説明

アナログメモリ回路及びビデオ信号処理装置

【課題】ビデオ信号等の高周波信号の処理に適したアナログメモリ回路を提供する。
【解決手段】サンプリングされた入力信号を電荷として保持するキャパシタCと、サンプリング時においてキャパシタCに入力信号を供給してキャパシタCに入力信号の強度に応じた電荷を蓄積させる第1のモードと、出力時においてキャパシタCの両端をオペアンプの反転出力端子及び出力端子にそれぞれ接続させる第2のモードとを切り替えるスイッチング素子Tia,Tib,Toa,Tobとを備えたメモリ単位52を含むアナログメモリ回路42により上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた高周波特性を有するアナログメモリ回路及びビデオ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、コンポジット信号と呼ばれる輝度信号(Y)、色差信号(C)及び同期信号(Sync)が重畳されたビデオ信号をRGB信号等に変換するビデオ信号処理装置が広く用いられている。
【0003】
図8に、従来のビデオ信号処理装置の構成を示す。アンテナ10で受信された電波からチューナ12によって所望のチャンネルのビデオ信号が選択され、SAWフィルタ14及び中間周波数変換回路16で処理された後、Y/C分離回路18において輝度信号(Y)+同期信号(Sync)と色差信号(C)とに分離され、信号処理回路20において輪郭補正等の後処理を経た後にブラウン管22に画像として表示される。
【0004】
輝度信号(Y)はコンポジット信号の直流成分で表される。また、色差信号(C)は、図9に示すように、1水平ライン毎に互いに180度だけ位相がずれた高周波信号として輝度信号(Y)に重畳されている。
【0005】
したがって、連続する2水平ラインの輝度信号(Y)の相関が強い場合、図10に示すように、一方の水平ラインを1水平走査期間だけ遅延させて他方の水平ラインと加算することによって輝度信号(Y)のみを抽出するトラップ・フィルタを構成することができる。また、一方の水平ラインを1水平走査期間だけ遅延させて他方の水平ラインから減算することによって色差信号(C)のみを抽出するバンドパス・フィルタを構成することができる。すなわち、ビデオ信号を遅延させるためのメモリ回路と加算回路/減算回路とによってY/C分離回路18を構成することができる。
【0006】
一方、連続する2水平ラインの輝度信号(Y)の相関が弱い場合、2水平ラインのビデオ信号を加算又は減算するだけでは輝度信号(Y)と色差信号(C)とを分離することができない。そこで、一般的に、抵抗、容量及びオペアンプ等から構成されるCRフィルタからなるトラップ・フィルタ及びバンドパス・フィルタを用いてY/C分離が行われる。トラップ・フィルタは、3.58MHz,4.43MHzを中心周波数として、その周波数帯域のみを減衰させるフィルタとして構成される。トラップ・フィルタによって、ビデオ信号から輝度信号(Y)及び同期信号(Sync)が分離されて出力される。バンドパス・フィルタは、3.58MHz,4.43MHzを中心とする周波数帯域のみを透過させるフィルタとして構成される。バンドパス・フィルタによって、ビデオ信号から色差信号(C)のみが分離されて出力される。
【0007】
このように、輝度信号(Y)の相関に基づいてY/C分離の処理を切り替えるためには、基準となる水平ラインのビデオ信号(H1)とその1つ前の水平ラインのビデオ信号(H0)又は1つ後の水平ラインのビデオ信号(H2)との相関を調べる必要がある。例えば、メモリ回路を備えた比較回路を設けることによって、ビデオ信号H0〜H2をメモリ回路に保持し、ビデオ信号H1とビデオ信号H0との相関、及び、ビデオ信号H1とビデオ信号H2との相関、を調査し、その結果に応じてY/C分離回路を切り替えて処理を施すことができる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−32701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
Y/C分離回路及び比較回路に用いられるメモリ回路としては、キャパシタとスイッチとによって構成されるアナログメモリ回路を適用することができる。アナログメモリ回路は、入力信号の強度に応じた電荷を複数のキャパシタに順次蓄積させることによって、入力信号をサンプリングして記憶する。そのため、信号を量子化して保存するデジタルメモリ回路に比べて、量子化による誤差が発生しない利点がある。
【0010】
ビデオ信号のように高周波成分を含む信号を処理するアナログメモリ回路は、ダイナミックレンジが広く、信号処理速度が高速であることが望まれる。また、回路の寄生容量が高くなると周波数特性が低下するので、処理対象となる信号に対して寄生容量の影響が少ないことが好ましい。
【0011】
そこで、本発明は、これらの要件を満足するアナログメモリ回路及びビデオ信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、サンプリングされた入力信号を電荷として保持するためのキャパシタと、サンプリング時において前記キャパシタに前記入力信号を供給して前記キャパシタに入力信号の強度に応じた電荷を蓄積させる第1のモードと、出力時において前記キャパシタの両端をオペアンプの反転出力端子及び出力端子にそれぞれ接続させる第2のモードとを選択可能とするスイッチング素子と、を備えたメモリ単位を含むことを特徴とするアナログメモリ回路である。
【0013】
このように、入力信号をサンプリングしたサンプリング値を電荷として保持したキャパシタを出力時においてオペアンプの反転出力端子及び出力端子にそれぞれ接続させることによって、オペアンプの反転出力端子と出力端子との間にキャパシタの端子電圧が印加され、オペアンプからキャパシタの端子電圧に略等しい電圧が出力される。このようなアナログメモリ回路を用いることによって、入力信号の電圧値をキャパシタにアナログ値として保存(記憶)させることができる。そのため、信号を量子化して保存するデジタルメモリ回路に比べて、サンプリング時に量子化による誤差が発生しない利点を得られる。
【0014】
また、電圧オペアンプ形のアナログメモリ回路を用いた場合に比べて処理対象となる信号に対して寄生容量の影響が少ないアナログメモリ回路を提供することができる。また、電荷転送型のアナログメモリ回路を用いた場合に比べて信号処理速度が高速であるアナログメモリ回路を提供することができる。
