説明

アミロイド折りたたみ中間体に対するワクチン

本発明は、アルツハイマー病を治療するための改良ワクチンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病を治療するために使用することができる改良ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機構による推定では世界中で1800万の人がアルツハイマー病に罹患している(Vasら、2001)。オランダでは、およそ25万人がアルツハイマー病に罹患している。この問題は、人口の平均年齢が高くなるにつれて拡大している。療養施設の患者一人に対するケアは、年間30,000から60,000ユーロの費用がかかると推定される(McDonnellら、2001)。ワクチン接種は費用効果があるであろう。
【0003】
アルツハイマー病は、立体配座の神経変性障害(Sadowski & Wisniewski 2004、Blennowら、2006、Editorials、Nature Med、2006)である。アルツハイマー病の特徴は、脳内又は脳血管内のプラーク形成である。これらのプラークは、神経細胞の膜結合型タンパク質である、アミロイド前駆体タンパク質に由来する。38から43(一般に42)個のアミノ酸残基からなるαらせん状断片が該タンパク質から酵素的に切断され、可溶性Aβと呼ばれるペプチドが形成される。βはおそらく、先ず拡張立体配座を取り、すべての体液中に存在する。可溶性Aβが高濃度になると、その立体配座が変化して凝集体を形成することになる。多数の単量体の配座異性体、様々なタイプのオリゴマー、Aβ由来の拡散性リガンド、プロト原線維、原線維及びスフェロイドを含む多くの凝集体がin vitro又はin vivoにおいて見出されている(Kleinら、2004から採用)。原線維Aβは、交差性ベータのスパイン構造を有し(Sawayaら、2007)、最終的に脳内に沈着して神経変性プラークを形成する。
【0004】
遺伝子導入マウス(Schenkら、1999)及び第I相臨床試験におけるヒト患者(Hockら、2002)を「前凝集した」Aβ1−42の懸濁液で免疫にすることは有益であるように思われた。ヒト免疫血清中の抗体は脳血管内におけるプラーク、Aβ沈着物及びβアミロイドを認識した。該抗体はアミロイド前駆体タンパク質及び可溶性Aβは認識しなかった。
【0005】
「前凝集した」Aβ1−42の懸濁液の欠点は、この物質の物理的性質が明確に定義されていないことである。しかし、これよりはるかに重大な問題は、第II相臨床試験の間に患者の6%においてワクチン関連の副作用として髄膜脳炎が誘発されたことであった(Check、2002、Gilmanら、2005)。この副作用は、Aβ1−42の中心部及びC末端部に位置するエピトープに対するTh1細胞応答に起因する細胞の炎症反応によって引き起こされる(Mclaurinら、2002、Gelinasら、2004)。
【0006】
Aβ1−42により誘発された有益な抗体はN末端に対するものであることが実証されている(McLaurinら、2002、Leeら、2005)。したがって、C末端が切断されたAβペプチドを免疫原として使用することが提案されている(Sigurdssonら、2004、Lemereら、2006、Gevorkianら、2004、Lemereら、2007)。このような短いペプチドは免疫原性が不十分である。免疫原性を高めるために、ペプチドの複数のコピーを、非免疫原性担体(IgMを誘発する目的で)又は外来T細胞エピトープを提供する担体(Agadjanyanら、2005、Ghochikyanら、2006、Maierら、2006、Movsesyanら、2008)に結合させる必要がある。これらの結合体のいずれにおいてもペプチドがβアミロイドオリゴマー又は前原線維に曝される残基4〜10の立体配座を取らないと考えられる。このように、切断されたペプチド結合体で誘発された抗体は、オリゴマー又は前原線維に対する特異性が低いと考えられる。
【0007】
したがって、有効な医薬、好ましくはアルツハイマー病に対するワクチンが今もなお必要とされている。本発明は、既存のワクチンの欠点のすべては有さない、すなわち、毒性がより低いかほとんど無いが、なお免疫付与に対して有効な抗体応答を誘発することができる改良ワクチンを提供する。本発明において提案されるワクチンはβアミロイドペプチドの新規な類似物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のペプチド
本発明の第1の態様において、配列XVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Zを含むペプチドが提供され、ここで、XはA又はGであり、XはE、G、Q又はKであり、XはD又はNであり、ZはXVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Zの該ペプチド配列内に存在するベンドを安定化させる因子である。本発明のペプチドは、本明細書において天然のAβ1−42ではないペプチドと理解されるべき修飾ペプチドである。Zはまた、Aβ1−42内に取り入れられることが見込まれる、好ましくはAβ1−42内に取り入れられる、XVGSN(配列番号1)、XVGSNK(配列番号2)又はXVGSNKG(配列番号3)の立体配座を安定させる因子と定義することができる。上述のように特定されたXVGSN、XVGSNK及びXVGSNKGのペプチド配列は、それぞれAβ1−42のアミノ酸22〜28及び23〜29に対応する。好ましいペプチド配列は、Aβ1−42のアミノ酸22〜28に対応するXVGSNKである。本明細書において示されるX、X及びXに対して考えられる様々な種類は、ヒト集団におけるAβ1−42の配列において、いくつかの既知の変異体が存在することによるものであり、Xは、アミノ酸22でありこの集団において主にEである。しかしながら、北極型(E22G)、オランダ型(E22Q)及びイタリア型(E22K)変異体も既知である。最近、別の変異体(E22Δ)が同定された(Tomiyamaら、2008)。Xはアミノ酸23であり、大部分がDである。しかし、アイオワ型変異体が既に同定されている(D23N)。したがって、仮に、いずれかの他の変異体が今後、本明細書において特定されたAβ1−42の特定の部分、すなわちアミノ酸21〜27、22〜28又は23〜29において同定されるようであれば、本発明のペプチドの配列は、おそらく、この後に同定される変異体を考慮するように構成されることは当業者にとって明白である。
