説明

アデノウイルスベクターの産生方法

本発明は、潅流システムおよび非常に高い細胞密度における感染を用いる組み換えアデノウイルス35の大量産生方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養およびアデノウイルス産生に関する。より詳細には、本発明は哺乳類細胞の培養、該細胞のアデノウイルス感染およびそれからのアデノウイルス粒子の産生用の改善した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えウイルスベクターを使用したDNAワクチン接種の分野における最近の開発は、臨床品質材料の大規模な製造のための必要性を生み出した。例えば結核およびマラリアの世界の難問と戦うに十分な量の組み換えアデノに基づくワクチンで途上国および後発発展途上国を支持することができるようにする方法が必要とされる。出生コホートの評価は、150,000,000を超える出生が途上国および後発発展途上国について2010〜2015に予想されることを示す。この出生コホートに基づいて、予想される年間需要のワクチンは、年間約1.5×1019ウイルス粒子(VP)に達成することができる(http://esa.un.org/unpp/index.asp?panel=2)。
【0003】
アデノウイルスの産生用のいくつかの方法を記載する。これら方法は、接着細胞培養をローラーボトル、細胞工場(Nunc社からのNunclonまたはCorning社からのCellStack)または細胞キューブ(Corning社)において使用する。接着細胞培養の産生方法は、アデノに基づくワクチンの世界的な需要を満たすことができない。従って、接着方法に用いる細胞は、懸濁培養に適している(例えば、HEK293およびPER.C6(登録商標)細胞株)。懸濁培養の使用で、産生方法の規模を大規模なバイオリアクターへ拡大することが可能である。アデノウイルス産生の懸濁細胞培養を、通常3から20Lの規模の間にて達成し、良好な規模拡大が最高100L(Kamen et al., 2004)および最高250L(Xie et al., 2003)として報告された。最高10,000Lまでの規模拡大が予期されることが実験で報告された(Xie et al., 2003)。
【0004】
しかしながら、10,000Lまでの規模拡大の主な不利な点は、10,000Lバイオリアクター設備を設計し、建設するために必要とされる高い設備投資(CAPEX)である。さらに、10,000L設備建設のCAPEX関与について、BSL2条件下、製品が良好かを知る前に認識しなければならない(IV段階以降)。10,000Lバイオリアクター施設のための総投資費用は、225.000.000euroから20.000.000euroの間と報告されている(Estape et al., 2006)。したがって、より小さい規模における調製、例えば1000L以下のバイオリアクターが、望ましい。
【0005】
現在既存の方法を用いると、1.5×1019VP/年の目標を達成するためには、年間1000L規模で150バッチを超えるものを生産する必要がある。従って、アデノウイルスワクチンの世界中の需要を、好ましくは非抑制的な費用にて満たすためには、アデノウイルス産生用のシステムを改良し、アデノウイルス粒子の収率を改善する必要性が存在する。
【0006】
アデノウイルス産生の最適化に直面する問題の一つは、いわゆる「細胞密度効果」である。バッチモード操作において、いくつかの参考文献がアデノウイルス産生のための感染における最適な細胞密度の存在を示唆する。最適条件は、0.5〜1×10細胞/mLの間にある(Maranga et al., 2005; Kamen et al., 2004)。バッチ式撹拌タンクバイオリアクター内におけるアデノウイルス(Ad5)産生について、細胞あたりのウイルス産生率が最高約0.9×10細胞/mLまで一定であるが、約1×10細胞/mLで急激に低下することを示した(Altaras et al., 2005)。2×10細胞/mLを超えると、感染性粒子は検出不可能であった。感染における細胞密度での特定産生低下と関連のあるブレークポイントは、培地に依存している。今まで市販の培地は、特定の産生を1×10細胞/mLを超える細胞密度で最適に維持しながら、ウイルス粒子の高収率を支持する可能性を示さなかった(Kamen et al., 2004)。この低下の理由は、依然知られていないが、ウイルス産生のための制限された栄養有効性またはウイルス産生を抑制する代謝物質の高濃度によることがありえる。
【0007】
グルコース、グルタミンおよびアミノ酸の添加のようなフェドバッチ操作は、最高2×10細胞/mLまでの細胞密度で感染を可能とした。しかしながら、高い細胞密度で達成された産生率は、1×10細胞/mLの細胞密度での感染で得れたものより比較的低かった(Kamen et al., 2004)。
【0008】
潅流処理において、細胞をバイオリアクターに中空繊維、スピンフィルターまたは音響隔離板によって保持する一方、培養培地をバイオリアクター中に潅流した。かかる処理において、100×10細胞/mLを超える細胞密度を時々達成することができる(例えば、Yallop et al., 2005)。
【0009】
感染潅流細胞は、中空繊維システムでの潅流中に早期の細胞消失を示した。これはウイルス感染のため一層高いせん断感度と関連し得る(Cortin et al., 2004)。より脆弱な感染細胞に対する管、中空繊維または蠕動ポンプにて誘導された流体力学のストレスが、たいがい前記現象の原因である。感染細胞が一層脆弱なため、潅流を感染相全体にわたって維持する場合、音響隔離板(Henry et al., 2004)が望ましいと特に示唆された。しかしながら、潅流モードで行った感染は、3×10細胞/mLまでの細胞密度に関し2体積/日の潅流割合でのみ維持することが可能である。6×10細胞/mLの細胞密度における感染は、特定の生産性で5倍の減少を導いた(Henry et al., 2004)。
【0010】
他のものにより報告された細胞密度効果にも関わらず、ある報告書(Yuk et al, 2004)は、ヒト腫瘍細胞の良好な潅流培養を腫瘍崩壊のアデノウイルスベクター用の産生基盤として記載した。該報告書は、交互接線流(ATF)技術を使用した高い細胞密度の潅流方法を記載した。感染における9×10HeLaS3細胞/mLの平均生細胞密度では、約4×1011VP/mLの平均ウイルス滴定濃度が観測された。該報告書に使用された腫瘍細胞は産生細胞として望ましくない、その理由は産生アデノウイルス粒子をヒトに投与するべき場合に、腫瘍細胞の使用が安全面リスクをもたらし得るからである。該報告書における組み換えアデノウイルスは、Ad5に基づくものである。かかるアデノウイルスは、ワクチンとしての使用の可能性を制限し、その理由はヒト集団の大多数がAd5に対する既存の中和抗体を含み、従って他の抗原型からの組み換えアデノウイルスがワクチンとしての使用に一層適しているからである(例えば、 国際公開00/70071号参照)。特に、サブグループBからの組み換えアデノウイルス、例えばAd35がワクチンとしての使用に特に有利である(国際公開00/70071号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
限られた情報が、例え存在したとしても、Ad5以外の抗原型からの組み換えアデノウイルスの大規模な産生、特に有利な抗原型35に利用可能である。Ad35およびAd5の間のいくつかの相違が、その陰イオン交換を用いる精製に関して記載されている(国際公開2005/080556号)。異なる抗原型の組み換えアデノウイルスの若干の異なる物理学的性質が、産生処理または特定の条件下で相違を引き起こす場合がある。かかる潜在的相違が、産業規模で特に重要で、小規模で外見上小さい相違さえもが一年間の世界的な要求の産生に想定される規模で大きな経済結果を有する可能性がある。例えば、Ad5に対して報告された細胞密度効果が他の抗原型に対し類似するか否かはこれまで知られていなかった。従って、rAd35ワクチンの世界的な需要を満たすため、組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)産生用のシステムを改良する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明者らは、産生細胞を潅流培地にて10×10生存細胞/mLを超える密度で感染させた際に、組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)の収率がさらに上昇したことを見出した。対照的に、産生細胞を20×10または30×10生存細胞/mLで感染する場合、組み換えアデノウイルス抗原型5(rAd5)の収率は10×10生存細胞/mLでの感染と比較して低かった。従って、rAd35は、使用した条件下産生細胞中でrAd5と異なって増殖する。さらに、本発明者らは、他の抗原型が再度異なって挙動し、最適な結果を得るためには特定のアデノウイルス抗原型に対する処理を各抗原型に対して微調整しなければならないことを示唆することを見出した。本発明は、rAd35産生用の最適なシステムを、収率、得られたrAd35の品質および下流処理用採取の取り扱いの容易さに関して提供する。
【0013】
本発明は、組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)の産生方法を提供し、該方法は、a)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、b)前記細胞をrAd35で約10×10生存細胞/mLから16×10生存細胞/mLの間の密度において感染させる工程と、c)感染細胞を潅流システムで更に培養して前記rAd35を増殖する工程と、d)前記rA35を採取する工程とを備える。
【0014】
特定の実施形態においては、前記工程b)における細胞をrAd35で約10×10から14×10生存細胞/mLの間の密度において感染させる。
【0015】
特定の好ましい実施形態において、前記工程c)における潅流システムが交互接線流(ATF)潅流システムである。他の好ましい実施形態において、前記工程a)における潅流システムが交互接線流(ATF)潅流システムである。好ましい実施形態において、前記工程a)およびc)の双方における潅流システムが交互接線流(ATF)潅流システムである。
【0016】
特定の実施形態において、本発明の方法は、e)rAd35を精製する工程をさらに備える。さらなる実施形態において、該方法は、f)精製されたrAd35を含有する医薬品組成物を調製する工程をさらに備える。
【0017】
特定の実施形態において、前記組み換えアデノウイルスが少なくともE1領域の一部を欠如し、異種核酸を含有する。
