説明

アミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法

ポリエステル成分とアミド成分との相溶性を向上させ、両成分の相分離を減少できるアミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法が開示される。ポリエステル共重合体の製造方法は、大環状ポリエステルオリゴマーと環状アミドモノマーとを重合する段階を含む。ここで、前記大環状ポリエステルオリゴマーは、非障害アミンの存在下に、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルと、ジカルボン酸クロライドとを反応させて得られ、前記ビス(ヒドロキシアルキル)エステルは、ポリエステル樹脂を解重合して得られることが好ましい。また、前記環状アミドモノマーは、前記環状構造を持ち、2つ以上の炭素原子を有するε−カプロラクタムであり、前記大環状ポリエステルオリゴマーの使用量は、大環状ポリエステルオリゴマー及び前記環状アミドモノマーの全体量に対し、重量比5〜99%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法に関し、より詳しくは、ポリエステル成分とアミド成分との相溶性を向上させることで、ポリエステル成分とアミド成分との相分離を減少できる、アミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法に関する。ポリエステル共重合体は、ポリエステル成分及びアミド成分の種類や含量の調節により、多様な用途に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂は、相溶性が低いため、混合される間に相分離されやすい。溶融混合(Melt Blending)によるエステル化反応の遂行、或いは、それぞれのモノマーの重合反応の遂行の際にも、良好な特性を持つ共重合体を得ることが困難である。また、透明ポリエステルの透明性がその内部のアミド成分によって損失される恐れがある。よって、ポリエステル系樹脂とポリアミド系樹脂との相溶性を向上させて、両方の樹脂の好適な特性を持つ共重合体合成に関する多くの研究が実施されてきた。例えば、日本国特開昭51-103191は、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate:PBT)と、ナイロン6とを溶融混合し、これらを固相重合により共重合体の機械的な特性を向上できる方法を開示した。また、ポリエチレンテレフタルレート(polyethylene terephthalate:PET)と、ナイロン66との溶融混合の間、 p-トルエンスルホン(TsOH)を用いてエステル−アミド(Ester-Amide)交換反応を行うことで、共重合体を形成する方法も知られている。また、ポリエステル及びナイロンの特性を持つ製品としては、MXDA(m-xylenediamine)と、アジピン酸(Adipic Acid)とを縮合重合して生成されたMXD6がガス遮断性物質として市販されており、ポリアリレート(polyarylate)とナイロンとの混ぜ物であるX−9が耐衝撃性の改良剤として市販されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の目的は、相溶性に優れたポリエステル成分及びアミド成分を使用することにより相分離を減少できる、アミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的は、ポリエステル成分及びアミド成分の種類や含量の調節により、多様な用途に使用可能なポリエステル共重合体の製造方法を提供することにある。
【0005】
本発明のさらに他の目的は、透明性に優れ、環境的且つ経済的な観点から有用なアミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、大環状ポリエステルオリゴマーと環状アミドモノマーとを重合する段階を含む、アミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法を提供する。ここで、前記大環状ポリエステルオリゴマーは、非障害アミンの存在下に、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルと、ジカルボン酸クロライドとを反応させて得られ、前記ビス(ヒドロキシアルキル)エステルは、ポリエステル樹脂を解重合して得られることが好ましい。また、前記環状アミドモノマーは、前記環状構造を持ち、2つ以上の炭素原子を有するε−カプロラクタムであり、前記大環状ポリエステルオリゴマーの使用量は、大環状ポリエステルオリゴマー及び前記環状アミドモノマーの全体に対し、重量比5〜99%であることが好ましい。
【0007】
本発明の完全な理解及び多くの利点については、後述する詳細な説明により参照可能であろう。
【0008】
本発明に係るアミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法は、反応原料として大環状ポリエステルオリゴマー(macrocyclic polyester oligomer)と環状アミドモノマーとを使用する。本発明に使用される大環状ポリエステルオリゴマーは、下記式1の繰返し単位を含む。
【化1】