【0009】
いくつかの重複したペプチド配列を試験した(例参照)。本発明者らの知る限り、試験したペプチド配列のうちの2つ(aa22〜28又は23〜29)は、マウスにおいて抗体応答を誘発することができ、この抗体が、単量体、可溶性オリゴマー(Haass and Selkoe、2007、Lambertら、2007、and Wash and Selkoe、2007)原線維又は神経変性プラークに発現するAβ1−42の立体配座エピトープを特異的に認識できることが見出された。オリゴマーAbは神経細胞に対してより毒性があることから、オリゴマーAbを認識することは、原線維又はプラークを認識することよりもさらにより重大であるように思われる。可溶性オリゴマーを除去すると、プラークがまだ存在している間に速やかに認知が改善する。本発明のペプチドの機能は、例2のELISAにおいて示されるように試験するのが好ましい。ELISAにおいてペプチド−BSA結合体を被覆抗原として使用することで、抗ペプチド値の決定が可能になり、一方、オリゴマー及び原線維のAβ1−42を被覆することで特異的な交差反応の検出が可能になる。Aβ1−42由来であり本発明に記載のペプチドに組み込まれ、またAβ1−42で取ると思われるXVGSN、XVGSNK又はXVGSNKGの立体配座を取ることができる、任意の他のペプチド配列も本発明に含まれることは当業者には理解されるであろう。
【0010】
一実施形態において、本発明のペプチドは、式XVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Zからなり、式中、XはA又はGであり、XはE、G、Q又はKであり、XはD又はNであり、ZはXVGSN、XVGSNK又はXVGSNKGのペプチド配列内に存在するベンドを安定させる因子である。
【0011】
本発明者らは、単量体の、可溶性オリゴマー、原線維又は神経変性のプラークに発現する折りたたみ構造のAβ1−42に存在する立体配座エピトープによく似ているペプチドを設計することを目的としているので、本発明のペプチドにおいて、XVGSN、XVGSNK又はXVGSN内に存在するベンドを安定化させることは重要である。この安定化を達成する任意の方法は本発明に包含されている。当業者は本発明のこのようなペプチドを合成した後、当技術分野における既知の方法により、例えば、例1において言及したNMRによってその立体配座を試験することができる。
【0012】
好ましい一実施形態において、この安定化を達成する第1の方法は、本発明のペプチドを環化することである。したがって、本発明の好ましいペプチドは環状ペプチドである。当業者はペプチドの環化方法を知っている。実際の環化反応は、その配列内にZを含む、連続するいずれかの位置の間で行うことができる。さらに、実際の環化反応はまた、Zをまだ含有していない前駆体の配列上で行うことができ、環化の結果Zが生成される。環化は、ペプチド配列のN末端のアミノ酸、好ましくはXVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−ZそれぞれのX1、又はXとZとの結合によって、好ましくは共有結合によって達成することができる。この方法において、XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKGのペプチド配列のC末端のアミノ酸は、環化に関与しない。環化は固相で行うと便利である。例えば、固相に結合された側鎖であるD23を、E22に環化させ、炭酸リンカー上でシクロ−E22−D23を生成することができる。別の選択肢の固相に結合された側鎖では、D27をK28に環化させ、アミドリンカー上でシクロ−N27〜K28を産生することができる。好ましくは、環化は、例えば、DからG(N−Gになる)又はZがYNGKであればGからKのように、逆ループZ内のアミノ酸の間で環化するのが好ましい。また、例えば、G25からS26又はZがYNGKであればGからKのように溶液中で環化することも可能である。環化は、XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させるのに重要であると考えられる。
【0013】
ペプチドの環化の別の好ましい方法は、ペプチド配列のN末端及びC末端においてシステインを加えることであり、又は該ペプチド配列のN末端においてシステイン及び別のシステインをZに加えることによるものである。2つのシステインが存在することで、当業者にとって既知のジスルフィド環化を達成することができる。
【0014】
別の好ましい実施形態において、この安定化を達成する第2の方法はZを使用することである。本明細書において先に示したように、Zは、本発明のペプチドにおいてXVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させる因子である。好ましい実施形態において、Zは、XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させ、該ペプチドが折りたたみ構造のAβ1−42の立体配座を取るで見込みがあろうことを確実にする。さらにより好ましい実施形態において、Zは、XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させ、これらのペプチドが折りたたみ構造のAβ1−42の立体配座を取ることを確実にする。いくつかの試験から、折りたたみ構造のAβ1−42の立体配座内にベンドが存在すると考えられ、このベンドはXVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内にあるS及びNの間の位置に対応する位置に存在すると予想される。
【0015】
