アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)及び免疫調節の標的としてのその使用
本発明は、免疫調節の標的としてのアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)の使用に関する。より具体的には、本発明は、Th1/Th2均衡の調節による免疫関連障害の治療のための、CAP1と相互作用し、結合する化合物、具体的には、抗CAP1抗体、及び/又はCAP1分子若しくはその任意の断片の使用に関する。本発明はさらに、CAP1と相互作用する免疫調節化合物のスクリーニング方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節の標的としてのアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)の使用に関する。より具体的には、本発明は、CAP1又は組成物中のCAP1と相互作用する化合物の使用及び免疫障害の治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で引用するすべての参考文献を含む、本出願を通して言及するすべての刊行物は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。
【0003】
ヒト結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)の65kDa熱ショックタンパク質(HSP65)は、自己免疫性関節炎の病因において重要な役割を果たしている。その効果は、アジュバント関節炎(AA)の実験的モデルにおいて十分に実証されている。AAは、フロイントアジュバントに懸濁したマイコバクテリア菌の加熱死菌の皮内接種によってLewis又はWistarなどの感受性近交系ラットにおいて誘発させることができる。AAは、HSP65の残基180〜188に応答性のT細胞クローンにより受動的に転移させることができる[Holoshitz J.ら、Science、219巻、56〜58頁(1983年)]。
【0004】
疾患の防御がHSP65に対する細胞応答に起因する可能性があるという証拠が報告され[Lider O.ら、Proc.Acad.Sci.、84巻、4577〜4580頁(1987年);Moudgil K.ら、Exp.Med.、185巻、1307〜1316頁(1997年)]、このタンパク質が病因と抵抗性の獲得とに関与する異なるエピトープを含むことが示唆される。本発明者らは、AAに対する抵抗性を、HSP65に対する抗体によっても付与することができ、関節炎抵抗性系統からの免疫グロブリンの関節炎感受性ラットへの静脈内注入により受動的に転移させることができることを以前に示した[Ulmansky R.及びY.Naparstek、Eur.J.Immunol.、25巻、952〜957頁(1995年)]。さらなる分析により、ペプチド6と呼ばれる(配列番号1によっても表示される)アミノ酸残基31〜46に対する抗HSP防御抗体のエピトープ特異性が定義された[Ulmansky R.及びY.Naparstek、Immunol.、168巻、6463〜6469頁(2002年)]このペプチドを用いたLewisラットのワクチン接種は、全分子に対する抗体の産生並びに疾患の誘導に対する抵抗性をもたらす。
【0005】
本発明者らは、ペプチド6に対するポリクローナル抗体が末梢血単核細胞(PBMC)により産生されるIL−10を刺激することを以前に示した[Ulmansky(2002年)、前出]。抗炎症性サイトカインIL−10は、炎症応答の抑制を可能にする、主としてその抑制作用により先天性免疫に重要な役割を果たす。本発明者らが産生させたモノクローナル並びにキメラ及びヒト化抗ペプチド6抗体(プロキシマブ(Proximab))は、PBMCに結合し、該細胞によるIL−10分泌を刺激することにより、この防御効果を保持することが示された。
【0006】
本発明者らは、ペプチド6に対する抗体がペプチド6と相互作用するだけでなく、さらに、単球上の表面リガントとも直接的に交差反応し、この相互作用がこれらの抗体の作用機序の理解の手がかりであることも今回示した。単球への抗ペプチド6抗体の結合の後、炎症過程を減弱させ、抑制することにより、炎症性障害の改善及び治療をもたらすサイトカイン、具体的には抗炎症性サイトカインとしてのIL−10の産生及び分泌の増加につながるシグナル伝達経路の活性化が存在する。これが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)などの前炎症性Th1サイトカインとIL−10などの抗炎症性Th2サイトカインとの間の均衡を傾ける。したがって、抗ペプチド6抗体によってTh1/Th2均衡をTh2抗炎症応答の方に調節することが、炎症性障害の治療に適用できると本発明者らによって示された。
【0007】
本発明により示されたように、抗ペプチド6抗体の細胞標的は、CAP1タンパク質である。シクラーゼ結合タンパク質(CAP)は、アクチン細胞骨格の調節に、またシグナル伝達経路において機能する進化的に保存されたタンパク質である。哺乳動物は、関連するCAP1及びCAP2をコードする2つのCAP遺伝子を有する。CAP1は、広い組織分布を示すが、CAP2は、脳、心臓及び骨格筋及び皮膚においてのみ顕著に発現する。ヒトCAP1のcDNAは、同定され、クローニングされ、酵母CAPタンパク質と相同である475アミノ酸タンパク質をコードすることが示された。
【0008】
最初のCAPは、栄養シグナル伝達時にRas/環状AMP経路のエフェクターとしての役割を果たすサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アデニリルシクラーゼ複合体の成分として単離された。CAPは、いくつかの機能に関与するドメインを含む多機能性分子である。NH2末端は、活性化RASタンパク質に対する細胞の応答性に必要且つ十分であるが、COOH末端は、正常細胞の形態及び成長の制御に必要である。酵母における遺伝学的研究で、CAPが小胞輸送及びエンドサイトーシスに関係するとみなされた。CAPは、多細胞生物体の発生上の役割を果たしており、キイロショウジョウバエ属の研究で、眼の発生時及び卵母細胞の極性の確立におけるアクチン細胞骨格の重要性が明らかにされた。
【0009】
ヒトCAP1は、アクチン−コフィリン複合体の成分である。ヒトCAPは、Ras応答性アデニリルシクラーゼに結合するN末端ドメイン及びアクチン重合を阻害するC末端ドメインを有する二元機能タンパク質である。CAP1及びそのC末端ドメインは、反矢じり端におけるフィラメントの伸長を促進し、重合性Gアクチンを容易に再生する過程である、球状(G)(単量体)アクチンサブユニット上のADP−ATP交換を刺激することが認められた。抗ペプチド6抗体と、多分cAMP依存性プロテインキナーゼによるIL−10の発現の誘導をもたらすと本発明により最初に示されたCAP1分子との直接的な相互作用は、この新規な経路における重要な要素としてのCAP1の関与を反映している。これらの所見は、この特定の経路の免疫調節の標的としてCAP1を用いる可能性を立証するものである。さらに、抗CAP1抗体は、IL−10の発現を誘導することが示され、CAP1結合化合物を免疫調節剤として用いる実現可能性が実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、免疫関連障害の治療のための方法及び組成物におけるCAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物の使用を提供することが本発明の目的である。
【0011】
本発明の他の目的は、CAP1及びその任意の断片の免疫調節化合物としての使用を提供することである。
【0012】
他の目的において、本発明は、免疫調節化合物の同定のためのスクリーニング方法におけるCAP1の使用を提供する。そのような化合物は、免疫関連障害に罹患している対象におけるTh1/Th2均衡を調節するのに有用である可能性がある。
【0013】
本発明のこれら及び他の目的は、記述が進むにつれて明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物に関する。本発明の組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0015】
特定の一実施形態によれば、本発明の組成物は、治療有効量の抗CAP1抗体を有効成分として含む。
【0016】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡を調節することにより、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる治療用組成物を提供する。本発明の治療用組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法に関する。本発明の方法は、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物の少なくとも1つを対象に投与するステップを含む。
【0018】
他の態様において、本発明は、免疫関連障害の治療用の組成物の調製における、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つの使用に関する。
【0019】
第5の態様において、本発明は、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに使用される、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を提供する。
【0020】
本発明はまた、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに使用される、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物のスクリーニング方法に関する。本発明の方法は、(a)CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップ、(b)抗炎症性サイトカイン発現の調節に基づいて、ステップ(a)で選択された化合物の効果を判定するステップを含む。それにより、候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節は、対象におけるTh1/Th2均衡を調節する化合物の能力を示す。
【0022】
本発明はまた、CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物であって、本発明によるスクリーニング方法により同定される化合物を提供する。
【0023】
最後に、本発明は、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに有効な薬剤を調製するための、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む医薬単位剤形に関する。本発明の剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0024】
本発明のさらなる態様は、以下の図面により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】マウス抗ペプチド6抗体がin vitroでIL−10分泌を誘導することを示す図である。ネイティブヒト単球をマウス抗ペプチド6モノクローナル抗体(mAb)とともにRPMI中でインキュベートし(24時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10の分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。略語:Mon.ce(単核細胞);α−pep6(抗ペプチド6(配列番号1)抗体)Un.(単位);IL−10(インターロイキン10)。
【図2】抗ペプチド6抗体がIL−10転写の一時的アップレギュレーションを誘発することを示す図である。ヒト単球細胞(PBMC)をマウスB24抗ペプチド6モノクローナル抗体、陰性対照としての全ネイティブLewis IgM抗体又は陽性対照としてのリポ多糖(LPS)とともにインキュベートした。図2A 細胞を、LPS、全ネイティブLewis IgM対照又はB24への曝露の4及び24時間後に収集し、抽出されたmRNAをRT−PCRを用いてアッセイした。LPS及び抗ペプチド6抗体は、無処理及びネイティブLewis IgM処理細胞と比較して曝露の4時間後にIL−10 mRNAの増加を誘発した。しかし、mRNAレベルが曝露の24時間後に一定のままであったLPS処理細胞に反して、抗ペプチド6で処理した細胞における発現レベルが抗体との24時間のインキュベーションの後に低下した。略語:UT(無処理);LPS(リポ多糖);IgM(ネイティブLewis IgM抗体);α−pep6(抗ペプチド6抗体);hr(時間)。図2B GAPDH cDNAを等しい負荷についての対照として用いた。略語:UT(無処理);LPS(リポ多糖);IgM(ネイティブLewis IgM抗体);α−pep6(抗ペプチド6抗体);hr(時間)。
【図3】プロキシマブがin vivoでIL−10の発現を誘導し、アジュバント関節炎を軽減することを示す図である。6〜8週齢の雌近交系Lewisラットの尾の基部にCFA中1mgのMT H37Raを皮内注射した。動物にリン酸緩衝液(PBS陰性対照)、ステロイド又はプロキシマブを投与した。関節炎の重症度は、アジュバント関節炎(AA)採点法により評価した。関節炎は、盲検化観測者が隔日に次のように評価した。0、関節炎なし;1、関節の紅化;2、関節の紅化及び腫脹。各足蹠の足根及び足根中足関節を採点した。16の最大スコアを得ることができた。IL−10レベルをELISAにより測定した。結果は、1群当たり2匹のラットの平均値±SEである。略語:Cont.(PBS陰性対照);PROX(プロキシマブ抗体);STR(ステロイド);AA Sc.(アジュバント関節炎スコア);pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)。
【図4A】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示す図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、染色せずに、細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照として用いた。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4B】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示すための図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体で染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4C】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示すための図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、抗ヒトCD14−PEで染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4D】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示す図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体及び抗ヒトCD14−PEの両方で染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。CD14陽性であった細胞の大部分がキメラ抗ペプチド6についても陽性であった。
【図5A】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。ヒトPBMCを健常ヒトドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−APC結合抗体で染色した。略語:α−CD14(抗CD14抗体)。
【図5B】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。ヒトPBMCを健常ヒトドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞をFITC標識プロキシマブ及びAPC結合抗CD14抗体の両方で染色した。略語:α−CD14(抗CD14抗体);PROX(抗ペプチド6ヒト化抗体)。
【図5C】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。FITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセントを示す(プロキシマブを含まない−黒色、プロキシマブを含む−灰色)。略語:PROX(抗ペプチド6ヒト化抗体)。
【図6A】キメラ抗ペプチド6抗体及び抗CD14抗体が単球膜に結合することを示す図である。CD14+Mono Mac6(MM6)細胞をキメラ抗ペプチド6抗体(CHM抗体)とともにインキュベートし、抗ヒトIgG−FITC結合抗体のみで染色した。染色後に、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。略語:CHM(キメラ抗ペプチド6抗体)。
【図6B】キメラ抗ペプチド6抗体及び抗CD14抗体が単球膜に結合することを示す図である。CD14+Mono Mac6(MM6)細胞をキメラ抗ペプチド6抗体(CHM抗体)とともにインキュベートし、抗ヒトIgG−FITC結合抗体並びにマウス抗ヒトCD14−APCで染色した。染色後に、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。CHM抗体のリガンドは、CD14陽性細胞の膜表面上にある。略語:CHM(キメラ抗ペプチド6抗体);CD14(抗CD14抗体)。
【図7】ヒト化抗ペプチド6抗体がヒト単球Fc受容体を介して結合しないことを示す図である。MM6細胞を無処理とするか、又は非標識ヒト化抗ペプチド6抗体変異型VK3若しくはCD32及びCD64に対する抗体とともにプレインキュベートし、次にFITC−VK3で処理し、結合FITC−VK3についてFACSによりアッセイした。FITC−VK3が細胞の30%に結合した(左のバー)。非蛍光VK3抗体とのプレインキュベーションにより、結合がVK3−FITC結合が完全に阻止された(中央のバー)が、両Fc受容体に対する抗体とのプレインキュベーションは何らの効果ももたらさなかった(右のバー)。略語:VK3(FITC結合ヒト化抗ペプチド6抗体);PRI(VK3)+VK3(非標識VK3と続いてFITC VK3とのプレインキュベーション);PRI(CD32+CD64)+VK3(抗CD32及び抗CD64と続いてFITC VK3とのプレインキュベーション)。
【図8A】ラット抗ペプチド6抗体がTHP−1細胞に結合することを示す図である。ヒト前単球THP−1細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色を行い、次にFACS解析に供した。二次抗体(FITC−ヤギ抗ラット)のみとともにインキュベートした細胞を対照とした。
【図8B】ラット抗ペプチド6抗体がTHP−1細胞に結合することを示す図である。ヒト前単球THP−1細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色を行い、次にFACS解析に供した。ラット抗ペプチド6モノクローナル抗体とともにインキュベートした細胞の75%がB24抗体に結合した。
【図9】モノクローナル抗ペプチド6の標的が単球親水性膜タンパク質であることを示す図である。親水性膜タンパク質、疎水性膜タンパク質及び細胞質タンパク質をTHP−1細胞から単離し、マウスB24モノクローナル抗ペプチド6抗体を用いたウエスタンブロット分析に供した(データは示さず)。対照ブロットは、総ラット免疫グロブリン又は培地のみを用いてブロットした。レーン1−親水性膜タンパク質;レーン2−疎水性膜タンパク質;レーン3−細胞質タンパク質。示したように、B24抗体は、親水性膜タンパク質の3つの画分52、100及び120KDaに結合した。陰性対照ブロットには結合は検出されなかった。略語:KDa(キロダルトン)。
【図10】抗ペプチド6タンパク質標的の分析を示す図である。THP−1細胞の親水性膜画分をセファロースビーズに結合させたマウスモノクローナル抗ペプチド6抗体を含むアフィニティーカラムに加えた。結合タンパク質を溶出させ、SDS−PAGE上に加え、続いてクマシーブルー染色を行った。レーン2は、ラット抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーを示し、レーン4は、マウス抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーを示す。レーン1及び6はマーカーを含む。約40及び50KDaの2つの二重バンドがレーン2及び4に確認することができる。バンドを切り取り、質量分析により分析した。52KDaバンドを配列決定したところ、アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)を含むことが認められた。
【図11】抗ペプチド6が52kDa膜タンパク質並びにMT−HSP65に結合することを示す図である。抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出したTHP−1親水性膜タンパク質及びMT−HSP65をSDS−PAGE上に加え、ラット抗ペプチド6抗体(B24)を用いたウエスタンブロット分析に供した。アフィニティーカラムから得られた溶出タンパク質を加えたレーンに認められた52KDaタンパク質と既知重量のMT−HSP65と一致する65KDaバンドの2つの異なるバンドが検出された。略語:MT−HSP65(ヒト結核菌熱ショックタンパク質65);KDa(キロダルトン)。
【図12A】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。
【図12B】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図12C】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。THP−1細胞の87%が抗CAP1抗体に結合した。
【図13A】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図13B】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図13C】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。HeLa細胞の1.5%未満が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図14A】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図14B】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図14C】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。透過性化THP−1細胞の96%が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)
【図15A】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図15B】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図15C】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。透過性化HeLa細胞の96%が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図16A】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗GAPDH(図16B)又はマウス抗GAPDH(図16C)とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞(図16A)と比較し、FACSにより解析した。略語:Cont.(対照)。
【図16B】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗CAP1とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図16C】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗GAPDHとともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗GAPDH抗体は、抗CAP1と対照的に、完全THP−1細胞に結合しなかった。略語:α−GAPDH(抗GAPDH抗体)。
【図17A】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1(図17B)又は抗GAPDH抗体(図17C)とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞(図17A)と比較し、FACSにより解析した。略語:Cont.(対照)。
【図17B】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗CAP1が透過性化細胞に結合したことから、抗CAP1が有効な抗体であることが実証された。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図17C】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗GAPDH抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗GAPDHが透過性化細胞に結合したことから、抗GAPDHが有効な抗体であることが実証された。略語:α−GAPDH(抗GAPDH抗体)。
【図18A】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗CD14−APC結合抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18B】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗プロキシマブ−FITC結合抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18C】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗GAPDH抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18D】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗CAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図19A】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示すための陰性対照としての無染色THP−1細胞のFACS解析を示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞と比較した(図19C)。染色しなかった細胞を陰性対照とした。
【図19B】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞(図19C)と比較した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図19C】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞(図19C)と比較した。
【図19D】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞と比較した(図19C)。プロキシマブとのプレインキュベーションにより、抗CAP1抗体のみで染色した細胞(図19C)と比較して、抗CAP1抗体に結合した細胞(図19D)の集団の有意な減少がもたらされた。
【図20】THP−1細胞へのプロキシマブ結合の滴定曲線を示す図である。ヒトTHP−1細胞(0.5×106/tube)を様々な濃度のプロキシマブとともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗ヒトFcIgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。略語:Ab(抗体);bin.(結合);PROX(抗ペプチド6ヒト化プロキシマブ抗体)。
【図21】THP−1細胞への抗CAP1結合の滴定曲線を示す図である。ヒトTHP−1細胞(0.5×106/tube)を様々な濃度の抗CAP1とともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスFcIgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。略語:Ab(抗体);bin.(結合);α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図22】THP−1細胞中のCAP1の特異的ノックダウンを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)をトランスフェクトした。48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、細胞を10%SDSタンパク質試料緩衝液を用いて抽出した。電力により細胞抽出物をSDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転移させた。ニトロセルロース膜をマウス抗CAP1抗体(50ng/ml)を用いてウエスタンブロッティングに供し、抗アルファ−アクチン抗体を用いて再ブロッティングした。CAP1タンパク質レベルの特異的減少が認められた。略語:Cont.(All Star Negative siRNA対照);α−CAP1(抗CAP1抗体);α−Actin(抗アルファ−アクチン抗体)。
【図23A】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNAをトランスフェクトし、抗CAP1抗体(500ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。略語:Cont.(All Star Negative siRNA対照);α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図23B】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNAをトランスフェクトし、プロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。略語:;PROX(プロキシマブ抗体)。
【図23C】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にヒトCAP1 siRNA(50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、抗CAP1抗体(500ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。対照細胞(図23A、23B)と比較して、siRNAによるCAP1発現の減少の後に細胞への抗CAP1の結合の有意な減少が認められた。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図23D】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にヒトCAP1 siRNA(50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、プロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。対照細胞(図23A、23B)と比較して、siRNAによるCAP1発現の減少の後に細胞へのプロキシマブの結合の有意な減少が認められた。略語:PROX(プロキシマブ抗体)。
【図24A】抗ペプチド6がIL−10プロモーターへのCREB転写因子の結合を誘導することを示す図である。CREモチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、B24抗ペプチド6抗体又は完全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した(最も左のレーン)完全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのCREB転写因子の有意な結合をもたらした。突然変異CREは、部位へのB24誘導タンパク質結合をほぼ完全に無効にした(最も右のレーン)。略語:CRE(cAMP応答配列);mut(突然変異);AP6(B24抗ペプチド6抗体)。
【図24B】抗ペプチド6がIL−10プロモーターへのSP1転写因子の結合を誘導することを示す図である。Sp1モチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、B24抗ペプチド6抗体又は全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した(最も左のレーン)全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのSp1転写因子の有意な結合をもたらした。突然変異Sp1は、部位へのB24誘導タンパク質結合をほぼ完全に無効にした(最も右のレーン)。略語:mut(突然変異);AP6(B24抗ペプチド6抗体)。
【図25】プロテインキナーゼA(PKA)阻害剤KT5720の作用部位を示す図である。図に矢印により示すPKA阻害剤KT5720の作用部位を示す。略語:AC(アデニリルシクラーゼ);Nuc(核);Prot.(タンパク質);In.(阻害剤)。
【図26】KT5720が抗ペプチド6抗体によるIL−10の誘導を用量依存的に抑制することを示す図である。抗ペプチド6抗体とのインキュベーションの15分前にPBMCにKT5720を様々な濃度で加えた。これが、IL−10分泌の用量依存的な抑制をもたらした。略語:DMSO(ジメチルスルホキシド)、UT(無処理)。
【図27A】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。プロキシマブのF(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてFITCで標識した。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−PE結合体のみで染色した。略語:α(抗)。
【図27B】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。プロキシマブのF(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてFITCで標識した。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−PE結合体並びにプロキシマブF(ab)2−FITC結合体で染色した。略語:α(抗);PROX(プロキシマブ抗体);F(ab)2(プロキシマブF(ab)2)。
【図27C】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。FITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセント(プロキシマブのF(ab)2を含まない−黒色、プロキシマブのF(ab)2を含む−灰色)を示す。略語:co.(計数)。
【図27D】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞を不染色のままとした。略語:Us.(無染色);ce.(細胞)。
【図27E】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞をプロキシマブのF(ab)2−FITC結合体で染色した。プロキシマブのF(ab)2は、有意なパーセントのCD14+集団に結合した。略語:PROX(プロキシマブ抗体);F(ab)2(プロキシマブF(ab)2)。
【図27F】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞を抗CD14−APC結合体で染色した。略語:α(抗)。
【図28】プロキシマブ、プロキシマブのF(ab)2断片及び抗CAP1抗体がヒトPBMCからのIL−10分泌を誘導することを示す図である。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞をプロキシマブ(200μg)、プロキシマブのF(ab)2(150μg)又は抗CAP1抗体(8μg)とともにRPMI中でインキュベートし(48時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。略語:PROX(プロキシマブ、抗ペプチド6ヒト化抗体);F(ab)2(プロキシマブのF(ab)2断片);α−CAP1(抗CAP1抗体);UT(無処理)
【図29】作用機序を示す図である。抗ペプチド6抗体が単球細胞膜上のCAP1に結合することにより、Sp1及びCRE結合タンパク質を含む転写因子のcAMP/PKA依存性活性化を誘発し、IL−10の転写及び分泌を増加させ、抗炎症性免疫応答を促進する。略語:AP6(抗ペプチド6抗体);Act.(活性化);Sil.(サイレンシング);Rep.(リプレッサー);Path.(経路);Sec.(分泌)
【図30】ホモ・サピエンス(Homo sapiens)CAP1アミノ酸配列を示す図である。配列番号6としても表示される、ヒトCAP1タンパク質アミノ酸配列(GenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされるGenBankアクセス番号NP_001099000.1)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、HSP65分子内のエピトープを特異的に認識する抗体、すなわち抗ペプチド6抗体とCAP1分子との直接的相互作用を初めて示すものである。この相互作用は、抗炎症性サイトカインIL−10の誘導をもたらす。本発明はさらに、この抗ペプチド6抗体経路へのcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)の関与を示している。これらの結果は、この免疫調節経路における重要なメディエーターとしての、また、したがって、免疫調節の可能な標的としてのCAP1の役割を明確に示している。
【0027】
本発明はさらに、抗CAP1抗体によるIL−10の活性化を示し、それにより、CAP1及び免疫調節剤としてそれと相互作用する化合物を用いる実現可能性を実証している。
【0028】
したがって、第1の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物に関する。特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0029】
上で示したように、本発明は、抗ペプチド6抗体が、CAP1に結合し、抗炎症性サイトカインIL−10の発現の増加と、それによるTh1/Th2細胞均衡の調節をもたらすシグナル伝達経路を開始させることを示している。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む。
【0031】
特定の実施形態において、そのようなCAP1結合化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物であってよい。1つの特定の実施形態において、CAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物は、タンパク質ベースの分子、具体的には、免疫グロブリン様分子であってよい。より具体的には、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗体であってよい。特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗CAP1抗体又はCAP1を認識し、それに結合する抗体を含み、ただし、抗体は、本発明により記述されるポリクローナル、モノクローナル、キメラ若しくはヒト化抗ペプチド6抗体のいずれか、又はペプチド6(配列番号1)に対する、若しくはそれを認識する他の抗体ではないことをさらに理解されよう。
【0032】
さらに、特定の実施形態によれば、抗CAP1抗体であってよい、本発明のCAP1結合化合物は、CAP1分子内の抗ペプチド6抗体結合部位と同じである部位を介して、又は異なる部位を介してCAP1分子と相互作用し得る。
【0033】
例11により示されているように、CAP1を特異的に認識し、それに結合する抗CAP1抗体は、IL−10の発現の顕著な増加をもたらす。したがって、本発明の特定の実施形態は、有効成分としての役割を果たす化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、TH1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する、単離および精製された抗CAP1抗体であってよい、本発明の組成物に関する。
【0034】
特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、抗炎症性サイトカインの発現の増加を伴う。そのような抗炎症性サイトカインは、IL−10、IL−4、IL−6、IL−11、IL−13及びIL−1受容体アンタゴニストのいずれか1つであってよい。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、IL−10の発現の増加を伴う。より具体的には、そのような増加は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、10%〜90%、10%〜80%、10%〜70%、10%〜60%又は10%〜50%の増加であり得る。特に、適切な対照、具体的には無処理対象又は細胞と比較して発現の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の増加。
【0035】
上及び他の実施形態によれば、本発明は、本発明の組成物に用いるCAP1を特異的に認識し、それに結合する抗体を提供する。したがって、「結合特異性」、「CAP1に特異的に結合する」、「CAP1と特異的に免疫応答する」、「CAP1に対して特異的な」又は「特異的に認識する」という用語は、CAP1分子内のエピトープについて言及するとき、タンパク質及び他の生物製剤の不均一集団におけるエピトープの存在を決定する結合反応に適用されることに留意されたい。したがって、指定の免疫検定条件下で、特異抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて特定のエピトープに結合する。
【0036】
「エピトープ」という用語は、抗体により認識され、結合されることができる分子、具体的にはCAP1の部分を意味する。エピトープ又は「抗原決定基」は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団から通常なり、特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。
【0037】
上で示したように、特定の実施形態において、本発明は、単離および精製された抗CAP1抗体を提供する。本明細書で用いているように、抗体又は抗体をコードする核酸分子との関連における「単離された」又は「実質的に精製された」は、抗体又は核酸がその自然環境から取り出されたこと、又はその自然の状態から変化させられたことを意味する。したがって、「単離された」は、抗体又は核酸分子が精製された程度を必ずしも反映しない。しかし、ある程度まで精製された抗体又は核酸分子は「単離され」ていると理解されよう。抗体又は核酸分子が自然環境に存在しない、すなわち天然に存在しない場合、この分子は、存在する場所にかかわらず「単離され」ている。
【0038】
本発明の組成物により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生は、例えば、Current Protocols in Immunology、Wiley and Sons Inc.の第2章に記載されている。
【0039】
モノクローナル抗体は、免疫化動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節から採取したB細胞からハイブリッド細胞の増殖に有利な条件下で不死化B細胞との融合により調製することができる。モノクローナル抗体を産生させる技術は、上記のCurrent Protocols in Immunologyの第2章などの多くの論文及び教科書に記載されている。
【0040】
本明細書で用いているように、「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1つ又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。広く認められている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン及びミュー定常領域遺伝子並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子などである。軽鎖は、カッパ又はラムダと分類される。重鎖は、順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義するガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はエプシロンと分類される。
【0041】
抗体は、完全な免疫グロブリンとして、又は例えば、軽鎖及び重鎖可変領域のみを含むFv断片、可変領域及び定常領域の一部を含むF(ab)若しくはF(ab)’2断片、単鎖抗体などを含む様々な形の改変体として存在していてよい。抗体は、動物若しくはヒト由来であってよく、又はキメラ若しくはヒト化抗体であってよい。本明細書で用いているように、「抗体」という用語は、これらの様々な形を含む。
【0042】
