アニール装置およびこれを用いたアニール方法
【課題】炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板の歪みを除去することができるアニール装置およびこれを用いたアニール方法を提供する。
【解決手段】本発明のアニール装置10は、炭化ケイ素基板30を収容する炉心管11と、その側面11aに沿って配置されたヒーター21,22からなる加熱手段12,13と、炉心管11および加熱手段12,13を内在させるアニール空間14aを有するアニール炉14と、を備え、炉心管11の両端に設けられたフランジ11bと、これらに個別にシール材15を挟んでクランプ固定された蓋体16と、蓋体16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側のパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、その途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20と、を備えたことを特徴とする。
【解決手段】本発明のアニール装置10は、炭化ケイ素基板30を収容する炉心管11と、その側面11aに沿って配置されたヒーター21,22からなる加熱手段12,13と、炉心管11および加熱手段12,13を内在させるアニール空間14aを有するアニール炉14と、を備え、炉心管11の両端に設けられたフランジ11bと、これらに個別にシール材15を挟んでクランプ固定された蓋体16と、蓋体16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側のパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、その途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20と、を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置およびこれを用いたアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)基板は、次世代パワーデバイス、特に、ハイブリッド自動車の制御用デバイスへの適用が期待され、大手自動車、電気メーカーで活発な研究開発が行われている。
炭化ケイ素基板には、n型用には窒素(N)やリン(P)がドーパントとして適用され、p型用にはボロン(B)やアルミニウム(Al)がドーパントとして適用されている。これらのドーパントはSiC基板に制御性の良いイオン注入法で導入される。さらに、イオン注入による結晶のダメージを回復し、注入したドーパントを高い割合で活性化するには、1500℃以上の温度にてアニーリング処理が行われる。
このように炭化ケイ素基板を1500℃以上の高温にてアニーリング処理すると、炭化ケイ素基板の表面からケイ素(Si)が蒸発し、表面荒れを引き起こすばかりでなく、ドーパントも一緒に蒸発してシート抵抗を高くするという問題があった。これらの問題を抑制するためには、シラン雰囲気中におけるアニーリング処理や高速昇温、短時間アニーリング処理が研究されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【非特許文献1】藤平景子ほか,第64回応用物理学会学術講演会予稿集,1,354(203)
【非特許文献2】J.Senzaki,K.Fukuda and K.Arai,J.Appl.Phys.,94,2942(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の炭化ケイ素基板のアニーリング処理では、炭化ケイ素基板の表面からケイ素原子や炭素原子、注入原子などが脱離するという問題や、表面の平坦性が劣化するという問題があった。このような表面の平坦性に劣る炭化ケイ素基板は、各種デバイスに適用するには特性が不十分であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板の歪みを除去することができるアニール装置およびこれを用いたアニール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアニール装置は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置であって、前記炭化ケイ素基板を収容する炉心管と、前記炉心管の側面に沿って配置されたヒーターからなる加熱手段と、前記炉心管および前記加熱手段を内在させるアニール空間を有するアニール炉と、を少なくとも備え、さらに、前記炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、前記フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、前記蓋体にそれぞれ設けられ、前記炉心管内へ連通するパイプと、前記プロセスガスの供給側に位置する前記パイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、前記プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、前記プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のアニール方法は、本発明のアニール装置を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法であって、前記プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、当該プロセスガス雰囲気下にて、前記炭化ケイ素基板をアニーリング処理することを特徴とする。
【0007】
本発明のアニール方法において、前記プロセスガスはアルゴンガスであることが好ましい。
前記アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアニール装置によれば、炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、を有するので、炉心管の内を高気密状態にすることができる。また、蓋体にそれぞれ設けられ、炉心管内へ連通するパイプと、プロセスガスの供給側に位置するパイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を有するので、炉心管内に供給されるプロセスガスに含まれる水分(H2O)、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)などの不純物を、極めて低濃度まで除去することができる。したがって、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【0009】
