説明

アミロイド沈着物を画像化するために有用な化合物の前駆体として適切な新規化合物

本発明は、生存患者におけるアミロイド沈着物の画像化に有用である化合物の前駆体として適した新規な誘導体、それらの組成物、使用方法及び上記化合物の製造方法に関する。これらの前駆体から誘導される化合物は、インビボで脳におけるアミロイド沈着物を画像化する方法において有用であり、陽電子放出断層撮影(PET)によるアルツハイマー病の生前診断を可能にし、さらにはアルツハイマー病治療剤の臨床的有効性を測定することを可能にする。さらに、本発明はまた、結晶形態である前駆体化合物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、米国仮出願61/092,851号(2008年8月29日出願)の利益を主張する。上記特許出願の文章全体が参照により本特許に加入される。
【0002】
本発明は、生存患者のような哺乳動物においてアミロイド沈着物を画像化するために有用な化合物の前駆体として適した新規な誘導体、それらの組成物、使用方法及びこのような化合物を製造する方法に関する。これらの前駆体から誘導される化合物は、陽電子放出断層撮影法(PET)のような画像化技術を用いてアルツハイマー病の生前診断を可能にする、インビボで脳中のアミロイド沈着物を画像化する方法において有用である。これらの化合物はまた、アルツハイマー病治療剤の臨床的有効性を測定するために使用することもできる。さらに、本発明はまた、結晶形態である前駆体化合物も開示する。
【背景技術】
【0003】
アミロイドーシスは、1つ又はそれ以上の臓器又は体組織におけるタンパク質の異常沈着を特徴とする原因不明の進行性で、不治の代謝性疾患である。アミロイド蛋白は、例えば骨髄が機能不全になることによってつくられる。アミロイドーシスは、蓄積されたアミロイド沈着物が正常な体機能を損なう場合に生じ、臓器不全を引き起こし又は死に至ることがある。それは、百万人につき約8人に生じるまれな疾患である。男性及び女性では等しく影響を受け、通常、40歳を過ぎて発症する。少なくとも15種のアミロイドーシスが確認されている。それぞれのものは、異なる種類のタンパク質の沈着と関連がある。
【0004】
アミロイドーシスの主要な形態は、原発性全身性、続発性、及び家族性又は遺伝性アミロイドーシスである。
【0005】
また、アルツハイマー病と関連する別の形態のアミロイドーシスもある。原発性全身性アミロイドーシスは、通常、50〜60歳の間で発症する。米国において毎年診断される約2千件の新しい症例では、原発性全身性アミロイドーシスがこの疾患の最も一般的な形態である。それは、軽鎖関連アミロイドーシス(light−chain−related amyloidosis)としても知られており、多発性骨髄腫(骨髄癌)に関連して生じることがある。続発性アミロイドーシスは、慢性感染症又は炎症性疾患の結果である。それは、家族性地中海熱(悪寒、衰弱、頭痛、及び再帰熱を特徴とする細菌感染症)、肉芽腫性回腸炎(小腸の炎症)、ホジキン病、ハンセン病、骨髄炎及び関節リウマチと関連していることも多い。
【0006】
家族性又は遺伝性アミロイドーシスは、その疾患の唯一の遺伝形態である。それは、ほとんどの民族の一部で生じ、そして各家系は、症状及び臓器病変の特徴的なパターンを有する。遺伝性アミロイドーシスは、常染色体優性であると考えられており、これは、疾患が生じるには欠陥遺伝子の1つのコピーで十分であるということを意味する。家族性アミロイドーシスをもつ親の子は、疾患を発症する危険性が50−50である。
【0007】
アミロイドーシスは、体のあらゆる臓器又は体組織に影響を及ぼし得る。心臓、腎臓、胃腸系及び神経系は、影響を受けることが最も多い。アミロイド蓄積の他の一般的な部位としては、脳、関節、肝臓、脾臓、膵臓、呼吸系及び皮膚が挙げられる。
【0008】
アルツハイマー病(AD)は、認知症のもっとも一般的な形態であり、日常生活の正常な活動を妨げるのに十分なほど重篤な精神的能力の喪失を特徴とし、少なくとも6月間持続し、そして生まれつき存在しない神経疾患である。ADは、通常、老年期に生じ、そして記憶、推論及び計画のような認知機能の低下を特徴としている。
【0009】
200〜400万人の米国人がADを有しており;その数は、全年齢を母集団として21世紀の中頃までに1400万人もの数に増えることが予想される。それらの40代及び50代では少数の人々しか疾患を発症しないが、ADは主に高齢者に影響を及ぼす。ADは、65〜74歳のすべての人々の約3%、75〜84歳の人々の約20%、そして85歳以上の人々の約50%に影響を及ぼす。
【0010】
脳内でのアミロイドAβペプチドの蓄積は、ADのすべての形態の病理学的特徴である。大脳アミロイドAβペプチドの沈着が、ADの発症機序を駆動させるのに主要な影響を及ぼすことは一般に認められている。(非特許文献1)。
【0011】
画像化技術、例えば陽電子放射断層撮影法(PET)及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)は、脳内でのアミロイド沈着物の蓄積をモニタリングするのに有効であり、ADの進行との相関を測定するために有用な技術である(例えば非特許文献2を参照のこと)。これらの技術の適用には、脳に容易に入り、インビボでアミロイド沈着物と選択的に結合する放射性リガンドが必要である。
【0012】
血液脳関門を通過することができ、その結果、診断に用いることができるアミロイド結合化合物の必要性が存在する。さらに、AD斑レベルの変化を測定することにより前記処置の効果を評価することによってAD患者に施される処置の有効性をモニタリングできることは重要である。
【0013】
検出可能なアミロイド結合化合物の特に関心ある性質としては、インビボでのアミロイド沈着物に対する親和性が高く、脳への移行が高度かつ迅速であるほかに、正常組織に対する非特異的結合が低く、そして正常組織からのクリアランスが迅速であるということが含まれる。これらの性質は、一般に化合物の親油性に左右される(非特許文献3)。アミロイド斑を画像化するために提案された小分子の中で、チオフラビンTのいくつかの非荷電類似体が合成されている(非特許文献4)。種々の等電子構造の(isosteric)複素環が可能性あるアミロイド結合リガンドとして報告されている(非特許文献5;非特許文献6)。ベンゾフラン誘導体は、アミロイド造影剤としての使用について(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;特許文献1)及びβアミロイド凝集の予防における使用について(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;特許文献2)以前に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2003051859
【特許文献2】WO9517095
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Hardy J and Selkoe D.J.、Science.297:353−356、2002
【非特許文献2】Miller、Science、2006、313、1376
【非特許文献3】Coimbra et al.Curr.Top.Med.Chem.2006、6、629
【非特許文献4】Mathis et al.J.Med.Chem.2003、46、2740
【非特許文献5】Cai et al.J.Med.Chem.2004、47、2208
【非特許文献6】Kung et al.J.Med.Chem.2003、46、237
【非特許文献7】Ono et al.J.Med.Chem.2006、49、2725
【非特許文献8】Lockhart et al.J.Biol.Chem.2005、280(9)、7677
【非特許文献9】Kung et al.Nuclear Med.Biol.2002、29(6)、633
【非特許文献10】Twyman et al.Tetrahedron Lett.1999、40(52)、9383
【非特許文献11】Howlett et al.Biochemical Journal 1999、340(1)、283
【非特許文献12】Choi et al.Archives of Pharmacal Research 2004、27(1)、19
【非特許文献13】Twyman et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2001、11(2)、255
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。別の実施態様において、塩は薬学的に許容しうる塩である。
【0017】
本発明のさらなる実施態様において、化合物[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。別の実施態様において、塩は薬学的に許容しうる塩である。
【0018】
これらの化合物の化学構造は:
【化1】