具体例としての免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、それぞれの対が1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する、ポリペプチド鎖の2つの同じ対を含む。各鎖のN末端は、抗原認識に主として関与する約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を意味する。
【0043】
本明細書において上で示したように、特定の実施形態によれば、本発明は、免疫調節組成物中の有効成分としての抗CAP1抗体及びその抗原結合断片の使用を提供する。「抗原結合断片」という用語は、CAP1への結合を保持している抗体の一部を意味する。抗体の機能的断片の例は、完全な抗体分子、Fv、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)’2及びそれらの任意の組合せ又は標的抗原に結合することができる免疫グロブリンペプチドの他の機能部分などの抗体断片を含むが、これらに限定されない。当業者により理解されるように、様々な抗体断片を様々な方法、例えば、ペプシンなどの酵素による完全な抗体の消化又は新規合成により得ることができる。抗体断片は、化学的に又は組換えDNA法を用いることによりしばしば新規合成される。したがって、抗体という用語は、本明細書で用いているように、全抗体の修飾により生産される抗体断片、又は組換えDNA法を用いて新規合成されるもの、又はファージディスプレイライブラリーを用いて同定されるものを含む。抗体という用語は、二価分子、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディも含む。
【0044】
「VH」又は「VH」への言及は、Fv、scFv、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)又はFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味する。「VL」又は「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味する。
【0045】
より具体的には、「単鎖Fv」又は「scFv」という句は、伝統的な2本鎖抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインが接合されて1本鎖を形成している抗体を意味する。一般的に、リンカーペプチドが2つの鎖の間に挿入されて、適正な折りたたみ及び活性結合部位の形成を妨害することなく、可変ドメインの安定化を可能にする。本発明により使用される単鎖抗CAP1抗体は、単量体として結合し得る。他の具体例としての単鎖抗体は、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディを形成する。
【0046】
本発明の組成物及び方法により使用される抗CAP1抗体は、ヒト化抗体であってよいことは理解されよう。本明細書で用いているように、「ヒト化」という用語は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列など)であり、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む非ヒト(例えば、マウス)抗体の形を意味する。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び容量を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種の超可変領域の残基(ドナー抗体)により置換されているヒト免疫グロブリンである。いくつかの場合に、ヒト免疫グロブリンのFv骨格領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見いだされない残基を含んでいてよい。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良し、最適化するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域に対応する少なくとも1つ、一般的に2つの可変ドメインのすべてを実質的に含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、一般的にヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部も含む。
【0047】
本明細書で前に示し、以下の実施例により示すように、抗CAP1抗体は、抗炎症性サイトカインIL−10の発現の顕著な増加をもたらした。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、抗炎症性サイトカインの発現の増加を伴う。そのような抗炎症性サイトカインは、IL−10、IL−4、IL−6、IL−11、IL−13及びIL−1受容体アンタゴニストのいずれか1つであってよい。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、IL−10の発現の増加を伴う。より具体的には、そのような増加は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、10%〜90%、10%〜80%、10%〜70%、10%〜60%又は10%〜50%の増加であり得る。特に、適切な対照、具体的には無処理対照又は細胞と比較して発現の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の増加。
【0048】
本発明による免疫調節の重要な標的としてのCAP1の実証は、免疫調節剤として単離および精製されたCAP1タンパク質又はその任意の断片の使用を可能にする。したがって、他の実施形態によれば、本発明は、それにより対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するCAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含む組成物を提供する。
【0049】
「単離された」又は「実質的に精製された」という用語は、CAP1分子などの核酸又はタンパク質に適用する場合、核酸又はタンパク質が、自然状態でそれが結合している他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。それは、乾燥物又は水溶液であり得るが、均一な状態であることが好ましい。純度及び均一性は、一般的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学手法を用いて測定される。製剤中に存在する優勢な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0050】
本発明の組成物により使用される単離及び精製されたCAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換宿主細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることに留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、Th2抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、又はTh1前炎症性サイトカインの活性化により反映されるようなTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導することができる、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片、変異型同族体若しくは誘導体(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。本明細書及び下の特許請求の範囲の項で用いる特定の実施形態によれば、CAP1タンパク質は、ヒトCAP1のアミノ酸配列、又はその任意の断片、変異型同族体若しくは誘導体を有するタンパク質を意味することは理解されよう。ヒトCAP1タンパク質の例は、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、またGenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされる配列番号6として表示されるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0051】
アミノ酸配列、例えば、CAP1タンパク質、具体的にはヒトCAP1に関して、当業者は、コードされる配列における単一アミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸を変化させ、付加し、又は欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列に対する個々の置換、欠失又は付加は、変化が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす場合、「保存的に修飾された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を収載した保存的置換表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本発明の多形変異体、種間相同体及び対立遺伝子に加えられ、それらを排除しない。
【0052】
例えば、脂肪族アミノ酸(G、A、I、L又はV)が当群の他のメンバーにより置換される置換、又はリシンのアルギンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、アスパラギンのグルタミンによるなどの他の残基の1つの極性残基による置換などの置換を行うことができる。以下の8つの群のそれぞれが互いの保存的置換である他の具体例としてのアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
7)セリン(S)、トレオニン(T)、及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0053】
「誘導体」という用語は、アミノ酸配列変異体、及び本発明で使用するポリペプチド、例えば、指定の配列の共有結合修飾を定義するのに用いる。本発明により用いるCAP1ポリペプチドの、例えば、CAP1の指定の配列の機能的誘導体は、上で構造的に定義したCAP1ポリペプチドの、例えば、指定の配列のアミノ酸配列、より具体的には、配列番号6により表示されるCAP1のアミノ酸配列との好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%の総配列相同性を有する。
【0054】
天然CAP1ポリペプチド及びその機能的誘導体に関する「相同性」は、最大の割合の相同性を得るために必要な場合、配列を整列させ、ギャップを導入した後、また配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合と本明細書において定義する。N又はC末端の伸長も挿入又は欠失も同一性又は相同性を減少させると解釈しなければならない。整列の方法及びコンピュータプログラムは、周知である。「挿入」又は「欠失」という用語は、本明細書で用いているように、1〜50アミノ酸残基、20〜1アミノ酸残基、特に、1〜10アミノ酸残基の、本発明により使用されるCAP1分子へのアミノ酸残基のそれぞれ付加又は欠失を意味することは理解されよう。より詳細には、挿入又は欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10アミノ酸のいずれか1つのものであってよい。
【0055】
2つ又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連での「同一」、「実質的同一性」、「実質的相同性」又は「同一性」の割合という用語は、同じである、又は同じである指定の割合のアミノ酸残基若しくはヌクレオチド(すなわち、指定の領域にわたる約60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い同一性)を有する2つ又はそれ以上の配列若しくは部分配列を意味する。
【0056】
「アミノ酸(単数又は複数)」は、例えば、D−アミノ酸を含む、すべての天然に存在するL−アミノ酸を意味する。アミノ酸は、周知の一文字又は三文字表記により識別される。
【0057】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の治療用組成物であって、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための、免疫調節有効量のアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物及びCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む治療用組成物を提供する。
【0058】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、免疫関連障害の治療用の治療用組成物を提供する。本発明の組成物は、CAP1と特異的に相互作用し、結合する化合物を有効成分として含む。そのような化合物の非限定的な例は、抗CAP1抗体である。
【0059】
他の態様において、本発明の医薬組成物は、CAP1並びにその任意の断片、誘導体及び変異体を有効成分として含む。
【0060】
したがって、それを必要とする対象における免疫関連障害の治療のための発明の組成物の使用をさらに提供する。
【0061】
本明細書で用いているように、「障害」又は「状態」という用語は、正常の機能の障害が存在する状態を意味する。「疾患」は、罹患している人又は人と接触している人に不快感、機能障害又は苦痛をもたらす身体及び精神の異常な状態である。時として、この用語は、傷害、身体障害、症候群、症状、逸脱行動並びに構造及び機能の非定型的変化を含むように広く用いられるが、他の状況においては、これらは、区別できるカテゴリーとみなすことができる。「疾患」、「障害」、「状態」及び「疾病」という用語は、本明細書では同等に用いることに留意されたい。「免疫関連障害」という用語は、Th1−Th2応答の不均衡に関連する。
【0062】
したがって、CAP1と相互作用し、抗炎症性サイトカインの発現を調節する化合物は、そのようなサイトカイン、例えば、IL−10の発現を増加する可能性がある。そのような化合物は、Th1/Th2均衡を抗炎症応答の方に調節することが望ましい状態において有用である可能性がある。例えば、自己免疫疾患(例えば、関節炎、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、狼瘡、グレーヴス病及び甲状腺炎、IBD)、移植片拒絶病状及び移植片対宿主病、並びに毒素性ショック、敗血性ショック及び重症敗血症などのスーパー抗原により誘発される障害などの免疫関連障害の治療において。
【0063】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体は、Th2抗炎症応答を増強することによって、免疫及び/又は炎症の抑制が有用である疾患、状態若しくは障害における炎症性症状の治療若しくは改善に、例えば、関節、筋骨格及び結合組織の障害における自己免疫及び炎症性症状の、又は過敏性、アレルギー反応、喘息、アテローム動脈硬化症、神経炎症性及び神経変性疾患、炎症性腸疾患、耳炎及び他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎及び他の皮膚疾患、後部及び前部ぶどう膜炎、結膜炎、視神経炎、強膜炎並びに他の免疫及び/又は炎症性眼疾患に関連する自己免疫及び炎症性症状の治療若しくは改善に有用であり得るが、これらに限定されない。
【0064】
より具体的には、一般的に、CAP1に結合する免疫調節化合物を用いる本発明の組成物並びに方法は、例えば、イートン−ランバート症候群、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、ギラン−バレー症候群、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば、急性上腕神経炎、多腺性欠乏症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば、橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベヒテレフ症候群、強直性脊髄炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病などであるが、これらに限定されない自己免疫疾患の治療に用いることができる。
【0065】
或いは、CAP1に結合する免疫調節化合物は、抗炎症性サイトカインの発現の減少をもたらす可能性がある。これは、Th1/Th2均衡をTh1前炎症性反応の方に移動させる可能性がある。前炎症性反応の方に免疫反応を調節する化合物は、増殖性病態などの免疫関連障害の治療に有用である可能性がある。したがって、本発明はさらに、免疫関連障害を治療するための組成物及び方法を提供する。
【0066】
より具体的には、そのような増殖性状態は、悪性障害であり得る。特定の実施形態によれば、悪性増殖性障害は、癌、肉腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫からなる群から選択される充実性及び非充実性腫瘍であり得る。より詳細には、悪性障害は、黒色腫、肝細胞癌、結腸癌、骨髄腫、急性又は慢性白血病であり得る。
【0067】
本発明を記述するために本明細書で用いているように、「悪性増殖性障害」、「癌」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」という用語はすべて、組織又は臓器の過形成に同等に関連する。組織がリンパ又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環細胞の非充実性腫瘍を含み得る。他の組織又は臓器の悪性腫瘍は、充実性腫瘍を形成し得る。一般的に、本発明の組成物並びに方法は、非充実性及び充実性腫瘍、例えば、癌、黒色腫、白血病及びリンパ腫の治療に用いることができる。
【0068】
「治療する」という用語は、本明細書で用いているように、特に示さない限り、そのような用語が適用される障害又は状態、又はそのような障害又は状態の1つ若しくは複数の症状を逆転させること、軽減させること、それらの進行を抑制すること、又は予防することを意味する。「治療」という用語は、本明細書で用いているように、特に示さない限り、上で「治療する」を定義しているように、治療する行為を意味する。
【0069】
本発明の医薬組成物は、遊離の形の活性化合物を含み、治療する対象に直接投与し得ることに留意されたい。或いは、活性分子のサイズによって、投与の前にそれを担体に結合させることが望ましいことがあり得る。治療用製剤は、従来の投与製剤で投与することができる。製剤は、一般的に上で定義した少なくとも1つの有効成分並びに1つ又は複数のその許容される担体を含む。
【0070】
各担体は、他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で薬学的且つ生理学的に許容されるものであるべきである。製剤としては、経口、直腸、鼻又は非経口(皮下、筋肉内、腹腔内(IP)、静脈内(IV)及び皮内を含む)投与に適するものなどがある。
【0071】
注射用に適する医薬剤形としては、滅菌済み水性液剤又は分散製剤及び滅菌済み注射用液剤又は分散製剤の即時調製用の滅菌済み散剤などがある。すべての場合に、医薬剤形は、無菌性でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度まで流動体でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0072】
微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物における使用によってもたらすことができる。
【0073】
本発明の医薬組成物は、一般的にそのオスモル濃度を調節する物質である緩衝剤、並びに場合によって、1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は当技術分野で公知の添加物を含む。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、並びに植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散製剤の場合に必要な粒径を維持することにより、界面活性剤を用いることにより、適切な流動性を維持することができる。
【0074】
本明細書で用いているように、「薬学的に許容される担体」は、いずれか及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤などを含む。医薬活性物質用のそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の媒体又は薬剤が有効成分と不適合性である場合を除き、治療用組成物におけるその使用は、予期される。
【0075】
局所投与用の医薬組成物及び製剤は、経皮貼付剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び散剤などであり得る。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、粘稠化剤などは、必要又は望ましいものであり得る。
【0076】
経口投与用の組成物及び製剤は、散剤又は果粒剤、水中若しくは非水媒体中懸濁剤又は液剤、カプセル剤、サシェ剤又は錠剤などである。粘稠化剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤は、望ましいものであり得る。
【0077】
単位剤形で都合よく提供することができる本発明の医薬組成物は、製薬産業で周知の従来技術により調製することができる。そのような技術は、有効成分を医薬担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と結合させるステップを含む。一般的に、製剤は、有効成分を液体担体又は微細な固体担体又は両方と均一且つ緊密に結合させ、次に、必要な場合、生成物を成形することにより調製する。
【0078】
本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル剤、坐剤及び浣腸剤などであるが、これらに限定されない、多くの可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混合媒体中懸濁剤として製剤化することができる。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどの懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含んでいてよい。懸濁剤はまた、安定化剤を含んでいてよい。本発明の医薬組成物はまた、乳剤及びリポソーム含有製剤を含むが、これらに限定されない。
【0079】
対象における望ましい効果をもたらすのに必要な有効量を含むすべてのそのような化合物の性質、入手可能性及び供給元並びに投与は、当技術分野で周知であり、本明細書でさらに記述する必要はない。医薬組成物の調製は、当業者に周知であり、多くの論文及び教科書に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro A.R.編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990年、特にその1521〜1712頁を参照のこと。
【0080】
CAP1に結合する化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体又はCAP1タンパク質又はその任意の断片を含む医薬組成物は、非経口投与、すなわち、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)及び静脈内(i.v.)投与に有用である。非経口投与用組成物は、一般的に抗体の溶液又は許容される担体、好ましくは水性担体に溶解したそのカクテルを含む。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどを用いることができる。これらの溶液は、無菌性であり、一般的に粒子状物質を含まない。組成物は、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤等、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの生理的条件を近似するために必要に応じて薬学的に許容される補助物質を含んでいてよい。これらの製剤中のCAP1結合化合物、例えば、抗CAP1抗体の濃度は、広く、すなわち、重量で約0.01%未満、通常少なくとも約0.1%から5%ほどまで変化し得るものであり、主として、選択される個々の投与方法による液体容積及び粘度に基づいて選択される。
【0081】
より具体的には、CAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体、又はCAP1分子又はその任意の断片を含む注射用組成物は、水、生理食塩水、等張性生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝生理食塩水などに溶解して調製することができ、非毒性界面活性剤と場合によって混合することができる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を予防するための保存剤を含んでいてよい。注射又は注入に適する医薬剤形としては、有効成分を含む滅菌水性液剤若しくは分散製剤又は滅菌散剤などであり、散剤は、滅菌注射用又は注入用液剤若しくは分散製剤の即時調製に適応している。好ましくは、最終的な剤形は、滅菌液体であり、製造及び貯蔵条件下で安定である。液剤、懸濁剤又は分散製剤の液体担体又は媒体は、例えば、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール等などのポリオール、植物油、非毒性グリセリルエステル及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であってよい。液剤、懸濁剤又は分散製剤の適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散製剤の場合には所望の粒径の維持により、又は非毒性界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。砂糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムなどの等張性物質を含めることができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。溶解度向上剤を加えることができる。
【0082】
滅菌注射用組成物は、CAP1結合化合物、例えば、抗CAP1抗体、又はそれに代わるものとして、CAP1分子及びその任意の断片を例えば、上で挙げたような様々な他の成分とともに適切な溶媒に所望の量で混入し、続いて、例えば、ろ過滅菌により所望のように滅菌することにより、調製することができる。滅菌注射用液剤の調製用の滅菌散剤の場合、調製方法は、有効成分とあらかじめ滅菌ろ過した溶液中に存在する付加的な所望の成分の粉末を生ずる真空乾燥及び凍結乾燥技術を含む。ろ過滅菌、例えば、0.22ミクロンフィルター又はナノろ過、ガンマ又は電子線滅菌などの適切な滅菌法を用いることができる。
【0083】
様々な実施形態において、最終溶液は、約4から約9まで、約5から約7まで、約5.5から約6.5まで、又は約6のpHを有するように調節する。組成物のpHは、薬学的に許容される酸、塩基又は緩衝剤により調整することができる。
【0084】
さらに、本発明の組成物は、1回の投与当たり所定の量の各有効成分を含む単位剤形で提供することができる。そのような単位は、0.001〜100mg/kg体重のCAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体を供給するように構成されている。具体的には、0.01〜50mg/kg、0.1〜10mg/kg、0.5〜10mg/kg、1〜10mg/kg、5〜15mg/kg、10〜30mg/kg、25〜50mg/kg、40〜80mg/kg又は60〜100mg/kg。そのような用量は、1回投与で、又は複数回の個々の用量として供給することができる。最終的用量は、もちろん治療する状態、投与経路並びに患者の年齢、体重及び状態に依存し、医師の裁量による。
【0085】
上で示したように、非経口経路に加えて、本発明の組成物は、他の適切な経路により、例えば、経口(口腔若しくは舌下を含む)、直腸、鼻、局所(口腔、舌下若しくは経皮を含む)又は膣経路により投与するように構成することができる。そのような製剤は、製薬学の分野で公知の方法により、例えば、有効成分を担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と結合させることにより、調製することができる。
【0086】
経口投与用に構成された医薬製剤は、カプセル剤若しくは錠剤、散剤若しくは果粒剤、水性若しくは非水性液体中液剤又は懸濁剤、可食発泡体若しくはホイップ体、又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤などの個別単位として提供することができる。
【0087】
経皮投与用に構成された医薬製剤は、長時間にわたりレシピエントの表皮と緊密接触の状態を保持することを意図した個別貼付剤として提供することができる。局所投与用に構成された医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアゾール剤又は油剤として製剤化することができる。
【0088】
眼又は他の外部組織、例えば、口及び皮膚への適用については、製剤は、好ましくは局所軟膏剤又はクリーム剤として適用する。軟膏剤に製剤化する場合、有効成分は、パラフィン又は水混和性軟膏基剤とともに用いることができる。或いは、有効成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を用いてクリーム剤に製剤化することができる。
【0089】
眼への局所投与用に構成された医薬製剤は、有効成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁されている、点眼剤などである。
【0090】
口内への局所投与用に構成された医薬製剤は、トローチ剤、パステル剤及び洗口剤などである。
【0091】
直腸投与用に構成された医薬製剤は、坐剤又は浣腸剤として提供することができる。
【0092】
担体が固体である、鼻投与用に構成された医薬製剤は、鼻の近くに保持した粉末の容器から鼻から吸い込む方法で、すなわち、鼻道を介する急速な吸入により投与される例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒径を有する粗散剤などである。鼻噴霧剤又は点鼻剤としての投与用の担体が液体である適切な製剤は、有効成分の水性又は油性液剤などである。
【0093】
吸入による投与用に構成された医薬製剤は、様々なタイプの計量加圧エアゾール容器、噴霧器又は吸入器により発生させることができる微粒子ダスト剤又はミスト剤などである。
【0094】
膣投与用に構成された医薬製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、発泡体又は噴霧製剤として提供することができる。
【0095】
好ましい単位用量製剤は、有効成分の、本明細書で上で挙げた1日量若しくは分割量、又はその適切な一部を含むものである。
【0096】
上で詳細に言及した成分に加えて、製剤は、問題の製剤の種類を考慮した当技術分野で常用の他の薬剤も含んでいてよく、例えば、経口投与に適するものは、着香剤を含んでいてよいことは理解されよう。
【0097】
本発明の組成物は、予防及び/又は治療処置のために投与することができることにさらに留意されたい。治療への適用においては、組成物を、免疫関連障害(例えば、関節炎、IBD及び糖尿病)に既に罹患している患者に状態及びその合併症を治療又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で投与する。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。このような使用における有効な量は、状態の重症度及び患者自身の免疫系の一般的状態に依存するが、一般的に約0.001〜約100mg/kgの範囲のCAP1結合タンパク質、具体的には抗CAP1抗体であり、体重1kg当たり0.01〜50mg及び0.1〜10mgの用量がより一般的に用いられる。毎日、毎週又は毎月のスケジュールでの単回又は反復投与を行うことができ、用量レベル及びパターンは担当医により選択される。
【0098】
予防への適用においては、抗CAP1抗体を含む組成物を、疾患状態を発現するリスクがある患者に患者の抵抗性を高めるために投与する。そのような量は、「予防有効量」と定義される。このような使用においては、正確な量は、再び患者の健康状態及び免疫の一般的レベルに依存するが、一般的に1回の投与当たり0.001〜100mg、特に1回の投与当たり0.01〜10mg、1回の投与当たり0.1〜10mg、又は1回の投与当たり或いは体重1kg当たり1〜10mgである。
【0099】
組成物の単回又は反復投与は、患者により要求され、耐えられる用量及び頻度によって行う。いずれにしても、組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な量のCAP1結合タンパク質、具体的には本発明により使用される抗CAP1抗体を供給するはずである。好ましくは、該用量は、1回投与するが、治療結果が達成されるまで、又は副作用が療法の中止の正当な理由となるまで、定期的に適用することができる。一般的に、該用量は、患者に許容できない毒性をもたらすことなく、疾患を治療又はその症状若しくは徴候を改善するのに十分である。
【0100】
本発明の組成物の放出制御非経口製剤は、インプラント、油性注射剤又は微粒子系として製造することができる。
【0101】
微粒子系は、ミクロスフェア、ミクロ粒子、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア及びナノ粒子などである。ミクロカプセルは、治療用組成物を中心コアとして含む。ミクロスフェアにおいては、治療薬が粒子全体に分散されている。約1μmより小さい粒子、ミクロスフェア及びミクロカプセルは、一般的にそれぞれナノ粒子、ナノスフェア及びナノカプセルと呼ばれる。キャピラリーは、ナノ粒子のみが静脈内投与されるように約5μmの直径を有する。ミクロ粒子は、一般的に直径が約100μmであり、皮下又は筋肉内投与される。
【0102】
第2の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法を提供する。本発明の方法は、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物の少なくとも1つを対象に投与するステップを含む。
【0103】
1つの特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のCAP1に特異的に相互作用し、結合する化合物又はそれを含む任意の組成物を対象に投与することにより、治療する対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む。
【0104】
特定の実施形態によれば、そのようなCAP1結合化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物であってよい。1つの特定の実施形態において、CAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物は、タンパク質ベースの分子、具体的には、免疫グロブリン様分子であってよい。より具体的には、本発明の方法及び組成物により使用されるCAP1結合化合物は、抗体であってよい。そのような抗体の特定の例は、CAP1と直接的又は間接的に特異的に相互作用し、IL−10の発現の増大をもたらす抗CAP1抗体及び抗ペプチド6抗体である。本明細書における下文の例11は、IL−10の発現の誘導のための抗CAP1抗体の使用を開示している。
【0105】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗CAP1抗体又はCAP1を認識し、それに結合する抗体を含み、ただし、抗体は、本発明若しくは本発明者らの以前の刊行物及び願書により記述されたポリクローナル、モノクローナル、キメラ若しくはヒト化抗ペプチド6抗体のいずれか、又はペプチド6(配列番号1)に対する、若しくはそれを認識する他の抗体ではないことはさらに理解されよう。
【0106】
より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTH1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である化合物を対象に投与するステップを含む。
【0107】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生は、例えば、Current Protocols in Immunology、Wiley and Sons Inc.の第2章に記載されている。
【0108】
モノクローナル抗体は、免疫化動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節から採取したB細胞からハイブリッド細胞の増殖に有利な条件下で不死化B細胞との融合により調製することができる。モノクローナル抗体を産生させる技術は、上記のCurrent Protocols in Immunologyの第2章などの多くの論文及び教科書に記載されている。
【0109】
「抗体」という用語は、完全な分子並びに例えば、抗原に結合することができる例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味する[Wahlら、J.Nucl.Med.、24巻、316〜325頁(1983年)]。
【0110】
Fab及びF(ab’)2並びに本発明において有用な抗体の他の断片は、完全な抗体分子について本明細書に開示する方法に従って用いることができることは、理解されるであろう。そのような断片は、パパイン(Fab断片を生成させるため)又はペプシン(F(ab’)2断片を生成させるため)などの酵素を用いてタンパク質溶解的切断により一般的に生成させる。
【0111】
他の代替実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらを含む組成物を対象に投与することにより、対象におけるTH1/Th2間の均衡を調節するステップを含む。
【0112】
CAP1は、本明細書で用いているように、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、またGenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされる配列番号6と表示されるアミノ酸配列を含むヒトCAP1タンパク質を意味することは理解されよう。
【0113】
本発明の組成物及び方法により治療される「患者」又は「必要とする対象」とは、上述の状態に罹患している可能性があり、本明細書で述べる治療方法が望ましい、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、マウス及びネコ対象を含む任意の哺乳動物を意味する。患者への本発明の組成物の投与は、自己投与及び他の人による患者への投与を含む。
【0114】
他の特定の実施形態によれば、本発明より使用される有効成分又はそれを含む組成物は、任意の投与方法により投与することができる。例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、経膣、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸若しくは皮下投与、又はそれらの組合せ。
【0115】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医学者により求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き起こす薬物又は医薬品の量を意味するものとする。特定の実施形態によれば、治療有効量は、約0.001〜100mg/kgの範囲である。特定の実施形態は、0.001〜100mg/kg体重のCAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体を含む。具体的には、0.01〜10mg/kg、0.1〜10mg/kg、0.5〜10mg/kg、1〜10mg/kg、5〜15mg/kg、10〜30mg/kg、25〜50mg/kg、40〜80mg/kg又は60〜100mg/kg。
【0116】
さらに、特定の実施形態において、本発明の方法により毎日投与されるCAP1結合化合物又はCAP1分子のいずれかの治療有効量は、約0.001mg/kgから約10mg/kg体重まで、具体的には、約0.010〜8又は0.020〜6、0.030〜5mg/kgの範囲であり得る。特定の実施形態によれば、有効量は、場合によって1日当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450及び500mgのいずれか1つであり得る。具体的には、有効量は、1日当たり約0.01〜1000mg、1日当たり10〜500mg、より具体的には、1日当たり0.01、0.1、1、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450及び500mgのいずれか1つであり得る。そのような有効量がマウスに固有のものであることは理解されよう。さらに、一般的に「ヒト用量」は、成人健常志願者における治療薬の最初の臨床試験における最高安全開始用量を推定する産業界向け指針に従って、各ヒト等価用量(HED)(mg/kg)を得るためにマウスにおける用量(mg/kg)を約12で割り、さらに10(マウスからヒトへの外挿に際しての安全係数)で割ることによって計算することができる。CAP1結合化合物又は代わりになるべきものとして、CAP1分子のこの有効量は、単位剤形内に含まれることが好ましい。さらに、本発明による化合物の投与は、定期的であってよく、例えば、少なくとも約3日間から3ヵ月間にわたり1日2回、1日3回又は少なくとも1日1回の定期的投与が有効であり得る。より低い用量の利点は、当業者に明らかである。これらは、とりわけ、特に長期の使用における副作用のリスクがより低いこと、及び患者が治療に対する感受性が低い状態になるリスクがより低いことなどである。
【0117】
他の実施形態によれば、本発明により使用される単位剤形は、単回又は反復投与用であってよい。他の実施形態によれば、前記単位剤形の投与は、治療上十分な期間にわたり1から5、10又は24時間ごとに反復する。代替実施形態によれば、単位剤形は、投与後かなりの時間にわたりpH非依存的薬物放出をもたらす徐放性単位剤形であってよい。
【0118】
他の不都合な適応症の治療は、1日当たり約0.001mgから1日当たり約1000mgまで、1日当たり約0.01mgから1日当たり約500mgまで、1日当たり約0.1mgからから1日当たり約500mgまで、1日当たり約1mgから1日当たり約500mgまで又は1日当たり約10mgから1日当たり約500mgまでの範囲の本発明により使用されるCAP1結合化合物の用量を用いて行うことができ、且つ/又は少なくとも1日の間の後にほぼ生命の治療まで行うことができることに留意されたい。他の実施形態において、本発明のCAP1結合化合物を用いた治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、30、60、90日の治療後に行うことができ、生命治療まで進む。
【0119】
異なる状態の治療は、異なる用量又は異なる期間の使用を示すことがあることに留意されたい。これらは、熟練した開業医には明らかである。
【0120】
上で示したように、本発明は、免疫関連障害、例えば、自己免疫又は炎症性障害を治療するのに特に適する方法及び医薬組成物を提供する。
【0121】
以下の実施例は、確定された炎症性関節炎の治療に対する本発明の組成物及び方法の適用性を実証している。より具体的には、AAについて誘発し、同時に、CAP1と相互作用することが示された本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体により治療したLewisラットは、関節炎の有意な減少を示した。
【0122】
CAP1と相互作用する他の化合物、例えば、抗CAP1抗体は、IL−10の発現の増大によって示されたように、抗炎症応答の明らかな誘導を示した。したがって、これらの化合物は、免疫関連障害を治療するための免疫調節剤として適用できる可能性がある。
【0123】
Berent J.ら[Berent J.ら、Springer Semin.Immunopathol.、25巻、7〜63頁(2003年)]により示されたように、アジュバント関節炎(AA)は、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)及び敗血症性関節炎の十分に確立された動物モデルであることに留意されたい。
【0124】
それぞれ異なる原因を有する炎症性関節炎及び変性関節炎という2つの主なカテゴリーに一般的に分類することができる関節炎の異なる形が存在する。したがって、1つの特定の実施形態によれば、本発明の方法及び医薬組成物は、炎症性障害、例えば、炎症性関節炎の治療及び/又は改善を明確に目的とし得る。
【0125】
炎症性関節炎は、滑膜炎、骨侵食、骨減少症、軟組織腫脹及び均一な関節腔狭窄により特徴付けられる。より具体的には、関節炎症の顕著な特徴は、滑膜炎及び骨の侵食である。後者は、薄く、白色の軟骨下骨板の局所不連続性として最初に出現する。通常、この軟骨下骨板は、重症骨減少症の場合でさえ見ることができるが、その不連続性が侵食を示す。関節周囲骨減少症及び限局性軟骨下骨減少症が真の骨侵食の前に出現し得ることは真実であるが、それは、明確な関節炎症を示す骨侵食の存在である。骨侵食が広がるにつれて、骨の破壊が髄腔内の小柱に及ぶ。炎症性関節炎の1つの重要な特徴は、周縁骨侵食の概念に関連する。この用語は、炎症性滑膜関節の周縁に位置する骨侵食に与えられる。この特定の位置は、関節腔内にあるが、ヒアリン軟骨により覆われていない関節の部分である。したがって、初期の関節炎症は、関節表面の下の軟骨下骨板の侵食の前の周縁侵食をもたらす。骨侵食を探す場合、様々な骨表面を探索するために関節の複数個所の調査が必須である。炎症性関節過程の第2の重要な特性は、均一な関節腔狭窄である。これは、関節軟骨の破壊が関節腔内全域で均一であるために起こる。炎症性関節疾患の第3の所見は、軟組織腫脹である。