【0018】
好ましい実施形態において、産生されたrAd35の物理的粒子に対する感染性粒子(VP/IU)の比率は、30:1未満、好ましくは20:1未満である。
【0019】
また、本発明の一態様は、少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを産生する方法を提供し、該方法が、a)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、b)前記細胞をrAd35で約10×10生存細胞/mLから16×10生存細胞/mLの間の密度において感染させる工程と、c)感染細胞を潅流システムでさらに培養して前記rAd35を増殖させ、これによりrAd35ウイルス粒子濃度が少なくとも1×1012VP/mLを達成する工程と、d)前記rA35を採取する工程とを備える。
【0020】
本発明はまた、培養培地、産生細胞および少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを含む2Lから1000Lの間の作業容積を有するバイオリアクターを提供する。特定の実施形態において、バイオリアクターは50Lから500Lの間の作業容積を有する。好ましい実施形態において、バイオリアクターをATF潅流システムに接続する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】振盪容器におけるrAd5を用いた高細胞密度での感染を示すグラフである。
【図2】振盪容器および2LのバイオリアクターにおけるrAd35.TB−Sを用いた高細胞密度での感染を示すグラフである。
【図3】振盪容器におけるrAd35.eGFPを用いた高細胞密度での感染を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、大量の組み換えアデノウイルス35の産生用の新規方法を開示する。この最適化方法は、培地を高細胞密度で細胞あたりの高ウイルス産生率の保存とともに感染させる能力に依存する。これによって、高ウイルス濃度を有する採取ウイルス溶液を単一のバイオリアクターで得る方法を提供する。本発明の方法のrAd35に対する典型的な収率は、約2〜3×1011VP/mLである。実際、本発明の方法を用いて、非常に大量、例えば少なくとも約5×1011VP/mL、好ましくは少なくとも約6,7,8または9×1011VP/mLの量のrAd35粒子を産生し得ると考えられる。好ましくは少なくとも1×1012VP/mL、より好ましくは少なくとも1.5×1012VP/mL、さらにより好ましくは少なくとも2×1012VP/mL、例えば約1×1012から5×1012VP/mLの間のrAd35を産生する。通常、該方法は約1×1013VP/mLを超えるrAd35を産生しない。本発明による方法で得ることができる収率は、1000Lを超える作業容積を有するバイオリアクター施設を必要とすることなく所望量の特定のrAd35系ワクチンを世界中で調製するのにおそらく十分なものである。
【0023】
本発明は、組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)の産生方法を提供し、該方法がa)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、b)前記細胞をrAd35で少なくとも10×10生存細胞/mLの密度において感染させる工程と、c)感染細胞を潅流システムでさらに培養して前記rAd35を増殖させる工程と、d)前記rA35を採取する工程とを備える。
【0024】
特定の実施形態において、前記工程(b)における細胞をrAd35で約10×10から50×10生存細胞/mLの間の密度にて感染させる。さらなる実施形態において、前記工程(b)における細胞をrAd35で約10×10から20×10生存細胞/mLの間の密度にて感染させる。またさらに有利な実施形態において、前記工程b)における細胞をrAd35で約10×10から16×10生存細胞/mLの間、例えば約10,11,12,13,14または15×10生存細胞/mLの密度にて感染させる。
【0025】
他の実施形態において、前記工程(b)における細胞をrAd35で約20×10から50×10生存細胞/mLの間の密度にて感染させる。
【0026】
産生細胞および組み換えアデノウイルス
本発明に係る産生細胞(しばしば従来技術および本明細書にて「パッケージング細胞」、「補体細胞」または「宿主細胞」と称する)は、所望のアデノウイルスを増殖し得るあらゆる産生細胞とすることができる。例えば、組み換えアデノウイルスベクターの増殖が、アデノウイルス欠如を補完する産生細胞にて行われる。かかる産生細胞は、そのゲノムに少なくともアデノウイルスE1配列を有するのが好ましく、このことにより組み換えアデノウイルスをE1領域における欠失によって補完することができる。さらにアデノウイルスは、Adゲノムに重要でないE3領域に欠失を有する場合があり、従ってかかる欠失を補完する必要がない。E1によって不死化されたヒト網膜細胞のような任意のE1補完産生細胞、例えば911またはPER.C6細胞(米国特許第5,994,128号参照)、E1形質転換された羊膜細胞(欧州特許第1230354号参照)、E1形質転換されたA549細胞(例えば、国際公開第98/39411号、米国特許第5,891,690号参照)、GH329:HeLa(Gao et al, 2000, Human Gene Therapy 11: 213-219)、293等を用いることができる。特定の実施形態において、産生細胞は、例えばHEK293細胞、PER.C6細胞、911細胞、IT293SF細胞等である。好ましくは、PER.C6細胞(ECACC寄託96022940;米国特許第5,994,12号参照)またはそれに由来する細胞を産生細胞として使用する。
【0027】
ここでは、組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)が高細胞密度感染を適用する方法においてrAd5と比較してこれまで知られていなく、有利な物性を有することを示す。本発明者らはまた、さらに他の抗原型が同様の方法で再度異なって挙動し、組み換えアデノウイルスの大規模な産生用の最適な条件を異なる抗原型のために確立すべきことを示唆することが分った。それゆえに、特定の好ましい実施形態において、本発明のアデノウイルスはrAd35である。
【0028】
アデノウイルスベクターがE1領域、例えばウイルス複製に必要とされるアデノウイルスゲノムのE1a領域および/またはE1b領域の少なくとも1つの重要な遺伝子機能にて欠如していることが好ましい。特定の実施形態において、ベクターがE1領域の少なくとも1つの重要な遺伝子機能および非必須E3領域の少なくとも一部において欠如している。アデノウイルスベクターが、「多重欠如」しているとすることができ、アデノウイルスベクターがアデノウイルスゲノムの2つ以上の領域のおのおのにて1つ以上の重要な遺伝子機能に欠如していることを意味する。例えば、上記E1欠失またはE1、E3欠失アデノウイルスベクターが、E4領域の少なくとも1つの重要な遺伝子および/またはE2領域(例えば、E2A領域および/またはE2B領域)の少なくとも1つの重要な遺伝子にてさらに欠失している可能性がある。全E4領域の欠失アデノウイルスベクターは、より低い宿主免疫反応を誘発することができる。適当なアデノウイルスベクターの例としては、(a)E1領域の全部または一部およびE2領域の全部または一部;(b)E1領域の全部または一部、E2領域の全部または一部およびE3領域の全部または一部;(c)E1領域の全部または一部、E2領域の全部または一部、E3領域の全部または一部およびE4領域の全部または一部;(d)E1a領域の少なくとも一部、E2b領域の少なくとも一部、E2a領域の少なくとも一部、E3領域の少なくとも一部;(e)E1領域の少なくとも一部、E3領域の少なくとも一部、E4領域の少なくとも一部;(f)全ての重要なアデノウイルス遺伝子産物(例えば、ITRおよびパッケージングシグナルのみを含むアデノウイルス単位複製配列)を欠如するアデノウイルスベクターが挙げられる。当業者に知られているように、アデノウイルスゲノムからの重要な領域の欠失の場合、前記領域によってコード化された機能がトランス、好ましくは産生細胞にて提供されるべきであり、即ちE1、E2および/またはE4領域の一部または全体をアデノウイルスから削除したとき、これらが産生細胞にて、例えばゲノム内に組み込まれているか、若しくはいわゆるヘルパーアデノウイルスまたはヘルパープラスミドの形状にて存在すべきである。
【0029】
複写欠如アデノウイルスベクターは、アデノウイルスまたはキメラアデノウイルスのあらゆる種、菌株、サブタイプまたは種、菌株、サブタイプの混合物を例えば特定の所望の細胞タイプを感染させる能力を有するアデノウイルスベクター提供し得るベクターDNAの給源(例えば、国際公開第96/26281号、国際公開第00/03029号参照)として用いることにより生成することができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、rAd35をアデノウイルスとして使用する。
【0031】
さらなる実施形態において、本発明のアデノウイルスはE1領域、例えばE1Aおよび/またはE1Bコード化配列の少なくとも一部を欠如し、また異種核酸をさらに含有する。適当な異種核酸は当業者に周知で、例えばrAdベクターをワクチン接種の目的のために用いる際に免疫反応が望ましいポリペプチド、例えばマラリア(例えば、国際公開第2004/055187号参照)、HIV、結核(国際公開第2006/053871号参照)、特定のウイルス等の当業者の周知のすべてのものに対して免疫反応を生成するのに適したトランス遺伝子をコード化するオープン・リーディング・フレーム、例えばトランス遺伝子オープン・リーディング・フレームを含むことができる。実際、異種核酸の性質は、本発明に重要でなく、あらゆる異種核酸とすることができ、それ故ここでさらなる詳述を必要としない。
【0032】