である。
【0019】
化合物Iは[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを指し、そして化合物IIは[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを指す。
【0020】
Haleblian and McCrone J.Pharm.Sci 1969、58、p911−929、特にp913に記載されるように、化合物は、非晶質状態の同じ化合物と比較して結晶状態で化学的により安定であると期待され得る。Pikal and Rigsbee、Pharm.Res.1997、14、p 1379−1387、特にp1379に記載されるように、この所見は小分子(すなわち非タンパク質)について一般的であるが、タンパク質のような高分子について常に当てはまるというわけではない。従って、結晶状態は、それぞれ[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルのような小分子については有益である。
【0021】
X線は、化合物中の原子における電子により散乱される。結晶性物質は、X線を回折して建設的干渉の方向にピークを生じる。これらの方向は、単位格子の寸法及び形状を含む結晶構造により決定される。本明細書において開示されかつ/又は特許請求される全ての回折ピーク°(2シータ)は、Cu Kα線を指す。無定形(非結晶性)物質はこのような回折ピークを生じない。例えば、Klug、H.P.& Alexander、L.E.、X−Ray Diffraction Procedures For Polycrystalline and Amorphous Materials、1974、John Wiley & Sonsを参照のこと。
【0022】
化合物が勝手放題にひとまとめになるか又は固まる能力は、その化合物がその融点付近まで加熱される場合に増加する。塊及びケーキは、粉末と比較して異なる流動特性及び溶解特性を有する。粒径低減の間のような粉末の機械的処理はエネルギーを物質にもたらし、従って温度が上昇する可能性を生じる。化合物の貯蔵、さらには化合物の輸送もまた、意図せず温度上昇をもたらし得る。
【0023】
融解は吸熱事象である。吸熱事象は例えば示差走査熱量測定により測定することができる。
【0024】
従って[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩;及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩がそれぞれ、これら化合物が望ましくない塊又はケーキを形成するのを防ぐために正常な使用の間に予測される最高温度よりも高い温度においてこのような吸熱事象を有することが有益である。
【0025】
本発明の別の実施態様において、結晶形態である、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩;及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0026】
本発明の別の実施態様において、70℃〜300℃の間に開始する少なくとも1つの吸熱事象を有し、特徴のあるX線回折ピークを有する、結晶形態である[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩;及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0027】
本発明の別の実施態様において、2シータ=約13.51°に少なくとも1つの特異的回折ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態である化合物[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0028】
本発明の別の実施態様において、以下の回折ピーク:11.27、12.00、13.51、15.53、16.82、17.91及び23.72°(2シータ)を含む、結晶状態である化合物[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0029】
さらなる実施態様において、上記結晶形態は、以下の回折ピーク:6.97、9.24、11.27、12.00、13.51、15.53、16.82、17.91及び23.72°(2シータ)を含む。
【0030】
本発明の別の実施態様において、2シータ=約6.18°に少なくとも1つの特異的な回折ピークを有するX線粉末回折パターンを有する、結晶形態である化合物[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0031】
本発明の別の実施態様において、以下の回折ピーク:6.18、9.14、11.67、14.98及び16.44°(2シータ)を含む、結晶形態である化合物[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩が提供される。
【0032】
さらなる実施態様において、上記結晶形態は、以下の回折ピーク:6.18、9.14、11.67、12.32、14.65、14.98、16.44、17.52及び20.66°(2シータ)を含む。
【0033】
本発明の別の実施態様において、生存患者のような哺乳動物においてアミロイド沈着物を画像化するために有用な最終化合物の製造における合成前駆体としての、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩の使用が提供される。一実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩は結晶形態である。さらなる実施態様において、上記化合物は上記の回折パターンを有する。
【0034】
本発明の別の実施態様において、標識された化合物の製造方法における合成前駆体としての[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩の使用が提供される。さらなる実施態様において、標識は18F原子である。一実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩は結晶形態である。さらなる実施態様において、上記化合物は上記の回折パターンを有する。
【0035】
化合物[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル又はその塩は、以下の式の(放射)標識された化合物の製造において有用である:
【0036】
2−(6−フルオロ−5−メチルアミノ−ピリジン−2−イル)−ベンゾフラン−5−オール
【化2】