本発明のアニール方法によれば、本発明のアニール装置を用い、プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、このプロセスガス雰囲気下にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するので、高純度のプロセスガス雰囲気下にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理することができるから、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のアニール装置およびこれを用いたアニール方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明のアニール装置の一実施形態を示すものであり、一部を断面とした概略構成図である。
この実施形態のアニール装置10は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するための装置である。
アニール装置10は、炭化ケイ素基板30を収容する炉心管11と、炉心管11の側面11aに沿って配置された加熱手段12,13と、炉心管11および加熱手段12,13を内在させるアニール空間14aを有するアニール炉14と、炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bと、フランジ11b,11bに個別にシール材15,15を挟んでクランプ固定された蓋体16,16と、蓋体16,16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側に位置するパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、プロセスガス供給ライン19の途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20とから概略構成されている。
【0012】
また、加熱手段12は複数のヒーター21から構成され、加熱手段13は複数のヒーター22から構成されている。
そして、これらのヒーター21,22は、炉心管11の炭化ケイ素基板30が収容、配置される部分を囲む伝熱部材23に設けられた挿入部に挿入されている。
【0013】
また、ガス純化手段20には、電磁バルブ24を介して、プロセスガスの供給源であるガスボンベ25が接続されている。
さらに、プロセスガスの排出側に位置するパイプ18には、炉心管11からプロセスガスを排出するプロセスガス排出ライン26が接続されている。
【0014】
炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bには、個別にシール材15,15を挟んで、クランプ27,27により、着脱可能にクランプ固定されている。
また、蓋部材16,16には、炉心管11内へ連通するパイプ17,18が、融着あるいは接着されて一体に設けられている。
【0015】
炉心管11としては、その内面にCVD法により炭化ケイ素膜が成膜された石英ガラス管が用いられる。
シール材15としては、耐熱Oリングが用いられる。
ガス純化手段20としては、例えば、日本インテグリス社製の「ゲートキーパー ガスピューリファイヤー CE30KFI4R」が用いられる。
【0016】
このアニール装置10は、炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bと、フランジ11b,11bに個別にシール材15,15を挟んでクランプ固定された蓋体16,16と、を有するので、炉心管11内を高気密状態にすることができる。
【0017】
また、蓋体16,16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側に位置するパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、プロセスガス供給ライン19の途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20と、を有するので、炉心管11内に供給されるプロセスガスにとって不純物として含まれる水分(H2O)、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)などを、極めて低濃度まで除去することができる。特に、プロセスガスに含まれる水分をpptレベルまで除去することができる。
【0018】
なお、本発明において、プロセスガスとは、アルゴン(Ar)ガス、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガスから選択される1種または2種以上のガスのことであり、炭化ケイ素基板のアニーリング処理などのプロセスに用いられるガスのことである。
炭化ケイ素基板をアニーリング処理する場合には、アルゴンガスが用いられる。
炭化ケイ素基板上に、絶縁膜を形成する場合には、酸素ガスまたは窒素ガスが用いられる。
【0019】
このように、このアニール装置10によれば、炭化ケイ素基板30の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【0020】
次に、図1を参照して、このアニール装置10を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法を説明する。
まず、炭化ケイ素基板をSC−1(Standard Clean 1)洗浄し、炭化ケイ素基板に付着しているパーティクルを除去する。
SC−1洗浄液としては、アンモニア水−過酸化水素水(NH4OH/H2O2/H2O)からなる洗浄液が用いられる。
【0021】
次いで、高温アニール装置10の炉心管11内に、SC−1洗浄した炭化ケイ素基板30を配置し、炉心管11の両端に設けられたフランジ11b,11bのそれぞれに、シール材15,15を挟んで、クランプ27,27により蓋体16,16をクランプ固定する。これにより、炭化ケイ素基板30が配置された炉心管11内を高気密状態とする。
【0022】
次いで、電磁バルブ24を開いて、ガスボンベ25から炉心管11内に、プロセスガスとしてアルゴンガスの供給を開始する(図1に示す矢印方向)。
このとき、ガスボンベ25から送られたアルゴンガスは、ガス純化手段20を介して炉心管11内に供給される。ガス純化手段20では、アルゴンガスに含まれる水分、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの不純物を、その不純物濃度が1ppb以下になるように除去する。特に、プロセスガスがアルゴンガスである場合、アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下となるようにする。したがって、炉心管11内に供給されるアルゴンガスは、極めて純度の高いガスである。
【0023】
次いで、炉心管11内の雰囲気がアルゴンガスに置換された後、加熱手段12,13により、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃〜1700℃にて、30分〜60分間加熱して、アニーリング処理する。
