペプチドを切断したがTEVペプチドの切断は検出できなかった。
【0150】
実施例2:基質スライドの調製
標準的な75×25mm顕微鏡スライドを2面アッセイツールを実施するために使用した。一方のスライドはペプチド基質を含み(「基質」スライド)、他方のスライドは捕獲剤を含む(「リポーター」スライド)。これらを一緒にして2面アッセイツールを形成する。
【0151】
非タンパク質のポリエチレングリコール(PEG)リンカーを有する顕微鏡スライドを下記の方法で作製した。ESアミノスライド(Erie Scientific)を、0.1MのPyBop(EMD Chemicals)および0.2MのN,N−ジイソプロピルエチルアミン含有DMF中、N3−(PEG)7−COOH(O(2−アジドエチル)−O’−(N−ジグルコイル−2−アミノエチル)ヘプタエチレングリコール(EMD Chemicals)0.1Mで室温で一晩処理した。続いてDMF(3回)および水(3回)でスライドを洗浄した。この33−atomsPEGリンカーによりスライド表面にアジド基を直接導入した。ペプチド固定化中に非特異的なペプチドの吸収を防ぐため、基質スライドを、フィコール400、PVP40(ポリビニルピロリドン、40kDa MW)、PEG3350および8000(ポリエチレングリコール)を、1×PBS
中各0.02%で含む非タンパク質ブロッキング溶液で室温にて1時間でブロックした。
【0152】
両スライドを、直接暴露させて(物理的なスペーサーを使用せず、分析の総容積により、スライド間の間隔を決定した。例えば、30μLは、およそ15μmの間隙となる。)または、90μm厚のポリマーシートを切ったダイにより製作した物理的なスペーサーを使用して分析した。スライド間に所定の隙間を設ける多数の方法があり、標準的な製造工程、例えば、レーザ切断、ダイ切断、機械加工によってスライド間に設置するスペーサーを作製できる。製造工程は上記に限定しない。標準的な製作方法を使用して、スライド上で直接物理的なスペーサーを容易に製作できる。この方法には、シルクスクリーニング、スピンコーティング、フォトリソグラフィおよび微細加工(例えば表面からの材料の除去または表面への付加)があるが、これらに限定されない。
【0153】
一旦、基質スライドの調製とペプチド固定化のプロセスを最適化したら、基質スライドを8個に切断し、このうちの4つを標準サイズのリポータースライド毎に1つ使用して、1つのリポータースライド毎に4つの異なるプロテアーゼサンプルを供与する。スライド切断用の一般的なダイアモンドガラスカッターまたはレーザ彫刻技術のいずれかで基質スライドを切断し、ペーパークリップを使用して2面アッセイツールを一緒に保持した。レーザは、基質スライドの表面上をエッチングして標識し、スライドの上面および底面を判別できるという利点を有していた。さらに、アッセイツールスライド(図21)を組み合わせるためにカートリッジを設計し製作した。これにより面ペア2102および2104を迅速に組み合わせ、アッセイの変動性を減少させて、基質スライド当たりの試料の容積を5μlに減少できる。
【0154】
「クリックケミストリー」のプロセスを用いて、顕微鏡のスライド上でペプチドまたはDNAペプチド複合体を固定化した。あらかじめ得た公表された実験条件(KoIb HCら、Angew Chem Int Ed Engl.2001 Jun1;40(11):2004−2021.HCら、Drug Discov Today.2003 Dec 15;8(24):1128−37.Review.2001;Zhangら、Anal Chem.2006 Mar 15;78(6):2001−8;Loaizaら、J Comb Chem.2006 Mar−Apr;8(2):252−61;Sohma YおよびKiso Y、Chembiochem.2006 Oct;7(10):1549−57;Rengifo、H.R.ら、Langmuir 2008,24,7450−7456.)を、アジド基を含む基質の顕微鏡スライドにアルキン基含有ペプチドを効果的に固定化するためにさらに最適化した。ESアミノスライド(Erie Scientific)を表面にアジド基を有するスライドに変換した。我々は、固相表面上のペプチドの位置決めがプロテアーゼによる切断の効率に関する重要な因子であることを観察した。これは今までに公表されたデータ(Macbeath Science,289:1760(2000)に一致しており、タンパク質のBSAリンカー、またはPEGリンカーを有するスライドではペプチドが効果的に切断されるが、固定化されたペプチドと表面の間に短いリンカーを有するアジドスライドでは、プロテアーゼによるペプチド基質の切断は不十分であった。BSAとPEGリンカーの切断結果には検出可能な差異はなかった。しかしながら、PEGリンカーを組み込むプロセスはあまり複雑ではなく、偽切断を受ける可能性は少ない。したがってPEGリンカーを下記の実験に使用した。ニュートラアビジンをコートした顕微鏡スライドガラスをリポータースライドとした。
