説明

アミリン作動薬ペプチド用製剤

【課題】本発明は、好ましくは液体投与形態のアミリン作動薬ペプチドの医薬製剤に関する。さらに、本発明は、インスリンとの混合に際して適合性のあるアミリン作動薬医薬製剤に関する。
【解決手段】本発明は、最終組成物のpHが約3.0ないし6.0に至る約0.02ないし0.5%(w/v)の酢酸、リン酸またはグルタミン酸緩衝液を有する水性系ならびに約1.0ないし10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール等張液において、約0.01ないし約0.5%(w/v)のプラムリンチド、および所望により約0.005ないし1.0%(w/v)の防腐剤を含む容器中の医薬製剤に関する。これらの製剤は、冷蔵または室温条件下の貯蔵に際して安定性を維持する。かかる製剤は、患者への投与用の同一シリンジにインスリンをさらに組合せることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは液体投与形態のアミリン作動薬ペプチドの医薬製剤に関する。さらに、本発明は、インスリンとの混合に際して適合性のあるアミリン作動薬医薬製剤に関する。
【0002】
本出願は、1997年1月8日付で出願された米国仮出願第60/035,140号の利益を主張し、その全内容をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【背景技術】
【0003】
膵島におけるアミロイド沈着は、ヒトII型糖尿病患者において共通した特徴である。アミリンと呼ばれるこれらのアミロイド粒子を形成している主要蛋白質は、フィブリルアミロイド構造を形成する性質を有する。National Academy of Sciences USA 8628、1987参照。アミリンは、その十分に活性な形態では、カルボキシアミド化され、2位および7位にて見られるシステイン残基間にジスルフィド結合を有する37個のアミノ酸の蛋白質である。アミリンは、グルコースの全身濃度の制御で役割を演じ、有用な治療剤として提案されてきた。LeightonおよびCooper、15 TIBS 295、1990参照。ヒト・アミリンは、「アミリンペプチド」と題する米国特許第5,367,052号および「アミリンを含む医薬組成物」と題する米国特許第5,129,314号に記載され特許請求されている。アミリンは、論文、例えば、Gaeta、L.S.LおよびRink、T.J.、3 Med. Chem. Res. 483−490、1994、Pittner、R. A.ら、55S J. Cell. Biochem. 19−28、1994およびRink、T.J.ら、14 TIPS 113−118、1993中に概説されている。
【0004】
インスリン使用者およびアミリンの欠乏するまたはアミリン治療が有益であろう糖尿病を持つ他の人々のための治療機会、および他の人々、例えば、肥満およびII型糖尿病患者、および血漿中アミリンまたは所望でないアミリン活性が上昇したかもしれないインスリン抵抗性を持つ人々のためにホルモン遮断が追求されてきた。糖尿病治療のためのアミリン自体を含むアミリン作動薬の使用は米国特許第5,175,145号に記載され特許請求されている。II型糖尿病、肥満、本態性高血圧症およびインスリン抵抗性の治療のためのアミリン拮抗薬の使用は、米国特許第5,266,561号、第5,280,014号、第5,281,581号および第5,364,841号に記載され特許請求されている。
【0005】
該疾患の最も重篤な形態は、I型(若年型)糖尿病である。米国では推定100万人のI型糖尿病患者がおり、彼らは生存のために毎日インスリン注射が必要である。彼らの生活の質は、しばしば、毎日の代謝不均衡、特に低血糖症発作(危険なほど低い血中グルコース)の過酷さおよび失明、腎機能不全、性不能症、潰瘍、切断およびアテローム性動脈硬化症(NIH糖尿病合併症およびコントロール試験)を含む重篤な長期間合併症の開始によって著しく影響される。
【0006】
II型(成人期発症)糖尿病は、同一の合併症にも罹りやすい1000万人以上の米国人を悩ましている。損なわれたグルコース耐性、II型糖尿病および心血管疾患についての危険因子は、米国においてさらに2000万人に影響すると考えられており、いずれの既知の養生法によっても治療できない。また、その生活標準が経済発展または移住を介して増大している世界中の人口集団におけるII型糖尿病の発病率が警戒するほどに増加している。スルホニル尿素は、1940年代に発見され、米国で販売された最初の経口抗高血糖糖尿病薬であり、それらの化合物は、II型糖尿病の根元的な原因とは取り組まず、多くの場合、有効ではなく、治療の数年後にそれらの効力を失う。II型糖尿病は、インスリンは適切には作用せず、インスリン分泌応答は障害されるようにインスリンが欠乏せず、むしろインスリン抵抗性である。
【0007】
食後、膵臓は、グルコースの上昇に応じて、インスリンを分泌する。インスリンは、筋肉および脂肪へのグルコースの取り込みを刺激し、肝臓にシグナルを出してグルコース産生を低下させ;この結果、血中グルコースが正常レベルに戻る。筋肉においては、大量のグルコースがグリコーゲンとして貯蔵される。グリコーゲンのいくらかは乳酸に壊され、それが肝臓まで循環し、グルコースに逆転化され、グリコーゲンとして貯蔵できる。食事と食事の間に、肝臓はこれらのグリコーゲン貯蔵を分解して脳および他の組織にグルコースを供する。グリコーゲンが筋肉から肝臓へ有効に移るこのサイクルは、コリ・サイクルとして公知である。休止状態下の筋肉から肝臓へのこの流れに対する刺激は、未確認のままであり;最近の結果は、アミリンがこの経路に主要な刺激を供することを示す。
【0008】
アミリンは、骨格筋および膵臓の両方に直接的な代謝効果を有することが示されている。骨格筋では、アミリンは、インスリンの非競合的拮抗剤として作用し、グリコーゲンへのグルコースのインスリン刺激合成を低下させる。in vitro試験は、アミリンがグリコーゲンシンターゼ活性を低下させ、グリコーゲンをグルコース6−リン酸に転化する酵素であるグリコーゲンホスホリラーゼの活性形態の形成に好都合であることを示す。骨格筋に対するアミリンの作用は、グリコーゲン分解を促進し、かくして乳酸形成を刺激し、コリ・サイクルのターンオーバーを増大させる。アミリンは膵臓ベータ細胞からインスリンと共に分泌され、インスリン分泌を抑制することが示されている。ベータ細胞のフィードバック調節を供して、インスリン分泌活性を変調するようである。
【0009】
アミリンは、摂取された食物から血液へのグルコースの取り込みの調節において役割を演じ、糖尿病、I型糖尿病および後期II型糖尿病のごとき特にインスリン使用の糖尿病患者において、アミリンまたはアミリン作動薬が、食後にこれら患者が典型的に経験する過剰なグルコース上昇を緩和するであろうと考えられる。また、炭水化物、脂肪および骨代謝に対して影響すると報告されてきたアミリンのごとき重要なホルモンの欠乏は、他の重要な生理的機構を混乱させるかもしれない。アミリン、またはアミリンの生理的効果を発揮するアミリン作動薬の同時投与は、適当な代謝バランスを回復させることによって、現存のインスリン治療をかなり改善するであろう。
【0010】
多くの因子が、有効成分の化学的反応性、活性および不活性成分間の潜在的相互作用、製造工程、投薬形態、容器−クロージャー系、および出荷、貯蔵、取扱いおよび製造および使用間の時間の長さの間に遭遇する周囲条件を含めた医薬製品の安定性に影響する。医薬製品の安定性は、製剤の化学的安定性ならびに物理的安定性によって決定される。熱および光を含めた物理的因子は、化学反応を開始または促進できる。
【0011】
製剤の至適物理的安定性は、少なくとも三つの主要な理由で非常に重要である。第一に、医薬製品は、患者に投与される場合に、新鮮で、エレガントで、また専門的でなければならない。色の変化または曇度のごとき物理的外見のいずれの変化も患者または消費者にその製品の信頼を失わさせかねない。第二には、製品には複数用量容器で投薬されるものがあるために、経時的な有効成分の用量含量の均一性が保証されなければならない。濁った液剤または壊れた乳剤は、不均質な投薬パターンに導きかねない。第三には、有効成分は、製剤の予期される貯蔵寿命の間患者に利用可能でなければならない。不活性または他の所望しない形態への製品の分解は、患者に医薬品を利用できなくしかねない。
【0012】
