説明

アディポネクチンプロモーターおよびその用途

ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むプロモーター領域を有するDNA、そのDNAで形質転換された形質転換体、その形質転換体を用いるヒトアディポネクチンプロモーター活性促進化合物のスクリーニング法およびスクリーニング用キット、その形質転換体を用いるシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、内臓脂肪症候群等の症候群、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症等の代謝異常疾患、高脂血症、動脈硬化症、高血圧、循環器系疾患、過食症等の予防/治療薬のスクリーニング法、及びそれらを用いて得られる医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、遺伝子発現用新規レギュレーター塩基配列を含むプロモーターおよびその用途に関する。具体的には、ヒトアディポネクチン遺伝子レギュレーター配列を含むプロモーター領域を含有するDNA、当該DNAで形質転換された形質転換体、当該レギュレーター配列を介してアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法などに関する。
従来技術
脂肪組織は、従来脂肪を蓄える受動的な組織であるとされていたが、近年、様々な生理活性因子を活発に生産、分泌する内分泌組織であると捉えられている。脂肪組織を形成する脂肪細胞はアディポサイトカインといわれる種々の生理活性因子を分泌し、全身の糖・脂質代謝制御に重大な役割をはたしていることが近年明らかにされている(Nature,414巻,2001年,799−806頁参照)。アディポネクチンは、ヒト脂肪細胞に最も豊富に発現する遺伝子として、またホルモンとして同定された(Biochemical and Biophysical Research Communication,221巻,1996年,286−289頁参照)。アディポネクチンは脂肪細胞特異的に産生、分泌され、血中に豊富に存在する。数多くの研究結果から、アディポネクチンは抗糖尿病、抗動脈硬化、抗肥満作用を有するホルモンであり、代謝疾患の発症、進展に深く関与することが示されている。例えば、血漿アディポネクチン濃度は、虚血性心疾患やインスリン抵抗性糖尿病を有する患者において低下している(Circulation,100巻,1999年,2473−2476頁、Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology,20巻,2000年,1595−1599頁参照)。一方、アディポネクチン遺伝子に変異を有する患者において、血漿アディポネクチン濃度の低下は、インスリン抵抗性糖尿病や動脈硬化の発症と相関していた(Diabetes,51巻,2002年,2325−2328頁参照)。食餌性に惹起された肥満サルにおいて、血漿アディポネクチン濃度は経年的に低下したが、その変化はインスリン抵抗性の悪化と極めてよく相関していた(Diabetes,50巻,2001年,1126−1133頁参照)。また、アディポネクチン遺伝子を欠損したマウスにおいては、高ショ糖、高脂肪食の負荷により糖尿病が惹起され、動脈に傷害を与えた際の動脈肥厚が著しく亢進していた。それらマウスにアデノウィルスを用いて外来性にアディポネクチン遺伝子を補充すると、病変は著明に改善した(Nature Medicine,8巻,2002年,731−737頁、Journal of Biological Chemistry,277巻,2002年,37487−37491頁参照)。アポリポタンパク質Eを欠損したマウスにおいては、アデノウィルスを用いてアディポネクチン遺伝子を投与すると、動脈硬化の進展が抑制された(Circulation,106巻,2002年,2767−2770頁参照)。代謝異常マウスへ組み換えアディポネクチンタンパク質を投与すると、インスリン抵抗性の改善や血糖降下作用が認められた(Nature Medicine,7巻,2001年,941−946頁、Nature Medicine,7巻,2001年,947−953頁参照)。これら事実に基づき、低アディポネクチン血症を伴う代謝異常症候群の患者の血漿アディポネクチン濃度を上昇させる治療は、病態の改善に有効であると考えられる。しかしながら、ヒトにおけるアディポネクチンの血漿中濃度は5〜20μg/mlであり(Biochemical and Biophysical Research Communication,257巻,1999年,79−83頁参照)、他の血中ホルモンと比較すると絶対量として極めて高い水準にある。この点を考慮すると、血漿アディポネクチン濃度の低下した患者において、血漿濃度の正常化を目指した組み換えアディポネクチンタンパク質の補充療法は、該タンパク質の持続的高用量投与や、該タンパク質の生体内酵素分解などの防止を含め種々の大きな困難を伴うものと考えられる。
【発明の開示】
生体において、タンパク質の産生は様々な段階で制御されうるが、そのうち最も根源的であるのは遺伝子からメッセンジャーRNAへの転写段階である。疾患関連遺伝子の発現調節を通じてその産物であるタンパク質の量を変化させ、病態改善を図る治療法は、有力な手段のひとつである。転写制御は、メッセンジャーRNAへ転写される塩基配列の近傍に位置するプロモーター領域やエンハンサー領域によりなされ、特に、プロモーター領域内に存在するレギュレーター配列と呼ばれる塩基配列に、転写制御因子として特定のタンパク質が結合することが重要である。それら転写制御因子の中には、低分子量の分子(リガンド)と結合することにより、その作用を発揮する核内受容体と呼ばれる一群のタンパク質が含まれる。例えば、脂肪細胞分化に重要な核内受容体であるPPARγ(Peroxisome Proliferator−Activated Receptorγ)は、別の核内受容体RXR(Retinoid X Receptor)と二量体を形成し、遺伝子のプロモーター領域内にあるレギュレーター配列PPRE(Peroxisome Proliferator−activated receptor Responsive Element)に特異的に結合して転写を調節する。PPARγは、未だ特定されていない内因性のリガンド、あるいはチアゾリジンジオン誘導体のような外来性のリガンドにより活性化される(Annu.Rev.Biochem.,70,341−367(2001))。レギュレーター配列PPREは、5’−AGGTCA n AGGTCA−3’に代表される特徴的な塩基配列で構成されているが、PPREを有する遺伝子の種類によりその塩基配列は若干異なっている。ある遺伝子の発現を調節することによってそのタンパク質産生量を変化させ病態改善を図る薬剤を創製するに当たって、遺伝子のプロモーター領域内に存在する、低分子リガンドにより活性が調節される核内受容体のレギュレーター配列を同定することは、効率よく、かつ医薬品候補化合物を見出すために最良のスクリーニング系を構築する上で有用である。従って、ヒトアディポネクチン遺伝子プロモーター領域内に存在する、その転写活性を調節するレギュレーター配列を同定し、当該レギュレーター配列を含むDNAを適当なレポーター遺伝子と連結させ、作出される形質転換体は、アディポネクチン遺伝子の発現促進を通じて作用し得る糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症等の代謝異常疾患、高脂血症、動脈硬化症、高血圧、循環器系疾患、過食症等の予防および/または治療薬の有用なスクリーニング系として使用できる。当該形質転換体はさらに、上記疾患が病因になっている種々の症候群(シンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、内臓脂肪症候群等)の予防および/または治療薬の有用なスクリーニング系としても使用できる。しかしながら、現在まで、ヒトアディポネクチン遺伝子の発現調節に関わるレギュレーター配列は同定されておらず、発現促進物質を実質的に有効にスクリーニングできる方法は存在しなかった。