【0015】
具体的には、前記メモリ単位を複数備え、前記複数のメモリ単位のうちいずれか1つを順次選択して、選択されたメモリ単位のスイッチング素子を第1のモードに切り替えると共に、前記複数のメモリ単位のうち前記選択されたメモリ単位以外のメモリ単位のスイッチング素子を第2のモードに切り替える信号を出力するシフトレジスタをさらに備えることによってアナログメモリ回路を構成することができる。
【0016】
このようなアナログメモリ回路は、遅延されたビデオ信号を用いてビデオ信号から輝度信号及び色差信号の少なくとも1つを分離するY/C分離回路を備えたビデオ信号処理装置に適用することができる。すなわち、ビデオ信号のような高周波の信号を処理する際に本発明のアナログメモリ回路は有用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダイナミックレンジが広く、信号処理速度が高速であるアナログメモリ回路を提供することができる。また、処理対象となる信号に対して寄生容量の影響が少ないアナログメモリ回路を提供することができる。本発明におけるアナログメモリ回路は、特に、ビデオ信号のような高周波成分を含む信号の処理に適している。例えば、Y/C分離回路及び比較回路を含むビデオ信号処理装置に適用した場合にその効果が顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態におけるビデオ信号処理装置100は、図1に示すように、アンテナ10、チューナ12、SAWフィルタ14、中間周波数変換回路16、メモリ回路30、比較回路32、Y/C分離回路34、信号処理回路20及びブラウン管22を含んで構成される。ビデオ信号処理装置100において、従来のビデオ信号処理装置と同等の構成要素には図8と同一の符号を付して示して説明を省略する。
【0019】
メモリ回路30は、中間周波数変換回路16から出力されたビデオ信号を受けて、複数の水平ラインに相当するビデオ信号を所定の遅延時間保持し、その後、比較回路32及びY/C分離回路34へ出力する。本実施の形態では、比較回路32において基準となる水平ラインのビデオ信号H1とその1つ前の水平ラインのビデオ信号H0又は1つ後の水平ラインのビデオ信号H2との相関を調べるものとする。Y/C分離回路34では、ビデオ信号H1とビデオ信号H0との相関、及び、ビデオ信号H1とビデオ信号H2との相関に基づいて加算回路/減算回路を用いたフィルタ又はCRフィルタを切り替えてY/C処理を施す。
【0020】
メモリ回路30は、スイッチング素子及びキャパシタを含んでなるメモリ単位を複数備えたアナログメモリ回路を備える。メモリ回路30では、アナログメモリ回路を直列に接続し、各アナログメモリ回路においてビデオ信号を所定の遅延時間(水平同期期間の整数倍の時間)だけ遅延させて複数の水平ラインのビデオ信号を出力する。すなわち、メモリ回路30は、ビデオ信号の遅延回路として用られる。
【0021】
例えば、メモリ回路30は、図2に示すように、基準の水平ラインのビデオ信号H1を保持及び出力するためのアナログメモリ回路42−1、基準より1つ前の水平ラインのビデオ信号H2を保持及び出力するためのアナログメモリ回路42−2を含んで構成される。アナログメモリ回路42−1,42−2は直列に接続される。中間周波数変換回路16から出力されたビデオ信号は第1段目のアナログメモリ回路42−1に入力される。なお、比較回路32においてさらに多数の水平ラインのビデオ信号間の相関関係を調査する場合にはアナログメモリ回路42の数を増加させればよい。
【0022】
具体的には、アナログメモリ回路42−1,42−2の各々は、図3に示すように、オペアンプ50a,50b、複数のメモリ単位52−1〜52−m及びシフトレジスタ54を含んで構成することができる。メモリ単位52は、1水平ラインのビデオ信号に対するサンプリング数mだけ設けられる。例えば、3.58MHzを中心周波数とする色差信号(C)が重畳されたコンポジット・ビデオ信号を色差信号(C)の4倍のサンプリング周波数でサンプリングする場合、NTSC方式のビデオ信号は水平走査周波数が15.734kHzであるので、アナログメモリ回路42−1〜42−nの各々にm=911個のメモリ単位52が設けられる。これによって、アナログメモリ回路42−1,42−2のそれぞれに1水平ライン分のビデオ信号をサンプリングして保持することができる。
【0023】
オペアンプ50aの反転入力端子と出力端子とは短絡される。オペアンプ50aは、その非反転入力端子に中間周波数変換回路16から出力されるビデオ信号を受けて、ビデオ信号をメモリ単位52−1〜52−mへ出力するバッファとして機能する。
【0024】
メモリ単位52−1〜52−mの各々は、キャパシタと、オペアンプ50aからのビデオ信号の電圧値に応じた電圧をキャパシタに保持させるためのスイッチング素子と、キャパシタの両端をオペアンプ50bのフィードバック回路に接続するためのスイッチング素子とを含んで構成される。
【0025】
メモリ単位52−1を例に説明する。メモリ単位52−1は、トランジスタTia,Toa,Tib,Tob及びキャパシタCを含んで構成することができる。トランジスタTia,Toa,Tib,Tobはそれぞれゲートがハイレベルになるとドレイン−ソース間が導通状態となるスイッチング素子として機能する。トランジスタTia及びToaは、キャパシタCの一端(第1端子)をオペアンプ50aの出力端子若しくはオペアンプ50bの出力端子に接続する、又は、フローティングに維持するためのスイッチング素子を構成する。トランジスタTiaのゲートがハイレベルになると、トランジスタTiaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ50aの出力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。また、トランジスタToaのゲートがハイレベルになると、トランジスタToaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ50bの出力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。トランジスタTib及びTobは、キャパシタCの他端(第2端子)を接地する、オペアンプ50bの反転入力端子に接続する、又は、フローティングに維持するためのスイッチング素子を構成する。トランジスタTibのゲートがハイレベルになると、トランジスタTibのドレイン−ソース間を介してキャパシタCの第2端子が接地される。また、トランジスタTobのゲートがハイレベルになると、トランジスタTobのドレイン−ソース間を介してオペアンプ50bの反転入力端子とキャパシタCの第2端子が接続される。