従って、医薬製品の安定性は、その物理的、化学的、微生物学的、治療的および毒性学的仕様内にとどまる特定の製剤の能力と定義できる。安定な液剤は、その貯蔵寿命を通じて元の透明性、色および香りを保持する。液剤の透明性の保持は、物理的安定性を維持することにおいて主要な関心事である。液剤は、約4℃ないし37℃のごとき比較的広範囲の温度範囲にわたり澄明なままであるべきである。より低い範囲で、成分は、その温度での低い溶解度のために沈澱するかもしれず、一方、より高い温度では均質性は、ガラス容器またはゴムクロージャーからの抽出物によって壊されるかもしれない。かくして、活性な医薬成分の液剤は、サイクリング温度条件を処理できなけれなばならない。同様に、製剤は、この温度範囲を通じてその色を保持すべきであり、その香りを安定に維持すべきである。
【0013】
小さなペプチドは、典型的には、不安定であって、水性液剤中で分解を受けやすい。この点、一旦ヒト・アミリン作動薬またはアミリンがその表示力価の約90%より小さければ、もはや患者への投与に適するとは考えられない。単独あるいは組合せて用いる糖、界面活性剤、アミノ酸および脂肪酸のごとき種々のタイプの分子が、分解に対して蛋白質およびペプチド製品を安定化するために用いられてきた。WangおよびHanson、J. Parenteral Science and 1Technology Supplement、1988、Technical Report No. 10 (蛋白質およびペプチドの非経口的製剤を記載);Manningら、6 Phatmaceutical Research、1989参照。また、緩衝剤、防腐剤、等張剤および界面活性剤のごとき賦形剤の例は、当該分野で公知である。21 C.F.R. 5180.22 et seq.(承認された食品添加物を定義);WangおよびKowal、34 J Parenteral Drug Association 452、1980(各種賦形剤を記載);A.R. Gennaroら、17th Remington's 「Pharmaceutical Sciences」、1985、Avisら、Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Vol. 1、1992参照。各種の有用な賦形剤の定義を含むそれら全てをここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0014】
対象に投与するための適当な医薬組成物の開発は複雑であるということが理解される。冷蔵した場合および室温の場合に実質的な安定性を有する単独または複数用量を供するように設計する要望が、アミリン作動薬ペプチド、またはアミリンの医薬製剤の分野に存在する。さらに、かかるペプチドの物理的および化学的分解をも最小化する要望が、容器/クロージャー系で包装された液状医薬製剤の分野に存在する。最後に、投与に先立ってインスリンと混合できる要望が、アミリン作動薬ペプチド、またはアミリンの液状医薬製剤について存在する。本明細書に記載または特許請求された発明は、これらの要望を満たす。
【特許文献1】米国特許第5,367,052号明細書
【特許文献2】米国特許第5,129,314号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、好ましくは液体投与形態のアミリン作動薬ペプチドの医薬製剤に関する。さらに、本発明は、インスリンとの混合に際して適合性のあるアミリン作動薬医薬製剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、アミリン作動薬ペプチドをかかる化合物での治療を必要とする患者に投与するのに有用な、新規な医薬製剤および投薬形態を見出した。これらの投薬形態は、約3.0ないし6.0の最終組成物のpHを得るために約0.02ないし0.5%(w/v)の酢酸、リン酸、クエン酸またはグルタミン酸緩衝液と共に水性系中の有効成分としてアミリン作動薬またはアミリンの各約0.01ないし0.5%(w/v)、ならびに水性連続相の約1.0ないし10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール等張液を含有する、但し、もしアミリン作動薬またはアミリンが、ヒト・アミリンと同様の物理化学的特性を有するならば、それは、貯蔵(および復元に際して直ちに使用される)のために処方され、凍結乾燥されるべきである。また、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンおよびフェノールよりなる群から選択される約0.005ないし1.0%(w/v)の抗菌性防腐剤も、患者が複数用量を止めるのを可能とするように設計した製品の製剤に存在させる。重要なことには、安定化剤は、このアミリン作動薬製品製剤に必要ではない。十分量の注射用水を用いて、所望の濃度の液剤を得る。塩化ナトリウムならびに他の賦形剤も、所望ならば存在させてもよい。しかしながら、かかる賦形剤は、アミリン作動薬またはアミリンペプチドの全安定性を維持しなければならない。本発明の液状製剤は、実質的に等張であるべきである。等張液剤は、それが導入されようとしている、例えば、製剤の非経口的注射の場合には、哺乳動物のそれと同等の浸透圧を発揮するであろうある濃度の電解質、非電解質または2つの組合せを有する液剤と定義できる。「実質的に等張の」とは、等張の±20%以内、好ましくは±10%以内を意味する。処方された製品は、容器、典型的には、例えばバイアル、カートリッジ、予め充填されたシリンジまたは使い捨てのペンを含む。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、この新規な非経口的投薬形態が、冷蔵温度、例えば、約5℃にて4年間まで、室温にて、例えば約30℃にて30日にわたって、ペプチドの安定性を維持することを見出した。
【0018】
本発明者らは、さらに、この医薬製剤がシリンジ中でさらにインスリン製品と混合でき、短期間安定性を保持できることを見出した。この短期間混合適合性は、非常に有利である。これは、患者へのインスリンと共に、アミリン作動薬またはアミリンの単回注射の投与を可能とする。
【0019】
本発明は、凝集、吸着および分解に関して安定化され、かくして、それらの生物学的活性の維持を増強するアミリン作動薬またはアミリンの製剤を記載するが、貧弱な溶解性であって高度に不安定である、ヒトと同様の物理化学的性質を有するアミリン作動薬またはアミリンのいずれの製剤も1.0ないし10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール、および界面活性剤、好ましくは、0.1ないし1.0%(w/v)のポリソルベート80または他の非イオン性界面活性剤を含む安定化剤を含むべきであり、製剤後、迅速に凍結乾燥すべきであり、復元に際して迅速に使用されねばならず、従って好ましくない。
【0020】
本発明のさらなる態様は、アミリン単独よりなる製剤と比較して、例えば、アミリン特異的受容体結合アッセイにおいて、ペプチドの生物学的効力の喪失を低下させ、例えば、in vitroヒラメ筋バイオアッセイにおいて測定されるごとき生物学的活性の喪失、また、例えば、HPLCアッセイによると物質の一般的喪失を低下させる安定化用化合物と混合したアミリン作動薬を含む製剤をその要旨とする。
【0021】
関連する態様において、本発明は、インスリンとの短期間(例えば、24時間)混合適合性を保持するアミリン作動薬を処方する方法をその要旨とする。
【0022】
本発明の他の要旨および利点は、以下のその好ましい具体例の記載および請求の範囲から明確であろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、種々のpH製剤でのプラムリンチド(pramlintide)の分解速度を示す。
【図2】図2は、30℃でのプラムリンチド製剤の経時的安定性を示す。
【図3】図3は、40℃でのプラムリンチド製剤の経時的安定性を示す。
【図4】図4は、50℃でのプラムリンチド製剤の経時的安定性を示す。
【図5】図5は、図2−4からのKobs値のアレニウスプロットを示す。
【図6】図6は、表Aによって処方された、アミリン作動薬ペプチドのプラムリンチドを混合した後のインスリンについての血漿中濃度−対−時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ペプチド薬物は、溶液中で物理的および化学的分解を受け、それらの生物学的活性を喪失する。本発明で報告された投薬形態は、異なる経路、例えば、脱アミド化およびペプチド結合加水分解を介して、アミリン、例えば、プラムリンチドの化学的分解を最小化し、約5℃にて貯蔵する場合に4年間までペプチドを生物学的活性に保つ。この投薬形態は、患者によってよく許容される。この製剤を貯蔵するために用いる容器/クロージャー系は、容器表面への吸着またはゴム製クロージャーへの吸着を介して薬物製品の物理的喪失を最小化する。