本発明者らは、アディポネクチン遺伝子発現促進物質を探索するスクリーニング法の確立を目指して、鋭意研究を重ねた結果、ヒトアディポネクチン遺伝子5’上流のプロモーター領域内に、アディポネクチン遺伝子に固有のレギュレーター配列PPREとLRH−RE(liver receptor homologue−1 responsive element)を発見し、同定した。さらに、同定したレギュレーター配列PPREとLRH−REが、生理的なヒトアディポネクチンプロモーター活性の調節に機能していることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき、さらに研究した結果、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
1.ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むことを特徴とする配列番号1で表される塩基配列を有するプロモーター領域を含むDNA、
2.ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むことを特徴とする配列番号1で表される塩基配列を有するプロモーター領域からなる前記1記載のDNA、
3.レギュレーター配列が、PPRE(Peroxisome Proliferator−activated Receptor Responsive Element)を含有する配列である前記2記載のDNA、
4.レギュレーター配列が、LRH−RE(Liver Receptor Homologue−1 Responsive Element)を含有する配列である前記2記載のDNA、
5.レギュレーター配列が、配列番号2で表される塩基配列である前記2記載のDNA、
6.レギュレーター配列が、配列番号3で表される塩基配列である前記2記載のDNA、
7.レギュレーター配列が、配列番号2で表される塩基配列および配列番号3で表される塩基配列の両方を有する塩基配列である前記2記載のDNA、
8.レギュレーター配列が、配列番号4で表される塩基配列である前記2記載のDNA、
9.前記2記載のDNAを含む組み換えプラスミドDNA、
10.ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むプロモーター領域の制御下に構造遺伝子を発現する機能を有することを特徴とする前記9記載の組み換えプラスミドDNA、
11.前記9または10記載の組み換えプラスミドDNAで形質転換された形質転換体、
12.前記11記載の形質転換体を用いることを特徴とするヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
13.前記11記載の形質転換体を用いることを特徴とするシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬のスクリーニング方法、
14.症候群の病因である疾患が、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症等の代謝異常疾患、高脂血症、動脈硬化症、高血圧、循環器系疾患、または過食症である前記13記載のスクリーニング方法、
15.前記11記載の形質転換体を用いることを特徴とするヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
16.前記11記載の形質転換体を用いることを特徴とするシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬のスクリーニング用キット、
17.前記12記載のスクリーニング方法を用いて得られるヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩、
18.前記13記載のスクリーニング方法を用いて得られるシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬、
19.前記15記載のスクリーニング用キットを用いて得られるヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩、
20.前記16記載のスクリーニング用キットを用いて得られるシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬、
21.前記17または19記載のヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を含有する医薬組成物、および
22.前記18または20記載のシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬を含有する医薬組成物に関する。
本発明のヒトアディポネクチン遺伝子プロモーター領域内のレギュレーター配列PPREあるいはLRH−REを含有するDNA、またはPPREとLRH−REの両者を含有するDNAは、当該レギュレーター配列を含み、アディポネクチンプロモーター活性を有するものであればいかなるものであってもよい。具体的には、配列番号1で示される塩基配列、その相補配列またはそれらの一部を含有するものであればいかなるものであってもよい。またヒト由来のゲノムDNA、cDNA、合成DNAのいずれでもよい。
本発明におけるヒトアディポネクチンプロモーター領域のレギュレーター配列PPREあるいはLRH−REのどちらか、またはその両者を含有するプロモーター領域を含む組み換えDNAは、具体的には次のようにして得ることができる。
まず既に報告されているヒトアディポネクチンプロモーター領域(Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.,24,861−868(2000))の塩基配列に対応したプライマーを設計し、ヒト組織由来のゲノムDNA(例えば、クロンテック社製)を鋳型としたPCR法により、目的のDNA断片を増幅する。得られたDNAは大腸菌用のプラスミドなどにクローニングし、塩基配列を決定する。得られたDNAは目的によりそのまま、または制限酵素により消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。さらにプロモーター活性を調べる手段としては、得られたDNAの下流に、転写量の検出可能なレポーター遺伝子を連結する方法が好用される。レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチル転移酵素遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子等が汎用されるが、他のいかなる構造遺伝子であっても、その遺伝子産物が検出可能であれば用いることができる。
