説明

アミノ酸の製造方法

【課題】アミノ酸を製造するに際し、汎用な装置で高純度、高品質なものを製造する方法を提供する。特にヒダントイン誘導体をアルカリ溶液中で加水分解して得られるアミノ酸塩を含む水溶液に、さらに酸を加えてアミノ酸を製造する際に、特に好適に適用できる方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸塩と酸とを反応させて得られるアミノ酸を含む水溶液中に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させることを特徴とするアミノ酸の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料、電子材料、医農薬原体及び中間体、診断薬原体及び中間体として重要なアミノ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸は光学材料、電子材料、医農薬原体及び中間体、診断薬原体及び中間体の合成中間体として有用な化合物である。
【0003】
α−アミノ酸において、メチンプロトンを所有しないアミノ酸の製造方法としては、水/エタノール混合溶媒中で、3−ベンジルシクロブタノンに炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、シアン化カリウムを反応させヒダントイン環を有する化合物(以下、ヒダントイン誘導体とする場合もある)を形成し、ついで加水分解を実施する製造方法が知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Applied Radiation and Isotopes、58巻、P657、2003年 2.2 Chemistry
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人や動物に使用する医薬品類の製造には、中間体等においても高品質のものを使用することが要求される。この様に医薬品類の製造の初期段階から厳しい品質管理することで医薬品類の安全性、有効性が確保される。これらの管理は医薬品に限られたものではなく光学材料、電子材料分野においても同様に管理される。
【0005】
非特許文献1においては、ヒダントイン誘導体を形成後、水酸化ナトリウム水溶液で密閉条件下、高温(180℃)で加水分解反応を実施し、反応終了後、濃塩酸を用いて中和することによりpH6〜7に調節した該反応液を減圧条件下、濃縮・乾固し、更に得られる乾固物から大量の高温のエタノールを用いて目的物を抽出している。元々、この方法により得られるアミノ酸は、エタノールに対する溶解度が低いため、回収率が低く、更に混在する塩を除くため、ろ過しなければならず、操作性に問題があった。
【0006】
また、上記方法をそのまま工業化した場合には、以下のような設備的な問題が考えられる。まず、上記方法では、高圧反応設備であるオートクレーブが必要であるが、このオートクレーブは事故防止を目的として高度に反応条件を制御できることを要し、このため汎用性の低い製造設備を備える必要がある。特に内部の圧力のモニタリングは重要で、精密な圧力制御が行えると共に、異常反応が生じた際の安全対策が必須である。次に180℃の温度で反応を行うためには、熱媒体を循環する特別な製造設備が必要であり、電力の消費が著しいため環境問題にも影響を及ぼすものである。
【0007】
さらには、化学的にも以下のような課題があった。ヒダントイン誘導体の加水分解反応後、形成されたアミノ酸のナトリウム塩を中和する際に、中和条件によってはヒダントイン誘導体へ戻る逆反応が生じ、アミノ酸誘導体の品質、収率が著しく低下することが認められた。これは、ヒダントイン誘導体の加水分解反応によりアミノ酸とカルバメート塩が形成され、中和されることでカルバメート塩が活性化され、逆反応が形成されるものと推測される。
【0008】
特に、非特許文献1記載の後処理では、中和後、反応液全体を濃縮している。該処理は基本的に表面張力の大きな水を留去する処理であるため、濃縮に長時間を要すことと、及び乾固させるため終点の見極めが非常に困難であった。加えて、加熱条件下でなければ水の留去が実施できないため、加熱によりさらに上記逆反応が助長されるものと推定される。
【0009】
また、中和の際に加える酸と当量の塩化ナトリウムが副生し、反応系内に残存するため、目的とするアミノ酸誘導体の定量値の算出が煩雑となり、さらに、塩化ナトリウムが大量に残存するため、次工程で反応速度の低下、不純物の増加が懸念されていた。特にエステル化反応や禁水反応では残存するクロルイオンの影響が強いことが知られている。
【0010】
上述の実情から非特許文献1記載の製造方法では、設備、品質、経済性の観点から、工業的な製造方法としては改善の余地があった。このため汎用の製造設備を用い、高品質で高収率の製造方法の確立が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために種々検討した結果、アミノ酸塩と酸を反応させてアミノ酸誘導体とする際、直ちにアミノ酸を固体化(析出)させることにより、容易に高品質なアミノ酸が得られることを見い出した。特に、ヒダントイン環誘導体を加水分解することによりアミノ酸を製造するに際し、酸を添加して中和処理中または中和処理後に、直ちにアミノ酸を固体化し、逆反応を防止することで高効率、高品質、高経済性でアミノ酸を製造する方法を見出した。
【0012】
本発明は上記発見に基づいて完成するに至った。
【0013】