Zは、ベンド、ターン又はループを安定化させると当業者に既知である任意の因子でよい。Zは、βターンを形成する可能性が高い「逆ターン」因子と定義することができる(Hutchinsonら、1998、Woolfsonら、1993)。Zは、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、単糖又はオリゴ糖、及び/又はステロイドでよい。好ましい実施形態において、Zは、8、7、6、5又は4個のアミノ酸からなるペプチド断片であり、長さが短くなるにつれて優先される。好ましくは、4から8個のアミノ酸のペプチドは、β−ターンの立体配座の性向が強い「逆ターン」因子である。好ましいペプチド断片は、YNGK、TCGV、CGNT、LCGT、LKGT、GAIK、GAIC、AIIK及びAIICからなる群から選択されるテトラペプチドである。より好ましくは、該テトラペプチドは、YNGK、TCGV、CGNT、LCGT及びLKGTからなる群から選択される。最も好ましくは、該テトラペプチドは、YNGK、TcGV、CGNT、LcGT及びLkGT(ここでc=D−Cysであり、またk=D−Lysである)からなる群から選択される(例えば、Oomenら、2003;及びOomenら2005参照)。Zとして使用できるタンパク質の例は、HSA、IgG及び他の血清タンパク質である。抗原の例は、(細菌性)毒素及びウイルス様粒子である。Zは、例えばBodeら(2007、J.Pept.Sci.、13:702〜708)に記載されているようなステロイドの足場でよい。Zとして使用するのに適したステロイドの足場としては、例えば、胆汁酸、及び、例えば、コール酸、デオキシコール酸及びメチル7−α−アセトキシ−3α−アミノ−12α−アミノ−5β−コラン−24−オエートなどの、この誘導体が挙げられる。好ましくは、本発明のペプチドにおいて、ペプチド配列は、例えば、Bodeら(2007、前掲)により記載されているようにステロイドの足場のC−3位及びC−12位に結合される。
【0016】
Zは、環化の前にペプチド配列に結合してよく、場合によっては該ペプチド配列の残りの部分と一緒に環化してもよい。この実施形態において、Zは、好ましくは、オリゴペプチド、すなわちアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドのような比較的短い分子である。この好ましい実施形態において、アミノ酸の総数(Aβ1−42起源のペプチド配列から及びZから)は、好ましくは10又は11である。この数が11であるのがさらにより好ましい。Zは、該対応するAβ1−42配列内に存在するアミノ酸を含み又はから成り、該対応するXVGSN、XVGSNK又はXVGSNKGの配列と並んでもよい。
【0017】
或いは、Zは、環化されたペプチド配列に結合してもよい。この実施形態において、Zは、前の実施形態におけるよりも、比較的大きい分子、すなわち、例えばポリペプチド又はタンパク質であってもよい。
【0018】
両方の方法(環化及びZの存在)を組み合わせてペプチドを安定化させると、最も良い結果が得られた。さらにより好ましくは、Zをペプチド配列に結合させ、続いてペプチド配列の残り部分と一緒に環化させる。或いはZが環化反応の結果として形成される。この好ましい実施形態において、Zを、例えばYNGKなどの、上記に定義したテトラペプチドとすると最も良い結果が得られた。好ましくは、テトラペプチドは、下記のように該ペプチドの担体分子への選択的な共役が可能であるように少なくとも1つのシステイン及びリシンを含む。リシンは、好ましくはNε−(S−アセチルメルカプトアセチル)リシン(Lys−SAMA)などの修飾リシンである。テトラペプチド内の少なくとも1つのシステイン及びLys−SAMA残基の存在は、本発明のペプチドの担体タンパク質などのスルフヒドリル−反応担体への選択的な共役を可能にする。
【0019】
最も好ましい実施形態において、式XVGSNK−Z(ここで、XはE、G、QまたはKであり、XはD又はNであり、ZはXVGSNK内に存在するベンドを安定化させる因子である)からなるペプチドが提供される。好ましくは、Zは、YNGKであり、ここで、さらにより好ましくはYNGK内のKがペプチドの選択的な共役を可能にする修飾リシン(Lys−SAMA)である。
【0020】
別の最も好ましい実施形態において、配列XVGSNKG−Z(ここで、XはD又はNであり、ZはXVGSNKG内のベンドを安定化させる因子である)を含むペプチドが提供される。好ましくは、ZはYNGKであり、ここで、さらにより好ましくはYNGK内のKがペプチドの選択的な共役ができるようにする修飾リシン(Lys−SAMA)である。
【0021】
配列XVGSNKGAI−Z(ここで、XはEであり、XはDであり、Zは修飾リシン(Lys−SAMA)である)を含むペプチド及び配列VGSNKG−Z(Zは修飾リシン(Lys−SAMA)である)を含むペプチドはいずれも、免疫を与えるペプチド自体に抗体応答が生じることが見出されたが、このように生じる抗体はオリゴマー又は原線維Aβ1−42と交差反応することができなかった。
【0022】
本発明のペプチドは、単一のペプチドとして存在する、又は融合タンパク質などの融合分子に組み込むことができる。ペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸の欠失又は置換により、N末端及び/又はC末端における追加のアミノ酸又は官能基による拡張により、さらに修飾することができ、T細胞を標的にながら生物学的利用能を改善させ、或いは、アジュバント又は(共)刺激作用をもたらす免疫修飾物質を含む又は放出することができる。これらの修飾の影響は、好ましくは、該合成ペプチドの立体配座について試験される。これは、例えばNMRにより行うことができる。このように得られたペプチドにおいて、Aβ1−42が取り入れる見込みのある、好ましくはAβ1−42が取り入れる、XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKGの立体配座が修飾されていないことが重要である。N末端及び/又はC末端における任意選択の追加のアミノ酸は、好ましくは、それが由来するタンパク質のアミノ酸配列、すなわちAβ1−42アミノ酸配列内の対応する位置に存在しない。したがって、さらにより好ましい実施形態において、本発明のペプチドの免疫原性を改善するため、このペプチド、好ましくは上記の環状ペプチドは、好ましくは、Zと免疫原性担体分子との結合によって選択的に該免疫原性担体分子に共役される。このようなペプチドは共役ペプチドと呼ばれる。したがって、好ましい実施形態において、本発明のペプチドは共役ペプチドであり、より好ましくは共役環状ペプチドである。免疫原性担体分子は、好ましくは本発明のペプチドに共役されると哺乳動物などの対象に投与するときに、本発明のペプチドに免疫応答を誘発する担体である。該免疫原性担体は、本明細書において後に定義されるようにアジュバント活性を有することもできる。多くの免疫原性担体分子は当業者に既知である(Hermanson、G.T.、1996、Bioconjugate techniques、Academic Press、San Diego;Drijfhout and Hoogerhout、2000)。適当な免疫原性担体分子としては、例えば、外毒素などの菌体毒素又は類毒素及び毒性が少ないそれらの変異体が挙げられる。好ましい免疫原性担体分子としては、ジフテリア類毒素(CRM197)、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)及び破傷風類毒素(Beuveryら、1986、Classonら、2005)が挙げられる。