【0026】
メモリ単位52−2〜52−mもメモリ単位52−1と同様の構成を有する。メモリ単位52−1のトランジスタTia及びトランジスタTibのゲートは短絡され、次段のメモリ単位52−2のトランジスタToa及びトランジスタTobのゲートに共通に接続される。同様に、メモリ単位52−i(iは1〜mの自然数)もそれぞれ次段のメモリ単位52−(i+1)に接続される。
【0027】
シフトレジスタ54は、複数のメモリ単位52−1〜52−mの中からビデオ信号を記憶させる単位とビデオ信号を出力させる単位とを順に選択するために設けられる。メモリ単位52−1〜52−mと等しい数mのフリップ・フロップFF1〜FFmの直列回路を含んで構成される。すなわち、フリップ・フロップFF1の出力端子(Q端子)は次段のフリップ・フロップFF2のデータ端子(D端子)に接続される。同様に、フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子はそれぞれ次段のフリップ・フロップFFi+1のD端子に接続される。第1段目のフリップ・フロップFF1のデータ端子(D端子)には、中間周波数変換回路16からビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。フリップ・フロップFF1〜FFmのクロック端子(C端子)には共通にサンプリング周期に同期したクロックパルスが入力される。
【0028】
また、フリップ・フロップFF1のQ端子は、第1段のメモリ単位52−1のトランジスタTia,Tibのゲート及び第2段のメモリ単位52−2のトランジスタToa,Tobのゲートに共通に接続される。同様に、フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子は、第i段のメモリ単位52−iのトランジスタTia,Tibのゲート及び第i+1段のメモリ単位52−(i+1)のトランジスタToa,Tobのゲートに共通に接続される。ただし、第1段のメモリ単位52−1のトランジスタToa,Tobのゲートにはフリップ・フロップFFmのQ端子が接続される。
【0029】
以下、アナログメモリ回路42−1,42−2の各々においてビデオ信号を1水平ラインだけ遅延させて出力する処理を説明する。初期状態では、シフトレジスタ54の各フリップ・フロップFF1〜FFmはリセットされており、各メモリ単位52−1〜52−mのキャパシタCは両端はフローティングの状態にあるものとする。
【0030】
中間周波数変換回路16からシフトレジスタ54の第1段のフリップ・フロップFF1のD端子に、オペアンプ50aの非反転入力端子に入力されるビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。さらに、サンプリング周期に同期したクロックパルスがフリップ・フロップFF1のC端子に入力されることによって、フリップ・フロップFF1がセットされ、フリップ・フロップFF1のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位52−1のトランジスタTia,Tibが導通状態となり、メモリ単位52−1のキャパシタCの端子電圧がオペアンプ50aから出力されているビデオ信号の電圧に等しくなる。したがって、オペアンプ50aから出力されているビデオ信号の電圧に応じた電荷がメモリ単位52−1のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位52−1にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位52−2のトランジスタToa,Tobが導通状態となり、オペアンプ50bの出力端子と反転入力端子とがメモリ単位52−2のキャパシタCを介して接続される。これによって、オペアンプ50bの出力端子と反転入力端子との間にメモリ単位52のキャパシタCの端子電圧が印加され、オペアンプ50bの出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0031】
次に、クロックパルスが入力されると、フリップ・フロップFF1がリセットされてフリップ・フロップFF1のQ端子はローレベルとなり、フリップ・フロップFF2がセットされてフリップ・フロップFF2のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位52−2のトランジスタTia,Tibが導通状態となり、オペアンプ50aから出力されているビデオ信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位52−2のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位52−2にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位52−3のトランジスタToa,Tobが導通状態となり、オペアンプ50bの出力端子と反転入力端子とがメモリ単位52−3のキャパシタCを介して接続される。これによって、オペアンプ50bの出力端子と反転入力端子との間にメモリ単位52のキャパシタCの端子電圧が印加され、オペアンプ50bの非反転入力端子は接地されているので、オペアンプ50bの出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0032】
以下、同様にクロックパルスが入力される度にシフトレジスタ54においてパルスが次段にシフトされる。クロックパルスがn回(nは1〜mの自然数)入力されるとフリップ・フロップFFnのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位52−nのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位52−(n+1)のキャパシタCに保持されていたビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ50bから出力される。ただし、m回目のクロックパルスについては、フリップ・フロップFFmのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位52−mのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位52−1のキャパシタCに保持されていたビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ50bから出力される。