従って、本発明の目的とするところは、アミノ酸を高効率、高品質、高経済性で製造方法する方法を提供することにある。
【0014】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0015】
即ち、本発明は、アミノ酸塩と酸を反応させて得られるアミノ酸を含む水溶液に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させることを特徴とするアミノ酸の製造方法である。該水溶液中に水溶性有機溶媒を存在させることにより、高効率かつ経済的であって、高品質なアミノ酸を製造することができる。
【0016】
また、本発明は、前記水溶液が、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解してアミノ酸塩を含む水溶液とし、次いで、酸を添加することにより得られる、アミノ酸を含む水溶液である場合、より優れた効果を発揮することができる。
【0017】
また、本発明は、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解して得られる、アミノ酸塩を含む水溶液に、次いで、水溶性有機溶媒を添加し、さらに、酸を添加することが好ましい。こうすることにより、酸を添加して直ぐにアミノ酸を析出させることができ、逆反応をより少なくすることができる。
【0018】
また更に、本発明は、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解して得られるアミノ酸塩を含む水溶液に、次いで、酸を添加した後又は酸を添加すると同時に水溶性有機溶媒を添加することもできる。
【0019】
また、本発明は、前記アルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、および水酸化カルシウム水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種であることにより、加水分解の選択性がよく、反応速度も速く、精製処理等が容易となる。
【0020】
さらに、本発明は、前記水溶性有機溶媒が、アルコール、ケトン、およびエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、特に、前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアミノ酸の製造方法は、アミノ酸塩と酸を反応させて得られるアミノ酸を含む水溶液中に、水溶性有機溶媒を存在させて該アミノ酸誘導体を析出させるため、汎用の製造装置・製造設備での製造が可能であり、しかも高品質、高収率でアミノ酸を単離することができる。
【0022】
特に、本発明の方法は、ヒダントイン誘導体を出発原料としてアミノ酸を合成する際に適用することで優れた効果を発揮する。
【0023】
この場合、まずヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液と110℃程度で接触させて、ヒダントイン環の加水分解反応を行いアミノ酸塩(アルカリ塩)へと誘導する。次いで、このアミノ酸塩を含む水溶液に酸を加え、アミノ酸を含む水溶液とする際、該水溶液に水溶性有機溶媒を存在させることにより、アミノ酸を固体として析出させ、溶解度差を利用して中和反応系から目的物(アミノ酸)を隔離する。つまり、固体としてアミノ酸を析出させることにより、水溶液中から目的物を隔離する。これにより、残存する活性化されたカルバメート塩との接触が妨げられ、再びヒダントイン環を形成する逆反応が防止される。特に、逆反応を防止するためには、アミノ酸塩を含む水溶液に水溶性有機溶媒を加え、この水溶性有機溶媒存在下に、酸を加えてアミノ酸を析出させることが好ましい。
【0024】
また本発明によれば、アミノ酸塩を含む水溶液に酸を添加して中和した後、固液分離、乾燥を施すことで高純度、高収率でアミノ酸を取得できる。取得したアミノ酸には中和で副生した塩類が殆ど含まれていないため、アミノ酸の定量が容易に行なえ、次の反応の仕込み量も的確に決定できる。また、塩類が少ないため次反応への影響も全くない。さらに、困難な水の濃縮工程が省略されるため経済性も高い。
【0025】
一方、取得したアミノ酸の乾燥工程が追加されるが、本発明は、水溶性有機溶媒/水の混液からアミノ酸を析出させるため、含水率が極めて低くなり、乾燥工程は短時間で終了する。乾燥終了点(終点)についても、カールフィッシャー等で残存する水分をモニタリングしていくことで容易に判断が可能である。
【0026】
上述した本発明の方法は非特許文献1記載の方法と比して、工業的に有用な製造方法であることが伺える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明は、アミノ酸塩と酸とを反応させて得られるアミノ酸を含む水溶液に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させるものである。
【0029】
本発明において、前記アミノ酸塩は、酸と反応してアミノ酸となる。アミノ酸塩としては、アミノ酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を挙げることができ、具体的には、アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、バリウム塩、セシウム塩、またはカルシウム塩を挙げることができる。中でも、製造および入手のし易さを考慮すると、アミノ酸塩は、アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩であることが好ましい。
【0030】
本発明により得られるアミノ酸は、前記アミノ酸塩と酸を反応させることにより得られるものであれば、特に制限されるものではない。つまり、本発明は、アミノ酸塩と酸を反応させてアミノ酸とする際に、アミノ酸に対して貧溶媒である水溶性有機溶媒を反応系内に存在させてアミノ酸を析出するものであるため、該アミノ酸は、特に制限されるものではない。ただし、中でも、本発明は、以下の方法で合成するアミノ酸の製造方法に適用すれば、最も優れた効果を発揮する。即ち、本発明のアミノ酸の製造方法は、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解することにより得られるアミノ酸塩を含む水溶液に、酸を加え、アミノ酸を製造する方法に最も効果的に適用できる。以下、ヒダントイン誘導体からアミノ酸を製造する方法について説明するが、上記の通り、本発明は、これら方法に限定されるものではない。
【0031】
本発明により製造するアミノ酸は、出発原料としてヒダントイン誘導体から合成することが好ましい。本発明の方法が好適に適用できる、これらヒダントイン誘導体を具体的に例示すれば、5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−ヒドロキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−tert−ブトキシカルボニルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−メトキシカルボニルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−エトキシカルボニルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−フェニルオキシカルボニルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシシクロブタン)ヒダントイン、5−(3−ベンジルオキシカルボニルオキシシクロブタン)ヒダントイン等が挙げられる。これらヒダントイン誘導体は、ジアステレオマー及び/又は光学活性体の場合、単一化合物であってもよく、混合物であってもよい。また、該ヒダントイン誘導体は、非特許文献1に準じて製造可能である。
【0032】
次に、本発明により製造するアミノ酸は、前記ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解し、アミノ酸塩(アミノ酸のアルカリ塩)を含む反応液(水溶液)を得、さらに、この反応液に酸を加えて中和することにより合成することができる。以下、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解して得られる、アミノ酸塩を含む水溶液を単に反応液とする場合もある。
【0033】
本発明において、前記アルカリ水溶液の調製に使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属から構成される無機アルカリを例示することができる。中でも、前記アルカリ水溶液は、加水分解の選択性、反応速度、精製処理等の観点から水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、および水酸化カルシウム水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらアルカリ水溶液は、当然、単独で使用しても良く、二つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
なお、本発明において、出発原料をヒダントイン誘導体とした場合、アミノ酸塩は、使用するヒダントイン誘導体と上記アルカリとにより形成されるものである。
【0035】
また、アルカリの濃度は、特に制限されるものではなく、ヒダントイン誘導体を加水分解するために必要なアルカリの使用量に応じて、適宜決定してやればよい。中でも、操作性、反応速度、経済性の観点から、通常、0.5〜90質量%、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは1.5〜70質量%の濃度のアルカリ水溶液を使用することが好ましい。
【0036】
さらに、本発明において、前記加水分解に使用するアルカリの使用量は、出発原料のヒダントイン誘導体1モルに対して、通常2モル倍以上使用するが、過剰に使用すると中和時(酸を加えた際)に副生する塩がアミノ酸中に残存し易くなるため、アルカリの使用量は一般的には2〜20モル倍、好ましくは2〜15モル倍、さらに好ましくは3〜10モル倍である。
【0037】
本発明において、前記アルカリ水溶液に使用する水は、特に制限されるものではなく、水道水、イオン交換水、超純水、蒸留水、および注射用水等が使用され、使用目的に応じて適宜選択してやればよい。これらは単独で使用しても良く、二つ以上組み合わせて使用してもよい。これらの水は、その他の反応に使用することができ、例えば、後記に詳述する酸の希釈溶媒等にも、その使用目的に応じて適宜選択して使用することができる。
【0038】