上記組み換えプラスミドDNAにより形質転換する宿主としては、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)AH22R、NA87−11A、DKD−5Dなどが挙げられる。昆虫細胞としては、例えば、夜盗蛾Sf9細胞、蚕BmN細胞などが用いられる。動物細胞としては、例えば,サルCOS−1細胞、COS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、マウスL細胞、293T細胞、3T3−L1細胞、ヒトHEK293細胞、HepG2細胞、白色脂肪細胞、また適当な分化条件により分化誘導された細胞などが用いられる。
酵母を形質転換するには、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.75,1929(1978)に記載の方法を適宜改変して行われる。昆虫細胞を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),vol.6,47,(1988)などに記載の方法を適宜改変して行うことができる。動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール,263(秀潤社より1995年に発行)やVirology,vol.52,456(1973)などに記載の方法を適宜改変して行うことができる。
上記形質転換体は、特定の化合物の存在下に培養し、培養物中の遺伝子産物の量を測定し比較することにより、当該化合物によるプロモーター活性の促進能を知ることができる。形質転換体の培養は、それ自体公知の方法で行う。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホルダー(Burkholder)最小培地(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.77,4505(1980))が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが望ましい。培養は通常約20℃〜30℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、Grace’s Insect Medium(Nature,vol.195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが望ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の牛胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(ナカライ社)などが用いられる。培地のpHは約6〜8に調整するのが望ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
本発明のDNAは、ヒトアディポネクチンプロモーター領域のレギュレーター配列PPREあるいはLRH−REのどちらか一方、または両者を含有するプロモーター領域を含むDNAであるため、その形質転換体を用いることによって、ヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩をスクリーニングすることができる。以下に当該スクリーニング方法、スクリーニング用キットおよびこれらスクリーニング方法、スクリーニング用キットを用いて得られるヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩について具体的に説明する。
(1)ヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩をスクリーニングする方法
本発明のヒトアディポネクチンプロモーター領域のレギュレーター配列PPREあるいはLRH−REのどちらか一方、または両者を含有するプロモーター領域を含むDNA、および当該DNAで形質転換された形質転換体は、ヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩をスクリーニングするために有用である。
本発明のヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩の決定方法においては、本発明の形質転換体を被験化合物と接触させた場合と本発明のレギュレーター配列を含有しない形質転換体を被験化合物と接触させた場合のポリペプチドの発現量を測定し比較することなどを特徴とする。
被験化合物としては、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられる。これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。発現されるポリペプチドとしては、上記の構造遺伝子(好ましくはレポーター遺伝子)がコードするポリペプチドなどが用いられる。ポリペプチドの発現量の測定方法としては、例えば、Brasier,A.R.らの方法(Biotechniques vol.7,1116−1122(1989))に準じた方法により、ルシフェラーゼ活性を測定することなどが挙げられる。
(2)ヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩をスクリーニングするために用いるスクリーニング用キット
本発明のヒトアディポネクチンプロモーターの活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、上述の形質転換体を用いることを特徴とするが、その例として、次のものが挙げられる。
細胞培養用培地:ダルベッコ改変イーグル培地(ナカライ社)に非働化ウシ胎児血清(JRHバイオサイエンス社)を5%添加したもの。
ヒトアディポネクチンプロモーター活性測定用プラスミド:本発明の、ヒトアディポネクチンプロモーター領域のレギュレーター配列PPREとLRH−RE両者を含有するDNAを、ルシフェラーゼ遺伝子を含有するpGL3−basicベクター(プロメガ社)のマルチクローニング部位に挿入したもの。
核内受容体発現用プラスミド:ヒトPPARγ、ヒトRXRα、ヒトLRH−1の全長cDNAを、ヒトcDNAライブラリー(クロンテック社)を鋳型としたPCR法により取得する。取得したcDNAと哺乳動物細胞用発現プラスミドを同じ制限酵素で処理して連結したものを用いる。
宿主細胞株:HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来細胞株、ATCCより入手)