【0126】
炎症性関節炎は7つのサブグループにさらに分類することができ、したがって、本明細書で述べる本発明の組成物並びに方法は、異なるサブグループのすべての炎症性関節炎状態を治療するのに適用できることは理解されよう。
【0127】
より具体的には、単一関節の病変は、敗血症性関節炎を示唆する。敗血症性関節炎の原因は、ブドウ球菌属又は連鎖球菌属微生物による血行性播種に通常関連する。敗血症性関節のX線像の特徴は、炎症性関節炎のそれ、すなわち、関節周囲骨減少、均一関節腔狭窄、軟組織腫脹及び骨侵食を含む。すべての所見が同時に存在するとは限らず、急性では、骨侵食が認められないことがある。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、敗血症性関節炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。
【0128】
全身性関節炎は、対照的に、複数の関節の病変によって特徴付けられ、2つの主なカテゴリー、すなわち、関節リウマチ及び血清陰性脊椎関節症を含む。
【0129】
一実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、関節リウマチの治療及び/又は改善のために用いることができる。関節リウマチ(RA)は、最も一般的には関節(関節炎)及び腱鞘における炎症及び組織損傷、並びに貧血を引き起こす慢性全身性自己免疫障害である。関節リウマチは、肺、心膜、胸膜及び眼の強膜におけるび漫性炎症、また、最も一般的には皮膚の下の皮下組織における小結節性病変ももたらし得る。関節リウマチは、機能及び運動性の実質的な喪失をもたらし得る身体障害を引き起こす有痛性の状態であり得る。リウマトイド因子及び環状シトルリン化ペプチドに対する抗体などの血清学的マーカーは、関節リウマチの重要なインジケーターである。関節リウマチのX線像の特徴は、関節炎症のそれであり、特有の骨減少症、均一関節腔喪失、骨侵食及び軟組織腫脹を含む。炎症の慢性的性質のため、関節不全脱臼及び軟骨下嚢胞などの付加的な所見も認められることがある。
【0130】
血清陰性脊椎関節症カテゴリーは、乾癬性関節炎、反応性関節炎及び強直性脊椎炎を含み、炎症、多発性関節病変並びに骨増殖の付加的特徴を伴う手及び足における遠位病変の徴候によって特徴付けられる。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、血清陰性脊椎関節症の状態の治療及び/又は改善のために用いることができる。
【0131】
より具体的には、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、乾癬性関節炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。乾癬性関節炎は、皮膚(乾癬)及び関節(関節炎)の炎症によって特徴付けられる。米国におけるほぼ306000人が乾癬性関節炎に罹患しており、さらに308000人がヨーロッパにおける5つの主要な市場において当疾患に罹患していると考えられている。乾癬及び関節炎は、しばしば別個に出現する。実際、患者のほぼ80%において乾癬が関節炎に先行する。関節炎は、患者の最大15%において関節炎が乾癬に先行することがある。
【0132】
乾癬性関節炎の特性の1つである乾癬は、落屑を伴う、皮膚の斑点状の隆起した赤色の部位を特徴とする一般的な皮膚の状態である。乾癬は、肘及び膝の先端部、頭皮、へそ及び性器又は肛門の周囲の部位をしばしば侵す。乾癬を有する患者の約10%が関節の随伴した炎症も発現する。通常、皮膚症状が重症であるほど、乾癬性関節炎を発現する可能性が大きくなる。乾癬性関節炎の原因は、不明であるが、遺伝的、環境及び免疫上の原因の組合せである可能性がある。
【0133】
男性と女性は、乾癬に同等に罹患する可能性がある。乾癬性関節炎については、男性は、脊椎炎の形(脊椎が侵される)を有する可能性がより高く、女性は、リウマチ様の形(多くの関節が侵される)を有する可能性がより高い。乾癬性関節炎は、通常35〜55歳の人に発生する。しかし、ほぼあらゆる年齢の人に発生し得る。乾癬性関節炎は、強直性脊椎炎、反応性関節炎並びにクローン病及び潰瘍性大腸炎を伴う関節炎などの他のいくつかの関節炎の状態と多くの特徴を共有している。これらの状態のすべてが脊椎及び関節、眼、皮膚、口及び様々な臓器における炎症を引き起こし得る。
【0134】
他の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、強直性脊椎炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。強直性脊椎炎(AS、以前にはベヒテレフ(Bechterew’s)病、ベヒテレフ症候群、マリー−ストリュンペル病及び脊椎関節炎の1つの形として公知)は、複数の関節、特徴的には脊椎面関節及び脊椎の底部の仙骨関節の炎症に起因して引き起こされる、通常、慢性及び進行性の形の関節炎である。強直性脊椎炎は、これらの関節及び脊椎周囲の軟組織を侵す傾向があるが、他の関節並びに関節周囲の組織(健靭帯付着部、健及び靭帯が骨に付着する)も侵される可能性がある。強直性脊椎炎は、眼、心臓及び肺などの関節以外の身体の部位も侵す可能性がある。
【0135】
この障害は、しばしば骨性強直(又は融合)をもたらし、したがって、ギリシャ語の強直(ankylos)に由来する強直性という用語は、関節の硬化を意味する。脊椎(Spondylos)は、椎骨(又は脊椎)を意味し、1つ又は複数の椎骨の炎症に適用される。
【0136】
該疾患は、一般集団の約0.1〜0.2%を罹患させると推定される。強直性脊椎炎は、主として若年男性を罹患させる。男性は、女性より強直性脊椎炎を発現する可能性が4倍から10倍高い。該疾患を有する大部分の人が15〜35歳に該疾患を発症し、発症時の平均年齢は26歳である。
【0137】
正確な原因は不明であるが、強直性脊椎炎は、遺伝的影響と誘発環境因子との組合せに起因すると考えられている。強直性脊椎炎を有する患者の約90〜95%が組織抗原ヒト白血球抗原B27(HLA−B27)を有するのに対して、一般集団では7%である。強直性脊椎炎を有する人は、該疾患の家族歴をしばしば有する。
【0138】
他の実施形態において、本発明の組成物並びに方法は、反応性関節炎(ReA)の治療及び/又は改善のために用いることができる。血清陰性脊椎関節症の他のタイプである反応性関節炎は、身体の他の部位における感染に応答して発現する自己免疫状態である。細菌と接触し、感染を発現することが、反応性関節炎を誘発し得る。反応性関節炎は、「関節炎」として総称的に公知のリウマチなどの他の様々な状態と同様な症状を有する。反応性関節炎は、他の感染により引き起こされ、したがって、「反応する」、すなわち、他の状態に依存する。「誘発」感染は、しばしば治癒し、又は慢性の場合には寛解状態となり、したがって、最初の原因の確定が困難となる。
【0139】
反応性関節炎の症状は、非常に多くの場合、大関節の炎症性関節炎、眼の炎症(結膜炎及びぶどう膜炎)及び尿道炎といった3つの一見無関係の症状の組合せを含む。ReAは、ドイツの医師Hans Reiterにちなんでライター症候群としても公知であり、また尿道炎性関節炎、性病性関節炎及び腸炎性多発性関節炎としても公知であることを示すべきである。
【0140】
若年性特発性関節炎、痛風及び偽性痛風、並びに大腸炎又は乾癬を伴う関節炎などの多くの他の形の炎症性関節炎が存在することは理解されよう。したがって、本発明の組成物並びに方法は、これらの状態にも適用できることは理解されよう。
【0141】
したがって、他の実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、若年性特発性関節炎(JIA)の治療及び/又は改善のために用いることができる。JIAは、小児における持続性関節炎の最も一般的な形である(この状況における若年性は、16歳前の発症を指し、特発性は、明確な原因のない状態を指し、関節炎は、関節の滑膜の炎症である)。JIAは、一過性及び自己限定的又は慢性であり得る、小児に見られる関節炎のサブセットである。これは、成人に一般的に見られる関節炎(関節リウマチ)並びに慢性状態である小児に存在する他のタイプの関節炎(例えば、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎)とは著しく異なる。
【0142】
他の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、痛風の治療及び/又は改善のために用いることができる。痛風(代謝性関節炎)は、尿酸の蓄積によってもたらされる疾患である。この状態においては、尿酸一ナトリウム又は尿酸の結晶が関節の関節軟骨、腱及び周囲組織に沈着する。これらの結晶は、両方とも重度の炎症及び疼痛を引き起こす。無処理の場合、結晶が、著しい組織損傷を引き起こし得る痛風結節を形成する。偽性痛風は、カルシウム結晶によって引き起こされる状態である。カルシウム結晶が腱における炎症の発作を引き起こす場合、それは、「石灰沈着性腱炎」と呼ばれる。本発明は、この障害の治療用の組成物及び方法も提供する。
【0143】
一般的に、上でも開示したように、多くの種類の関節炎が存在し、本発明の組成物、並びに方法、複合組成物(combined composition)及びキットは、示したすべての一次性の形の関節炎に加えて、すべての二次性の形の関節炎も治療するのにも適用できることに留意されたい。これらの状態は、紅斑性狼瘡、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、血色素症、肝炎、ウェジナー肉芽腫症(及び多くの他の血管炎症候群)、ライム病、家族性地中海熱、再発性発熱を伴う高免疫グロブリン血D、TNF受容体関連周期熱症候群及び炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)などであり得る。
【0144】
特定の実施形態によれば、関節炎の治療、予防又は改善は、臨床スコア及び組織病理学的スコアの改善に反映される可能性がある。より具体的には、本発明の組成物及び方法による治療は、関節炎の臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得ることは理解されよう。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0145】
本発明の方法及び組成物は、免疫関連障害の治療に適用できることは理解されよう。したがって、他の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物並びに方法は、炎症性腸疾患(IBD)、例えば、大腸炎及びクローン病を治療し、改善するために適用できる可能性がある。特定の実施形態によれば、大腸炎又はクローン病の治療、予防又は改善は、臨床スコア及び組織病理学的スコアの改善に反映される可能性がある。例えば、抗CAP1抗体であり得る本発明のCAP1結合化合物による治療は、IBDの臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得る。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0146】
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫応答のTh1前炎症性、Th1前炎症性及びTh2抗炎症性サブタイプの間の不均衡の結果であると理解することができる一般的な胃腸障害である。
【0147】
クローン病は、胃腸(GI)管とも呼ばれている消化管の炎症を引き起こす持続性障害である。クローン病は、口から肛門までのGI管の任意の部位を侵し得るが、最も一般的には回腸と呼ばれる小腸の下部を侵す。腫脹は、罹患器官の内膜まで深く及ぶ。腫脹は、疼痛を引き起こし、腸を頻繁に空にさせ、下痢をもたらす。
【0148】
上で示したように、クローン病は、腸の腫脹を引き起こす疾患の一般名である、炎症性腸疾患である。クローン病の症状が過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎などの他の腸障害に類似しているため、診断することが困難であり得る。潰瘍性大腸炎は、大腸の内膜の上層における炎症及び潰瘍を引き起こす。クローン病においては、腸の全層が侵される可能性があり、正常で健常な腸は、罹患した腸の区域(section)の間に認めることができる。クローン病は、回腸炎又は腸炎とも呼ばれることがある。
【0149】
本発明の組成物は、大腸炎の治療又は予防にも適用できる可能性があることに留意されたい。潰瘍性大腸炎(U.C.)は、結腸(大腸)及び直腸の内膜の慢性(長期持続性)炎症である。内膜が炎症を起こし、潰瘍化した状態になる。炎症は、直腸(直腸炎)に限定されるか、又は結腸及び直腸の全体を侵すことがある。
【0150】
したがって、本発明の組成物は、臨床スコアを治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%低下させ得る。
【0151】
他の特定の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、糖尿病などの自己免疫障害の治療及び/又は改善のために用いることができる。糖尿病は、異常な代謝、及び低レベルのインスリンホルモン、又は補償するのに不十分なレベルのインスリン分泌と相まったインスリンの作用に対する異常な抵抗性に起因する不適切に高い血糖(高血糖)によって特徴付けられる症候群である。特徴的な症状は、過度の尿産生(多尿)、過度の渇き及び液体摂取の増加(多渇症)並びに視力障害であり、血糖が軽度に上昇している場合には、これらの症状は存在しないことがあり得る。
【0152】
3つの主な形の糖尿病、すなわち、1型、2型及び妊娠糖尿病(妊娠中に起こる)が存在する。1型糖尿病は、インスリンの欠乏をもたらす、膵臓におけるランゲルハンス島のインスリン産生ベータ細胞の喪失によって特徴付けられる。このベータ細胞の喪失の主な原因は、T細胞媒介性自己免疫攻撃である。1型糖尿病に対して講ずることができる公知の予防処置は存在しない。ほとんどの罹患者は、発症時に他の点では健康で、健康な体重を有する。インスリンに対する感受性及び応答性は、特に初期段階では通常、正常である。1型糖尿病は、小児又は成人を侵すことがあり得、小児を侵す糖尿病の大部分の場合を表すので、「若年性糖尿病」と伝統的に呼ばれている。
【0153】
1型糖尿病の主要な治療法は、最も初期の段階からでさえ、血液検査モニターを用いた血糖値の注意深いモニタリングと組み合わせたインスリンの補充である。インスリンが存在しない場合、糖尿病性ケトアシドーシスが発生することがあり得、これが昏睡又は死亡をもたらし得る。喪失を逆転させることはできないが、生活様式の調節(食事及び運動)にも重点がおかれる。一般的な皮下注射のほかに、事前に設定されたレベルで1日24時間インスリンの持続注入を可能にし、食事時間に必要に応じてインスリンの用量(ボーラス)をプログラムする能力のあるポンプによりインスリンを供給することも可能である。
【0154】
1型の治療は、無期限に続けなければならない。十分な認識、適切な介護と、検査及び薬物適用の訓練を行うならば、治療によって通常の活動に障害は生じない。
【0155】
米国における有病率は、人口の0.12%又はほぼ340000人である。発生率は、年間約30000例、人口の0.01%である。
【0156】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、多発性硬化症(MS)の治療及び予防に用いることができる。
【0157】
多発性硬化症(略記MS、以前には散在性硬化症又は散在性脳脊髄炎として公知)は、中枢神経系(CNS)を侵す慢性炎症性脱髄疾患である。疾患の発症は、通常若年成人に起こり、女性でより一般的であり、国又は特定の集団によって100000人当たり2から150人までの範囲にある有病率を有する。
【0158】
MSは、白質として公知の脳及び脊髄の部位におけるニューロンを侵す。これらの細胞は、処理が行われる灰白色部の間、及びこれらと身体の残りとの間にシグナルを運ぶ。より具体的には、MSは、ニューロンが電気信号を運ぶことを助けるミエリン鞘として公知の脂肪層を作り、維持することを担う細胞である稀突起神経膠細胞を破壊する。MSは、ミエリンの菲薄化又は完全喪失、並びにさほど頻繁ではないが、ニューロンの延長又は軸索の切断(離断)をもたらす。ミエリンが喪失する場合、ニューロンは、それらの電気信号をもはや効果的に伝導することができない。多発性硬化症という名称は、白質における瘢痕(硬化−プラーク又は病変としてより十分に公知である)を意味する。これらの病変におけるミエリンの喪失は、シグナルが遮断される状態によって広く異なる、いくつかの症状をもたらす。しかし、より高度の形の撮像で、損傷の多くがこれらの領域外で起こっていることを示されている。ほぼあらゆる神経症状が疾患に伴って起こり得る。
【0159】
MSは、いくつかの形をとり、新たな症状は、個別的なエピソード(再発型)で又は時間の経過とともに徐々に累積して(進行型)起こる。ほとんどの人が最初に再発寛解型MSと診断されるが、長年の後には二次進行型MS(SPMS)を発現する。エピソード又は発作の間に、症状が完全に消失し得るが、永久的な神経学的問題が、特に疾患が進行するときにしばしば持続する。
【0160】
疾患過程にかかわる機序に関しては多くが公知であるが、原因は、依然としてとらえどころがない。ほとんどの支持者による理論は、それが自己免疫反応に起因するということである。疾患は治癒を示さないが、いくつかの療法は有用であることが証明された。エピソードの後に機能を元に戻す治療の試みにより、新たな発作が予防され、身体障害が予防される。あらゆる治療と同様に、薬物はいくつかの副作用を有し、多くの療法が依然として研究中である。
【0161】
特定の実施形態によれば、MS疾患又は症状の治療、予防又は改善は、臨床スコアの改善に反映される可能性がある。例えば、抗CAP1抗体であり得る本発明のCAP1結合化合物による治療は、MSの臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得る。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0162】
本発明の方法及び組成物は、本明細書において前に開示したように免疫関連障害の治療に適用できる可能性があることは理解されよう。
【0163】
以下の実施例により開示するように、CAP1と相互作用することが示された2つの異なる抗体である、本発明により使用される抗CAP1及び抗ペプチド6抗体は、抗炎症性作用を明らかに示す。より具体的には、図28に、抗CAP1抗体、抗ペプチド6ヒト化抗体及びそのF(ab)2断片へのヒトPBMCの曝露により、最終的にIL−10遺伝子発現のアップレギュレーションをもたらす連続的事象が誘発されることを示す。炎症部位におけるIL−10分泌の増加は、局所的サイトカンプロファイルを炎症応答から抗炎症応答に転換することができ、したがって、これらの抗体によりもたらされる炎症に対する防御の機序の説明となり得る。
【0164】
したがって、CAP1結合化合物、具体的には、本発明により使用される抗体は、Th1/Th2細胞均衡を抗炎症性Th2応答の方に調節する免疫調節剤として用いることができる。したがって、本発明は、IL−10(インターロイキン10)の発現及びレベルを増加させる組成物及び方法をさらに提供する。この態様によれば、本発明の組成物及び方法は、有効量の、CAP1と相互作用し、結合する少なくとも1つの化合物、具体的には、単離及び精製された抗CAP1抗体の使用を含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によって含んでいてよい。
【0165】
抗炎症性サイトカイン、具体的にはIL−10の発現又はレベルを「増加させること」又は「増大させること」を示す、一実施形態によれば、そのような増加又は増大は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、20%〜80%、30%〜70%又は40〜60%の増加又は上昇であり得ることを意味する。詳細には、適切な対照と比較して発現の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の増加。増加又は上昇が約2〜100倍の増加でもあり得ることにさらに留意されたい。より具体的には、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97倍又はそれ以上の増加。さらに、前記IL−10のレベル又は発現の増加は、前記サイトカインの転写、翻訳又は安定性であることは理解されよう。
【0166】
上で示したように、IL−10の発現の増大は、Th1/Th2均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する可能性がある。したがって、本発明により使用されるCAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体は、Th1/Th2均衡を抗炎症応答の方に調節することが望ましい状態に有用である可能性がある。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物は、それを必要とする対象におけるIL−10の発現及びレベルを増加させ、それにより、治療対象におけるTh1/Th2細胞均衡を抗炎症性Th2応答の方に調節するために用いることができる。1つの特定の実施形態によれば、そのような対象は、免疫関連障害に罹患している対象である。例えば、自己免疫疾患(例えば、関節炎、IBD、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、狼瘡、グレーヴス病及び甲状腺炎)、移植片拒絶病状及び移植片対宿主病、並びに毒素性ショック、敗血性ショック及び重症敗血症などのスーパー抗原により誘発される障害。
【0167】
一般的に、本発明の組成物並びに方法は、例えば、イートン−ランバート症候群、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、ギラン−バレー症候群、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば、急性上腕神経炎、多腺性欠乏症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば、橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベヒテレフ症候群、強直性脊髄炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病などであるが、これらに限定されない自己免疫疾患の治療に用いることができることはさらに理解されよう。
【0168】
他の態様において、本発明は、免疫関連障害の治療、改善、予防及び抑制用の組成物の調製における治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つの使用に関する。
【0169】
いくつかの特定の実施形態において、本発明は、免疫調節組成物の調製のためのCAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物の使用を含む。
【0170】
特定の実施形態において、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体は、本発明により使用することができる。
【0171】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。「抗体」という用語は、完全な分子並びに例えば、抗原に結合することができる、例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味する。
【0172】
特定の実施形態によれば、CAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体であってよい抗体である、又はCAP1を認識し、それに結合する抗体であるCAP1結合化合物であって、該抗体は、ポリクローナル、モノクローナルラット若しくはマウス抗ペプチド6抗体(例えば、B24若しくはF9モノクローナルと呼ばれる抗体)又はキメラ若しくはキメラ抗体由来のヒト化抗体以外であるか、又はそれらでないという条件であることはさらに理解されよう。
【0173】
他の実施形態において、本発明は、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節することによる免疫関連障害の治療のための組成物の調製におけるCAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体の使用を含む。
【0174】
第5の態様において、本発明は、対象における免疫関連障害の治療に用いる、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を提供する。
【0175】
本明細書で用いる前記CAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換宿主細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることにさらに留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、Th2抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、或いはTh1前炎症性サイトカインの活性化により反映されるようなTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導することができる、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。本明細書及び下の特許請求の範囲の項で用いる特定の実施形態によれば、CAP1タンパク質は、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、また配列番号6として表示され、GenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含むヒトCAP1タンパク質を意味することは理解されよう。
【0176】
本発明はまた、対象における免疫関連障害の治療に用いる、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体を提供する。
【0177】
上で示したように、本発明により開示した結果は、この免疫調節経路における重要な要素として、また、したがって、免疫調節の可能な標的としてのCAP1の役割を明確に示している。したがって、本発明は、免疫調節化合物の探索のための標的としてのCAP1の使用を提供する。したがって、さらなる態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明のスクリーニング方法は、(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップと、(b)具体的には抗炎症性又は前炎症性サイトカインの発現を検討することにより、Th1/Th2均衡の調節に関するステップ(b)で得られた化合物の効果を判定するステップを含む。前記候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカインの発現の調節は、前記化合物がTh1/Th2均衡を調節する能力を示す。
【0178】
「候補化合物」という用語は、CAP1に結合することによりTh1/Th2均衡を調節する化合物の能力の特徴付けが望まれる化合物を意味する。「調節する」は、いずれか又はすべてのサイトカイン、リンフォカイン及び免疫応答に関連する細胞過程の増加、減少又は他の変化を意味する。この点について、変化は、IL−10の発現の増大及びTh1/Th2均衡のTh2免疫応答の方への調節の優先を含み得る。
【0179】
CAP1分子への免疫調節化合物の高親和力結合の高処理能力スクリーニングの適用への鍵は、感度が高く、簡便なスクリーニングアッセイを開発することである。
【0180】
CAP1に対する親和力による免疫調節化合物の頑健なスクリーニングアッセイの開発は、前記スクリーニング方法の第1のステップである。
【0181】
したがって、候補免疫調節化合物は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、(b)混合物を前記結合に適する条件下で候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)エンドポイント指示(end point indication)に対する候補化合物の作用を判定するステップにより得ることができる。エンドポイントの調節が供試候補化合物へのCAP1分子の結合を示すものであることに留意されたい。
【0182】
1つの特定の実施形態によれば、エンドポイント指示は、視覚的に検出できるシグナルをもたらす、CAP1分子への抗CAP1抗体の結合であってよい。そのような場合、このエンドポイントの増加は、CAP1分子への前記試験化合物の結合を示す。
【0183】
「検出できる」という用語は、本明細書で用いているように、観察、計測装置又はフィルムにより即時に検出できる化学反応により発生する検出できるシグナルの存在を意味する。
【0184】
より具体的には、「検出できるシグナル」という用語は、本明細書で用いているように、目視観測又は計測装置により直接的又は間接的に検出できる(観測できる)シグナルの発生又は変化を引き起こすシグナルを意味する。一般的に、検出できるシグナルは、波長分布パターン又は吸光度若しくは蛍光の強度の変化或いは光散乱、蛍光寿命、蛍光偏光の変化、或いはそのようなパラメーターの組合せにより反映される光学的特性が検出できる(「光学的に検出できる」)。
【0185】
より具体的には、例えば、ペプチド又は任意の小分子であってよい各候補化合物をウエルに入れ、CAP1分子又はその任意の断片の直接的結合を好ましくはCAP1に対して特異的な抗体により検出する。プレート上での候補免疫調節化合物へのCAP1分子又はその任意の断片の有効結合の条件は、pH、塩及び緩衝液組成並びにBSAなどの担体タンパク質の試験を必要とし、最適化することができる。この頑健なスクリーニングにより、CAP1分子に結合する化合物が得られる。CAP1に結合するそのような化合物をプールし、次に下記のようにアッセイする。
【0186】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。「抗体」という用語は、完全な分子並びに抗原に結合することができる、例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味することにさらに留意されたい。
【0187】
特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法のさらなる場合によるステップにおいて、CAP1に結合し、上述のように得られた候補免疫調節化合物は、CAP1分子内の抗ペプチド6抗体結合部位においてCAP1に特異的に結合するそれらの能力についてさらに選択することができる。このような選択された化合物は、前記CAP1と抗ペプチド6抗体の間の相互作用を予防又は調節できることが望ましい。この特定の実施形態によれば、場合による選択は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、(b)抗ペプチド6結合部位を介するCAP1分子と抗ペプチド6抗体との特異的相互作用に適する条件下で前記混合物を供試候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)エンドポイント指示に対する供試候補化合物の作用を判定するステップにより実施することができる。そのようなエンドポイントの調節は、前記抗ペプチド6結合部位を介するCAP1分子への供試候補化合物の結合を示す。
【0188】
他の実施形態によれば、場合による選択段階に用いる混合物は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、(b)CAP1における抗ペプチド6結合部位を介してCAP1分子に特異的に結合する抗ペプチド6抗体、並びに(c)抗ペプチド6抗体とCAP1分子との相互作用及び相互作用のエンドポイント指示の検出の適切な条件を与える場合による溶液、緩衝液及び化合物を含む。一実施形態によれば、エンドポイント指示は、視覚的に検出できるシグナルをもたらす、CAP1分子への抗ペプチド6抗体の結合であってよい。
【0189】
本発明のさらなる実施形態において、そのようなエンドポイントにおいて観測される阻害は、CAP1における抗ペプチド6結合部位への供試候補化合物の直接的結合を示す。したがって、候補化合物の結合は、結合部位への抗ペプチド6抗体の結合と競合することにより、前記結合を調節し、且つ/又は阻害する。
【0190】
この競合アッセイを実施するために、抗ペプチド6抗体は、例えば、ビオチニル化により、又はフルオレセインの付加により、直接的に標識することができ、或いは、二次抗体により間接的に標識することができる。
【0191】
本発明のスクリーニング方法により候補化合物を得るため及び選択するために用いる混合物は、細胞混合物又は無細胞混合物であってよい。
【0192】
1つの代替実施形態によれば、本発明の方法により利用される混合物は、無細胞混合物であってよい。そのような混合物は、ペプチド、精製組換えタンパク質、融合タンパク質及び前記CAP1分子を発現する形質転換細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができるCAP1分子又はその機能的断片(好ましくは、抗ペプチド6抗体結合部位を含む)を含む。
【0193】
特定及び非限定的例において、そのような場合による選択を行うことができ、CAP1をマイクロプレートのウエル上に結合させる。次に、各ウエルを候補免疫調節化合物の存在下で限られた量の抗ペプチド6抗体とともにインキュベートする。各ウエルから上清を収集する。二次抗体ELISAにより上清中の非結合抗体を検出する。試験化合物が、抗ペプチド6抗体により認識されるドメインにおけるCAP1に強固に結合する場合、試験化合物は、CAP1への抗ペプチド6抗体の結合について競合し、アッセイの感度を高くするゼロバックグラウンド上で検出することができる遊離の抗ペプチド6抗体を遊離させる。抗ペプチド6抗体/CAP1相互作用に関与するドメイン外に結合する候補化合物は、このアプローチにより除外される。
【0194】
別のアプローチは、標識抗ペプチド6抗体を用い、プレート上のCAP1に結合している標識抗体を置換する候補化合物の能力についてアッセイすることである。
【0195】
或いは、そのような場合による選択ステップに用いる混合物は、細胞混合物であってよい。この特定の実施形態において、各候補化合物、好ましくはペプチドをウエルに入れ、次にウエルをBSA又はウシ胎児血清でブロックする。それらの細胞表面上のCAP1を発現する例えば、THP−1の結合を視覚的に、又は抗CAP−1 ELISAにより計測する。或いは、CAP−1発現細胞から調製した細胞膜を用いることができ、抗CAP−1抗体を用いて結合を検出する。陽性候補化合物は、次に、競合体としての抗ペプチド6抗体の存在下で再検査する。
【0196】
前記抗ペプチド6抗体は、配列番号1のアミノ酸配列による表されるペプチド6を含むアミノ酸配列に対して特異的に誘導された抗体を意味することは理解されよう。抗ペプチド6抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ及びヒト化抗ペプチド6抗体、並びにそのF(ab)断片を含むことに留意されたい。プロキシマブという語は、本明細書で用いているように、本発明者らにより調製されたヒト化抗ペプチド6抗体であることに留意されたい。
【0197】
混合物中に含まれるCAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることを留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、IL−10などの抗炎症性サイトカインの活性化、或いは前炎症性サイトカインの活性化により反映されるような、抗ペプチド6結合部位を含み、この抗体に結合することができ、それによりTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導する、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。
【0198】
他の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法により検討する候補化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物からなる群から選択することができる。
【0199】
他の実施形態によれば、該化合物は、ペプチドのコンビナトリアルライブラリ、環状ペプチド模倣体のライブラリ及びランダム又は専用ファージディスプレイライブラリのポジティブスキャニングのいずれか1つの産物であってよい。
【0200】
他の特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法の第2段階は、抗炎症性サイトカインの発現を実際に調節する、選択される候補化合物の実現可能性及びそれにより、先天性免疫を調節するそれらの能力のさらなる評価を含む。したがって、上述のように得られ、場合によって選択された候補化合物を、次に、Th1/Th2細胞均衡を調節する、具体的には、Th2リンパ球を活性化するそれらの能力について評価する。この評価段階は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む試験系を準備するステップ、(b)試験系を、本発明のスクリーニング方法の前段階により得られ、場合により選択された供試候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)対照と比較してエンドポイント指示に対する候補化合物の作用を判定するステップを含み、前記作用は、前炎症性Th1又は抗炎症性Th2リンパ球の活性化を調節する供試候補の能力を示す。
【0201】
本発明のスクリーニング方法により単離された候補免疫調節化合物を評価するのに用いる試験系は、in vitro/ex vivo細胞培養又はin vivo動物モデルであってよい。そのような試験系は、Th2細胞の活性化のための、また候補化合物の調節作用を判定するためのエンドポイント指示の検出のための適切な条件を与える内因性及び/又は外因性化合物を場合によってさらに含む。より具体的には、前記活性化又は調節は、IL−10及び/又はIL−4遺伝子発現などのTh2サイトカインの誘導によって判定される。
【0202】
評価のための本発明のスクリーニング方法により利用される試験系は、内因的に発現するCAP1分子を含むin vitro/ex vivo細胞培養であってよい。特定の例において、試験系として用いる細胞培養は、哺乳類ドナーから単離されたPBMC培養であってよい。
【0203】
この特定の試験系におけるエンドポイント指示は、したがって、視覚的に検出できるシグナルをもたらすIL−10及び/又はIL−4の抗CAP1又は抗ペプチド6抗体誘導性発現であり得る。したがって、前記エンドポイントの調節、阻害又は低減は、具体的には、抗炎症性サイトカインIL−10の活性化、或いは前炎症性サイトカインの活性化により反映されるような、Th1/Th2均衡を特異的に調節する候補化合物の能力を示す。IL−10の抗ペプチド6抗体誘導性発現は、例えば、定量的ドットブロットハイブリッド形成及びRNアーゼ保護アッセイにより検出することができる。
【0204】
本発明により使用される試験系は、抗炎症性サイトカインの発現のための、また候補化合物の免疫調節作用を判定するためのエンドポイント指示の検出のための適切な条件を与える内因性及び/又は外因性化合物を場合によってさらに含むことに留意されたい。
【0205】
他の好ましい実施形態において、抗炎症性サイトカインの発現の調節は、対照と比較して前記サイトカインの発現の増加又は減少のいずれか1つであり得る。
【0206】
特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、IL−4及びIL−6の発現を調節する化合物の同定を特に対象とすることに留意されたい。より具体的には、いくつかの実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、Th2抗炎症応答を活性化する化合物を同定することを対象とする。
【0207】
本発明はまた、CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節し、本発明によるスクリーニング方法により同定される免疫調節化合物を提供する。
【0208】
最後に、さらなる態様において、本発明は、免疫関連障害の治療に有効な薬剤の調製のための治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物並びに(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む医薬単位剤形に関し、該剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0209】
特定の実施形態によれば、本発明の医薬単位剤形は、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含むことができる。
【0210】
さらに、他の実施形態において、そのような化合物は、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1であり得る。
【0211】
代替実施形態によれば、本発明の医薬単位剤形は、CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する。
【0212】
以下の実施例に基づいてより詳細に記述することとする。本発明は、実例となるものにすぎず、本発明を決して限定するものでない。本発明の多くの変更形態及び変形形態は、本教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明を具体的に記述したのと別の方法で実施することができることは理解される。
【0213】
開示し、記述したが、本発明は、本明細書で開示した特定の実施例、方法ステップ及び組成物に限定されないことは理解されよう。その理由は、そのような方法ステップ及び組成物は多少変化し得るからである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその同等のものによってのみ限定されるものであるので、本明細書で用いている術語は、特定の実施形態を記述する目的のみのために用いるものであり、限定されるものではないことも理解されよう。
【0214】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0215】
本明細書並びに続く実施例及び特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変形は、述べた整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含するが、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の排除しないことを意味することを理解されたい。
【0216】
以下の実施例は、本発明の態様を実施するに際して本発明者らにより用いられた技術の代表的なものである。これらの技術は、本発明の実施の好ましい実施形態の例示的なものであるが、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神及び意図した範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができることを認識することは理解されよう。
【実施例】
【0217】
実験手順
抗体
*マウス抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ技術によりペプチド6免疫化Balb/Cマウスから産生させたマウスモノクローナル抗体であり、IgMイソタイプに属する。
【0218】
*ラット抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ技術によりペプチド6免疫化Lewisラットから産生させたラットモノクローナル抗体であり、IgMイソタイプに属する。
【0219】
*キメラ抗ペプチド6IgG1マウス及びラット抗体は、Antitope Ltd.が標準的キメラ化技術を用いて産生させた。得られたキメラ抗体は、マウス抗体からのマウス可変領域又はラットモノクローナル抗体からのラット可変領域及びIgG1イソタイプのヒト定常領域を含む。
【0220】
*マウス参照抗体に基づくヒト化抗ペプチド6抗体は、Antitope Ltd.がComposite Human Antibody(商標)技術(WO2006/082406に記載)を用いて生産した。
【0221】
FITC標識ヒト化抗体をFACS解析に用いた。いくつかの実施形態において、プロキシマブという用語をMT HSP65のペプチド6エピトープに対するモノクローナルヒト化抗体を記述するのに用いることができる。
*CD14−PE(Sigma)
*抗CD32−PE結合(CALTAG(商標)Laboratories)
*抗CD64−APC結合(CALTAG(商標)Laboratories)
*FITC結合ヤギ抗ラットIgG+IgM(Jackson ImmunoResearch Lab.Inc.、West Grove、PA19390、USA)
*抗ヒトIgG−FITC(Sigma)
*ポリクローナルマウス抗ヒトCAP1(Abnova Corporation、Taiwan)
【0222】
細胞培養条件
*MM6−Mono Mac6(ヒト骨髄性単球細胞系、DSMZ番号ACC124)
MM6細胞は、2mMグルタミン、1mMピルビン酸塩、1%非必須アミノ酸、0.1%pen−strep、10%FCS及び10μg/mlヒトインスリンを添加したRPMI培地中で維持した。
【0223】
*THP−1(ヒト急性単球性白血病細胞系、ATCC番号TIB−202)
THP−1細胞は、10%FCS、2mM L−グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン及び10mM HEPES(pH=7.3)を添加したRPMI培地中で維持した。
【0224】
*HeLa(ヒト子宮頸癌細胞系、ATCC番号CCL−2)
HeLa細胞は、10%FCS、2mM L−グルタミン及び0.1%pen−strepを添加したDMEM培地中で維持した。細胞を5%CO2で37℃インキュベーター中で増殖させた。
【0225】
キット
*ReadyPrep(商標)タンパク質抽出キット(膜I)(Bio−Rad Laboratories,Inc.、Hercules、CA94547、USA)