なお、炭化ケイ素基板30のアニーリング処理中、炉心管11内にアルゴンガスを供給し続ける。
【0024】
次いで、炉心管11からアニーリング処理を施した炭化ケイ素基板30を取り出して、炭化ケイ素基板30のアニーリング処理が完了する。
【0025】
このアニール装置10を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法によれば、炉心管11内を高気密状態に保ったまま、高純度のアルゴンガスを炉心管11内に供給することができるので、炭化ケイ素基板30の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例または比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
「実施例1」
まず、測定範囲を100μm×100μmとしてAFM(Atomic Force Microscope、原子間力顕微鏡)を用いて、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を所定の距離を走査して観測した表面粗さのプロファイルを図2に示す。
この観測の結果、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、2.37nmであった。
次に、この炭化ケイ素基板をSC−1洗浄した。
SC−1洗浄液としては、アンモニア水−過酸化水素水(NH4OH:H2O2:H2O=1:1:5(容積比))からなるものを用いた。
次いで、図1に示した高温アニール装置10の炉心管11内に、SC−1洗浄した炭化ケイ素基板30を配置し、炉心管11の両端に設けられたフランジ11b,11bのそれぞれに、シール材15,15を挟んで、クランプ27,27により蓋体16,16をクランプ固定した。
次いで、電磁バルブ24を開いて、ガスボンベ25からガス純化手段20(日本インテグリス社製「ゲートキーパー ガスピューリファイヤー CE30KFI4R」)を介して、炉心管11内に高純度アルゴン(Ar)ガス(99.9999%)の供給を開始した。
次いで、炉心管11内の雰囲気がアルゴンガスに置換された後、加熱手段12,13により、炉心管11内の炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した。このアニーリング処理中の水分量は、10pptであった。
次いで、炉心管11からアニーリング処理した炭化ケイ素基板30を取り出した。
次いで、測定範囲を100μm×100μmとしてAFMを用いて、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図3に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、4.27nmであった。
【0028】
「実施例2」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図4に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、6.93nmであった。
【0029】
「実施例3」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図5に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、3.54nmであった。
【0030】
「実施例4」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図6に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、9.28nmであった。
【0031】
「比較例1」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
ガス純化手段を適用しなかった以外は、図1に示したアニール装置10と同様のアニール装置を用い、実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。このアニーリング処理中の水分量は、0.4ppmであった。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図7に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、4.53nmであった。
【0032】
「比較例2」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図8に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、14.9nmであった。
【0033】
「比較例3」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図9に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、5.01nmであった。
【0034】
「比較例4」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図10に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、19.1nmであった。
【0035】
【表1】
【0036】
また、表1に示したアニーリング処理温度、アニーリング処理時間および自乗平均面粗さの関係を図11に示す。
この図11において、縦軸は自乗平均面粗さ(nm)、横軸はアニーリング処理時間(分)を示す。
【0037】
実施例1と比較例1を比べると、比較例1では自乗平均面粗さ(RMS)が4.53nmであったが、実施例1では自乗平均面粗さ(RMS)が4.27nmに改善された。
実施例2と比較例2を比べると、比較例2では自乗平均面粗さ(RMS)が14.9nmであったが、実施例2では自乗平均面粗さ(RMS)が6.93nmに改善された。
実施例3と比較例3を比べると、比較例3では自乗平均面粗さ(RMS)が5.01nmであったが、実施例3では自乗平均面粗さ(RMS)が3.54nmに改善された。
実施例4と比較例4を比べると、比較例4では自乗平均面粗さ(RMS)が19.1nmであったが、実施例4では自乗平均面粗さ(RMS)が9.28nmに改善された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のアニール装置の一実施形態を示すものであり、一部を断面とした概略構成図である。
