説明

アニオン界面活性剤で処理されたアニオン交換樹脂を用いるフルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法

安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法。本方法は、対イオン付きアニオン交換基を有するアニオン交換樹脂の固定床を提供する工程を含む。アニオン交換樹脂は、対イオンの少なくとも幾らかを非フッ素化アニオン界面活性剤の対イオンと置き換えるために処理される。安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液は、アニオン交換樹脂の処理された固定床に通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減に関する。より具体的には非フッ素化アニオン界面活性剤で処理されたアニオン交換樹脂を用いる水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、剥離、耐化学薬品性および耐熱性、腐食保護、クリーニング可能性、低燃焼性、ならびに耐候性を与えるために幅広い数の基材に塗布される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよび変性PTFEの塗膜は、フルオロポリマーの中でも最高の熱安定性を提供するが、テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体とは違って、溶融加工してフィルムおよび塗膜を形成することができない。それ故、他の方法がPTFEホモポリマーおよび変性PTFEの塗膜を塗布するために開発されてきた。かかる一方法は、分散形態でフルオロポリマーを塗布する分散コーティングである。コーティング法に使用される分散液は通常濃縮形態にあり、マークス(Marks)らの米国特許第3,037,953号明細書に、およびホームズ(Holmes)の米国特許第3,704,272号明細書に教示されているように、生の分散液での公称35質量%から濃縮分散液での約60質量%まで固形分を上げるために、かなりの量、例えば6〜8質量パーセントの非イオン界面活性剤を含有する。ミウラ(Miura)らの米国特許第6,153,688号明細書は類似の方法を開示している。類似の分散液およびコーティング法はまた、溶融加工可能なフルオロポリマーの塗膜を製造するために用いられる。
【0003】
非テロゲン分散剤が商業的フルオロポリマー分散重合法に一般に必要とされるので、フルオロ界面活性剤が典型的にはフルオロポリマーの分散重合に成分として使用される。例えば、商業的に使用されるフルオロ界面活性剤の早期記載は、ベリー(Berry)に付与された米国特許第2,559,752号明細書に見いだされる。これらのフルオロ界面活性剤はアニオン界面活性剤、通常はパーフッ素化カルボン酸、例えば、パーフルオロカプリル酸アンモニウムまたはパーフルオロオクタン酸アンモニウムである。
【0004】
環境上の懸念のために、およびアニオンフルオロ界面活性剤が高価であるために、水性フルオロポリマー分散液からのアニオンフルオロ界面活性剤の除去方法が開発されてきた。一共通方法は、米国特許第3,882,153号明細書(セキ(Seki)ら)および米国特許第4,282,162号明細書(クールス(Kuhls))および米国特許第6,833,403号明細書(ブラーデル(Bladel)ら)に教示されているように、アニオン交換樹脂上への吸着によってフルオロ界面活性剤を除去することである。効果的な除去のために、かかる分散液は、マークスらに付与された米国特許第3,037,953号明細書、ミウラらに付与された米国特許第6,153,688号明細書、およびキャバノー(Cavanaugh)ら付与される米国特許出願公開第2003/0130393号明細書に開示されているようにアルキルフェノールエトキシレートまたは脂肪族アルコールエトキシレートなどの、非イオン界面活性剤で安定化される。非イオン界面活性剤が存在しない状態でのフルオロ界面活性剤の除去は一般に分散液の凝固をもたらすので、非イオン界面活性剤で安定化された分散液が使用される。
【0005】
フルオロ界面活性剤低減のためのアニオン交換法は、アニオン交換樹脂が撹拌容器中で分散液と接触させられ、引き続き濾過してアニオン交換樹脂を除去するスラリー法を用いて実施することができるが、固定床法が多くの場合に商業運転のために望ましい。固定床法では、アニオン交換樹脂は、典型的には形状が円筒形で、カラムと言われる容器中に保持され、分散液が重力フィードかポンプ送液かのどちらでカラムに通される。ポンプ送液されるとき、流れは床を通って上向きまたは下向きであることができる。
【0006】
しかしながら、幾つかの分散液、特に高い固形分レベル、例えば、45質量%を超えるもの、および/または高分子量フルオロポリマーの分散液での固定床アニオン交換法では、フルオロ界面活性剤含有率が低下するにつれてかなりの分散液粘度上昇がカラム中で起こり得る。分散液粘度上昇は対応してカラムにわたって圧力降下を増大させる。重力フィードカラムでは、圧力降下がヘッド圧を超える場合には、分散液流れはストップするであろう。ポンプ送液される分散液フィードのカラムでは、流れはカラムを通して強制され得るが、しばしば「フィンガリング」と言われる別のタイプの不具合が生じるかもしれない。フィンガリングで、高粘度分散液マトリックスは閉塞領域を形成し、流れはこれらの領域の間のフィンガーでのみ起こる。床の一部のみが利用される状態で、早過ぎるPFOA(パーフルオロオクタン酸塩)突破(すなわち、高いフルオロ界面活性剤レベルの分散液)が起こり得る。フィンガリングが起こったとき、イオン交換床は典型的には取り換えられなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法を提供する。本方法は、対イオン付きアニオン交換基を有するアニオン交換樹脂の固定床を提供する工程を含む。アニオン交換樹脂は、少なくとも幾らかの対イオンを非フッ素化アニオン界面活性剤の対イオンと置き換えるために処理される。安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液は、アニオン交換樹脂の処理された固定床に通される。