被験化合物:水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に細胞培養用培地にて50μMに希釈する。水に難溶性を示す被験化合物については、ジメチルスルホキシド、エタノール等に溶解する。
(3)スクリーニング法
HEK293細胞を96穴マルチプレート(ヌンク社)に播種し、37℃、5%CO条件下で一晩培養する。遺伝子導入の方法は、Luらの報告(Mol.Cell,6,507−515(2000))中に記載された方法に基いて行う。本発明のヒトアディポネクチンプロモーター活性測定用プラスミドを50ng/穴、核内受容体発現用のプラスミドを各々15ng/穴、リン酸カルシウム法を用いて細胞に一過性に導入する。遺伝子導入から8時間後に、培養上清の5分の1量の被験化合物希釈液を添加する。さらに37℃、5%CO条件下で培養し、被験化合物添加から18時間後にピッカジーンLT(東洋インキ社)を100μl/穴加え、5分間撹拌後、Lmaxマイクロプレートルミノメーター(モレキュラーデバイス社)で発光活性を測定する。
上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて、ヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物が見出せれば、当該化合物は脂肪組織におけるアディポネクチン産生・分泌を増加し、その結果血漿アディポネクチン濃度を上昇させることから、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症等の代謝異常疾患、高脂血症、動脈硬化症、高血圧、循環器系疾患、過食症等の予防・治療薬として用いることができる。
当該化合物はさらに、上記疾患が病因となっている種々の症候群(シンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、内臓脂肪症候群等)の予防・治療薬としても用いることができる。
上記のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物の非毒性塩としては、例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)、有機アミン(トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等)が挙げられる。
本発明化合物の非毒性塩には、溶媒和物、または上記本発明化合物のアルカリ(土類)金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩の溶媒和物も含まれる。
溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系溶媒(エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。
当該化合物またはその塩を上記の疾患の予防または治療剤として使用する場合は、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤、および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤等として用いられる。
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。
このような内服用固形剤においては、活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤および点鼻剤等が含まれる。これらは活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造される。
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を基剤に混和、または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を基剤に溶融させて製造される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を基剤に溶融または乳化させて調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、活性物質を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
噴霧剤、吸入剤、スプレー剤および点鼻剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号および同第3,095,355号に詳しく記載されている。
点鼻剤を投与する際には通常一般に薬剤を含有した溶液および粉末で、専用の点鼻器あるいは噴霧器を用い鼻腔内に定量的にスプレー(噴霧)投与される。
非経口投与のための点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。
これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。点眼剤の溶剤としては、例えば、滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油等)等およびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性化剤(ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)等などを必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤または吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
非経口投与のためその他の組成物としては、活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。当該化合物またはその塩の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから100mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから10mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒトアディポネクチンのプロモーター領域を含むDNAの塩基配列を示す。
図2は、ヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAおよび各種プロモーター欠失体DNAの構造を示す。
図3は、恒常的活性化PPARγおよびRXRαによるヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAの転写促進活性を示す。
図4は、ヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAおよび各種プロモーター欠失体DNAの転写促進活性を示す。
図5は、PPARγ/RXR二量体により転写制御される遺伝子群が有するPPREの塩基配列の比較を示す。