【0033】
シフトレジスタ54の段数及びメモリ単位52の個数は1水平ラインのサンプリング数mに設定されているので、クロックパルスの周波数をサンプリング周波数に一致させることによってアナログメモリ回路42−1,42−2のそれぞれにおいて水平同期期間だけビデオ信号を遅延させて出力させることができる。
【0034】
メモリ回路30では、図2に示すように、アナログメモリ回路42−1の出力をアナログメモリ回路42−2へ入力することによって、アナログメモリ回路42−1,42−2からそれぞれ基準となる水平ラインのビデオ信号(H1)とその1つ前の水平ラインのビデオ信号(H0)が出力される。これらのビデオ信号(H0,H1)と併せて基準の1つ後の水平ラインのビデオ信号(H2)が比較回路32及びY/C分離回路34に入力される。
【0035】
このように、メモリ回路30にアナログメモリ回路42−1,42−2を適用することによって、ビデオ信号の電圧値をキャパシタ52cにアナログ値として保存する。そのため、信号を量子化して保存するデジタルメモリ回路に比べて、サンプリング時に量子化による誤差が発生しない利点がある。
【0036】
アナログメモリ回路42−1,42−2の各々は、図4に示すように、オペアンプ60a,60b、複数のメモリ単位62−1〜62−m及びシフトレジスタ64を含む回路として構成することもできる。図4に示すアナログメモリ回路42は、電圧オペアンプ型と呼ばれる回路である。上記と同様に、メモリ単位62は、1水平ラインのビデオ信号に対するサンプリング数mだけ設けられる。
【0037】
メモリ単位62−1〜62−mの各々は、キャパシタと、オペアンプ60aからのビデオ信号の電圧値に応じた電圧をキャパシタに保持させるためのスイッチング素子と、キャパシタの端子電圧をオペアンプ60bへ伝達するためのスイッチング素子とを含んで構成される。
【0038】
メモリ単位62−1を例に説明する。メモリ単位62−1は、トランジスタTia,Toa及びキャパシタCを含んで構成される。トランジスタTia,Toaはそれぞれゲートがハイレベルになるとドレイン−ソース間が導通状態となるスイッチング素子として機能する。トランジスタTia及びToaは、キャパシタCの一端(第1端子)をオペアンプ60aの出力端子若しくはオペアンプ60bの非反転入力端子に接続する、又は、フローティングに維持するためのスイッチング素子を構成する。トランジスタTiaのゲートがハイレベルになると、トランジスタTiaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ60aの出力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。また、トランジスタToaのゲートがハイレベルになると、トランジスタToaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ60bの非反転入力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。キャパシタCの他端(第2端子)は接地される。
【0039】
メモリ単位62−2〜62−mもメモリ単位62−1と同様の構成を有する。メモリ単位62−1のトランジスタTiaのゲートは、次段のメモリ単位62−2のトランジスタToaのゲートに接続される。同様に、メモリ単位62−i(iは1〜mの自然数)もそれぞれ次段のメモリ単位62−(i+1)に接続される。
【0040】
シフトレジスタ64は、図3のシフトレジスタ54と同様に、メモリ単位62−1〜62−mと等しい数mのフリップ・フロップFF1〜FFmの直列回路を含んで構成される。フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子はそれぞれ次段のフリップ・フロップFFi+1のD端子に接続される。第1段目のフリップ・フロップFF1のデータ端子(D端子)には、中間周波数変換回路16からビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。フリップ・フロップFF1〜FFmのクロック端子(C端子)には共通にサンプリング周期に同期したクロックパルスが入力される。
【0041】
また、フリップ・フロップFF1のQ端子は、第1段のメモリ単位62−1のトランジスタTiaのゲート及び第2段のメモリ単位62−2のトランジスタToaのゲートに共通に接続される。同様に、フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子は、第i段のメモリ単位62−iのトランジスタTiaのゲート及び第i+1段のメモリ単位62−(i+1)のトランジスタToaのゲートに共通に接続される。ただし、第1段のメモリ単位62−1のトランジスタToaのゲートにはフリップ・フロップFFmのQ端子が接続される。
【0042】
以下、アナログメモリ回路42−1,42−2の各々においてビデオ信号を1水平ラインだけ遅延させて出力する処理を説明する。初期状態では、シフトレジスタ64の各フリップ・フロップFF1〜FFmはリセットされており、各メモリ単位62−1〜62−mのキャパシタCの第1端子はフローティングの状態にあるものとする。
【0043】