【図2】アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を所定の距離を走査して観測した表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図3】実施例1において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図4】実施例2において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図5】実施例3において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図6】実施例4において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図7】比較例1において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図8】比較例2において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図9】比較例3において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図10】比較例4において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図11】アニーリング処理温度、アニーリング処理時間および自乗平均面粗さの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10・・・アニール装置、11・・・炉心管、11b・・・フランジ、12,13・・・加熱手段、14・・・アニール炉、15・・・シール材、16・・・蓋体、17,18・・・パイプ、19・・・プロセスガス供給ライン、20・・・ガス純化手段、21,22・・・ヒーター、23・・・伝熱部材、24・・・電磁バルブ、25・・・ガスボンベ、26・・・プロセスガス排出ライン、27・・・クランプ、30・・・炭化ケイ素基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置およびこれを用いたアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)基板は、次世代パワーデバイス、特に、ハイブリッド自動車の制御用デバイスへの適用が期待され、大手自動車、電気メーカーで活発な研究開発が行われている。
炭化ケイ素基板には、n型用には窒素(N)やリン(P)がドーパントとして適用され、p型用にはボロン(B)やアルミニウム(Al)がドーパントとして適用されている。これらのドーパントはSiC基板に制御性の良いイオン注入法で導入される。さらに、イオン注入による結晶のダメージを回復し、注入したドーパントを高い割合で活性化するには、1500℃以上の温度にてアニーリング処理が行われる。
このように炭化ケイ素基板を1500℃以上の高温にてアニーリング処理すると、炭化ケイ素基板の表面からケイ素(Si)が蒸発し、表面荒れを引き起こすばかりでなく、ドーパントも一緒に蒸発してシート抵抗を高くするという問題があった。これらの問題を抑制するためには、シラン雰囲気中におけるアニーリング処理や高速昇温、短時間アニーリング処理が研究されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【非特許文献1】藤平景子ほか,第64回応用物理学会学術講演会予稿集,1,354(203)
【非特許文献2】J.Senzaki,K.Fukuda and K.Arai,J.Appl.Phys.,94,2942(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の炭化ケイ素基板のアニーリング処理では、炭化ケイ素基板の表面からケイ素原子や炭素原子、注入原子などが脱離するという問題や、表面の平坦性が劣化するという問題があった。このような表面の平坦性に劣る炭化ケイ素基板は、各種デバイスに適用するには特性が不十分であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板の歪みを除去することができるアニール装置およびこれを用いたアニール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアニール装置は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置であって、前記炭化ケイ素基板を収容する炉心管と、前記炉心管の側面に沿って配置されたヒーターからなる加熱手段と、前記炉心管および前記加熱手段を内在させるアニール空間を有するアニール炉と、を少なくとも備え、さらに、前記炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、前記フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、前記蓋体にそれぞれ設けられ、前記炉心管内へ連通するパイプと、前記プロセスガスの供給側に位置する前記パイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、前記プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、前記プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のアニール方法は、本発明のアニール装置を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法であって、前記プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、当該プロセスガス雰囲気下にて、前記炭化ケイ素基板をアニーリング処理することを特徴とする。
【0007】
本発明のアニール方法において、前記プロセスガスはアルゴンガスであることが好ましい。
前記アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアニール装置によれば、炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、を有するので、炉心管の内を高気密状態にすることができる。また、蓋体にそれぞれ設けられ、炉心管内へ連通するパイプと、プロセスガスの供給側に位置するパイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を有するので、炉心管内に供給されるプロセスガスに含まれる水分(H2O)、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)などの不純物を、極めて低濃度まで除去することができる。したがって、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【0009】