当業者は、異なる抗原型のアデノウイルスベクターを特定の宿主細胞にて増殖するのを、例えば米国特許第6,492,169号または国際公開第03/104467号およびそれに関する参考文献に記載されたような方法を用いて可能になるのを認識するだろう。例えば、E1欠如rAd35の増殖に関して、Ad35のE1B−55Kを発現する特定の産生細胞を、例えば当業者に知られているようなAd5のE1AおよびE1Bを発現するPER.C6またはHEK293細胞(米国特許第6,492,169号参照)のような既存の産生細胞に基づいて作成することができる。或いはまたかつ好ましくは、既存の(Ad5−)補体細胞株、例えばPER.C6またはHEK293を、例えば本明細書で参照して援用する国際公開第03/104467号に多岐に渡って開示されたように、細胞の変性なしにE1欠如rAd35の増殖用にAd5のE4−orf6コード化配列のrAd35ベクターへの包含によって使用することができる。従って、あらゆる抗原型のアデノウイルスベクターの増殖を産生細胞上で当業者に周知の手法および方法を用いて行うことができる。アデノウイルスベクター、その作成方法および増幅方法が、当業界で周知であり、例えば米国特許第5,559,099号、第5,837,511号、第5,846,782号、第5,851,806号、第5,994,106号、第5,994,128号、第5,965,541号、第5,981,225号、第6,040,174号、第6,020,191号および第6,113,913号、Thomas Shenkの“Adenoviridae and their Replication”, M. S. Horwitzの“Adenoviruses”、 B. N. Fields et al.の 第3版, Raven Press, Ltd., New York (1996)のVirologyにおける67章および68章ならびに本明細書に記載の他の参考文献に記載されている。
【0033】
アデノウイルスベクターの作成は、当業界でよく理解されており、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989), Watson et al., Recombinant DNA, 2d ed., Scientific American Books (1992), Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, NY (1995)および本明細書に記載の他の参考文献に記載されているような標準の分子生物学技術の使用を伴う。
【0034】
本発明に係る産生細胞を培養して、細胞およびウイルス数および/またはウイルス滴定濃度を増大する。細胞の培養は、本発明に係る興味あるウイルスを代謝および/または成長および/または分割および/または産生することを可能とするために行う。これは当業者に既知であるような方法によって達成することができ、栄養を細胞に例えば適切な培養培地において付与することを含むが、これに限定されない。異なる培養培地を用いることができ、使用する細胞および環境に最適な培養培地を選択することは、当業者の典型的業務の一部である。従って、本発明の目的に適した培養培地が、当業者に周知で、通常商業用供給源から多量に得るか、または標準のプロトコルに従って特注することができる。培養を、例えばディッシュ、ローラーボトルまたはバイオリアクター内にてバッチ、フェドバッチ、連続システム等を用いて行うことができる。ウイルスの大規模(連続)な産生を細胞培養によって達成するためには、懸濁液中で成長することができる細胞を有することが技術的に好ましく、また動物またはヒト由来の血清若しくは動物またはヒト由来の血清成分の不在下で培養することができる細胞を有することが好ましい。細胞を培養するための適切な条件が既知である(例えばTissue Culture, Academic Press, Kruse and Paterson, editors (1973)およびR.I. Freshney, Culture of animal cells: A manual of basic technique, fourth edition (Wiley-Liss Inc., 2000, ISBN 0-471-34889-9を参照)。
【0035】
細胞培養システムおよび潅流システム
バイオリアクターは、懸濁液依存動物細胞培養から大規模な生物学的産物の産生用に広範囲にて使用されている。本発明によれば、アデノウイルス増殖に用いるバイオリアクターは、例えば撹拌タンク、処理可能なバイオリアクター、エアリフトリアクター等とすることができる。
【0036】
本発明の特定の実施形態によれば、バイオリアクターは撹拌タンクである。
【0037】
本発明の特定の実施形態によれば、バイオリアクターは約2Lおよび2000L間の作業容積を有し、本明細書に開示の上下の制限値の間を含むことを意味し、即ち2Lが最小の作業容積であり、2000Lが最大の作業容積である。これら値間のあらゆる個々の値の作業容積を有するバイオリアクターが、本発明に含まれることを意味する。ここで用いる「約」という数値の用語は、値±10%を意味する。特定の好ましい実施形態において、作業容積は10Lから1000Lの間、好ましくは20Lから800Lの間、例えば30Lから600Lの間、50Lから500Lの間、約250Lまたは約500Lである。本発明に係る作業容積を有するバイオリアクターの使用の利点は、非常に大きい容量のバイオリアクターの使用、即ち2000Lを超える作業容積、好ましくは1000Lを有するものの使用を回避し、従ってかかる非常に大きなバイオリアクターを建設するための莫大な資本および時間投資を必要としないことである。さらに、本発明の方法の使用を行った際に、産生物、即ちrAdをより一層濃縮し、rAdのバイオリアクターからの採取および/またはさらなる下流の処理における時間および費用を節約する。作業容積は、バイオリアクター内の有効な培養容積である。撹拌されたタンクは、通常1:1から3:1の高さ対直径の比率を有する。培養物を、羽根ディスクまたは船用プロペラパターンに基づく一つ以上の撹拌器で通常混合する。羽根より少ないせん断力を付与する撹拌器システムを記載する。撹拌を磁気的に連結した駆動装置により直接または間接的のいずれかで駆動することができる。間接的な駆動装置は、撹拌器シャフトに対する封止を介して微生物汚染の危険性を減少する。前記バイオリアクターの計装および制御は、撹拌、温度、溶存酸素、pHおよびバイオマスの制御(制限することなく)を含む。細胞培養培地の撹拌、pH、温度、溶存酸素濃度は、原理上重要でなく、選択した細胞の種類に依存する。好ましくは、撹拌、pH、温度、溶存酸素濃度を、かかる細胞の成長に最適であるように選択する。当業者は、培養に最適な撹拌、pH、温度、溶存酸素濃度を見つける方法を知っている。通常、最適な撹拌は50から300rpm、例えば100〜250rpmであり、最適なpHは6.7から7.7の間であり、最適な温度は30から39℃の間、例えば34,35,36,37または38℃である。
【0038】
最大規模の懸濁培養は、操作および拡大するのに最も容易なため、バッチまたはフェドバッチ処理として操作される。しかしながら、潅流原理に基づく連続処理がより一般的になっている。本発明によれば、産生細胞を潅流システムにて培養する。細胞の潅流培養は、技術的に従来の意味を有し、即ち培養中細胞を分離前より低い細胞密度を有する液体の流出と、細胞培養培地の流入とが存在する分離装置によって保持されることを意味する。潅流培養の使用は、細胞を高密度(例えば10〜50×10生存細胞/mL)で成長させる課題に応じたものである。密度を2〜4×10生存細胞/mLを超えて増大するために、栄養欠損を補い、有毒産生物を除くように培地を新鮮な供給物と常にまたは継続的に入れ替える。潅流はまた、非常に優れた培養環境(pH、dO、栄養濃度等)の制御を可能とする。培養による新鮮な培地の潅流は、細胞を様々な分離装置(例えば、細かいメッシュ回転フィルター、中空繊維または平面プレート膜濾過器、沈降管)で保持することによって達成することができる。本発明方法の好ましい実施形態において、分離装置は中空繊維を含有するフィルターモジュールである。
【0039】
「中空繊維」という用語は、管状膜を意味する。管の内径は、好ましくは0.3から6.0mmの間、より好ましくは0.5から3.0mmの間、最も好ましくは0.5から2.0mmの間である。特定の実施形態において、膜のメッシュサイズ(孔サイズ)は、メッシュ中の孔のサイズが細胞の直径に近接して細胞の高い保持力を確実にする一方、細胞破片がフィルターを通過することができるように選択される。他の実施形態において、メッシュサイズは、細胞の直径より非常に小さいものである。好ましくは、メッシュサイズが0.1〜30μmの間、例えば0.1から3μm、約0.2μmである。中空繊維を含有するフィルターモジュールが、例えばGeneral Electric(旧Amersham)社から市販されている。相当な量のアデノウイルス粒子は、ウイルス粒子が適用されたメッシュサイズより小さいにも関わらず、本発明の処理中に流出培養培地にて観測されなかった。
【0040】
特定の代謝物質の望ましいレベルを維持し、培養培地における不純物を取り除くことによって減少するために、潅流を用いる。潅流割合を、様々な方法、例えば潅流期間中に維持されるべき置換容積/単位時間、または特定の代謝物質のレベルの観点から測定することができる。一般に、潅流を培養中常に実施せず、所要に応じて培養中時々のみに通常行う場合である。例えば、潅流はグルコースのような特定の培地成分が消耗し始めた後取り替える必要があるまで通常開始されない。
【0041】
いくつかの潅流システムが当業界で既知であり、原則として本発明の方法に適している。「潅流システム」という用語は、分離装置に接続したバイオリアクターの組み合わせを意味する。分離装置は、バイオリアクターに組み込まれている(例えば、微細なメッシュスピンフィルター)か、またはバイオリアクターの外側に残存する(例えば中空繊維)かのいずれかとすることができる。どちらにおいても、上記のように、分離装置は細胞の塊をリアクターから流失することを防止し、培地のリフレッシュメントを可能とする。
【0042】
本発明は、パイロット実験をいくつかの潅流システムで行ない、交互接線流(ATF)潅流システムが最高の結果を与えた。従って、本発明の好ましい実施形態においては、バイオリアクターを(接続した)ATF潅流システム(例えば、ATF System, Refine Technology, Co., East Hanover, NJ)で操作する。かかるシステムは、中空繊維ハウジングの一端に搭載したダイアフラムポンプからなる。ハウジングの他端を共同組立物に取り付け、次に利用可能なポートを介してバイオリアクターに接続する。ダイアフラムポンプおよび制御システムは、中空繊維を介して交互接線流を生成するのに役立つ。これは中空繊維の膜表面と同じ方向(即ち、接線方向)への一方流で、往復しているものがあり、また前記フィルター表面に実質的に垂直の方向への他の流れがあることを意味する。接線方向の流れを、当業者に既知で、例えば米国特許第6,544,424号明細書に記載されているような方法に従って達成することができる。
【0043】