【0155】
実施例3:ペプチドの固定化
ペプチドを、20%DMSO、10mMのCuSO4、および50mMのアスコルビン酸ナトリウムを含む0.1Mトリス塩酸塩緩衝液pH7.5に2μMの濃度で溶解させた。スポッティング後、加湿容器内、室温、12時間固定化反応を進めた。DMF、DMSOおよび0.01%のTween20を含む50mMトリス塩酸塩(pH7.5)で、洗
浄溶液毎に30分スライドを洗浄し、水、エタノールでリンスし乾燥させた。ペプチドを、標準的な0.1−2μl実験用ピペッター(Eppendorf)を用いて手動でスライド上に滴下しスポットを形成させた(1スポット当たり0.1μl)。これにより、およそ800μm径を有するスポットができた。
【0156】
実施例4:ニュートラアビジンリポータースライドの調製
エポキシ基を含む顕微鏡スライド(Erie Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.4中ニュートラアビジン溶液(5mg/ml、Pierce)で加湿容器内で室温にて18時間保持して処理し、0.5Mエタノールアミン溶液で室温にて1時間保持しブロックして、残りのエポキシ基を不活性化させ、プロテアーゼアッセイ中に非特異的なタンパク質の吸収を防ぐため、フィコール400、PVP40(ポリビニルピロリドン、40kDa MW)、PEG3350および8000(ポリエチレングリコール)を、1×PBS中各0.02%で含む非タンパク質ブロッキング溶液で室温にて1時間保持しブロックした。スライドを、上述の固定化/ブロッキングのステップの間に水で3回洗浄した。最後にスライドを、0.01%のTween−20を含む1×PBS緩衝液で3回洗浄し、1×PBSで3回洗浄し、使用するまで1×PBS緩衝液中で冷蔵庫で保管した。
【0157】
実施例5:GOSアレイペアを使用するペプチド切断の検出
2つの酵素、TEVおよびトロンビンを使用した切断と検出の特異性を示すためにサンドイッチアッセイツールを使用した。図22に示す。ツールには、TEVまたはトロンビンを認識するためのペプチドコンストラクトを含む。アレイ上のスポットにあるペプチドコンストラクトはそれぞれトロンビン切断部位またはTEV切断スポットのいずれかを含む。アッセイツールの第1面は特定のペプチドコンストラクトを含むが、これは固定化されたペプチドであり、これに付着した色素標識した20−merのDNA配列を有する。アッセイツールのこの第2面は、固定化した20−merのオリゴヌクレオチド(小円として示した)があり、これは第2面に隣接して設置したペプチド構築物に付着した配列に相補的である。ペプチドコンストラクトは、これに付着した色素標識した20−merのDNA配列を含むが、これはペプチドコンストラクトの切断により放出され、リポーター領域に付着した配列に相補的である。プロテアーゼがペプチドを切断する場合、標識されたDNAを含むペプチドの切断部分はリポーター領域へ拡散し、切断部分に相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして、リポーター領域の蛍光性スポットを形成することとなる。
【0158】
TEV(Promega)またはトロンビン(EMD Chemicals)プロテアーゼを対応する緩衝液内に含む溶液を、固定化したペプチドを有する基質スライド面とリポータースライド面の間に置いた。図21で示したスライドカートリッジを使用して、GOSアッセイツールの面のペアを組み立てた。組み立てたカートリッジを30℃で加湿容器内でインキュベートした。反応後、GOSアレイペアを分解し、リポータースライドを洗浄し、乾燥させて、スキャンした。A PE ScanArray Liteマイクロアレイ読み取り装置を使用して、5μm解像度および543nmおよび633nmの励起でペプチドアレイを有する顕微鏡スライドをスキャンした。
【0159】