【0037】
2−(2−フルオロ−6−メチルアミノ−ピリジン−3−イル)−ベンゾフラン−5−オール
【化3】

【0038】
一実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩は結晶形態である。さらなる実施態様において、上記化合物は上記の回折パターンを有する。
【0039】
本発明の別の実施態様において、化合物2−(6−[18F]−フルオロ−5−メチルアミノ−ピリジン−2−イル)−ベンゾフラン−5−オール及び2−(2−[18F]−フルオロ−6−メチルアミノ−ピリジン−3−イル)−ベンゾフラン−5−オールの製造における、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩の使用が提供される。
【0040】
一実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル若しくはその塩は結晶形態である。さらなる実施態様において、上記化合物は上記の回折パターンを有する。
【0041】
別の実施態様において、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル及び[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルの塩は薬学的に許容しうる塩である。
【0042】
一実施態様において、上記の検出は、ガンマ線イメージング、陽電子放出断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法及び磁気共鳴分光法より選択される技術により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルのX線粉末回折パターンを示す。縦軸は強度(カウント)を表し、そして横軸は位置(Cu Kα線についての°(2シータ))を表す。
【図2】[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルの、図1と比較して横軸において異なるスケールのX線粉末回折パターンを示す。縦軸は強度(カウント)を表し、そして横軸は位置(Cu Kα線について°(2シータ))を表す。
【図3】[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルのX線粉末回折パターンを示す。縦軸は強度(カウント)を表し、そして横軸は位置(Cu Kα線について°(2シータ))を表す。
【図4】[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルの、図1と比較して横軸において異なるスケールのX線粉末回折パターンを示す。縦軸は強度(カウント)を表し、そして横軸は位置(Cu Kα線について°(2シータ))を表す。
【図5】[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(A); [5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(B);硫酸ナトリウム(C);及び塩化ナトリウム(D)のX線粉末回折パターンを示す。縦軸は強度(カウント)を表し、そして横軸は位置(Cu Kα線について°(2シータ))を表す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一実施態様は、図1に記載される化合物[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに関する。
【0045】
別の実施態様は、図3に記載される化合物[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに関する。
【0046】
本明細書で使用される「薬学的に許容しうる」は、音響医学的(sound medical)評価の範囲内で、哺乳動物の組織と接触する使用に適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なく、かつ妥当なベネフィット/リスク比に見合う、化合物及び/又は物質、組成物、及び/又は投薬形態を指すために使用される。
【0047】
本明細書で使用される「遊離塩基または薬学的に許容しうる塩」は、無水物及び脱溶媒和した溶媒和物を含む無溶媒物(ansolvates)、ならびに水和物を含む溶媒和物を指す。
【0048】
本明細書で使用される「薬学的に許容しうる塩」は、親化合物がその酸塩もしくは塩基塩または共結晶を作製することにより改変されている、開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容しうる塩の例としては、限定されないが、アミン類のような塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられる。薬学的に許容しうる塩には、例えば非毒性無機酸または有機酸から形成された、親化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の非毒性塩としては、塩酸、リン酸などのような無機酸から誘導されたもの;及び乳酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、メタンスルホン酸などのような有機酸から製造された塩が挙げられる。
【0049】
本発明の化合物の薬学的に許容しうる塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般的に、このような塩は、遊離酸形態または遊離塩基形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基または酸と水中もしくは有機溶媒中、または2つの混合物中で反応させることにより製造することができ;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が使用される。