図6は、ヒトアディポネクチン遺伝子上のPPRE配列、およびPPRE配列に変異を導入したヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAの構造を示す。
図7は、恒常的活性化PPARγおよびRXRαによる変異プロモーター/レポータープラスミドDNAの転写促進活性を示す。
図8は、PPARγ/RXR二量体のヒトアディポネクチンプロモーターのレギュレーター配列PPREへの直接結合(ゲルシフトアッセイ)を示す。
図9は、LRH−1により転写制御される遺伝子群が有するLRH−REの塩基配列の比較を示す。
図10は、ヒトアディポネクチン遺伝子上のLRH−RE配列、およびLRH−RE配列に変異を導入したヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAの構造を示す。
図11は、PPARγ/RXR二量体、またLRH−1を発現させた際のヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAのピオグリタゾンによる転写促進活性を示す。
図12は、LRH−1のヒトアディポネクチンプロモーターのレギュレーター配列LRH−REへの直接結合(ゲルシフトアッセイ)を示す。
図13は、分化脂肪細胞におけるヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAのピオグリタゾンによる転写促進活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:ヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAの構築
ヒトアディポネクチンのプロモーター領域を含むDNAを、高橋らの方法で取得したDNA断片(Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.,24,861−868(2000))を鋳型としたPCR法により増幅した。具体的には、ヒトP1−derived artificial chromosome(PAC)DNA pools(ゲノムシステム社)から、ヒトアディポネクチン遺伝子を含むクローンを得、制限酵素BamHIとXbaIで消化した。得られた断片のうち2.9kbのDNA断片は、ヒトアディポネクチン遺伝子の5’上流領域を含んでいた(Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.24,861−868(2000))。当該DNA断片を鋳型とし、ヒトアディポネクチン遺伝子の転写開始点を塩基番号1として5’上流側908番目から3’下流側14番目までの塩基配列が増幅されるよう設計したプライマー(5’−TTT CGG GGT ACC GCT TCT AGG CCA GAG CTG GGT TC−3’(配列番号5)および5’−TTT CGG GAG CTC CTG CAG TCA GAA TGG AAG TGA GAA−3’(配列番号6))を用いたPCR法によりヒトアディポネクチンプロモーター領域を含むDNA断片を増幅し、塩基配列を決定した。決定した塩基配列を図1に示す。増幅したDNA断片、およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するpGL3basicプラスミド(プロメガ社)をそれぞれ制限酵素KpnIとSacIで消化し、両者を結合した。構造の概略を図2に示す。以降、このヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドをp(−908)/LUCと表記する。
実施例2:ヒトアディポネクチンプロモーター/レポータープラスミドDNAの転写促進活性の検定
実施例1で構築したp(−908)/LUCが、核内受容体であるPPARγ/RXRの二量体によって活性化されることを、ルシフェラーゼアッセイにより検定した。実施例2では、ヘルペスウィルスタンパク質VP16の転写活性化領域と核内受容体PPARγ、およびRXRαを結合させたキメラタンパク質(VP16−PPARγ、およびVP16−RXRαと表記する。)を細胞内で発現する発現プラスミドDNAを遺伝子導入することにより活性の検定を行った。これらキメラ核内受容体は、それぞれの活性化リガンドに依存せず、応答遺伝子の転写を活性化する能力を有している(Mol.Endocrinol.16,1040−1048(2002))。レポータープラスミドとして、実施例1で構築したp(−908)/LUCを、核内受容体発現プラスミドと同時に遺伝子導入した。宿主細胞には、ヒト胎児腎臓由来のHEK293細胞を用いた。細胞を96穴マルチプレート(ヌンク社)に播種し、非働化5%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(ナカライ社)を用いて37℃、5%CO条件下で一晩培養し、形質転換させた。遺伝子導入の方法は、Luらの報告(Mol.Cell 6,507−515(2000))中に記載された方法に従った。1穴当たり、50ngのレポータープラスミドp(−908)/LUCと20ngのb−ガラクトシダーゼ発現プラスミド、核内受容体発現用のプラスミド各々15ngを、リン酸カルシウム法を用いて導入した。遺伝子導入から26時間後にルシフェラーゼ活性、および内部標準用のb−ガラクトシダーゼ活性をそれぞれLmaxマイクロプレートルミノメーター、およびEmaxマイクロプレートリーダー(いずれもモレキュラーデバイス社)を用いて測定した。測定結果は、ルシフェラーゼ活性の測定値をβ−ガラクトシダーゼ活性の値で除し、相対活性として表現した。結果を図3に示す。VP16−PPARγとVP16−RXRαの両者を発現させた細胞において、顕著なルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。VP16のみ、あるいはVP16−PPARγ、VP16−RXRαそれぞれ単独の発現によっては、顕著な変化はみられなかった。これらの結果から、用いたヒトアディポネクチンプロモーター領域にPPARγ/RXR二量体が作用し、転写調節を行うものと考えられた。
実施例3:ヒトアディポネクチンプロモーター領域内のレギュレーター配列(PPRE)の同定
実施例2において認められた転写活性の上昇が、ヒトアディポネクチンプロモーター上のどの領域に依存するのかを特定する目的で、図2下部に示した構造を有するヒトアディポネクチンプロモーター欠失体を作製した。5’末端に制限酵素切断部位を有するプライマーを目的の長さのプロモーターDNAが得られるように設計し、上述のp(−908)/LUCを鋳型としてPCR法により増幅した。増幅したDNA断片とpGL3ベーシックプラスミド(pGL3 basic plasmid)を制限酵素処理した後、連結して欠失体を構築した。HEK293細胞において、これら各欠失体をレポーターとして用い、VP16−PPARγとVP16−RXRαの両発現プラスミドを一過的に発現させ、実施例2で用いたのと同様な方法でルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図4に示す。ヒトアディポネクチンプロモーター領域の、−286bpから−267bpの配列を欠失することにより、VP16−PPARγとVP16−RXRα両者の発現によるルシフェラーゼ活性の上昇が消失した。この結果から、ヒトアディポネクチンプロモーター領域の−286bpから−267bpの間に、PPARγ/RXR二量体が作用するレギュレーター配列PPREが存在すると推定された。