*ReadyPrep(商標)タンパク質抽出キット(細胞質)(Bio−Rad Laboratories,Inc.、Hercules、CA94547、USA)
*Dylight(商標)抗体標識キット(Thermo Scientific Pierce Protein Research Products、Rockford、IL、USA)
*F(ab)2調製キット(Thermo Scientific Pierce Protein Research Products、Rockford、IL、USA)
*siRNAキットHiPerfectトランスフェクション試薬(Qiagen)+All star及びCAP1_5siRNA(Qiagen)
【0226】
モノクローナルマウス及びラット抗ペプチド6産生ハイブリドーマ(B24)の産生
6週齢の雌Balb/cマウス又はLewisラットに完全フロイントアジュバントに懸濁した100μgのペプチド6(GPKGRNVVLEKKWGAP、配列番号1により表示)を皮下注射した。動物に不完全フロイントアジュバントのペプチドを3週間間隔でさらに2回注射した。ELISAによる抗ペプチド6抗体レベルの測定のために血清を採取し、最高レベルを有する動物をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mMリン酸水素二ナトリウム、2mMリン酸二水素カリウム、pH7.4)中50μgのペプチドの2連続腹腔内注射により処置した。翌日、脾臓をBALB/c Ig非分泌骨髄腫NSOと融合させた。ペプチド6を特異的に認識する抗体の存在を上清中で特異的ELISAにより検出し、陽性クローンを拡大した。この研究に対して、IgM型の抗体を産生したB24と称するクローンを用いた。これらのモノクローナル抗体は、抗ペプチド6と呼ばれている。ハイブリドーマ細胞の上清から抗ペプチド6抗体を精製した。精製は、チオアドソープション(thioadsorption)と続くプロテインGクロマトグラフィー(Adar Biotech、Israel)により実施した。抗体の精製は、SDS−PAGEにより確認した。
【0227】
キメラ抗ペプチド6抗体の産生
mRNAをB24細胞(Promegaカタログ番号Z5400)から抽出した。RT/PCRは、単一定常領域プライマーを含むマウスシグナル配列の縮重プライマープールを用いて実施した。重鎖可変領域mRNAを一組の6縮重プライマープールを用いて増幅し、軽鎖可変領域mRNAを一組の8縮重プライマープールを用いて増幅した。各産物をクローニングし、それぞれの数個のクローンの配列を決定した。両抗体について、単機能重及び軽鎖可変領域配列が同定された。B24可変領域は、IgG1及びIgG4重鎖について発現ベクターシステム(Antitope Ltd.)に転移させた。
【0228】
ヒト化抗ペプチド6抗体の調製
本明細書でプロキシマブと呼ぶヒト化抗ペプチド6抗体は、Antitope Ltd.がキメラマウス参照抗体に基づいてComposite Human Antibody(商標)技術(WO2006/082406に記載)を用いて生産した。
【0229】
手短に述べると、ヒト可変領域(V領域)配列のセグメントを非関連ヒト抗体配列データベースから入手した。各選択した配列セグメント(並びにセグメント間の接合部)をiTope(商標)分析を用いてMHCクラスIIに結合する可能性について試験し、すべての最終Composite Human Antibody(商標)配列変異体を、T細胞エピトープを回避するようにデザインした。ヒト配列セグメントの組合せをコードする合成オリゴヌクレオチドを用いてComposite Human Antibody(商標)V(可変)領域遺伝子を生成させた。次にこれらをヒト定常領域を含むベクターにクローニングし、抗体を生成させ、競合ELISAにより標的抗原への結合について試験した。VH1〜4(可変重鎖1〜4)をVK1〜3(可変軽鎖1〜3)と組み合わせた結果として生ずる抗体変異体、例えば、VH1/VK1、VH2/VK1等をそれに応じてデザインした。これらの変異体もプロキシマブとして示されることにも留意されたい。
【0230】
ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片の調製
ヒト化VH2/VK3変異型抗ペプチド6抗体(プロキシマブ)のF(ab)2断片は、F(ab)2調製キットを用いてペプシン消化(製造業者の指示に従って)により生成させた。F(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce;製造業者の指示に従って)を用いてFITC(イソチオシアン酸フルオレセイン、Sigma)で標識した。
【0231】
ヒト末梢血単核細胞の調製
ヒト静脈血を健常志願者又は血液銀行から入手したバフィーコート(白血球、赤血球及び血小板の大部分を含む密度勾配遠心後の抗凝固血液試料の画分を含む)から収集した。血液をFicoll勾配(Ficoll Hypaque(商標)−GE Healthcare)で層状にして白血球画分を分離し、濃縮した。細胞を室温で180rpmで30分間遠心分離した。単核バンドを抽出し、PBSに40mlの最終容積に再懸濁し、1100〜1200rpmで10分間遠心分離した。ベレットを、2%ヒト血清、2mMグルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリンを添加したRPMIに懸濁した(すべての試薬がBiological Industries、Beit−Haemek、Israel製である)。細胞を24ウエルプレートに1〜2×106の濃度で播種した。接着細胞のみが望ましい場合、細胞を1.5〜3時間インキュベートし(37℃、7%CO2)、次に非接着細胞をPBSで4回洗い流した。
【0232】
抗ヒトCD14磁気ビーズ(BD Biosciences Pharmingen)を用いて製造業者の指示に従って混合物からCD14+細胞をさらに単離した。
【0233】
蛍光活性化細胞選別(FACS)解析
106個のCD14+細胞、106個のMM6細胞又は0.5×106個のTHP−1細胞をPBS中1%BSA、1%ヤギ血清(FACS培地)で希釈した一次抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。細胞をFACS培地で2回洗浄し、FACS培地で希釈した250ng/tube FITC結合ヤギ抗ラットIgG+IgM(Jackson ImmunoResearch Lab.Inc.、West Grove、PA19390、USA)とともに室温で30分間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、FCS express 3プログラム(De novoソフトウエア)を用いてLSRIIフローサイトメーターにより解析した。
【0234】
キメラ抗ペプチド6抗体によるMM6細胞の染色
Mono Mac 6(MM6)細胞を10μgキメラ(CHM)抗ペプチド6抗体で、続いて1:200二次抗ヒトIgG−FITC単独で又は1:20マウス抗ヒトCD14−APC(Miltenyi Biotec)とともに染色した。細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定し、スライドにのせ、マウント緩衝液で覆い、Zeiss共焦点顕微鏡下で観察した。
【0235】
アフィニティークロマトグラフィー
セファロースビーズをマウス及びラット抗ペプチド6モノクローナル抗体に結合させ(5mg抗体/2mlセファロース)、カラムを作製した。THP−1ヒト前単球親水性膜タンパク質をTweenを用いて20:0.1で加えた。固体物質を除去した後、試料をカラムに加えた。溶出は、酸性条件下(0.1NグリシンpH2.4)で、続いて高塩条件下(3.2Mイソチオシアン酸Na)で行った。1.5mlの画分を収集し、Bradfordタンパク質検出法を用いてタンパク質含量を検出した。ペレットをPBSに懸濁し、PBSに対して3回透析した。
【0236】
ウエスタンブロット分析
THP−1タンパク質画分(例4)、抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させたTHP−1前単球親水性膜タンパク質(20μg)、及びヒト結核菌(MT)熱ショックタンパク質65(5μg)を沸騰し、9%SDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル上で分画した後、電力を用いてニトロセルロース膜に転移させた。ウエスタンブロットは、ラット抗ペプチド6モノクローナル抗体B24を用いて行った。結合強度をヤギ抗ラットFcペルオキシダーゼ(HRP)により検出した後、HRP基質とともにインキュベートし、化学発光シグナルを検出した。
【0237】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
総RNAをSV総RNA単離システム(Promega、USA)により抽出し、逆転写システム(Promega、USA)を用いてcDNAを調製した。得られたcDNAを以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
IL−10:上流−5’ACCAAGACCCAGACATCAAG3’(配列番号2によっても表示される)
下流−5’GAGGTACAATAAGGTTTCTCAAG3’(配列番号3によっても表示される)
GAPDH:上流−5’CCCATCACCATCTTCCAGGAGCG3’(配列番号4によっても表示される)
下流−5’CATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCA3’(配列番号5によっても表示される)
プライマーはIL−10及びGAPDH mRNAそれぞれの461bp及び476bpの産物を生じさせた。
【0238】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
核抽出物を以前に記載されたように調製した[Lee K.ら、Gene.Anal.Technol.、5巻、22〜31頁(1988年)]。オリゴヌクレオチドを、20ngの2本鎖オリゴヌクレオチド、1μlのKlenow DNAポリメラーゼ及び5μlの10μC/μL[α−32P]dCTP(Amersham、UK)を含む20μlの反応混合物中で標識した。20μlの最終容積で、200pgの標識オリゴヌクレオチドを、12mM HEPES pH7.2、60mM KCl、0.6mM Na2EDTA、0.6mM DTT、5mM MgCl2及び1μg poly d(I−C)を含む緩衝液中核抽出物(10μgタンパク質)とともに30℃で40分間インキュベートした。反応混合物を0.5TBE緩衝液中4%ポリアクリルアミドゲル上で200Vで90分間電気泳動した。
【0239】
CAP1発現のsiRNA干渉
ヒトTHP−1前単球細胞を24ウエルプレート上に60000個細胞/100マイクロリットルRPMI培地の濃度で播種した。5ピコモルのall star陰性siRNA又は5ピコモルのCAP1 siRNAを血清不含有で、3マイクロリットルHiPerfectトランスフェクション試薬(Qiagen)を含む100マイクロリットルのRPMI培地で希釈した。10分間のインキュベーションの後、siRNA溶液を細胞に加えた。細胞を37℃で7%CO2中で6時間インキュベートした後、400マイクロリットルのRPMI培地を加えた。同じ条件で48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、上述のように蛍光活性化細胞選別(FACS)解析に供した。
【0240】
ELISA−サイトカインレベルの評価
動物の細胞培養及び血清中のサイトカインレベルの評価は、R&D SYSTEMS、Minneapolis MN、USA製の特異的キットを用いて行った(製造業者の指示に従って)。
【0241】
アジュバント誘発性関節炎の誘発及び臨床的評価
6〜8週齢の雌近交系Lewisラット(Harlan Laboratories、Israel)の尾の基部にCFA(Difco)中1mgのヒト結核菌(MT)H37Ra(Difco、Detroit、MI)を皮内注射した。関節炎の重症度(関節炎指数)を盲検化観測者が隔日に次のように評価した。0、関節炎なし;1、関節の紅化;2、関節の紅化及び腫脹。各足蹠の足根及び足根中足関節を採点した。16の最大スコアを得ることができた。
【0242】
(例1)
抗ペプチド6抗体はIL−10特異mRNAの一時的アップレギュレーション、IL−10分泌を誘導し、アジュバント関節炎を軽減する
HSP−65ペプチド6結合抗体の分子的作用機序を検討した。単球に対するマウス抗ペプチド6mAbsの作用をin vitroで評価したところ、ヒト単球による抗炎症性サイトカインIL−10の有意な分泌を誘導することが示された。ネイティブヒト単球をマウス抗ペプチド6mAbとともにRPMI中でインキュベートし(24時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10の分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。図1は、マウスモノクローナル抗ペプチド6によるIL−10の誘導を示している。同様な結果がヒト化プロキシマブについて得られた(示さず)。
【0243】
本発明者らは、次にIL−10転写活性に対する抗ペプチド6抗体の作用、したがって、IL−10 mRNAレベルに対するB24ラット抗ペプチド6抗体の作用をin vitroで試験した。ヒト単球細胞(PBMC)をB24抗ペプチド6モノクローナル抗体、陰性対照としての全ネイティブLewis IgM抗体又は陽性対照としてのリポ多糖(LPS)とともにインキュベートした。細胞を、LPS、全ネイティブLewis IgM対照又はB24への曝露の4及び24時間後に収集した。抽出されたRNAを逆転写PCR(RT−PCR)によりIL−10 mRNAについて試験した(図2A)。GAPDH cDNAを等しい負荷についての対照として用いた(図2B)。図2Aに示すように、LPS及び抗ペプチド6抗体は、無処理及びネイティブLewis IgM処理細胞と比較して曝露の4時間後にIL−10 mRNAの増加を誘発した。しかし、mRNAレベルが曝露の24時間後に一定のままであったLPS処理細胞に反して、抗ペプチド6で処理した細胞における発現レベルが抗体との24時間のインキュベーションの後に低下した。これらの結果は、抗ペプチド6が、一時的である、IL−10 mRNA発現のアップレギュレーションを誘導することを示唆するものである。
【0244】
確立した関節炎の実験的モデルにおけるIL−10レベルの誘導に対するプロキシマブ(ヒト化抗ペプチド6mAb)の効果を次に評価した。Lewisラットを0日目にCFA中MTで免疫化して関節炎を誘発し、関節炎の重症度を臨床採点法により測定した。動物にPBS(陰性対照)、ステロイド又はプロキシマブを投与した。図3に示すように、プロキシマブは、媒体(PBS)投与陰性対照と比較してマウスにおけるアジュバント関節炎の重症度の低下に有効であることが示され、これらの動物は、高レベルのIL−10を有することが示された。ステロイドも関節炎の重症度の低下に有効であったが、それらは、IL−10分泌の誘導の機序を示さなかった。
【0245】
(例2)
抗ペプチド6抗体はヒトCD14+細胞に結合する
本発明の目標は、抗ペプチド6抗体の標的タンパク質を同定すること、及びこの相互作用により誘発される細胞内過程の特徴を明らかにすることである。理論に束縛されるものではないが、本発明者の作業仮説は、抗ペプチド6抗体が単球膜リガンドと交差反応し、IL−10の転写活性及び分泌の増大につながるシグナル伝達経路を活性化するということである。この仮説をさらに探究するために、本発明者らは、抗ペプチド6抗体の特異的標的細胞を同定することを試みた。磁気ビーズによりCD14陽性細胞をヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体(CHM、図4B)又は抗ヒトCD14−PE(図4C)又は両方(図4D)で染色した。無染色細胞を陰性対照として用いた(図4A)。次に細胞をFACSにより抗体の結合について解析した。図4Dに示すように、二重染色画分中の細胞の大部分がCHM及びCD14+の両方について陽性であり、CHM抗体がCD14+細胞に効率よく結合することがわかる。これらの結果は、CHM抗体がCD14+細胞の細胞外成分と特異的に相互作用することを示唆するものである。
【0246】
ヒト化抗ペプチド6抗体、すなわち、プロキシマブが同様な特性で結合するかどうかを確認するために、CHMの代わりにプロキシマブを用いて同様な実験を実施した。ヒトPBMC細胞を健常ドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−APC結合体(図5A)又はFITC標識プロキシマブ及びAPC結合抗CD14抗体の両方で染色した(図5B)。結果は、プロキシマブがCD14+細胞に結合することを示すものである(単球は単離細胞集団の約10%を構成する、図5B、上右四半分)。図5CにFITCにより染色されたCD14+集団からの細胞のパーセントを示す(プロキシマブを含まない−黒色、プロキシマブを含む−灰色)が、これにより、プロキシマブが大きいパーセント(75%)のCD14+集団に結合することがわかる。同様な結果がマウス抗ペプチド6mAbについて得られた。
【0247】
抗体がCD14陽性細胞に結合することが示されたので、本発明者らは、単球細胞系の膜へのCHMの結合をさらに評価した。骨髄単球細胞系由来のCD14+Mono Mac6(MM6)細胞をこの実験に用い、CHM抗体で染色し、次に抗ヒトIgG−FITC結合抗体単独に又はそれとマウス抗ヒトCD14−APCとに曝露した。染色後、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。図6Aに明確に示されているように、CHM抗体は、MM6細胞の膜に特異的に結合する。CHM−FITC(緑)及びCD14(赤)の両方で染色した細胞(図6B)は、CHM抗体の結合がCD14抗体の染色と同様に、膜全体に分散していることを示しており、CHM抗体のリガンドがCD14陽性細胞の膜表面上にあることがわかる。
【0248】
(例3)
ヒト単球細胞への抗ペプチド6抗体の結合はFc受容体により媒介されない
本発明者らは、次に抗ペプチド6抗体の標的としての免疫系の公知の構成要素(Fc受容体など)の関与の可能性を検討した。MM6細胞が受容体FcガンマRI(CD64)を約71%、FcガンマRII(CD32)を約96%発現するが、受容体FcガンマRIII(CD16)を発現しないことが以前に報告された[Tronら、Eur.J.Immunol.、38巻、1414〜1422頁(2008年)]。MM6細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体の結合がこれらの細胞上に存在するFc受容体により媒介されるかどうかを検定するために、本発明者らはFc受容体CD32及びCD64に対する2つの抗体、並びにFITC標識ヒト化抗ペプチド6抗体(VK3−FITC)との競合体としての役割を果たす非蛍光ヒト化抗ペプチド6抗体(VK3)を用いた。解析は、FACSにより実施した。
【0249】
図7に細胞を非標識VK3とともに、又はCD32及びCD64に対する抗体とともにプレインキュベートした後のMM6細胞へのVK3−FITCの結合を示す。示したように、FITC−VK3は30%の細胞に結合した(左のバー)。興味深いことに、両Fc受容体(CD32及びCD64)に対する抗体とのプレインキュベーションにより、これらの細胞へのVK3−FITCの結合が阻害されなかった(右のバー)。これと対照的に、非蛍光VK3抗体とのプレインキュベーションにより、VK3−FITCの結合が完全に阻止された(中央のバー)。これらの結果は、ヒト化抗ペプチド6抗体がMM6細胞上に提示されたFc受容体を利用せずに、異なる膜タンパク質を標的にすることを明確に示すものである。
【0250】
(例4)
抗ペプチド6抗体は単球親水性膜タンパク質に結合する
本発明の抗体が結合する特異的リガンドをさらに特徴付けるために、本発明者らは、他の細胞系、すなわち、THP−1(ヒト前単球性白血病細胞系)への抗体の結合を最初にアッセイした。THP−1細胞が抗体に結合するかどうかを判断するために、細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色し、次にFACS解析に供した。二次抗体(FITC−ヤギ抗ラット)のみとインキュベートした細胞を対照とした。図8Bで認められるように、この解析により、75%の細胞がB24抗体に結合したことが示されたが、対照細胞では結合は検出されなかった(図8A)。B24がTHP−1膜に結合したことが立証されたので、本発明者らは、標的リガンドを濃縮し、同定することを着手した。この目的のために、親水性膜タンパク質、疎水性膜タンパク質及び細胞質タンパク質をTHP−1細胞から単離し、B24モノクローナル抗ペプチド6抗体を用いたウエスタンブロット分析に供した(図9;レーン1−親水性膜タンパク質;レーン2−疎水性膜タンパク質;レーン3−細胞質タンパク質)。対照ブロットは、総ラット免疫グロブリン又は培地のみを用いてブロットした。示したように、B24抗体は、親水性膜タンパク質の3つの画分52、100及び120KDaに結合した。陰性対照ブロットには結合は検出されなかった(データは示さず)。これらの結果は、抗ペプチド6抗体の標的タンパク質が細胞膜上にある親水性タンパク質であることを明確に示すものである。
【0251】
(例5)
抗ペプチド6抗体はアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)に結合する
抗ペプチド6抗体の標的タンパク質を具体的に同定するために、THP−1細胞の親水性膜画分を、セファロースビーズに結合させた抗ペプチド6抗体を含むアフィニティーカラムに加えた。結合したタンパク質を溶出し、SDS−PAGE上に加えた後、クマシーブルー染色した。図10は、レーン2及び4で確認できるように抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィー溶出タンパク質のクマシーブルー染色を示している。ここで、レーン2は、ラット抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーに相当し、レーン4は、マウス抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーに相当する。約40及び50KDaの2つの二重バンドが両方の場合に認められた。レーン1及び6は、マーカーを含む。
【0252】
その後、得られたバンドをゲルから切り取り、2箇所の施設での質量分析(MS)のために送った。表1にラット抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出した親水性膜タンパク質の配列決定結果を示す。表に示すように、MS分析により、溶出タンパク質が52KDaタンパク質であるアデニリルシクラーゼ結合タンパク質1(CAP1)を含んでいたことが明らかになった。そのアミノ酸配列を図30に示し、配列番号6と表示した。この所見は、ペプチド6に対する抗体がCAP1に特異的に結合することを明確に示すものである。
【0253】
【表1】
【0254】
抗ペプチド6抗体を作製するのに用いるエピトープである、ペプチド6は、ヒト結核菌熱ショックタンパク質65(MT−HSP65)に由来するペプチドである。抗ペプチド6がCAP1タンパク質に特異的に結合することを確認し、本所見を確認するために、抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出したTHP−1親水性膜タンパク質及びMT−HSP65をSDS−PAGE上に加え、ラット抗ペプチド6抗体(B24)を用いたウエスタンブロット分析に供した。図11に示すように、抗体は、2つの異なるバンド、すなわち、アフィニティーカラムから得られたタンパク質を加えたレーンに認められた52KDaタンパク質及びMT−HSP65の既知重量と一致する65KDaバンドを検出した。これらの結果は、抗ペプチド6抗体とアデニリルシクラーゼ結合タンパク質1との相互作用を支持するさらなる証拠を提供している。
【0255】
(例6)
抗CAP1抗体は単球の膜に結合する
抗ペプチド6抗体がCAP1タンパク質に結合するという所見が、本発明者らが、CAP1がTHP−1前単球の完全な膜上に存在するかどうかを検討することにつながった。CAP1が単球の完全な膜上に実際に存在する可能性を検討するために、THP−1細胞(0.5×106/tube)を抗ヒトCAP1抗体(Abnova、Taiwan、10μg/ml)とともにインキュベートし、結合の評価のためにFACSにより解析した。無染色細胞及びFITC染色細胞を陰性対照とした。図12Cに示す結果は、約87%の細胞がCAP1抗体に結合したが、陰性対照細胞(図12A及び12B)は結合を示さなかったことを示している。
【0256】
対照的に、図13Cは、表皮細胞を代表する完全なHeLa細胞は、二次抗体のみとともにインキュベートしたHeLa細胞(図13B)又は無染色(図13A)と同様に、抗CAP1抗体により結合されなかったことを示している。
【0257】
透過性化細胞を用いた上の実験を繰り返すことにより、単球におけるCAP1の固有の細胞外の存在が実証された。予期した通りに、図14に透過性化のメタノール処理THP−1細胞への抗CAP1抗体の結合が示されている。図14Cで明確にわかるように、抗CAP1抗体による細胞への著しい結合(96%)が認められるが、無染色及び二次抗体でのみ染色したTHP−1細胞では染色は示されていない(それぞれ図14A及び13B)。しかし、完全HeLa細胞の場合と対照的に、透過性化のメタノール処理HeLa細胞は、図15Cに示すように抗CAP1に著しく結合した(96%)。したがって、透過性化HeLa細胞は、透過性化THP−1細胞(96%)と同様に抗CAP1に結合するが、結合は非透過性の完全な細胞では実質的に異なり、それにより、抗CAP1抗体は、THP−1細胞のみに結合する。
【0258】
したがって、CAP1の細胞外の存在は、単球では示されているが、表皮細胞では示されていない。
【0259】
上の結果をさらに裏付け、単球の膜への結合がマウス由来の抗体の一般的な作用でないことを確認するために、またさらなる対照として、本発明者らは、抗CAP1抗体に加えてマウス抗ヒトGAPDH抗体を用い、フローサイトメトリーによりヒト単球細胞への結合を解析した。GAPDHは、細胞質に存在する細胞内タンパク質である。ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1又は抗GAPDHで染色した後、ヤギ抗マウスIgG FITC結合体で染色した。図16でわかるように、抗CAP1(図16B)と対照的に、抗GAPDH抗体は、完全THP−1細胞に結合しなかった(図16C)。予期した通り、メタノールによるTHP−1細胞の透過性化により、抗CAP1抗体(図17B)及び抗GAPDH抗体(図17C)の結合がもたらされた。
【0260】
ヒト化抗ペプチド6抗体であるプロキシマブがCD14+細胞に結合することをさらに立証するために、CD14+を発現するマウスマクロファージ細胞系RAW264.7を用いた。RAW細胞を蛍光標識抗CD14−APC結合体(図18A)又はプロキシマブ−FITC結合体(図18B)又は抗GAPDH(図18C)又は抗CAP1抗体(図18D)で染色した後、ヤギ抗マウスIgG−FITC結合体で染色した。結果から、プロキシマブ抗体が、抗CAP1(図18D)と同様に大きい割合のマウスCD14+細胞に結合することが示されている(図18C)。
【0261】
この実施例で開示した実験により、CAP1タンパク質がTHP−1細胞の細胞外に存在することが明確に示され、したがって、抗ペプチド6抗体がCAP1タンパク質との相互作用により細胞膜に直接結合し得るという概念が裏付けられている。
【0262】
(例7)
抗ペプチド6抗体はCAP1タンパク質を介してTHP−1細胞に結合する
抗ペプチド6抗体が単球膜CAP1を認識し、異なる交差反応性膜タンパク質を認識しないことを立証するために、本発明者らは、競合実験を適用し、抗ペプチド6ヒト化抗体プロキシマブが、THP−1細胞への抗CAP1抗体の結合を阻害するかどうかを試験した。この目的のために、THP−1をヒト化抗ペプチド6抗体プロキシマブ(20μg/ml)とともにプレインキュベートした後、抗ヒトCAP1抗体(0.75μg/ml)で1時間染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートした細胞と比較した。無染色細胞(図19A)及びFITC染色細胞(図19B)を陰性対照として用いた。図19Dに示すように、プロキシマブとのプレインキュベーションにより、抗CAP1抗体のみで染色した細胞(88%結合;図19C)と比較して、抗CAP1抗体に結合した細胞の集団の著しい減少(43%結合)がもたらされた。予期した通り、陰性対照試料には蛍光は観測されなかった(図19A及び19B)。
【0263】
総合すれば、これらのデータは、細胞外CAP1が、抗ペプチド6抗体の特異的標識としての役割を果たし、単球へのその結合を可能にすることを示すものである。
【0264】
(例8)
CAP1の減少は単球への抗ペプチド6抗体の結合を妨げる
プロキシマブがCAP1タンパク質を介して単球膜に特異的に結合することを示す、これらの所見をさらにバリデートするために、本発明者らは、siRNAを用いてCAP1の発現を妨げ、CAP1の発現が減少した状態での単球細胞へのプロキシマブの結合を評価した。
【0265】
siRNA実験の準備に際して、本発明者らは、フローサイトメトリーによりTHP−1細胞へのプロキシマブの結合を検定した。ヒトTHP−1細胞(0.5×106個/tube)を様々な濃度の抗ペプチド6抗体プロキシマブとともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗ヒトFc IgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。図20にTHP−1細胞に結合するヒト化抗ペプチド6抗体プロキシマブの滴定曲線を示す。
【0266】
本発明者らはさらに、フローサイトメトリーによりTHP−1細胞への抗CAP1抗体の結合を検定した。ヒトTHP−1細胞(0.5×106個/tube)を様々な濃度の抗CAP1抗体とともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスFc IgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーにより抗CAP1抗体結合について解析した。得られた抗CAP1抗体の滴定曲線を図21に示す。
【0267】
次に、本発明者らは、CAP1 siRNAによる処理の後にCAP1の発現を分析した。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)(Qiagen)をトランスフェクトした。48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、次に10%SDSタンパク質試料緩衝液を用いて抽出した。電力によりタンパク質抽出物を9%SDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転移させた。ニトロセルロース膜をマウス抗CAP1抗体(50ng/ml)を用いてウエスタンブロッティングに供した。ゲル上で分離されたタンパク質のレベルを測定するために、膜をストリップし、抗アルファアクチン抗体を用いてウエスタンブロッティングに再び供した。図22にCAP1 siRNAによる処理の後のCAP1発現の特異的減少を示す。
【0268】
最後に、ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、抗CAP1 mAb(500ng/ml)又はプロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。ヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。図23にsiRNAによるCAP1の発現の減少の後の細胞への抗CAP1及びプロキシマブ抗体の結合の著しい減少(それぞれ図23C及び23D)を示す。
【0269】
結果は、抗ペプチド6抗体がCAP1を介して単球膜に結合することを明確に示すものである。
【0270】
(例9)
抗ペプチド6抗体の作用機序
抗ペプチド6抗体がIL−10 mRNAのアップレギュレーションを誘導するという所見(例1を参照)が、本発明者らが抗ペプチド6抗体への曝露後のIL−10プロモーター領域へのタンパク質結合の変化を検討する促しとなった。この目的のために、IL−10転写を促進することが以前に報告された代表的な部位、すなわち、Sp1[Ma W.ら、J.Biol.Chem.、276巻、13664〜13674頁(2001年)]及びcAMP応答配列(CRE)[Platzer C.ら、Eur.J.Immunol.、29巻、3098〜3104頁(1999年)]結合モチーフを用いた。これらの公知のモチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、ラットモノクローナル抗ペプチド6抗体又は全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、次に電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。それぞれ図24A及び24Bにより示されるように、B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した、全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのCREB及びSP1転写因子の有意な結合をもたらした。これらの結合部位へのヌクレオチド変化の導入(突然変異CRE及びSp1)は、両部位へのタンパク質結合をほぼ完全に無効にした。これらの結果は、抗ペプチド6抗体への単球の曝露が、IL−10遺伝子プロモーターのCRE及びSp1モチーフへの転写因子の結合を刺激することにより、mRNA転写を誘導することを明確に示すものである。CREは、cAMP/cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達経路により一般的に活性化されるので、本発明者らは、次に抗ペプチド6への曝露後のIL−10発現におけるcAMPの役割を検討した。以下の解析には公知のPKA阻害剤KT5720を利用した。KT5720の作用部位[Kase H.ら、Bioch.Biophys.Res.Com.、142巻、436〜440頁(1987年)]を図25に示す。抗ペプチド6抗体とのインキュベーションの15分前にKT5720を種々の濃度でPBMCに加えた。図26に明確に示されているように、この介入がIL−10の分泌の用量依存的な阻害をもたらしたことから、PKAシグナル伝達経路が、抗ペプチド6によるIL−10の発現の活性化に重要な役割を果たしていることが立証された。総合すると、得られたデータから、抗ペプチド6抗体がCAP1との相互作用により、IL−10 mRNA転写を誘導し、ひいてはcAMP及びPKA経路の活性化を刺激するという結論が導かれた。
【0271】
(例10)
ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片はヒト単球に結合し、IL−10分泌を誘導する。
単球細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体の結合の特異性をさらに立証し、その結合がこれらの細胞上のFc受容体を介するものでないことを確認するために、本発明者らは、ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片を作製し(Pierce F(ab)2調製キット)、CD14+精製細胞へのそれらの結合を評価した。
【0272】
Dylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてF(ab)2断片をFITCで標識した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。単離細胞を蛍光標識抗CD14−PE結合体(図27A)又はヒト化抗ペプチド6抗体F(ab)2断片(FITC結合)とPE−抗CD14の両方(図27B)で染色した。結果は、全プロキシマブ抗体に関する以前の結果と同様に、CD14+細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体(プロキシマブ)F(ab)2の著しい結合(図27Bにおける上右四半分)を示すものである。図27CにFITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセント(プロキシマブのF(ab)2を含まない−黒色、プロキシマブのF(ab)2を含む−灰色)を示す。ヒト化抗ペプチド6抗体F(ab)2が大きいパーセントのCD14+集団に結合することが示されている。
【0273】
本発明者らは、次にCD14+精製細胞へのプロキシマブのF(ab)2の結合を評価した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。抗ヒトCD14磁気ビーズ(BD)を用いてCD14+細胞をさらに単離した。プロキシマブのF(ab)2をFITCで直接標識した。CD14+単離細胞を抗CD14(APC結合)又はプロキシマブF(ab)2(FITC結合)で染色した。PBMCについての以前の所見と同様に、結果は、CD14+集団へのプロキシマブのF(ab)2の著しい結合を示すものである。図27Dに無染色細胞を示し、27EにF(ab)2−FITCによる染色を示し、27Fに抗CD14−APCによる染色を示す。
【0274】
(例11)
ヒト化プロキシマブF(ab)2及び抗CAP1はIL−10分泌を誘導する
IL−10分泌に対する抗CAP1抗体及びプロキシマブのF(ab)2の作用についても評価した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。単離細胞をプロキシマブ(200μg)、プロキシマブのF(ab)2(150μg)又は抗CAP1抗体(8μg)とともにRPMI中でインキュベートし(48時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。図28における結果は、プロキシマブと、また抗CAP1抗体とも同様に、プロキシマブF(ab)2によるIL−10分泌の著しい増加を示すものである。したがって、プロキシマブF(ab)2は、単球膜に結合し、完全なプロキシマブ抗体と同じ免疫応答を引き起こす。さらに、これらの結果は、CAP1が免疫調節標的であることを明確に示し、CAP1に結合する化合物が、前記免疫調節を媒介する抗炎症性サイトカインIL−10の発現の増大を誘導することを示すものである。
【0275】
(例12)
抗ペプチド6、抗CAP1、プロキシマブ及びプロキシマブF(ab)2の作用に関する提案モデル
IL−10分泌の誘導及び炎症性障害の軽減におけるCAP1結合抗体の作用に関する本発明者らの提案モデルを図29に示す。抗ペプチド6並びにCAP1結合抗体は、CD14+細胞に存在する細胞外CAP1に結合し、cAMP/PKA依存性経路を活性化し、IL−10の転写を誘導する。IL−10分泌が増加し、Th1/Th2均衡をTh2の方に傾けることによって炎症性表現型を抑制する。
【0276】
(例13)
CAP1の細胞局在化及び免疫調節機能のさらなる特徴付け
CAP1の免疫調節上の役割をさらに検討するために、CAP1タンパク質を発現させ、精製する。最初に、CAP1をN末端6×Hisタグを有するフレームにおけるpET22b+ベクターにクローニングする。得られたプラスミドをBl21細胞にトランスフォームし、プラスミドを運ぶ細菌細胞を増殖させ、GAP1−6×His組換え融合タンパク質を発現するように誘導する。次にタンパク質を天然又は変性条件でNiNtaカラム上で精製する。抗GAP1抗体を用いてウエスタンブロットにより、精製GAP1を確認する。GAP1とヒト化プロキシマブとの相互作用をウエスタンブロット、ELISA及びBiacoreを用いて試験する。
【0277】
次のステップにおいて、CAP1とヒト化抗ペプチド6抗体とを共免疫沈降させる試みをする。細胞溶解物を磁気ビーズに結合させたプロキシマブとともにインキュベートする。次にプロキシマブに結合しているタンパク質をSDS−PAGE上で分離し、抗CAP1を用いたウエスタンブロットにより認識を確認する。最後に、膜局在化シグナルを加えているCAP1を、ヒト化抗ペプチド6抗体を結合せず、細胞外CAP1を発現しない細胞にトランスフェクトする。次に、そのようにトランスフェクトした細胞が両抗体により結合されることを発見することを期待して、細胞を抗CAP1又はヒト化抗ペプチド6とともにインキュベートし、FACSにより解析する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節の標的としてのアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)の使用に関する。より具体的には、本発明は、CAP1又は組成物中のCAP1と相互作用する化合物の使用及び免疫障害の治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で引用するすべての参考文献を含む、本出願を通して言及するすべての刊行物は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。
【0003】
ヒト結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)の65kDa熱ショックタンパク質(HSP65)は、自己免疫性関節炎の病因において重要な役割を果たしている。その効果は、アジュバント関節炎(AA)の実験的モデルにおいて十分に実証されている。AAは、フロイントアジュバントに懸濁したマイコバクテリア菌の加熱死菌の皮内接種によってLewis又はWistarなどの感受性近交系ラットにおいて誘発させることができる。AAは、HSP65の残基180〜188に応答性のT細胞クローンにより受動的に転移させることができる[Holoshitz J.ら、Science、219巻、56〜58頁(1983年)]。
【0004】
疾患の防御がHSP65に対する細胞応答に起因する可能性があるという証拠が報告され[Lider O.ら、Proc.Acad.Sci.、84巻、4577〜4580頁(1987年);Moudgil K.ら、Exp.Med.、185巻、1307〜1316頁(1997年)]、このタンパク質が病因と抵抗性の獲得とに関与する異なるエピトープを含むことが示唆される。本発明者らは、AAに対する抵抗性を、HSP65に対する抗体によっても付与することができ、関節炎抵抗性系統からの免疫グロブリンの関節炎感受性ラットへの静脈内注入により受動的に転移させることができることを以前に示した[Ulmansky R.及びY.Naparstek、Eur.J.Immunol.、25巻、952〜957頁(1995年)]。さらなる分析により、ペプチド6と呼ばれる(配列番号1によっても表示される)アミノ酸残基31〜46に対する抗HSP防御抗体のエピトープ特異性が定義された[Ulmansky R.及びY.Naparstek、Immunol.、168巻、6463〜6469頁(2002年)]このペプチドを用いたLewisラットのワクチン接種は、全分子に対する抗体の産生並びに疾患の誘導に対する抵抗性をもたらす。
【0005】
本発明者らは、ペプチド6に対するポリクローナル抗体が末梢血単核細胞(PBMC)により産生されるIL−10を刺激することを以前に示した[Ulmansky(2002年)、前出]。抗炎症性サイトカインIL−10は、炎症応答の抑制を可能にする、主としてその抑制作用により先天性免疫に重要な役割を果たす。本発明者らが産生させたモノクローナル並びにキメラ及びヒト化抗ペプチド6抗体(プロキシマブ(Proximab))は、PBMCに結合し、該細胞によるIL−10分泌を刺激することにより、この防御効果を保持することが示された。
【0006】
本発明者らは、ペプチド6に対する抗体がペプチド6と相互作用するだけでなく、さらに、単球上の表面リガントとも直接的に交差反応し、この相互作用がこれらの抗体の作用機序の理解の手がかりであることも今回示した。単球への抗ペプチド6抗体の結合の後、炎症過程を減弱させ、抑制することにより、炎症性障害の改善及び治療をもたらすサイトカイン、具体的には抗炎症性サイトカインとしてのIL−10の産生及び分泌の増加につながるシグナル伝達経路の活性化が存在する。これが、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)などの前炎症性Th1サイトカインとIL−10などの抗炎症性Th2サイトカインとの間の均衡を傾ける。したがって、抗ペプチド6抗体によってTh1/Th2均衡をTh2抗炎症応答の方に調節することが、炎症性障害の治療に適用できると本発明者らによって示された。
【0007】
本発明により示されたように、抗ペプチド6抗体の細胞標的は、CAP1タンパク質である。シクラーゼ結合タンパク質(CAP)は、アクチン細胞骨格の調節に、またシグナル伝達経路において機能する進化的に保存されたタンパク質である。哺乳動物は、関連するCAP1及びCAP2をコードする2つのCAP遺伝子を有する。CAP1は、広い組織分布を示すが、CAP2は、脳、心臓及び骨格筋及び皮膚においてのみ顕著に発現する。ヒトCAP1のcDNAは、同定され、クローニングされ、酵母CAPタンパク質と相同である475アミノ酸タンパク質をコードすることが示された。
【0008】
最初のCAPは、栄養シグナル伝達時にRas/環状AMP経路のエフェクターとしての役割を果たすサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アデニリルシクラーゼ複合体の成分として単離された。CAPは、いくつかの機能に関与するドメインを含む多機能性分子である。NH2末端は、活性化RASタンパク質に対する細胞の応答性に必要且つ十分であるが、COOH末端は、正常細胞の形態及び成長の制御に必要である。酵母における遺伝学的研究で、CAPが小胞輸送及びエンドサイトーシスに関係するとみなされた。CAPは、多細胞生物体の発生上の役割を果たしており、キイロショウジョウバエ属の研究で、眼の発生時及び卵母細胞の極性の確立におけるアクチン細胞骨格の重要性が明らかにされた。
【0009】
ヒトCAP1は、アクチン−コフィリン複合体の成分である。ヒトCAPは、Ras応答性アデニリルシクラーゼに結合するN末端ドメイン及びアクチン重合を阻害するC末端ドメインを有する二元機能タンパク質である。CAP1及びそのC末端ドメインは、反矢じり端におけるフィラメントの伸長を促進し、重合性Gアクチンを容易に再生する過程である、球状(G)(単量体)アクチンサブユニット上のADP−ATP交換を刺激することが認められた。抗ペプチド6抗体と、多分cAMP依存性プロテインキナーゼによるIL−10の発現の誘導をもたらすと本発明により最初に示されたCAP1分子との直接的な相互作用は、この新規な経路における重要な要素としてのCAP1の関与を反映している。これらの所見は、この特定の経路の免疫調節の標的としてCAP1を用いる可能性を立証するものである。さらに、抗CAP1抗体は、IL−10の発現を誘導することが示され、CAP1結合化合物を免疫調節剤として用いる実現可能性が実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、免疫関連障害の治療のための方法及び組成物におけるCAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物の使用を提供することが本発明の目的である。