本発明において、前記ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解する際に使用する反応装置は、ガラス製、グラスライニング製、ステンレス製、フッソ樹脂製、フッソ樹脂ライニング製、ポリプロピレンライニング製、ポリエチレンライニング製等の市販のものが何ら制限なく使用される。
【0039】
また、該反応装置には、反応温度の監視のため温度計、温度センサーを装着することが好ましい。さらに、後記に詳述するが、前記ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解する際、反応温度が比較的高温であるため、該反応装置にはコンデンサー等を装着することが好ましい。さらに、該加水分解は攪拌条件下で反応することが好ましいため、該反応装置は、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、内部循環装置等の攪拌装置を取り付けることが好ましい。攪拌に使用する攪拌羽根、スターラーピース等は市販のものが何ら制限なく使用される。
【0040】
本発明において、前記ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解する際の圧力は、大気圧下、減圧下、加圧下の何れでもよいが、製造設備、安全性、操作性、経済性を考慮すると大気圧下で行なうことが好ましい。また、該加水分解を行う際は、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気等の雰囲気下で行うことができる。
【0041】
本発明において、前記ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解する際の仕込み方法は、特に制限されるものではなく、ヒダントイン誘導体、またはヒダントイン誘導体を含む水溶液を反応装置内に存在させ、アルカリ水溶液を添加してもよいし、また、アルカリ溶液を反応装置内に存在させ、ヒダントイン誘導体を添加してもよい。さらには、これらを同時に添加してもよい。中でも、これらは反応装置内で撹拌しながら一方を添加することが好ましい。工業的には、攪拌の効率性、溶解速度の観点から、アルカリ水溶液に、ヒダントイン誘導体またはヒダントイン誘導体を含む水溶液を添加する方法を採用することが好ましい。
【0042】
本発明において、前記加水分解の時の反応温度は、反応系にもよるが、通常50〜150℃、好ましくは60℃〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃の範囲で行なうことが好ましい。中でも、装置の点からは、大気圧下で加水分解を行うことが好ましいため、大気圧下、110℃程度の温度で加水分解を行うことが最も好ましい。また、加水分解にかかる反応時間についても、反応系によって異なるが、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは2〜20時間であり、前記の条件下において、ヒダントイン誘導体が加水分解されてカルボキシル基(カルボキシル基がアルカリ塩となるものを含む)を有する割合(以下、転化率とする)を95%以上とすることが好ましい。転化率が充分でない場合は、前記アルカリ水溶液を追加してもよいし、該アルカリ水溶液を構成するアルカリを固体のまま追加して加水分解を進行させてもよい。
【0043】
ここで転化率の追跡には高速液体クロマトグラフィー(以後、HPLCとも呼ぶ)を用いることが出来る。転化率は以下の式に従って算出する。
【0044】
【数1】

【0045】
本発明においては、加水分解が十分に進行して反応が終了した後、アミノ酸塩を含む反応液を冷却するが、操作性、不純物の抑制の観点から、50℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは10℃以下へ冷却する。冷却する際の反応液の下限の温度は、反応液自体が固体になる温度以上とすることが好ましく、通常0℃以上とすることが好ましい。
【0046】
本発明の特徴は、前記アミノ酸塩を含む反応液に酸を加え、少なくとも一部アミノ酸を含む水溶液中に、水溶性有機溶媒を存在させることである。つまり、本発明の特徴は、前記アミノ酸塩を含む反応液に、酸を添加して中和する際に又は中和した直後に、その反応系内に水溶性有機溶媒を存在させることである。
【0047】
本発明において、前記アミノ酸を含む水溶液中に水溶性有機溶媒を存在させる方法は、特に制限されるものではないが、例えば、(1)反応液を冷却後、水溶性有機溶媒を添加し、次いで、酸を添加する方法、(2)反応液を冷却後、酸を添加し、次いで、水溶性有機溶媒を添加する方法、(3)反応液を冷却後、水溶性有機溶媒と酸を同時に添加する方法などが挙げられる。(1)(2)の方法においては、水溶性有機溶媒および酸を一括して、冷却した反応液に添加することもできるし、必要となる量の水溶性有機溶媒および酸を分割して交互に添加することもできる。中でも、析出する固体(アミノ酸)のろ過性、逆反応等を考慮すると、冷却した反応液に、先ず、少なくとも一部の水溶性有機溶媒を加えることが好ましい。より好ましい態様を具体的に例示すれば、アミノ酸塩を含む反応液を冷却後、該反応液に一部(具体的には水溶性有機溶媒全量の10〜90%、好ましくは20〜80%)の水溶性有機溶媒を添加し、次いで、酸を添加して中和処理を行った後、アミノ酸をより析出させるために、再度、水溶性有機溶媒の残部を添加する方法が好ましい。なお、反応液に水溶性有機溶媒を存在させる場合、操作性、アミノ酸の析出、純度等を考慮すると、液温は50℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下とし、液温の下限値は0℃以上であることが好ましい。