図5は、PPARγ/RXR二量体により転写制御を受けることが報告されている遺伝子のプロモーター領域に存在するPPREの塩基配列を示している(Genes Dev.,8,1224−1234(1994)、J.Biol.Chem.,275,9131−9135(2000)、Mol.Cell,7,161−171(2001)、J.Biol.Chem.,276,48572−48579(2001))。いずれもダイレクトリピート1(DR1)と呼ばれる13塩基からなる類似の構造を有している。ヒトアディポネクチンプロモーター領域の−286bpから−267bpまでの塩基配列を詳細に調べた結果、報告されているPPREと類似した配列が、−273bpから−285bpまでの間に存在することが明らかとなった(図5、6)。推定された配列が、レギュレーター配列PPREとして機能することを確認する目的で、図6に示すように、推定された配列内に2塩基の変異を導入したレポータープラスミドを作製した。変異の導入は、QuikChange Site−Directed Mutagenesis kit(ストラタジーン社)を用い、添付のプロトコールに従い行った。野生型のPPREを有するレポータープラスミドp(−908)/LUCと、PPREと推定された配列に変異を導入したレポータープラスミドの転写活性を比較する目的で、HEK293細胞にVP16−PPARγとVP16−RXRαの両発現プラスミドを一過的に発現させ、実施例2で用いたのと同様な方法でルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図7に示す。PPREと推定された配列に変異を導入したレポータープラスミドを用いた場合、野生型のPPREを有するp(−908)/LUCでみられるような、VP16−PPARγとVP16−RXRα両者の発現によるルシフェラーゼ活性の上昇は消失した。この結果から、PPREと推定された配列が、レギュレーター配列として機能し、ヒトアディポネクチンプロモーターのPPARγ/RXR二量体による転写活性化に必要であると考えられた。
実施例4:PPARγ/RXR二量体のレギュレーター配列PPREへの直接結合
ヒトアディポネクチンプロモーター領域の−285bpから−273bpに同定されたレギュレーター配列PPREに、PPARγ/RXR二量体が直接結合することを確認する目的で、ゲルシフトアッセイを行った。ゲルシフトアッセイは文献に記された方法(J.Biol.Chem.,276,48572−48579(2001))に基づいて行った。結合反応に用いるPPARγ、RXRαタンパク質は、ヒトPPARγ、ヒトRXRαを発現する発現プラスミドを鋳型とし、TT T7 Quick Coupled Transcription/Translation Systems(プロメガ社)を用いて添付のプロトコールに従い、インビトロ(in vitro)系にて合成した。ヒトアディポネクチンプロモーター領域の−291bpから−267bpまでの塩基配列を有するオリゴDNA(5’−TGG TTTTGA CTTTTG CCC CAT CTT C−3’(配列番号7)および5’−GAA GATGGG GCA AAA GTC AAA ACC A−3’(配列番号8))をそれぞれ[γ−32P]ATP(アマシャムバイオサイエンス社)とT4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造)を用いて標識し、二本鎖にしたものを標識プローブとして用いた。塩基配列に付した下線は、PPREを示している。インビトロ(in vitro)系で合成したタンパク質と標識プローブの結合反応は、20μlの溶液中で行った。反応液は、20mM HEPESバッファー(pH8.0)、60mM KCl、1mM ジチオスレイトール、10%グリセロールの組成からなり、さらに1μgのポリ(dI−dC)、1μlの核内受容体を含む合成反応液、200,000cpmの標識プローブを添加し、20μlとしたものである。混合後、25℃で20分間反応させ、さらに4℃で15分間静置した。標識プローブと核内受容体の複合体と、複合体を形成していない標識プローブの分離は、4%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により行った。電気泳動は0.5×TBEバッファー(45mM トリス、45mM ホウ酸、1mM EDTA)を用いて200Vの電圧で90分間行った。泳動後のゲルは乾燥させ、BAS2500システム(富士写真工業)を用いて画像解析した。標識プローブと核内受容体の結合が特異的であることを確認する目的で、競合反応も同時に行った。競合反応は、未標識の野生型PPREを含むオリゴDNA、あるいはPPREに図6に示したのと同様な変異を導入したオリゴDNAを、標識プローブの10倍、あるいは50倍のモル濃度で反応液に追加することにより行った。PPREに変異を導入したオリゴDNAの塩基配列は、5’−TGG TTTTGA CTT TTG ttC CAT CTT C−3’(配列番号9)、および5’−GAA GATGGa aCA AAA GTC AAA ACC A−3’(配列番号10)である。変異させた塩基は小文字で示している。塩基配列に付した下線は、PPREを示している。結果を図8に示す。矢印は、標識プローブが分子量の大きなタンパク質と結合することで、ゲル上の移動が遅くなったバンドを指している。PPARγとRXRαの両者を加えて反応させた場合、標識プローブとの複合体のバンドが検出された(レーン4)。競合反応を行うと、未標識の野生型PPREを有するオリゴDNAを過剰量加えた際には、レーン4でみられたバンドが濃度依存的に消失した(レーン5とレーン6)。しかしながら、PPREに変異を導入した未標識オリゴDNAを加えた際には、野生型の場合と比較して、明らかな競合効果の減弱が認められた(レーン7とレーン8)。以上の結果から、ヒトアディポネクチンプロモーター領域に同定したレギュレーター配列PPREに、PPARγ/RXR二量体が特異的に結合することが明らかとなった。
実施例5:ヒトアディポネクチンプロモーター領域のレギュレーター配列(LRH−RE)の同定
ヒトアディポネクチンプロモーター領域にPPRE以外のレギュレーター配列が存在しないか、その塩基配列を詳細に解析したところ、LRH−1(Liver Recepter Homologue−1)と呼ばれる別の核内受容体が結合するレギュレーター配列LRH−RE(LRH−1 responsive element)と推定される配列が存在した。図9には、LRH−1により転写制御を受けることが報告されている遺伝子のプロモーター領域にあるLRH−REの塩基配列を示している(Mol.Cell 6,507−515(2000)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,6660−6665(1999)、J.Biol.Chem.276,24767−24773(2001)、J.Biol.Chem.,275,17793−17799(2000))。ヒトアディポネクチンプロモーター領域に見出された配列は、ラットおよびヒトのCYP7A1遺伝子のプロモーター領域に存在するLRH−REと1塩基しか異なっていなかった。