ATF潅流システムの操作が開示されている(Furey, 2002)。ATFシステムは、細胞を長時間培養し、高い細胞密度を防止するフィルターを有することなく達成することを可能とする。実際、100×10生存細胞/mLを超える非常に高い細胞密度を、ATF潅流システムの使用、例えばPER.C6細胞で得ることができる(Yallopなどを参照)。しかしながら、初期の報告では、潅流システム内のPER.C6細胞を完全に異なる目的のために使用し、アデノウイルスで感染していなかった。
【0044】
ATFシステムのさらなる利点は、システムが低い剪断応力を生成することである。エネルギーを液体表面に加えて、低い剪断層流を生成する。これは、特に細胞をアデノウイルスで感染させる本発明に有利である。潅流処理の間、細胞密度の損失がないATFシステムでの後感染が見出され、早期細胞損失が観測されないが、むしろ安定した細胞成長を観測した。細胞が完全な状態で残存するため、ウイルス増殖のための最適な条件を確立する。
【0045】
従って、ATFシステムでの潅流は、非常に高い細胞密度を得ることを可能とするため、予備培養相(本発明に係る工程a)中に有利であり、細胞がその後のアデノウイルスでの感染に良好な状態であり、高収率を得るのに寄与する。前記高い細胞密度を達成するためには、特定の実施形態において、培養培地を産生細胞の細胞成長(工程a)中の時間の一部の間少なくとも部分的な潅流する。特定の実施形態において、一旦約2×10生存細胞/mLから8×10生存細胞/mLの細胞密度を達成してから潅流を開始する。
【0046】
さらに、非常に高いアデノウイルス収率を感染細胞から得ることを可能とするため、ATFシステムでの潅流が感染段階(本発明に係る工程c)後に有利である。従って、好ましい実施形態において、本発明の方法の予備培養段階および後感染段階の双方がATF潅流システムを使用する。ATF中に用いる培養培地の容積を、当業者によって容易に確立し、調整することができるので、細胞の必要性によって変えることができ、通常0.5〜5容器容積/日(vol/d)であり、例えば1〜3vol/d、約2vol/dである。特定の有利な実施形態において、リフレッシュメント割合は1から2vol/dの間であり、これは得られたrAd35の収率および品質に関して非常に優れた結果を与える一方、同時に培地の消耗およびそれに伴う関連費用が依然として適切であることを本発明者らはここに示す。
【0047】
最終的に、ATF潅流システムは計測可能なシステムである。異なるサイズのATFユニットが、入手可能である。空気流を用いて、培養物を中空繊維膜を介して駆動させるため、極めて早く、低い剪断接線方向の流速を発生させて、R&Dからの製造規模を1000Lまで拡大する技術を使用することを可能とする(Furey, 2002)。おそらく、さらなる開発がATF潅流システムのさらなる規模拡大を可能とする。
【0048】
Yukらは、腫瘍細胞株を用いてrAd5を産生し、その中で完全な処理を産生バイオリアクター内にて約8〜10日かかる単一のバイオリアクターにて行う。本発明の特定の実施形態においては、2つの異なるバイオリアクターを用い、1つは予備培養(工程a;予備培養バイオリアクター)のため、もう1つは細胞の感染(工程b)および後感染培養(工程c;産生バイオリアクター)のためのものである。これら工程用の2つの異なったバイオリアクターの使用の利点は、約1.5〜5日、通常約2〜3日の産生バイオリアクター中での培養のみを必要とし、従って1年あたりより多くの操作を行うことができることである。感染中大量の新鮮な培養培地の添加は、産生バイオリアクターにおける感染中に必要な培養培地の体積を減少するためにさらに有利である。別の実施形態において、本発明の全工程a〜cを単一つのバイオリアクターにて行うことも可能である。
【0049】
感染
本発明の方法において、産生細胞を組み換えアデノウイルスで感染させる。通常、ウイルスを適切な産生細胞へ最適な条件下で曝して、ウイルスの取り込みを可能とする。最適条件は、細胞の種類および選択したアデノウイルスの種類に依存する。当業者は、最適な条件、例えば撹拌、pH、温度、溶存酸素(dOまたはDO)、感染の多様性(MOI)を見つける方法を知っている。通常、最適な撹拌は、約50から300rpmの間、典型的に約100〜200、例えば約150であり、典型的なDOは20〜60%、例えば40%であり、最適なpHは6.7から7.7であり、最適な温度は30から39℃、例えば34〜37℃、最適なMOIは5から1000の間、例えば約50〜300である。一般に、アデノウイルスは産生細胞を自然に感染させ、産生細胞をrAd粒子と接触させることは、細胞の感染に十分である。通常、アデノウイルスの播種株を培養物に添加して感染を開始し、その後アデノウイルスが産生細胞にて増殖する。これは当業者にとって全て定型的な方法である。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、潅流を感染前に止め、1から20時間の間の後、例えば3〜15時間、5時間後に後感染を再度始めた。この遅延は、ウイルス粒子が細胞に侵入し、ウイルス粒子がシステム外へ流出されるのを防止することを可能にする。潅流割合、後感染は、潅流によって維持されるグルコースレベルに関して規定される。例えば、本発明において、培地中のグルコース濃度を約2mmol/Lから20mmol/Lの間、典型的に約5から10mmol/Lの間の濃度で通常維持する。
【0051】
バイオリアクターをrAd35で高い細胞密度、例えば10×10生存細胞/mLを超えるものに、細胞あたり高ウイルス産生の維持と共に感染させることが有利に可能である。特定の実施形態において、特定の産生率が約0.5×10から1.5×10VP/細胞で残存する。
【0052】
さらに本発明において、感染前の細胞培養の生存率は、75%を超えて残存する。培養物における細胞総量の少なくとも75%が感染時に生存していることを意味する。特定の実施形態において、感染時の細胞培養物の生存率は、少なくとも80%、さらなる実施形態において、少なくとも85%である。生存率を、当業者に使用される定型の方法、例えばトリパンブルー色素排除、Casy細胞数等を用いて測定することができる。
【0053】
特定の実施形態において、感染時の細胞密度は約10×10から50×10生存細胞/mLの間、例えば約10×10から20×10生存細胞/mLの間、約10×10から15×10生存細胞/mLの間、約10×10から14×10生存細胞/mLの間、約12〜13×10生存細胞/mLである。これら細胞密度は、細胞破片および宿主細胞DNAの制限された蓄積を有する高いウイルス産生を可能とし、これら実施形態の利点をアデノウイルス採取の下流処理に与える。したがって、本発明はrAd35産生用の最適化方法を提供し、多数の上質なrAd35粒子を得ると同時に、下流処理目的のために依然として対処可能である採取された成分を提供する。
【0054】
ここに開示した他の実施形態において、感染時の細胞密度は約15×10から50×10生存細胞/mLの間、例えば約17×10から45×10生存細胞/mLの間、約20×10から40×10生存細胞/mLの間、25×10から35×10生存細胞/mLの間、約30×10生存細胞/mLである。これら細胞密度における感染は、高濃度の組み換えアデノウイルス、特にrAd35を産生し、これまで開示されたrAd35の収率を超えることが可能である。本発明において初めて示すように、高細胞密度(約10×10生存細胞/mL)におけるrAd5感染とは対照的に、約10×10生存細胞/mLを超える密度でのrAd35による感染は、潅流システムを有する懸濁液中の産生細胞を用いて感染時の細胞密度を少なくとも30×10生存細胞/mLまで増大させたrAd35の容積測定生産率を依然として上昇した。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを産生するための方法を提供する。
【0056】
本発明の方法は、rAd35の回収をヒトへ投与すべきアデノウイルスの重要なパラメータである30:1未満の物理的粒子対感染性粒子の比率で可能とする。これはウイルス粒子(VP)/感染単位(IU)比率として、例えばQPA分析を用いて測定することができる(Wang et al, 2005)。より低い比率が有利である。その理由は、かかる場合により少ないウイルス粒子を投与して同じ数の細胞を感染させる必要があるからである。現在のFDA規制は、30:1未満のVP/IU比率を必要とするため、ここに記載した本発明の方法は、この特定の必要条件を満たす大量の数のrAd35を調製するのに適している。Yukら(2004)は、ここに開示した数より低い絶対数のウイルス粒子を報告し、さらにYukら(2004)に開示された試料のVP/IU比率が、約100(Yuk et al, 2004の図2A/2B)である。対照的に、本発明者らはより高い絶対数の収率および20:1未満の著しく優れたVP/IU比率を報告する。従って、特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、20:1未満、例えば約20:1から約5:1のVP/IU比率を有するrAd35のバッチを提供する。
【0057】
細胞採取および溶解の方法
アデノウイルスの感染後、ウイルスは細胞内にて複製し、その結果増幅される。アデノウイルス感染は、最終的に感染細胞の溶解をもたらす。従って、アデノウイルス溶解特性は、ウイルス産生の2つの異なるモードを可能とする。第一モードは、細胞溶解前にウイルスを採取し、外部因子を用いて細胞を溶解することである。第二モードは、産生細胞による(ほぼ)完全な細胞溶解後にウイルス上清を採取することである(例えば、外部因子による宿主細胞の溶解なしにアデノウイルスを採取することを記載した米国特許第6,485,958号明細書を参照)。後者のモードに関して、完全な細胞溶解、そのためウイルスの高い収率を達成するためには、より長い培養時間を必要とする。さらに、宿主細胞含有量の培地への段階的な流出は、得られたウイルスの質および収率に有害である可能性がある。そのため、本発明によれば、外部因子を使用して、アデノウイルス採取用の細胞を積極的に溶解することが好ましい。
【0058】
活性な細胞溶解に用いる方法が、当業者に既知で、例えば国際公開第98/22588号、p.28〜35に記載されている。この点に関する有用な方法は、例えば凍結融解、固体剪断、高張および/または低浸透圧溶解、液体剪断、超音波処理、高圧押出、界面活性剤溶解、ならびに上記組み合わせなどである。本発明の一実施形態において、細胞を少なくとも1つの洗浄剤を使用して溶解する。溶解用の洗浄剤の使用は、それが容易な方法であり、また容易に規模の調製をし得る利点を有する。
【0059】
使用し得る洗浄剤、およびその使用方法が、当業者に一般的に知られている。いくつかの例は、例えば国際公開第98/22588号、p.29〜33に記載されている。ここで用いるような洗浄剤としては、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性および非イオン性洗浄剤を挙げることができる。洗浄剤の濃度を、例えば約0.1%〜5%(w/w)の範囲内で変えることができるのは、当業者に明白である。一実施形態において、使用する洗浄剤は、トリトンX−100である。