【0048】
以下に、本発明における、ヒダントイン誘導体を加水分解する加水分解反応、および加水分解後、酸を加えて中和する反応の特徴を説明する。
【0049】
本発明において、ヒダントイン誘導体がアルカリ水溶液により加水分解されると、反応系内にはアミノ酸塩、およびカルバメート塩が共存する。通常、カルバメート塩は、アルカリ領域(pHが7を超える領域)では安定に存在するものの、酸性〜中性領域(pHが7以下の領域)ではアンモニア及び二酸化炭素へ容易に分解することが知られている。しかしながら、上記ヒダントイン誘導体から生じる該カルバメート塩は、酸性〜中性領域において活性化され、酸を加えて中和する過程で、再度、アミノ酸塩誘導体とカルバメート塩が結合し、出発原料であるヒダントイン誘導体への逆反応が生じるものと考えられる。
【0050】
そこで、本発明においては、酸を加えて中和する過程における逆反応を防止するため、中和時(酸を添加する際)に水溶性有機溶媒を存在させ、アミノ酸塩がアミノ酸へと転化する際に生成するアミノ酸を直ちに固体化させ反応系外へ移動させる方法である。つまり、水溶液から固体としてアミノ酸を析出させ反応系外へ移動させることにより、逆反応が著しく抑制される。上記理由で、本発明は、このような逆反応が生じ易いヒダントイン誘導体を出発原料とするアミノ酸の製造方法として好適なものである。
【0051】
本発明に使用する水溶性有機溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、1−アミルアルコール、2−アミルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、エチレングリコール、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグリコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアミド等のアミド類、N,N−ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が選択され、特に反応の選択性、不純物の除去、乾燥時の残留溶媒等の観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリルが好適に使用される。これらは単独で使用しても良く、二つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明に使用する水溶性有機溶媒の使用量は、反応系(得ようとするアミノ酸の種類、濃度、水溶性有機溶媒の種類、温度等の条件)において最適な使用量が異なるため、一義的に決定することはできないが、アミノ酸を析出するのに十分な量を使用する必要がある。ただし、水溶性有機溶媒の使用量が少なすぎるとアミノ酸の収率が低くなり、多すぎると中和(酸を加えること)で副生する塩の含有率が高くなる傾向にある。そのため、水溶性有機溶媒の最適な使用量は、予備的な試験を行い決定しておくことが好ましい。なお、通常、水溶性有機溶媒の使用量は、全反応に使用する溶質および溶媒(水溶液の水の量も含むものとする)の量を100質量%としたとき、1〜70質量%、好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは3〜50質量%である。この場合、通常、出発原料となるヒダントイン誘導体の溶解量は、全反応に使用する溶質および溶媒の量を100質量%としたとき、1〜60質量%、好ましくは2〜55質量%、さらに好ましくは3〜50質量%である。
【0053】
本発明において使用する酸は、塩酸、硫酸、発煙硫酸、無水硫酸、硝酸、発煙硝酸、リン酸等の鉱酸類、メタンスルホン酸、クロルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を例示することができる。使用する酸の濃度については、不純物の除去、収率等を鑑み適宜選択し、通常0.5〜100質量%、好ましくは1〜98質量%、さらに好ましくは1.5〜96質量%の水溶液として使用することが好ましい。この酸は、中和してアミノ酸塩をアミノ酸にするものであり、この酸の使用量は、加水分解に使用したアルカリ水溶液を構成するアルカリ量に対して0.7〜2モル当量、好ましくは0.75〜1.8モル当量、さらに好ましくは0.80〜1.5モル当量である。
【0054】
本発明において、酸を添加して中和する際(アミノ酸塩をアミノ酸とする際)には、攪拌下で実施することが好ましく、温度も通常50℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下であり、温度の下限は0℃以上で実施することが好ましい。
【0055】
本発明においては、酸を添加してアミノ酸を含む水溶液を中和した後、析出した固体をろ過操作により固液分離するが、公知の方法が何ら制限なく使用される。例示すると、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心分離ろ過、デカンテーション等が上げられる。なお、当然のことながら、中和が完了した前記水溶液中には水溶性有機溶媒が含まれている。
【0056】
ろ過操作により得られるアミノ酸の粗体は、中和時に存在させた水溶性有機溶媒単独、または該有機溶媒と水で構成される混液でリンス洗浄することが好ましい。洗浄量、組成、回数については、生成量、混液の濃度等に応じて適宜決定してやればよい。
【0057】