【0008】
驚くべきことに、アニオン交換床が非フッ素化アニオン界面活性剤の対イオンを有するとき、床にわたって高い圧力降下しがちな分散液は、圧力降下がより低くおよび/またはフィンガリングなどの高粘度関連処理問題がより少なく処理できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
フルオロポリマー
本発明に従って使用される水性フルオロポリマー分散液は、分散重合(乳化重合としても知られる)によって製造される。フルオロポリマー分散液は、モノマーの少なくとも1つがフッ素を含有するモノマーから製造されたポリマーの粒子から構成される。本発明の水性分散液の粒子のフルオロポリマーは独立して、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレンモノマー、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルのポリマーおよび共重合体の群から選択される。
【0010】
本発明に用いられる分散液に使用される好ましいフルオロポリマー粒子は、溶融加工できない変性PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の溶融加工できない粒子である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、いかなる有意なコモノマーも存在せずに重合したテトラフルオロエチレンそのものを意味する。変性PTFEは、TFEと得られたポリマーの融点がPTFEのそれより下に実質的に低下しないような低濃度のコモノマーとの共重合体を意味する。かかるコモノマーの濃度は好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満である。少なくとも約0.05質量%の最小量が顕著な効果を有するために好ましくは使用される。変性PTFEは好ましくは、パーフルオロオレフィン、特にヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(エチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが好ましい、アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)などの、ベーキング(融解)中のフィルム形成能力を向上させるコモノマー変性剤を含有する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または嵩高い側基を分子中へ導入する他のモノマーもまた含められる。本発明のこの好ましい形態では、PTFEは典型的には少なくとも1×10Pa・sの溶融クリープ粘度を有する。本発明のこの形態に使用される分散液中の樹脂は、単離され、そして乾燥されたときに、このように溶融加工できない。
【0011】
溶融加工できないとは、溶融加工可能なポリマーについての標準的な溶融粘度測定手順によって試験されるときにメルトフローが全く検出されないことを意味する。この試験は次の通り修正されたASTM(米国材料試験協会)D−1238−00による:シリンダー、オリフィスおよびピストン先端は、耐食性合金、ハイネス・ステライト社(Haynes Stellite Co.)によって製造された、ハイネス・ステライト(Haynes Stellite)19でできている。5.0gのサンプルが372℃に維持される9.53mm(0.375インチ)内径シリンダーに装入される。サンプルがシリンダーに装入された5分後に、それは、5000グラムの負荷(ピストン・プラス重り)下に2.10mm(0.0825インチ直径)、8.00mm(0.315インチ)長さの平方形エッジオリフィスを通して押し出される。これは、44.8KPa(平方インチ当たり6.5ポンド)の剪断応力に相当する。溶融押出物は全く観察されない。
【0012】
好ましい一実施形態では、本発明に使用される分散液中のフルオロポリマー粒子は、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の芯とより低分子量ポリテトラフルオロエチレンまたは変性ポリテトラフルオロエチレンの鞘とを含む。
【0013】
好ましい溶融加工できないPTFEまたは変性PTFEは、約2.13〜約2.50の標準比重(SSG)を有する。好ましくは、SSGは約2.40未満、より好ましくは約2.30未満、最も好ましくは約2.25未満である。SSGは一般に、PTFEまたは変性PTFEの分子量に反比例する。
【0014】
本発明に使用される分散液中のフルオロポリマー粒子は、好ましくは約10nm〜約400nm、最も好ましくは、約100nm〜約400nmの数平均粒度を有する。
【0015】