本発明のアニール方法によれば、本発明のアニール装置を用い、プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、このプロセスガス雰囲気下にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するので、高純度のプロセスガス雰囲気下にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理することができるから、炭化ケイ素基板の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のアニール装置およびこれを用いたアニール方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明のアニール装置の一実施形態を示すものであり、一部を断面とした概略構成図である。
この実施形態のアニール装置10は、プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するための装置である。
アニール装置10は、炭化ケイ素基板30を収容する炉心管11と、炉心管11の側面11aに沿って配置された加熱手段12,13と、炉心管11および加熱手段12,13を内在させるアニール空間14aを有するアニール炉14と、炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bと、フランジ11b,11bに個別にシール材15,15を挟んでクランプ固定された蓋体16,16と、蓋体16,16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側に位置するパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、プロセスガス供給ライン19の途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20とから概略構成されている。
【0012】
また、加熱手段12は複数のヒーター21から構成され、加熱手段13は複数のヒーター22から構成されている。
そして、これらのヒーター21,22は、炉心管11の炭化ケイ素基板30が収容、配置される部分を囲む伝熱部材23に設けられた挿入部に挿入されている。
【0013】
また、ガス純化手段20には、電磁バルブ24を介して、プロセスガスの供給源であるガスボンベ25が接続されている。
さらに、プロセスガスの排出側に位置するパイプ18には、炉心管11からプロセスガスを排出するプロセスガス排出ライン26が接続されている。
【0014】
炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bには、個別にシール材15,15を挟んで、クランプ27,27により、着脱可能にクランプ固定されている。
また、蓋部材16,16には、炉心管11内へ連通するパイプ17,18が、融着あるいは接着されて一体に設けられている。
【0015】
炉心管11としては、その内面にCVD法により炭化ケイ素膜が成膜された石英ガラス管が用いられる。
シール材15としては、耐熱Oリングが用いられる。
ガス純化手段20としては、例えば、日本インテグリス社製の「ゲートキーパー ガスピューリファイヤー CE30KFI4R」が用いられる。
【0016】
このアニール装置10は、炉心管11の両端にそれぞれ設けられたフランジ11b,11bと、フランジ11b,11bに個別にシール材15,15を挟んでクランプ固定された蓋体16,16と、を有するので、炉心管11内を高気密状態にすることができる。
【0017】
また、蓋体16,16にそれぞれ設けられ、炉心管11内へ連通するパイプ17,18と、プロセスガスの供給側に位置するパイプ17に接続されたプロセスガス供給ライン19と、プロセスガス供給ライン19の途中に設けられ、プロセスガスを純化処理するガス純化手段20と、を有するので、炉心管11内に供給されるプロセスガスにとって不純物として含まれる水分(H2O)、酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)などを、極めて低濃度まで除去することができる。特に、プロセスガスに含まれる水分をpptレベルまで除去することができる。
【0018】
なお、本発明において、プロセスガスとは、アルゴン(Ar)ガス、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガスから選択される1種または2種以上のガスのことであり、炭化ケイ素基板のアニーリング処理などのプロセスに用いられるガスのことである。
炭化ケイ素基板をアニーリング処理する場合には、アルゴンガスが用いられる。
炭化ケイ素基板上に、絶縁膜を形成する場合には、酸素ガスまたは窒素ガスが用いられる。
【0019】
このように、このアニール装置10によれば、炭化ケイ素基板30の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【0020】
次に、図1を参照して、このアニール装置10を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法を説明する。
まず、炭化ケイ素基板をSC−1(Standard Clean 1)洗浄し、炭化ケイ素基板に付着しているパーティクルを除去する。
SC−1洗浄液としては、アンモニア水−過酸化水素水(NH4OH/H2O2/H2O)からなる洗浄液が用いられる。
【0021】
次いで、高温アニール装置10の炉心管11内に、SC−1洗浄した炭化ケイ素基板30を配置し、炉心管11の両端に設けられたフランジ11b,11bのそれぞれに、シール材15,15を挟んで、クランプ27,27により蓋体16,16をクランプ固定する。これにより、炭化ケイ素基板30が配置された炉心管11内を高気密状態とする。
【0022】
次いで、電磁バルブ24を開いて、ガスボンベ25から炉心管11内に、プロセスガスとしてアルゴンガスの供給を開始する(図1に示す矢印方向)。
このとき、ガスボンベ25から送られたアルゴンガスは、ガス純化手段20を介して炉心管11内に供給される。ガス純化手段20では、アルゴンガスに含まれる水分、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの不純物を、その不純物濃度が1ppb以下になるように除去する。特に、プロセスガスがアルゴンガスである場合、アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下となるようにする。したがって、炉心管11内に供給されるアルゴンガスは、極めて純度の高いガスである。
【0023】
次いで、炉心管11内の雰囲気がアルゴンガスに置換された後、加熱手段12,13により、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃〜1700℃にて、30分〜60分間加熱して、アニーリング処理する。
なお、炭化ケイ素基板30のアニーリング処理中、炉心管11内にアルゴンガスを供給し続ける。
【0024】
次いで、炉心管11からアニーリング処理を施した炭化ケイ素基板30を取り出して、炭化ケイ素基板30のアニーリング処理が完了する。