【0025】
I型糖尿病のヒトは、外因性のインスリンで治療されなければならない。一般的に、最初にインスリンを必要とするヒトは、診断の時点で30歳より若く、細身で、ケトアシドーシスになり易く、絶食状態においてさえ著しい高血糖症の傾向にある。また、インスリンは、単独または経口的低血糖薬物と組み合わせてのいずれかとのダイエットおよび運動治療に応答しないII型糖尿病に必要である。インスリン治療は、感染、妊娠または手術のごときストレスに付されるいくらかのII型糖尿病患者においても必要である。II型糖尿病において、10−20単位の用量の中程度作用性のインスリンは、場合によって、高血糖症を制御下とする必要がある。
【0026】
患者のいずれかの機能的マクロ分子成分は、操作上薬物受容体として働き得る。特に重要な群の薬物受容体は、内因性調節リガンド(例えば、ホルモン、神経伝達物質)として通常働く蛋白質である。多くの薬物は、かかる生理的受容体に作用する。内因性調節化合物の効果に類似するものは、作動薬と言われる。
【0027】
「アミリン作動薬」とは、限定されるものではないが、以下の式によって表されるアミリン作動薬を含めたアミリンの作動薬として有用なヒト・アミリンのペプチドアナログを意味する:
【0028】
【化1】

【0029】
[式中、Aは、水素Lys、Ser、Ala、デス-α-アミノLys、またはアセチル化Lys;Bは、Ala、SerまたはThr;Cは、Val、LeuまたはIle;Dは、HisまたはArg;Eは、SerまたはThr;Fは、Ser、Thr、GlnまたはAsn;Gは、Asn、GlnまたはHis;Hは、Phe、LeuまたはTyr;Iは、AlaまたはPro;Jは、Ile、Val、AlaまたはLeu;Kは、Ser、Pro、Leu、IleまたはThr;Lは、Ser、ProまたはThr;Mは、Asn、Asp またはGln;XおよびYは、相互に化学結合して、分子内結合を形成する側鎖を有する独立して選択される残基であって;Zは、ヒドロキシ、マミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルオキシ、アリールオキシまたはアラルキルオキシ;但し、(a)AがLys、BがAla、CがVal、DがHis、EがSer、FがSer、GがAsn、HがPhe、IがAla、JがIle、KがSer、LがSerおよびMがAsnである場合;(b)AがLys、BがAla、CがIle、DがArg、EがSer、FがSer、GがAsn、HがLeu、IがAla、JがIle、KがSer、LがProおよびMがAsnである場合;(c)AがLys、BがAla、C が Val、DがArg、EがThr、FがSer、GがAsn、HがLeu、IがAla、JがIle、KがSer、LがProおよびMがAsnである場合;(d)AがLys、BがAla、CがVal、DがArg、EがSer、Fが Ser、GがAsn、HがLeu、Iが Pro、JがVal、KがPro、Lが ProおよびMがAsnである場合;(e)AがLys、BがAla、CがVal、DがHis、EがSer、FがAsn、GがAsn、HがLeu、IがPro、JがVal、KがSer、LがProおよびMがAsnである場合;または(f)AがLys、BがThr、CがVal、DがArg、EがSer、FがSer、GがHis、HがLeu、IがAla、JがAla、KがLeu、LがProおよびMがAspである場合;AないしMのいずれかの1以上はL−アミノ酸でなく、かつZはアミノでなく、I、KおよびLにおける単一プロリン置換されたペプチドが好ましくないことをさらに注記する。]
【0030】
XおよびYの適当な側鎖は、ジスルフィド結合を形成できるアルキルスルフヒドリルから誘導される基;環状ラクタムを形成できるアルキル酸およびアルキルアミン;縮合し還元されてアルキルアミン架橋を形成できるアルキルアルデヒドまたはハロゲン化アルキルおよびアルキルアミン;または結合してアルキル、アルケニル、アルキニル、エーテルまたはチオエーテル結合を形成する側鎖を含む。好ましいアルキル鎖は、約1個ないし約6個の炭素原子を有する低級アルキル基を含む。
【0031】
本明細書で用いるごとく、以下の用語は、反することを明示的に述べなければ、以下の意味を有する;「アルキル」なる用語は、直鎖状および分岐鎖状アルキル基をいう:「低級アルキル」なる用語は、合計1個ないし6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状アルキル基をいい、第一級、第二級および第三級アルキル基を含む。典型的な低級アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等を含む。「アリール」なる用語は、フェニルおよびナフチルのごとき6個ないし14個の炭素原子の炭素環芳香族基、ならびにピリジル、トリアゾロピラジン、ピリミジン等のごとき1個ないし3個のヘテロ原子(窒素、酸素、イオウ等)を含む複素環芳香族基をいう。「アラルキル」なる用語は、1個ないし4個の炭素原子の「アルキル」基に直接結合した6個ないし10個の炭素原子の「アリール」基をいい、例えば、ベンジル、p−クロロベンジル、p−メチルベンジルおよび2−フェニルエチルを含む。「シクロアルキル」なる用語は、5個ないし8個の炭素原子の環状アルキル基をいう。
【0032】
前記式の作動薬アナログの生物学的活性誘導体も含まれ、ここに、個々のアミノ酸の立体化学が1以上の特定の部位にて()/Sから()/Rへ転化できる。また、Asn、Serおよび/またはThr残基のグリコシル化によって修飾された作動性アナログも含まれる。
【0033】
ペプチド特性をほとんど持たないアミリンの生物学的活性作動薬アナログが含まれる。かかるペプチドミメティクスは、例えば、−CO−NH−アミド結合について1以上の以下の置換基を含むことができる:デプシペプチド(−CO−O−)、イミノメチレン (−CH−NH−)、トランスアルケン (−CH=CH−)、エナミノニトリル (−C(=CH−CN)−NH−)、チオアミド (−CS−NH−)、チオメチレン(−S−CH−または−CH−S−)、メチレン(CH−CH−)およびレトロアミド (NH−CO−)。
【0034】
アミリン作動薬化合物は、種々の無機および有機酸ならびに塩基とで塩を形成する。かかる塩は、有機および無機酸、例えば、HCl、HBr、HSO、HPO、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸およびショウノウスルホン酸で調製された塩を含む。塩基で調製された塩は、例えば、アンモニウム塩、(ナトリウムおよびカリウム塩のごとき)アルカリ金属塩、および(カルシウムおよびマグネシウム塩のごとき)アルカリ土類塩を含む。酢酸塩、塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩が好ましい。
【0035】
該塩は、塩が不溶である溶媒または媒体中、または水のごとき溶媒中の1当量以上の適当な塩基または酸と生成物の遊離酸または塩基形態とを反応させ、次いで、真空中もしくは凍結乾燥または存在している塩のイオンを適当なイオン交換樹脂上のもう一つのイオンに交換することによるのごとく、慣用的手段によって形成できる。
【0036】
アミリン作動薬化合物は、さまざまな立体異性体を含む。本発明の好ましい化合物において、ペプチド骨格上のキラル中心は、すべてSである。
【0037】
アミリン作動薬は、米国特許第5,686,411号の「Amylin Agonist Peptides and Uses Therefor」に記載のごとく当業者によって調製でき、その内容の全てをここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0038】
「ヒト・アミリン」とは、米国特許第5,357,052号に記載された37個のアミノ酸のアミリンを意味する。
【0039】
本発明の化合物の命名法を用いて、配列が、ヒト・アミリンごときいずれかの塩基性ペプチドアミリン配列に基づくペプチド、およびそれに対してなされた修飾の双方を示すことができる。上付き番号が先行するアミノ酸は、基本的アミノ酸配列中の上付き文字のアミノ酸位置に通常存在するアミノ酸を、指名されたアミノ酸に置換えることを示す。例えば、「18Arg25,28Pro−h−アミリン」とは、以下の置換を有する「h−アミリン」または「ヒト・アミリン」の配列に基づくペプチドをいう:残基18にてHisをArgに置換え、残基25にてAlaをProに置換え、残基28にてSerをProに置換える。「デス−Lys−h−アミリン」なる用語は、最初またはN−末端アミノ酸が欠失したヒト・アミリンの配列に基づくペプチドをいう。