図10は、LRH−REと推定される配列の存在する位置を示している。LRH−REと推定される配列は、上述のPPREと転写開始点の間の、−237bpから−229bpまでに位置した。ヒトアディポネクチンプロモーター領域にLRH−REと推定される配列が存在したことから、アディポネクチンプロモーターが核内受容体LRH−1により転写制御を受ける可能性が考えられた。そこで、HEK293細胞において、レポータープラスミドとして上述のp(−908)/LUCを用い、PPARγ、RXRα、そしてLRH−1を発現する発現プラスミドを、実施例2で用いたのと同様な方法で一過性に発現させた。核内受容体を機能させるために、PPARγを活性化する作用の知られているピオグリタゾンを遺伝子導入から8時間後に終濃度が1μMになるように添加し、その後細胞を18時間培養した。結果を図11に示す。PPARγとRXRαの発現により、ルシフェラーゼ活性は2倍上昇した。ピオグリタゾン処理により転写活性はさらに上昇した(レーン2)。一方、LRH−1のみを発現させてもルシフェラーゼ活性の上昇はみられなかった(レーン3)。ところがPPARγ、RXRαとLRH−1を同時に発現させると、PPARγとRXRαのみを発現させた場合と比べて、ルシフェラーゼ活性がさらに2倍上昇した。その効果は、ピオグリタゾン処理の有無に関わらず認められた(レーン2に対してレーン4)。これらの結果から、LRH−1は単独では作用を示さないものの、PPARγ/RXR二量体によるヒトアディポネクチンプロモーター活性の促進を増強することが明らかとなった。次にLRH−1による作用が、プロモーター領域のLRH−REと推定される配列に依存したものであることを確認する目的で、図10に示すようにLRH−REと推定される配列内に2塩基の変異を導入したレポータープラスミドを作製し、ルシフェラーゼ活性を測定した(図11)。その結果、PPARγとRXRαのみの発現によるルシフェラーゼ活性の上昇は、野生型LRH−REを有するp(−908)/LUCを用いた場合と、LRH−REと推定される配列に変異を導入したレポータープラスミドを用いた場合で差がみられなかった(レーン2に対してレーン6)。一方、PPARγ、RXRαとLRH−1を同時に発現させた場合、野生型レポーターを用いた際にみられたLRH−1による効果(レーン2に対してレーン4)は、変異体レポーターでは消失した(レーン6に対してレーン8)。以上の結果から、本実施例で見出されたLRH−1の作用は、ヒトアディポネクチンプロモーター領域のLRH−REと推定される配列に依存したものであることが明らかとなった。同時に、LRH−REと推定される配列は、レギュレーター配列として機能すると考えられた。
実施例6:LRH−1のレギュレーター配列LRH−REへの直接結合
LRH−1が、ヒトアディポネクチンプロモーター領域に見出されたレギュレーター配列LRH−REへ直接結合することを確認する目的で、ゲルシフトアッセイを行った。ゲルシフトアッセイは実施例4で用いたのと同様な方法で行った。結合反応に用いたLRH−1タンパク質は、ヒトLRH−1を発現する発現プラスミドを鋳型とし、インビトロ(in vitro)系にて合成した。標識プローブには、ヒトアディポネクチンプロモーター領域の−245bpから−221bpまでの塩基配列を有するオリゴDNA(5’−AAT AAG GGT CAA GGC CTG GAA ACA C−3’(配列番号11)および5’−GTG TTT CCA GGC CTT GAC CCT TAT T−3’(配列番号12))を用いた。塩基配列に付した下線はLRH−REを示している。競合反応は、標識プローブに用いたのと同じオリゴDNAを野生型として、またLRH−REに、図10に示されているのと同様に変異を導入したオリゴDNA(5’−AAT AAG GGT CAA ccC CTG GAA ACA C−3’(配列番号13)および5’−GTG TTT CCA GGg gTT GAC CCT TAT T−3’(配列番号14))を変異体として用い、標識プローブの10倍、あるいは50倍のモル濃度で反応液に加えた。変異させた塩基は小文字で示している。塩基配列に付した下線は、LRH−REを示している。結果を図12に示す。インビトロ(in vitro)系で合成したLRH−1と野生型LRH−REを含む標識プローブの複合体が矢印で指した位置に検出された(レーン2)。競合反応を行うと、野生型のLRH−REを有するオリゴDNAを過剰量加えた場合は、濃度依存的な複合体の消失がみられた(レーン3とレーン4)。一方、変異を導入したLRH−REを有するオリゴDNAを加えた場合は、野生型を加えた場合と比較して複合体のバンドの減弱はわずかであった(レーン5とレーン6)。以上の結果から、ヒトアディポネクチンプロモーター領域に同定されたレギュレーター配列LRH−REに、LRH−1が特異的に結合することが明らかとなった。
実施例7:同定されたレギュレーター配列PPREとLRH−REの脂肪細胞における役割
アディポネクチンプロモーター領域内に同定したレギュレーター配列PPREとLRH−REが、脂肪細胞におけるアディポネクチン遺伝子の転写活性化に関与していることを示す目的で以下の実験を実施した。マウス前駆脂肪細胞3T3−L1を、タイプIV コラーゲンでコートした6穴プレート(ベクトン・ディッキンソン社)を用いて培養し、5μg/mlインスリン、0.5mM イソブチルメチルキサンチン、1μM デキサメタゾンを含む培地で分化誘導した。分化誘導を開始してから6日目の細胞を、形質転換実験に用いた。遺伝子導入には、LipofectAMINE 2000(インビトロジェン社)を使用し、添付のプロトコールにしたがって行った。1穴当たり各々のレポータープラスミドを2μg、内部標準用のβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを1μg使用した。LipofectAMINE 2000とプラスミドをOPTI−MEM(インビトロジェン社)で希釈し、細胞に添加して3.5時間培養した。その後20%ウシ胎児血清を含む培地を等量加えて44時間培養し、ルシフェラーゼ活性およびβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。ピオグリタゾンは、20%ウシ胎児血清を含む培地を加える際に終濃度1μMになるよう添加した。結果を図13に示す。アディポネクチンプロモーター領域を持たないpGL3ベーシックプラスミドにより形質転換した場合に比べ、野生型のヒトアディポネクチンプロモーターを有するp(−908)/LUCレポーターを用いた際、ルシフェラーゼ活性は19倍上昇した。1μMのピオグリタゾンで処理した場合には、処理しない場合と比べてさらに9倍の上昇がみられた。一方、レギュレーター配列PPREに変異を導入したレポーター(図6)を用いた場合には、野生型と比較してルシフェラーゼ活性が著しく低下し、ピオグリタゾン処理による効果も全く認められなかった。また、LRH−REに変異を有するレポーター(図10)を用いた場合も、野生型の場合と比較してルシフェラーゼ活性の低下がみられた。しかしながら、ピオグリタゾン処理した場合は、処理しない場合に比べてルシフェラーゼ活性が7.5倍上昇し、ピオグリタゾンに対する応答性は保たれていた。以上の結果から、同定されたレギュレーター配列PPREとLRH−REが、脂肪細胞におけるアディポネクチンプロモーターの活性化に重大な役割を果たしていることが明らかとなった。同時に、これらレギュレーター配列は、生理的な条件におけるアディポネクチンの遺伝子発現に深く関与しているものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