中間周波数変換回路16からシフトレジスタ64の第1段のフリップ・フロップFF1のD端子に、オペアンプ60aの非反転入力端子に入力されるビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。さらに、サンプリング周期に同期したクロックパルスがフリップ・フロップFF1のC端子に入力されることによって、フリップ・フロップFF1がセットされ、フリップ・フロップFF1のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位62−1のトランジスタTiaが導通状態となり、オペアンプ60aから出力されているビデオ信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位62−1のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位62−1にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位62−2のトランジスタToaが導通状態となり、メモリ単位62−2のキャパシタCの第1端子がオペアンプ60bの非反転入力端子に接続される。オペアンプ60bの出力端子と反転入力端子とは短絡されているので、オペアンプ60bの出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0044】
次に、クロックパルスが入力されると、フリップ・フロップFF1がリセットされてフリップ・フロップFF1のQ端子はローレベルとなり、フリップ・フロップFF2がセットされてフリップ・フロップFF2のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位62−2のトランジスタTiaが導通状態となり、オペアンプ60aから出力されているビデオ信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位62−2のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位62−2にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位62−3のトランジスタToaが導通状態となり、メモリ単位62−3のキャパシタCの第1端子がオペアンプ60bの非反転入力端子に接続される。これによって、オペアンプ60bの出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0045】
以下、同様にクロックパルスが入力される度にシフトレジスタ64においてパルスが次段にシフトされる。クロックパルスがn回(nは1〜mの自然数)入力されるとフリップ・フロップFFnのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位62−nのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位62−(n+1)のキャパシタCに保持されていたビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ60bから出力される。ただし、m回目のクロックパルスについては、フリップ・フロップFFmのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位62−mのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位62−1のキャパシタCに保持されていたビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ60bから出力される。
【0046】
シフトレジスタ64の段数及びメモリ単位62の個数は1水平ラインのサンプリング数mに設定されているので、クロックパルスの周波数をサンプリング周波数に一致させることによってアナログメモリ回路42−1,42−2のそれぞれにおいて水平同期期間だけビデオ信号を遅延させて出力することができる。
【0047】
ただし、電圧オペアンプ型のアナログメモリ回路42では、図5に示すように、メモリ単位62の段数が増加するにつれて、出力側のオペアンプ60bの非反転入力端子は比較的大容量の寄生容量Cpの影響を受けることになる。寄生容量Cpは、アナログメモリ回路42における周波数特性を低下させる。したがって、ビデオ信号のように回路の高周波特性の影響を受け易い信号を扱う場合には、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることがより好適である。図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることによって、寄生容量Cpの影響を受け難く、ダイナミックレンジが広く、信号処理速度が高速であるビデオ信号処理装置100を提供することができる。
【0048】
アナログメモリ回路42−1,42−2の各々は、図6に示すように、オペアンプ70a,70b、複数のメモリ単位72−1〜72−m、シフトレジスタ74、転送キャパシタ76、切替スイッチ78、出力キャパシタ80及びオペアンプ82を含む回路として構成することもできる。図6に示すアナログメモリ回路42は、電荷転送型と呼ばれる回路である。上記と同様に、メモリ単位72は、1水平ラインのビデオ信号に対するサンプリング数mだけ設けられる。
【0049】
メモリ単位72−1〜72−mの各々は、キャパシタと、オペアンプ70aからのビデオ信号の電圧値に応じた電圧をキャパシタに保持させるためのスイッチング素子と、キャパシタに蓄積された電荷を転送キャパシタ76へ転送するためのスイッチング素子とを含んで構成される。
【0050】
メモリ単位72−1を例に説明する。メモリ単位72−1は、トランジスタTia,Toa及びキャパシタCを含んで構成される。トランジスタTia,Toaはそれぞれゲートがハイレベルになるとドレイン−ソース間が導通状態となるスイッチング素子として機能する。トランジスタTia及びToaは、キャパシタCの一端(第1端子)をオペアンプ70aの出力端子若しくはオペアンプ70bの反転入力端子に接続する、又は、フローティングに維持するためのスイッチング素子を構成する。トランジスタTiaのゲートがハイレベルになると、トランジスタTiaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ70aの出力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。また、トランジスタToaのゲートがハイレベルになると、トランジスタToaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ70bの反転入力端子とキャパシタCの第1端子が接続される。キャパシタCの他端(第2端子)は接地される。
【0051】