【0040】
上記の式に従う化合物の記載に加えて、25,28,29Pro−h−アミリン、18Arg25,28Pro−h−アミリン、デス−Lys−18Arg25,28Pro−h−アミリン、デス−Lys−h−アミリンおよび25Pro26Val28,29Pro−h−アミリンを含めたある種の好ましい化合物が確認できる。これらのペプチドは、好ましくはヒト・アミリンに比較して加圧下で凝集を形成する、または沈澱する傾向が低下する。
【0041】
特に好ましい本明細書に記載された化合物は、18Arg25,28Pro−h−アミリン、デス−Lys18Arg25,28Pro−h−アミリン、18Arg25,28,29Pro−h−アミリン、デス−Lys18Arg25,28,29Pro−h−アミリン、25,28,29Pro−h−アミリン、デス−Lys25,28,29Pro−h−アミリンおよび25Pro26Val25,28Pro−h−アミリンを含む。また、さらに、アミリン作動薬ペプチド化合物は、
【0042】
23Leu25Pro26Val28,29Pro−h−アミリン;
23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン;
デス−Lys23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン;
18Arg23Leu25Pro26Val28Pro−h−アミリン;
18Arg23Leu25,28,29Pro−h−アミリン;
18Arg23Leu25,28Pro−h−アミリン;
17Ile23Leu25,28,29Pro−h−アミリン;
17Ile25,28,29Pro−h−アミリン;
デス−Lys17Ile23Leu25,28,29Pro−h−アミリン;
17Ile18Arg23Leu−h−アミリン;
17Ile18Arg23Leu26Val29Pro−h−アミリン;
17Ile18Arg23Leu25Pro26Val28,29Pro−h−アミリン;
13Thr21His23Leu26Ala28Leu29Pro31Asp−h−アミリン;
13Thr21His23Leu26Ala29Pro31Asp−h−アミリン;
デス−Lys13Thr21His23Leu26Ala28Pro31Asp−h−アミリン;
13Thr18Arg21His23Leu26Ala29Pro31Asp−h−アミリン;
13Thr18Arg21His23Leu28,29Pro31Asp−h−アミリン;および
13Thr18Arg21His23Leu25Pro26Ala28,29Pro31Asp−h−アミリンを含む。
【0043】
「プラムリンチド」とも言われる25,28,29Pro−h−アミリンは、ヒト・アミリンの最も好ましい作動薬である。25,28,29Pro−h−アミリンは、以後「プラムリンチド」という。プラムリンチドは、ヒト・アミリンとは実質的に異なり、ヒト・アミリンよりも良好であり、優れた特質を有するヒト・アミリンの所望の生物学的特性を保持し、優れた医薬特性を含む(L.S.L. GaetaおよびT.J. Rink、Medicinal Chemistry Research、1994)。前記のプラムリンチドおよび他のアミリン作動薬は、1997年11月11日に発行された米国特許第5,686,411号に記載され、特許請求されている。
【0044】
アミリン作動薬は、患者への投与のための、安定で、安全な医薬組成物に処方されなければならない。本発明の新規な医薬組成物は、約0.01ないし0.5%(w/v)のアミリン作動薬またはアミリン、3.0ないし6.0の最終組成物のpHを可能とする約0.02ないし0.5%(w/v)の酢酸、リン酸、クエン酸またはグルタミン酸緩衝液;約1.0ないし10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール等張剤および、所望により、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンならびにフェノールよりなる群から選択される約0.005ないし1.0%(w/v)の防腐剤を含む。製剤化されたペプチドを複数用途製品に含ませるべきならば、かかる防腐剤は一般的に含まれる。十分量の注射用水を用いて、所望の濃度の液剤を得る。さらに、塩化ナトリウムごとき等張化剤、ならびに他の賦形剤も所望ならば存在させてもよい。しかしながら、かかる賦形剤は、アミリン作動薬またはアミリンの全等張性を維持しなければならず、必要とされるかも知れない場合を除いて、一般的にこの製剤には好ましくない。
【0045】
水素イオン濃度またはpHを引用して用いる場合の緩衝剤、緩衝液、緩衝化溶液なる用語は、酸またはアルカリ添加、または溶媒での希釈に際してpHの変化に抵抗する系、特に水性溶液の能力をいう。酸または塩基の添加に際して小さなPH変化を受ける緩衝液の特徴は、弱酸もしくは弱酸の塩、または弱塩基もしくは弱塩基の塩、のいずれかの存在である。前者の系の例は、酢酸および酢酸ナトリウムである。添加されたヒドロニウムイオンまたはヒドロキシルイオンの量がそれを中和する緩衝系の能力を超えない限りpH変化はわずかである。
【0046】
本発明のペプチド製剤の安定性は、約3.0ないし6.0の範囲に製剤のpHを維持することによって増強される。好ましくは、製剤のpHは、約3.5ないし5.0または3.5ないし5.5、最も好ましくは3.7ないし4.3または3.8または4.2の範囲に維持される。とりわけ好ましいpHは、4.0である。医薬製剤のpHは、5.5を超える場合、ペプチドの化学分解は、貯蔵寿命が約2年間より短くなるように促進され得ることが現在理解されている。
【0047】
本発明の実施で用いられる緩衝液は、酢酸緩衝液(好ましくは、約1−5ないし60mMの最終処方濃度)、リン酸緩衝液(好ましくは、約1−5ないし30mMの最終処方濃度)、グルタミン酸緩衝液(好ましくは、約1−5ないし60mMの最終処方濃度)である。最も好ましい緩衝液は、酢酸塩(好ましくは、約1−5ないし60mMの最終処方濃度)である。
【0048】
安定化剤を本製剤に含有することができるが、重要なことには、必要ではない。しかしながら、含有させるならば、本発明の実施で有用な安定化剤は、炭水化物または多価アルコールである。本発明者らは、本発明の実施で有用な適当な安定化剤は、約1.0ないし10%(w/v)の炭水化物または多価アルコールであることを見出した。多価アルコールおよび炭水化物は、蛋白質を安定化することを担うそれらの骨格、すなわち、−CHOH−CHOH−において同一の特徴を共有する。多価アルコールは、ソルビトール、マンニトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG)のごとき化合物を含む。これらの化合物は、直鎖状分子である。マンノース、リボース、トレハロース、マルトース、イノシトールおよびラクトースのごとき炭水化物は、他方で、ケトまたはアルデヒド基を含むことができる環状分子である。これらの2つのクラスの化合物は、温度上昇によっておよび凍結解凍または凍結乾燥プロセスによってひき起こされる変性に対して蛋白質を安定化させるのに有効であることが示されている。適当な炭水化物は、ガラクトース、アラビノース、ラクトース、または糖尿病患者に対して有害作用を有しない炭水化物を含む、すなわち、該炭水化物は代謝され高濃度の血中グルコースを形成しない。かかる炭水化物は、糖尿病に適当なものとして当該分野でよく知られている。
【0049】
好ましくは、もし安定化剤を含ませるならば、本発明のペプチドは、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、グリセロール、キシリトールのごとき多価アルコール、およびポリエチレン/エチレングリコール共重合体、ならびに200、400、1450、3350、4000、6000および8000の分子量の各種ポリエチレングリコール(PEG)で安定化される。マンニトールは、好ましい多価アルコールである。本発明の凍結乾燥製剤の他の有用な特徴は、それらの安定性を維持するように働く同一処方成分にての本明細書に記載された凍結乾燥製剤の等張性の維持である。マンニトールは、この目的のために用いられる好ましい多価アルコールである。
【0050】
