説明

アニリン誘導体およびその製造方法

【課題】有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にする中間体であるアニリン誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアニリン誘導体である。



{一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)−Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、Yはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 アニリン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害生物防除作用を有するアミド誘導体として種々の化合物が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/21488号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/73165号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/137376号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にする中間体であるアニリン誘導体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、国際公開第2005/21488パンフレット、国際公開第2005/73165号パンフレット、国際公開第2006/137376号パンフレットに記載されるアミド誘導体の新規な製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、かかるアミド誘導体を製造する上での有用な中間体を見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
{一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)−Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。}で表わされるアニリン誘導体。
<2> 前記一般式(1)におけるYがヨウ素原子である、前記<1>に記載のアニリン誘導体。
<3> 下記一般式(2a)
【0008】
【化2】

【0009】
で表わされる化合物と、ハロゲン化剤とを反応させて、下記一般式(3a)
【0010】
【化3】

【0011】
で表わされる化合物を得る工程と、前記一般式(3a)で表される化合物と、下記一般式(4)
【0012】
【化4】

【0013】
で表される化合物とを反応させて、下記一般式(5a)
【0014】
【化5】

【0015】
で表わされる化合物を得る工程と、前記一般式(5a)で表される化合物を還元して、下記一般式(6a)
【0016】
【化6】

【0017】
で表わされる化合物を得る工程と、前記一般式(6a)で表される化合物に由来するジアゾニウム塩を得る工程と、前記ジアゾニウム塩からジアゾニウム基を除去して、下記一般式(7a)
【0018】
【化7】

【0019】
で表される化合物を得る工程と、前記一般式(7a)で表される化合物から、Rで表される基を除去する工程を含む、下記一般式(1a)
【0020】
【化8】

【0021】
で表わされるアニリン誘導体の製造方法。
【0022】
前記一般式(1a)、一般式(2a)、一般式(3a)、一般式(4)、一般式(5a)、一般式(6a)、および一般式(7a)において、R2aは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Yは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。
は置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、または置換されていてもよいベンゾイル基を示し、LGは脱離能を有する官能基を示す。
【0023】
<4> 前記Yが、ヨウ素原子である前記<3>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
<5> 前記Rが、置換されていてもよいアルキルカルボニル基または置換されていてもよいベンゾイル基である前記<3>または<4>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
<6> 下記一般式(3a)
【0024】
【化9】

【0025】
で表わされる化合物と、下記一般式(4b)
【0026】
【化10】

【0027】
で表される化合物とを反応させて、下記一般式(5b)
【0028】
【化11】

【0029】
で表わされる化合物を得る工程と、前記一般式(5b)で表される化合物を還元して、下記一般式(6b)
【0030】
【化12】

【0031】
で表わされる化合物を得る工程と、前記一般式(6b)で表される化合物に由来するジアゾニウム塩を得る工程と、前記ジアゾニウム塩からジアゾニウム基を除去する工程とを含む、下記一般式(1b)
【0032】
【化13】