アレイをTEVまたはトロンビンプロテアーゼで処理した場合、対応する面から強いシグナルが検出され、アレイをTEVプロテアーゼで処理した場合、トロンビンペプチド基質から非常に弱いシグナルが検出され、逆の場合も同様であった(図22および23)。プロテアーゼを取り除いて、緩衝液のみでアレイを処理した場合、同様に弱いレベルのバックグラウンドシグナルが検出された。ペプチドの固定化に先立って非タンパク質のブロッキング溶液を使用して、効果的に固定化できるが、大量のペプチドを供給してスライド上に非共有結合性の固着を生じさせることのないペプチド濃度を選択し、および/または
、固定化後にスライド表面から反応しないペプチドを効果的に確実に除去できる高度な洗浄方法を確立することで、この非特異的なシグナルをさらに減少させることができる。図24で証明したように、このような最適化技術によりバックグラウンドを著しく減少させることができた。アッセイにおいて約28のシグナル対雑音比(S/N)を達成したが、これは基質スライドでシグナルロスで測定された、従来のシグナルロスアッセイのS/Nより10倍超高く、個々のペプチド基質(図25)を使用する技術での比較可能な検出限界である。
【0160】
10の同一のペプチドアレイをトロンビンプロテアーゼの同一の溶液で処理してアッセイの再現性を評価した。ペプチドアレイにはTEVおよびトロンビンプロテアーゼ基質の各々で4つのスポットを有する。アレイ内およびアレイ間のシグナルを比較し、ANOVA分析により、アレイバリエーションに対するアレイは高度に有意(p<5.0e−07)で、バリエーションの76%を占めることが示された。
【0161】
ダイナミックレンジと検出限界
アッセイツールの検出限界(LOD)は、TEVおよびトロンビンプロテアーゼ基質アレイを異なる濃度のトロンビンプロテアーゼで処理することにより決定した(図25)。LODを、シグナルがバックグラウンドの標準偏差の3倍以上に対応する最小のプロテアーゼ濃度として決定した。算定されたLODは5.3nM未満である。シグナルゲインのプロテアーゼ活性アッセイでのトロンビンプロテアーゼのLODは、金ナノ粒子とアプタマーを結合させて使用するトロンビンの比色検出より少なくとも4倍優れており、(Pavlov Vら、J Am Chem Soc.2004 Sep 29;126(38):11768−9)蛍光高分子電解質に基づいた単一のプロテアーゼ活性アッセイで報告された(Pinto MR、Proc Natl Acad Sci USA.2004 May 18;101(20):7505−10.Epub 2004(May 10)または、金ナノ粒子ベースの検出(Guarise Cら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Mar 14;103(11):3978−82.Epub 200 Mar 1)のLODと類似している。
【0162】
シグナルゲインアッセイとのシグナルロスアッセイの性能比較
シグナルゲイン(GOS)アッセイと従来のシグナルロス(LOS)アッセイとの性能を、捕獲剤を含むスライドと切断可能なペプチド構築物を含む基質スライドの両方を画像化して、我々のアッセイシステムで比較した。捕獲剤を含む第1の基質スライドのデータをGOSアッセイに使用し、TEV(2502)およびトロンビン(2504)の両方のペプチド構築物−基質を含む第2の基質スライドのデータをLOSアッセイに使用した。基質スライドを2回スキャンした。1回目のスキャンを、ベースラインを得るためにプロテアーゼ含有試料への暴露の前に実行した。プロテアーゼでの処理後に2回目のスキャンを行った。プロテアーゼによりペプチド基質が切断される場合、2回目のスキャンでは強度が減少することが予想される。その後、トロンビンプロテアーゼでアレイを処理した。
【0163】
両アッセイを行う間、GOSアッセイでは、シグナルとバックグラウンドの間により大きな有意差が生じた。対応のあるt検定により、前後のシグナルの比較でLOSアッセイでは、p<2.3e−03が得られ、GOSアッセイではp<2.2e−06が得られた。GOSアッセイでは、S/N=27.9が算定され、従来のLOSアッセイではS/N=2.3であった。S/Nは(シグナルゲイン)/標準偏差(バックグラウンド)=(平均リポーターシグナル−平均バックグラウンドシグナル)/標準偏差(バックグラウンド)として定義し、LOSアッセイではS/Nを(シグナルのロス)/標準偏差(反応前のシグナル)と定義した。したがって、図25に示したデータにより、従来の(LOS)アッセイと比較して、新しいシグナルゲイン(GOS)アッセイのS/Nは10倍超高い。
【0164】