米国局方(USP)は、静菌的または静真菌的濃度の抗菌剤が複数用量容器に含まれた製剤に添加されなけばならないことを述べている。それらは、皮下注射用針およびシリンジで一部の内容物を回収し、あるいは、ペン注射器のごとき送達用の他の侵襲性手段を用いるときに製剤中に偶然に導入された微生物の増殖を防止するために用いる時点で適切な濃度で存在しなければならない。抗菌剤は、処方の全ての他成分との適合性を確保するために評価すべきであり、それらの活性は、1製剤において有効である特定の薬剤が、もう一つで有効でないことはないことを確保するために全処方において評価すべきである。特定の薬剤が、一つの製剤において有効であるがもう一つの製剤において有効でないことを見出すのは、まれではない。
【0051】
防腐剤は、医薬的常識において、微生物増殖を防止または阻害し、この目的のために医薬製剤に添加して微生物による製剤の結果として生じる汚染を回避できる物質である。防腐剤の量は多くないが、それにもかかわらず、それは、ペプチドの全安定性に影響し得る。かくして、防腐剤の選択でさえ困難であり得る。
【0052】
本発明の実施で使用する防腐剤は約0.005ないし1.0%(w/v)の範囲にあり得るが、各防腐剤の好ましい範囲は単独または他のものと組合せて、ベンジルアルコール(0.1−1.0%)またはm−クレゾール(0.1−0.6%)もしくはフェノール(0.1−0.8%)であり、または、メチル(0.05−0.25%)およびエチルまたはプロピルもしくはブチル(0.005−0.03%)パラベンの組合せである。該パラベンは、パラ−ヒドロキシ安息香酸の低級アルキルエステルである。
【0053】
各防腐剤の詳細な記載は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」ならびにAvisらのPharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications、Vol.1、1992に記載されている。
【0054】
プラムリンチド(従前は「AC−137」といわれた)は、液状形態の場合、ガラス容器のガラスに吸着する傾向を持たない、従って、医薬製剤をさらに安定化するのに界面活性剤は必要としない。しかしながら、かかる傾向を有するアミリン作動薬またはアミリンに関しては、界面活性剤が、製剤が次いで凍結乾燥されるべきそれらの製剤中に使用されるべきである。界面活性剤は、疎水性破壊のおよび塩架橋分離によって頻繁に蛋白質の変性をひき起こす。比較的低濃度の界面活性剤は、界面活性剤部位および蛋白質上の反応性部位間の強力な相互作用のために強力な変性活性を発揮する。しかしながら、この相互作用の賢明な使用は、界面または表面の変性に対して蛋白質を安定化できる。ペプチドをさらに安定化できた界面活性剤は、所望により総製剤の約0.001ないし0.3%(w/v)の範囲で存在させることができ、ポリソルベート80(すなわち、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、CHAPSR(すなわち、3-[(3-クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] l-プロパンスルホネート)、BrijR (例えば、(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)であるBrij 35、ポロキサマー(poloxamer)または他の非イオン性界面活性剤を含む。
【0055】
また、選択された等張化剤に依存して医薬製剤の等張性を調整するために塩化ナトリウムまたは他の塩を添加することが望ましい。しかしながら、これは、任意であり、選択された特定の製剤に依存する。非経口的製剤は、等張性または実質的に等張性でなければならず、さもなければ、かなりの刺激および痛みが投与部位に生じるであろう。
【0056】
非経口的製品のための最も重要なビヒクルは水である。非経口投与用の適当な質の水は、蒸留または逆浸透のいずれかによって調製されなければならない。これらの手段によってのみ、種々の液体、気体および固体の汚染物質を水から適当に分離することができる。注射用水は、本発明の医薬製剤の用途のために好ましい水性ビヒクルである。
【0057】
他の成分を本発明のペプチド性医薬製剤に存在させることができる。かかる添加成分は、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤、等張性調整剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたは蛋白質)および両性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンのごときアミノ酸)を含むことができる。かかる添加成分は、もちろん、本発明の医薬製剤の全安定性に悪影響を与えるべきではない。
【0058】
また、容器は、注射製剤の一体的一部であり、成分と考えることができ、全体として不溶で、または特に液体が水性ならば、含有する液体にいくつかの方法で影響しない容器はない。従って、特定の注射用の容器の選択は、容器ならびに液剤の組成、および付されるであろう処置の考慮に基づかねばならない。バイアルのガラス表面へのペプチドの吸着は、必要ならば、ホウ珪酸ガラス、例えば、Wheaton Type I#33((Wheaton Type I−33)またはその同等物の使用によって最小化することもできる。臨床的製造用の類似のホウ珪酸ガラスバイアルおよびカートリッジの他の販売者は、Kimbel Glass Co.、West Co.、Bunder Glas GMBHおよびForma Vitrumを含む。アミリンの生物学的および化学的特性は、Wheaton Type I−33 borosilicate serum vialにおいて、5%マンニトール、および0.02% Tween 80の存在下、アミリンの最終濃度が1.0mg/mlおよび10mg/mlに製剤化および凍結乾燥することによって安定化できる。
【0059】
皮下シリンジから複数用量のバイアルへの針の導入を行い、針が抜かれたらすぐに再びシールを供するには、各バイアルをアルミニウムバンドによって所定の位置に保たれたゴム製クロージャーで密閉する。
【0060】
West 4416/50、4416/50(テフロン表面処理済)および4406/40、Abbott 5139のごときガラスバイアル用のストッパーまたは同等物のストッパーを、注射用医薬のためのクロージャーとして用いることができる。これらのストッパーは、ペプチドならびに製剤の他の成分と適合性がある。また、本発明者らは、これらのストッパーが患者使用パターンを用いたストッパー一体性試験に合格する、例えば、ストッパーは少なくとも100回の注射に耐えることを見出した。
【0061】
上記の医薬製剤の各成分は、当該分野で公知であり、Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Vol. 1、2nd ed、Avisら編、Mercel Dekker、New York、N.Y. 1992に記載され、その全てをここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0062】
上記製剤の製造工程は、調剤、滅菌濾過および充填工程を含む。調剤手順は、特定の順序(防腐剤に続き、安定化剤/等張化剤、緩衝剤、プラムリンチド)での成分の溶解または同一時点での溶解を含む。いずれの滅菌工程も本発明のペプチド性医薬製剤を開発するのに使用できる。
【0063】
典型的な滅菌工程は、濾過、スチーム(湿熱)、乾熱、ガス(例えば、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、二酸化塩素、酸化プロピレン、べータ−プロピオラクトン、オゾン、クロロピクリン、過酢酸、臭化メチル等)、放射線曝露および滅菌処理を含む。濾過は、本発明の実施で滅菌の好ましい方法である。滅菌濾過は、直列で連結された0.45μmおよび0.22μm(1または2)を通しての濾過を含む。濾過後、液剤を前記の適当なバイアルに充填する。
【0064】
本発明の医薬製剤は、非経口的投与を意図する。投与の適当な経路は、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、関節内、クモ膜下等を含む。皮下投与経路が好ましい。粘膜送達も許容される。
【0065】