【0033】
で表されるアニリン誘導体の製造方法。
前記一般式(1b)、一般式(3a)、一般式(4b)、一般式(5b)、および一般式(6b)において、R2aは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Yは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。
4bは、C(=O)Rで表される基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、LGは脱離能を有する官能基を示す。
<7> 前記Yが、ヨウ素原子である前記<6>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にする中間体であるアニリン誘導体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一般式において使用される文言はその定義においてそれぞれ以下に説明されるような意味を有する。
「炭素数1〜6のアルキル基」とは例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、4−メチル−2−ペンチル、n−ヘキシル、3−メチル−n−ペンチル等の直鎖状または分岐状の炭素原子数が1〜6のアルキル基を示す。
【0036】
「炭素数3〜4のパーフルオロアルキル基」とは例えば、パーフルオロ−n−プロピル、パーフルオロ−i−プロピル、パーフルオロ−n−ブチル、パーフルオロ−i−ブチル、パーフルオロ−s−ブチル、パーフルオロ−t−ブチル等の全ての水素原子がフッ素原子によって置換された直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数が3〜4個のアルキル基を示す。
【0037】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。「n−」とはノルマルを意味し、「i−」はイソを意味し、「s−」はセカンダリーを意味し、「t−」はターシャリーを意味する。
「Ca−Cb(a、bは1以上の整数を表す)」との表記、例えば、「C1−C3」とは炭素原子数が1〜3個であることを意味し、「C2−C6」とは炭素原子数が2〜6個であることを意味する。
【0038】
「置換されていてもよいフェニル基」とは、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、C1−C6ハロアルキル基、C3−C9シクロアルキル基、C3−C9ハロシクロアルキル基、C2−C6アルケニル基、C2−C6ハロアルケニル基、C2−C6アルキニル基、C2−C6ハロアルキニル基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6ハロアルコキシ基、C1−C6アルキルチオ基、C1−C6ハロアルキルチオ基、C1−C6アルキルスルフィニル基、C1−C6ハロアルキルスルフィニル基、C1−C6アルキルスルホニル基、C1−C6ハロアルキルスルホニル基、C2−C7アルキルカルボニル基、C2−C7ハロアルキルカルボニル基、C2−C7アルキルカルボニルオキシ基、C2−C7ハロアルキルカルボニルオキシ基、C1−C6アルキルスルホニルオキシ基、C1−C6ハロアルキルスルホニルオキシ基、C2−C7アルコキシカルボニル基、C2−C7ハロアルコキシカルボニル基、C2−C7アルキルカルボニルアミノ基、C2−C7ハロアルキルカルボニルアミノ基、C2−C7アルコキシカルボニルアミノ基、C2−C7ハロアルコキシカルボニルアミノ基、C2−C7アルキルアミノカルボニル基、C2−C7ハロアルキルアミノカルボニル基、C1−C6アルキルアミノ基、C1−C6ハロアルキルアミノ基、C2−C6アルケニルアミノ基、C2−C6ハロアルケニルアミノ基、C2−C6アルキニルアミノ基、C2−C6ハロアルキニルアミノ基、C3−C9シクロアルキルアミノ基、C3−C9ハロシクロアルキルアミノ基、C3−C7アルケニルアミノカルボニル基、C3−C7ハロアルケニルアミノカルボニル基、C3−C7アルキニルアミノカルボニル基、C3−C7ハロアルキニルアミノカルボニル基、C4−C10シクロアルキルアミノカルボニル基、C4−C10ハロシクロアルキルアミノカルボニル基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ペンタフルオロスルファニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、及び置換基を有していてもよいフェニルカルボニルアミノ基から選択される1以上の置換基を有するフェニル基であり、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
尚、本発明において前記各置換基は、可能な場合にはさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、置換されていてもよいフェニル基の置換基と同じである。
本発明における一般式(1)等で示される化合物は、その構造式中に1個または複数個の不斉炭素原子または不斉中心を含む場合があり、2種以上の光学異性体が存在する場合もあるが、本発明は各々の光学異性体及びそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。
【0040】
本発明のアニリン誘導体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0041】
【化14】

【0042】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)−Rで表される基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。
は、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。
【0043】
本発明の一般式(1)で示されるアニリン誘導体中の置換基等の好ましい置換基又は原子の組合せは以下のとおりである。
およびRとして好ましくは水素原子、またはC(=O)−Rで表される基であり、RおよびRの両方が水素原子、またはRおよびRの一方が水素原子であるとともに他方がC(=O)−Rで表される基であることがより好ましい。Yとして好ましくは、ヨウ素原子である。Yとして好ましくは、トリフルオロメチル基である。
また、RおよびRの両方が水素原子、またはRおよびRの一方が水素原子であるとともに他方がC(=O)−Rで表される基であって、Yがヨウ素原子であって、Yがトリフルオロメチル基であることもまた好ましい。
【0044】
以下に本発明のアニリン誘導体を製造する製造方法、さらに、該製造方法に好適に用いることができる製造中間体となる化合物、および本発明のアニリン誘導体を中間体として製造できる有用化合物の製造方法を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の製造方法1から製造方法3に示される一般式においては、R、R、R、YおよびYは前記一般式(1)におけるR、R、R、YおよびYとそれぞれ同じものを示す。Rは、置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、または置換されていてもよいベンゾイル基を示す。LGは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基等の脱離能を有する官能基を表す。Rfは炭素数3〜4のパーフルオロアルキル基を示す。
2aは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、R4bは、C(=O)Rで表される基を示す。
【0045】
前記置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、または置換されていてもよいベンゾイル基における置換基は、前記「置換されてもよいフェニル基」における置換基と同義である。
<製造方法1>
【0046】
【化15】