好ましいPTFEポリマーの典型的な水性分散重合法は、TFE蒸気がフルオロ界面活性剤、パラフィンワックスおよび脱イオン水を含有する加熱された反応器にフィードされる方法である。連鎖移動剤もまた、PTFEの分子量を下げることが望まれる場合には添加されてもよい。フリーラジカル開始剤溶液が添加され、重合が進行するにつれて、追加のTFEが圧力を維持するために添加される。反応の発熱は、反応器外套を通して冷却水を循環させることによって除去される。数時間後に、フィードは停止され、反応器はガス抜きされ、窒素でパージされ、容器中の生の分散液は冷却容器に移される。パラフィンワックスは除去され、分散液は単離され、非イオン界面活性剤で安定化される。
【0016】
分散液の製造に使用されるフルオロ界面活性剤は、非テロゲンの、フッ素化されたアニオン性界面活性剤で、水に可溶であり、アニオン性の親水性基および疎水性部分を含む。好ましくは、疎水性部分は、少なくとも4個の炭素原子を含有し、フッ素原子を持ち、そして親水性基に隣接したフッ素原子を持たない2個以下の炭素原子を有する脂肪族フルオロアルキル基である。これらのフルオロ界面活性剤は分散させるための重合助剤として使用され、それらが連鎖移動しないので、それらは望ましくない短鎖長のポリマーの形成を引き起こさない。好適なフルオロ界面活性剤の広範囲に及ぶリストは、ベリーに付与された特許第2,559,752号明細書に開示されている。好ましくは、フルオロ界面活性剤は、6〜10個の炭素原子を有するパーフッ素化カルボン酸またはスルホン酸であり、典型的には塩形態で使用される。好適なフルオロ界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸アンモニウム塩、例えば、パーフルオロカプリル酸アンモニウムまたはパーフルオロオクタン産アンモニウムである。フルオロ界面活性剤は通常、形成されるポリマーの量に関して0.02〜1質量%の量で存在する。フッ素化界面活性剤は重合プロセスを助けるために使用されるが、分散液中に残る量は下に説明されるようにかなり下げられる。
【0017】
本発明の分散液を製造するために好ましくは使用される開始剤はフリーラジカル開始剤である。それらは、比較的長い半減期を有するもの、好ましくは過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムであってもよい。過硫酸塩開始剤の半減期を短くするために、Fe(III)などの金属触媒作用塩ありまたはなしで、亜硫酸水素アンモニウムまたはメタ亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を使用することができる。あるいはまた、過マンガン酸カリウム/シュウ酸などの短い半減期の開始剤を使用することができる。
【0018】
長い半減期の過硫酸塩開始剤に加えて、コハク酸などの少量の短鎖ジカルボン酸またはジコハク酸パーオキシド(DSP)などのコハク酸を生成する開始剤もまた凝塊を減らすために添加されてもよい。
【0019】
下に記載されるような低いフルオロ界面活性剤含有率の分散液を製造するために、本明細書で以下により詳細に記載されるようにフルオロ界面活性剤含有率が下げられたときに分散液の凝固を防ぐのに十分な安定剤が添加される。本水性分散液はフルオロポリマー固形分含有率が約15〜約65質量%、好ましくは約25〜約55質量%、より好ましくは約35〜約50質量%の範囲であることができる。
【0020】
非イオン界面活性剤安定剤
様々な非イオン界面活性剤のいずれかを、本発明に従った水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法において分散液安定化のために使用することができる。かかる非イオン界面活性剤には、アルキルフェノールエトキシレートおよび脂肪族アルコールエトキシレートが含まれる。好ましくは、使用される非イオン界面活性剤は、脂肪族アルコールエトキシレートである。非イオン界面活性剤は好ましくは、フルオロポリマーの質量を基準として、約2〜約11質量%、最も好ましくは約3〜約11質量%の量で分散液に存在する。さらに、非イオン界面活性剤は好ましくは、分散液の質量を基準として約1〜約5質量%の量で存在する。好適な非イオン界面活性剤には、好ましくは濃縮中に所望の曇点を与える様々な非イオン界面活性剤またはそれらの混合物のいずれかが含まれる。
【0021】
本発明に使用される分散液は好ましくは、熱分解し得る、かつ、分散コーティング過程中に空気および水の品質に悪影響を及ぼすかもしれない有害な有機芳香族化合物に変換され得る芳香族基を含有する界面活性剤を本質的に含まない。加えて、これらの物質は、処理装置上にタール様ビルドアップを生成し、かつ、煙を生成しがちである。芳香族基を含有する界面活性剤を本質的に含まないは、好ましくは、用いられる分散液が約0.5質量%未満のかかる界面活性剤を含有することを意味する。本発明に使用される界面活性剤は、アルキルフェノールエトキシレートより低い残渣を残して基材上で熱分解することなくきれいに燃え尽きる。
【0022】
特に好ましい脂肪族アルコールエトキシレートは、式:
R(OCHCHOH
(式中、Rは、8〜18個の炭素原子を有する分岐アルキル、分岐アルケニル、シクロアルキル、またはシクロアルケニル炭化水素基であり、nは5〜18の平均値である)