本発明の製剤は、インスリンとの短期間混合適合性を保持するので特に有利である。現在、30種を超えるインスリン製品が米国で入手できる。米国における全てのレギュラーインスリン製剤は、現在、中性pHにて供給されている。この結果、ホルモンの安定性が改良され、患者は、使用中のインスリンのバイアルを長期に冷蔵する必要がもはやない。さらに、全ての市販のインスリン製剤は、同一のpHであるので、中性のレギュラーインスリンは、他の修飾インスリン製剤といずれの所望の比でも混合できる。インスリンの製剤は、皮下投与に続く作用の迅速性、持続、および強度に応じて、3つのカテゴリーに分けられている。それらは、速効性、中間性、持続性インスリンに分類される。また、これらのカテゴリー内で種々のタイプのインスリンがある。それらは、インスリン、プロタミン亜鉛インスリン、NPHインスリン、セミレンテインスリン(即時インスリン亜鉛懸濁液)、レンテインスリン(インスリン亜鉛懸濁液)、およびウルトラレンテインスリン(長期インスリン亜鉛懸濁液)を含む。
【0066】
結晶性インスリンは、適当な緩衝媒体中の亜鉛(塩化亜鉛として)の存在下、当該ホルモンの沈澱によって調製される。また、水に溶解された場合の結晶性インスリンは、レギュラーインスリンとして公知である。皮下注射に続いて、それは迅速に吸収される(15−60分間)。その作用は、始まりが即時であり、持続は比較的短い、すなわち、それは約1.5ないし4時間内にピーク効果に達し、約5−9時間持続する。
【0067】
インスリンおよび亜鉛が塩基性蛋白質であるプロタミンと反応するのを可能とすることによって、Hagedornおよび共同実験者は、蛋白質錯体であるプロタミン亜鉛インスリンを調製した。この錯体を水性懸濁液中にて皮下注射すると、それは沈着部位でゆっくりと溶解するにすぎず、該インスリンは、定常速度ではなく遅れて吸収される。プロタミン亜鉛懸濁液インスリンは、NPHインスリンとしても知られているイソファンインスリン懸濁液によって大きく置き替わってきており;Nは、中性溶液(pH7.2)を表示し、Pは、プロタミン亜鉛インスリン内容物をいい、Hは、Hagedornの実験室の起源を示す。それは、結晶性である修飾されたプロタミン亜鉛インスリン懸濁液である。インスリン、プロタミンおよび亜鉛の濃度は、製剤が、レギュラーインスリン製剤およびプロタミン亜鉛インスリン懸濁液との中間の作用の開始および期間を有するように調整される。血糖に対するその効果は、2ないし3単位のレギュラーインスリンおよび1単位のプロタミン亜鉛インスリン懸濁液の即座の混合物のものと区別がつかない。
【0068】
化学的研究は、インスリンの溶解性がその物理的状態(アモルファス、結晶性、結晶のサイズ)によって、および亜鉛含量およびそれが懸濁される緩衝剤の性質によって、重要な尺度において決定されることを明らかとした。かくして、インスリンは、それに結合するためのプロタミンのごとき他の蛋白質の使用ないくしてゆっくり吸収される持続形態にて調製できる。酢酸ナトリウム−塩化ナトリウムの溶液(pH7.2ないし7.5)中に集められ、再懸濁された場合、高度の亜鉛含量を有するインスリンの大きな結晶は、皮下注射後ゆっくり吸収され、長持続の作用を発揮する。この結晶性製剤は、長期インスリン亜鉛懸濁液(ウルトラレンテインスリン)と命名される。高いpHにて沈澱したアモルファス状インスリンは、レギュラーインスリンと始りがほとんど同様に迅速であるが、多少長持続の作用を有する。このアモルファス製剤は、即時インスリン亜鉛懸濁液(セミレンテインスリン)と命名される。インスリンのこれら2つの形態は混合して、インスリン亜鉛懸濁液(レンテインスリン)と呼ばれる結晶性インスリン(7部)およびアモルファスインスリン(3部)の安定な混合物−−開始および持続においてセミレンテおよびウルトラレンテ製剤の間の中間であり、NPHインスリンと同様である−−を得ることができる。
【0069】
まとめると、速効性インスリンは、レギュラーインスリンおよび即座のインスリン亜鉛懸濁液(セミレンテインスリン)を含む。中間作用性インスリンは、イソファンインスリン懸濁液(NPHインスリン、イソファンインスリン)、およびインスリン亜鉛懸濁液(レンテインスリン)を含む。持続性インスリンは、プロタミン亜鉛インスリン懸濁液、および長期インスリン亜鉛懸濁液(ウルトラレンテインスリン)を含む。これら製剤の大部分は、ブタまたはウシ・インスリンとして入手できる。組換えDNA起源のヒト・インスリンは、レギュラーおよびイソファンインスリンとしておよびインスリン亜鉛懸濁液として入手できる。最近、修飾されたインスリン(インスリンB−鎖の28および29位のアミノ酸を逆転させることによって創造されたLys(B28)、Pro(B29)ヒト・インスリンアナログ)が、導入されてきた。それは、レギュラーヒト・インスリンよりも、より迅速な開始のグルコース低下作用、早期のピーク作用および短持続の作用を有する速効性インスリンである。
【0070】
多くのインスリンは、多数の会社から入手できる。これらには、世界でのインスリンの2つの最大の供給者であるEli Lilly & CompanyおよびNovo Nordiskを含む。Eli Lillyから入手できる速効性インスリンは、(1) IletinR II (レギュラー);(2)Regular TletineII (ブタ、100単位);(3) Regular IletinR II (濃縮、ブタ、500単位);(4) HumalogR注射液(インスリンlyspro、組換えDNA由来);および(5)HumulinRR(レギュラーインスリン、組換えDNA由来、100単位)を含む。Novo Nordiskから入手できる速効性インスリンは、(1) Novolins R (レギュラー、ヒト・インスリン注射液(組換えDNA由来)100単位)(2)NovolinR R PenFill 1.5ml Cartridges、(レギュラー、ヒト・インスリン注射液(組換えDNA由来)100単位);(3)NovolinR R PrefilledTM(レギュラー、1.5ml予め充填されたシリンジ中のヒト・インスリン注射液(組換えDNA由来)、100単位/ml);(4)Regular Purified Pork Insulin(100単位/ml);(5)VelosulinR BR(緩衝されたレギュラーヒト・インスリン注射液、100単位/ml)を含む。Eli Lillから入手できる中間性インスリンは、(1)HumulinR 50/50(50%ヒト・インスリンイソファン懸濁剤および50%ヒト・インスリン注射液(rDNA由来)、100単位);(2)HumulinR 70/30(70%ヒト・インスリンイソファン懸濁剤および30%ヒト・インスリン注射液(rDNA由来)、100単位);(3)HumulinR L(レンテ;ヒト・インスリン(rDNA由来)亜鉛懸濁液、100単位);(4)HumulinR N(NPH;ヒト・インスリン(rDNA由来)イソファン懸濁剤、100単位);(5)LenteR IletinR I、(インスリン亜鉛懸濁液、ウシ−ブタ);(6)NPH IletinR I(イソファンインスリン懸濁液、ウシ−ブタ);(7)Lente IletinR II NPH(インスリン亜鉛懸濁液、ブタ精製);および(8)NPH IletinR II、(イソファンインスリン懸濁液、ブタ精製)を含む。Novo Nordiskから入手できる中間性インスリンは、(1)NovolinR L(レンテ、ヒト・インスリン亜鉛懸濁液(組換えDNA由来)、100単位/ml);(2)NovolinR N(NPH、ヒト・インスリンイソファン懸濁剤(組換えDNA由来)、100単位/ml);(3)NovolinR N PenFillR 1.5ml Cartridges;(4)NovolinR N PenFilled(NSH、1.5mlの予め充填されたシリンジ中のヒト・インスリンイソファン懸濁剤(組換えDNA由来)、100単位/ml);(5)NovolinR 70/30(70%NPH、ヒト・インスリンイソファン懸濁剤および30%レギュラーヒト・インスリン注射液(組換えDNA由来)、100単位/ml);(6)NovolinR 70/30 PenFillR 1.5ml Cartridges;(7)NovolinR 70/30 PenFilledTM(70%NPH、1.5mlの予め充填されたシリンジ中のヒト・インスリンイソファン懸濁剤および30%レギュラーヒト・インスリン注射液(組換えDNA由来)、100単位/ml);(8)Lente Purlfied Pork Insulin(亜鉛懸濁液、USP 100単位/ml);および(9)NPH Purified Pork Isophane Insulin Suspension(100単位/ml)を含む。持続性インスリンは、Eli LillyのHumulinR U(UltralenteRヒト・インスリン(組換えDNA由来)長期の亜鉛懸濁液)を含む。
【0071】