【0023】
組成物
別の態様において、本明細書において定義されるペプチドを含む組成物が提供される。このような組成物は医薬組成物すなわち医薬であってよい。
【0024】
別の好ましい実施形態において、ペプチド又はペプチド組成物は、医薬用賦形剤及び/又は薬学的に許容される担体及び/又は免疫修飾物質をさらに含んでよい。任意の既知の不活性な薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を組成物に添加してもよい。医薬の製剤及び薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野において既知の通常のものであり、例えば、レミントンの「The Science and Practice of Pharmacy、21nd Edition 2005、University of Science in Philadelphia」に記載されている。
【0025】
医薬組成物は、薬学的に許容される安定化剤、浸透物質、緩衝剤、分散剤等をさらに含んでもよい。医薬組成物の好ましい形態は、目的とする投与様式及び治療適応に依存する。医薬担体は、活性成分、すなわちペプチドを患者に送達するのに適した任意の適合する毒性のない物質でよい。薬学的に許容される鼻内送達のための担体は、水、緩衝生理食塩溶液、グリセリン、ポリソルベート20、クレモファーEL、及びカプリル/カプリングリセリド水性混合液が例として挙げられ、また緩衝して中性のpH環境にしてもよい。非経口送達のための薬学的に許容される担体は、例えば滅菌した0.9%NaCl緩衝液又は場合により20%アルブミンを補った5%グルコースが例として挙げられる。非経口投与のための製剤は無菌でなければならない。活性物質の投与のための経路は、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内又は病変経路による注射又は注入などの、既知の方法に従う。本発明の組成物は、好ましくはボーラス注射により投与される。筋肉注射のための一般的な医薬組成物は、例えば、1から10mlのリン酸緩衝生理食塩水、及び1から100μg、好ましくは15から45μgの修飾された共役ペプチドを含有するように構成されることになる。経口投与の場合、活性成分は、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁液などの液体の剤形で投与することができる。経口投与のための液体の剤形は、患者が飲み込みやすいように着色剤及び香味剤を含有してもよい。
【0026】
非経口の、経口又は筋肉内の投与が可能な組成物を調製するための方法は、当技術分野において既知であり、例えばレミントンの医薬科学(15th ed.、Mack Publishing、Easton、PA、1980)を含む、様々な出典により詳しく記載されている(すべての目的のため参照によりその全体が組み込まれている)。
【0027】
任意の既知の免疫修飾物質、特に、リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムのように、つり合いのとれたTh2/Th1応答を生じさせる修飾物質を組成物に加えてもよい。好ましくは、免疫修飾物質はアジュバントである。該組成物が本明細書において前に定義されたペプチド及び少なくとも1つのアジュバントを含むことがより好ましい。アジュバントは、本明細書において、ペプチドと組み合わせて使用する場合に、哺乳動物、好ましくはヒトを免疫にするために免疫系を刺激し、このことにより、好ましくはアジュバント自体に特異的な免疫応答を発生させることなくペプチドに対する免疫応答を誘発、増強又は促進する任意の物質又は化合物を含むと定義される。好ましいアジュバントは、同様の条件であるがアジュバントが非存在の下で、該ペプチドに対し発生させた免疫応答と比べて、所与の抗原に対する免疫応答を、少なくとも、1.5、2、2.5、5、10又は20倍増強させる。対応する対照群に比べて、動物又はヒトの群において、アジュバントにより生じた所与のペプチドに対する免疫応答の統計的な平均増強を求めるための試験は当技術分野において利用されている。本明細書において使用されるアジュバントは、通常、哺乳動物には外来の化合物であり、これにより、例えばインターロイキン、インターフェロン及び他のホルモンなどの哺乳動物にとって内因性の免疫活性化化合物は除外される。
【0028】
本発明の組成物は、少なくとも1つのアジュバントを含有してよい。本発明において使用されるアジュバントは、ペプチドの効果が阻害されないように選択されることになる。本発明において使用されるアジュバントは、ヒトに対して生理学的に許容されるものであり、これらは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、Montanide(商標)などの油/界面活性剤ベースの乳剤を含むが、これらに限定されるものではなく、この場合、様々な界面活性剤(特にマンニトールオレエート)は、鉱物油、MF59(商標)などのスクアレン含有乳剤、モノホスホリル脂質又はナイセリア変異型リポ多糖に結合する(PCT/NL98/0063に記載されているように)。
【0029】
医薬は、単回投与として投与してよい。或いは、本明細書において既に定義されているペプチド及び/又はアジュバントの投与を必要であれば繰り返してもよく、及び/又は別種のペプチド及び/又は別種のアジュバントを順次投与してもよい。本発明のペプチド、組成物及び医薬は、好ましくは、静脈内又は皮下、或いは筋肉内投与に適するように製剤されるが、粘膜投与又は経皮及び/又は皮内の、例えば注射による投与など他の投与経路も想定できる。
【0030】