【0047】
工程1−1:一般式(2a)→ 一般式(3a)
一般式(2a)で表される化合物と、ハロゲン化剤とを反応させることにより一般式(3a)で示される化合物を製造することができる。
この反応は例えば、実験化学講座19(4版、丸善)の424〜427、466〜467ページに記載の方法に従って行うことができる。
ハロゲン化剤としては例えば、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルフリル、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素、1,3−ジヨード−5,5,−ジメチルヒダントインなどを用いることができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることはなく、また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて適宜選択すればよい。
【0048】
工程1−2:一般式(3a)+一般式(4)→ 一般式(5a)
一般式(4)で示される脱離基を有する化合物と、一般式(3a)で示される化合物を適当な溶媒中もしくは無溶媒で反応させることにより、一般式(5a)で示される化合物を製造することができる。本工程では適当な塩基を用いることもできる。
【0049】
溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであればよい。例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどの鎖状または環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの不活性溶媒を示すことができる。これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0050】
また、塩基としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属類、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩類、リン酸一水素二カリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩類、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属塩類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコラート類、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド類などを示すことができる。
【0051】
これらの塩基は、一般式(4)で示される化合物に対して0.01〜5倍モル当量の範囲で適宜選択して使用すればよい。
反応温度は、−20℃から使用する溶媒の還流温度の範囲で適宜選択すればよい。また反応時間は、数分から96時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0052】
一般式(4)で示される化合物の中で、カルボン酸ハライド誘導体またはスルホン酸ハライド誘導体は、カルボン酸またはスルホン酸と、ハロゲン化剤とから常法により容易に製造することができる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、臭化チオニル、オキシ塩化リン、オキザリルクロリド、三塩化リンなどのハロゲン化剤を示すことができる。
【0053】
一方、ハロゲン化剤を使用せずに、カルボン酸誘導体またはスルホン酸誘導体と一般式(3a)で示される化合物から一般式(5a)で示される化合物を製造することが可能である。その方法としては、例えば、Chem.Ber.Vol.103、788ページ(1970年)に記載の方法を挙げることができる。具体的には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの添加剤を適宜使用し、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤を用いる方法を示すことができる。この場合に使用される他の縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾールなどを示すことができる。
【0054】
また、一般式(5a)で示される化合物を製造する他の方法としては、クロロギ酸エステル類を用いた混合酸無水物法を示すこともできる。例えば、J.Am.Chem.Soc.Vol.89、5012ページ(1967年)に記載の方法を挙げることができ、一般式(5a)で示される化合物を製造することが可能である。この場合使用されるクロロギ酸エステル類としてはクロロギ酸イソブチル、クロロギ酸イソプロピルなどを示すことができ、クロロギ酸エステル類の他には、塩化ジエチルアセチル、塩化トリメチルアセチルなどを示すことができる。
【0055】
縮合剤を用いる方法、混合酸無水物法共に、前記文献記載の溶媒、反応温度、反応時間に限定されることは無い。溶媒としては適宜反応の進行を著しく阻害しない不活性溶媒を使用すればよい。また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて、適宜選択すればよい。
【0056】
本発明において前記Rは、置換されていてもよいアルキルカルボニル基または置換されていてもよいベンゾイル基であることが好ましく、置換さていてもよいアルキルカルボニル基であることがより好ましい。
【0057】
工程1−3:一般式(5a)→ 一般式(6a)
例えば、実験化学講座14(第5版、丸善)の357〜358ページに記載の方法に従うことにより、一般式(5a)で示される化合物から一般式(6a)で示される化合物を製造することができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることはなく、また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて適宜選択すればよい。
【0058】
工程1−4:一般式(6a)→ 一般式(7a)
例えば、Organic Reactions Volume IIの262〜340ページに記載の方法に従うことにより、一般式(6a)で示される化合物から一般式(7a)で示される化合物を製造することができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることはなく、また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて適宜選択すればよい。
【0059】
工程1−5:一般式(7a)→ 一般式(1a)
例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(John Wiley and Sons Inc.)の218〜287ページに記載の方法に従うことにより、一般式(7a)で示される化合物から一般式(1a)で示されるアニリン誘導体を製造することができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることはなく、また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて適宜選択すればよい。
<製造方法2>
【0060】
【化16】