【0050】
「同位体標識された」、「放射標識された」、「標識された」、「検出可能」または「検出可能なアミロイド結合」化合物若しくは薬剤、または「放射リガンド」は、1個またはそれ以上の原子が、天然で典型的に見出される(すなわち天然に存在する)原子量または質量数と異なる原子量または質量数を有する原子で置き換えられかまたは置換された化合物である。1つの非限定的な例外は19Fであり、これは天然に存在するものより高い程度まで富化させることなくこの元素を含む分子の検出を可能にする。従って置換基19Fを有する化合物を「標識された」などのように呼んでもよい。本発明の化合物中に組み込まれ得る適切な放射性核種(すなわち「検出可能な同位体」)としては、限定されないが、2H(重水素に対してDとも記述される)、3H(トリチウムに対してTとも記述される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが挙げられる。当然のことながら、同位体標識された化合物は、特定の適用に適した技術での検出を可能にする程度まで、またはそのより高い程度まで検出可能な同位体で富化されることのみを必要とし、例えば11Cで標識された検出可能な化合物において、標識された化合物の標識された基の炭素原子は、わずかな分子において12Cまたは他の炭素同位体で構成されていてもよい。放射標識された化合物に組み込まれる放射性核種は、その放射標識された化合物の特定の適用に依存する。例えば、インビトロプラークまたは受容体標識について、及び競合アッセイでは、3H、14C、または125Iを組み込んだ化合物が一般的に最も有用だろう。インビボ画像化適用には、11C、13C、18F、19F、120I、123I、131I、75Brまたは76Brが一般的に最も有用である。
【0051】
「有効量」の例には、医薬若しくは画像化用途のためのバイオアベイラビリティレベルでインビボでアミロイド沈着物の画像化を可能にし、かつ/またはフィブリル形成に関連する細胞変性及び毒性を防止する量が含まれる。
【0052】
本発明の化合物は、動物またはヒトの臓器または身体領域(脳を含む)における1つまたはそれ以上のアミロイド沈着物の存在、位置及び/または量を決定するための、放射リガンドの前駆体としてまたは放射リガンドとして使用され得る。アミロイド沈着物としては、限定することなく、Aβ(アミロイドベータ)の沈着物が挙げられる。アミロイド沈着の時系列を追跡することを可能にする際、放射リガンドの前駆体または放射リガンドとしての本発明の化合物は、疾患、障害または状態に関連する臨床症状の開始とアミロイド沈着とを関連付けるためにさらに使用され得る。本発明の化合物は、最終的に、アミロイド沈着を特徴とする疾患、障害または状態、例えばAD、家族性AD、ダウン症候群、アミロイドーシス及びアポリポタンパク質E4対立遺伝子についてのホモ接合体を処置及び診断するために最終的に使用され得る。
【0053】
従って放射リガンドの前駆体または放射リガンドとしての本発明の化合物は、哺乳動物においてアミロイド沈着物を測定するためのインビボでの方法において使用することができ、この方法は:(a)検出可能な量の、上の段落に記載の医薬組成物を投与する工程、及び(b):被験体における化合物のアミロイド沈着物に対する結合を検出する工程を含む。
【0054】
この方法は、臓器または身体領域、好ましくは患者の脳におけるアミロイド沈着物の存在及び位置を決定する。本方法は、「検出可能な化合物」と呼ばれる本発明のアミロイド結合化合物またはその薬学的に許容しうる水溶性塩を含む検出可能な量の医薬組成物を患者に投与することを含む。
【0055】
「検出可能な量」は、投与される検出可能な化合物の量が、化合物のアミロイドへの結合の検出を可能にするために十分であることを意味する。「画像化有効量」は、投与される検出可能な化合物の量が、化合物のアミロイドへの結合の画像化を可能にするために十分であることを意味する。
【0056】
本発明はアミロイドプローブを使用し、これは非侵襲性神経画像処理技術、例えば磁気共鳴分光法(MRS)若しくは画像化(MINI)、又はガンマ線イメージング、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)若しくは単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)と併用して、インビボでアミロイド沈着を定量するために使用される。用語「インビボ画像化」又は「画像化」は、本明細書に記載されるような標識されたヘテロアリール置換ベンゾフラン又はベンゾチオフェン誘導体の検出を可能にするいずれかの方法を指す。ガンマ線イメージングについては、試験される臓器又は領域から放出される放射線が測定され、そして総結合として、又は1つの組織における総結合を同じインビボ画像化手順での同じ被験体の別の組織における総結合に対して正規化した(例えば総結合で割った)比率のいずれかとして表される。インビボでの総結合は、組織において、同量の標識された化合物を大過剰の未標識であるがその他は化学的に同一な化合物とともに第二の注入をすることにより補正する必要なく、インビボ画像化技術により検出されるシグナル全体として定義される。「被験体」は哺乳動物、好ましくはヒトであり、最も好ましくは認知症を有することが疑われるヒトである。
【0057】
インビボ画像化の目的のために、利用可能な検出機器の型は、所定の標識を選択する際の主要な因子である。例えば、放射性同位体及び19Fはインビボ画像化に特に適している。使用される機器の型により放射性核種又は安定同位体の選択が導かれる。例えば、選択される放射性核種は所定の型の機器により検出可能な崩壊の型を有していなければならない。