したがって、好ましい実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは医薬として使用される。より好ましくは、この医薬はアルツハイマー病に対するワクチンである。さらにより好ましくは、該医薬はアルツハイマー病を予防し、遅延及び/又は治療するためのものである。本明細書において定義されるワクチンは、アルツハイマー病に対する予防的防御策のため又はこの疾患の治療のために使用することができる。
【0031】
本発明の状況において、生物体又は個体又は対象は動物又はヒトでよい。好ましくは、生物体はヒトである。治療される生物体は、例えば、潜在的な遺伝性素因により及び/又は対象の年齢により及び/又は対象の生活様式(例えば食習慣及び/又は身体活動の欠如)及び/又はこの披験体がアルツハイマー病を発症するリスクが高いことを示す任意の他の既知パラメータにより、アルツハイマー病を発症するリスクが高いと疑われることが好ましい。
【0032】
「予防」という用語は、完全な予防(prevention)、予防(prophylaxis)を含み並びに前記の疾患又は病態を患う個体のリスクを低下させること及び疾患又は病態の発症を遅延させることを含むと理解されたい。「予防」という用語は、このように前記の病気又は病態を患うリスクがあると疑われる人を治療することも含む。該用語は既に発現した兆候を緩和することも含むと理解されたい。
【0033】
本明細書において使用される「遅延させること」という用語は、ある生物体、すなわち、治療すべき病態の前段階にある患者にペプチドを投与することを意味し、これらの患者では対応する状態の前形態(pre−form)は当技術分野において既知の方法により診断される。
【0034】
「治療」又は「治療すること」という用語は、疾患、病態又は障害と闘うという目的のために患者を管理すること及びケアすることと理解される。
【0035】
本発明の状況において、「アルツハイマー病を治療する及び/又はその進行を遅延させること」は、好ましくは、ペプチドの治療有効量を与えることを意味する。治療有効量は、所望の治療結果を達成するのに、すなわちアルツハイマー病を治療する及び/又はその進行を遅延させるのに必要な投与量における及び時間周期における有効量を指す。
【0036】
ペプチドの量は、個体の病態、年齢、性別及び体重などの因子、並びに医薬が該個体に所望の応答を惹起する能力により異なる。
【0037】
治療効果(アルツハイマー病を治療及び/又はその進行を遅延)は、好ましくは少なくとも以下のうちの1つが生じることである。
・脳内に存在するベータプラークの存在量の減少
・脳内に存在する可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の量の減少
・アルツハイマー病に付随する症状の重症度の低減
【0038】
治療される患者の脳内に存在するベータプラークの存在量が減少するとは、好ましくは、加えられたペプチドの量が、少なくともある程度ベータプラークの新たな形成を防ぐことができること及び/又は既に存在するプラークが、少なくともある程度プラーク自体の拡大する能力を阻害することを意味する。好ましくは、この状況において、ベータプラークの沈着は、治療される患者において、PETスキャンなどの画像技術(Henriksen、Yousefiら、2008)及び/又は磁気共鳴画像法(MRI)(O’Brien、2007)を使用することにより同定される、ベータプラークの存在量に関して増加しないであろう。PETスキャンにおいて、ベータプラーク存在量はトレーサーの集積に比例する。好ましくは、ベータプラークの存在量は、少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上減少する。ベータプラークが検出されないことがさらにより好ましい。ベータプラークの視覚化は、ワクチン接種のほぼ少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも1カ月後又はそれより後に実施される必要があることを当業者は知っている(Meyer−Luehmann、Spires−Jonesら、2008)。必要であれば、数回ワクチン接種をする及び定期的にベータプラークの存在量を監視することと決めてもよい。
【0039】
治療される患者の脳内に存在する可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の量が減少するとは、加えられたペプチド量が少なくともある程度可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の新たな形成を防ぐことができること及び/又は既に存在する可溶性Aβオリゴマー又は前原線維が少なくともある程度それら自体の拡大する能力を阻害することを意味するのが好ましい。この状況において、好ましくは、可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の量は、治療される患者において上記で定義された画像技術により同定される表面が増加しない。好ましくは、可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の量は、少なくとも2%、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上減少する。同じ方法を使用し、可溶性Aβオリゴマー又は前原線維の量が検出できないことがより好ましい。
【0040】
本発明の状況において、可溶性Aβオリゴマー、前原線維又はプロト原線維は、2〜24Aβ単量体の集合体の標識となる(Haas and Selkoe、2007)。
【0041】
本発明の状況において、「アルツハイマー病に付随する症状の重症度の低減」は、好ましくは、アルツハイマー病に罹患している患者における認知の改善を評価するための心理試験で測定される認知の改善を意味する。
【0042】
使用
したがって、別の態様において、アルツハイマー病に対する医薬の製造のため本明細書において定義されるペプチドの又は組成物の使用が提供される。好ましくは、該医薬はワクチンである。より好ましくは、該ワクチンは、アルツハイマー病を予防、遅延及び/又は治療するためのものである。
【0043】
したがって、さらに別の態様において、本明細書において定義されるペプチド又は組成物をこれらを必要とする患者に投与することによって、アルツハイマー病を予防、遅延及び/又は治療する方法が提供される。
【0044】
ペプチドを合成する方法