本発明のヒトアディポネクチンプロモーター領域内のレギュレーター配列であるPPRE(Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.24,861−868(2000))に記載されているヒトアディポネクチン遺伝子の転写開始点を基準として、その5’上流側273番目から285番目の間に位置する塩基配列、およびLRH−RE(上述のPPREと同じく5’上流側229番目から237番目の間に位置する塩基配列)は、核内受容体PPARγ、RXR、LRH−1が直接結合する配列であり、脂肪細胞におけるアディポネクチンプロモーターの活性化に重大な役割を果たしている。これらレギュレーター配列を含むプロモーター領域を含むDNAと適当なレポーター遺伝子を連結したレポータープラスミドにより形質転換した形質転換体は、生理的なヒトアディポネクチン遺伝子の発現様式に近いものであり、ヒト疾患に対する治療薬剤をスクリーニングする上で極めて有用である。
【配列表】







【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むことを特徴とする配列番号1で表される塩基配列を有するプロモーター領域を含むDNA。
【請求項2】
ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むことを特徴とする配列番号1で表される塩基配列を有するプロモーター領域からなる請求の範囲1記載のDNA。
【請求項3】
レギュレーター配列が、PPRE(Peroxisome Proliferator−activated Receptor Responsive Element)を含有する配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項4】
レギュレーター配列が、LRH−RE(Liver Receptor Homologue−1 Responsive Element)を含有する配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項5】
レギュレーター配列が、配列番号2で表される塩基配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項6】
レギュレーター配列が、配列番号3で表される塩基配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項7】
レギュレーター配列が、配列番号2で表される塩基配列および配列番号3で表される塩基配列の両方を有する塩基配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項8】
レギュレーター配列が、配列番号4で表される塩基配列である請求の範囲2記載のDNA。
【請求項9】
請求の範囲2記載のDNAを含む組み換えプラスミドDNA。
【請求項10】
ヒトアディポネクチンのレギュレーター配列を含むプロモーター領域の制御下に構造遺伝子を発現する機能を有することを特徴とする請求の範囲9記載の組み換えプラスミドDNA。
【請求項11】
請求の範囲9または10記載の組み換えプラスミドDNAで形質転換された形質転換体。
【請求項12】
請求の範囲11記載の形質転換体を用いることを特徴とするヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
【請求項13】
請求の範囲11記載の形質転換体を用いることを特徴とするシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬のスクリーニング方法。
【請求項14】
症候群の病因である疾患が、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症等の代謝異常疾患、高脂血症、動脈硬化症、高血圧、循環器系疾患、または過食症である請求の範囲13記載のスクリーニング方法。
【請求項15】
請求の範囲11記載の形質転換体を用いることを特徴とするヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
【請求項16】
請求の範囲11記載の形質転換体を用いることを特徴とするシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬のスクリーニング用キット。
【請求項17】
請求の範囲12記載のスクリーニング方法を用いて得られるヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩。
【請求項18】
請求の範囲13記載のスクリーニング方法を用いて得られるシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬。
【請求項19】
請求の範囲15記載のスクリーニング用キットを用いて得られるヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩。
【請求項20】
請求の範囲16記載のスクリーニング用キットを用いて得られるシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬。
【請求項21】
請求の範囲17または19記載のヒトアディポネクチンプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を含有する医薬組成物。
【請求項22】
請求の範囲18または20記載のシンドロームX、メタボリックシンドローム、マルチプルリスクファクター症候群、インスリン抵抗性症候群、死の四重奏、および内臓脂肪症候群から選ばれる症候群の予防および/または治療薬を含有する医薬組成物。

【国際公開番号】WO2004/058970
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562943(P2004−562943)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016772
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(599101070)
【出願人】(503007759)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】