【0025】
このアニール装置10を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法によれば、炉心管11内を高気密状態に保ったまま、高純度のアルゴンガスを炉心管11内に供給することができるので、炭化ケイ素基板30の表面の平坦性を劣化させることなく、炭化ケイ素基板をアニーリング処理し、その歪みを除去することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例または比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
「実施例1」
まず、測定範囲を100μm×100μmとしてAFM(Atomic Force Microscope、原子間力顕微鏡)を用いて、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を所定の距離を走査して観測した表面粗さのプロファイルを図2に示す。
この観測の結果、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、2.37nmであった。
次に、この炭化ケイ素基板をSC−1洗浄した。
SC−1洗浄液としては、アンモニア水−過酸化水素水(NH4OH:H2O2:H2O=1:1:5(容積比))からなるものを用いた。
次いで、図1に示した高温アニール装置10の炉心管11内に、SC−1洗浄した炭化ケイ素基板30を配置し、炉心管11の両端に設けられたフランジ11b,11bのそれぞれに、シール材15,15を挟んで、クランプ27,27により蓋体16,16をクランプ固定した。
次いで、電磁バルブ24を開いて、ガスボンベ25からガス純化手段20(日本インテグリス社製「ゲートキーパー ガスピューリファイヤー CE30KFI4R」)を介して、炉心管11内に高純度アルゴン(Ar)ガス(99.9999%)の供給を開始した。
次いで、炉心管11内の雰囲気がアルゴンガスに置換された後、加熱手段12,13により、炉心管11内の炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した。このアニーリング処理中の水分量は、10pptであった。
次いで、炉心管11からアニーリング処理した炭化ケイ素基板30を取り出した。
次いで、測定範囲を100μm×100μmとしてAFMを用いて、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図3に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、4.27nmであった。
【0028】
「実施例2」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図4に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、6.93nmであった。
【0029】
「実施例3」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図5に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、3.54nmであった。
【0030】
「実施例4」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図6に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、9.28nmであった。
【0031】
「比較例1」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
ガス純化手段を適用しなかった以外は、図1に示したアニール装置10と同様のアニール装置を用い、実施例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。このアニーリング処理中の水分量は、0.4ppmであった。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図7に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、4.53nmであった。
【0032】
「比較例2」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、30分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図8に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、14.9nmであった。
【0033】
「比較例3」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1300℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図9に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、5.01nmであった。
【0034】
「比較例4」
実施例1と同様にして、アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。
次に、炉心管11内に配置した炭化ケイ素基板30を、1600℃にて、60分間加熱して、アニーリング処理した以外は比較例1と同様にして、炭化ケイ素基板30をアニーリング処理した。
次いで、実施例1と同様にして、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面を観測し、その表面の自乗平均面粗さ(RMS)を算出した。結果を表1に示す。
アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の計測した領域の中の任意の線上における表面粗さのプロファイルを図10に示す。
この観測の結果、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の自乗平均面粗さ(RMS)は、19.1nmであった。
【0035】
【表1】
【0036】
また、表1に示したアニーリング処理温度、アニーリング処理時間および自乗平均面粗さの関係を図11に示す。
この図11において、縦軸は自乗平均面粗さ(nm)、横軸はアニーリング処理時間(分)を示す。
【0037】
実施例1と比較例1を比べると、比較例1では自乗平均面粗さ(RMS)が4.53nmであったが、実施例1では自乗平均面粗さ(RMS)が4.27nmに改善された。
実施例2と比較例2を比べると、比較例2では自乗平均面粗さ(RMS)が14.9nmであったが、実施例2では自乗平均面粗さ(RMS)が6.93nmに改善された。
実施例3と比較例3を比べると、比較例3では自乗平均面粗さ(RMS)が5.01nmであったが、実施例3では自乗平均面粗さ(RMS)が3.54nmに改善された。