本発明は、ユニークなペプチド製剤、好ましくは、プラムリンチドペプチド製剤を提供し、それは、注射前にペプチド製剤とのレギュラー製品(例えば、HumulinR RおよびNovolinR R)、中間性インスリン製品(例えば、HumulinR 70/30および Novoline 70/30)および持続性インスリン製剤製品(例えば、HumulinR U)を含む全てのタイプのインスリン製品の短期間混合適合性を促進する。インスリンおよびアミリン作動薬ペプチドまたはアミリンの所望のバイオアべイラビリティは、維持される。この結果、インスリンおよびアミリン作動薬(例えば、プラムリンチド)またはアミリンで治療を受けている患者において、1日当りの注射数がかなり減少される。
【0072】
インスリンならびにインスリンアナログは、本発明の実施で有用である。単量体インスリンアナログ、例えば、「LysProインスリン」または「インスリンlispro」とも言われるLysB28ProB29ヒト・インスリンが開発されてきた。これらのアナログは、それらが、単量体アナログを誘導して医薬上有用な条件下で会合するリガンドによって安定化できるために、有利であるといわれている。
【0073】
かくして、いずれのタイプのインスリンも本発明のペプチド製剤と共にシリンジに吸い込むことができる。また、シリンジへのいずれの順序のペプチドおよびインスリンの混合または導入も可能であるが、好ましい順序は、交差汚染(crosscontamination)および沈澱の可能性を低下させるために、まずシリンジへインスリン続いてペプチドを入れる。
【0074】
シリンジ中のインスリンおよびペプチド製剤の量は、特定の患者の個々の必要性に依存する。従って、シリンジ中に存在させる量は、患者につき適当なインスリンレベルを維持するのに十分な量である。本発明の医薬製剤は、かかる治療の必要性のあるいずれのヒトまたは哺乳動物にも投与できる。
【0075】
プラムリンチドで示したごとく、かつインスリンのタイプおよび混合物の容積率に応じて、インスリンおよびペプチド製剤は、少なくとも約24時間同一シリンジに留まり、インスリンおよびペプチドはそれらの活性および安定性を保持するであろう。
【0076】
例えば、レギュラーインスリン製品は、インスリンの溶解性を維持するための20または30mMの酢酸緩衝液での約4.0のpHにて、ペプチド、例えば、プラムリンチドと混合できる。次いで、混合物のpHは、4.5未満にされるであろう。高度の緩衝能(30mM酢酸塩)を有し、低表示強度、例えば、0.1mg/mlのプラムリンチドの好ましいペプチド製剤は、5ないし20単位の範囲のレギュラーインスリン製品と混合すると、澄な液剤を即座に(1分未満)形成する。この低表示強度のプラムリンチドの結果、高用量容積300μlを生じる。この増加した容積は、インスリン希釈率を増大させ、注射前に6量体からモノマーへインスリンの転換を促進することによってほどんど直ちにpHを4.5未満まで下げるのに有利であり得る。インスリンのこの修飾は、インスリンのバイオアべイラビリティに影響することなく、吸収速度を増大させ、迅速な時間作用を生じさせるのに有利であると考えられる。この効果は、LysB28ProB29ヒト・インスリンにおいて観察される迅速時間作用に近付き得る。
【0077】
4.0ないし5.5のpHにて、2ないし30mM緩衝液濃度および高効力のペプチド製剤、例えば、プラムリンチドは、注射前にレギュラーインスリン製品と混合して、インスリンの性質が影響されないように6.8より大きなpHの溶液を得ることができる。これらの混合物は、インスリンの吸収速度またはバイオアべイラビリティまたはペプチドのバイオアべイラビリティのいずれにも影響しないであろう。
【0078】
本発明の製剤は、一般的に上記される。以下に本発明において有用なさまざまな製剤の実施例を提供する。これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、当業者は、特許請求の範囲内で容易に他の製剤を構成できる。
【0079】
本発明は、今や以下の非制限的な実施例の引用によってさらに詳細に記載されるであろう。
【0080】
実施例1
液体プラムリンチド製剤
本実施例は、プラムリンチド用の2つの好ましい液状製剤を記載する。該ペプチド用の主要な分解経路は、脱アミド化およびペプチド結合加水分解である。従って、該ペプチドの安定性を45℃にて4.0−5.5のpH範囲で調べた。60mM酢酸緩衝液、4.1%マンニトール、0.3%m−クレゾール中の該ペプチドのpH速度プロフィールを図1に示す。この図から、試験されたpH範囲にわたってPro25,28,29h−アミリンは、pH4.0にて最も安定であることが観察できる。以下の製剤が開発された:
【0081】
【表1】

【0082】
0.01%薬物を含む上記製剤は、ウサギ皮下刺激試験において許容できるほど低い刺激を示した。また、ヒトにおいて試験するとこの製剤のプラセボは、許容できるほど高いレベルの寛容性および低い刺激を示した。該製剤に用いられた防腐剤は、0.15もと低いレベルのm−クレゾールにて防腐剤の効果についてのBP基準を満たす。
【0083】
0.01%ペプチドを含む上記製剤の安定性は、4℃および加速条件である30℃、40℃および50℃にて評価した。純度および力価についての強カチオン交換およびHPLC分析に基づいて、該ペプチドの時間に対する%初期純度または効力の片対数プロットを図2、3および4において示すごとくに構成した。該ペプチドの分解は、一次反応速度論に従い、(これらのプロットの傾きによって表される)分解速度は、温度の増加と共に有意に増大することがこのプロットかた観察できる。図5は、アレニウス関係に基づき作成したln(kobs)−対−1/温度のプロットを示す。該製剤におけるプラムリンチドの分解は、アレニウス速度論に従うことがこのプロットから観察できる。プロットの外挿によって、5℃の速度定数を計算し、該ペプチドの4年間までの貯蔵寿命が、この速度定数を用いて予測された。効力の約10%喪失および/または5%ないし7%の分解が許容できると考えられた。直接的測定に基づく30℃での医薬製剤の貯蔵寿命は、少なくとも60日である。
【0084】
実施例2
液状プラムリンチド製剤
表Bは、4℃で4年より大きく、30℃で60日より大きい貯蔵寿命を有する第二のペプチド製剤を記載する。この製剤は、酢酸緩衝濃度が表Aのものとは異なる。この製剤も、ウサギ皮下刺激試験において刺激を示さなかった。加えて、プラセボは、ヒトにおいて有意な刺激性を示さなかった。この製剤の貯蔵寿命は、表Aで与えられた製剤と少なくとも同程度の大きさであり、両製剤は、実質的な貯蔵寿命を有する新規な非経口的ペプチド投薬形態である。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例3
液状プラムリンチド製剤およびインスリン
【0087】
表AおよびBで報告した製剤は、商業的に入手可能なインスリン製品とシリンジ中で混合する場合にも適合性する。表Cは、HumulinR Rとのインスリン適合性の結果を供する。その結果は、ペプチド製剤をHumulinR Rとシリンジ中で特定の比で混合する場合に、清澄な液剤を形成する時間および適合性についての基準を示す。Brangeら、「Insulin Structure and Stability」、in Stability and Characterization of Protein and Peptide Drugs:Case Histories、1993、Wangら(ed)、Plenum Press、NYに概説されるごとく、インスリンは、等電点から1pH単位内の等電点沈澱ゾーンpH範囲の4.5−6.5を有する。従って、もしインスリン製品のpHが7.2±0.2から等電点沈澱範囲のpHに下がるならば、インスリンの沈澱をひき起こし得る。かくして、液剤混合物の清澄性は適合性試験の基準として用いることができる。この試験(表C)において用いたインスリン容積は、I型糖尿病患者について典型的な最大および最小の範囲をカバーする。高度の緩衝能を有する製剤(表C)は、低い緩衝能の製剤より速く清澄な液剤を形成する。しかしながら、0.01%のペプチド表示強度では、両製剤は約1分以内にインスリンとで清澄な液剤を形成する。シリンジ中で、1分は即座の混合であると考えることができる。高表示強度のペプチド(0.015%またはより高い)の結果、用量容積は低くなり、清澄な液剤を形成するのに1分間より長くなる。全液剤混合物の最終pHは、インスリン等電点沈澱範囲(pH4.5−6.5)の外にある。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