【0060】
ヌクレアーゼを用いて、汚染物、即ち主に産生細胞、核酸を取り除くことができる。本発明で用いるのに適したヌクレアーゼの例としては、当業界で通常用いるBenzonase(登録商標)、Pulmozym(登録商標)、または任意の他のDNaseおよび/またはRNaseが挙げられる。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼはBenzonase(登録商標)であり、特定のヌクレオチド間の内部のリン酸ジエステル結合を加水分解することによって核酸を急速に加水分解し、このことにより細胞溶解物の粘度を減少するものである。Benzonase(登録商標)は、Merck KGaA社から市販されている(コードW214950)。用いるヌクレアーゼの濃度は、好ましくは1〜100単位/mLの範囲内である。
【0061】
産生細胞の培養物からアデノウイルスを採取する方法が、国際公開第2005/080556号に広範囲に開示されている。
【0062】
本発明によれば、採取時間は感染後約24から120時間の間、例えば感染後約48から96時間、感染後72時間である。
【0063】
精製方法
特定の実施形態において、採取されたアデノウイルスをさらに精製する。アデノウイルスの精製を、例えばここに参考して援用した国際公開第05/080556号に記載されたような浄化、限外濾過、膜分離精製またはクロマトグラフィでの分離を含むいくつかの工程にて行うことができる。浄化は、細胞破片および他の不純物を細胞溶解物から取り除く濾過工程によって行うことができる。限外濾過を用いて、ウイルス溶液を濃縮する。限外濾過器を用いる膜分離精製または緩衝剤交換は、塩、糖等の除去および交換のための方法である。当業者は、それぞれの精製工程の最適条件を見つける方法を知っている。また、ここに参照して援用した国際公開第98/22588号には、アデノウイルスベクターの産生および精製方法を開示する。該方法は、宿主細胞を成長させ、宿主細胞をアデノウイルスで感染し、宿主細胞を採取および溶解し、粗溶解物を濃縮し、粗溶解物の緩衝剤との交換、溶解物をヌクレアーゼで処理し、さらにクロマトグラフィを用いてウイルスを精製することを含む。
【0064】
精製は、例えば国際公開第98/22588号、p.59〜61に記載されたような密度勾配遠心分離によって達成することができる。
【0065】
しかしながら好ましくは、精製は例えば国際公開第98/225588号、p.61〜70に記載されたような少なくとも一つのクロマトグラフィ工程を使用する。アデノウイルスのさらなる精製のための多くの方法が開示され、クロマトグラフィ工程が本方法に含まれる。当業者は、これらの方法を認識し、クロマトグラフィ工程を用いて処理を最適化する正確な方法を多様にすることができる。
【0066】
例えば、アデノウイルスをアニオン交換クロマトグラフィ工程によって精製することが可能であり、例えば国際公開第05/080556号を参照。アデノウイルス精製のためには、少なくとも一つのアニオン交換クロマトグラフィ工程を使用することが好ましい。アニオン交換クロマトグラフィ工程後、ウイルスは十分に純粋である。しかしながら、特定の実施形態においては、サイズ除外クロマトグラフィ工程を行って、本方法のロバスト性を増大させる。この工程は、アニオン交換クロマトグラフィ工程の前後とすることができる。明らかに、他の精製工程を適当にアニオン交換クロマトグラフィ工程と組み合わせることもできる。
【0067】
アニオン交換クロマトグラフィのアデノウイルス精製への使用が広範囲に記載され、従って該態様が当業者の達成範囲内である。多くの異なるクロマトグラフィマトリックスをアデノウイルスの精製のために用い、また適切であり、当業者は、例えば後述する技術により導かれたウイルス精製用の最適なアニオン交換材料を容易に見つけることができる。
【0068】
米国特許第5,837,520号(またHuyghe et al., 1995, Human Gene Therapy 6: 1403-1416を参照)には、宿主細胞溶解物をヌクレアーゼで処理し、アニオン交換および金属イオン親和性クロマトグラフィを続けるアデノウイルスの精製方法が記載されている。
【0069】
米国特許第6,485,958号には、組み換えアデノウイルス精製のための強いアニオン交換クロマトグラフィの使用が記載されている。
【0070】
アニオン交換クロマトグラフィを流動層カラムと共にアデノウイルス粒子の精製のために用い、国際公開第00/50573号を参照。さらに、アデノウイルス粒子の精製のための拡張された層アニオン交換クロマトグラフィおよびアニオン交換クロマトグラフィ用の特定のクロマトグラフィ樹脂が米国特許第6,586,226号に記載されている。
【0071】
アニオン交換カラムに加えて、アニオン交換膜クロマトグラフィ産物、例えばPall社(例えば、Mustang(商標)シリーズ)およびSartorius社(Sartobindシリーズ)により生産されたものが適している。かかるフィルターの使用およびそのアデノウイルス精製における利点に関しては、例えば国際公開第03/078592号および国際公開第2005/080556号を参照。
【0072】
米国特許第6,537,793号には、アデノウイルス粒子を宿主細胞からイオン交換クロマトグラフィを用いて精製することが記載され、特にこの目的のためにQ Sepharose XLタイプのクロマトグラフィサポートの優先傾向が教示されている。本発明の一実施形態において、アデノウイルスをQ Sepharose XLカラムを使用してさらに精製する。
【0073】
精製方法はまた、サイズ排除クロマトグラフィ工程を適切に用いることができる。
【0074】
国際公開第97/08298号には、アニオン交換およびサイズ除外工程を含むウイルスへの損害を防止するための特定のクロマトグラフィマトリックスを用いるアデノウイルスの精製が記載されている。米国特許第6,261,823号には、アデノウイルス調製にアニオン交換クロマトグラフィを施し、次いでサイズ除外クロマトグラフィを施すアデノウイルスの精製方法が記載されている。サイズ除外工程において、ウイルス粒子の低分子量の不純物からの群分離を達成する。
【0075】
ヒドロキシアパタイト培地をアデノウイルス精製のために用いることも可能であり、国際公開第02/44348号を参照。
【0076】
例えば、国際公開第03/097797号、p.26に記載されるような逆相吸着工程も用いることができる。
【0077】
国際公開第97/08298号には、アニオン交換およびサイズ除外工程を含むウイルスへの損害を防止するための特定のクロマトグラフィマトリックスを使用するアデノウイルスの精製が記載されている。
【0078】
特定の限外濾過方法はまた、国際公開第2006/108707号に記載されるようにアデノウイルスの精製に非常に適している。かかる工程を、特定のクロマトグラフィ精製工程に加えて、またはその代わりに行うことができる。
【0079】
医薬品の調製
特定の実施形態において、精製されたアデノウイルスを医薬品組成物に処方する。これは数々の方法に従って、また全て当業者に知られた一連の方法に従って種々の緩衝剤を使用して実行することが可能である。一般に、アデノウイルス粒子を製薬学的に許容し得る組成物に取り入れることを伴い、該組成物がアデノウイルスおよび少なくとも製薬学的に許容し得る賦形剤を含有する。かかる組成物を当業者に既知の条件下で調製することができ、特定の実施形態ではヒトへの投与に適している。
【0080】
例えば、アデノウイルスを群分離中緩衝材で交換し、最終的にAdenovirus World Standard(Hoganson et al, Development of a stable adenoviral vector formulation, Bioprocessing March 2002, p. 43-48)にも用いる20mMトリスpH8,25mMのNaCl、2.5%のグリセロールの緩衝材に保存することができる。
【0081】
明らかに、数々の他の緩衝材を用いることができ、精製された(アデノ)ウイルス調製物の保存および製薬学的投与に適したいくつかの処方例が、例えば欧州特許第0853660号および国際公開第99/41416号、国際公開第99/12568号、国際公開第00/29024号、国際公開第01/66137号および国際公開第03/049763号に見出すことができる。
【0082】
特定の実施形態において、アデノウイルスベクターをワクチンとして使用し、これらは通常薬学的に許容し得る担体または賦形剤および/または希釈剤に保持される。製薬学的に許容し得る担体または賦形剤および希釈剤が、当業界で周知であり、多岐に渡る治療用製品において使用される。好ましくは、ワクチンに良好に働く担体を適用する。より好ましくは、ワクチンがアジュバントをさらに含有する。アジュバントは、技術的に適応された抗原決定基への免疫反応をさらに高めるために既知で、アデノウイルスおよびリン酸アルミニウムアジュバンドを含有する医薬品組成物が、例えば国際公開第2007/110409号に開示されている。
【0083】
ヒトへの投与のために、本発明はrAdおよび製薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含有する医薬品組成物を使用することができる。本件において、「製薬学的に許容し得る」という用語は、担体または賦形剤が用いる投薬量および濃度において投与される被検体にあらゆる不要なまたは有害な効果を生起しないことを意味する。かかる製薬学的に許容し得る担体および賦形剤が当業界で周知である(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R. Gennaro, Ed., Mack Publishing Company [1990]; Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins, S. Frokjaer and L. Hovgaard, Eds., Taylor & Francis [2000];およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd edition, A. Kibbe, Ed., Pharmaceutical Press [2000]を参照とする)。精製されたrAdを滅菌溶液として調製し、投与するのが好ましいが、凍結乾燥調剤を活用することは本発明の範囲内である。滅菌溶液は、滅菌濾過または当業界でそれ自体既知な他の方法によって調製される。次いで、溶液を凍結乾燥または製薬投薬量容器に充填する。一般に、溶液のpHがpH3.0から9.5、例えばpH5.0から7.5の範囲である。通常rAdは適当な製薬学的に許容し得る緩衝剤を有する溶液であり、rAdの溶液はまた塩を含有し得る。アルブミンのような安定剤が任意に存在することができる。特定の実施形態において、洗浄剤を添加する。特定の実施形態において、rAdを注射用製剤に処方することができる。かかる処方は、rADの有効量を含有し、無菌液体溶液、液体懸濁液または凍結乾燥物のいずれかであり、安定剤または賦形剤を任意に含有する。