の化合物または化合物の混合物である。例えば、本発明に使用される好ましいエトキシレートは、(1)分岐アルキル、分岐アルケニル、シクロアルキルまたはシクロアルケニルから選択された炭化水素基からなる第一級アルコール、または(2)第二級もしくは第三級アルコールから製造されると考えることができる。いずれにしても、本発明に従って使用されるエトキシレートは芳香族基を含有しない。分子の親水性部分でのエチレンオキシド単位の数は、典型的に供給されるような広いもしくは狭い単峰性分布か、ブレンディングによって得られるかもしれないより広いもしくは二峰性分布かのどちらかを含んでもよい。
【0023】
本発明に従って用いられる分散液に用いられる非イオン界面活性剤は好ましくは、8〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和の第二級アルコールのエトキシレートである。第二級アルコールエトキシレートは、より低い水性粘度、より狭いゲル化範囲、およびより少ない泡立ちをはじめとする、第一級アルコールエトキシレートおよびフェノールエトキシレートの両方に優る利点を有する。さらに、第二級アルコールのエトキシレートは、改善された表面張力低下、従ってコーティング操作などの最終使用用途で優れた湿潤を与える。
【0024】
界面活性剤の曇点は、水への界面活性剤の溶解性の尺度である。本発明に従って用いられる水性分散液中の界面活性剤は、約30℃〜約90℃、好ましくは約35℃〜約85℃の曇点を好ましくは有する。
【0025】
本発明を実施するのに用いられる脂肪族アルコールエトキシレートはまた、約290℃未満、好ましくは285℃未満、より好ましくは280℃未満の、そして典型的には250℃〜290℃の好ましい範囲に入るTGAで測定される20%残渣温度を有する。加えてまたはあるいはまた、脂肪族アルコールエトキシレート非イオン界面活性剤は約250℃未満、より好ましくは約240℃未満、最も好ましくは約230℃未満の熱質量分析(TGA)で測定される熱分解温度を有することが好ましい。
【0026】
フルオロポリマー分散液を安定化させるために一般に使用されるタイプの非イオン界面活性剤は、室温で液体か固体かのどちらかであり得る。固体の場合、界面活性剤はペースト状である、そして取り扱うのが困難である傾向がある。それらは取り扱うことはできるが、それらを液体として保つために加熱されたタンクおよび移送ラインをしばしば必要とする。加熱装置の資本コストに加えて、システムに課せられる操作上の制約がある。温度が余りにも低く維持される場合、タンクおよび移送ラインは固体物質で詰まり得る。温度が余りにも高い場合、界面活性剤の分解が起こり得る。
【0027】
一般に低粘度液体がハンドリングの観点から好ましい。高粘度液体は、取り扱うのがより困難であり、ハンドリングを容易にするために粘度を十分に低く保つべく加熱されたタンクおよびラインをしばしば必要とする。見かけ上液体の界面活性剤の幾つかは、それらが数日液体として存在し、それからペースト状固体に変わるという点において物理的に準安定である。時々水が界面活性剤に、その粘度を下げ、そしてより取り扱い易くするために添加される。しかしながら、余りにも多い水は、より濃い分散液を製造したいという欲求を損なう。
【0028】
本発明に好ましくは使用される溶融加工できないフルオロポリマー粒子および非イオン界面活性剤の水性分散液は、0〜20質量%の水、好ましくは0〜15質量%の水を含有する非イオン界面活性剤を好ましくは含有し、室温で安定な液体である。界面活性剤は5℃に冷やされ、そして次に室温(約23±3℃)に暖められた後、それが室温で3日間液体のままである場合に安定な液体であると考えられる。
【0029】
本発明に従って用いられる分散液のより好ましい形態では、脂肪族アルコールエトキシレート非イオン界面活性剤は、平均約4〜約12個のエチレンオキシド(EO)単位を有する2,6,8−トリメチル−4−ノナノールのエトキシレート、最も好ましくは、平均約9〜約11個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8−トリメチル−4−ノナノールのエトキシレートを含む。このタイプの好ましい界面活性剤の例は、ダウ・ケミカル・コーポレーション(Dow Chemical Corporation)から入手可能である、商標ターギトール(Tergitol)(登録商標)TMN−6(公称6EO単位)およびターギトール(登録商標)TMN−10(公称10EO単位)で販売されるものである。30%のターギトール(登録商標)TMN−6と70%のターギトール(登録商標)とのブレンドもまた、ターギトール(登録商標)TMN−100Xとしてダウ・ケミカル・コーポレーションから入手可能である。
【0030】
分散剤
アニオン性高分子電解質分散剤もまた、安定化のために本発明に従って分散液に用いることができる。これらの分散剤は、それらがポリマーであり、そして明確な親水性部分と疎水性部分とを含有しないので界面活性剤とは異なる。アニオン性高分子電解質分散剤はアニオン性基を含有し、フルオロポリマー分散液の安定化は、アニオン性高分子電解質分散剤がフルオロポリマー粒子をコートするときに起こると考えられる。アニオン性高分子電解質分散剤上にあるアニオン性基は、粒子上の表面電荷を増加させ、粒子間の電荷の反発力によって安定性を与える。界面活性剤とは違って、これらの分散剤は典型的には、分散液の表面張力に、たとえあったとしてもほとんど有意な影響を及ぼさない。アニオン性高分子電解質分散剤を含有する分散液の表面張力は、界面活性剤が湿潤性を変えるために、粘度調整、改良安定性などのために添加されない限り、高いまま、好ましくは約40mS/cmより大きいままである。
【0031】