【0011】
本発明の他の目的は、CAP1及びその任意の断片の免疫調節化合物としての使用を提供することである。
【0012】
他の目的において、本発明は、免疫調節化合物の同定のためのスクリーニング方法におけるCAP1の使用を提供する。そのような化合物は、免疫関連障害に罹患している対象におけるTh1/Th2均衡を調節するのに有用である可能性がある。
【0013】
本発明のこれら及び他の目的は、記述が進むにつれて明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物に関する。本発明の組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0015】
特定の一実施形態によれば、本発明の組成物は、治療有効量の抗CAP1抗体を有効成分として含む。
【0016】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡を調節することにより、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる治療用組成物を提供する。本発明の治療用組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法に関する。本発明の方法は、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物の少なくとも1つを対象に投与するステップを含む。
【0018】
他の態様において、本発明は、免疫関連障害の治療用の組成物の調製における、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つの使用に関する。
【0019】
第5の態様において、本発明は、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに使用される、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を提供する。
【0020】
本発明はまた、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに使用される、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物のスクリーニング方法に関する。本発明の方法は、(a)CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップ、(b)抗炎症性サイトカイン発現の調節に基づいて、ステップ(a)で選択された化合物の効果を判定するステップを含む。それにより、候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節は、対象におけるTh1/Th2均衡を調節する化合物の能力を示す。
【0022】
本発明はまた、CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物であって、本発明によるスクリーニング方法により同定される化合物を提供する。
【0023】
最後に、本発明は、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに有効な薬剤を調製するための、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む医薬単位剤形に関する。本発明の剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0024】
本発明のさらなる態様は、以下の図面により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】マウス抗ペプチド6抗体がin vitroでIL−10分泌を誘導することを示す図である。ネイティブヒト単球をマウス抗ペプチド6モノクローナル抗体(mAb)とともにRPMI中でインキュベートし(24時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10の分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。略語:Mon.ce(単核細胞);α−pep6(抗ペプチド6(配列番号1)抗体)Un.(単位);IL−10(インターロイキン10)。
【図2】抗ペプチド6抗体がIL−10転写の一時的アップレギュレーションを誘発することを示す図である。ヒト単球細胞(PBMC)をマウスB24抗ペプチド6モノクローナル抗体、陰性対照としての全ネイティブLewis IgM抗体又は陽性対照としてのリポ多糖(LPS)とともにインキュベートした。図2A 細胞を、LPS、全ネイティブLewis IgM対照又はB24への曝露の4及び24時間後に収集し、抽出されたmRNAをRT−PCRを用いてアッセイした。LPS及び抗ペプチド6抗体は、無処理及びネイティブLewis IgM処理細胞と比較して曝露の4時間後にIL−10 mRNAの増加を誘発した。しかし、mRNAレベルが曝露の24時間後に一定のままであったLPS処理細胞に反して、抗ペプチド6で処理した細胞における発現レベルが抗体との24時間のインキュベーションの後に低下した。略語:UT(無処理);LPS(リポ多糖);IgM(ネイティブLewis IgM抗体);α−pep6(抗ペプチド6抗体);hr(時間)。図2B GAPDH cDNAを等しい負荷についての対照として用いた。略語:UT(無処理);LPS(リポ多糖);IgM(ネイティブLewis IgM抗体);α−pep6(抗ペプチド6抗体);hr(時間)。
【図3】プロキシマブがin vivoでIL−10の発現を誘導し、アジュバント関節炎を軽減することを示す図である。6〜8週齢の雌近交系Lewisラットの尾の基部にCFA中1mgのMT H37Raを皮内注射した。動物にリン酸緩衝液(PBS陰性対照)、ステロイド又はプロキシマブを投与した。関節炎の重症度は、アジュバント関節炎(AA)採点法により評価した。関節炎は、盲検化観測者が隔日に次のように評価した。0、関節炎なし;1、関節の紅化;2、関節の紅化及び腫脹。各足蹠の足根及び足根中足関節を採点した。16の最大スコアを得ることができた。IL−10レベルをELISAにより測定した。結果は、1群当たり2匹のラットの平均値±SEである。略語:Cont.(PBS陰性対照);PROX(プロキシマブ抗体);STR(ステロイド);AA Sc.(アジュバント関節炎スコア);pg/ml(ピコグラム/ミリリットル)。
【図4A】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示す図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、染色せずに、細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照として用いた。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4B】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示すための図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体で染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4C】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示すための図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、抗ヒトCD14−PEで染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。
【図4D】キメラ抗ペプチド6抗体が単離CD14+ヒト単球PBMCに結合することを示す図である。CD14+細胞をCD14磁気ビーズを用いてヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体及び抗ヒトCD14−PEの両方で染色した。細胞を抗体の結合についてFACSにより解析した。CD14陽性であった細胞の大部分がキメラ抗ペプチド6についても陽性であった。
【図5A】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。ヒトPBMCを健常ヒトドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−APC結合抗体で染色した。略語:α−CD14(抗CD14抗体)。
【図5B】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。ヒトPBMCを健常ヒトドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞をFITC標識プロキシマブ及びAPC結合抗CD14抗体の両方で染色した。略語:α−CD14(抗CD14抗体);PROX(抗ペプチド6ヒト化抗体)。
【図5C】プロキシマブがヒトCD14+単球PBMCに結合することを示す図である。FITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセントを示す(プロキシマブを含まない−黒色、プロキシマブを含む−灰色)。略語:PROX(抗ペプチド6ヒト化抗体)。
【図6A】キメラ抗ペプチド6抗体及び抗CD14抗体が単球膜に結合することを示す図である。CD14+Mono Mac6(MM6)細胞をキメラ抗ペプチド6抗体(CHM抗体)とともにインキュベートし、抗ヒトIgG−FITC結合抗体のみで染色した。染色後に、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。略語:CHM(キメラ抗ペプチド6抗体)。
【図6B】キメラ抗ペプチド6抗体及び抗CD14抗体が単球膜に結合することを示す図である。CD14+Mono Mac6(MM6)細胞をキメラ抗ペプチド6抗体(CHM抗体)とともにインキュベートし、抗ヒトIgG−FITC結合抗体並びにマウス抗ヒトCD14−APCで染色した。染色後に、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。CHM抗体のリガンドは、CD14陽性細胞の膜表面上にある。略語:CHM(キメラ抗ペプチド6抗体);CD14(抗CD14抗体)。
【図7】ヒト化抗ペプチド6抗体がヒト単球Fc受容体を介して結合しないことを示す図である。MM6細胞を無処理とするか、又は非標識ヒト化抗ペプチド6抗体変異型VK3若しくはCD32及びCD64に対する抗体とともにプレインキュベートし、次にFITC−VK3で処理し、結合FITC−VK3についてFACSによりアッセイした。FITC−VK3が細胞の30%に結合した(左のバー)。非蛍光VK3抗体とのプレインキュベーションにより、結合がVK3−FITC結合が完全に阻止された(中央のバー)が、両Fc受容体に対する抗体とのプレインキュベーションは何らの効果ももたらさなかった(右のバー)。略語:VK3(FITC結合ヒト化抗ペプチド6抗体);PRI(VK3)+VK3(非標識VK3と続いてFITC VK3とのプレインキュベーション);PRI(CD32+CD64)+VK3(抗CD32及び抗CD64と続いてFITC VK3とのプレインキュベーション)。
【図8A】ラット抗ペプチド6抗体がTHP−1細胞に結合することを示す図である。ヒト前単球THP−1細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色を行い、次にFACS解析に供した。二次抗体(FITC−ヤギ抗ラット)のみとともにインキュベートした細胞を対照とした。
【図8B】ラット抗ペプチド6抗体がTHP−1細胞に結合することを示す図である。ヒト前単球THP−1細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色を行い、次にFACS解析に供した。ラット抗ペプチド6モノクローナル抗体とともにインキュベートした細胞の75%がB24抗体に結合した。
【図9】モノクローナル抗ペプチド6の標的が単球親水性膜タンパク質であることを示す図である。親水性膜タンパク質、疎水性膜タンパク質及び細胞質タンパク質をTHP−1細胞から単離し、マウスB24モノクローナル抗ペプチド6抗体を用いたウエスタンブロット分析に供した(データは示さず)。対照ブロットは、総ラット免疫グロブリン又は培地のみを用いてブロットした。レーン1−親水性膜タンパク質;レーン2−疎水性膜タンパク質;レーン3−細胞質タンパク質。示したように、B24抗体は、親水性膜タンパク質の3つの画分52、100及び120KDaに結合した。陰性対照ブロットには結合は検出されなかった。略語:KDa(キロダルトン)。
【図10】抗ペプチド6タンパク質標的の分析を示す図である。THP−1細胞の親水性膜画分をセファロースビーズに結合させたマウスモノクローナル抗ペプチド6抗体を含むアフィニティーカラムに加えた。結合タンパク質を溶出させ、SDS−PAGE上に加え、続いてクマシーブルー染色を行った。レーン2は、ラット抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーを示し、レーン4は、マウス抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーを示す。レーン1及び6はマーカーを含む。約40及び50KDaの2つの二重バンドがレーン2及び4に確認することができる。バンドを切り取り、質量分析により分析した。52KDaバンドを配列決定したところ、アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)を含むことが認められた。
【図11】抗ペプチド6が52kDa膜タンパク質並びにMT−HSP65に結合することを示す図である。抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出したTHP−1親水性膜タンパク質及びMT−HSP65をSDS−PAGE上に加え、ラット抗ペプチド6抗体(B24)を用いたウエスタンブロット分析に供した。アフィニティーカラムから得られた溶出タンパク質を加えたレーンに認められた52KDaタンパク質と既知重量のMT−HSP65と一致する65KDaバンドの2つの異なるバンドが検出された。略語:MT−HSP65(ヒト結核菌熱ショックタンパク質65);KDa(キロダルトン)。
【図12A】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。
【図12B】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図12C】抗CAP1抗体が完全THP−1細胞に結合することを示す図である。THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。THP−1細胞の87%が抗CAP1抗体に結合した。
【図13A】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図13B】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図13C】抗CAP1抗体が完全HeLa細胞に結合しないことを示す図である。HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。HeLa細胞の1.5%未満が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図14A】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図14B】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図14C】抗CAP1抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化THP−1細胞(0.5×106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。透過性化THP−1細胞の96%が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)
【図15A】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。染色しなかった細胞を陰性対照とした。略語:Us(無染色)、ce(細胞)。
【図15B】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図15C】抗CAP1抗体が透過性化HeLa細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化HeLa細胞(106/tube)を10μg/ml抗ヒトCAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、FACSにより解析した。透過性化HeLa細胞の96%が抗CAP1抗体に結合した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図16A】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗GAPDH(図16B)又はマウス抗GAPDH(図16C)とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞(図16A)と比較し、FACSにより解析した。略語:Cont.(対照)。
【図16B】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗CAP1とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図16C】抗GAPDH抗体が完全THP−1細胞に結合しないことを示す図である。ヒトTHP−1細胞を1μgのマウス抗GAPDHとともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗GAPDH抗体は、抗CAP1と対照的に、完全THP−1細胞に結合しなかった。略語:α−GAPDH(抗GAPDH抗体)。
【図17A】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1(図17B)又は抗GAPDH抗体(図17C)とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞(図17A)と比較し、FACSにより解析した。略語:Cont.(対照)。
【図17B】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗CAP1が透過性化細胞に結合したことから、抗CAP1が有効な抗体であることが実証された。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図17C】抗GAPDH抗体が透過性化THP−1細胞に結合することを示す図である。メタノール透過性化ヒトTHP−1細胞を1μgの抗GAPDH抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色し、二次抗体のみで染色した細胞と比較し、FACSにより解析した。抗GAPDHが透過性化細胞に結合したことから、抗GAPDHが有効な抗体であることが実証された。略語:α−GAPDH(抗GAPDH抗体)。
【図18A】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗CD14−APC結合抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18B】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗プロキシマブ−FITC結合抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18C】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗GAPDH抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図18D】プロキシマブ及び抗CAP1抗体のCD14+マウス単球細胞系RAW264.7への結合を示す図である。マウスRAW264.7細胞を蛍光標識抗CAP1抗体とともにインキュベートし、続いてヤギ抗マウスFITC結合IgGで染色した。抗体の結合プロファイル(蛍光強度対細胞数)をFACSにより解析し、ここに示した(無染色細胞−黒色、染色細胞−灰色)。略語:Co.(計数)。
【図19A】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示すための陰性対照としての無染色THP−1細胞のFACS解析を示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞と比較した(図19C)。染色しなかった細胞を陰性対照とした。
【図19B】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞(図19C)と比較した。FITCで染色した細胞を陰性対照とした。
【図19C】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞(図19C)と比較した。
【図19D】プロキシマブ及び抗CAP1抗体が同じリガンドについて競合することを示す図である。THP−1細胞をプロキシマブとともにプレインキュベートし、続いて抗ヒトCAP1(図19D)で染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートしたTHP−1細胞と比較した(図19C)。プロキシマブとのプレインキュベーションにより、抗CAP1抗体のみで染色した細胞(図19C)と比較して、抗CAP1抗体に結合した細胞(図19D)の集団の有意な減少がもたらされた。
【図20】THP−1細胞へのプロキシマブ結合の滴定曲線を示す図である。ヒトTHP−1細胞(0.5×106/tube)を様々な濃度のプロキシマブとともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗ヒトFcIgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。略語:Ab(抗体);bin.(結合);PROX(抗ペプチド6ヒト化プロキシマブ抗体)。
【図21】THP−1細胞への抗CAP1結合の滴定曲線を示す図である。ヒトTHP−1細胞(0.5×106/tube)を様々な濃度の抗CAP1とともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスFcIgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。略語:Ab(抗体);bin.(結合);α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図22】THP−1細胞中のCAP1の特異的ノックダウンを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)をトランスフェクトした。48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、細胞を10%SDSタンパク質試料緩衝液を用いて抽出した。電力により細胞抽出物をSDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転移させた。ニトロセルロース膜をマウス抗CAP1抗体(50ng/ml)を用いてウエスタンブロッティングに供し、抗アルファ−アクチン抗体を用いて再ブロッティングした。CAP1タンパク質レベルの特異的減少が認められた。略語:Cont.(All Star Negative siRNA対照);α−CAP1(抗CAP1抗体);α−Actin(抗アルファ−アクチン抗体)。
【図23A】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNAをトランスフェクトし、抗CAP1抗体(500ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。略語:Cont.(All Star Negative siRNA対照);α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図23B】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNAをトランスフェクトし、プロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。略語:;PROX(プロキシマブ抗体)。
【図23C】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にヒトCAP1 siRNA(50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、抗CAP1抗体(500ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。対照細胞(図23A、23B)と比較して、siRNAによるCAP1発現の減少の後に細胞への抗CAP1の結合の有意な減少が認められた。略語:α−CAP1(抗CAP1抗体)。
【図23D】THP−1細胞表面への抗CAP1及びプロキシマブの結合がCAP1 siRNAによる処理により減少することを示す図である。ヒトTHP−1細胞にヒトCAP1 siRNA(50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、プロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。フローサイトメトリー解析をヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いて行った。対照細胞(図23A、23B)と比較して、siRNAによるCAP1発現の減少の後に細胞へのプロキシマブの結合の有意な減少が認められた。略語:PROX(プロキシマブ抗体)。
【図24A】抗ペプチド6がIL−10プロモーターへのCREB転写因子の結合を誘導することを示す図である。CREモチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、B24抗ペプチド6抗体又は完全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した(最も左のレーン)完全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのCREB転写因子の有意な結合をもたらした。突然変異CREは、部位へのB24誘導タンパク質結合をほぼ完全に無効にした(最も右のレーン)。略語:CRE(cAMP応答配列);mut(突然変異);AP6(B24抗ペプチド6抗体)。
【図24B】抗ペプチド6がIL−10プロモーターへのSP1転写因子の結合を誘導することを示す図である。Sp1モチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、B24抗ペプチド6抗体又は全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した(最も左のレーン)全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのSp1転写因子の有意な結合をもたらした。突然変異Sp1は、部位へのB24誘導タンパク質結合をほぼ完全に無効にした(最も右のレーン)。略語:mut(突然変異);AP6(B24抗ペプチド6抗体)。
【図25】プロテインキナーゼA(PKA)阻害剤KT5720の作用部位を示す図である。図に矢印により示すPKA阻害剤KT5720の作用部位を示す。略語:AC(アデニリルシクラーゼ);Nuc(核);Prot.(タンパク質);In.(阻害剤)。
【図26】KT5720が抗ペプチド6抗体によるIL−10の誘導を用量依存的に抑制することを示す図である。抗ペプチド6抗体とのインキュベーションの15分前にPBMCにKT5720を様々な濃度で加えた。これが、IL−10分泌の用量依存的な抑制をもたらした。略語:DMSO(ジメチルスルホキシド)、UT(無処理)。
【図27A】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。プロキシマブのF(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてFITCで標識した。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−PE結合体のみで染色した。略語:α(抗)。
【図27B】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。プロキシマブのF(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてFITCで標識した。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−PE結合体並びにプロキシマブF(ab)2−FITC結合体で染色した。略語:α(抗);PROX(プロキシマブ抗体);F(ab)2(プロキシマブF(ab)2)。
【図27C】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。FITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセント(プロキシマブのF(ab)2を含まない−黒色、プロキシマブのF(ab)2を含む−灰色)を示す。略語:co.(計数)。
【図27D】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞を不染色のままとした。略語:Us.(無染色);ce.(細胞)。
【図27E】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞をプロキシマブのF(ab)2−FITC結合体で染色した。プロキシマブのF(ab)2は、有意なパーセントのCD14+集団に結合した。略語:PROX(プロキシマブ抗体);F(ab)2(プロキシマブF(ab)2)。
【図27F】プロキシマブのF(ab)2断片がCD14+PBMC細胞に結合することを示す図である。CD14+PBMC細胞を抗ヒト磁気ビーズ(BD)を用いてさらに単離した。CD14+単離細胞を抗CD14−APC結合体で染色した。略語:α(抗)。
【図28】プロキシマブ、プロキシマブのF(ab)2断片及び抗CAP1抗体がヒトPBMCからのIL−10分泌を誘導することを示す図である。ヒトPBMCをFicoll勾配で分離した。単離細胞をプロキシマブ(200μg)、プロキシマブのF(ab)2(150μg)又は抗CAP1抗体(8μg)とともにRPMI中でインキュベートし(48時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。略語:PROX(プロキシマブ、抗ペプチド6ヒト化抗体);F(ab)2(プロキシマブのF(ab)2断片);α−CAP1(抗CAP1抗体);UT(無処理)
【図29】作用機序を示す図である。抗ペプチド6抗体が単球細胞膜上のCAP1に結合することにより、Sp1及びCRE結合タンパク質を含む転写因子のcAMP/PKA依存性活性化を誘発し、IL−10の転写及び分泌を増加させ、抗炎症性免疫応答を促進する。略語:AP6(抗ペプチド6抗体);Act.(活性化);Sil.(サイレンシング);Rep.(リプレッサー);Path.(経路);Sec.(分泌)
【図30】ホモ・サピエンス(Homo sapiens)CAP1アミノ酸配列を示す図である。配列番号6としても表示される、ヒトCAP1タンパク質アミノ酸配列(GenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされるGenBankアクセス番号NP_001099000.1)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、HSP65分子内のエピトープを特異的に認識する抗体、すなわち抗ペプチド6抗体とCAP1分子との直接的相互作用を初めて示すものである。この相互作用は、抗炎症性サイトカインIL−10の誘導をもたらす。本発明はさらに、この抗ペプチド6抗体経路へのcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)の関与を示している。これらの結果は、この免疫調節経路における重要なメディエーターとしての、また、したがって、免疫調節の可能な標的としてのCAP1の役割を明確に示している。
【0027】
本発明はさらに、抗CAP1抗体によるIL−10の活性化を示し、それにより、CAP1及び免疫調節剤としてそれと相互作用する化合物を用いる実現可能性を実証している。
【0028】
したがって、第1の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物に関する。特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、免疫調節有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0029】
上で示したように、本発明は、抗ペプチド6抗体が、CAP1に結合し、抗炎症性サイトカインIL−10の発現の増加と、それによるTh1/Th2細胞均衡の調節をもたらすシグナル伝達経路を開始させることを示している。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む。
【0031】
特定の実施形態において、そのようなCAP1結合化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物であってよい。1つの特定の実施形態において、CAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物は、タンパク質ベースの分子、具体的には、免疫グロブリン様分子であってよい。より具体的には、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗体であってよい。特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗CAP1抗体又はCAP1を認識し、それに結合する抗体を含み、ただし、抗体は、本発明により記述されるポリクローナル、モノクローナル、キメラ若しくはヒト化抗ペプチド6抗体のいずれか、又はペプチド6(配列番号1)に対する、若しくはそれを認識する他の抗体ではないことをさらに理解されよう。
【0032】
さらに、特定の実施形態によれば、抗CAP1抗体であってよい、本発明のCAP1結合化合物は、CAP1分子内の抗ペプチド6抗体結合部位と同じである部位を介して、又は異なる部位を介してCAP1分子と相互作用し得る。
【0033】
例11により示されているように、CAP1を特異的に認識し、それに結合する抗CAP1抗体は、IL−10の発現の顕著な増加をもたらす。したがって、本発明の特定の実施形態は、有効成分としての役割を果たす化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、TH1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する、単離および精製された抗CAP1抗体であってよい、本発明の組成物に関する。
【0034】
特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、抗炎症性サイトカインの発現の増加を伴う。そのような抗炎症性サイトカインは、IL−10、IL−4、IL−6、IL−11、IL−13及びIL−1受容体アンタゴニストのいずれか1つであってよい。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、IL−10の発現の増加を伴う。より具体的には、そのような増加は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、10%〜90%、10%〜80%、10%〜70%、10%〜60%又は10%〜50%の増加であり得る。特に、適切な対照、具体的には無処理対象又は細胞と比較して発現の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の増加。
【0035】
上及び他の実施形態によれば、本発明は、本発明の組成物に用いるCAP1を特異的に認識し、それに結合する抗体を提供する。したがって、「結合特異性」、「CAP1に特異的に結合する」、「CAP1と特異的に免疫応答する」、「CAP1に対して特異的な」又は「特異的に認識する」という用語は、CAP1分子内のエピトープについて言及するとき、タンパク質及び他の生物製剤の不均一集団におけるエピトープの存在を決定する結合反応に適用されることに留意されたい。したがって、指定の免疫検定条件下で、特異抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて特定のエピトープに結合する。
【0036】
「エピトープ」という用語は、抗体により認識され、結合されることができる分子、具体的にはCAP1の部分を意味する。エピトープ又は「抗原決定基」は、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団から通常なり、特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。
【0037】
上で示したように、特定の実施形態において、本発明は、単離および精製された抗CAP1抗体を提供する。本明細書で用いているように、抗体又は抗体をコードする核酸分子との関連における「単離された」又は「実質的に精製された」は、抗体又は核酸がその自然環境から取り出されたこと、又はその自然の状態から変化させられたことを意味する。したがって、「単離された」は、抗体又は核酸分子が精製された程度を必ずしも反映しない。しかし、ある程度まで精製された抗体又は核酸分子は「単離され」ていると理解されよう。抗体又は核酸分子が自然環境に存在しない、すなわち天然に存在しない場合、この分子は、存在する場所にかかわらず「単離され」ている。
【0038】
本発明の組成物により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生は、例えば、Current Protocols in Immunology、Wiley and Sons Inc.の第2章に記載されている。
【0039】
モノクローナル抗体は、免疫化動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節から採取したB細胞からハイブリッド細胞の増殖に有利な条件下で不死化B細胞との融合により調製することができる。モノクローナル抗体を産生させる技術は、上記のCurrent Protocols in Immunologyの第2章などの多くの論文及び教科書に記載されている。
【0040】
本明細書で用いているように、「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1つ又は複数のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。広く認められている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン及びミュー定常領域遺伝子並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子などである。軽鎖は、カッパ又はラムダと分類される。重鎖は、順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義するガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はエプシロンと分類される。
【0041】
抗体は、完全な免疫グロブリンとして、又は例えば、軽鎖及び重鎖可変領域のみを含むFv断片、可変領域及び定常領域の一部を含むF(ab)若しくはF(ab)’2断片、単鎖抗体などを含む様々な形の改変体として存在していてよい。抗体は、動物若しくはヒト由来であってよく、又はキメラ若しくはヒト化抗体であってよい。本明細書で用いているように、「抗体」という用語は、これらの様々な形を含む。
【0042】
具体例としての免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、それぞれの対が1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する、ポリペプチド鎖の2つの同じ対を含む。各鎖のN末端は、抗原認識に主として関与する約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を意味する。
【0043】
本明細書において上で示したように、特定の実施形態によれば、本発明は、免疫調節組成物中の有効成分としての抗CAP1抗体及びその抗原結合断片の使用を提供する。「抗原結合断片」という用語は、CAP1への結合を保持している抗体の一部を意味する。抗体の機能的断片の例は、完全な抗体分子、Fv、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)’2及びそれらの任意の組合せ又は標的抗原に結合することができる免疫グロブリンペプチドの他の機能部分などの抗体断片を含むが、これらに限定されない。当業者により理解されるように、様々な抗体断片を様々な方法、例えば、ペプシンなどの酵素による完全な抗体の消化又は新規合成により得ることができる。抗体断片は、化学的に又は組換えDNA法を用いることによりしばしば新規合成される。したがって、抗体という用語は、本明細書で用いているように、全抗体の修飾により生産される抗体断片、又は組換えDNA法を用いて新規合成されるもの、又はファージディスプレイライブラリーを用いて同定されるものを含む。抗体という用語は、二価分子、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディも含む。
【0044】
「VH」又は「VH」への言及は、Fv、scFv、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)又はFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味する。「VL」又は「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味する。
【0045】
より具体的には、「単鎖Fv」又は「scFv」という句は、伝統的な2本鎖抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインが接合されて1本鎖を形成している抗体を意味する。一般的に、リンカーペプチドが2つの鎖の間に挿入されて、適正な折りたたみ及び活性結合部位の形成を妨害することなく、可変ドメインの安定化を可能にする。本発明により使用される単鎖抗CAP1抗体は、単量体として結合し得る。他の具体例としての単鎖抗体は、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディを形成する。
【0046】
本発明の組成物及び方法により使用される抗CAP1抗体は、ヒト化抗体であってよいことは理解されよう。本明細書で用いているように、「ヒト化」という用語は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列など)であり、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む非ヒト(例えば、マウス)抗体の形を意味する。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び容量を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種の超可変領域の残基(ドナー抗体)により置換されているヒト免疫グロブリンである。いくつかの場合に、ヒト免疫グロブリンのFv骨格領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見いだされない残基を含んでいてよい。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良し、最適化するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域に対応する少なくとも1つ、一般的に2つの可変ドメインのすべてを実質的に含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、一般的にヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部も含む。
【0047】
本明細書で前に示し、以下の実施例により示すように、抗CAP1抗体は、抗炎症性サイトカインIL−10の発現の顕著な増加をもたらした。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、抗炎症性サイトカインの発現の増加を伴う。そのような抗炎症性サイトカインは、IL−10、IL−4、IL−6、IL−11、IL−13及びIL−1受容体アンタゴニストのいずれか1つであってよい。特定の実施形態によれば、Th2抗炎症応答は、IL−10の発現の増加を伴う。より具体的には、そのような増加は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、10%〜90%、10%〜80%、10%〜70%、10%〜60%又は10%〜50%の増加であり得る。特に、適切な対照、具体的には無処理対照又は細胞と比較して発現の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の増加。
【0048】