【0084】
本発明は、アデノウイルスベクター、特にrAd35を非常に高い収率にて産生するための方法を開示し、知られている限り、得られた収率および本明細書に開示されたものは依然報告されていない。本発明の方法において、バイオリアクターを使用し、体積あたりのアデノウイルス粒子の非常に高い数を有するバイオリアクターは、本発明の直接的な(中間体)産生物である。従って、本発明はまた、2Lから2000Lの間、好ましくは10Lから1000Lの間の作業容積を有し:培養培地、産生細胞および少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを含むバイオリアクターを提供する。培養培地は、上記のように、細胞の増殖およびアデノウイルスの感染に適したあらゆる培養培地とすることができる。バイオリアクターの容積、産生細胞、rAd35粒子の数、VP/IU比率の態様が、上述したように、本発明の方法のためのものである。好ましい実施形態において、バイオリアクターをATF潅流システムに接続する。
【0085】
また他の態様において、本発明は少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを産生するための方法を提供し、該方法がa)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、b)前記細胞を約10×10生存細胞/mLから16×10生存細胞/mLの間の密度にてrAd35で感染させる工程と、c)感染細胞を潅流システムで培養して前記rAd35を増殖させ、これによりrAd35ウイルス粒子濃度が少なくとも1×1012VP/mLを達成する工程と、d)前記rA35を採取する工程とを備える。本開示の前に、rAd35の前記高い収率が常に実現可能であり、言うまでもなく前記高収率を単独に達成する方法であるかは、知られていなかった。本発明は、前記収率が本明細書に開示の方法に従って可能であることを開示する。採取されたrAd35の物理的粒子に対する感染性粒子の比率が30:1未満であることが好ましい。さらなる有利な実施形態は、上述したように、本発明に係る方法のために記載したようなものである。
【0086】
本発明を以下の実施例にて詳細に説明する。かかる実施例は、本発明をあらゆる方法にて制限するものではない。それらは単に本発明を明確にするために役に立つものである。
【実施例】
【0087】
実施例1: 高い細胞密度におけるAd5ベクターでの感染
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを1.5Lの容積および0.2から0.5×10生存細胞/mLの細胞密度で接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞をバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。ATF潅流処理を4.7×10総細胞/mLの細胞密度にて開始した。ATFはRefine Technology社,(East Hanover, NJ)からのものである。89時間後、細胞密度が12.4×10総細胞/mLに達した。この時点において、細胞の一部を採取し、細胞を5分間300gにて遠心分離した。細胞沈殿物を以下の濃度まで新鮮な無血清培地に再懸濁した:
1.3×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
1.0×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
20×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
30×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
【0088】
振盪容器をAd5.CS(rAd5ベクター;Shott et al, 2008)で90VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、10%COおよび100rpmにて培養した。感染後1から2日目、培地リフレッシュメントを10,20および30×10生存細胞/mLにて感染させた振盪容器に対して行った。この培地リフレッシュメントを5分間、300gでの遠心分離工程により行い、細胞沈殿物を振盪容器あたり30mLの新鮮な培地に再懸濁した。感染後3日目、振盪容器を採取し、AEX−HPLC分析用の試料とした。採取物の細胞溶解を、1mL試料体積の各振盪容器を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃で30分間培養することにより行った。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後次の培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gの遠心分離の工程後、AEX−HPLCによる分析を行って産生ウイルス粒子数(VP/mL)を測定するまで、試料を−65℃未満で保存した。結果を図1に示す。
【0089】
10×10生存細胞/mLの細胞密度における感染の体積収率は、1×10生存細胞/mLにおけるものより10倍高い。以前の報告書で報告された細胞密度効果が一層低い密度(即ち、約0.5〜3×106細胞/mL、例えばMaranga et al., 2005; Kamen et al., 2004; Altaras et al., 2005)で与えられたのに較べて、これは多少予想外である。しかしながら、10×10細胞/mLを超えて細胞密度効果が観測され、体積収率が減少した。
【0090】
従って、組み換えAd5での細胞密度効果が潅流システムにて観測される。
【0091】
実施例2: 低い細胞密度(1〜1.6×10生存細胞/mL)におけるrAd35での感染
実施例1ではrAd5を使用した。しかしながら、異なるアデノウイルス抗原型が既知であり、異なる目的のために記載されている。かかる抗原型は、異なる性質を有するため、一つの抗原型に有用な処理が他の抗原型に必ずしも常に適切なものではない。これは特に産業規模の処理に関連し、一見小さい相違が経済的に非常に重要である可能性がある。例えば、ワクチンの使用の特に有利な一つの抗原型はAd35であり、本発明者らは以下の例においてrAd35の収率を改善して大量に得るための実現可能性を試験した。本例は、低い細胞密度におけるrAd35ベクターでの感染を、細胞をより高い細胞密度にて感染させた後述の例との比較として示す。
【0092】
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿インキュベーター内の無血清培養培地にて37℃および10%COで解凍し、増殖した。10Lバイオリアクターを5Lの体積および0.2から0.35×10生存細胞/mLの細胞密度で接種するのに十分な細胞密度を達成するまで二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞をバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。接種後4日目(細胞密度が2から3.5×10生存細胞/mLの間に達したとき)、細胞懸濁液を5Lの新鮮な培地で希釈し、その後rAd35.TB−S(rAd35ベクター;Radosevic et al, 2007)で70VP/細胞のMOIにて感染させた。ウイルス増殖を36℃、pH7.3およびDO40%にて行った。感染後3日目、バイオリアクターを細胞数およびウイルス産生測定のために試料抽出した。ウイルスを放出するために、各バイオリアクターの1mL試料を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃で30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後次の培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析をするまで保存した。計10個のバイオリアクター実験を行い、上記方法に従って分析し、これら実験が一貫した結果を与えた(図示せず)。平均ウイルス粒子産生は、2.3×1011VP/mLである。
【0093】
約1.5×1019VPの年間の需要のため、かかる収率で約65000Lを処理しなければならない。これは大きい施設、それに伴う莫大な先行投資をワクチン開発中に必要とする。
【0094】
実施例3: 高い細胞密度(>10×10生存細胞/mL)におけるrAd35の感染処理の実現可能性の検討
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを1.5Lの体積および0.2から0.5×10生存細胞/mLの細胞密度において接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞をバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。培地潅流を6.8×10総細胞/mLの細胞密度でATFシステムを使用して開始した。70時間後、細胞密度が36.8×10総細胞/mLまで達した。この時点にて、以下の感染を行った:
・振盪容器中の感染における細胞密度:
1.3×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
1.0×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
20×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
30×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
・8.7×10総細胞/mL(84%生存)における2Lバイオリアクター規模の感染
バイオリアクターの感染の1時間後、試料をバイオリアクターから回収し、2つの250mL振盪容器に30mL/振盪容器で移した。
【0095】