GOSアッセイと活性ベースのプロテオミクスのプロファイリングとの比較
活性ベースのプロテオミクスのプロファイリングでは酵素の活性サイトに共有結合できるプローブを使用する(Cravattら、Annu Rev Biochem.2008;77:383−414)。これは非常に有益なアプローチであるが、しかしいくつかの制限がある:(1)プロテアーゼ構造に大きな違いがあると、酵素の全クラスのプロファイリングを目指す低分子プローブの範囲が限定される;(2)ある細胞タスクを実施するために必要とされるプロテアーゼの正味量が低い場合、低感受性が認められ、高濃度の不活性(例えばチモーゲン、阻害剤結合)酵素のバックグラウンドが生じる;(3)プロテアーゼの中には、架橋効率が低いものがあり、パラメータもプローブの反応基を取り巻くタンパク質の微小環境に依存して、酵素により変化する;(4)活性プローブは自滅抑制剤であり、したがって、感受性は酵素の処理能力がないため制限される。本発明のアッセイツールおよびアッセイにはこのような制限はなく、したがって、活性ベースのプロテオミクスのプロファイリング技術のためのプローブの選択を含む、様々な適用に関して、特定の天然のおよび非天然のプロテアーゼペプチド基質のスクリーニングが可能である。
【0165】
最後に、トロンビンプロテアーゼ(<5.3nM)の検出限界(LOD)を決定することにより、アッセイシステムの性能を確かめた。結果、新しいシグナルゲイン(GOS)分析のS/Nは、従来のLOSシグナル分析フォーマットのS/Nよりも10倍超であることが見出された。
【0166】
本発明の好ましい実施形態に関連して詳細に記述したように、本発明を様々な形態の実施形態で実施できるが、本発明の開示は本発明の原理の代表的なものとして考えるべきであり、本発明を、本明細書で図示および記述した特定の実施形態に限定することを意図しない。本発明の精神からの逸脱しない限り、当業者は多数のバリエーションを製作してもよい。本発明の範囲は、対応する実用特許およびその等価物の請求項により、定義されるであろう。要約と名称は、関係当局および一般市民が本発明の一般的な特徴を迅速に特定できることを目的としており、本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。以下の請求項において、用語「方法」が使用されない限り、請求項に記載された特徴または要素のいずれも、米国特許法第112条パラグラフ6に準ずるミーンズプラスファンクションによる限定と解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の生物学的または化学的な活性を検出するためのアッセイツールであって、
遊離可能な構成要素を含む、少なくとも2つの異なる固定された構築物からなる構築物のセット、および
捕獲面
を含み、
前記固定された構築物を、生物学的または化学的な活性に暴露させると、前記固定された構築物の1つまたは複数から遊離可能な構成要素が遊離し得、前記捕獲面と遊離可能な構成要素との相互作用により、直接的にまたは間接的に正のシグナルの発生が可能となる、アッセイツール。
【請求項2】
前記正のシグナルが、前記捕獲面に結合された遊離可能な構成要素を含む1つまたは複数の固定された構築物を同定する、請求項1に記載のアッセイツール。
【請求項3】
前記捕獲面が、前記遊離可能な構成要素の捕獲のための1つまたは複数の捕獲剤を含む、請求項1に記載のアッセイツール。
【請求項4】
前記遊離可能な構成要素が、前記捕獲面上の捕獲剤に選択的に結合する親和性領域を含む、請求項3に記載のアッセイツール。
【請求項5】
置換現象が酵素的な切断を含む、請求項1に記載のアッセイツール。
【請求項6】
前記酵素的な切断がプロテアーゼによる切断である、請求項5に記載のアッセイツール。
【請求項7】
試料中の活性を検出するためのアッセイツールにおいて、
少なくとも2つの異なる固定された構築物からなる構築物のセットであって、前記構築物が切断剤基質領域、親和性領域および検出可能なマーカーを含み、前記構築物の誘導切断が起こると、構築物の親和性領域および検出可能なマーカーが該構築物から遊離する、構築物のセット、および
捕獲面
を含み、
遊離した親和性領域および検出可能なマーカーが捕獲面上に直接的にまたは間接的に結合することにより、前記捕獲面上で正のシグナルの発生が可能となる、アッセイツール。
【請求項8】
前記構築物のセットの構築物は同じ切断剤に対する基質領域を含む、請求項7に記載のツール。
【請求項9】