【0058】
別の考慮すべき点は放射性核種の半減期に関連する。半減期は、標的による最大取り込みの時点でまだ検出可能であるように十分長くあるべきだが、宿主が有害な放射線を持続しないように十分短くあるべきである。本発明の放射標識された化合物は、適切な波長の放射されたガンマ線が検出されるガンマ線イメージングを使用して検出することができる。ガンマ線イメージングの方法としては、限定されないがSPECT及びPETが挙げられる。好ましくは、SPECT検出については、選択された放射標識は粒子放出をしないが140−200keVの範囲に多数の光子を生じる。
【0059】
PET検出については、放射標識は18F又は11Cのような陽電子放出放射性核種であり
、これらは崩壊して2つのガンマ線を形成し、これがPETカメラにより検出される。
【0060】
本発明において、アミロイド結合化合物/プローブの前駆体が製造され、そしてこれらの化合物/プローブはインビボ画像化及びアミロイド沈着の定量に有用である。これらの化合物は磁気共鳴分光法(MRS)又は画像化(MRI)、陽電子放出断層撮影法(PET)、及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)のような非侵襲性神経画像処理技術と併用して使用される。本発明によれば、2−ヘテロアリール置換ベンゾフラン誘導体は、当該分野で公知の一般的な有機化学技術によりMRS/MRIのために19F又は13Cで標識され得る。これら化合物はまた、「Positron Emisssion Tomography and Autoradiography」391−450 (Raven Press、1986)においてFowler、J.及びWolf、A.により記載されるような当該分野で周知の技術により、PETのために例えば18F、11C、75Br、76Br、又は120Iでも放射標識され得る。これら化合物はまた、当該分野で公知のいくつかの技術のいずれかによりSPECTのために123I及び131Iで放射標識され得る。例えば、Kulkarni、Int.J.Rad.Appl.&Inst.(Part B)18:647(1991)を参照のこと。これら化合物はまた、公知の金属放射標識、例えばテクネチウム−99m(99mTc)で放射標識され得る。金属放射標識された化合物を使用して、アミロイド沈着物を検出することができる。Tc−99mの放射標識された誘導体の製造は当該分野で周知である。例えば、Zhuang et al.Nuclear Medicine&Biology 26(2):217−24、(1999);Oya et al.Nuclear Medicine&Biology 25(2):135−40、(1998)、及びHom et al.Nuclear Medicine&Biology 24(6):485−98、(1997)を参照のこと。さらに、これら化合物は、インビトロ及び死後のサンプルでアミロイド斑を検出するために、当業者に周知の方法により3H、14C及び125Iで標識され得る。さらに、蛍光性化合物は、蛍光の検出に基づく周知の技術の使用によるインビトロ及び死後のサンプルに存在するプラークの検出のために使用され得る。
【0061】
磁気共鳴分光法において特に有用な元素としては19F及び13Cが挙げられる。
【0062】
本発明の目的に適した放射性同位体には、ベータ放射体、ガンマ放射体、陽電子放射体及びx線放射体が含まれる。これらの放射性同位体には120I、123I、131I、125I、18F、11C、75Br、及び76Brが含まれる。本発明に従う磁気共鳴画像化(MRI)又は分光法(MRS)における使用に適切な安定同位体には19F及び13Cが含まれる。生検又は死後組織のホモジネートにおけるアミロイドのインビトロ定量に適した放射性同位体には125I、14C及び3Hが含まれる。好ましい放射標識は、PETインビボ画像化における使用のための11C及び18F、SPECT画像化における使用のための123I、MRS/MRIのための19F、並びにインビトロ研究のための3H及び14Cである。しかし、診断プローブを可視化するためのいずれの従来の方法も本発明にしたがって利用することができる。
【0063】
本発明の化合物から誘導される放射標識された最終化合物は、当業者に公知のいずれかの手段により投与され得る。例えば、動物への投与は局所的でも全身的でもよく、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所的、直腸、吸入、鼻腔、頬側、膣又は移植されたレザバを介して達成される。本明細書で使用される用語「非経口」には、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、及び骨内の注射及び注入の技術が含まれる。
【0064】
用量レベルは、約0.001μg/kg/日〜約10,000mg/kg/日の範囲におよび得る。一実施態様において、用量レベルは約0.001μg/kg/日〜約10g/kg/日である。別の実施態様において、用量レベルは約0.01μg/kg/日〜約1.0g/kg/日である。さらに別の実施態様において、用量レベルは約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日である。
【0065】
正確な投与プロトコル及び用量レベルは、患者の年齢、体重、全身的な健康、性別及び食事を含む種々の因子に依存して変動する;具体的な投与手順の決定は、当業者のいずれにとっても通常のことである。
【0066】
レジメンには、例えば治療剤のようなさらなる化合物を用いた予備処置及び/又は同時投与が含まれ得る。
【0067】
本発明の化合物を製造する方法
スキーム1.5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−ボロン酸(4)の合成
【化4】