アニオン性高分子電解質分散剤は好ましくは、アニオン性基がポリマー鎖に沿って分布した、場合により鎖末端基中にも存在する、線状または分岐の構造を有する、アニオン性ポリマーである。高分子電解質は好ましくは、約150より大きい、好ましくは約200より大きい、さらにより好ましくは約250より大きい、分子量/高分子電解質中に存在するアニオン性基の数と定義される、当量を有する。一般に、本発明の方法に使用できるアニオン性高分子電解質分散剤の当量は約50,000未満、好ましくは約10,000未満、より好ましくは約3.000未満、さらにより好ましくは約1.500未満である。
【0032】
アニオン性高分子電解質分散剤の数平均分子量は好ましくは少なくとも約500、より好ましくは約500〜約100,000の範囲にある。より好ましくは、分子量は少なくとも約1,000である。特に好ましい実施形態は、約2,000〜約100,000、好ましくは5,000〜20,000の分子量を有する。
【0033】
アニオン性高分子電解質分散剤は好ましくは2より多いまたはそれに等しい、より好ましくは5より多いまたはそれに等しい多数のアニオン性官能基を分子中に含有する。アニオン性高分子電解質分散剤の分子中に存在するアニオン性基は好ましくは、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートから選択され、より好ましくはカルボキシレート、サルフェート、スルホネートであり、さらにより好ましくはカルボキシレートである。一般に、アニオン性高分子電解質分散剤はフッ素原子を含有しない。
【0034】
好ましくは、本発明に従って使用されるアニオン性高分子電解質分散剤は、上記のようなアニオン性基の数および当量を好ましくは与えるアクリルまたはビニルモノマーから選択されるモノマーのアニオン性ホモポリマーまたは共重合体から選択される。
【0035】
好ましいアニオン性高分子電解質分散剤は疎水性アクリル共重合体であると記載される。このタイプのポリマーの例は、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)によって販売される商標タモール(TAMOL)(登録商標)681、タモール(登録商標)2001、タモール(登録商標)165Aおよびタモール(登録商標)731Aで販売されている。かかる分散剤は、顔料の凝集を防ぐためのアクリル−ベースのペイントでの使用について知られているが、それらはフルオロポリマー分散液での使用については知られていない。本発明での使用のための好ましいアクリル共重合体分散剤は、メタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体を含む。より好ましくは、メタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体は、約30〜約50モル%のメタクリル酸単位と約50〜約70モル%のブチルメタクリレート単位とを含む。
【0036】
本発明で用いるための好ましいアクリル共重合体分散剤は、約2,000〜約100,000の分子量、より好ましくは約5,000〜約20,000の分子量を有する。
【0037】
本発明のこの形態に従って用いられる分散液は好ましくは、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%、より好ましくは約0.1〜約10質量%、最も好ましくは0.5質量%〜約5.5質量%の量のアニオン性高分子電解質分散剤を含有する。アニオン性高分子電解質分散剤の全ての百分率は活性成分を基準としている。
【0038】
好ましいアクリル共重合体分散剤は酸形態で供給されてもよいが、それは効果的な安定化のため本発明のフルオロポリマー分散液には塩形態で用いられる。様々な塩形態を用いることができるが、アクリル共重合体分散剤の好ましい形態は、それが異質の陽イオンを分散液へ導入しないようにアンモニウム塩の形態でである。アクリル共重合体分散剤が主として塩形態であり、そして水に可溶性であるために、フルオロポリマー分散液のpHは好ましくは少なくとも約9、より好ましくは少なくとも約9.5である。
【0039】
他の安定剤
本出願に具体的に開示される安定剤に加えて、分散液のための安定剤として他の界面活性剤および分散剤を含有する分散液もまた、フルオロ界面活性剤除去のための固定床アニオン交換法で同じもしくは類似の圧力降下および/またはフィンガリング問題にさらされるかもしれない。特定の分散液と相溶性であるアニオン界面活性剤を選ぶと、本発明は、かかる分散液で同様に有利に用いられる。
【0040】
アニオン交換
本発明の方法はアニオン交換樹脂の固定床を用いる。米国特許第3,882,153号明細書(セキら)、米国特許第4,282,162号明細書(クールス)、および米国特許第6,833,403号明細書(ブラーデルら)に教示されてきたような、当該技術で知られているような固定床手順を一般に用いることができる。
【0041】
分散液とのイオン交換樹脂の固定床に安定化分散液を通すことは濃縮の前かまたは後に行うことができるが、典型的には濃縮前のより低い固形分材料が、処理するのがより容易である。本方法が濃縮の前に実施される場合、上に議論されたような安定剤は、イオン交換樹脂との接触の前に添加される。上記のような安定剤を含有する濃縮分散液もまた、本発明の実施での使用に好適である。
【0042】
イオン交換カラムなどの公知の装置は、本発明の方法に従って分散液をイオン交換樹脂に通してアニオン交換を実施するために用いることができる。重力フィード法を必要ならば用いることができる。分散液が床を通してポンプ送液される場合、流れは床を通って上向きまたは下向きであることができる。