前記構築物のセットの構築物は異なる切断剤に対する基質領域を含む、請求項7に記載のツール。
【請求項10】
試料中の切断剤活性を検出するためのアッセイツールであって、
切断剤基質および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットを有する面、および
前記基質の切断および前記検出可能なマーカーを含む遊離した構成要素が捕獲面へ結合する際に、検出可能な正のシグナルを生成する前記捕獲面、
を含む、アッセイツール。
【請求項11】
前記捕獲面が、前記遊離した構成要素に選択的に結合する1つまたは複数の捕獲剤を含
む、請求項10に記載のツール。
【請求項12】
前記固定された構築物が、前記検出可能なマーカーに関連した親和性領域を含み、前記捕獲剤が前記構築物の前記遊離可能な構成要素の前記親和性領域に選択的に結合する、請求項10に記載のツール。
【請求項13】
前記捕獲面上の前記捕獲剤が実質的に同一である、請求項10に記載のツール。
【請求項14】
前記捕獲面上の前記捕獲剤が2つ以上の異なる捕獲剤を含む、請求項10に記載のツール。
【請求項15】
前記構築物のセットの2つ以上の構築物が異なる検出可能なマーカーを含む、請求項10に記載のツール。
【請求項16】
前記構築物のセットの2つ以上の構築物の前記検出可能なマーカーが実質的に同一である、請求項10に記載のツール
【請求項17】
前記捕獲面が核酸捕獲剤を含み、前記検出可能なマーカーが前記捕獲剤に相補的な核酸親和性領域に関連したマーカーである、請求項10に記載のツール。
【請求項18】
前記捕獲面がタンパク質捕獲剤を含み、前記検出可能なマーカーが前記捕獲剤に特異的に結合するタンパク質親和性領域に関連したマーカーである、請求項10に記載のツール。
【請求項19】
前記構築物のセットのサブセット同士が前記面上で物理的に隔てられている、請求項9に記載のツール。
【請求項20】
試料中の切断剤の活性を検出するためのアッセイツールであって、
切断剤基質、親和性領域、および検出可能なマーカーを含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセット、および
捕獲面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセット
を含み、
第1面と第2面が近接しているため、前記第2面上で検出可能なマーカーが特定の捕獲剤に結合することにより生成された正のシグナルを検出できる、アッセイツール。
【請求項21】
前記構築物がペプチド基質を含む、請求項20に記載のツール。
【請求項22】
前記構築物が核酸基質を含む、請求項20に記載のツール。
【請求項23】
前記面の少なくとも1つがビーズである、請求項20に記載のツール。
【請求項24】
両方の面がビーズである、請求項23に記載のツール。
【請求項25】
前記ビーズがコード化されている、請求項23に記載のツール。
【請求項26】
前記固定された構築物のセットのサブセット同士が物理的に隔てられた領域に設置される、請求項20に記載のツール。
【請求項27】
前記構築物が第1面上に固定され、前記捕獲面が第2面である、請求項20に記載のツール。
【請求項28】
前記第1面と前記第2面の間の1つまたは複数の障壁により、前記構築物と前記捕獲剤が物理的に隔てられた領域に設置される、請求項27に記載のツール。
【請求項29】
前記捕獲面が実質的に同一の捕獲剤を含む、請求項20に記載のツール。
【請求項30】
前記捕獲面が2つ以上の異なる捕獲剤を含む、請求項20に記載のツール。
【請求項31】
前記構築物のセットの2つ以上の構築物が異なる検出可能なマーカーを含む、請求項20に記載のツール。
【請求項32】
前記構築物のセットの2つ以上の構築物の前記検出可能なマーカーが実質的に同一である、請求項20に記載のツール。
【請求項33】
前記捕獲面が核酸捕獲剤を含み、前記検出可能なマーカーが前記捕獲剤に相補的な核酸親和性領域に関連したマーカーである、請求項20に記載のツール。
【請求項34】
前記捕獲面がタンパク質捕獲剤を含み、前記検出可能なマーカーが前記捕獲剤に特異的に結合するタンパク質親和性領域に関連したマーカーである、請求項14に記載のツール。
【請求項35】
試料中の切断剤の活性を検出するためのアッセイツールであって、
2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットを含む面を含み、前記構築物は、検出可能な複合マーカーの第1構成要素に関連した親和性領域、検出可能な複合マーカーの第2構成要素に関連した捕獲剤、および前記親和性領域と前記捕獲剤の間にある、切断剤による切断のための基質を含み、