ここで、Xは2〜6個の炭素原子を持つアルキレンラジカル又はオキシアルキレンラジカルで、Yは脂肪族、芳香族又は脂環式(alicyclic)ラジカルで、好ましくはフェニレンラジカルである。本発明に使用される大環状ポリエステルオリゴマーにおいて、上記繰返し単位の個数は1〜50、好ましくは2〜20、より好ましくは4〜20である。
【0009】
大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート(macrocyclic poly(alkylene dicarboxylate))オリゴマーは、分岐鎖(brached-chain)ポリエステルの重合のための反応物として使用されたことがあり(米国特許5,389,719号参照)、米国特許第5,231,161号に開示されたように、非障害(unhindered)アミンの存在又は非障害 アミン及びトリエチルアミン(triethylamine)のような第3級アミンの存在下に、ビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレート(bis(4-hydroxybutyl)terephthalate)などのビス(ヒドロキシアルキル)エステル(bis(hydroxyalkly)ester)と、テレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride)などのジカルボン酸クロライド(dicarboxylic acid chloride)とを反応させて得られる。ポリエステルオリゴマーの製造に使用されるビス(ヒドロキシアルキル)エステルは、ポリエステル樹脂の化学的なリサイクル過程である解重合反応により得ることが好ましい。解重合反応に有用なポリエステル樹脂の例としては、成形されたポリエステル樹脂製品、成形されたポリエステル樹脂製品を粉砕したポリエステル破片、及びポリエステル成形工程中又はポリエステル重合工程中に発生したポリエステル廃棄物(waste)を含む。上記により得られたポリエステル破片は、反応器内に位置し、エチレングリコールなどのグリコール系化合物が過剰量(ポリエステル粉砕粒子100重量部に対し、約100〜300重量部)添加され、解重合反応が高圧下で行われる。必要に応じて、一定量の解重合触媒が反応器に投入されることができる。解重合触媒の例としてアンチモン系の触媒、チタン系の触媒、ゲルマニウム系の触媒 等の公知の多様な触媒を含み、好ましくはチタン酸系の触媒を含む。解重合反応の圧力は反応器の耐久性に依存する。圧力は反応器の許容範囲内で最大限増加することが好ましく、例えば、1.5〜2.5kgf/cmである。また、解重合は一般のポリエステル重合反応の温度で行われ、例えば、約250℃〜320℃である。そして、解重合により得られたビス(ヒドロキシアルキル)エステルをメチレンクロライドなどの有機溶媒に添加して溶液を作り、別にクロロベンゼン(chlorobenzene)などの有機溶媒を用いてテレフタロイルクロライド溶液を用意する。次に、用意された両溶液を、トリエチルアミンなどの第3級アミンと1,4−ジアザビシクロオクタン(diazabicyclo octane)などの非障害アミンとをメチレンクロライドに混合して製造した溶液に、常温で、撹拌する約30〜40分間に投入する。更に、混合物を5〜10分間撹拌した後、濾過及び乾燥により、大環状ポリエステルオリゴマーが得られる。大環状ポリエステルオリゴマーは、米国特許第5,756,644号に開示されたように、上記式1の繰返し単位を含むモノマーを固体サポートに支持し、支持されたサポートを縮合重合することにより、直鎖状ポリエステル重合体の形態として得られる。
【0010】
本発明に係るポリエステル共重合体の製造方法に使用される環状アミドモノマーは、開環重合が可能な環状構造を持つアミドモノマーを含み、詳しくは環状構造を持ち、2つ以上の炭素原子を有するアミドモノマー、より詳しくはε−カプロラクタム(caprolactam)を含むことができる。
【0011】
ポリエステルオリゴマーとアミドモノマーとの重合は、窒素雰囲気においてポリエステルオリゴマーを溶融させ、必要に応じて所定量の水分を含むアミドモノマーを添加して、混合物を撹拌する。このとき、大環状ポリエステルオリゴマーの使用量は、大環状ポリエステルオリゴマー及び環状アミドモノマーの全体量に対し、重量比1〜99%、好ましくは5〜99%、より好ましくは10〜90%である。重量比は共重合体に要求される特性によって変化できる。もし、ポリエステルオリゴマーの量が、1重量%未満であれば、ポリエステルオリゴマーに要求された特性を持つ共重合物が得られない。一方、ポリエステルオリゴマーの量が、99重量%を超過すればアミドモノマーに要求された特性を持つ共重合物が得られない。ポリエステルに比べ、アミドモノマーは少量導入しても共重合体の特性により一層影響を与える。大環状ポリエステルオリゴマーと環状アミドモノマーとの重合反応温度は120℃〜300℃、好ましくは150℃〜260℃である。反応温度が、120℃未満であれば反応を遂行することが難しい。それと反対に、反応温度が、300℃を超過すれば熱分解を発生させる恐れがある。必要に応じてアンチモン系の触媒、ゲルマニウム系の触媒、チタン系の触媒などの通常の各種重合触媒を0〜300ppm、好ましくは1〜300ppmの量で使用することができる。反応雰囲気は窒素循環雰囲気又は真空であり、それは反応器タイプ及び所望の重合度により選択することができる。反応時間は重合反応装置及び所望の重合度によって制御できる。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、通常、ポリエステルとアミドとは、それぞれ重合反応メカニズムが異なり、相溶性が低い。よって、これらを共重合することは容易でない。しかし、本発明で使用された大環状ポリエステルオリゴマーと環状アミドモノマーとは、開環重合と同一のメカニズムにより反応する。よって、本発明は、現在まで試みられた他の共重合法と比較して、両成分の相溶性を向上でき、反応時間を50%減少でき、生産性を増加できる。本発明の方法により製造されたポリエステル共重合体は、反応物の量及び反応条件を調節して多様な特性を持つように制御できる。本発明により製造されたポリエステル共重合体は、従来の重合又は混練により製造されたポリエステル−ナイロンの共重合体に代えることができ、成形されるプラスチック製品、容器、シート、フィルム、ファイバー、フィラメント等の生産用として使用することができる。さらに、本発明は、ポリエステル廃棄物を解重合してビス(ヒドロキシアルキル)エステルを得る環境上好ましいリサイクル工程を利用するという点で長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をより理解するために好ましい実施例を示す。なお、本発明は、後述する実施例により、限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
まず、ポリエステル成形品を洗浄し、粉砕機で粉砕して粉砕ポリエステル粒子を得た後、粉砕粒子50g及びエチレングリコール100gを反応器に投入した。反応器にチタン系の触媒としてチタン酸テトラブチルを0.5g投入し、約290℃で、2.0kgf/cmの圧力で撹拌しながら3時間解重合反応を行った。解重合が完了した後、残存するエチレングリコールを蒸留塔を用いて除去し、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルを得た。得られたビス(ヒドロキシアルキル)エステル10gにメチレンクロライド30mlを添加して溶液を作り、これとは別にテレフタロイルクロライド7gとクロロベンゼン30mlとを混合して溶液を製造した。用意した両溶液をトリエチルアミン80g及び1,4−ジアザビシクロオクタン300mgを含むメチレンクロライド溶媒250mlに約30分間撹拌しながら添加した。このとき、反応器の温度は常温に維持した。更に、反応混合物を約10分間撹拌してから濾過し、塩酸及び純水で洗浄した後、相分離ペーパーを用いて再度濾過し、真空乾燥法により溶媒を除去して、大環状ポリエステルオリゴマーを製造した。
【0015】
得られたポリエステルオリゴマー40gを丸底フラスコに移し、常圧で窒素を注入し、一定量の窒素を噴出することにより、丸底フラスコを完全に窒素を循環させることによって、反応器の内部温度を240℃に維持しながら、丸底フラスコを窒素雰囲気に維持した。ここに、5wt%の水分を吸収させたε−カプロラクタムパウダー5gを反応混合物に添加し、反応混合物を240℃に維持しながら30rpmの速度で撹拌した。反応混合物の粘度上昇による撹拌速度の減少を考慮して、撹拌器のパワーを増加させて速度30rpmで撹拌した。1時間の反応後、薄い黄色の反応混合物を得た。得られた反応混合物を冷水浴(bath)で冷却し、乾燥して生成物を得た。得られた生成物の分子量をGPCを用いて測定し、その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0016】
ε−カプロラクタムパウダー10gを添加し、30分間反応させた後、エチレングリコールに溶解させたアンチモン系の触媒100ppmを反応器に投入してから、更に1時間反応させたことを除いては、実施例1と同様な方法により生成物を得た。得られた生成物の分子量はGPCを用いて測定し、その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0017】
初期反応は窒素雰囲気下で30分間行われ、アンチモン系の触媒を投入してから、更に1時間、0.1torrの気圧下で反応させてことを除いては、実施例2と同様な方法により1.5時間反応させることにより、生成物を得た。得られた生成物の分子量はGPCを用いて測定し、その結果を表1に示す。
【表1】