本発明による免疫調節の重要な標的としてのCAP1の実証は、免疫調節剤として単離および精製されたCAP1タンパク質又はその任意の断片の使用を可能にする。したがって、他の実施形態によれば、本発明は、それにより対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するCAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含む組成物を提供する。
【0049】
「単離された」又は「実質的に精製された」という用語は、CAP1分子などの核酸又はタンパク質に適用する場合、核酸又はタンパク質が、自然状態でそれが結合している他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。それは、乾燥物又は水溶液であり得るが、均一な状態であることが好ましい。純度及び均一性は、一般的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学手法を用いて測定される。製剤中に存在する優勢な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0050】
本発明の組成物により使用される単離及び精製されたCAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換宿主細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることに留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、Th2抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、又はTh1前炎症性サイトカインの活性化により反映されるようなTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導することができる、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片、変異型同族体若しくは誘導体(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。本明細書及び下の特許請求の範囲の項で用いる特定の実施形態によれば、CAP1タンパク質は、ヒトCAP1のアミノ酸配列、又はその任意の断片、変異型同族体若しくは誘導体を有するタンパク質を意味することは理解されよう。ヒトCAP1タンパク質の例は、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、またGenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされる配列番号6として表示されるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0051】
アミノ酸配列、例えば、CAP1タンパク質、具体的にはヒトCAP1に関して、当業者は、コードされる配列における単一アミノ酸又はわずかな割合のアミノ酸を変化させ、付加し、又は欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列に対する個々の置換、欠失又は付加は、変化が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす場合、「保存的に修飾された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を収載した保存的置換表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本発明の多形変異体、種間相同体及び対立遺伝子に加えられ、それらを排除しない。
【0052】
例えば、脂肪族アミノ酸(G、A、I、L又はV)が当群の他のメンバーにより置換される置換、又はリシンのアルギンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、アスパラギンのグルタミンによるなどの他の残基の1つの極性残基による置換などの置換を行うことができる。以下の8つの群のそれぞれが互いの保存的置換である他の具体例としてのアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
7)セリン(S)、トレオニン(T)、及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0053】
「誘導体」という用語は、アミノ酸配列変異体、及び本発明で使用するポリペプチド、例えば、指定の配列の共有結合修飾を定義するのに用いる。本発明により用いるCAP1ポリペプチドの、例えば、CAP1の指定の配列の機能的誘導体は、上で構造的に定義したCAP1ポリペプチドの、例えば、指定の配列のアミノ酸配列、より具体的には、配列番号6により表示されるCAP1のアミノ酸配列との好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%の総配列相同性を有する。
【0054】
天然CAP1ポリペプチド及びその機能的誘導体に関する「相同性」は、最大の割合の相同性を得るために必要な場合、配列を整列させ、ギャップを導入した後、また配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合と本明細書において定義する。N又はC末端の伸長も挿入又は欠失も同一性又は相同性を減少させると解釈しなければならない。整列の方法及びコンピュータプログラムは、周知である。「挿入」又は「欠失」という用語は、本明細書で用いているように、1〜50アミノ酸残基、20〜1アミノ酸残基、特に、1〜10アミノ酸残基の、本発明により使用されるCAP1分子へのアミノ酸残基のそれぞれ付加又は欠失を意味することは理解されよう。より詳細には、挿入又は欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10アミノ酸のいずれか1つのものであってよい。
【0055】
2つ又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連での「同一」、「実質的同一性」、「実質的相同性」又は「同一性」の割合という用語は、同じである、又は同じである指定の割合のアミノ酸残基若しくはヌクレオチド(すなわち、指定の領域にわたる約60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はより高い同一性)を有する2つ又はそれ以上の配列若しくは部分配列を意味する。
【0056】
「アミノ酸(単数又は複数)」は、例えば、D−アミノ酸を含む、すべての天然に存在するL−アミノ酸を意味する。アミノ酸は、周知の一文字又は三文字表記により識別される。
【0057】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の治療用組成物であって、免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための、免疫調節有効量のアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物及びCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む治療用組成物を提供する。
【0058】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、免疫関連障害の治療用の治療用組成物を提供する。本発明の組成物は、CAP1と特異的に相互作用し、結合する化合物を有効成分として含む。そのような化合物の非限定的な例は、抗CAP1抗体である。
【0059】
他の態様において、本発明の医薬組成物は、CAP1並びにその任意の断片、誘導体及び変異体を有効成分として含む。
【0060】
したがって、それを必要とする対象における免疫関連障害の治療のための発明の組成物の使用をさらに提供する。
【0061】
本明細書で用いているように、「障害」又は「状態」という用語は、正常の機能の障害が存在する状態を意味する。「疾患」は、罹患している人又は人と接触している人に不快感、機能障害又は苦痛をもたらす身体及び精神の異常な状態である。時として、この用語は、傷害、身体障害、症候群、症状、逸脱行動並びに構造及び機能の非定型的変化を含むように広く用いられるが、他の状況においては、これらは、区別できるカテゴリーとみなすことができる。「疾患」、「障害」、「状態」及び「疾病」という用語は、本明細書では同等に用いることに留意されたい。「免疫関連障害」という用語は、Th1−Th2応答の不均衡に関連する。
【0062】
したがって、CAP1と相互作用し、抗炎症性サイトカインの発現を調節する化合物は、そのようなサイトカイン、例えば、IL−10の発現を増加する可能性がある。そのような化合物は、Th1/Th2均衡を抗炎症応答の方に調節することが望ましい状態において有用である可能性がある。例えば、自己免疫疾患(例えば、関節炎、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、狼瘡、グレーヴス病及び甲状腺炎、IBD)、移植片拒絶病状及び移植片対宿主病、並びに毒素性ショック、敗血性ショック及び重症敗血症などのスーパー抗原により誘発される障害などの免疫関連障害の治療において。
【0063】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体は、Th2抗炎症応答を増強することによって、免疫及び/又は炎症の抑制が有用である疾患、状態若しくは障害における炎症性症状の治療若しくは改善に、例えば、関節、筋骨格及び結合組織の障害における自己免疫及び炎症性症状の、又は過敏性、アレルギー反応、喘息、アテローム動脈硬化症、神経炎症性及び神経変性疾患、炎症性腸疾患、耳炎及び他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎及び他の皮膚疾患、後部及び前部ぶどう膜炎、結膜炎、視神経炎、強膜炎並びに他の免疫及び/又は炎症性眼疾患に関連する自己免疫及び炎症性症状の治療若しくは改善に有用であり得るが、これらに限定されない。
【0064】
より具体的には、一般的に、CAP1に結合する免疫調節化合物を用いる本発明の組成物並びに方法は、例えば、イートン−ランバート症候群、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、ギラン−バレー症候群、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば、急性上腕神経炎、多腺性欠乏症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば、橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベヒテレフ症候群、強直性脊髄炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病などであるが、これらに限定されない自己免疫疾患の治療に用いることができる。
【0065】
或いは、CAP1に結合する免疫調節化合物は、抗炎症性サイトカインの発現の減少をもたらす可能性がある。これは、Th1/Th2均衡をTh1前炎症性反応の方に移動させる可能性がある。前炎症性反応の方に免疫反応を調節する化合物は、増殖性病態などの免疫関連障害の治療に有用である可能性がある。したがって、本発明はさらに、免疫関連障害を治療するための組成物及び方法を提供する。
【0066】
より具体的には、そのような増殖性状態は、悪性障害であり得る。特定の実施形態によれば、悪性増殖性障害は、癌、肉腫、黒色腫、白血病及びリンパ腫からなる群から選択される充実性及び非充実性腫瘍であり得る。より詳細には、悪性障害は、黒色腫、肝細胞癌、結腸癌、骨髄腫、急性又は慢性白血病であり得る。
【0067】
本発明を記述するために本明細書で用いているように、「悪性増殖性障害」、「癌」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」という用語はすべて、組織又は臓器の過形成に同等に関連する。組織がリンパ又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環細胞の非充実性腫瘍を含み得る。他の組織又は臓器の悪性腫瘍は、充実性腫瘍を形成し得る。一般的に、本発明の組成物並びに方法は、非充実性及び充実性腫瘍、例えば、癌、黒色腫、白血病及びリンパ腫の治療に用いることができる。
【0068】
「治療する」という用語は、本明細書で用いているように、特に示さない限り、そのような用語が適用される障害又は状態、又はそのような障害又は状態の1つ若しくは複数の症状を逆転させること、軽減させること、それらの進行を抑制すること、又は予防することを意味する。「治療」という用語は、本明細書で用いているように、特に示さない限り、上で「治療する」を定義しているように、治療する行為を意味する。
【0069】
本発明の医薬組成物は、遊離の形の活性化合物を含み、治療する対象に直接投与し得ることに留意されたい。或いは、活性分子のサイズによって、投与の前にそれを担体に結合させることが望ましいことがあり得る。治療用製剤は、従来の投与製剤で投与することができる。製剤は、一般的に上で定義した少なくとも1つの有効成分並びに1つ又は複数のその許容される担体を含む。
【0070】
各担体は、他の成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で薬学的且つ生理学的に許容されるものであるべきである。製剤としては、経口、直腸、鼻又は非経口(皮下、筋肉内、腹腔内(IP)、静脈内(IV)及び皮内を含む)投与に適するものなどがある。
【0071】
注射用に適する医薬剤形としては、滅菌済み水性液剤又は分散製剤及び滅菌済み注射用液剤又は分散製剤の即時調製用の滅菌済み散剤などがある。すべての場合に、医薬剤形は、無菌性でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度まで流動体でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0072】
微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物における使用によってもたらすことができる。
【0073】
本発明の医薬組成物は、一般的にそのオスモル濃度を調節する物質である緩衝剤、並びに場合によって、1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は当技術分野で公知の添加物を含む。補助的な有効成分も組成物に組み込むことができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、並びに植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより、分散製剤の場合に必要な粒径を維持することにより、界面活性剤を用いることにより、適切な流動性を維持することができる。
【0074】
本明細書で用いているように、「薬学的に許容される担体」は、いずれか及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤などを含む。医薬活性物質用のそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の媒体又は薬剤が有効成分と不適合性である場合を除き、治療用組成物におけるその使用は、予期される。
【0075】
局所投与用の医薬組成物及び製剤は、経皮貼付剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤及び散剤などであり得る。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、粘稠化剤などは、必要又は望ましいものであり得る。
【0076】
経口投与用の組成物及び製剤は、散剤又は果粒剤、水中若しくは非水媒体中懸濁剤又は液剤、カプセル剤、サシェ剤又は錠剤などである。粘稠化剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤は、望ましいものであり得る。
【0077】
単位剤形で都合よく提供することができる本発明の医薬組成物は、製薬産業で周知の従来技術により調製することができる。そのような技術は、有効成分を医薬担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と結合させるステップを含む。一般的に、製剤は、有効成分を液体担体又は微細な固体担体又は両方と均一且つ緊密に結合させ、次に、必要な場合、生成物を成形することにより調製する。
【0078】
本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル剤、坐剤及び浣腸剤などであるが、これらに限定されない、多くの可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混合媒体中懸濁剤として製剤化することができる。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどの懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含んでいてよい。懸濁剤はまた、安定化剤を含んでいてよい。本発明の医薬組成物はまた、乳剤及びリポソーム含有製剤を含むが、これらに限定されない。
【0079】
対象における望ましい効果をもたらすのに必要な有効量を含むすべてのそのような化合物の性質、入手可能性及び供給元並びに投与は、当技術分野で周知であり、本明細書でさらに記述する必要はない。医薬組成物の調製は、当業者に周知であり、多くの論文及び教科書に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro A.R.編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990年、特にその1521〜1712頁を参照のこと。
【0080】
CAP1に結合する化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体又はCAP1タンパク質又はその任意の断片を含む医薬組成物は、非経口投与、すなわち、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)及び静脈内(i.v.)投与に有用である。非経口投与用組成物は、一般的に抗体の溶液又は許容される担体、好ましくは水性担体に溶解したそのカクテルを含む。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどを用いることができる。これらの溶液は、無菌性であり、一般的に粒子状物質を含まない。組成物は、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤等、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの生理的条件を近似するために必要に応じて薬学的に許容される補助物質を含んでいてよい。これらの製剤中のCAP1結合化合物、例えば、抗CAP1抗体の濃度は、広く、すなわち、重量で約0.01%未満、通常少なくとも約0.1%から5%ほどまで変化し得るものであり、主として、選択される個々の投与方法による液体容積及び粘度に基づいて選択される。
【0081】
より具体的には、CAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体、又はCAP1分子又はその任意の断片を含む注射用組成物は、水、生理食塩水、等張性生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝生理食塩水などに溶解して調製することができ、非毒性界面活性剤と場合によって混合することができる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を予防するための保存剤を含んでいてよい。注射又は注入に適する医薬剤形としては、有効成分を含む滅菌水性液剤若しくは分散製剤又は滅菌散剤などであり、散剤は、滅菌注射用又は注入用液剤若しくは分散製剤の即時調製に適応している。好ましくは、最終的な剤形は、滅菌液体であり、製造及び貯蔵条件下で安定である。液剤、懸濁剤又は分散製剤の液体担体又は媒体は、例えば、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール等などのポリオール、植物油、非毒性グリセリルエステル及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であってよい。液剤、懸濁剤又は分散製剤の適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散製剤の場合には所望の粒径の維持により、又は非毒性界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。砂糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムなどの等張性物質を含めることができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。溶解度向上剤を加えることができる。
【0082】
滅菌注射用組成物は、CAP1結合化合物、例えば、抗CAP1抗体、又はそれに代わるものとして、CAP1分子及びその任意の断片を例えば、上で挙げたような様々な他の成分とともに適切な溶媒に所望の量で混入し、続いて、例えば、ろ過滅菌により所望のように滅菌することにより、調製することができる。滅菌注射用液剤の調製用の滅菌散剤の場合、調製方法は、有効成分とあらかじめ滅菌ろ過した溶液中に存在する付加的な所望の成分の粉末を生ずる真空乾燥及び凍結乾燥技術を含む。ろ過滅菌、例えば、0.22ミクロンフィルター又はナノろ過、ガンマ又は電子線滅菌などの適切な滅菌法を用いることができる。
【0083】
様々な実施形態において、最終溶液は、約4から約9まで、約5から約7まで、約5.5から約6.5まで、又は約6のpHを有するように調節する。組成物のpHは、薬学的に許容される酸、塩基又は緩衝剤により調整することができる。
【0084】
さらに、本発明の組成物は、1回の投与当たり所定の量の各有効成分を含む単位剤形で提供することができる。そのような単位は、0.001〜100mg/kg体重のCAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体を供給するように構成されている。具体的には、0.01〜50mg/kg、0.1〜10mg/kg、0.5〜10mg/kg、1〜10mg/kg、5〜15mg/kg、10〜30mg/kg、25〜50mg/kg、40〜80mg/kg又は60〜100mg/kg。そのような用量は、1回投与で、又は複数回の個々の用量として供給することができる。最終的用量は、もちろん治療する状態、投与経路並びに患者の年齢、体重及び状態に依存し、医師の裁量による。
【0085】
上で示したように、非経口経路に加えて、本発明の組成物は、他の適切な経路により、例えば、経口(口腔若しくは舌下を含む)、直腸、鼻、局所(口腔、舌下若しくは経皮を含む)又は膣経路により投与するように構成することができる。そのような製剤は、製薬学の分野で公知の方法により、例えば、有効成分を担体(単数又は複数)又は賦形剤(単数又は複数)と結合させることにより、調製することができる。
【0086】
経口投与用に構成された医薬製剤は、カプセル剤若しくは錠剤、散剤若しくは果粒剤、水性若しくは非水性液体中液剤又は懸濁剤、可食発泡体若しくはホイップ体、又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤などの個別単位として提供することができる。
【0087】
経皮投与用に構成された医薬製剤は、長時間にわたりレシピエントの表皮と緊密接触の状態を保持することを意図した個別貼付剤として提供することができる。局所投与用に構成された医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、噴霧剤、エアゾール剤又は油剤として製剤化することができる。
【0088】
眼又は他の外部組織、例えば、口及び皮膚への適用については、製剤は、好ましくは局所軟膏剤又はクリーム剤として適用する。軟膏剤に製剤化する場合、有効成分は、パラフィン又は水混和性軟膏基剤とともに用いることができる。或いは、有効成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を用いてクリーム剤に製剤化することができる。
【0089】
眼への局所投与用に構成された医薬製剤は、有効成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁されている、点眼剤などである。
【0090】
口内への局所投与用に構成された医薬製剤は、トローチ剤、パステル剤及び洗口剤などである。
【0091】
直腸投与用に構成された医薬製剤は、坐剤又は浣腸剤として提供することができる。
【0092】
担体が固体である、鼻投与用に構成された医薬製剤は、鼻の近くに保持した粉末の容器から鼻から吸い込む方法で、すなわち、鼻道を介する急速な吸入により投与される例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒径を有する粗散剤などである。鼻噴霧剤又は点鼻剤としての投与用の担体が液体である適切な製剤は、有効成分の水性又は油性液剤などである。
【0093】
吸入による投与用に構成された医薬製剤は、様々なタイプの計量加圧エアゾール容器、噴霧器又は吸入器により発生させることができる微粒子ダスト剤又はミスト剤などである。
【0094】
膣投与用に構成された医薬製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、発泡体又は噴霧製剤として提供することができる。
【0095】
好ましい単位用量製剤は、有効成分の、本明細書で上で挙げた1日量若しくは分割量、又はその適切な一部を含むものである。
【0096】
上で詳細に言及した成分に加えて、製剤は、問題の製剤の種類を考慮した当技術分野で常用の他の薬剤も含んでいてよく、例えば、経口投与に適するものは、着香剤を含んでいてよいことは理解されよう。
【0097】
本発明の組成物は、予防及び/又は治療処置のために投与することができることにさらに留意されたい。治療への適用においては、組成物を、免疫関連障害(例えば、関節炎、IBD及び糖尿病)に既に罹患している患者に状態及びその合併症を治療又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で投与する。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。このような使用における有効な量は、状態の重症度及び患者自身の免疫系の一般的状態に依存するが、一般的に約0.001〜約100mg/kgの範囲のCAP1結合タンパク質、具体的には抗CAP1抗体であり、体重1kg当たり0.01〜50mg及び0.1〜10mgの用量がより一般的に用いられる。毎日、毎週又は毎月のスケジュールでの単回又は反復投与を行うことができ、用量レベル及びパターンは担当医により選択される。
【0098】
予防への適用においては、抗CAP1抗体を含む組成物を、疾患状態を発現するリスクがある患者に患者の抵抗性を高めるために投与する。そのような量は、「予防有効量」と定義される。このような使用においては、正確な量は、再び患者の健康状態及び免疫の一般的レベルに依存するが、一般的に1回の投与当たり0.001〜100mg、特に1回の投与当たり0.01〜10mg、1回の投与当たり0.1〜10mg、又は1回の投与当たり或いは体重1kg当たり1〜10mgである。
【0099】
組成物の単回又は反復投与は、患者により要求され、耐えられる用量及び頻度によって行う。いずれにしても、組成物は、患者を効果的に治療するのに十分な量のCAP1結合タンパク質、具体的には本発明により使用される抗CAP1抗体を供給するはずである。好ましくは、該用量は、1回投与するが、治療結果が達成されるまで、又は副作用が療法の中止の正当な理由となるまで、定期的に適用することができる。一般的に、該用量は、患者に許容できない毒性をもたらすことなく、疾患を治療又はその症状若しくは徴候を改善するのに十分である。
【0100】
本発明の組成物の放出制御非経口製剤は、インプラント、油性注射剤又は微粒子系として製造することができる。
【0101】
微粒子系は、ミクロスフェア、ミクロ粒子、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア及びナノ粒子などである。ミクロカプセルは、治療用組成物を中心コアとして含む。ミクロスフェアにおいては、治療薬が粒子全体に分散されている。約1μmより小さい粒子、ミクロスフェア及びミクロカプセルは、一般的にそれぞれナノ粒子、ナノスフェア及びナノカプセルと呼ばれる。キャピラリーは、ナノ粒子のみが静脈内投与されるように約5μmの直径を有する。ミクロ粒子は、一般的に直径が約100μmであり、皮下又は筋肉内投与される。
【0102】
第2の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法を提供する。本発明の方法は、治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物の少なくとも1つを対象に投与するステップを含む。
【0103】
1つの特定の実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のCAP1に特異的に相互作用し、結合する化合物又はそれを含む任意の組成物を対象に投与することにより、治療する対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む。
【0104】
特定の実施形態によれば、そのようなCAP1結合化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物であってよい。1つの特定の実施形態において、CAP1と特異的に結合し、相互作用する化合物は、タンパク質ベースの分子、具体的には、免疫グロブリン様分子であってよい。より具体的には、本発明の方法及び組成物により使用されるCAP1結合化合物は、抗体であってよい。そのような抗体の特定の例は、CAP1と直接的又は間接的に特異的に相互作用し、IL−10の発現の増大をもたらす抗CAP1抗体及び抗ペプチド6抗体である。本明細書における下文の例11は、IL−10の発現の誘導のための抗CAP1抗体の使用を開示している。
【0105】
特定の実施形態によれば、本発明により使用されるCAP1結合化合物は、抗CAP1抗体又はCAP1を認識し、それに結合する抗体を含み、ただし、抗体は、本発明若しくは本発明者らの以前の刊行物及び願書により記述されたポリクローナル、モノクローナル、キメラ若しくはヒト化抗ペプチド6抗体のいずれか、又はペプチド6(配列番号1)に対する、若しくはそれを認識する他の抗体ではないことはさらに理解されよう。
【0106】
より具体的には、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTH1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である化合物を対象に投与するステップを含む。
【0107】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生は、例えば、Current Protocols in Immunology、Wiley and Sons Inc.の第2章に記載されている。
【0108】
モノクローナル抗体は、免疫化動物、特にラット又はマウスの脾臓又はリンパ節から採取したB細胞からハイブリッド細胞の増殖に有利な条件下で不死化B細胞との融合により調製することができる。モノクローナル抗体を産生させる技術は、上記のCurrent Protocols in Immunologyの第2章などの多くの論文及び教科書に記載されている。
【0109】
「抗体」という用語は、完全な分子並びに例えば、抗原に結合することができる例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味する[Wahlら、J.Nucl.Med.、24巻、316〜325頁(1983年)]。
【0110】
Fab及びF(ab’)2並びに本発明において有用な抗体の他の断片は、完全な抗体分子について本明細書に開示する方法に従って用いることができることは、理解されるであろう。そのような断片は、パパイン(Fab断片を生成させるため)又はペプシン(F(ab’)2断片を生成させるため)などの酵素を用いてタンパク質溶解的切断により一般的に生成させる。
【0111】
他の代替実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらを含む組成物を対象に投与することにより、対象におけるTH1/Th2間の均衡を調節するステップを含む。
【0112】
CAP1は、本明細書で用いているように、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、またGenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされる配列番号6と表示されるアミノ酸配列を含むヒトCAP1タンパク質を意味することは理解されよう。
【0113】
本発明の組成物及び方法により治療される「患者」又は「必要とする対象」とは、上述の状態に罹患している可能性があり、本明細書で述べる治療方法が望ましい、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、マウス及びネコ対象を含む任意の哺乳動物を意味する。患者への本発明の組成物の投与は、自己投与及び他の人による患者への投与を含む。
【0114】
他の特定の実施形態によれば、本発明より使用される有効成分又はそれを含む組成物は、任意の投与方法により投与することができる。例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、経膣、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸若しくは皮下投与、又はそれらの組合せ。
【0115】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医学者により求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き起こす薬物又は医薬品の量を意味するものとする。特定の実施形態によれば、治療有効量は、約0.001〜100mg/kgの範囲である。特定の実施形態は、0.001〜100mg/kg体重のCAP1結合化合物、例えば、本発明により使用される抗CAP1抗体を含む。具体的には、0.01〜10mg/kg、0.1〜10mg/kg、0.5〜10mg/kg、1〜10mg/kg、5〜15mg/kg、10〜30mg/kg、25〜50mg/kg、40〜80mg/kg又は60〜100mg/kg。
【0116】
さらに、特定の実施形態において、本発明の方法により毎日投与されるCAP1結合化合物又はCAP1分子のいずれかの治療有効量は、約0.001mg/kgから約10mg/kg体重まで、具体的には、約0.010〜8又は0.020〜6、0.030〜5mg/kgの範囲であり得る。特定の実施形態によれば、有効量は、場合によって1日当たり0.01、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450及び500mgのいずれか1つであり得る。具体的には、有効量は、1日当たり約0.01〜1000mg、1日当たり10〜500mg、より具体的には、1日当たり0.01、0.1、1、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450及び500mgのいずれか1つであり得る。そのような有効量がマウスに固有のものであることは理解されよう。さらに、一般的に「ヒト用量」は、成人健常志願者における治療薬の最初の臨床試験における最高安全開始用量を推定する産業界向け指針に従って、各ヒト等価用量(HED)(mg/kg)を得るためにマウスにおける用量(mg/kg)を約12で割り、さらに10(マウスからヒトへの外挿に際しての安全係数)で割ることによって計算することができる。CAP1結合化合物又は代わりになるべきものとして、CAP1分子のこの有効量は、単位剤形内に含まれることが好ましい。さらに、本発明による化合物の投与は、定期的であってよく、例えば、少なくとも約3日間から3ヵ月間にわたり1日2回、1日3回又は少なくとも1日1回の定期的投与が有効であり得る。より低い用量の利点は、当業者に明らかである。これらは、とりわけ、特に長期の使用における副作用のリスクがより低いこと、及び患者が治療に対する感受性が低い状態になるリスクがより低いことなどである。
【0117】
他の実施形態によれば、本発明により使用される単位剤形は、単回又は反復投与用であってよい。他の実施形態によれば、前記単位剤形の投与は、治療上十分な期間にわたり1から5、10又は24時間ごとに反復する。代替実施形態によれば、単位剤形は、投与後かなりの時間にわたりpH非依存的薬物放出をもたらす徐放性単位剤形であってよい。
【0118】
他の不都合な適応症の治療は、1日当たり約0.001mgから1日当たり約1000mgまで、1日当たり約0.01mgから1日当たり約500mgまで、1日当たり約0.1mgからから1日当たり約500mgまで、1日当たり約1mgから1日当たり約500mgまで又は1日当たり約10mgから1日当たり約500mgまでの範囲の本発明により使用されるCAP1結合化合物の用量を用いて行うことができ、且つ/又は少なくとも1日の間の後にほぼ生命の治療まで行うことができることに留意されたい。他の実施形態において、本発明のCAP1結合化合物を用いた治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、30、60、90日の治療後に行うことができ、生命治療まで進む。
【0119】
異なる状態の治療は、異なる用量又は異なる期間の使用を示すことがあることに留意されたい。これらは、熟練した開業医には明らかである。
【0120】
上で示したように、本発明は、免疫関連障害、例えば、自己免疫又は炎症性障害を治療するのに特に適する方法及び医薬組成物を提供する。
【0121】
以下の実施例は、確定された炎症性関節炎の治療に対する本発明の組成物及び方法の適用性を実証している。より具体的には、AAについて誘発し、同時に、CAP1と相互作用することが示された本発明の抗ペプチド6ヒト化抗体により治療したLewisラットは、関節炎の有意な減少を示した。
【0122】
CAP1と相互作用する他の化合物、例えば、抗CAP1抗体は、IL−10の発現の増大によって示されたように、抗炎症応答の明らかな誘導を示した。したがって、これらの化合物は、免疫関連障害を治療するための免疫調節剤として適用できる可能性がある。
【0123】
Berent J.ら[Berent J.ら、Springer Semin.Immunopathol.、25巻、7〜63頁(2003年)]により示されたように、アジュバント関節炎(AA)は、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)及び敗血症性関節炎の十分に確立された動物モデルであることに留意されたい。
【0124】
それぞれ異なる原因を有する炎症性関節炎及び変性関節炎という2つの主なカテゴリーに一般的に分類することができる関節炎の異なる形が存在する。したがって、1つの特定の実施形態によれば、本発明の方法及び医薬組成物は、炎症性障害、例えば、炎症性関節炎の治療及び/又は改善を明確に目的とし得る。
【0125】
炎症性関節炎は、滑膜炎、骨侵食、骨減少症、軟組織腫脹及び均一な関節腔狭窄により特徴付けられる。より具体的には、関節炎症の顕著な特徴は、滑膜炎及び骨の侵食である。後者は、薄く、白色の軟骨下骨板の局所不連続性として最初に出現する。通常、この軟骨下骨板は、重症骨減少症の場合でさえ見ることができるが、その不連続性が侵食を示す。関節周囲骨減少症及び限局性軟骨下骨減少症が真の骨侵食の前に出現し得ることは真実であるが、それは、明確な関節炎症を示す骨侵食の存在である。骨侵食が広がるにつれて、骨の破壊が髄腔内の小柱に及ぶ。炎症性関節炎の1つの重要な特徴は、周縁骨侵食の概念に関連する。この用語は、炎症性滑膜関節の周縁に位置する骨侵食に与えられる。この特定の位置は、関節腔内にあるが、ヒアリン軟骨により覆われていない関節の部分である。したがって、初期の関節炎症は、関節表面の下の軟骨下骨板の侵食の前の周縁侵食をもたらす。骨侵食を探す場合、様々な骨表面を探索するために関節の複数個所の調査が必須である。炎症性関節過程の第2の重要な特性は、均一な関節腔狭窄である。これは、関節軟骨の破壊が関節腔内全域で均一であるために起こる。炎症性関節疾患の第3の所見は、軟組織腫脹である。
【0126】
炎症性関節炎は7つのサブグループにさらに分類することができ、したがって、本明細書で述べる本発明の組成物並びに方法は、異なるサブグループのすべての炎症性関節炎状態を治療するのに適用できることは理解されよう。
【0127】
より具体的には、単一関節の病変は、敗血症性関節炎を示唆する。敗血症性関節炎の原因は、ブドウ球菌属又は連鎖球菌属微生物による血行性播種に通常関連する。敗血症性関節のX線像の特徴は、炎症性関節炎のそれ、すなわち、関節周囲骨減少、均一関節腔狭窄、軟組織腫脹及び骨侵食を含む。すべての所見が同時に存在するとは限らず、急性では、骨侵食が認められないことがある。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、敗血症性関節炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。
【0128】
全身性関節炎は、対照的に、複数の関節の病変によって特徴付けられ、2つの主なカテゴリー、すなわち、関節リウマチ及び血清陰性脊椎関節症を含む。
【0129】
一実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、関節リウマチの治療及び/又は改善のために用いることができる。関節リウマチ(RA)は、最も一般的には関節(関節炎)及び腱鞘における炎症及び組織損傷、並びに貧血を引き起こす慢性全身性自己免疫障害である。関節リウマチは、肺、心膜、胸膜及び眼の強膜におけるび漫性炎症、また、最も一般的には皮膚の下の皮下組織における小結節性病変ももたらし得る。関節リウマチは、機能及び運動性の実質的な喪失をもたらし得る身体障害を引き起こす有痛性の状態であり得る。リウマトイド因子及び環状シトルリン化ペプチドに対する抗体などの血清学的マーカーは、関節リウマチの重要なインジケーターである。関節リウマチのX線像の特徴は、関節炎症のそれであり、特有の骨減少症、均一関節腔喪失、骨侵食及び軟組織腫脹を含む。炎症の慢性的性質のため、関節不全脱臼及び軟骨下嚢胞などの付加的な所見も認められることがある。
【0130】
血清陰性脊椎関節症カテゴリーは、乾癬性関節炎、反応性関節炎及び強直性脊椎炎を含み、炎症、多発性関節病変並びに骨増殖の付加的特徴を伴う手及び足における遠位病変の徴候によって特徴付けられる。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、血清陰性脊椎関節症の状態の治療及び/又は改善のために用いることができる。
【0131】
より具体的には、一実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、乾癬性関節炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。乾癬性関節炎は、皮膚(乾癬)及び関節(関節炎)の炎症によって特徴付けられる。米国におけるほぼ306000人が乾癬性関節炎に罹患しており、さらに308000人がヨーロッパにおける5つの主要な市場において当疾患に罹患していると考えられている。乾癬及び関節炎は、しばしば別個に出現する。実際、患者のほぼ80%において乾癬が関節炎に先行する。関節炎は、患者の最大15%において関節炎が乾癬に先行することがある。
【0132】
乾癬性関節炎の特性の1つである乾癬は、落屑を伴う、皮膚の斑点状の隆起した赤色の部位を特徴とする一般的な皮膚の状態である。乾癬は、肘及び膝の先端部、頭皮、へそ及び性器又は肛門の周囲の部位をしばしば侵す。乾癬を有する患者の約10%が関節の随伴した炎症も発現する。通常、皮膚症状が重症であるほど、乾癬性関節炎を発現する可能性が大きくなる。乾癬性関節炎の原因は、不明であるが、遺伝的、環境及び免疫上の原因の組合せである可能性がある。
【0133】
男性と女性は、乾癬に同等に罹患する可能性がある。乾癬性関節炎については、男性は、脊椎炎の形(脊椎が侵される)を有する可能性がより高く、女性は、リウマチ様の形(多くの関節が侵される)を有する可能性がより高い。乾癬性関節炎は、通常35〜55歳の人に発生する。しかし、ほぼあらゆる年齢の人に発生し得る。乾癬性関節炎は、強直性脊椎炎、反応性関節炎並びにクローン病及び潰瘍性大腸炎を伴う関節炎などの他のいくつかの関節炎の状態と多くの特徴を共有している。これらの状態のすべてが脊椎及び関節、眼、皮膚、口及び様々な臓器における炎症を引き起こし得る。
【0134】
他の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、強直性脊椎炎の治療及び/又は改善のために用いることができる。強直性脊椎炎(AS、以前にはベヒテレフ(Bechterew’s)病、ベヒテレフ症候群、マリー−ストリュンペル病及び脊椎関節炎の1つの形として公知)は、複数の関節、特徴的には脊椎面関節及び脊椎の底部の仙骨関節の炎症に起因して引き起こされる、通常、慢性及び進行性の形の関節炎である。強直性脊椎炎は、これらの関節及び脊椎周囲の軟組織を侵す傾向があるが、他の関節並びに関節周囲の組織(健靭帯付着部、健及び靭帯が骨に付着する)も侵される可能性がある。強直性脊椎炎は、眼、心臓及び肺などの関節以外の身体の部位も侵す可能性がある。
【0135】
この障害は、しばしば骨性強直(又は融合)をもたらし、したがって、ギリシャ語の強直(ankylos)に由来する強直性という用語は、関節の硬化を意味する。脊椎(Spondylos)は、椎骨(又は脊椎)を意味し、1つ又は複数の椎骨の炎症に適用される。
【0136】
該疾患は、一般集団の約0.1〜0.2%を罹患させると推定される。強直性脊椎炎は、主として若年男性を罹患させる。男性は、女性より強直性脊椎炎を発現する可能性が4倍から10倍高い。該疾患を有する大部分の人が15〜35歳に該疾患を発症し、発症時の平均年齢は26歳である。
【0137】
正確な原因は不明であるが、強直性脊椎炎は、遺伝的影響と誘発環境因子との組合せに起因すると考えられている。強直性脊椎炎を有する患者の約90〜95%が組織抗原ヒト白血球抗原B27(HLA−B27)を有するのに対して、一般集団では7%である。強直性脊椎炎を有する人は、該疾患の家族歴をしばしば有する。
【0138】