実施例4と比較例4を比べると、比較例4では自乗平均面粗さ(RMS)が19.1nmであったが、実施例4では自乗平均面粗さ(RMS)が9.28nmに改善された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のアニール装置の一実施形態を示すものであり、一部を断面とした概略構成図である。
【図2】アニーリング処理前の炭化ケイ素基板の表面を所定の距離を走査して観測した表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図3】実施例1において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図4】実施例2において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図5】実施例3において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図6】実施例4において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図7】比較例1において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図8】比較例2において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図9】比較例3において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図10】比較例4において、アニーリング処理後の炭化ケイ素基板の表面粗さのプロファイルを示すグラフである。
【図11】アニーリング処理温度、アニーリング処理時間および自乗平均面粗さの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10・・・アニール装置、11・・・炉心管、11b・・・フランジ、12,13・・・加熱手段、14・・・アニール炉、15・・・シール材、16・・・蓋体、17,18・・・パイプ、19・・・プロセスガス供給ライン、20・・・ガス純化手段、21,22・・・ヒーター、23・・・伝熱部材、24・・・電磁バルブ、25・・・ガスボンベ、26・・・プロセスガス排出ライン、27・・・クランプ、30・・・炭化ケイ素基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置であって、
前記炭化ケイ素基板を収容する炉心管と、
前記炉心管の側面に沿って配置されたヒーターからなる加熱手段と、
前記炉心管および前記加熱手段を内在させるアニール空間を有するアニール炉と、を少なくとも備え、
さらに、前記炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、
前記フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、
前記蓋体にそれぞれ設けられ、前記炉心管内へ連通するパイプと、
前記プロセスガスの供給側に位置する前記パイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、
前記プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、前記プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を備えたことを特徴とするアニール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアニール装置を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法であって、
前記プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、当該プロセスガス雰囲気下にて、前記炭化ケイ素基板をアニーリング処理することを特徴とするアニール方法。
【請求項3】
前記プロセスガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項2に記載のアニール方法。
【請求項4】
前記アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下とすることを特徴とする請求項3に記載のアニール方法。
【請求項1】
プロセスガス雰囲気下、1300℃〜1700℃のプロセス温度にて、炭化ケイ素基板をアニーリング処理するためのアニール装置であって、
前記炭化ケイ素基板を収容する炉心管と、
前記炉心管の側面に沿って配置されたヒーターからなる加熱手段と、
前記炉心管および前記加熱手段を内在させるアニール空間を有するアニール炉と、を少なくとも備え、
さらに、前記炉心管の両端にそれぞれ設けられたフランジと、
前記フランジに個別にシール材を挟んでクランプ固定された蓋体と、
前記蓋体にそれぞれ設けられ、前記炉心管内へ連通するパイプと、
前記プロセスガスの供給側に位置する前記パイプに接続されたプロセスガス供給ラインと、
前記プロセスガス供給ラインの途中に設けられ、前記プロセスガスを純化処理するガス純化手段と、を備えたことを特徴とするアニール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアニール装置を用いた炭化ケイ素基板のアニール方法であって、
前記プロセスガス中の不純物濃度を1ppb以下とし、当該プロセスガス雰囲気下にて、前記炭化ケイ素基板をアニーリング処理することを特徴とするアニール方法。
【請求項3】
前記プロセスガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項2に記載のアニール方法。
【請求項4】
前記アルゴンガス中の水および/または酸素の濃度を100ppt以下とすることを特徴とする請求項3に記載のアニール方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−108973(P2010−108973A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276595(P2008−276595)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【特許番号】特許第4289509号(P4289509)
【特許公報発行日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【特許番号】特許第4289509号(P4289509)
【特許公報発行日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
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