前記親和性領域が前記基質の切断後に前記捕獲剤に結合し、前記親和性領域の前記捕獲剤への前記結合により、前記検出可能な複合マーカーの前記第1および前記第2構成要素の相互作用によって正のシグナルを生成する、アッセイツール。
【請求項36】
試料中の分子の競合的結合を検出するためのアッセイツールであって、
親和性領域、および前記親和性領域に結合される検出可能なマーカーを含む作用剤を含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットと、
前記構築物の近接に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットと、
を含む面を含み、
競合的結合および前記作用剤の前記親和性領域からの遊離の際に検出可能な正のシグナルを生成する、アッセイツール。
【請求項37】
試料中の分子の競合的結合を検出するためのアッセイツールであって、
親和性領域、および前記親和性領域に結合する検出可能なマーカーを含む作用剤を含む、第1面に固定された2つ以上の構築物からなる構築物のセットと、
第2面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットと、
を含み、
前記第1面および前記第2面により、競合的結合および前記作用剤の前記親和性領域からの遊離により生成された正のシグナルを検出できる、アッセイツール。
【請求項38】
試料中の酵素の活性を検出するためのアッセイツールであって、
酵素基質、および親和性領域と検出可能なマーカーを含む遊離可能な構成要素を含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットと、
前記遊離した遊離可能な構成要素の結合の際に検出可能な正のシグナルを生成する、固
定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットを含む面と、
を含むアッセイツール。
【請求項39】
試料中の酵素の活性を検出するためのアッセイツールであって、
酵素基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、第1面に固定された2つ以上の構築物からなる構築物のセットと、
第2面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットと、
を含み、
前記第1面と前記第2面により、前記第2面上で検出可能なマーカーが特定の捕獲剤へ結合することにより生成された正のシグナルを検出できる、アッセイツール。
【請求項40】
試料中の切断剤活性を検出するための方法において、
面を提供する工程であって、該面は、
切断剤基質、および親和性領域と検出可能なマーカーを含む遊離可能な構成要素を含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットと、
遊離可能な構成要素の結合の際に検出可能な正のシグナルを生成する、固定化された捕獲剤からなる捕獲剤のセットとを含む、面を提供する工程と、
前記試料中の切断剤が前記構築物上に作用できる条件下で前記面を前記試料に暴露させる工程と、
遊離可能な構成要素の捕獲剤への結合により前記面上で発生する1つまたは複数の正のシグナルを直接検出する工程と、を含み、
検出された正のシグナルは、前記試料中の前記切断剤の活性を示す、方法。
【請求項41】
試料中の切断剤活性を検出するための方法において、
アッセイツールを提供する工程であって、該アッセイツールは、
切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、第1面に固定された2つ以上の構築物からなる構築物のセットと、
第2面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットと、を含み、
前記第1面と前記第2面が近接しているため、前記第2面上で検出可能なマーカーが特定の捕獲剤に結合することにより生成した正のシグナルを検出できる、アッセイツールを提供する工程と、
試料中の切断剤が前記構築物上に作用できる条件下で前記面を試料に暴露させる工程と、
前記試料中の前記構築物での前記切断剤の活性により前記面上で発生する1つまたは複数の正のシグナルを直接検出する工程と、を含み、