メモリ単位72−2〜72−mもメモリ単位72−1と同様の構成を有する。メモリ単位72−1のトランジスタTiaのゲートは、次段のメモリ単位72−2のトランジスタToaのゲートに接続される。同様に、メモリ単位72−i(iは1〜mの自然数)もそれぞれ次段のメモリ単位72−(i+1)に接続される。
【0052】
オペアンプ70bの非反転入力端子は接地され、オペアンプ70bの反転入力端子と出力端子との間に転送キャパシタ76と切替スイッチ78が並列に接続される。さらに、オペアンプ70bの出力端子は、切替スイッチ78を介してオペアンプ82の非反転入力端子に接続される。切替スイッチ78は、転送キャパシタ76の両端を短絡する状態、又は、オペアンプ70bの出力端子とオペアンプ82の非反転入力端子を接続する状態を排他的に切り替える。また、オペアンプ82の非反転入力端子は出力キャパシタ80を介して接地され、オペアンプ82の反転入力端子にはオペアンプ82の出力端子が接続される。
【0053】
シフトレジスタ74は、図3のシフトレジスタ54と同様に、メモリ単位72−1〜72−mと等しい数mのフリップ・フロップFF1〜FFmの直列回路を含んで構成される。フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子はそれぞれ次段のフリップ・フロップFFi+1のD端子に接続される。第1段目のフリップ・フロップFF1のデータ端子(D端子)には、中間周波数変換回路16からビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。フリップ・フロップFF1〜FFmのクロック端子(C端子)には共通にサンプリング周期に同期したクロックパルスが入力される。
【0054】
また、フリップ・フロップFF1のQ端子は、第1段のメモリ単位72−1のトランジスタTiaのゲート及び第2段のメモリ単位72−2のトランジスタToaのゲートに共通に接続される。同様に、フリップ・フロップFFi(iは1〜mの自然数)のQ端子は、第i段のメモリ単位72−iのトランジスタTiaのゲート及び第i+1段のメモリ単位72−(i+1)のトランジスタToaのゲートに共通に接続される。ただし、第1段のメモリ単位72−1のトランジスタToaのゲートにはフリップ・フロップFFmのQ端子が接続される。
【0055】
以下、アナログメモリ回路42−1,42−2の各々においてビデオ信号を1水平ラインだけ遅延させて出力する処理を説明する。初期状態では、シフトレジスタ74の各フリップ・フロップFF1〜FFmはリセットされており、各メモリ単位72−1〜72−mのキャパシタCの第1端子はフローティングの状態にあるものとする。
【0056】
中間周波数変換回路16からシフトレジスタ74の第1段のフリップ・フロップFF1のD端子に、オペアンプ70aの非反転入力端子に入力されるビデオ信号の水平同期信号に同期して水平同期パルスが入力される。さらに、サンプリング周期に同期したクロックパルスがフリップ・フロップFF1のC端子に入力されることによって、フリップ・フロップFF1がセットされ、フリップ・フロップFF1のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位72−1のトランジスタTiaが導通状態となり、オペアンプ70aから出力されているビデオ信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位72−1のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位72−1にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位72−2のトランジスタToaが導通状態となり、メモリ単位72−2のキャパシタCの第1端子がオペアンプ70bの反転入力端子に接続される。メモリ単位72−2のキャパシタCに蓄えられていた電荷が転送キャパシタ76に転送され、オペアンプ70bの反転入力端子と出力端子との間に転送キャパシタ76の両端間の電圧が印加される。オペアンプ70bの非反転入力端子は接地され、オペアンプ80の反転出力端子と出力端子とは短絡されているので、メモリ単位72−2のキャパシタCの端子電圧と略等しい電圧がオペアンプ82の出力端子から出力される。転送キャパシタ76に転送された電荷は、切替スイッチ78を切り替えて転送キャパシタ76の両端を短絡することによってリセットすることができる。
【0057】
次に、クロックパルスが入力されると、フリップ・フロップFF1がリセットされてフリップ・フロップFF1のQ端子はローレベルとなり、フリップ・フロップFF2がセットされてフリップ・フロップFF2のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位72−2のトランジスタTiaが導通状態となり、オペアンプ70aから出力されているビデオ信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位72−2のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位72−2にビデオ信号の電圧値がサンプリングされて保持される。また、メモリ単位72−3のトランジスタToaが導通状態となり、メモリ単位72−3のキャパシタCの第1端子がオペアンプ70bの反転入力端子に接続される。メモリ単位72−3のキャパシタCに蓄えられていた電荷が転送キャパシタ76に転送されることによって、オペアンプ82の出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0058】
以下、同様にクロックパルスが入力される度にシフトレジスタ74においてパルスが次段にシフトされる。クロックパルスがn回(nは1〜mの自然数)入力されるとフリップ・フロップFFnのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位72−nのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位72−(n+1)のキャパシタCに保持されていたビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ82から出力される。ただし、m回目のクロックパルスについては、フリップ・フロップFFmのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位72−mのキャパシタCにビデオ信号が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位72−1のキャパシタCに保持されていた電荷が転送キャパシタ76に転送されて、ビデオ信号のサンプリング値に応じた電圧がオペアンプ82から出力される。