このようにして得られたアミノ酸の湿体は、必要により乾燥される。乾燥方法としては、公知の乾燥方法が何ら制限なく使用される。公知の乾燥方法を例示すると、凍結乾燥、減圧乾燥、加圧乾燥、天日干し、温風乾燥、調湿乾燥等が挙げられる。これらの乾燥方法は棚式や攪拌・混合式であってもよい。乾燥温度としては通常−90〜200℃の中から適宜選択すればよい。また、乾燥時間おいても通常0.1〜100時間の中から適宜選択すればよい。
【0058】
本発明の方法により好適に製造することができるアミノ酸を具体的に例示すると、1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸、1−アミノ−3−ヒドロキシシクロブタン−1−カルボン酸、1−アミノ−3−ベンジルオキシカルボニルオキシシクロブタン−1−カルボン酸、1−アミノ−3−t−ブチルジメチルシリルオキシシクロブタン−1−カルボン酸、1−アミノ−3−t−ブチルオキシカルボニルオキシシクロブタン−1−カルボン酸等が挙げられる。これらアミノ酸誘導体はジアステレオマー及び/又は光学活性体の場合、単一化合物であってもよく、混合物であってもよい。
【0059】
本発明の方法により得られたアミノ酸体は、ヒダントイン誘導体の含有量が少なく、また、中和で副生する塩の含有量が少ないため極めて高品質である。また、製造操作全般においても汎用の設備、器具を使用できるため、高作業性、高経済性を兼ね備えた製造方法である。そのため、本発明は、光学材料、電子材料、医農薬原体及び中間体、診断薬原体及び中間体を合成するため方法として極めて工業的利用価値が高い。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0061】
参考例1
syn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体)およびanti−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(アンチ体)の合成
【0062】
【化1】

【0063】
20Lの四つ口セパラブルフラスコに、温度計、コンデンサー、攪拌羽根を装着させた。炭酸アンモニウム 1250g(13mol)と塩化アンモニウム 278g(5.2mol)、イオン交換水 9kgをフラスコに加え溶解させた。次にエタノール7.1kgに溶解した3−ベンジルオキシシクロブタノン 236g(1.3mol)をフラスコに加え、25℃で30分攪拌し、さらにシアン化カリウム 380g(5.8mol)を加え2時間かけて60℃に昇温し、12時間攪拌した。反応中、30分毎にコンデンサーが閉塞したため、その都度コンデンサーを交換し対応した。反応終了後、溶媒を留去し乾固させ黄色固体を得た。これにイオン交換水 10kgを加え1時間攪拌後、固液分離し冷イオン交換水 100gで洗浄した。得られた湿体を60℃で12時間乾燥し、syn-5-(3-ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントインおよびanti−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントインの混合体 164g(収率51%)を得た。HPLCにより分析したところ、5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン以外の不純物量は22%、シン体/アンチ体=80/20であった。この参考例1及び以下に記載する実施例、比較例において用いたカラムはオクタデシルシリカゲル系のジーエルサイエンス(株)社製、商品名:イナートシルODS−3で、溶離液はアセトニトリル/リン酸バッファー=1/2(v/v)であった。このリン酸バッファーは20mmol/L リン酸二水素カリウム水溶液を使用した。
【0064】
得られた混合体10gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、二つのフラクションを採取し一つを濃縮したところsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 5g(収率50%)であった。アンチ体の含有率は2%であった。また残りのフラクションを採取し濃縮したところanti−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(アンチ体) 0.8g(収率8%)でありシン体は含まれていなかった。
【0065】
シリカゲルカラムは、内径100mmのガラスカラムに、45〜75メッシュのシリカゲル(和光純薬工業社製ワコーゲルC−300)を1000g充填したものを用いた。溶離液は、メタノール/アミノホルム=2/9(v/v)を5L用いた。
【0066】
比較例1
【0067】
【化2】

【0068】