【0068】
本発明の一実施態様は、5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−ボロン酸を製造する方法に関し、この方法は:
溶媒中で脱保護試薬を用いて化合物1を化合物2に変換すること;
溶媒中で塩基及び保護試薬を用いて化合物2を化合物3に変換すること;並びに
塩基を用いて化合物3を脱保護すること、及び脱保護生成物とトリアルキルボレートとを溶媒中で混合することを含む工程により化合物3を5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−ボロン酸に変換すること
を含み、ここで;
化合物1は:
【化5】

に相当し;
化合物2は:
【化6】

に相当し;そして
化合物3は:
【化7】

に相当する。
【0069】
様々な反応工程の最終生成物は、必要な場合さらに精製又は再結晶され得る。
【0070】
工程a)に適した溶媒は、例えば、限定されないが、塩素化溶媒、例えばジクロロメタン、芳香族溶媒、例えばトルエン、アミド類、例えばジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン、並びにアルカン類、例えばヘキサン及びヘプタン、又はそれらの混合物である。
【0071】
工程b)に適した溶媒は、例えば、限定されないが、塩素化溶媒、例えばジクロロメタン、芳香族溶媒、例えばトルエン、アミド類、例えばジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル及びジエチルエーテル、並びにアルカン類、例えばヘキサン及びヘプタン、又はそれらの混合物である。
【0072】
工程c)に適した溶媒は、例えば、限定されないが、芳香族溶媒、例えばトルエン及びキシレン、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル及びジエチルエーテル、並びにアルカン類、例えばヘキサン及びヘプタン、又はそれらの混合物である。
【0073】
一実施態様において、工程a)に使用される溶媒は、ジクロロメタン、トルエン又はN−メチルピロリドンである。
別の実施態様において、工程b)で使用される溶媒は、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランである。
さらなる実施態様において、工程c)で使用される溶媒は、ヘキサン、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランである。
【0074】
工程a〜cにおいて使用される溶媒の総量は、出発物質の質量あたり体積約2〜100(v/w)の範囲、特に出発物質の質量あたり体積6−20(v/w)の範囲で変動し得る。
【0075】
工程a)に適した試薬は、例えば、限定されないが、ルイス酸、例えばBBr3及びBCl3、アルキルチオラート類、例えばナトリウムチオメチラート及びナトリウムチオオクチラートならびにピリジン塩酸塩である。
【0076】
工程b)に適した試薬は、例えば、限定されないが、エトキシメトキシハライド、例えばエトキシメトキシブロミド又はエトキシメトキシクロリド及び金属水素化物、例えば水素化ナトリウム又は水素化リチウムである。
【0077】
工程c)に適した試薬は、例えば、限定されないが、アルキルリチウム試薬、例えばメチルリチウム、ブチルリチウム、及びヘキシルリチウム、ならびにトリアルキルボレート、例えばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルである。
【0078】
一実施態様において、工程a)で使用される試薬はBBr3又はピリジン塩酸塩である。
別の実施態様において、工程b)で使用される試薬はエトキシメトキシクロリドとともに水素化ナトリウム又は水素化リチウムである。
さらなる実施態様において、工程c)で使用される試薬はブチルリチウム及びホウ酸トリイソプロピルである。
【0079】
一実施態様において、工程a)における試薬は三臭化ホウ素である。
別の実施態様において、工程a)における試薬はピリジン塩酸塩である。
別の実施態様において、工程b)における試薬はクロロメチルエチルエーテルとの混合物の水素化ナトリウムである。
別の実施態様において、工程b)における試薬はクロロメチルエチルエーテルとの混合物の水素化リチウムである。
別の実施態様において、工程c)における試薬はホウ酸トリイソプロピルとの混合物のn−ブチルリチウムである。
【0080】
別の実施態様は、スキーム1における上記の方法に関し、この方法は:
ジクロロメタン中でBBr3を使用して化合物1を化合物2に変換すること;
ジメチルホルムアミド中でNaH及びCH3CH2OCH2Clを使用して化合物2を化合物3に変換すること;並びに
n−ブチルリチウムを使用して化合物3を脱保護すること及び脱保護生成物をホウ酸トリイソプロピルとテトラヒドロフラン中で混合することを含む工程により化合物3を5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−ボロン酸に変換すること
を含む。
【0081】
工程a〜cの温度は、約−78〜250℃の範囲、特に約−25〜200℃の範囲であり得る。
【0082】
スキーム2.[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(8)の合成
【化8】

【0083】
本発明の一実施態様は、[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを製造する方法に関し、この方法は:
塩基の存在下で保護基を使用して化合物5中のアミノ基を保護することを含む工程により化合物5を化合物6に変換すること;
塩基の存在下でアルキル化剤を使用して化合物6をアルキル化することを含む工程により化合物6を化合物7に変換すること;並びに
溶媒中でパラジウム触媒及び塩基の存在下にて化合物7と化合物4とを反応させること;
を含み、ここで;
化合物4は:
【化9】

に相当し;
化合物5は:
【化10】

に相当し;
化合物6は:
【化11】

に相当し;そして
化合物7は:
【化12】

に相当する。
【0084】
様々な反応工程の最終生成物は、必要な場合さらに精製又は再結晶され得る。
【0085】
適切な溶媒は、例えば、限定されないが、工程d)ではTHF若しくはジエチルエーテル;工程e)ではDMF若しくはTHF;工程f)ではエタノール若しくはDMF、又はそれらの混合物である。
【0086】
一実施態様において、工程d)における溶媒はTHFである。
別の実施態様において、工程e)における溶媒はDMFである。
さらなる実施態様において、工程f)における溶媒はエタノールである。
【0087】
適切な塩基は、例えば、限定されないが、工程d)ではNaHMDS、KHMDS、又はNaH、工程e)ではNaH、NaHMDS;工程f)ではEt3−N又はK2CO3である。
【0088】
別の実施態様において、工程d)における塩基はNaHMDSである。
一実施態様において、工程e)における塩基はNaHである。
さらなる実施態様において、工程f)における塩基はEt3−Nである。
【0089】
工程f)に適した触媒は、例えば、限定されないが、Pd(PPh3)2Cl2又はPd(dppf)Cl2である。
【0090】
別の実施態様は、スキーム2における上記の方法に関連し、この方法は:
ナトリウムヘキサメチルジシラジドの存在下で二炭酸t−ブチルを使用して化合物5中のアミノ基を保護することを含む工程により化合物5を化合物6に変換すること;
NaHの存在下でCH3Iを使用して化合物6をアルキル化することを含む工程により化合物6を化合物7に変換すること;並びに
エタノール中でジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)及び(CH3CH23Nの存在下にて化合物7と化合物4とを反応させること
を含む。
【0091】
工程d〜fの反応温度は−80から室温の間である。
【0092】
スキーム3.(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)の合成
【化13】

【0093】
本発明の一実施態様は、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを製造する方法に関し、ここでこの方法は:
(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを製造する方法であって、該方法は:
臭素化試薬を使用して溶媒中で化合物9を臭素化することを含む工程により化合物9を化合物10に変換すること;
塩基の存在下にて溶媒中で化合物10と化合物11とを混合し、続いて二炭酸t−ブチルを加えることを含む工程により化合物10を化合物11に変換すること;及び
溶媒中で塩基の存在下にてアルキル化試薬を使用して化合物11をアルキル化することを含む工程により化合物11を(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに変換すること;
を含み、ここで;
化合物9は:
【化14】