検出された正のシグナルは、前記試料中の切断剤の活性を示す、方法。
【請求項42】
試料中の競合的結合を検出するための方法において、
面を提供する工程であって、該面は、
親和性領域、および前記親和性領域に結合する検出可能なマーカーを含む作用剤を含む2つ以上の固定された構築物からなる構築物のセットと、
前記構築物に近接して固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットとを含み、競合的結合および前記作用剤の前記親和性領域からの遊離の際に検出可能な正のシグナルを生成する、面を提供する工程と、
試料中の作用剤が前記構築物に結合できる条件下で前記試料を前記面に暴露させる工程と、
前記試料中の前記作用剤の競合的結合により前記面上で発生する1つまたは複数の正のシグナルを直接検出する工程と、を含み、
検出された正のシグナルは、前記試料中の作用剤の前記競合的結合活性を示す、方法。
【請求項43】
試料中の競合的結合を検出するための方法において、
アッセイツールを提供する工程であって、該アッセイツールは、
親和性領域、および前記親和性領域に結合する検出可能なマーカーを含む作用剤を含む、第1面に固定された2つ以上の構築物からなる構築物のセットと、
第2面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットとを含み、前記第1面と前記第2面が近接しているため、競合的結合および前記作用剤の前記親和性領域からの遊離により発生した正のシグナルを検出できる、アッセイツールを提供する工程と、
試料中の作用剤が前記構築物に結合できる条件下で前記面を試料に暴露させる工程と、
前記試料中の前記作用剤の競合的結合により面上で発生する1つまたは複数の正のシグナルを直接検出する工程と、を含み、
検出された正のシグナルが、前記試料中の作用剤の競合的結合活性を示す、方法。
【請求項44】
酵素活性の調節物質を検出するための方法において、
アッセイツールを提供する工程であって、該アッセイツールは、
切断剤基質、親和性領域および検出可能なマーカーを含む、第1面に固定された2つ以上の構築物からなる構築物のセットと、第2面に固定された捕獲剤からなる捕獲剤のセットとを含み、前記第1面と前記第2面が近接しているため、前記第2面上で検出可能なマーカーが特定の捕獲剤に結合することにより生成した正のシグナルを検出できる、アッセイツールを提供する工程と、
前記試料中の切断剤が前記構築物に作用できる条件下で、酵素および酵素の調節物質または、推定調節物質に前記面を暴露させる工程と、
前記試料中の前記構築物上での前記切断剤の活性により生成した前記面上の1つまたは複数の正のシグナルを検出する工程と、を含み、
前記酵素活性の修飾を、正のシグナルが検出されるか否かで検出できる、方法。
【請求項45】
前記調節物質または前記推定調節物質が酵素活性の阻害剤である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記調節物質または前記推定調節物質が酵素活性の活性剤である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記調節物質の存在下、前記酵素により生成された前記正のシグナルを、前記調節物質の非存在下、同一の切断剤基質上で前記酵素により生成された前記正のシグナルと比較する工程をさらに含む、請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図22】
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【公表番号】特表2013−500725(P2013−500725A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523126(P2012−523126)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/044134
【国際公開番号】WO2011/014879
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512026008)プログノシス バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PROGNOSYS BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】