【0061】
工程2−1:一般式(3a)+一般式(4b)→ 一般式(5b)
一般式(4b)で示される脱離基を有する化合物と、一般式(3a)で示される化合物を適当な溶媒中もしくは無溶媒で反応させることにより、一般式(5b)で示される化合物を製造することができる。本工程の詳細および好ましい態様は、前記製造方法1における「工程1−2」と同様である。
【0062】
工程2−2:一般式(5b)→ 一般式(6b)
一般式(5b)で表される化合物のニトロ基を還元することで、一般式(6b)で表される化合物を製造することができる。本工程の詳細および好ましい態様は、前記製造方法1における「工程1−3」と同様である。
【0063】
工程2−3:一般式(6b)→ 一般式(1b)
一般式(5b)で表される化合物のアミノ基を、ジアゾニウム塩に変換した後、ジアゾニウム基を除去することで、一般式(1b)で表される化合物を製造することができる。本工程の詳細および好ましい態様は、前記製造方法1における「工程1−4」と同様である。
<製造方法3>
【0064】
【化17】

【0065】
一般式(1)+一般式(8)→ 一般式(9)
一般式(1)で示される化合物と、一般式(8)で示される化合物とを、例えば、特開2001−122836号公報等に記載の方法を用いて反応させることにより、一般式(9)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
としては、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を挙げることができ、ヨウ素原子であることが好ましい。
【0066】
前記一般式(9)で示される化合物は、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体の極めて有用な製造中間体となる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることはなく、また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて適宜選択すればよい。
【0067】
前記に示した全ての製造方法において、目的物は、反応終了後、反応系から常法に従って単離すればよいが、必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留などの操作を行い精製することができる。また、反応系から目的物を単離せずに次の反応工程に供することも可能である。
【実施例】
【0068】
次の実施例により本発明の代表的な実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。H−NMRの化学シフト値は、特に記載がない限り、テトラメチルシランを内部標準物質として使用した値である。また、特記しない限り「%」は質量基準である。
【0069】
<実施例1>
2−トリフルオロメチル−6−ヨードアニリンの製造
【0070】
【化18】

【0071】
(1−1)
2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アニリンの製造
【0072】
【化19】

【0073】
4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)アニリン10.0g(48.5mmol)、N−ヨードスクシンイミド14.2g(63.1mmol)、濃硫酸6.00g(58.2mmol)をエタノール80mlに加え、60℃で3時間攪拌した。途中、N−ヨードスクシンイミド2.18g(9.70mmol)を追加した。反応液を室温に戻した後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え攪拌した。その後、液性が塩基性となるまで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。分液後、有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することにより、2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アニリン12.4g(収率77%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm) δ5.43(2H, broad−s),8.41(1H, d,J=2.4Hz),8.73(1H,d,J=2.4Hz).
【0074】
(1−2)
2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリドの製造
【0075】
【化20】

【0076】
2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アニリン4.00g(12.0mmol)をジクロロメタン90mlに溶解し、無水酢酸1.84g(18.1mmol)、濃硫酸0.124g(1.20mmol)を加えて0℃で9時間攪拌した。途中、無水酢酸5.52g(54.1mmol)と濃硫酸0.72g(7.73mmol)を3回に分けて挿入した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え攪拌した。分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリド3.58g(収率89%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm) δ2.28(3H,s),7.23(1H, broad−s),8.56(1H, d,J=2.0Hz),8.93(1H,d,J=2.0Hz).
【0077】
(1−3)
2−ヨード−4−アミノ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリドの製造
【0078】
【化21】

【0079】
2−ヨード−4−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリド2.00g(5.35mmol)を、無水塩化第一スズ7.40g(39.0mmol)をエタノール15mlに溶解した溶液に加え、10分間還流した。室温に戻したのち、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に通したのち、ふたたび減圧下溶媒を留去した。得られた残渣に酢酸エチル及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、生じた沈殿をセライトで濾別した。分液後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去することにより、2−ヨード−4−アミノ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリドを製造した。
H−NMR(CDCl,ppm) δ2.20(3H,s),3.94(2H, broad−s),6.91(1H, d,J=2.4Hz),7.32(1H,d,J=2.4Hz).
【0080】
(1−4)
2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリドの製造
【0081】
【化22】