に相当し;
化合物10は:
【化15】

に相当し;
化合物11は:
【化16】

に相当する。
【0094】
様々な反応工程の最終生成物は、必要な場合さらに精製又は再結晶され得る。
【0095】
工程g〜iに適した溶媒は、例えば、限定されないが、ニトリル類、例えばアセトニトリル及びプロピオニトリル、塩素化溶媒、例えばジクロロメタン、芳香族溶媒、例えばトルエン及びキシレン、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル及びジエチルエーテル、アミド類、例えばジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン並びにアルカン類、例えばヘキサン及びヘプタン、又はそれらの混合物である。
【0096】
一実施態様において、工程g)において使用される溶媒は水、アセトニトリル(MeCN)、トルエン、テトラヒドロフラン、又はそれらの混合物である。
【0097】
別の実施態様において、工程h)において使用される溶媒はテトラヒドロフラン、ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン又はそれらの混合物である。
【0098】
さらなる実施態様において、工程i)において使用される溶媒は、水、ヘキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、又はそれらの混合物である。
【0099】
一実施態様において、工程g)における溶媒は水と混合されたMeCNである。
別の実施態様において、工程h)における溶媒はヘプタンと混合されたTHFである。
別の実施態様において、工程h)における溶媒は、ヘキサンと混合されたTHFである。
さらなる実施態様において、工程i)における溶媒は水と混合されたDMFである。
別の実施態様において、工程i)における溶媒はヘプタンと混合されたTHFである。
さらなる実施態様において、工程i)における溶媒は水と混合されたMeCNである。
【0100】
工程g)〜i)において使用される溶媒の総量は、出発物質の質量あたり体積約2〜100(v/w)の範囲、特に出発物質の質量あたり体積6〜20(v/w)の範囲で変動し得る。
【0101】
工程g)に適した試薬は、例えば、限定されないが、N−ブロモコハク酸イミドのような臭素化試薬である。
【0102】
工程h)に適した試薬は、例えば、限定されないが、二炭酸ジ−tert−ブチル及び塩基、例えばナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、水素化ナトリウム又は水素化リチウムである。
【0103】
一実施態様において、工程h)において使用される試薬は、水素化ナトリウム、水素化リチウム又はナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドとともに二炭酸ジ−tert−ブチルである。
【0104】
工程i)に適した試薬は、例えば、限定されないが、アルキル化試薬、例えばヨウ化メチル及び硫酸ジメチル、並びに塩基、例えば水素化ナトリウム、水素化リチウム、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0105】
別の実施態様において、工程g)における試薬はN−ブロモコハク酸イミドである。
一実施態様において、工程h)における塩基はNaHMDS及びBoc2Oである。
さらなる実施態様において、工程i)における塩基はDBUである。
さらなる実施態様において、工程i)における塩基はNaHである。
【0106】
別の実施態様は、スキーム3における上記の方法に関し、この方法は:
CH3CN中でn−ブロモコハク酸イミドを使用して化合物9を臭素化することを含む工程により化合物9を化合物10に変換すること;
溶媒中でナトリウムヘキサメチルジシラジドの存在下にて化合物10と化合物11とを混合し、続いて二炭酸t−ブチルを加えることを含む工程により化合物10を化合物11に変換すること;及び
ジメチルホルムアミド中でNaHの存在下にてCH3Iを使用して化合物11をアルキル化することを含む工程により化合物11を(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに変換すること
を含む。
【0107】
工程g〜iの温度は、約−78〜150℃の範囲、特に約0℃〜50℃の範囲で(in the in the range)あり得る。
【0108】
工程i)における生成物、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)は、DMF/水混合物又はMeCN/水混合物からの沈殿により精製され得る。
【0109】
一実施態様において、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)はMeCN/水混合物から精製される。
【0110】
スキーム4.(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)への代替の経路:
【化17】

(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)は、2つの代替の経路で製造され得る。例えば、化合物12は、6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(9)から、N−メチル−6−ニトロピリジン−2−アミン(14)又はtert−ブチル メチル (6−ニトロピリジン−2−イル)カルバメート(16)のいずれかを経由して製造され得、ここで臭素化は両方の順序の最後に導入される。
【0111】
スキーム4.[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)の合成
【化18】

【0112】
本発明の一実施態様は、適切な触媒の存在下で適切な塩基を使用して適切な溶媒中で化合物12と化合物4とを混合し、続いて抽出することにより化合物13を製造する方法に関する。
【0113】
最終生成物は、必要な場合さらに精製又は再結晶され得る。
【0114】
適切な溶媒は、例えば、限定されないが、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール、エーテル類、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン及び2−メチルテトラヒドロフラン、並びに芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、又はこれらの混合物である。
【0115】
一実施態様において、工程j)における溶媒はエタノールである。
【0116】
工程j)で使用される溶媒の総量は、出発物質の質量あたり体積約2〜100(v/w)の範囲、特に出発物質の質量あたり体積6〜20(v/w)の範囲で変動し得る。
【0117】
適切な試薬は、例えば、限定されないが、アミン類、例えばトリエチルアミン、炭酸塩、例えば炭酸セシウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウム、リン酸塩、例えばリン酸カリウム及びリン酸ナトリウム又はパラジウム触媒と一緒でのフッ化カリウムである。また、過剰の適切なホスフィンリガンド及びイミダゾール−2−イリデンリガンドが考慮され得る。
【0118】
別の実施態様において、工程j)における試薬はトリエチルアミン及びPdCl2(PPh32である。
【0119】
工程j)の温度は、約−0℃〜150℃の範囲、特に約25℃〜100℃の範囲であり得る。
【0120】
スキーム5.直接アリール化を経由する、[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)の代替の合成
【化19】