【0059】
シフトレジスタ74の段数及びメモリ単位72の個数は1水平ラインのサンプリング数mに設定されているので、クロックパルスの周波数をサンプリング周波数に一致させることによってアナログメモリ回路42−1,42−2のそれぞれにおいて水平同期期間だけビデオ信号を遅延させて出力することができる。
【0060】
ただし、電荷転送型のアナログメモリ回路42では、各メモリ単位72のキャパシタCと転送キャパシタ76との容量比によって出力電圧が決定される。したがって、メモリ単位72毎のキャパシタCのばらつきがアナログメモリ回路42からの出力電圧とキャパシタCの端子電圧とのずれの原因となる。一方、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42では、メモリ単位52に含まれるキャパシタCが出力側のオペアンプ50bに直接接続されるので、キャパシタCのばらつきの影響を受けない。したがって、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることがより好適である。図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることによって、ダイナミックレンジが広いビデオ信号処理装置100を提供することができる。
【0061】
また、電荷転送型のアナログメモリ回路42では、メモリ単位72のキャパシタCへの電荷の蓄積、メモリ単位72のキャパシタCから転送キャパシタ76への電荷の転送、及び、転送キャパシタ76の電荷の放電、のステップを行う必要がある。これに対して、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42では、メモリ単位52のキャパシタCへの電荷の蓄積、及び、オペアンプ50bへのキャパシタCの接続、のステップを行うのみでよい。したがって、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42におけるメモリへの書き込み及び読み出しに掛かる時間は電荷転送型のアナログメモリ回路42よりも短縮できる。したがって、図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることがより好適である。図3に示す回路構成のアナログメモリ回路42を用いることによって、信号処理速度が高速であるビデオ信号処理装置100を提供することができる。
【0062】
比較回路32は、メモリ回路30から複数の水平ライン分のビデオ信号を受けて、ビデオ信号の水平ライン間の相関を調査する。本実施の形態では、基準となる水平ラインのビデオ信号H1、その1つ前の水平ラインのビデオ信号H0、及び、1つ後の水平ラインのビデオ信号H2、を受けて、ビデオ信号H1とビデオ信号H0との相関、及び、ビデオ信号H1とビデオ信号H2との相関を調査する。ビデオ信号H1とビデオ信号H0との相関関係は数式(1)に示す共分散S01によって評価することができる。同様に、ビデオ信号H1とビデオ信号H2との相関関係は数式(2)に示す共分散S21によって評価することができる。ここで、H0(i)はビデオ信号H0のi番目のサンプリング値、H1(i)はビデオ信号H1のi番目のサンプリング値、H2(i)はビデオ信号H2のi番目のサンプリング値、H0aveはビデオ信号H0の平均値、H1aveはビデオ信号H1の平均値、H2aveはビデオ信号H2の平均値、1水平ライン当たりのmはサンプリング数である。
【0063】
【数1】

【0064】
比較回路32は、共分散S01が所定の閾値T01以上であり、共分散S21が所定の閾値T21より小さい場合にはY/C分離回路34においてビデオ信号H1とビデオ信号H0との加減算によってY/C分離処理を行うように指示する制御信号をY/C分離回路34へ出力する。共分散S01が所定の閾値T01より小さく、共分散S21が所定の閾値T21以上である場合にはY/C分離回路34においてビデオ信号H1とビデオ信号H2との加減算によってY/C分離処理を行うように指示する制御信号をY/C分離回路34へ出力する。共分散S01が所定の閾値T01以上であり、共分散S21も所定の閾値T21以上である場合には、共分散S01と共分散S21とを比較してより相関が高いビデオ信号のペアの加減算によってY/C分離処理を行うように指示する制御信号をY/C分離回路34へ出力する。また、共分散S01が所定の閾値T01より小さく、共分散S21も所定の閾値T21よりも小さい場合には、ビデオ信号H1に対して抵抗、容量及びオペアンプ等から構成されるCRフィルタからなるトラップ・フィルタ及びバンドパス・フィルタを用いてY/C分離を行うように制御信号をY/C分離回路34へ出力する。
【0065】
Y/C分離回路34は、図7に示すように、加減算フィルタ回路90、CRフィルタ回路92を含んで構成される。Y/C分離回路34は、メモリ回路30から複数の水平ライン分のビデオ信号及び比較回路32からの制御信号を受けて、制御信号の指示内容に応じて加減算フィルタ回路90及びCRフィルタ回路92のいずれか一方を選択してビデオ信号のY/C分離を行う。
【0066】
加減算フィルタ回路90には、メモリ回路30から複数の水平ラインのビデオ信号が入力される。本実施の形態では、比較回路32と同様に、基準となる水平ラインのビデオ信号H1、その1つ前の水平ラインのビデオ信号H0、及び、1つ後の水平ラインのビデオ信号H2が入力される。加減算フィルタ回路90は、比較回路32からビデオ信号H1とビデオ信号H0との加減算によってY/C分離処理を行うように指示する制御信号を受けると、ビデオ信号H1にビデオ信号H0を加算することによって輝度信号(Y)を抽出し、ビデオ信号H1からビデオ信号H0を減算することによって色差信号(C)を抽出する。加減算フィルタ回路90は、比較回路32からビデオ信号H1とビデオ信号H2との加減算によってY/C分離処理を行うように指示する制御信号を受けると、ビデオ信号H1にビデオ信号H2を加算することによって輝度信号(Y)を抽出し、ビデオ信号H1からビデオ信号H2を減算することによって色差信号(C)を抽出する。
【0067】