他の実施形態において、本発明の組成物並びに方法は、反応性関節炎(ReA)の治療及び/又は改善のために用いることができる。血清陰性脊椎関節症の他のタイプである反応性関節炎は、身体の他の部位における感染に応答して発現する自己免疫状態である。細菌と接触し、感染を発現することが、反応性関節炎を誘発し得る。反応性関節炎は、「関節炎」として総称的に公知のリウマチなどの他の様々な状態と同様な症状を有する。反応性関節炎は、他の感染により引き起こされ、したがって、「反応する」、すなわち、他の状態に依存する。「誘発」感染は、しばしば治癒し、又は慢性の場合には寛解状態となり、したがって、最初の原因の確定が困難となる。
【0139】
反応性関節炎の症状は、非常に多くの場合、大関節の炎症性関節炎、眼の炎症(結膜炎及びぶどう膜炎)及び尿道炎といった3つの一見無関係の症状の組合せを含む。ReAは、ドイツの医師Hans Reiterにちなんでライター症候群としても公知であり、また尿道炎性関節炎、性病性関節炎及び腸炎性多発性関節炎としても公知であることを示すべきである。
【0140】
若年性特発性関節炎、痛風及び偽性痛風、並びに大腸炎又は乾癬を伴う関節炎などの多くの他の形の炎症性関節炎が存在することは理解されよう。したがって、本発明の組成物並びに方法は、これらの状態にも適用できることは理解されよう。
【0141】
したがって、他の実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、若年性特発性関節炎(JIA)の治療及び/又は改善のために用いることができる。JIAは、小児における持続性関節炎の最も一般的な形である(この状況における若年性は、16歳前の発症を指し、特発性は、明確な原因のない状態を指し、関節炎は、関節の滑膜の炎症である)。JIAは、一過性及び自己限定的又は慢性であり得る、小児に見られる関節炎のサブセットである。これは、成人に一般的に見られる関節炎(関節リウマチ)並びに慢性状態である小児に存在する他のタイプの関節炎(例えば、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎)とは著しく異なる。
【0142】
他の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、痛風の治療及び/又は改善のために用いることができる。痛風(代謝性関節炎)は、尿酸の蓄積によってもたらされる疾患である。この状態においては、尿酸一ナトリウム又は尿酸の結晶が関節の関節軟骨、腱及び周囲組織に沈着する。これらの結晶は、両方とも重度の炎症及び疼痛を引き起こす。無処理の場合、結晶が、著しい組織損傷を引き起こし得る痛風結節を形成する。偽性痛風は、カルシウム結晶によって引き起こされる状態である。カルシウム結晶が腱における炎症の発作を引き起こす場合、それは、「石灰沈着性腱炎」と呼ばれる。本発明は、この障害の治療用の組成物及び方法も提供する。
【0143】
一般的に、上でも開示したように、多くの種類の関節炎が存在し、本発明の組成物、並びに方法、複合組成物(combined composition)及びキットは、示したすべての一次性の形の関節炎に加えて、すべての二次性の形の関節炎も治療するのにも適用できることに留意されたい。これらの状態は、紅斑性狼瘡、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、血色素症、肝炎、ウェジナー肉芽腫症(及び多くの他の血管炎症候群)、ライム病、家族性地中海熱、再発性発熱を伴う高免疫グロブリン血D、TNF受容体関連周期熱症候群及び炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)などであり得る。
【0144】
特定の実施形態によれば、関節炎の治療、予防又は改善は、臨床スコア及び組織病理学的スコアの改善に反映される可能性がある。より具体的には、本発明の組成物及び方法による治療は、関節炎の臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得ることは理解されよう。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0145】
本発明の方法及び組成物は、免疫関連障害の治療に適用できることは理解されよう。したがって、他の特定の実施形態において、本発明の医薬組成物並びに方法は、炎症性腸疾患(IBD)、例えば、大腸炎及びクローン病を治療し、改善するために適用できる可能性がある。特定の実施形態によれば、大腸炎又はクローン病の治療、予防又は改善は、臨床スコア及び組織病理学的スコアの改善に反映される可能性がある。例えば、抗CAP1抗体であり得る本発明のCAP1結合化合物による治療は、IBDの臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得る。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0146】
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫応答のTh1前炎症性、Th1前炎症性及びTh2抗炎症性サブタイプの間の不均衡の結果であると理解することができる一般的な胃腸障害である。
【0147】
クローン病は、胃腸(GI)管とも呼ばれている消化管の炎症を引き起こす持続性障害である。クローン病は、口から肛門までのGI管の任意の部位を侵し得るが、最も一般的には回腸と呼ばれる小腸の下部を侵す。腫脹は、罹患器官の内膜まで深く及ぶ。腫脹は、疼痛を引き起こし、腸を頻繁に空にさせ、下痢をもたらす。
【0148】
上で示したように、クローン病は、腸の腫脹を引き起こす疾患の一般名である、炎症性腸疾患である。クローン病の症状が過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎などの他の腸障害に類似しているため、診断することが困難であり得る。潰瘍性大腸炎は、大腸の内膜の上層における炎症及び潰瘍を引き起こす。クローン病においては、腸の全層が侵される可能性があり、正常で健常な腸は、罹患した腸の区域(section)の間に認めることができる。クローン病は、回腸炎又は腸炎とも呼ばれることがある。
【0149】
本発明の組成物は、大腸炎の治療又は予防にも適用できる可能性があることに留意されたい。潰瘍性大腸炎(U.C.)は、結腸(大腸)及び直腸の内膜の慢性(長期持続性)炎症である。内膜が炎症を起こし、潰瘍化した状態になる。炎症は、直腸(直腸炎)に限定されるか、又は結腸及び直腸の全体を侵すことがある。
【0150】
したがって、本発明の組成物は、臨床スコアを治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%低下させ得る。
【0151】
他の特定の実施形態によれば、本発明の組成物並びに方法は、糖尿病などの自己免疫障害の治療及び/又は改善のために用いることができる。糖尿病は、異常な代謝、及び低レベルのインスリンホルモン、又は補償するのに不十分なレベルのインスリン分泌と相まったインスリンの作用に対する異常な抵抗性に起因する不適切に高い血糖(高血糖)によって特徴付けられる症候群である。特徴的な症状は、過度の尿産生(多尿)、過度の渇き及び液体摂取の増加(多渇症)並びに視力障害であり、血糖が軽度に上昇している場合には、これらの症状は存在しないことがあり得る。
【0152】
3つの主な形の糖尿病、すなわち、1型、2型及び妊娠糖尿病(妊娠中に起こる)が存在する。1型糖尿病は、インスリンの欠乏をもたらす、膵臓におけるランゲルハンス島のインスリン産生ベータ細胞の喪失によって特徴付けられる。このベータ細胞の喪失の主な原因は、T細胞媒介性自己免疫攻撃である。1型糖尿病に対して講ずることができる公知の予防処置は存在しない。ほとんどの罹患者は、発症時に他の点では健康で、健康な体重を有する。インスリンに対する感受性及び応答性は、特に初期段階では通常、正常である。1型糖尿病は、小児又は成人を侵すことがあり得、小児を侵す糖尿病の大部分の場合を表すので、「若年性糖尿病」と伝統的に呼ばれている。
【0153】
1型糖尿病の主要な治療法は、最も初期の段階からでさえ、血液検査モニターを用いた血糖値の注意深いモニタリングと組み合わせたインスリンの補充である。インスリンが存在しない場合、糖尿病性ケトアシドーシスが発生することがあり得、これが昏睡又は死亡をもたらし得る。喪失を逆転させることはできないが、生活様式の調節(食事及び運動)にも重点がおかれる。一般的な皮下注射のほかに、事前に設定されたレベルで1日24時間インスリンの持続注入を可能にし、食事時間に必要に応じてインスリンの用量(ボーラス)をプログラムする能力のあるポンプによりインスリンを供給することも可能である。
【0154】
1型の治療は、無期限に続けなければならない。十分な認識、適切な介護と、検査及び薬物適用の訓練を行うならば、治療によって通常の活動に障害は生じない。
【0155】
米国における有病率は、人口の0.12%又はほぼ340000人である。発生率は、年間約30000例、人口の0.01%である。
【0156】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物及び方法は、多発性硬化症(MS)の治療及び予防に用いることができる。
【0157】
多発性硬化症(略記MS、以前には散在性硬化症又は散在性脳脊髄炎として公知)は、中枢神経系(CNS)を侵す慢性炎症性脱髄疾患である。疾患の発症は、通常若年成人に起こり、女性でより一般的であり、国又は特定の集団によって100000人当たり2から150人までの範囲にある有病率を有する。
【0158】
MSは、白質として公知の脳及び脊髄の部位におけるニューロンを侵す。これらの細胞は、処理が行われる灰白色部の間、及びこれらと身体の残りとの間にシグナルを運ぶ。より具体的には、MSは、ニューロンが電気信号を運ぶことを助けるミエリン鞘として公知の脂肪層を作り、維持することを担う細胞である稀突起神経膠細胞を破壊する。MSは、ミエリンの菲薄化又は完全喪失、並びにさほど頻繁ではないが、ニューロンの延長又は軸索の切断(離断)をもたらす。ミエリンが喪失する場合、ニューロンは、それらの電気信号をもはや効果的に伝導することができない。多発性硬化症という名称は、白質における瘢痕(硬化−プラーク又は病変としてより十分に公知である)を意味する。これらの病変におけるミエリンの喪失は、シグナルが遮断される状態によって広く異なる、いくつかの症状をもたらす。しかし、より高度の形の撮像で、損傷の多くがこれらの領域外で起こっていることを示されている。ほぼあらゆる神経症状が疾患に伴って起こり得る。
【0159】
MSは、いくつかの形をとり、新たな症状は、個別的なエピソード(再発型)で又は時間の経過とともに徐々に累積して(進行型)起こる。ほとんどの人が最初に再発寛解型MSと診断されるが、長年の後には二次進行型MS(SPMS)を発現する。エピソード又は発作の間に、症状が完全に消失し得るが、永久的な神経学的問題が、特に疾患が進行するときにしばしば持続する。
【0160】
疾患過程にかかわる機序に関しては多くが公知であるが、原因は、依然としてとらえどころがない。ほとんどの支持者による理論は、それが自己免疫反応に起因するということである。疾患は治癒を示さないが、いくつかの療法は有用であることが証明された。エピソードの後に機能を元に戻す治療の試みにより、新たな発作が予防され、身体障害が予防される。あらゆる治療と同様に、薬物はいくつかの副作用を有し、多くの療法が依然として研究中である。
【0161】
特定の実施形態によれば、MS疾患又は症状の治療、予防又は改善は、臨床スコアの改善に反映される可能性がある。例えば、抗CAP1抗体であり得る本発明のCAP1結合化合物による治療は、MSの臨床スコア及び組織病理学的スコアの少なくとも1つを少なくとも5%〜95%、5%〜90%、5%〜85%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜65%、5%〜60%、5%〜55%、5%〜50%、5%〜45%、5%〜40%、5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、5%〜15%又は約5%〜10%低下させ得る。より具体的には、そのような低下は、治療前の臨床スコアと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも55若しくは60%であり得る。
【0162】
本発明の方法及び組成物は、本明細書において前に開示したように免疫関連障害の治療に適用できる可能性があることは理解されよう。
【0163】
以下の実施例により開示するように、CAP1と相互作用することが示された2つの異なる抗体である、本発明により使用される抗CAP1及び抗ペプチド6抗体は、抗炎症性作用を明らかに示す。より具体的には、図28に、抗CAP1抗体、抗ペプチド6ヒト化抗体及びそのF(ab)2断片へのヒトPBMCの曝露により、最終的にIL−10遺伝子発現のアップレギュレーションをもたらす連続的事象が誘発されることを示す。炎症部位におけるIL−10分泌の増加は、局所的サイトカンプロファイルを炎症応答から抗炎症応答に転換することができ、したがって、これらの抗体によりもたらされる炎症に対する防御の機序の説明となり得る。
【0164】
したがって、CAP1結合化合物、具体的には、本発明により使用される抗体は、Th1/Th2細胞均衡を抗炎症性Th2応答の方に調節する免疫調節剤として用いることができる。したがって、本発明は、IL−10(インターロイキン10)の発現及びレベルを増加させる組成物及び方法をさらに提供する。この態様によれば、本発明の組成物及び方法は、有効量の、CAP1と相互作用し、結合する少なくとも1つの化合物、具体的には、単離及び精製された抗CAP1抗体の使用を含む。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によって含んでいてよい。
【0165】
抗炎症性サイトカイン、具体的にはIL−10の発現又はレベルを「増加させること」又は「増大させること」を示す、一実施形態によれば、そのような増加又は増大は、そのようなサイトカインの発現の約10%〜100%、20%〜80%、30%〜70%又は40〜60%の増加又は上昇であり得ることを意味する。詳細には、適切な対照と比較して発現の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の増加。増加又は上昇が約2〜100倍の増加でもあり得ることにさらに留意されたい。より具体的には、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97倍又はそれ以上の増加。さらに、前記IL−10のレベル又は発現の増加は、前記サイトカインの転写、翻訳又は安定性であることは理解されよう。
【0166】
上で示したように、IL−10の発現の増大は、Th1/Th2均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する可能性がある。したがって、本発明により使用されるCAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体は、Th1/Th2均衡を抗炎症応答の方に調節することが望ましい状態に有用である可能性がある。したがって、一実施形態によれば、本発明の組成物は、それを必要とする対象におけるIL−10の発現及びレベルを増加させ、それにより、治療対象におけるTh1/Th2細胞均衡を抗炎症性Th2応答の方に調節するために用いることができる。1つの特定の実施形態によれば、そのような対象は、免疫関連障害に罹患している対象である。例えば、自己免疫疾患(例えば、関節炎、IBD、1型糖尿病、多発性硬化症(MS)、狼瘡、グレーヴス病及び甲状腺炎)、移植片拒絶病状及び移植片対宿主病、並びに毒素性ショック、敗血性ショック及び重症敗血症などのスーパー抗原により誘発される障害。
【0167】
一般的に、本発明の組成物並びに方法は、例えば、イートン−ランバート症候群、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、ギラン−バレー症候群、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば、急性上腕神経炎、多腺性欠乏症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば、橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベヒテレフ症候群、強直性脊髄炎、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病などであるが、これらに限定されない自己免疫疾患の治療に用いることができることはさらに理解されよう。
【0168】
他の態様において、本発明は、免疫関連障害の治療、改善、予防及び抑制用の組成物の調製における治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び/又は(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つの使用に関する。
【0169】
いくつかの特定の実施形態において、本発明は、免疫調節組成物の調製のためのCAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物の使用を含む。
【0170】
特定の実施形態において、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体は、本発明により使用することができる。
【0171】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。「抗体」という用語は、完全な分子並びに例えば、抗原に結合することができる、例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味する。
【0172】
特定の実施形態によれば、CAP1結合化合物、具体的には、抗CAP1抗体であってよい抗体である、又はCAP1を認識し、それに結合する抗体であるCAP1結合化合物であって、該抗体は、ポリクローナル、モノクローナルラット若しくはマウス抗ペプチド6抗体(例えば、B24若しくはF9モノクローナルと呼ばれる抗体)又はキメラ若しくはキメラ抗体由来のヒト化抗体以外であるか、又はそれらでないという条件であることはさらに理解されよう。
【0173】
他の実施形態において、本発明は、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節することによる免疫関連障害の治療のための組成物の調製におけるCAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体の使用を含む。
【0174】
第5の態様において、本発明は、対象における免疫関連障害の治療に用いる、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を提供する。
【0175】
本明細書で用いる前記CAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換宿主細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることにさらに留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、Th2抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、或いはTh1前炎症性サイトカインの活性化により反映されるようなTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導することができる、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。本明細書及び下の特許請求の範囲の項で用いる特定の実施形態によれば、CAP1タンパク質は、図30に示すGenBankアクセス番号NP_001099000.1により表示され、また配列番号6として表示され、GenBankアクセス番号CAG33690.1により示されるヒトCAP1遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含むヒトCAP1タンパク質を意味することは理解されよう。
【0176】
本発明はまた、対象における免疫関連障害の治療に用いる、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体を提供する。
【0177】
上で示したように、本発明により開示した結果は、この免疫調節経路における重要な要素として、また、したがって、免疫調節の可能な標的としてのCAP1の役割を明確に示している。したがって、本発明は、免疫調節化合物の探索のための標的としてのCAP1の使用を提供する。したがって、さらなる態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明のスクリーニング方法は、(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップと、(b)具体的には抗炎症性又は前炎症性サイトカインの発現を検討することにより、Th1/Th2均衡の調節に関するステップ(b)で得られた化合物の効果を判定するステップを含む。前記候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカインの発現の調節は、前記化合物がTh1/Th2均衡を調節する能力を示す。
【0178】
「候補化合物」という用語は、CAP1に結合することによりTh1/Th2均衡を調節する化合物の能力の特徴付けが望まれる化合物を意味する。「調節する」は、いずれか又はすべてのサイトカイン、リンフォカイン及び免疫応答に関連する細胞過程の増加、減少又は他の変化を意味する。この点について、変化は、IL−10の発現の増大及びTh1/Th2均衡のTh2免疫応答の方への調節の優先を含み得る。
【0179】
CAP1分子への免疫調節化合物の高親和力結合の高処理能力スクリーニングの適用への鍵は、感度が高く、簡便なスクリーニングアッセイを開発することである。
【0180】
CAP1に対する親和力による免疫調節化合物の頑健なスクリーニングアッセイの開発は、前記スクリーニング方法の第1のステップである。
【0181】
したがって、候補免疫調節化合物は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、(b)混合物を前記結合に適する条件下で候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)エンドポイント指示(end point indication)に対する候補化合物の作用を判定するステップにより得ることができる。エンドポイントの調節が供試候補化合物へのCAP1分子の結合を示すものであることに留意されたい。
【0182】
1つの特定の実施形態によれば、エンドポイント指示は、視覚的に検出できるシグナルをもたらす、CAP1分子への抗CAP1抗体の結合であってよい。そのような場合、このエンドポイントの増加は、CAP1分子への前記試験化合物の結合を示す。
【0183】
「検出できる」という用語は、本明細書で用いているように、観察、計測装置又はフィルムにより即時に検出できる化学反応により発生する検出できるシグナルの存在を意味する。
【0184】
より具体的には、「検出できるシグナル」という用語は、本明細書で用いているように、目視観測又は計測装置により直接的又は間接的に検出できる(観測できる)シグナルの発生又は変化を引き起こすシグナルを意味する。一般的に、検出できるシグナルは、波長分布パターン又は吸光度若しくは蛍光の強度の変化或いは光散乱、蛍光寿命、蛍光偏光の変化、或いはそのようなパラメーターの組合せにより反映される光学的特性が検出できる(「光学的に検出できる」)。
【0185】
より具体的には、例えば、ペプチド又は任意の小分子であってよい各候補化合物をウエルに入れ、CAP1分子又はその任意の断片の直接的結合を好ましくはCAP1に対して特異的な抗体により検出する。プレート上での候補免疫調節化合物へのCAP1分子又はその任意の断片の有効結合の条件は、pH、塩及び緩衝液組成並びにBSAなどの担体タンパク質の試験を必要とし、最適化することができる。この頑健なスクリーニングにより、CAP1分子に結合する化合物が得られる。CAP1に結合するそのような化合物をプールし、次に下記のようにアッセイする。
【0186】
本発明の方法により使用される抗CAP1抗体は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか1つであってよいことに留意されたい。「抗体」という用語は、完全な分子並びに抗原に結合することができる、例えば、Fab及びF(ab’)2などのその断片を含むことを意味することにさらに留意されたい。
【0187】
特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法のさらなる場合によるステップにおいて、CAP1に結合し、上述のように得られた候補免疫調節化合物は、CAP1分子内の抗ペプチド6抗体結合部位においてCAP1に特異的に結合するそれらの能力についてさらに選択することができる。このような選択された化合物は、前記CAP1と抗ペプチド6抗体の間の相互作用を予防又は調節できることが望ましい。この特定の実施形態によれば、場合による選択は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、(b)抗ペプチド6結合部位を介するCAP1分子と抗ペプチド6抗体との特異的相互作用に適する条件下で前記混合物を供試候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)エンドポイント指示に対する供試候補化合物の作用を判定するステップにより実施することができる。そのようなエンドポイントの調節は、前記抗ペプチド6結合部位を介するCAP1分子への供試候補化合物の結合を示す。
【0188】
他の実施形態によれば、場合による選択段階に用いる混合物は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、(b)CAP1における抗ペプチド6結合部位を介してCAP1分子に特異的に結合する抗ペプチド6抗体、並びに(c)抗ペプチド6抗体とCAP1分子との相互作用及び相互作用のエンドポイント指示の検出の適切な条件を与える場合による溶液、緩衝液及び化合物を含む。一実施形態によれば、エンドポイント指示は、視覚的に検出できるシグナルをもたらす、CAP1分子への抗ペプチド6抗体の結合であってよい。
【0189】
本発明のさらなる実施形態において、そのようなエンドポイントにおいて観測される阻害は、CAP1における抗ペプチド6結合部位への供試候補化合物の直接的結合を示す。したがって、候補化合物の結合は、結合部位への抗ペプチド6抗体の結合と競合することにより、前記結合を調節し、且つ/又は阻害する。
【0190】
この競合アッセイを実施するために、抗ペプチド6抗体は、例えば、ビオチニル化により、又はフルオレセインの付加により、直接的に標識することができ、或いは、二次抗体により間接的に標識することができる。
【0191】
本発明のスクリーニング方法により候補化合物を得るため及び選択するために用いる混合物は、細胞混合物又は無細胞混合物であってよい。
【0192】
1つの代替実施形態によれば、本発明の方法により利用される混合物は、無細胞混合物であってよい。そのような混合物は、ペプチド、精製組換えタンパク質、融合タンパク質及び前記CAP1分子を発現する形質転換細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができるCAP1分子又はその機能的断片(好ましくは、抗ペプチド6抗体結合部位を含む)を含む。
【0193】
特定及び非限定的例において、そのような場合による選択を行うことができ、CAP1をマイクロプレートのウエル上に結合させる。次に、各ウエルを候補免疫調節化合物の存在下で限られた量の抗ペプチド6抗体とともにインキュベートする。各ウエルから上清を収集する。二次抗体ELISAにより上清中の非結合抗体を検出する。試験化合物が、抗ペプチド6抗体により認識されるドメインにおけるCAP1に強固に結合する場合、試験化合物は、CAP1への抗ペプチド6抗体の結合について競合し、アッセイの感度を高くするゼロバックグラウンド上で検出することができる遊離の抗ペプチド6抗体を遊離させる。抗ペプチド6抗体/CAP1相互作用に関与するドメイン外に結合する候補化合物は、このアプローチにより除外される。
【0194】
別のアプローチは、標識抗ペプチド6抗体を用い、プレート上のCAP1に結合している標識抗体を置換する候補化合物の能力についてアッセイすることである。
【0195】
或いは、そのような場合による選択ステップに用いる混合物は、細胞混合物であってよい。この特定の実施形態において、各候補化合物、好ましくはペプチドをウエルに入れ、次にウエルをBSA又はウシ胎児血清でブロックする。それらの細胞表面上のCAP1を発現する例えば、THP−1の結合を視覚的に、又は抗CAP−1 ELISAにより計測する。或いは、CAP−1発現細胞から調製した細胞膜を用いることができ、抗CAP−1抗体を用いて結合を検出する。陽性候補化合物は、次に、競合体としての抗ペプチド6抗体の存在下で再検査する。
【0196】
前記抗ペプチド6抗体は、配列番号1のアミノ酸配列による表されるペプチド6を含むアミノ酸配列に対して特異的に誘導された抗体を意味することは理解されよう。抗ペプチド6抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ及びヒト化抗ペプチド6抗体、並びにそのF(ab)断片を含むことに留意されたい。プロキシマブという語は、本明細書で用いているように、本発明者らにより調製されたヒト化抗ペプチド6抗体であることに留意されたい。
【0197】
混合物中に含まれるCAP1分子又はその任意の断片は、精製組換えタンパク質、及びCAP1分子を発現する形質転換細胞の細胞溶解物又は膜調製物のいずれか1つとして提供することができることを留意されたい。本明細書で用いている断片及び機能的断片という用語は、IL−10などの抗炎症性サイトカインの活性化、或いは前炎症性サイトカインの活性化により反映されるような、抗ペプチド6結合部位を含み、この抗体に結合することができ、それによりTh1/Th2細胞均衡の特異的な調節を誘導する、挿入、欠失、置換及び修飾を有するCAP1分子又はその任意の断片(以後「断片(単数又は複数)」と呼ぶ)を意味する。
【0198】
他の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法により検討する候補化合物は、タンパク質ベース、核酸ベース、炭水化物ベース、脂質ベース、天然有機物ベース、合成により得られる有機物ベース、無機物ベース及びペプチド模倣体ベースの化合物からなる群から選択することができる。
【0199】
他の実施形態によれば、該化合物は、ペプチドのコンビナトリアルライブラリ、環状ペプチド模倣体のライブラリ及びランダム又は専用ファージディスプレイライブラリのポジティブスキャニングのいずれか1つの産物であってよい。
【0200】
他の特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法の第2段階は、抗炎症性サイトカインの発現を実際に調節する、選択される候補化合物の実現可能性及びそれにより、先天性免疫を調節するそれらの能力のさらなる評価を含む。したがって、上述のように得られ、場合によって選択された候補化合物を、次に、Th1/Th2細胞均衡を調節する、具体的には、Th2リンパ球を活性化するそれらの能力について評価する。この評価段階は、(a)CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む試験系を準備するステップ、(b)試験系を、本発明のスクリーニング方法の前段階により得られ、場合により選択された供試候補化合物と接触させるステップ、並びに(c)対照と比較してエンドポイント指示に対する候補化合物の作用を判定するステップを含み、前記作用は、前炎症性Th1又は抗炎症性Th2リンパ球の活性化を調節する供試候補の能力を示す。
【0201】
本発明のスクリーニング方法により単離された候補免疫調節化合物を評価するのに用いる試験系は、in vitro/ex vivo細胞培養又はin vivo動物モデルであってよい。そのような試験系は、Th2細胞の活性化のための、また候補化合物の調節作用を判定するためのエンドポイント指示の検出のための適切な条件を与える内因性及び/又は外因性化合物を場合によってさらに含む。より具体的には、前記活性化又は調節は、IL−10及び/又はIL−4遺伝子発現などのTh2サイトカインの誘導によって判定される。
【0202】
評価のための本発明のスクリーニング方法により利用される試験系は、内因的に発現するCAP1分子を含むin vitro/ex vivo細胞培養であってよい。特定の例において、試験系として用いる細胞培養は、哺乳類ドナーから単離されたPBMC培養であってよい。
【0203】
この特定の試験系におけるエンドポイント指示は、したがって、視覚的に検出できるシグナルをもたらすIL−10及び/又はIL−4の抗CAP1又は抗ペプチド6抗体誘導性発現であり得る。したがって、前記エンドポイントの調節、阻害又は低減は、具体的には、抗炎症性サイトカインIL−10の活性化、或いは前炎症性サイトカインの活性化により反映されるような、Th1/Th2均衡を特異的に調節する候補化合物の能力を示す。IL−10の抗ペプチド6抗体誘導性発現は、例えば、定量的ドットブロットハイブリッド形成及びRNアーゼ保護アッセイにより検出することができる。
【0204】
本発明により使用される試験系は、抗炎症性サイトカインの発現のための、また候補化合物の免疫調節作用を判定するためのエンドポイント指示の検出のための適切な条件を与える内因性及び/又は外因性化合物を場合によってさらに含むことに留意されたい。
【0205】
他の好ましい実施形態において、抗炎症性サイトカインの発現の調節は、対照と比較して前記サイトカインの発現の増加又は減少のいずれか1つであり得る。
【0206】
特定の実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、抗炎症性サイトカイン、例えば、IL−10、IL−4及びIL−6の発現を調節する化合物の同定を特に対象とすることに留意されたい。より具体的には、いくつかの実施形態によれば、本発明のスクリーニング方法は、Th2抗炎症応答を活性化する化合物を同定することを対象とする。
【0207】
本発明はまた、CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節し、本発明によるスクリーニング方法により同定される免疫調節化合物を提供する。
【0208】
最後に、さらなる態様において、本発明は、免疫関連障害の治療に有効な薬剤の調製のための治療有効量の(a)アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物並びに(b)CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せの少なくとも1つを有効成分として含む医薬単位剤形に関し、該剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む。
【0209】
特定の実施形態によれば、本発明の医薬単位剤形は、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含むことができる。
【0210】
さらに、他の実施形態において、そのような化合物は、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1であり得る。
【0211】
代替実施形態によれば、本発明の医薬単位剤形は、CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する。
【0212】
以下の実施例に基づいてより詳細に記述することとする。本発明は、実例となるものにすぎず、本発明を決して限定するものでない。本発明の多くの変更形態及び変形形態は、本教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明を具体的に記述したのと別の方法で実施することができることは理解される。
【0213】
開示し、記述したが、本発明は、本明細書で開示した特定の実施例、方法ステップ及び組成物に限定されないことは理解されよう。その理由は、そのような方法ステップ及び組成物は多少変化し得るからである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその同等のものによってのみ限定されるものであるので、本明細書で用いている術語は、特定の実施形態を記述する目的のみのために用いるものであり、限定されるものではないことも理解されよう。
【0214】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0215】
本明細書並びに続く実施例及び特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などの変形は、述べた整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含するが、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の排除しないことを意味することを理解されたい。
【0216】
以下の実施例は、本発明の態様を実施するに際して本発明者らにより用いられた技術の代表的なものである。これらの技術は、本発明の実施の好ましい実施形態の例示的なものであるが、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神及び意図した範囲から逸脱することなく、多くの変更を行うことができることを認識することは理解されよう。
【実施例】
【0217】
実験手順
抗体
*マウス抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ技術によりペプチド6免疫化Balb/Cマウスから産生させたマウスモノクローナル抗体であり、IgMイソタイプに属する。
【0218】
*ラット抗ペプチド6抗体は、ハイブリドーマ技術によりペプチド6免疫化Lewisラットから産生させたラットモノクローナル抗体であり、IgMイソタイプに属する。
【0219】
*キメラ抗ペプチド6IgG1マウス及びラット抗体は、Antitope Ltd.が標準的キメラ化技術を用いて産生させた。得られたキメラ抗体は、マウス抗体からのマウス可変領域又はラットモノクローナル抗体からのラット可変領域及びIgG1イソタイプのヒト定常領域を含む。
【0220】
*マウス参照抗体に基づくヒト化抗ペプチド6抗体は、Antitope Ltd.がComposite Human Antibody(商標)技術(WO2006/082406に記載)を用いて生産した。
【0221】
FITC標識ヒト化抗体をFACS解析に用いた。いくつかの実施形態において、プロキシマブという用語をMT HSP65のペプチド6エピトープに対するモノクローナルヒト化抗体を記述するのに用いることができる。
*CD14−PE(Sigma)
*抗CD32−PE結合(CALTAG(商標)Laboratories)
*抗CD64−APC結合(CALTAG(商標)Laboratories)
*FITC結合ヤギ抗ラットIgG+IgM(Jackson ImmunoResearch Lab.Inc.、West Grove、PA19390、USA)
*抗ヒトIgG−FITC(Sigma)
*ポリクローナルマウス抗ヒトCAP1(Abnova Corporation、Taiwan)
【0222】
細胞培養条件
*MM6−Mono Mac6(ヒト骨髄性単球細胞系、DSMZ番号ACC124)
MM6細胞は、2mMグルタミン、1mMピルビン酸塩、1%非必須アミノ酸、0.1%pen−strep、10%FCS及び10μg/mlヒトインスリンを添加したRPMI培地中で維持した。
【0223】
*THP−1(ヒト急性単球性白血病細胞系、ATCC番号TIB−202)
THP−1細胞は、10%FCS、2mM L−グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン及び10mM HEPES(pH=7.3)を添加したRPMI培地中で維持した。
【0224】
*HeLa(ヒト子宮頸癌細胞系、ATCC番号CCL−2)
HeLa細胞は、10%FCS、2mM L−グルタミン及び0.1%pen−strepを添加したDMEM培地中で維持した。細胞を5%CO2で37℃インキュベーター中で増殖させた。
【0225】
キット
*ReadyPrep(商標)タンパク質抽出キット(膜I)(Bio−Rad Laboratories,Inc.、Hercules、CA94547、USA)
*ReadyPrep(商標)タンパク質抽出キット(細胞質)(Bio−Rad Laboratories,Inc.、Hercules、CA94547、USA)
*Dylight(商標)抗体標識キット(Thermo Scientific Pierce Protein Research Products、Rockford、IL、USA)
*F(ab)2調製キット(Thermo Scientific Pierce Protein Research Products、Rockford、IL、USA)
*siRNAキットHiPerfectトランスフェクション試薬(Qiagen)+All star及びCAP1_5siRNA(Qiagen)
【0226】
モノクローナルマウス及びラット抗ペプチド6産生ハイブリドーマ(B24)の産生
6週齢の雌Balb/cマウス又はLewisラットに完全フロイントアジュバントに懸濁した100μgのペプチド6(GPKGRNVVLEKKWGAP、配列番号1により表示)を皮下注射した。動物に不完全フロイントアジュバントのペプチドを3週間間隔でさらに2回注射した。ELISAによる抗ペプチド6抗体レベルの測定のために血清を採取し、最高レベルを有する動物をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mMリン酸水素二ナトリウム、2mMリン酸二水素カリウム、pH7.4)中50μgのペプチドの2連続腹腔内注射により処置した。翌日、脾臓をBALB/c Ig非分泌骨髄腫NSOと融合させた。ペプチド6を特異的に認識する抗体の存在を上清中で特異的ELISAにより検出し、陽性クローンを拡大した。この研究に対して、IgM型の抗体を産生したB24と称するクローンを用いた。これらのモノクローナル抗体は、抗ペプチド6と呼ばれている。ハイブリドーマ細胞の上清から抗ペプチド6抗体を精製した。精製は、チオアドソープション(thioadsorption)と続くプロテインGクロマトグラフィー(Adar Biotech、Israel)により実施した。抗体の精製は、SDS−PAGEにより確認した。
【0227】
キメラ抗ペプチド6抗体の産生
mRNAをB24細胞(Promegaカタログ番号Z5400)から抽出した。RT/PCRは、単一定常領域プライマーを含むマウスシグナル配列の縮重プライマープールを用いて実施した。重鎖可変領域mRNAを一組の6縮重プライマープールを用いて増幅し、軽鎖可変領域mRNAを一組の8縮重プライマープールを用いて増幅した。各産物をクローニングし、それぞれの数個のクローンの配列を決定した。両抗体について、単機能重及び軽鎖可変領域配列が同定された。B24可変領域は、IgG1及びIgG4重鎖について発現ベクターシステム(Antitope Ltd.)に転移させた。
【0228】
ヒト化抗ペプチド6抗体の調製
本明細書でプロキシマブと呼ぶヒト化抗ペプチド6抗体は、Antitope Ltd.がキメラマウス参照抗体に基づいてComposite Human Antibody(商標)技術(WO2006/082406に記載)を用いて生産した。
【0229】
手短に述べると、ヒト可変領域(V領域)配列のセグメントを非関連ヒト抗体配列データベースから入手した。各選択した配列セグメント(並びにセグメント間の接合部)をiTope(商標)分析を用いてMHCクラスIIに結合する可能性について試験し、すべての最終Composite Human Antibody(商標)配列変異体を、T細胞エピトープを回避するようにデザインした。ヒト配列セグメントの組合せをコードする合成オリゴヌクレオチドを用いてComposite Human Antibody(商標)V(可変)領域遺伝子を生成させた。次にこれらをヒト定常領域を含むベクターにクローニングし、抗体を生成させ、競合ELISAにより標的抗原への結合について試験した。VH1〜4(可変重鎖1〜4)をVK1〜3(可変軽鎖1〜3)と組み合わせた結果として生ずる抗体変異体、例えば、VH1/VK1、VH2/VK1等をそれに応じてデザインした。これらの変異体もプロキシマブとして示されることにも留意されたい。
【0230】
ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片の調製
ヒト化VH2/VK3変異型抗ペプチド6抗体(プロキシマブ)のF(ab)2断片は、F(ab)2調製キットを用いてペプシン消化(製造業者の指示に従って)により生成させた。F(ab)2断片をDylight(商標)抗体標識キット(Pierce;製造業者の指示に従って)を用いてFITC(イソチオシアン酸フルオレセイン、Sigma)で標識した。
【0231】
ヒト末梢血単核細胞の調製
ヒト静脈血を健常志願者又は血液銀行から入手したバフィーコート(白血球、赤血球及び血小板の大部分を含む密度勾配遠心後の抗凝固血液試料の画分を含む)から収集した。血液をFicoll勾配(Ficoll Hypaque(商標)−GE Healthcare)で層状にして白血球画分を分離し、濃縮した。細胞を室温で180rpmで30分間遠心分離した。単核バンドを抽出し、PBSに40mlの最終容積に再懸濁し、1100〜1200rpmで10分間遠心分離した。ベレットを、2%ヒト血清、2mMグルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリンを添加したRPMIに懸濁した(すべての試薬がBiological Industries、Beit−Haemek、Israel製である)。細胞を24ウエルプレートに1〜2×106の濃度で播種した。接着細胞のみが望ましい場合、細胞を1.5〜3時間インキュベートし(37℃、7%CO2)、次に非接着細胞をPBSで4回洗い流した。
【0232】
抗ヒトCD14磁気ビーズ(BD Biosciences Pharmingen)を用いて製造業者の指示に従って混合物からCD14+細胞をさらに単離した。
【0233】
蛍光活性化細胞選別(FACS)解析
106個のCD14+細胞、106個のMM6細胞又は0.5×106個のTHP−1細胞をPBS中1%BSA、1%ヤギ血清(FACS培地)で希釈した一次抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。細胞をFACS培地で2回洗浄し、FACS培地で希釈した250ng/tube FITC結合ヤギ抗ラットIgG+IgM(Jackson ImmunoResearch Lab.Inc.、West Grove、PA19390、USA)とともに室温で30分間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、FCS express 3プログラム(De novoソフトウエア)を用いてLSRIIフローサイトメーターにより解析した。