【0043】
分散液の接触は、イオン交換の速度を促進するのに、かつ、分散液の粘度を下げるのに十分に高いが、樹脂がひどく高い速度で分解するかまたは粘度上昇が観察される温度より下である温度で好ましくは行われる。上の処理温度は、ポリマーのタイプおよび用いられる非イオン界面活性剤で変わるであろう。典型的には、温度は20℃〜80℃であろう。
【0044】
フルオロ界面活性剤は、必要ならばイオン交換樹脂から回収することができか、またはフルオロ界面活性剤付き樹脂は環境上受け入れられる方法で、例えば、焼却によって処分することができる。フルオロ界面活性剤を回収することが望まれる場合、フルオロ界面活性剤は溶出によって樹脂から取り去られてもよい。アニオン交換樹脂上に吸着されたフルオロ界面活性剤の溶出は、米国特許第3,882,153号明細書にセキらによって実証されているようにアンモニア溶液を用いて、米国特許第4,282,162号明細書にクールスによって実証されているように希鉱酸と有機溶剤との混合物(例えば、HCl/エタノール)によって、または硫酸および硝酸などの強い鉱酸によって容易に達成され、吸着されたフッ素化カルボン酸を溶出液に移す。高濃度での溶出液中のフルオロ界面活性剤は、酸析、塩析、または濃縮の他の方法などのような慣用法によって純粋な酸の形態で、または塩の形態で容易に回収することができる。
【0045】
本発明の方法の好ましい実施形態では、フルオロ界面活性剤は、総分散液質量を基準として約300ppm未満、分散液の質量を基準として、より好ましくは約100ppm未満、さらにより好ましくは約50ppm未満、さらにより好ましくは約20ppm未満、最も好ましくは約10ppm未満である所定のレベルに下げられる。
【0046】
イオン交換樹脂
本発明の水性分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減に従って用いるためのイオン交換樹脂は、アニオン樹脂を含むが、例えば、混合床での、陽イオン性樹脂などの他の樹脂タイプもまた含むことができる。用いられるアニオン樹脂は、強塩基性または弱塩基性であることができる。好適な弱塩基性アニオン交換樹脂は第一級、第二級、または第三級アミン基を含有する。好適な強塩基性アニオン交換樹脂は第四級アンモニウム基を含有する。弱塩基性樹脂は、それらをより容易に再生できるので有用であるが、本発明の実行において用いる際には強塩基性樹脂が好ましい。強塩基性イオン交換樹脂はまた、媒体のpHへ感受性が少ないという利点を有する。強塩基アニオン交換樹脂は同伴対イオンを有し、典型的には塩化物または水酸化物形態で入手可能であるが、必要ならば他の形態に容易に変換される。水酸化物、塩化物、サルフェート、およびナイトレートのアニオン交換樹脂をフルオロ界面活性剤の除去に使用することができるが、水酸化物の形態でのアニオン交換樹脂が、追加アニオンの導入を防ぐために、かつ、アニオン交換中にpHを上げるために好ましい。なぜなら、高い、すなわち、9より大きいpHが、細菌増殖を抑制するために発送前の製品に望ましいからである。トリメチルアミン部分を持った第四級アンモニウム基の好適な商業的に入手可能な強塩基アニオン交換樹脂の例には、ダウエックス(DOWEX)(登録商標)550A、USフィルター(US Filter)A464−OH、サイブロン(SYBRON)M−500−OH、サイブロンASB1−OH、ピュロライト(PUROLITE)A−500−OH、伊藤忠(Itochu)TSA1200、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)IR402が挙げられる。ジメチルエタノールアミン部分を持った第四級アンモニウム基の好適な商業的に入手可能な強塩基アニオン交換樹脂の例には、USフィルターA244−OH、アンバーライト(登録商標)410、ダウエックス(登録商標)マラソン(MARATHON)A2、およびダウエックス(登録商標)アップコア・モノ(UPCORE Mono)A2が挙げられる。
【0047】
本発明の方法に用いるためのフルオロ界面活性剤を低減するために使用されるイオン交換樹脂は好ましくは単分散である。好ましくは、イオン交換樹脂ビーズは、ビーズの95%が数平均ビーズ径のプラスまたはマイナス100μm内の直径を有する数平均サイズ分布を有する。
【0048】
単分散イオン交換樹脂は、床を通して好適な圧力降下を与える粒度を有する。前に議論されたように、非常に大きいビーズは脆く、破壊しがちである。非常に小さいイオン交換ビーズは、床中に曲がりくねった通路をもたらす、詰まった粒子充填を受けやすい。これは、床中に高い剪断状態をもたらし得る。好ましいイオン交換樹脂は約450〜約800μmの数平均ビーズサイズを有し、より好ましくは、イオン交換樹脂ビーズは約550〜約700μmの数平均ビーズ径を有する。
【0049】
アニオン交換樹脂処理
本発明に従って、アニオン交換樹脂は、その対イオンの少なくとも幾らかを非フッ素化アニオン界面活性剤の対イオンで置き換えるために処理される。
【0050】