当技術分野では、現在、本発明のペプチドを生成する多くの方法が知られている。本発明は、生成されるペプチドが本明細書において同定された所与の修飾された配列のいずれかを含み、から成り又はと重複し、また本明細書において前に定義された所要の立体配座を有する限り、ペプチドを生成する任意の方法に限定されない。
【0045】
したがって、別の態様において、本明細書において定義され、修飾された環状ペプチドを産生するための方法が提供され、前記方法は次のステップを含む。
(a)配列XVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Z(XはA又はGであり、XはE、G、Q又はKであり、XはD又はNであり、Zはペプチド配列XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させる因子である)を含む環状ペプチドを合成するステップ、及び
(b)任意選択で、好ましくは該免疫担体分子へのZの結合により、(b)で得られる該環状ペプチドに免疫原性担体分子を共役させるステップ。
【0046】
この方法の各ステップは当業者に既知であり、例において広範に記載されている。
【0047】
抗体
別の態様において、本明細書において定義される本発明の修飾された(環状)ペプチドに対する抗体が提供される。当業者は、ある種の動物においてこのような抗体を産生する方法を知っている。所与のポリペプチドに特異的に結合する抗体又は抗体断片を生成するための方法は、例えば、Harlow及びLane(1988、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)及びWO91/19818、WO91/18989、WO92/01047、WO92/06204、WO92/18619、並びに米国特許第6,420,113号及びこれに引用されている参考文献において記載されている。「特異的結合」という用語は、本明細書において使用される場合、低親和性及び高親和性両方の特異的結合を含む。特異的結合は、例えば、少なくとも約10−4MのKdを有する低親和性の抗体又は抗体断片によって示すことができる。特異的結合は、高親和性の抗体又は抗体断片、例えば、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M、少なくとも約10−10MのKdを有する、或いは少なくとも約10−11M若しくは10−12M又はそれ以上のKdを有する抗体又は抗体断片によって示すことができる。
【0048】
診断方法
別の態様において、アルツハイマー病などの神経変性疾患又は病態を診断するための方法が提供される。該方法は、本明細書において定義される抗体を使用して患者の脳内のベータアミロイドプラーク(すなわち神経変性プラーク)の有無を決定するステップを含む。好ましくは、該方法において、披験体の脳内のベータアミロイドプラーク(又はその試料)の存在は、該披験体がアルツハイマー病などの神経変性の疾患又は病態を発症するリスクがあることを示し、或いは、アルツハイマー病などの神経変性の疾患又は病態を診断することを示している。好ましくは、このような方法は、患者の脳内のアルツハイマー病を予知する又は診断するために使用される。本発明の状況において、診断は、患者が将来アルツハイマー病を発症するかの予測的なリスク査定又は好ましくは披験体におけるアルツハイマー病の発症を評価することのどちらかを意味する。本発明の状況において、対象は動物又はヒトでよい。好ましくは、対象はヒトである。
【0049】
好ましい実施形態によると、該方法は、対象から得られた試料においてin vitro又はin vivoで実施される。該試料は、好ましくは対象から単離される脳組織を含む。該組織が脳血管であればより好ましい。
【0050】
好ましくは、ベータアミロイドプラークが存在するかの検出は、該例において説明されるように、ELISAによりアッセイされる脳試料に本発明の抗体を結合することによって明らかにされる。該診断方法を披験体に順次適用して疾患の発症を監視することができる。
【0051】
本文書及びその請求の範囲において、動詞の「含む(comprise)」及びその動詞活用形はその非限定的な意味で使用され、その語に続く項目を含むことを意味するが、具体的に言及されない項目は除外されない。さらに、この動詞の「からなる(consist of)」は、「本質的にからなる(consist essentially of)」と取り替えて、本明細書において定義されるペプチド又は組成物が特異的に同定される成分以外の追加の成分(単数又は複数)を含めてもよく、前記の追加の成分(単数又は複数)が本発明の固有の特徴を変えないことを意味する。加えて、ある種の成分を不定冠詞の「a」又は「an」で指すことは、その状況がその成分が1つ及び唯1つであることを明らかに要求するものでない限り、その成分が複数存在する可能性を排除しない。不定冠詞「a」又は「an」はこのように通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0052】
本発明の明細書において示されるすべての特許及び文献の資料は、参照により本明細書に全体が取り込まれている。以下の例は、例示目的のみに提示されるものであり決して本発明の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】Aβ1−42原線維モデルの図である。A及びBは二量体の交差−βユニットを表し、Cは集合した原線維を表す。[Credit:Olofssonら、2006 J.Biol.Chem.281、477〜483]
【図2】アミロイド由来の環状ペプチドの配列(Kは共役目的のための修飾リシン残基である。)の図である。
【図3】相同なペプチド−BSA結合体に対する貯留マウス血清のIgG−抗体価の図である。抗体価はELISAにおいて450nmの最大光学密度の50%の逆の血清希釈物の10logである。
【図4】被覆オリゴマー又は原線維のAβ1−42での希釈の関数としてのプールマウス血清OD450nmの図である。
【図5】オリゴマー又は原線維のAβ1−42に対する群8及び群9それぞれのマウス血清のIgG−抗体価の図である。滴定値はELISAにおける最大光学密度450nmの50%の逆の血清希釈物の10logである。