【0082】
2−ヨード−4−アミノ−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリド1.00g(2.94mmol)を10%硫酸水溶液3.6mlに溶解し、15%亜硫酸エチルメタノール溶液3.6ml(5.81mmol)を加え0℃で2時間攪拌した。反応液を室温にして銅粉末を36.6mg(0.581mmol)加え、1.5時間攪拌したのち、10分間還流した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え攪拌した。分液後、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することにより、2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリドを製造した。
H−NMR(CDCl,ppm) δ2.24(3H,s),7.00(1H, broad−s),7.16(1H,t,J=8.0Hz),7.69(1H,d,J=8.0Hz),8.11(1H,d,J=8.0Hz).
【0083】
(1−5)
2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アニリンの製造
【0084】
【化23】

【0085】
2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アセトアニリド200mg(0.608mmol)を50%硫酸水溶液10gに溶解し、60℃で2時間攪拌したのち、1時間還流した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え攪拌した。分液後、有機層を飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アニリンを製造した。
H−NMR(CDCl,ppm) δ4.60(2H, broad−s),6.51(1H,t,J=7.6Hz),7.43(1H,d,J=7.6Hz),7.81(1H,d,J=7.6Hz).
【0086】
<参考例>
上記製造方法で得られる2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アニリンは、特開2001−122836号公報に記載の方法に準じて、4―ヘプタフルオロイソプロピル−2−ヨード−6−(トリフルオロメチル)アニリンに変換することができる。
また2−クロロ−6−(トリフルオロメチル)アニリンを中間体として用いて、特開2001−122836号公報に記載の方法に準じて、4―ヘプタフルオロイソプロピル−2−クロロ−6−(トリフルオロメチル)アニリンを合成した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の一般式(1)で示されるアニリン誘導体は、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体の有用中間体として産業上の有用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


{一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)−Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、Yはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。}で表わされるアニリン誘導体。
【請求項2】
下記一般式(2a)
【化2】


で表わされる化合物と、ヨウ素化剤とを反応させて、下記一般式(3a)
【化3】


で表わされる化合物を得る工程と、
前記一般式(3a)で表される化合物と、下記一般式(4)
【化4】


で表される化合物とを反応させて、下記一般式(5a)
【化5】


で表わされる化合物を得る工程と、
前記一般式(5a)で表される化合物を還元して、下記一般式(6a)
【化6】


で表わされる化合物を得る工程と、
前記一般式(6a)で表される化合物に由来するジアゾニウム塩を得る工程と、
前記ジアゾニウム塩からジアゾニウム基を除去して、下記一般式(7a)
【化7】


で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(7a)で表される化合物から、Rで表される基を除去する工程と、
を含む、下記一般式(1a)
【化8】


で表わされるアニリン誘導体の製造方法。
前記一般式(1a)、一般式(2a)、一般式(3a)、一般式(4)、一般式(5a)、一般式(6a)、および一般式(7a)において、R2aは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Yは、ヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。
は置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、または置換されていてもよいベンゾイル基を示し、LGは脱離能を有する官能基を示す。
【請求項3】
下記一般式(3a)
【化9】


で表わされる化合物と、下記一般式(4b)
【化10】


で表される化合物とを反応させて、下記一般式(5b)
【化11】


で表わされる化合物を得る工程と、
前記一般式(5b)で表される化合物を還元して、下記一般式(6b)
【化12】


で表わされる化合物を得る工程と、
前記一般式(6b)で表される化合物に由来するジアゾニウム塩を得る工程と、
前記ジアゾニウム塩からジアゾニウム基を除去する工程と、
を含む、下記一般式(1b)
【化13】


で表されるアニリン誘導体の製造方法。
前記一般式(1b)、一般式(3a)、一般式(4b)、一般式(5b)、および一般式(6b)において、R2aは、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Yは、ヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示す。
4bは、C(=O)Rで表される基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、LGは脱離能を有する官能基を示す。

【公開番号】特開2011−153116(P2011−153116A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17405(P2010−17405)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303020956)三井化学アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】