0.03%表示強度を持つ製剤(表A)をラットでのin vivo適合性試験に付した。図6は、インスリンについての血漿中濃度−対−時間を示す。試験は、混合後共にまたは個々の注射として別々に注射する場合にインスリンまたはペプチドのいずれかのバイオアべイラビリティにおいて有意な差はないことを示した。従って、これらの新規な製剤は、安定であるだけでなく、HumulinR RおよびNovolinR Rのごときレギュラーインスリン製品と適合性もある。
【0091】
また、好ましい製剤(表AおよびB)を中間作用性(HumulinR 70/30)および持続性(HumulinR N)インスリン製品との適合性につき試験した。これら2つのインスリン製品は懸濁剤であって、それらは共に、特定の比で可溶性および不溶性のインスリン部分を含み、それらの比は標的のバイオアべイラビリティを達成するために必要である。従って、ペプチド製剤と混合する場合、不溶性インスリンに対する可溶性インスリンの比は、維持されるべきである。ペプチド/インスリン混合物から不溶性部分と可溶性部分を分離するための試料調製は、Arakawaら、Diabetes Research and Clinical Practice、1989から採用した。試料は逆相HPLCアッセイを用いて分析した。表Dにその試験結果をまとめる。両製剤は、HumulinR 70/30およびPro25,28,29h−アミリン製剤を3:1の比で混合する場合に対照製剤におけるごとき可溶性−対−不溶性比を維持する。従って、好ましい製剤において、用量容積は、適当なペプチド表示強度を選択することによって維持されるべきである。例えば、15単位のHumulinR 70/30と混合するために0.6mg/mlまたは0.06%表示強度製剤を用いる。
【0092】
【表5】

【0093】
表Eは、持続性インスリン製品HumulinR Nを有する製剤についての適合性データを示す。HumulinR Nは、I型糖尿病患者の通常の用量範囲をカバーする。可溶性−対−不溶性比は、表AおよびBにおいて好ましい製剤をHumulinR Nと混合する場合の対照と比較して、有意には変化しない。好ましいペプチド用量容積は100μlである。
【0094】
実施例1の表AおよびBに記載された製剤は、必要な安定性およびインスリン適合性の必要性を有する好ましい製剤である。
【0095】
【表6】

【0096】
実施例4
液状ペプチド製剤およびインスリン
【0097】
本実施例における製剤は、中間作用性(HumulinR 70/30およびNovolinR 70/30)および持続性(HumulinR NおよびNovolinR N)インスリン製品と混合するのに好ましい製剤である。
【0098】
【表7】

【0099】
この製剤の安定性は、加速安定性データを用いる外挿によって計算され、5℃にて3.3年であり、リアルデータを用いて30℃にて、33日であることが判明した。
HumulinR 70/30およびHumulinR Nとのインスリン適合性試験を実施例3に概説した手順に従って行った。該製剤は、HumulinR 70/30(表G)またはHumulinR N(表H)と混合する場合の対照の範囲内のインスリン可溶−対−不溶性比を維持した。混合物のpHは、対照試料から外れない。
【0100】
【表8】

【0101】
【表9】

【0102】
実施例5
液状プラムリンチド製剤
これは、実施例1−4の製剤に比較して、低緩衝液濃度である10mMの酢酸緩衝液および生理的pHに近いpHを有する製剤である。この製剤の安定性は、加速安定性データに基づき、外挿によって5℃にて2.76年と計算され、リアルタイムデータを用いて30℃にて32日であることが判明した。
【0103】
【表10】

【0104】
実施例6
凍結乾燥ペプチド製剤
アミリン作動薬は、表Jにリストされた製剤の凍結乾燥によって安定化することができる。この製剤は、低い溶解性および/または高度の不安定性を含む物理化学的特性を有するアミリン作動薬またはアミリンを意図する。
【0105】
しかしながら、優れたアミリン作動薬ペプチドであるプラムリンチドは、表Jにリストされた製剤において凍結乾燥もできる。
【0106】
【表11】

【0107】
実施例7
液状ペプチド製剤
プラムリンチドのごときアミリン作動薬は、表Kに記載されたごとく30mM酢酸緩衝液で最小に処方することができる。
【0108】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.01ないし約0.5%(w/v)のプラムリンチド、少なくとも1以上の以下のもの:約1.0ないし約10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール、約0.02ないし約0.5%(w/v)の酢酸、リン酸、クエン酸もしくはグルタミン酸緩衝液、防腐剤または界面活性剤を含み、30℃にて少なくとも30日間安定であり、3.8ないし4.2のpHを有することを特徴とする液状医薬製剤。
【請求項2】
該防腐剤が、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンおよびフェノールよりなる群から選択される請求項1記載の製剤。
【請求項3】
該多価アルコールが、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、グリセロール、キシリトール、ポリエチレン/エチレングリコール共重合体、PEG8000、PEG400、PEG4000、PEG200、PEG1450またはPEG3350よりなる群から選択される請求項1〜2のいずれか1記載の製剤。
【請求項4】
該炭水化物が、マンノース、リボース、トレハロース、マルトース、グリセロール、イノシトールおよびラクトースよりなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1記載の製剤。
【請求項5】
該界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、3-[(3-クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ] l-プロパンスルホネート、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポロキサマーまたは非イオン性界面活性剤である請求項1〜4のいずれか1記載の製剤。
【請求項6】
プラムリンチドが、ヒト・アミリンに比較して水中または2psiより大きな圧力にて凝集を形成する低下した傾向を有し、ヒト・アミリンに比較してNaClの存在下で沈澱する低下した傾向を有し、リン酸緩衝生理食塩水または生理食塩水中の該プラムリンチドよりなる組成物と比較してアミリン特異的受容体結合アッセイまたはバイオアッセイもしくはHPLCアッセイにおいて、該プラムリンチドを安定化させる1以上の安定化用化合物と混合され、該安定化用化合物は、約1.0ないし約10%(w/v)の炭水化物または多価アルコール、約0.02ないし約0.5%(w/v)の酢酸、リン酸、クエン酸もしくはグルタミン酸緩衝液を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の製剤。
【請求項7】
さらにインスリンを含む請求項1〜6のいずれか1記載の製剤。
【請求項8】
該製剤が凍結乾燥された請求項1〜7いずれか1記載の製剤。
【請求項9】
市販用パッケージに含まれる請求項1〜8のいずれか1記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−149684(P2009−149684A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58075(P2009−58075)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願平11−534939の分割
【原出願日】平成10年1月9日(1998.1.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(598133654)アミリン・ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】AMYLIN PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】9360 Towne Centre Drive, San Diego, CA 92121 USA
【Fターム(参考)】