【図6】(a)シクロ[Aβ(22−28)−YNGK]/破傷風類毒素の結合体で免疫したマウス血清(1:300)によるヒト脳切片ドナー99−30(Braak 6)の免疫組織化学染色及び(b)対照モノクローナル抗体6E10(1:15.000)の図である。同様パターンのプラークがマウスの血清によって陽性対照として認められた。(顕微鏡:DC300カメラ装着のライカDMRE)。
【実施例】
【0054】
(例1)合成戦略
免疫優性のN末端のB細胞エピトープを含まない、Aβの先端切断ペプチドを検査した。本発明者らは、異常な折りたたみ構造のAβに対する抗体応答を目標としている。
【0055】
Aβ1−42の配列は、
DAEFRHDSGY10EVHHQ15KLVFF20AEDVG25SNKGA30IIGLM35VGGVV40IA
(配列番号4)である。
【0056】
Aβ1−42原線維の構造はNMR分光法により解明されている(Olofssonら、2006)。原線維についての水素/重水素交換実験は、Aβ配列におけるGlu11−Gly25及びLys28−Ala42の領域が溶媒から保護されているが、一方、N末端のAsp−Tyr10及び2つの残基断片のSer26−Asn27は溶媒が接触可能である。該NMRデータは一致している。すなわち、Asp−Tyr10及び2残基断片Ser26−Asn27は溶媒が接触可能である。該NMRのデータは図1Cに示された原線維のモデルと一致する。予想される構造はねじれ構造の交差−βスパインである。図1A及び1Bは、二量体の交差βユニットである切片を示す。該二量体において、各単量体は、Ser26−Asn27を含むターンにより結合されている2つの逆平行βシートを含有する。
【0057】
アミロイド原線維モデル(図1)に基づいて、本発明者らは、一組のYNGKで安定化された環状の10及び11量体のアミロイドペプチドを調製することを決めた。図2は、目標とするアミロイドデカペプチドを示している。本発明者らは、YNGKであり、Kが担体タンパク質の選択的共役のための修飾リシン残基である、人工の配列を加えることにより、続いて、主鎖(「頭部から尾部」)のアミド環化(Oomenら、(2005))によって、小さいAβペプチドの立体配座を安定化させることができると仮定した。同様に、本発明者らは、Aβ及びYNGKの領域21〜31からの6つ又は7つの残基に及ぶ、環状十量体及び十量体でないペプチドの小さなパネルを作製した(表1参照)。
【0058】
【表1】

【0059】
(例2)折りたたみAβ1−42の立体配座エピトープに対するいくつかの修飾環化ペプチドの特異性。
環状ペプチド[Aβ(22−28)−YNGK]、すなわち、シクロ[EDVGSNKYNGK]又は表1において群9に定義されたペプチドの破傷風類毒素の結合体は、in vitroでAβ(1−42)−オリゴマー(図4又は5)及びAβ(1−42)原線維(図4又は5)と交差反応する、抗体を誘発した。これらの抗体はまた、死後のADヒト脳組織(海馬)内のAβの沈着を認識する(図6参照)。線状Nアセチル化ペプチドアミドAc−KEDVGSNKYNG−NHの対応する結合体は、優れた抗ペプチド抗体価を誘導したが、生成された抗体はオリゴマー又は原線維Aβを認識しなかった。該環状ペプチドは、抗体応答を通常誘導しない折りたたみ構造のAβ1−42内の立体配座エピトープによく類似している。群10に定義されたペプチドとの結合体に対する抗体応答のファイリング試験のときも、該環状ペプチド[Aβ(21−27)−YNGK]は引き続き拡張していた。
【0060】
材料及び方法
ペプチド合成、精製及び共役
α−フルオレニルメトキシカルボニル−L−アスパラギン酸(Fmoc−Asp−ODmb)のα−(2,4−ジメトキシベンジル)エステルを、その側鎖を通じて高分子に結合させ、ペプチドアミドを合成した(その後、始めのAspからAsnに変換した)。次に側鎖保護型の樹脂結合配列GKEDVGSNKYD(樹脂)(KがNε−(S−アセチルメルカプトアセチル)リシルである)配列を、前述したように集合させた(Bruggheら、1994)。該樹脂結合の直鎖ペプチドをシクロ[GKEDVGSNKYD(樹脂)]に変換した。Lys(SAMA)以外の、側鎖の脱保護の後、及び樹脂シクロ[GKEDVGSNKYN)]=シクロ[EDVGSNKYNGK]からの切断の後、群9からのペプチド(表1)を得た。群4〜8からのペプチドも同様に調製した。群10からのペプチド、シクロ[AEDVGSNYNGK]は、側鎖保護の樹脂結合の直線状前駆体YNGKAEDVGSD(樹脂)から調製した。該ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製し、イオンスプレー質量分析法により特性を決定した(MH実測値/計算値、表1参照)。該精製したペプチドをブロモアセチル化破傷風類毒素又はマレイミジルで修飾したウシ血清アルブミン(BSA)のいずれかに結合させた(修飾試薬:NHS−PEO−Maleimide、Pierce)(Drijfhout JWら、2000)。
【0061】
Aβ(1−42)の脱凝集
凍結乾燥したAβ1−42(Anaspec)を濃度1.0mMのトリフルオロ酢酸に溶解させ、室温で1時間放置し、窒素蒸気下で乾燥させ、その後、真空(1mmHg)内で15分間乾燥させた。次に該ペプチドを濃度1.0mMのヘキサルフルオロイソプロパノール中に再溶解させ、室温で1時間培養した後、上記のように乾燥させた(Zengら、2001)。該ペプチドを−20℃で18から20時間保存した。
【0062】
オリゴマー又は原線維Aβ(1−42)
Aβ1−42の脱凝集物を濃度5.0mMのジメチルスルホキシド中に溶解させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.2)又は10mM塩酸で50倍希釈した。PBS中該溶液を4℃で24時間インキュベートし(オリゴマーを得るため)、一方、10mM中溶液を37℃で24時間インキュベートした(原線維を得るため)(Stineら)。
【0063】
マウスの免疫付与
6から8週齢の雌Balb/cマウス8匹からなる各群に、0日目及び28日目に、アジュバントを含まないPBS中25μgのAβ1−42、又は50μgのペプチド−TTd結合体及びPBS中75μgA1PO4で皮下に免疫を与えた。小さい血清試料を0日目に採取した。該マウスを42日目に放血させた。
【0064】
ELISA