本発明の実施において、アニオン交換樹脂は、存在する対イオンの少なくとも幾らかをアニオン界面活性剤、すなわち、アニオン界面活性剤のアニオンで置き換わらせる条件下に樹脂をアニオン界面活性剤と接触させることによって処理される。例えば、樹脂が最初に水酸化物形態にある、すなわち、OH対イオンを有する場合、アニオン界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウムでの処理は、それらのOHイオンの幾らかを対イオンとしてのラウリル硫酸アニオンで置き換える。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウムおよび第二アルキルスルホン酸ナトリウム塩を含むがそれらに限定されない、様々な非フッ素化アニオン界面活性剤のいずれかを使用することができる。米国特許第6,861,466号明細書(ダデラス(Dadelas)ら)に開示されているものなどの追加のアニオン界面活性剤もまた使用することができる。好ましくは、非フッ素化アニオン界面活性剤に相当する酸のpKa値は、分散液から除去されつつあるフルオロ界面活性剤の相当する酸のpKaより大きいかまたはそれに等しい。特に好ましい非フッ素化アニオン界面活性剤は、ラウリル硫酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩、最も好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
【0051】
少なくとも幾らかの対イオンを非フッ素化アニオン界面活性剤対イオンで置き換えるためのアニオン交換樹脂の処理は、アニオン交換樹脂を非フッ素化アニオン界面活性剤と接触させることによって成し遂げることができる。本発明の好ましい一実施形態では、接触処理は、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液と接触させる前に行われる、すなわち、アニオン交換樹脂は前処理される。これは、アニオン界面活性剤の、例えば、0.5〜10質量%の希薄溶液をカラムに通すことによって成し遂げることができる。本発明の別の好ましい形態に従って、非フッ素化アニオン界面活性剤処理は、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液がカラムに通されるときに実施される。これは好ましくは、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液がアニオン交換樹脂と接触するときに非フッ素化アニオン界面活性剤がその分散液中に存在するように非フッ素化アニオン界面活性剤を分散液に添加することによって成し遂げられる。
【0052】
本発明の好ましい形態では、アニオン交換での処理は、利用可能なアニオン交換サイトの約0.01〜約60%をアニオン界面活性剤対イオンに変換する。より好ましくは、処理は、利用可能なアニオン交換サイトの約0.05〜約10%、最も好ましくは約0.1〜約5%を変換する。
【0053】
非フッ素化アニオン界面活性剤での処理はカラム操作を改善することが観察された。ポンプ送液システムでは、カラムにわたる圧力降下は50%以上減らすことができる。圧力降下の減少で、フィンガリングの発生率もまた減少する。本発明に従ってアニオン界面活性剤で処理されたカラムは、典型的にはカラムの寿命の全体にわたって改善された操作を示す。
【0054】
アニオン界面活性剤処理は、次のメカニズムによってカラム操作を改善すると考えられる。ある種の分散液、特に高い固形分および/または高分子量ポリマーのものは、固定床の作業ゾーン、すなわち、アニオン交換の大部分が起こる床の区域であり、そして床が使い尽くされるにつれてカラムを前進する作業ゾーンで粘度上昇を示す。高粘度は低いフルオロ界面活性剤レベルの濃縮分散液でしばしば観察されるので、粘度上昇は分散液中のアニオンフルオロ界面活性剤の低レベルによると考えられる。この粘度上昇は、カラムを通して分散液を送液するために必要とされる追加圧力のために圧力降下の増加を引き起こす。アニオン界面活性剤は好ましくはフルオロ界面活性剤のpKaより大きいまたはそれに等しいpKaを有するので、フルオロ界面活性剤は、アニオン界面活性剤で処理されたアニオン交換樹脂からアニオン界面活性剤対イオンを追い出すであろう。追い出された界面活性剤はこうして作業ゾーンで利用可能にされ、アニオン界面活性剤の存在は、アニオンフルオロ界面活性剤の除去時に粘度が上昇するという分散液の傾向に対抗する。
【0055】
粘度の低下はまた、カラムが「フィンガリング」を受けるのを少なくする。フィンガリングは、作業ゾーンにおいて高粘度分散液に入るより低粘度のフルオロ界面活性剤含有分散液によって引き起こされる。より低粘度の分散液での高粘度分散液の置き換えは、一様でない作業ゾーンバンドにつながる。この一様でない分布は次に、使い尽くされたイオン交換樹脂の狭い通路、すなわち、「フィンガー」を通した分散液の通過につながり得るし、一方、通路を取り囲むイオン交換樹脂は置き換えられていない高粘度分散液で満たされる。置き換えられたアニオン界面活性剤による粘度の低下はまたフィンガリングの発生率を下げると考えられる。
【0056】
濃縮
本発明の好ましい形態では、本方法は分散液の濃縮を含む。濃縮は、様々な公知方法のいずれかによって実施することができる。非イオン界面活性剤が安定化に使用されているとき、濃縮は、熱濃縮プロセスを開示しているマークスらの米国特許第3,037,953号明細書、ホームズの米国特許第3,704,272号明細書、ミウラらの米国特許第6,153,688号明細書に開示されているように好適にも実施される。熱濃縮では、分散液は、非イオン界面活性剤の溶解度が用いられる条件下でより低い温度に、すなわち、「曇点」に加熱される。この温度は第一に、用いられる非イオン界面活性剤のタイプ依存するが、それほどではないにせよ、非イオン界面活性剤の量、分散液中の他の物質の存在、および固形分含有率をはじめとする因子でもまた変わる。曇点への加熱は、高固形分濃縮下相と非常に低い固形分上相との相分離を生成するために用いられる。これらの相は、上相をデカンテーションすることによって通常は分離される。疎水性アクリル共重合体分散剤などのアニオン性高分子電解質分散剤が安定化のために使用されているとき、濃縮は、ジョウンズ(Jones)に付与された米国特許第5,272,186号明細書に記載されているように高い酸含有率のアクリルポリマーの添加によって実施することができる。当該技術で公知の他の濃縮法を必要ならば用いることができる。好ましくは、濃縮分散液は約25〜約70質量%の固形分含有率を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減方法であって、