なお、選択回路90aは、ビデオ信号H0,H1,H2からいずれか2つを選択して加算回路90b及び減算回路90cに入力する回路である。選択回路90aは、周知のスイッチング回路により構成することができる。加算回路90bは、選択回路90aにおいて選択されたビデオ信号を加算して出力する回路である。減算回路90cは、選択回路90aにおいて選択されたビデオ信号を減算して出力する回路である。これら加算回路90b及び減算回路90cは周知の回路構成により実現することができる。
【0068】
CRフィルタ回路92には、トラップ・フィルタ92a及びバンドパス・フィルタ92bを含んで構成される。NTSC方式のビデオ信号に対しては、トラップ・フィルタ92aは、3.58MHz,4.43MHzを中心周波数として、その周波数帯域のみを減衰させるフィルタとして構成される。また、バンドパス・フィルタ92bは、3.58MHz,4.43MHzを中心とする周波数帯域のみを透過させるフィルタとして構成される。トラップ・フィルタ92a及びバンドパス・フィルタ92bは、抵抗、容量、オペアンプ等を適宜組み合わせることによって構成することができる。
【0069】
CRフィルタ回路92には、メモリ回路30から基準の水平ラインのビデオ信号が入力される。本実施の形態では、基準となる水平ラインのビデオ信号H1が入力される。CRフィルタ回路92は、比較回路32からビデオ信号H1に対してCRフィルタを用いてY/C分離処理を行うように指示する制御信号を受けると、トラップ・フィルタをビデオ信号H1に対して適用することによって輝度信号(Y)を抽出して出力する。また、バンドパス・フィルタをビデオ信号H1に対して適用することによって色差信号(C)を抽出して出力する。
【0070】
このように分離された輝度信号(Y)及び色差信号(C)には信号処理回路20において輪郭補正等の後処理が行われた後、ブラウン管22に画像として表示される。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、ダイナミックレンジが広く、信号処理速度が高速であるアナログメモリ回路を用いたビデオ信号処理装置を提供することができる。また、処理対象となる信号に対して寄生容量の影響が少ないアナログメモリ回路を用いたビデオ信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態におけるビデオ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるメモリ回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるアナログメモリ回路の構成例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるアナログメモリ回路の構成の別例を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるアナログメモリ回路における寄生容量の影響を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるアナログメモリ回路の構成の別例を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるY/C分離回路の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のビデオ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】ビデオ信号の色差信号(C)の特性を説明する図である。
【図10】コムフィルタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 アンテナ、12 チューナ、14 フィルタ、16 中間周波数変換回路、18 分離回路、20 信号処理回路、22 ブラウン管、30 メモリ回路、32 比較回路、34 Y/C分離回路、42 アナログメモリ回路、50a,50b オペアンプ、52c キャパシタ、52 メモリ単位、54 シフトレジスタ、60a,60b オペアンプ、62 メモリ単位、64 シフトレジスタ、70a,70b オペアンプ、70a オペアンプ、72 メモリ単位、74 シフトレジスタ、76 転送キャパシタ、78 切替スイッチ、80 出力キャパシタ、82 オペアンプ、90 加減算フィルタ回路、90a 選択回路、90b 加算回路、90c 減算回路、92 CRフィルタ回路、92a トラップ・フィルタ、92b バンドパス・フィルタ、100 ビデオ信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のサンプリング値に対応する電荷を保持するためのキャパシタと、
サンプリング時において前記キャパシタに前記入力信号を供給して前記キャパシタに前記入力信号の強度に応じた電荷を蓄積させる第1のモードと、出力時において前記キャパシタの両端をオペアンプの反転出力端子及び出力端子にそれぞれ接続させる第2のモードとを選択可能とするスイッチング素子と、を備えたメモリ単位を含むことを特徴とするアナログメモリ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のアナログメモリ回路において、
前記メモリ単位を複数備え、
前記複数のメモリ単位のうちいずれか1つを順次選択して、選択されたメモリ単位のスイッチング素子を前記第1のモードに切り替えると共に、前記複数のメモリ単位のうち前記選択されたメモリ単位以外のメモリ単位のスイッチング素子を前記第2のモードに切り替える信号を出力するシフトレジスタをさらに備えることを特徴とするアナログメモリ回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアナログメモリ回路と、
前記アナログメモリ回路によって遅延されたビデオ信号を用いて、ビデオ信号から輝度信号及び色差信号の少なくとも1つを分離するY/C分離回路と、
を備えることを特徴とするビデオ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−36872(P2007−36872A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219374(P2005−219374)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】