参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 1.35g(5.5mmol)を温度センサー、攪拌装置を装着した100mLのステンレス製の加圧反応装置に入れ、3mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 30mL(0.09mol)に懸濁させ、180℃で一昼夜、密閉化で加水分解反応を行った。反応終了後、HPLCにより分析したところ、転化率が99.0%であることを確認した。その後、5℃まで反応液を冷却し、1Lガラス製四つ口フラスコへ移液した。次いで、36wt%塩酸を用いて水溶液のpHを6〜7へ中和した後、減圧濃縮して黄色の固体 1.58gを得た。分析したところ、NaCl 0.32gを除く有機物の組成は以下であった。syn−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(シン体) 0.73g(3.3mmol、収率60%)、anti−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(アンチ体) 0.01g(0.06mmol、含有率1%)、syn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 0.51g(2.1mmol、回収率38%)、anti−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(アンチ体) 0.01g(0.06mmol、含有率1%)。この結果、加水分解反応後、中和工程以降でヒダントイン環化合物に戻る逆反応が確認された。
【0069】
実施例1
コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した200ml四つ口ガラスフラスコに参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 6g(24.4mmol)、5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 20g(99.9mmol)を添加し、105℃で14時間攪拌した。HPLCで分析したところ、転化率は99.5%であった。その後、反応液を5℃へ冷却し、エタノール4.8gを加えた後、6mol/L−塩酸 1.5g(1.7mL、9.9mmol)を加え水溶液のpHを7とした。次いで、さらに、エタノール4.8gを加えた。この塩酸、エタノールを加えた際の液温は10℃であった。この中和処理後、析出した固体を減圧ろ過により固液分離し、さらに水/エタノール=1/2(v/v) 3gで洗浄後、60℃で減圧乾燥したところ、白色の目的物 5.1g(収率95%)を得た。さらにHPLCで分析したところ、syn−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(シン体) 98%、anti−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(アンチ体) 2%であり、逆反応は観測されずNaClの残存も0.1%以下であった。
【0070】
比較例2
コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した200ml四つ口ガラスフラスコに参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 6g(24.4mmol)、5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 20g(99.9mmol)を添加し、105℃で14時間攪拌した。HPLCで分析したところ、転化率は99.5%であった。その後、反応液を5℃へ冷却し、6mol/L−塩酸 1.5g(1.7mL、9.9mmol)を加え水溶液のpHを7とした。本中和工程においては、エタノールを添加していない。中和後、5時間−5℃を維持したが固体は析出しなかった。反応液をHPLCにて分析したところ、syn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 33%の副生を確認した。
【0071】
実施例2〜12
アルカリ水溶液、水溶性有機溶媒、中和に使用する酸を変更した以外は実施例1に従った。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
実施例13
コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した200ml四つ口ガラスフラスコに参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 6g(24.4mmol)、5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 20g(99.9mmol)を添加し、105℃で14時間攪拌した。HPLCで分析したところ、転化率は99.5%であった。その後、反応液を5℃へ冷却し、エタノール0.48gを加えた後、6mol/L−塩酸 1.5g(1.7mL、9.9mmol)を加え水溶液のpHを7とした。反応液にエタノール、塩酸を加えた際の液温は10℃であった。中和後、析出した固体を減圧ろ過により固液分離し、さらに水/エタノール=1/2(v/v) 3gで洗浄後、60℃で減圧乾燥したところ、白色の目的物 4.3g(収率80%)を得た。さらにHPLCで分析したところ、syn−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(シン体) 98%、anti−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(アンチ体) 2%であり、逆反応はわずかに観測されsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 0.5%であったが、NaClの残存は0.1%以下であった。
【0074】
実施例14
コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した200ml四つ口ガラスフラスコに参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 6g(24.4mmol)、5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 20g(99.9mmol)を添加し、105℃で14時間攪拌した。HPLCで分析したところ、転化率は99.5%であった。その後、反応液を5℃へ冷却し、エタノール2.4gを加えた後、6mol/L−塩酸 1.5g(1.7mL、9.9mmol)を加え水溶液のpHを7とし、さらにエタノール2.4gを加えた。次いで、さらに、エタノール4.8gを加えた。反応液にエタノール、塩酸を加えた際の液温は10℃であった。この中和処理後、析出した固体を減圧ろ過により固液分離し、さらに水/エタノール=1/2(v/v) 3gで洗浄後、60℃で減圧乾燥したところ、白色の目的物 5.1g(収率95%)を得た。さらにHPLCで分析したところ、syn−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(シン体) 98%、anti−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(アンチ体) 2%であり、逆反応は観測されずNaClの残存も0.1%以下であった。
【0075】
実施例15
コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した200ml四つ口ガラスフラスコに参考例1に従い得られたsyn−5−(3−ベンジルオキシシクロブタン)ヒダントイン(シン体) 6g(24.4mmol)、5mol/L−水酸化ナトリウム水溶液 20g(99.9mmol)を添加し、105℃で14時間攪拌した。HPLCで分析したところ、転化率は99.5%であった。その後、反応液を5℃へ冷却し、6mol/L−塩酸 1.5g(1.7mL、9.9mmol)を加え水溶液のpHを7とし、その後、エタノール4.8gを加え固体を析出させた。次いで、さらに、エタノール4.8gを加えた。反応液に塩酸、エタノールを加えた際の液温は10℃であった。この中和処理後、析出した固体を減圧ろ過により固液分離し、さらに水/エタノール=1/2(v/v) 3gで洗浄後、60℃で減圧乾燥したところ、白色の目的物 4.9g(収率92%)を得た。さらにHPLCで分析したところ、syn−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(シン体) 98%、anti−1−アミノ−3−ベンジルオキシシクロブタン−1−カルボン酸(アンチ体) 2%であり、逆反応は観測されずNaClの残存も0.1%以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸塩と酸とを反応させて得られるアミノ酸を含む水溶液に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させることを特徴とするアミノ酸の製造方法。
【請求項2】
前記水溶液が、ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解してアミノ酸塩を含む水溶液とし、次いで、酸を添加することにより得られる、アミノ酸を含む水溶液であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項3】
ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解してアミノ酸塩を含む水溶液とし、次いで、水溶性有機溶媒を添加した後、酸を添加することにより、アミノ酸を含む水溶液に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項4】
ヒダントイン誘導体をアルカリ水溶液中で加水分解してアミノ酸塩を含む水溶液とし、次いで酸を添加した後又は酸の添加と同時に、水溶性有機溶媒を添加することにより、アミノ酸を含む水溶液に、水溶性有機溶媒を存在させてアミノ酸を析出させることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、および水酸化カルシウム水溶液からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2乃至4の何れかに記載のアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒が、アルコール、ケトン、およびエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至5の何れかに記載のアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、およびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至6の何れかに記載のアミノ酸誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2009−40752(P2009−40752A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210083(P2007−210083)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】