【0234】
キメラ抗ペプチド6抗体によるMM6細胞の染色
Mono Mac 6(MM6)細胞を10μgキメラ(CHM)抗ペプチド6抗体で、続いて1:200二次抗ヒトIgG−FITC単独で又は1:20マウス抗ヒトCD14−APC(Miltenyi Biotec)とともに染色した。細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定し、スライドにのせ、マウント緩衝液で覆い、Zeiss共焦点顕微鏡下で観察した。
【0235】
アフィニティークロマトグラフィー
セファロースビーズをマウス及びラット抗ペプチド6モノクローナル抗体に結合させ(5mg抗体/2mlセファロース)、カラムを作製した。THP−1ヒト前単球親水性膜タンパク質をTweenを用いて20:0.1で加えた。固体物質を除去した後、試料をカラムに加えた。溶出は、酸性条件下(0.1NグリシンpH2.4)で、続いて高塩条件下(3.2Mイソチオシアン酸Na)で行った。1.5mlの画分を収集し、Bradfordタンパク質検出法を用いてタンパク質含量を検出した。ペレットをPBSに懸濁し、PBSに対して3回透析した。
【0236】
ウエスタンブロット分析
THP−1タンパク質画分(例4)、抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させたTHP−1前単球親水性膜タンパク質(20μg)、及びヒト結核菌(MT)熱ショックタンパク質65(5μg)を沸騰し、9%SDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル上で分画した後、電力を用いてニトロセルロース膜に転移させた。ウエスタンブロットは、ラット抗ペプチド6モノクローナル抗体B24を用いて行った。結合強度をヤギ抗ラットFcペルオキシダーゼ(HRP)により検出した後、HRP基質とともにインキュベートし、化学発光シグナルを検出した。
【0237】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
総RNAをSV総RNA単離システム(Promega、USA)により抽出し、逆転写システム(Promega、USA)を用いてcDNAを調製した。得られたcDNAを以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
IL−10:上流−5’ACCAAGACCCAGACATCAAG3’(配列番号2によっても表示される)
下流−5’GAGGTACAATAAGGTTTCTCAAG3’(配列番号3によっても表示される)
GAPDH:上流−5’CCCATCACCATCTTCCAGGAGCG3’(配列番号4によっても表示される)
下流−5’CATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCA3’(配列番号5によっても表示される)
プライマーはIL−10及びGAPDH mRNAそれぞれの461bp及び476bpの産物を生じさせた。
【0238】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
核抽出物を以前に記載されたように調製した[Lee K.ら、Gene.Anal.Technol.、5巻、22〜31頁(1988年)]。オリゴヌクレオチドを、20ngの2本鎖オリゴヌクレオチド、1μlのKlenow DNAポリメラーゼ及び5μlの10μC/μL[α−32P]dCTP(Amersham、UK)を含む20μlの反応混合物中で標識した。20μlの最終容積で、200pgの標識オリゴヌクレオチドを、12mM HEPES pH7.2、60mM KCl、0.6mM Na2EDTA、0.6mM DTT、5mM MgCl2及び1μg poly d(I−C)を含む緩衝液中核抽出物(10μgタンパク質)とともに30℃で40分間インキュベートした。反応混合物を0.5TBE緩衝液中4%ポリアクリルアミドゲル上で200Vで90分間電気泳動した。
【0239】
CAP1発現のsiRNA干渉
ヒトTHP−1前単球細胞を24ウエルプレート上に60000個細胞/100マイクロリットルRPMI培地の濃度で播種した。5ピコモルのall star陰性siRNA又は5ピコモルのCAP1 siRNAを血清不含有で、3マイクロリットルHiPerfectトランスフェクション試薬(Qiagen)を含む100マイクロリットルのRPMI培地で希釈した。10分間のインキュベーションの後、siRNA溶液を細胞に加えた。細胞を37℃で7%CO2中で6時間インキュベートした後、400マイクロリットルのRPMI培地を加えた。同じ条件で48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、上述のように蛍光活性化細胞選別(FACS)解析に供した。
【0240】
ELISA−サイトカインレベルの評価
動物の細胞培養及び血清中のサイトカインレベルの評価は、R&D SYSTEMS、Minneapolis MN、USA製の特異的キットを用いて行った(製造業者の指示に従って)。
【0241】
アジュバント誘発性関節炎の誘発及び臨床的評価
6〜8週齢の雌近交系Lewisラット(Harlan Laboratories、Israel)の尾の基部にCFA(Difco)中1mgのヒト結核菌(MT)H37Ra(Difco、Detroit、MI)を皮内注射した。関節炎の重症度(関節炎指数)を盲検化観測者が隔日に次のように評価した。0、関節炎なし;1、関節の紅化;2、関節の紅化及び腫脹。各足蹠の足根及び足根中足関節を採点した。16の最大スコアを得ることができた。
【0242】
(例1)
抗ペプチド6抗体はIL−10特異mRNAの一時的アップレギュレーション、IL−10分泌を誘導し、アジュバント関節炎を軽減する
HSP−65ペプチド6結合抗体の分子的作用機序を検討した。単球に対するマウス抗ペプチド6mAbsの作用をin vitroで評価したところ、ヒト単球による抗炎症性サイトカインIL−10の有意な分泌を誘導することが示された。ネイティブヒト単球をマウス抗ペプチド6mAbとともにRPMI中でインキュベートし(24時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10の分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。図1は、マウスモノクローナル抗ペプチド6によるIL−10の誘導を示している。同様な結果がヒト化プロキシマブについて得られた(示さず)。
【0243】
本発明者らは、次にIL−10転写活性に対する抗ペプチド6抗体の作用、したがって、IL−10 mRNAレベルに対するB24ラット抗ペプチド6抗体の作用をin vitroで試験した。ヒト単球細胞(PBMC)をB24抗ペプチド6モノクローナル抗体、陰性対照としての全ネイティブLewis IgM抗体又は陽性対照としてのリポ多糖(LPS)とともにインキュベートした。細胞を、LPS、全ネイティブLewis IgM対照又はB24への曝露の4及び24時間後に収集した。抽出されたRNAを逆転写PCR(RT−PCR)によりIL−10 mRNAについて試験した(図2A)。GAPDH cDNAを等しい負荷についての対照として用いた(図2B)。図2Aに示すように、LPS及び抗ペプチド6抗体は、無処理及びネイティブLewis IgM処理細胞と比較して曝露の4時間後にIL−10 mRNAの増加を誘発した。しかし、mRNAレベルが曝露の24時間後に一定のままであったLPS処理細胞に反して、抗ペプチド6で処理した細胞における発現レベルが抗体との24時間のインキュベーションの後に低下した。これらの結果は、抗ペプチド6が、一時的である、IL−10 mRNA発現のアップレギュレーションを誘導することを示唆するものである。
【0244】
確立した関節炎の実験的モデルにおけるIL−10レベルの誘導に対するプロキシマブ(ヒト化抗ペプチド6mAb)の効果を次に評価した。Lewisラットを0日目にCFA中MTで免疫化して関節炎を誘発し、関節炎の重症度を臨床採点法により測定した。動物にPBS(陰性対照)、ステロイド又はプロキシマブを投与した。図3に示すように、プロキシマブは、媒体(PBS)投与陰性対照と比較してマウスにおけるアジュバント関節炎の重症度の低下に有効であることが示され、これらの動物は、高レベルのIL−10を有することが示された。ステロイドも関節炎の重症度の低下に有効であったが、それらは、IL−10分泌の誘導の機序を示さなかった。
【0245】
(例2)
抗ペプチド6抗体はヒトCD14+細胞に結合する
本発明の目標は、抗ペプチド6抗体の標的タンパク質を同定すること、及びこの相互作用により誘発される細胞内過程の特徴を明らかにすることである。理論に束縛されるものではないが、本発明者の作業仮説は、抗ペプチド6抗体が単球膜リガンドと交差反応し、IL−10の転写活性及び分泌の増大につながるシグナル伝達経路を活性化するということである。この仮説をさらに探究するために、本発明者らは、抗ペプチド6抗体の特異的標的細胞を同定することを試みた。磁気ビーズによりCD14陽性細胞をヒトPBMCから単離し、FITC標識キメラ抗ペプチド6抗体(CHM、図4B)又は抗ヒトCD14−PE(図4C)又は両方(図4D)で染色した。無染色細胞を陰性対照として用いた(図4A)。次に細胞をFACSにより抗体の結合について解析した。図4Dに示すように、二重染色画分中の細胞の大部分がCHM及びCD14+の両方について陽性であり、CHM抗体がCD14+細胞に効率よく結合することがわかる。これらの結果は、CHM抗体がCD14+細胞の細胞外成分と特異的に相互作用することを示唆するものである。
【0246】
ヒト化抗ペプチド6抗体、すなわち、プロキシマブが同様な特性で結合するかどうかを確認するために、CHMの代わりにプロキシマブを用いて同様な実験を実施した。ヒトPBMC細胞を健常ドナーから単離し、Ficoll勾配で分離した。単離細胞を抗CD14−APC結合体(図5A)又はFITC標識プロキシマブ及びAPC結合抗CD14抗体の両方で染色した(図5B)。結果は、プロキシマブがCD14+細胞に結合することを示すものである(単球は単離細胞集団の約10%を構成する、図5B、上右四半分)。図5CにFITCにより染色されたCD14+集団からの細胞のパーセントを示す(プロキシマブを含まない−黒色、プロキシマブを含む−灰色)が、これにより、プロキシマブが大きいパーセント(75%)のCD14+集団に結合することがわかる。同様な結果がマウス抗ペプチド6mAbについて得られた。
【0247】
抗体がCD14陽性細胞に結合することが示されたので、本発明者らは、単球細胞系の膜へのCHMの結合をさらに評価した。骨髄単球細胞系由来のCD14+Mono Mac6(MM6)細胞をこの実験に用い、CHM抗体で染色し、次に抗ヒトIgG−FITC結合抗体単独に又はそれとマウス抗ヒトCD14−APCとに曝露した。染色後、細胞を固定し、スライド上にのせ、共焦点顕微鏡下で観察した。図6Aに明確に示されているように、CHM抗体は、MM6細胞の膜に特異的に結合する。CHM−FITC(緑)及びCD14(赤)の両方で染色した細胞(図6B)は、CHM抗体の結合がCD14抗体の染色と同様に、膜全体に分散していることを示しており、CHM抗体のリガンドがCD14陽性細胞の膜表面上にあることがわかる。
【0248】
(例3)
ヒト単球細胞への抗ペプチド6抗体の結合はFc受容体により媒介されない
本発明者らは、次に抗ペプチド6抗体の標的としての免疫系の公知の構成要素(Fc受容体など)の関与の可能性を検討した。MM6細胞が受容体FcガンマRI(CD64)を約71%、FcガンマRII(CD32)を約96%発現するが、受容体FcガンマRIII(CD16)を発現しないことが以前に報告された[Tronら、Eur.J.Immunol.、38巻、1414〜1422頁(2008年)]。MM6細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体の結合がこれらの細胞上に存在するFc受容体により媒介されるかどうかを検定するために、本発明者らはFc受容体CD32及びCD64に対する2つの抗体、並びにFITC標識ヒト化抗ペプチド6抗体(VK3−FITC)との競合体としての役割を果たす非蛍光ヒト化抗ペプチド6抗体(VK3)を用いた。解析は、FACSにより実施した。
【0249】
図7に細胞を非標識VK3とともに、又はCD32及びCD64に対する抗体とともにプレインキュベートした後のMM6細胞へのVK3−FITCの結合を示す。示したように、FITC−VK3は30%の細胞に結合した(左のバー)。興味深いことに、両Fc受容体(CD32及びCD64)に対する抗体とのプレインキュベーションにより、これらの細胞へのVK3−FITCの結合が阻害されなかった(右のバー)。これと対照的に、非蛍光VK3抗体とのプレインキュベーションにより、VK3−FITCの結合が完全に阻止された(中央のバー)。これらの結果は、ヒト化抗ペプチド6抗体がMM6細胞上に提示されたFc受容体を利用せずに、異なる膜タンパク質を標的にすることを明確に示すものである。
【0250】
(例4)
抗ペプチド6抗体は単球親水性膜タンパク質に結合する
本発明の抗体が結合する特異的リガンドをさらに特徴付けるために、本発明者らは、他の細胞系、すなわち、THP−1(ヒト前単球性白血病細胞系)への抗体の結合を最初にアッセイした。THP−1細胞が抗体に結合するかどうかを判断するために、細胞をラット抗ペプチド6モノクローナル抗体(B24)とともにインキュベートした後、FITC染色し、次にFACS解析に供した。二次抗体(FITC−ヤギ抗ラット)のみとインキュベートした細胞を対照とした。図8Bで認められるように、この解析により、75%の細胞がB24抗体に結合したことが示されたが、対照細胞では結合は検出されなかった(図8A)。B24がTHP−1膜に結合したことが立証されたので、本発明者らは、標的リガンドを濃縮し、同定することを着手した。この目的のために、親水性膜タンパク質、疎水性膜タンパク質及び細胞質タンパク質をTHP−1細胞から単離し、B24モノクローナル抗ペプチド6抗体を用いたウエスタンブロット分析に供した(図9;レーン1−親水性膜タンパク質;レーン2−疎水性膜タンパク質;レーン3−細胞質タンパク質)。対照ブロットは、総ラット免疫グロブリン又は培地のみを用いてブロットした。示したように、B24抗体は、親水性膜タンパク質の3つの画分52、100及び120KDaに結合した。陰性対照ブロットには結合は検出されなかった(データは示さず)。これらの結果は、抗ペプチド6抗体の標的タンパク質が細胞膜上にある親水性タンパク質であることを明確に示すものである。
【0251】
(例5)
抗ペプチド6抗体はアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)に結合する
抗ペプチド6抗体の標的タンパク質を具体的に同定するために、THP−1細胞の親水性膜画分を、セファロースビーズに結合させた抗ペプチド6抗体を含むアフィニティーカラムに加えた。結合したタンパク質を溶出し、SDS−PAGE上に加えた後、クマシーブルー染色した。図10は、レーン2及び4で確認できるように抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィー溶出タンパク質のクマシーブルー染色を示している。ここで、レーン2は、ラット抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーに相当し、レーン4は、マウス抗ペプチド6カラム上のアフィニティークロマトグラフィーに相当する。約40及び50KDaの2つの二重バンドが両方の場合に認められた。レーン1及び6は、マーカーを含む。
【0252】
その後、得られたバンドをゲルから切り取り、2箇所の施設での質量分析(MS)のために送った。表1にラット抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出した親水性膜タンパク質の配列決定結果を示す。表に示すように、MS分析により、溶出タンパク質が52KDaタンパク質であるアデニリルシクラーゼ結合タンパク質1(CAP1)を含んでいたことが明らかになった。そのアミノ酸配列を図30に示し、配列番号6と表示した。この所見は、ペプチド6に対する抗体がCAP1に特異的に結合することを明確に示すものである。
【0253】
【表1】
【0254】
抗ペプチド6抗体を作製するのに用いるエピトープである、ペプチド6は、ヒト結核菌熱ショックタンパク質65(MT−HSP65)に由来するペプチドである。抗ペプチド6がCAP1タンパク質に特異的に結合することを確認し、本所見を確認するために、抗ペプチド6アフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出したTHP−1親水性膜タンパク質及びMT−HSP65をSDS−PAGE上に加え、ラット抗ペプチド6抗体(B24)を用いたウエスタンブロット分析に供した。図11に示すように、抗体は、2つの異なるバンド、すなわち、アフィニティーカラムから得られたタンパク質を加えたレーンに認められた52KDaタンパク質及びMT−HSP65の既知重量と一致する65KDaバンドを検出した。これらの結果は、抗ペプチド6抗体とアデニリルシクラーゼ結合タンパク質1との相互作用を支持するさらなる証拠を提供している。
【0255】
(例6)
抗CAP1抗体は単球の膜に結合する
抗ペプチド6抗体がCAP1タンパク質に結合するという所見が、本発明者らが、CAP1がTHP−1前単球の完全な膜上に存在するかどうかを検討することにつながった。CAP1が単球の完全な膜上に実際に存在する可能性を検討するために、THP−1細胞(0.5×106/tube)を抗ヒトCAP1抗体(Abnova、Taiwan、10μg/ml)とともにインキュベートし、結合の評価のためにFACSにより解析した。無染色細胞及びFITC染色細胞を陰性対照とした。図12Cに示す結果は、約87%の細胞がCAP1抗体に結合したが、陰性対照細胞(図12A及び12B)は結合を示さなかったことを示している。
【0256】
対照的に、図13Cは、表皮細胞を代表する完全なHeLa細胞は、二次抗体のみとともにインキュベートしたHeLa細胞(図13B)又は無染色(図13A)と同様に、抗CAP1抗体により結合されなかったことを示している。
【0257】
透過性化細胞を用いた上の実験を繰り返すことにより、単球におけるCAP1の固有の細胞外の存在が実証された。予期した通りに、図14に透過性化のメタノール処理THP−1細胞への抗CAP1抗体の結合が示されている。図14Cで明確にわかるように、抗CAP1抗体による細胞への著しい結合(96%)が認められるが、無染色及び二次抗体でのみ染色したTHP−1細胞では染色は示されていない(それぞれ図14A及び13B)。しかし、完全HeLa細胞の場合と対照的に、透過性化のメタノール処理HeLa細胞は、図15Cに示すように抗CAP1に著しく結合した(96%)。したがって、透過性化HeLa細胞は、透過性化THP−1細胞(96%)と同様に抗CAP1に結合するが、結合は非透過性の完全な細胞では実質的に異なり、それにより、抗CAP1抗体は、THP−1細胞のみに結合する。
【0258】
したがって、CAP1の細胞外の存在は、単球では示されているが、表皮細胞では示されていない。
【0259】
上の結果をさらに裏付け、単球の膜への結合がマウス由来の抗体の一般的な作用でないことを確認するために、またさらなる対照として、本発明者らは、抗CAP1抗体に加えてマウス抗ヒトGAPDH抗体を用い、フローサイトメトリーによりヒト単球細胞への結合を解析した。GAPDHは、細胞質に存在する細胞内タンパク質である。ヒトTHP−1細胞を1μgの抗CAP1又は抗GAPDHで染色した後、ヤギ抗マウスIgG FITC結合体で染色した。図16でわかるように、抗CAP1(図16B)と対照的に、抗GAPDH抗体は、完全THP−1細胞に結合しなかった(図16C)。予期した通り、メタノールによるTHP−1細胞の透過性化により、抗CAP1抗体(図17B)及び抗GAPDH抗体(図17C)の結合がもたらされた。
【0260】
ヒト化抗ペプチド6抗体であるプロキシマブがCD14+細胞に結合することをさらに立証するために、CD14+を発現するマウスマクロファージ細胞系RAW264.7を用いた。RAW細胞を蛍光標識抗CD14−APC結合体(図18A)又はプロキシマブ−FITC結合体(図18B)又は抗GAPDH(図18C)又は抗CAP1抗体(図18D)で染色した後、ヤギ抗マウスIgG−FITC結合体で染色した。結果から、プロキシマブ抗体が、抗CAP1(図18D)と同様に大きい割合のマウスCD14+細胞に結合することが示されている(図18C)。
【0261】
この実施例で開示した実験により、CAP1タンパク質がTHP−1細胞の細胞外に存在することが明確に示され、したがって、抗ペプチド6抗体がCAP1タンパク質との相互作用により細胞膜に直接結合し得るという概念が裏付けられている。
【0262】
(例7)
抗ペプチド6抗体はCAP1タンパク質を介してTHP−1細胞に結合する
抗ペプチド6抗体が単球膜CAP1を認識し、異なる交差反応性膜タンパク質を認識しないことを立証するために、本発明者らは、競合実験を適用し、抗ペプチド6ヒト化抗体プロキシマブが、THP−1細胞への抗CAP1抗体の結合を阻害するかどうかを試験した。この目的のために、THP−1をヒト化抗ペプチド6抗体プロキシマブ(20μg/ml)とともにプレインキュベートした後、抗ヒトCAP1抗体(0.75μg/ml)で1時間染色し、FACS解析により抗CAP1抗体のみとともにインキュベートした細胞と比較した。無染色細胞(図19A)及びFITC染色細胞(図19B)を陰性対照として用いた。図19Dに示すように、プロキシマブとのプレインキュベーションにより、抗CAP1抗体のみで染色した細胞(88%結合;図19C)と比較して、抗CAP1抗体に結合した細胞の集団の著しい減少(43%結合)がもたらされた。予期した通り、陰性対照試料には蛍光は観測されなかった(図19A及び19B)。
【0263】
総合すれば、これらのデータは、細胞外CAP1が、抗ペプチド6抗体の特異的標識としての役割を果たし、単球へのその結合を可能にすることを示すものである。
【0264】
(例8)
CAP1の減少は単球への抗ペプチド6抗体の結合を妨げる
プロキシマブがCAP1タンパク質を介して単球膜に特異的に結合することを示す、これらの所見をさらにバリデートするために、本発明者らは、siRNAを用いてCAP1の発現を妨げ、CAP1の発現が減少した状態での単球細胞へのプロキシマブの結合を評価した。
【0265】
siRNA実験の準備に際して、本発明者らは、フローサイトメトリーによりTHP−1細胞へのプロキシマブの結合を検定した。ヒトTHP−1細胞(0.5×106個/tube)を様々な濃度の抗ペプチド6抗体プロキシマブとともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗ヒトFc IgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーによりプロキシマブ結合について解析した。図20にTHP−1細胞に結合するヒト化抗ペプチド6抗体プロキシマブの滴定曲線を示す。
【0266】
本発明者らはさらに、フローサイトメトリーによりTHP−1細胞への抗CAP1抗体の結合を検定した。ヒトTHP−1細胞(0.5×106個/tube)を様々な濃度の抗CAP1抗体とともにインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスFc IgGとともにインキュベートし、フローサイトメトリーにより抗CAP1抗体結合について解析した。得られた抗CAP1抗体の滴定曲線を図21に示す。
【0267】
次に、本発明者らは、CAP1 siRNAによる処理の後にCAP1の発現を分析した。ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)(Qiagen)をトランスフェクトした。48時間のインキュベーションの後、細胞を収集し、次に10%SDSタンパク質試料緩衝液を用いて抽出した。電力によりタンパク質抽出物を9%SDS−PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転移させた。ニトロセルロース膜をマウス抗CAP1抗体(50ng/ml)を用いてウエスタンブロッティングに供した。ゲル上で分離されたタンパク質のレベルを測定するために、膜をストリップし、抗アルファアクチン抗体を用いてウエスタンブロッティングに再び供した。図22にCAP1 siRNAによる処理の後のCAP1発現の特異的減少を示す。
【0268】
最後に、ヒトTHP−1細胞にAll Star Negative siRNA又はヒトCAP1 siRNA(それぞれ50ピコモル/ml)をトランスフェクトし、抗CAP1 mAb(500ng/ml)又はプロキシマブ(100ng/ml)とともにインキュベートした。ヤギ抗マウス及びヤギ抗ヒトFITC結合抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。図23にsiRNAによるCAP1の発現の減少の後の細胞への抗CAP1及びプロキシマブ抗体の結合の著しい減少(それぞれ図23C及び23D)を示す。
【0269】
結果は、抗ペプチド6抗体がCAP1を介して単球膜に結合することを明確に示すものである。
【0270】
(例9)
抗ペプチド6抗体の作用機序
抗ペプチド6抗体がIL−10 mRNAのアップレギュレーションを誘導するという所見(例1を参照)が、本発明者らが抗ペプチド6抗体への曝露後のIL−10プロモーター領域へのタンパク質結合の変化を検討する促しとなった。この目的のために、IL−10転写を促進することが以前に報告された代表的な部位、すなわち、Sp1[Ma W.ら、J.Biol.Chem.、276巻、13664〜13674頁(2001年)]及びcAMP応答配列(CRE)[Platzer C.ら、Eur.J.Immunol.、29巻、3098〜3104頁(1999年)]結合モチーフを用いた。これらの公知のモチーフを有する放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを、ラットモノクローナル抗ペプチド6抗体又は全LewisラットIgM抗体とともにインキュベートしたPBMC細胞から抽出した核タンパク質とともにインキュベートし、次に電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により分析した。それぞれ図24A及び24Bにより示されるように、B24への細胞の曝露は、無視できるタンパク質結合を示した、全Lewis IgMによる処理と比較して、IL−10遺伝子プロモーター由来のそれらの対応するモチーフへのCREB及びSP1転写因子の有意な結合をもたらした。これらの結合部位へのヌクレオチド変化の導入(突然変異CRE及びSp1)は、両部位へのタンパク質結合をほぼ完全に無効にした。これらの結果は、抗ペプチド6抗体への単球の曝露が、IL−10遺伝子プロモーターのCRE及びSp1モチーフへの転写因子の結合を刺激することにより、mRNA転写を誘導することを明確に示すものである。CREは、cAMP/cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達経路により一般的に活性化されるので、本発明者らは、次に抗ペプチド6への曝露後のIL−10発現におけるcAMPの役割を検討した。以下の解析には公知のPKA阻害剤KT5720を利用した。KT5720の作用部位[Kase H.ら、Bioch.Biophys.Res.Com.、142巻、436〜440頁(1987年)]を図25に示す。抗ペプチド6抗体とのインキュベーションの15分前にKT5720を種々の濃度でPBMCに加えた。図26に明確に示されているように、この介入がIL−10の分泌の用量依存的な阻害をもたらしたことから、PKAシグナル伝達経路が、抗ペプチド6によるIL−10の発現の活性化に重要な役割を果たしていることが立証された。総合すると、得られたデータから、抗ペプチド6抗体がCAP1との相互作用により、IL−10 mRNA転写を誘導し、ひいてはcAMP及びPKA経路の活性化を刺激するという結論が導かれた。
【0271】
(例10)
ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片はヒト単球に結合し、IL−10分泌を誘導する。
単球細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体の結合の特異性をさらに立証し、その結合がこれらの細胞上のFc受容体を介するものでないことを確認するために、本発明者らは、ヒト化抗ペプチド6抗体のF(ab)2断片を作製し(Pierce F(ab)2調製キット)、CD14+精製細胞へのそれらの結合を評価した。
【0272】
Dylight(商標)抗体標識キット(Pierce)を用いてF(ab)2断片をFITCで標識した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。単離細胞を蛍光標識抗CD14−PE結合体(図27A)又はヒト化抗ペプチド6抗体F(ab)2断片(FITC結合)とPE−抗CD14の両方(図27B)で染色した。結果は、全プロキシマブ抗体に関する以前の結果と同様に、CD14+細胞へのヒト化抗ペプチド6抗体(プロキシマブ)F(ab)2の著しい結合(図27Bにおける上右四半分)を示すものである。図27CにFITCで染色されたCD14+集団からの細胞のパーセント(プロキシマブのF(ab)2を含まない−黒色、プロキシマブのF(ab)2を含む−灰色)を示す。ヒト化抗ペプチド6抗体F(ab)2が大きいパーセントのCD14+集団に結合することが示されている。
【0273】
本発明者らは、次にCD14+精製細胞へのプロキシマブのF(ab)2の結合を評価した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。抗ヒトCD14磁気ビーズ(BD)を用いてCD14+細胞をさらに単離した。プロキシマブのF(ab)2をFITCで直接標識した。CD14+単離細胞を抗CD14(APC結合)又はプロキシマブF(ab)2(FITC結合)で染色した。PBMCについての以前の所見と同様に、結果は、CD14+集団へのプロキシマブのF(ab)2の著しい結合を示すものである。図27Dに無染色細胞を示し、27EにF(ab)2−FITCによる染色を示し、27Fに抗CD14−APCによる染色を示す。
【0274】
(例11)
ヒト化プロキシマブF(ab)2及び抗CAP1はIL−10分泌を誘導する
IL−10分泌に対する抗CAP1抗体及びプロキシマブのF(ab)2の作用についても評価した。健常ドナーからのヒトPBMC細胞をFicoll勾配で分離した。単離細胞をプロキシマブ(200μg)、プロキシマブのF(ab)2(150μg)又は抗CAP1抗体(8μg)とともにRPMI中でインキュベートし(48時間、37℃、5%CO2)、培地へのIL−10分泌をELISAにより測定した。無処理細胞を対照とした。図28における結果は、プロキシマブと、また抗CAP1抗体とも同様に、プロキシマブF(ab)2によるIL−10分泌の著しい増加を示すものである。したがって、プロキシマブF(ab)2は、単球膜に結合し、完全なプロキシマブ抗体と同じ免疫応答を引き起こす。さらに、これらの結果は、CAP1が免疫調節標的であることを明確に示し、CAP1に結合する化合物が、前記免疫調節を媒介する抗炎症性サイトカインIL−10の発現の増大を誘導することを示すものである。
【0275】
(例12)
抗ペプチド6、抗CAP1、プロキシマブ及びプロキシマブF(ab)2の作用に関する提案モデル
IL−10分泌の誘導及び炎症性障害の軽減におけるCAP1結合抗体の作用に関する本発明者らの提案モデルを図29に示す。抗ペプチド6並びにCAP1結合抗体は、CD14+細胞に存在する細胞外CAP1に結合し、cAMP/PKA依存性経路を活性化し、IL−10の転写を誘導する。IL−10分泌が増加し、Th1/Th2均衡をTh2の方に傾けることによって炎症性表現型を抑制する。
【0276】
(例13)
CAP1の細胞局在化及び免疫調節機能のさらなる特徴付け
CAP1の免疫調節上の役割をさらに検討するために、CAP1タンパク質を発現させ、精製する。最初に、CAP1をN末端6×Hisタグを有するフレームにおけるpET22b+ベクターにクローニングする。得られたプラスミドをBl21細胞にトランスフォームし、プラスミドを運ぶ細菌細胞を増殖させ、GAP1−6×His組換え融合タンパク質を発現するように誘導する。次にタンパク質を天然又は変性条件でNiNtaカラム上で精製する。抗GAP1抗体を用いてウエスタンブロットにより、精製GAP1を確認する。GAP1とヒト化プロキシマブとの相互作用をウエスタンブロット、ELISA及びBiacoreを用いて試験する。
【0277】
次のステップにおいて、CAP1とヒト化抗ペプチド6抗体とを共免疫沈降させる試みをする。細胞溶解物を磁気ビーズに結合させたプロキシマブとともにインキュベートする。次にプロキシマブに結合しているタンパク質をSDS−PAGE上で分離し、抗CAP1を用いたウエスタンブロットにより認識を確認する。最後に、膜局在化シグナルを加えているCAP1を、ヒト化抗ペプチド6抗体を結合せず、細胞外CAP1を発現しない細胞にトランスフェクトする。次に、そのようにトランスフェクトした細胞が両抗体により結合されることを発見することを期待して、細胞を抗CAP1又はヒト化抗ペプチド6とともにインキュベートし、FACSにより解析する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物であって、免疫調節有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、
又はそれらの任意の組合せ
の少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む、上記組成物。
【請求項2】
CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法であって、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物
の少なくとも1つを前記対象に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項7】
治療有効量の、CAP1と特異的に相互作用し、結合する化合物又はそれを含む組成物を前記対象に投与することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量のCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらを含む任意の組成物を前記対象に投与することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための組成物の調製における、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、並びに
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらの任意の組合せ
のいずれか1つの使用。
【請求項11】
前記組成物が、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、その発症を遅延させるのに使用される、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体。
【請求項15】
対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、その発症を遅延させるのに使用される、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体。
【請求項16】
それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物のスクリーニング方法であって、
a.CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップ、
b.抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節に基づいて、ステップ(a)で選択された化合物の効果を判定するステップ
を含み、それにより、前記候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節が、前記対象におけるTh1/Th2均衡を調節する前記化合物の能力を示す、上記スクリーニング方法。
【請求項17】
前記免疫調節化合物が、
a.前記CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、
b.前記混合物を前記結合に適する条件下で前記試験化合物と接触させるステップ、並びに
c.エンドポイント指示に対する試験化合物の作用を判定するステップ
により得られ、それにより、前記エンドポイントの調節が前記試験化合物への前記CAP1分子の結合を示す、請求項16に記載のスクリーニング方法。
【請求項18】
Th2リンパ球の活性化を調節する前記化合物の能力を判定することにより前記候補化合物を評価し、前記評価が
a.CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む試験系を準備するステップ、
b.前記系を請求項16に記載の方法により得られた候補化合物と接触させるステップ、並びに
c.対照と比較してエンドポイント指示に対する前記候補化合物の作用を判定するステップ
を含み、前記作用が、それを必要とする対象におけるTリンパ球の活性化、及びそれによるTh1/Th2細胞均衡を調節する前記候補の能力を示す、請求項16に記載のスクリーニング方法。
【請求項19】
CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物であって、請求項16に記載のスクリーニング方法により同定される、上記免疫調節化合物。
【請求項20】
免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに有効な薬剤を調製するための、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、並びに
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ
の少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む医薬単位剤形。
【請求項1】
それを必要とする対象におけるTh1/Th2均衡の調節用の組成物であって、免疫調節有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、
又はそれらの任意の組合せ
の少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む、上記組成物。
【請求項2】
CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させる方法であって、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、及び
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ若しくはそれらを含む任意の組成物
の少なくとも1つを前記対象に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項7】
治療有効量の、CAP1と特異的に相互作用し、結合する化合物又はそれを含む組成物を前記対象に投与することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量のCAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらを含む任意の組成物を前記対象に投与することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
それを必要とする対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるための組成物の調製における、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、並びに
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体又はそれらの任意の組合せ
のいずれか1つの使用。
【請求項11】
前記組成物が、CAP1と特異的に相互作用し、結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する化合物を有効成分として含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記化合物が、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を有効成分として含むことにより、前記対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節する、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、その発症を遅延させるのに使用される、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡を調節するアデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体。
【請求項15】
対象における免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、その発症を遅延させるのに使用される、CAP1を特異的に認識し、それに結合することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2間の均衡をTh2抗炎症応答の方に調節する抗CAP1抗体。
【請求項16】
それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物のスクリーニング方法であって、
a.CAP1又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体に結合する候補化合物を得るステップ、
b.抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節に基づいて、ステップ(a)で選択された化合物の効果を判定するステップ
を含み、それにより、前記候補化合物による抗炎症性又は前炎症性サイトカイン発現の調節が、前記対象におけるTh1/Th2均衡を調節する前記化合物の能力を示す、上記スクリーニング方法。
【請求項17】
前記免疫調節化合物が、
a.前記CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む混合物を準備するステップ、
b.前記混合物を前記結合に適する条件下で前記試験化合物と接触させるステップ、並びに
c.エンドポイント指示に対する試験化合物の作用を判定するステップ
により得られ、それにより、前記エンドポイントの調節が前記試験化合物への前記CAP1分子の結合を示す、請求項16に記載のスクリーニング方法。
【請求項18】
Th2リンパ球の活性化を調節する前記化合物の能力を判定することにより前記候補化合物を評価し、前記評価が
a.CAP1分子又はその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体を含む試験系を準備するステップ、
b.前記系を請求項16に記載の方法により得られた候補化合物と接触させるステップ、並びに
c.対照と比較してエンドポイント指示に対する前記候補化合物の作用を判定するステップ
を含み、前記作用が、それを必要とする対象におけるTリンパ球の活性化、及びそれによるTh1/Th2細胞均衡を調節する前記候補の能力を示す、請求項16に記載のスクリーニング方法。
【請求項19】
CAP1と相互作用することにより、それを必要とする対象におけるTh1/Th2細胞均衡を調節する免疫調節化合物であって、請求項16に記載のスクリーニング方法により同定される、上記免疫調節化合物。
【請求項20】
免疫関連障害を治療し、予防し、改善し、又はその発症を遅延させるのに有効な薬剤を調製するための、治療有効量の
a.アデニリルシクラーゼ結合タンパク質(CAP1)と相互作用する化合物、並びに
b.CAP1若しくはその任意の断片、変異体、誘導体、同族体及び突然変異体、又はそれらの任意の組合せ
の少なくとも1つを有効成分として含み、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を場合によってさらに含む医薬単位剤形。
【図1】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A−23B】
【図23C−23D】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図27E】
【図27F】
【図28】
【図29】
【図30−1】
【図30−2】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A−23B】
【図23C−23D】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図27E】
【図27F】
【図28】
【図29】
【図30−1】
【図30−2】
【図2】
【公表番号】特表2012−522039(P2012−522039A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502875(P2012−502875)
【出願日】平成22年3月21日(2010.3.21)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000231
【国際公開番号】WO2010/113148
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511235663)プロトエービー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月21日(2010.3.21)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000231
【国際公開番号】WO2010/113148
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511235663)プロトエービー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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