250mL振盪容器における感染処理に関し、2Lバイオリアクターからの細胞懸濁液の一部を採取し、この懸濁液を5分間300gにて遠心分離した。細胞沈殿物を上記濃度まで新鮮な無血清培地に再懸濁した。振盪容器をAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、10%COおよび100rpmにて培養した。感染後1から2日目、培地リフレッシュメントを10,20および30×10生存細胞/mLにて感染させた振盪容器に対して行った。この培地リフレッシュメントを5分間300gにおける遠心分離工程により行い、細胞沈殿物を振盪容器あたり30mLの新鮮な培地に再懸濁した。感染後3日目、振盪容器を採取し、AEX−HPLCE分析用の試料とした。採取物の細胞溶解を、1mL試料体積の各振盪容器を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃で30分間培養することにより行った。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離の工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析を実行するまで保存した。
【0096】
2Lバイオリアクター内の残留細胞を、新鮮な無血清培地で8.7×10総細胞/mLの細胞濃度(84%生存率)まで希釈した。バイオリアクターをAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、10%CO、pH7.3rpmおよびDO40%にて培養した。ATFシステムを、感染後15時間、一つのバイオリアクター容積/日の培地リフレッシュメント割合で開始した。感染後1,2,3および4日目、バイオリアクターを細胞数(Casy細胞数)およびAEX−HPLCによるウイルス産生測定のために試料抽出した。試料の調製を上記のように行った。AEX−HPLC分析を行うまで、試料を−65℃未満にて保存した。バイオリアクターの感染後約1時間、少なくとも60mLの試料を2Lバイオリアクターから取り出し、2つの感染(250mL振盪容器における)を30mL/振盪容器の容積にて開始した。感染後1から2日目、培地リフレッシュメントを行って潅流システムを再現した。この培地リフレッシュメントを5分間300gにおける遠心分離工程により行い、細胞沈殿物を振盪容器あたり30mLの新鮮な培地に再懸濁した。感染後3日目、振盪容器を採取し、AEX−HPLCE分析用の試料とした。試料の調製を上記のように行った。AEX−HPLCによる分析を行うまで試料を−65℃未満にて保存した。
【0097】
結果を図2に示す。結果は、1.3×10生存細胞/mLから30×10生存細胞/mLの間の感染が可能なことを示す。rAd5との結果と対照的に、rAd35の総収率は、10×10生存細胞/mL試料を超える感染での上昇する細胞密度とともに増大した。30×10生存細胞/mLにおいて、1.4×1012VP/mLの体積収率を達成した。
【0098】
これらの結果は、Ad35.TB−Sでの感染が高細胞密度、即ち10×10生存細胞/mL以上において可能であることを明らかに示す。30×10生存細胞/mLにてでさえ、感染は高体積収率を与えた。
【0099】
減少が、1.3×10細胞/mLにおいて120.000VP/細胞から30×10生存細胞/mLにおいて47.000VP/細胞までの単位産生率で確認されたことを留意する。バイオリアクター内で感染した細胞懸濁液から開始した振盪容器は、8.0×1011VP/mLの採取収率および92.000VP/細胞の単位産生率を示す。2Lバイオリアクターにおける結果は多少低いもので:採取収率が5×1011VP/mLに達し、57.000VP/細胞の単位産生率である。
【0100】
実施例4: 高い細胞密度における他のrAd35ベクターでの感染の実現可能性。
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを1.5Lの体積および0.2から0.5×10生存細胞/mLの細胞密度にて接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞をバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。ATF潅流処理を5.1×10総細胞/mLの細胞密度にて開始した。70時間後、細胞密度が25×10総細胞/mLまで達した。この時点で細胞の一部を採取した。細胞を5分間300gにて遠心分離し、細胞沈殿物を以下の濃度まで新鮮な無血清培地に再懸濁した :
1.3×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
10×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
20×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
30×10生存細胞/mL、30mL/振盪容器、2つの250mL振盪容器
【0101】
振盪容器をAd5.eGFP(他のトランス遺伝子、即ちGFP遺伝子を含有するrAd5ベクター)で70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、10%COおよび100rpmにて培養した。感染後1から2日目、培地リフレッシュメントを10,20および30×10生存細胞/mLにて感染させた振盪容器に対して行った。この培地リフレッシュメントを5分間300gにおける遠心分離の工程により行い、細胞沈殿物を振盪容器あたり30mLの新鮮な培地に再懸濁した。感染後3日目、振盪容器を採取し、AEX−HPLC分析用の試料とした。採取物の細胞溶解を、1mL試料体積の各振盪容器を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃で30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析を実行するまで保存した。結果を図3に示す。結果は、高い細胞密度における感染が他のAd35ベクター(Ad35.eGFP)でも実現可能であることを示す。体積収率(図3)および単位産生率(データ図示せず)は、Ad35.TB−Sベクターと同じ範囲内である。
【0102】
実施例5: 高い細胞密度におけるrAd35ベクターでの感染のさらなる実験。
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを0.25×10生存細胞/mLの細胞密度において接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞を2Lバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。約3.7×10総細胞/mLの細胞密度を達成(接種後4日目)したとき、ATFシステムを開始した。67時間後、40.7×10総細胞/mLの細胞密度を達成した。この時点にて、細胞懸濁液の一部を採取し、残留細胞を新鮮な培地で2Lバイオリアクター内にて細胞密度12.7×10総細胞/mL(87%生存率、したがって11×10生存細胞/mL)まで希釈した。その後、2LのバイオリアクターをAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、10%CO、pH7.3rpmおよびDO40%にて培養した。ATFシステムを、感染後15時間、5つの容器容量/日の培地リフレッシュメント割合で開始した。感染後1,2,3および4日目、2Lのバイオリアクターを細胞数およびAEX−HPLCによるウイルス産生測定のために試料採取した。ウイルスを放出するため、1mLの試料を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃で30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析をするまで保存した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
結果は、10×10生存細胞/mLを超える細胞密度における感染が潅流システムと連結したバイオリアクター内にて実行可能であり、バッチ処理と比較して体積収率を約7倍まで上昇させることが可能であることを示した。感染培養物の早期細胞損失が観測されなかったことから、ATF処理が感染細胞を培養するための適切なシステムであることを示す。
【0105】
rAdバッチ用のFDAの必要条件は、VP/IU<30の比率である。QPA(Q−PCRに基づく効力試験;Wang et al, 2005)分析は、全ての試料が前記必要条件を満たすことを示した。対照的に、Yukら(2004)に開示された試料は、約100のVP/IU比率を有する(図2A/2B)。物理的粒子に対する感染性粒子の比率は、アデノウイルスに対するパラメータに関するものであり、より低い比率がrAdバッチに好適である。本例において調製したバッチは、約15:1から18:1の低い比率を一貫して有する。
【0106】
約1.5×1019VPの年間の需要のため、約1.5×1012VP/mLの収率で約10000Lを処理しなければならない。かかる体積を1000L以下の施設にて処理することができ、従ってワクチン開発中の先行投資費用委託を減少する。
【0107】
実施例6: 高い細胞密度における減少した潅流割合でrAd35ベクターでの感染のさらなる実験。
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを0.59×10生存細胞/mLの細胞密度において接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞を2Lバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。約2.9×10総細胞/mLの細胞密度を達成(接種後4日目)したとき、ATFシステムを開始した。潅流118時間後、29×10総細胞/mLの細胞密度を達成した。この時点にて、細胞懸濁液の一部を採取し、残留細胞を新鮮な培地で2Lバイオリアクター内にて細胞密度16.4×10総細胞/mL(82%生存率、したがって13.4×10生存細胞/mL)まで希釈した。その後、2LのバイオリアクターをAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、pH7.3rpmおよびDO40%にて培養した。ATFシステムを、感染後15時間、2つの容器容量/日の培地リフレッシュメント割合で開始した。感染後1,2および3日目、2Lのバイオリアクターを細胞数およびAEX−HPLCによるウイルス産生測定のために試料採取した。ウイルスを放出するため、1mLの試料を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃にて30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析をするまで保存した。結果を表2に示す。