対イオンを備えたアニオン交換基を有するアニオン交換樹脂の固定床を提供する工程、
少なくとも幾らかの該対イオンを非フッ素化アニオン界面活性剤の対イオンと置き換えるために該アニオン交換樹脂を処理する工程、および
該安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂の該固定床に通す工程
を含む上記方法。
【請求項2】
少なくとも幾らかの対イオンを非フッ素化アニオン界面活性剤対イオンと置き換えるためのアニオン交換樹脂の処理工程が、該アニオン交換樹脂を、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液と接触させる前に、該非フッ素化アニオン界面活性剤と接触させる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも幾らかの対イオンを非フッ素化アニオン界面活性剤対イオンと置き換えるためのアニオン交換樹脂の処理工程が、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂の固定床に通しながら実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非フッ素化アニオン界面活性剤が、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液中に存在する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非フッ素化アニオン界面活性剤に相当する酸のpKa値が、フルオロ界面活性剤に相当する酸のpKaより大きいかまたはそれに等しい請求項1に記載の方法。
【請求項6】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液が、約15〜約60質量%の固形分含有率を有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液が、約25〜約55質量%の固形分含有率を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液が、約35〜約50質量%の固形分含有率を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分散液を濃縮する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
濃縮工程が、約25〜約70質量%の固形分含有率を有する分散液を生成する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液が、安定剤として非イオン界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
非イオン界面活性剤が、分散液の質量を基準として約1〜約5%の量で存在する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液が、安定剤としてアニオン性高分子電解質分散剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
フルオロ界面活性剤含有率の低減工程が、濃縮工程の前に行われる請求項9に記載の方法。
【請求項15】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂と接触させる工程が、フルオロ界面活性剤含有率を約300ppm未満の所定のレベルに下げる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂と接触させる工程が、フルオロ界面活性剤含有率を約100ppm未満の所定のレベルに下げる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂と接触させる工程が、フルオロ界面活性剤含有率を約50ppm未満の所定のレベルに下げる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アニオン界面活性剤を用いる処理工程が、アニオン交換サイトの約0.01〜約60%をアニオン界面活性剤対イオンに変換する請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−538965(P2009−538965A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513204(P2009−513204)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/012503
【国際公開番号】WO2007/142882
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】