微小滴定プレート(Greiner655092)をAβ1−42又はペプチド−BSA結合体で被覆した。新しく調製したAβ1−42オリゴマー又は原線維を0.04M炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.7)中で2.5μM(11.3μg/ml)の最終濃度に希釈した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.2)中ペプチド−BSA結合体は総タンパク質濃度が0.5μg/mlであった。これらの溶液のアリコード(100μl)をプレートのウェルに移した。該プレートを90分間37℃でインキュベートした。該プレートを上記のようにさらに処理した(Westdijk、Van den Ijsselら、1997)。
【0065】
免疫組織化学染色
アルツハイマー病の数人のドナーの海馬のヒト脳切片(Braak5又は6)を使用した(オランダ脳バンク)。凍結切片(10μm)を固定されていない直接凍結組織から切り取り、解凍し、1時間乾燥させ、−20℃の密閉ボックス内で保存した。免疫染色のため、切片を4%PFA−PBS溶液中に10分間固定し、0.05Mリン酸緩衝液(PB)中で2回交換して10分間洗浄し、室温で1時間10%標準ロバ血清(NDS)+0.05M PB中0.4%トリトンX100でブロックした。ブロック溶液を廃棄し、3%NDS中希釈マウス血清(1:300、第1の抗体)+0.05M PB中0.4%トリトンX100を添加し、室温のボックス内でウェットティッシュを用いてO/Nでインキュベートした。切片を0.05M PB中で、少なくとも30分間1回又は複数回交換して、洗浄した。次いで、切片を0.05M PB中、ロバ対マウス〜Cy3:1400で2時間培養した。切片を0.05M PBで少なくとも30分間1回又は複数回交換して洗浄した。切片をDapi(Vector)でベクタシールド内に密封した。ベータアミロイド1〜17に対するマウスモノクローナル抗体の6E10(Abcam、Cambride、UK)を陽性対照(1:15,000)として使用した。
(参考文献)







【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式XVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Zからなる環状ペプチド。(式中、XはA又はGであり、XはE、G、Q又はKであり、XはD又はNであり、Zはペプチド配列XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させる因子である)
【請求項2】
Zが4〜8個のアミノ酸残基からなるペプチド断片又はステロイドの足場である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチド断片が、YNGK、TCGV、CGNT、LCGT、LKGT、GAIK、GAIC、AIIK、AIIC、TcGV、CGNT、LcGT及びLkGT(式中、c=D−Cys及びk=D−Lysである)からなる群から選択される、或いは前記ステロイド足場が、好ましくは、コール酸、デオキシコール酸及びメチル7−α−アセトキシ−3α−アミノ−12α−アミノ−5β−コラン−24−オエートからなる群から選択される胆汁酸又はその誘導体である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが免疫原性担体分子に共役されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、Zの前記免疫原性担体分子への選択的共有結合により前記免疫原性担体分子に共役されている、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
前記免疫原性担体分子が破傷風類毒素である、請求項4又は5に記載のペプチド。
【請求項7】
医薬として使用される、請求項1から6までのいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
アルツハイマー病の治療又は予防に使用される、請求項1から6までのいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
アルツハイマー病の治療又は予防のための医薬を製造するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のペプチドの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、アルツハイマー病の予防、発症の遅延及び/又は治療のための方法。
【請求項11】
(a)配列XVGSN−Z、XVGSNK−Z又はXVGSNKG−Z(式中XはA又はGであり、XはE、G、Q又はKであり、XはD又はNであり、Zはペプチド配列XVGSN、XVGSNK又はXVGSNKG内に存在するベンドを安定化させる因子である)からなる環状ペプチドを合成するステップ、及び
(b)任意選択で、好ましくはZの前記免疫担体分子への結合により、(b)で得られる前記環状ペプチドに免疫原性担体分子を共役させるステップを
含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の環状ペプチドを生成するための方法。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の前記ペプチドに対する抗体。
【請求項13】
請求項12に記載の抗体を使用して、患者の試料におけるベータアミロイドプラークの有無を決定するステップを含む、神経変性疾患又は状態を診断するためのin vitroの方法。
【請求項14】
アルツハイマー病を診断するための、請求項12に記載のin vitroの方法。

【図2】
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【図3】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2011−526885(P2011−526885A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516186(P2011−516186)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050387
【国際公開番号】WO2010/002251
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511002939)
【Fターム(参考)】