【0108】
結果は、10×10生存細胞/mLを超える細胞密度における感染が潅流システムと連結したバイオリアクター内にて実行可能であり、バッチ処理と比較して体積収率を約10倍まで上昇させることが可能であることを示した(実施例2)。感染培養物の早期細胞損失が観測されず、ATF処理が感染細胞を培養するための適切なシステムであることを示す。
【0109】
【表2】

【0110】
rAdバッチ用のFDA必要条件は、VP/IU<30の比率である。QPA(Q−PCRに基づく効力検定;Wang et al, 2005)分析は、全ての試料が前記必要条件を満たすことを示す。対照的に、Yukら(2004)に開示された試料は、約100のVP/IU比率を有する(図2A/2B)。物理的粒子に対する感染性粒子の比率は、アデノウイルスに対するパラメータのものであり、より低い比率がrAdバッチに好適である。本例にて調製したバッチは、10:1未満の低い比率を一貫して有する。
【0111】
約1.5×1019VPの年間の需要のために、約2×1012VP/mLの収率で約7500L未満の採取物を処理しなければならない。かかる体積を1000L以下の施設にて処理することができ、したがってワクチン開発中先行投資費用委託を減少する。
【0112】
実施例7: 高細胞密度における減少した潅流割合でrAd35ベクターでの感染のさらなる実験
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを0.44×10総細胞/mLの細胞密度において接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞を2Lバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。ATFシステムを接種後4日目に約2.72×10総細胞/mLの細胞密度にて開始した。潅流144時間後、30.5×10総細胞/mLの細胞密度を達成した。この時点にて、細胞懸濁液の一部を採取し、残留細胞を新鮮な培地で2Lバイオリアクター内にて細胞密度16.2×10総細胞/mL(81%生存率、したがって13.1×10生存細胞/mL)まで希釈した。その後、2LのバイオリアクターをAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、pH7.3およびDO40%にて培養した。ATFシステムを、感染後5時間、2つの容器容量/日の培地リフレッシュメント割合で開始した。感染後2,3および4日目、2Lのバイオリアクターを細胞数およびAEX−HPLCによるウイルス産生測定のために試料採取した。ウイルスを放出するため、1mLの試料を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃にて30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析をするまで保存した。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
結果は、10×10生存細胞/mLを超える細胞密度における感染が潅流システムと連結したバイオリアクター内にて実行可能であり、バッチ処理と比較して体積収率を約10倍まで上昇させることが可能であることを再度示す(実施例2)。さらに、実施例6および7では、感染後の潅流率をウイルス産生を損なうことなく2容器容量/日に制限することが可能であることを示す。
【0115】
約1.5×1019VPの年間の需要のため、約2×1012VP/mLの収率で約7500L未満の採取物を処理しなければならない。かかる体積を1000L以下の施設にて処理することができ、したがってワクチン開発中先行投資費用委託を減少する。
【0116】
実施例8: 高い細胞密度における50L規模でrAd35ベクターでの感染のさらなる実験。
PER.C6(登録商標)作業細胞貯蔵庫からの細胞を、加湿したインキュベーター内の無血清培養培地にて37℃、10%COで解凍し、増殖した。2Lバイオリアクターを0.52×10総細胞/mLの細胞密度において接種するに十分な細胞密度を達成するまで、二次培養を3から4日間ごとに行った。細胞を10Lのバイオリアクター内で37℃、DO40%およびpH7.3にて増殖した。約5.3×10総細胞/mLの細胞密度を達成(接種後4日目)したとき、ATFシステムを開始した。潅流169時間後、77×10総細胞/mLの細胞密度を達成した。この時点において、10Lの細胞懸濁液を新鮮な培地で50Lバイオリアクター内にて15.5×10総細胞/mL(81%生存率、それゆえ12.6×10生存細胞/mL)の細胞密度まで希釈した。その後、50LのバイオリアクターをAd35.TB−Sで70VP/細胞のMOIにて感染させ、36℃、pH7.3および40%DOにて培養した。ATFシステムを、感染後5時間、2つの容器容量/日の培地リフレッシュメント割合で開始した。感染後2から3日目、50Lのバイオリアクターを細胞数およびAEX−HPLCによるウイルス産生測定のために試料採取した。ウイルスを放出するため、1mLの試料を100μLの10%トリトンX−100と混合し、37℃にて30分間培養した。培養後、試料を2.42μLのベンゾナーゼ/MgClと混合し、その後培養を30分間37℃で行った。最後に、100μLの50%サッカロースを試料へ添加した。5分間2500gにて遠心分離した工程後、試料を−65℃未満の温度にてAEX−HPLCによる分析をするまで保存した。結果を表4に示した。
【0117】
【表4】

【0118】
結果は、10×10生存細胞/mLを超える細胞密度における感染が潅流システムと連結した50Lのバイオリアクター内にて実行可能であり、バッチ処理と比較して体積収率を約10倍まで上昇させることが可能であることを示す(実施例2)。本明細書にて、開発された方法を拡大することができることを示した。年間のウイルス需要を満たすため年間処理されるべき採取体積を、本発明の方法で産生することができる。約1.5×1019VPの年間の需要のため、約2×1012VP/mLの収率で約7500L未満の採取物を処理しなければならない。かかる体積を1000L以下の施設にて処理することができ、従ってワクチン開発中先行投資費用委託を減少する。
【0119】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換えアデノウイルス抗原型35(rAd35)を産生するに当たり、
(a)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、
(b)前記細胞を密度10×10生存細胞/mLから16×10生存細胞/mLの間の密度にてrAd35で感染させる工程と、
(c)感染細胞を潅流システムでさらに培養して前記rAd35を増殖する工程と、
(d)前記rAd35を採取する工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程b)における細胞をrAd35で約10×10から14×10生存細胞/mLの間の密度において感染させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程c)における潅流システムが、交互接線流(ATF)潅流システムである前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
e)rAdを精製する工程と、任意に
f)精製されたrAd35を含有する医薬品組成物を調製する工程と
をさらに備える前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組み換えアデノウイルスが、E1領域の少なくとも一部を欠如し、異種核酸を含有する前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程a)における潅流システムが、交互接線流(ATF)潅流システムである前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程a)を第一のバイオリアクター内に行い、前記工程b)およびc)を第二のバイオリアクター内にて行う前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記産生rAd35の物理的粒子に対する感染性粒子(VP/IU)の比率が30:1未満、好ましくは20:1未満である前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
培養培地と、産生細胞と、ウイルス粒子とを含有するバイオリアクターにおいて、該バイオリアクターが2Lから1000Lの間、好ましくは50Lから500Lの間の作業容積を有し、前記バイオリアクターが少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを含有することを特徴とするバイオリアクター。
【請求項10】
ATF潅流システムに接続した請求項9に記載のバイオリアクター。
【請求項11】
前記rAd35ウイルス粒子が、30:1未満、好ましくは20:1未満のVP/IU比率を有する請求項9または10に記載のバイオリアクター。
【請求項12】
少なくとも1×1012rAd35ウイルス粒子(VP)/mLを産生するに当たり、
(a)産生細胞を懸濁液中潅流システムで培養する工程と、
(b)前記細胞を10×10生存細胞/mLから16×10生存細胞/mLの間の密度にてrAd35で感染させる工程と、
(c)感染細胞を潅流システムでさらに培養して前記rAd35を増殖し、これによりrAd35ウイルス粒子の濃度が少なくとも1×1012VP/mLに達する工程と、
(d)前記rAd35を採取する工程と
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−507270(P2012−507270A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533718(P2011−533718)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064265
【国際公開番号】WO2010/060719
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(301055549)クルセル ホランド ベー ヴェー (27)
【Fターム(参考)】