【0018】
表1から、実施例1〜実施例3の重合方法により高分子量の共重合体が得られ、触媒を添加したり、真空圧下で、アミド結合を含む高分子量の共重合体が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大環状ポリエステルオリゴマーと環状アミドモノマーとを重合する段階を含むことを特徴とする、アミド結合を含むポリエステル共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記大環状ポリエステルオリゴマーは、下記式に示す繰返し単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル共重合体の製造方法。
【化1】


式中、Xは2〜6個の炭素原子を持つアルキレンラジカル又はオキシアルキレンラジカルで、Yは脂肪族、芳香族又は脂環式ラジカルで、前記大環状ポリエステルオリゴマーにおいて、前記繰返し単位の個数は1〜50である。
【請求項3】
前記大環状ポリエステルオリゴマーは、非障害アミンの存在下に、ビス(ヒドロキシアルキル)エステルと、ジカルボン酸クロライドとを反応させて得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ビス(ヒドロキシアルキル)エステルは、ポリエステル樹脂を解重合して得られることを特徴とする、請求項3に記載のポリエステル共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記環状アミドモノマーは、前記環状構造を持ち、2つ以上の炭素原子を有するε−カプロラクタムであることを特徴とする、請求項3に記載のポリエステル共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記大環状ポリエステルオリゴマーの使用量は、大環状ポリエステルオリゴマー及び前記環状アミドモノマーの全体量に対し、重量比5〜99%であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル共重合体の製造方法。

【公表番号】特表2007−534788(P2007−534788A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546851(P2006−546851)
【出願日】平成16年12月31日(2004.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003551
【国際公開番号】WO2005/063844
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】