[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)は、適切な触媒の存在下で5−エトキシメトキシベンゾフラン(3)の(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)との直接アリール化を経由して製造され得る。
【0121】
適切な溶媒は、例えば、限定されないが、アミド類、例えばジメチルアセトアミド、芳香族溶媒、例えばトルエン、及びキシレンである。
【0122】
工程g〜iで使用される溶媒の総量は、出発物質の質量あたりの体積約2〜100(v/w)の範囲、特に出発物質の質量あたりの体積6〜20(v/w)の範囲で変動し得る。
【0123】
適切な試薬は、例えば、限定されないが、パラジウム触媒系、例えば酢酸カリウム又は酢酸パラジウムと、トリシクロヘキシルホスフィン、ピバロイルアルコール及び炭酸カリウムと共にPd(PPh3)4である。
【実施例】
【0124】
化合物実施例
以下は本発明の前駆体化合物の多数の非限定的実施例である。
【0125】
一般的方法
全ての溶媒は市販されており、そしてこれらをさらに生成することなく使用した。反応は典型的には窒素の不活性雰囲気下で無水溶媒を使用して行った。
【0126】
1H及び13CNMRスペクトルを、プロトンについて400MHzそして炭素−13について100MHzでVarian 400 ATB PFGプローブを備えたVarian Mercury Plus 400 NMR Spectrometerにて記録した。全ての重水素化溶媒は、典型的には0.03%〜0.05%v/vのテトラメチルシランを含有し、これらを参照シグナルとして使用した(1H及び13Cの両方についてδ
0.00に設定した)。
【0127】
質量スペクトルを、Alliance 2795(LC)及びWaters Micromass ZQ検出器からなるWaters MSで120℃にて記録した。質量分析計は、ポジティブ又はネガティブイオンモードで操作されるエレクトロスプレーイオン源(ES)を備えていた。質量分析計をm/z100〜1000の間で0.3秒の走査時間で走査した。
【0128】
HPLC分析を、Waters 717 Plusオートサンプラー及びWaters 2996フォトダイオード(Photodiiode)アレイ検出器を備えたWater 600 Controllerシステムで行った。使用したカラムはACE C18,5μm、4 60X150mmであった。20分の実行で6分かけて95%A(A:水中0.1% H3PO4)から開始して90%C(C:MeCN)で終了する線形グラジエントを適用し、90%Cで4分間保持し、次いで95%Aに戻して終了した。カラムは周囲温度で1.0mL/分の流量であった。ダイオードアレイ検出器を200〜400nmで走査した。
【0129】
マイクロ波加熱をCEM Discover LabMate又はBiotage Initiatorシステムのいずれかで示された温度にて推奨されるマイクロ波チューブで行った。
【0130】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、Mancherey−NagelからのAlugram(登録商標)(Silica gel 60 F254)で行い、典型的にはスポットを可視化するためにUVを使用した。さらなる可視化方法もいくつかの場合に使用した。これらの場合に、TLCプレートを展開して、ヨウ素(約1gのI2をシリカゲル10gに加えて十分に混合することにより生成した)、バニリン(バニリン約1gを100mL 10%H2SO4に溶解することにより生成した)、ニンヒドリン(Aldrichから市販されている)、又はMagic Stain (25g (NH46Mo724.4H2O、5g (NH42Ce(IV)(NO36、450mL H2O及び50mL濃H2SO4を十分に混合することにより生成した)を用いて化合物を可視化した。フラッシュクロマトグラフィーを、Silicycleからの40−63μm(230−400メッシュ)シリカゲルを使用して、Still、W.C.;Kahn、M.;及びMitra、M.Journal of Organic Chemistry、1978、43、2923−2925に開示される技術と類似の技術にしたがって前もって形成した。フラッシュクロマトグラフィー又は薄層クロマトグラフィーに使用される典型的な溶媒は、ジクロロメタン/メタノール、酢酸エチル/メタノール及びヘキサン/酢酸エチルの混合物であった。
【0131】
分取クロマトグラフィーを、Waters 2487ダイオードアレイを使用するWaters Prep LC 4000システム又はWaters LC Module 1 plusのいずれかで行った。使用したカラムはWaters XTerra Prep C18、5μm、30X100mm(流量40mL/分)又はPhenomenex Luna C18、5μm、21.6X250mm(流量20mL/分)のいずれかであった。アセトニトリル/水(水は0.1%トリフルオロ酢酸又は10mM酢酸アンモニウムのいずれかを含有する)の狭いグラジエントを使用して20〜30分の間の合計実行時間で化合物を溶出した。
【0132】
X線粉末回折(XRPD)パターンを、ロングファインフォーカス(long−fine−focus)Cu Kα線(40kV、50mA)及びX’Celerator検出器を使用するPANalytical X’Pert PRO MPDシータ−シータシステムで収集した。20mmの照射長を生じるプログラム可能発散スリット及びプログラム可能散乱防止スリットを使用した。0.02 rad Sollerスリットを入射及び回折ビーム路で使用した。20mm固定マスクを入射ビーム路で使用し、そしてニッケルフィルターを検出器の前に配置した。薄くて平らなサンプルを、スパチュラを使用して平らなシリコンのゼロバックグラウンドプレート上にて用意した。このプレートをサンプルホルダーにマウントし、そして測定の間水平位置で回転させた。回折パターンを2°(2シータ)と80°(2シータ)の間で連続走査モードにて収集した。合計走査時間は25分30秒であった。X線粉末回折の熟練者には、ピークの相対強度が、例えば約30マイクロメートルより大きいサイズの粒子及び非ユニタリー(non−unitary)アスペクト比(サンプルの分析に影響を及ぼし得る)の影響を受け得ることが理解されるだろう。さらに、当然のことながら、強度はサンプル中の粒子の好ましい配向のような実験条件及びサンプル調製に依存して変動し得る。自動又は固定発散スリットの使用はまた、相対強度計算に影響を及ぼす。当業者は、回折パターンを比較した場合にこのような効果に対処することができる。
【0133】
当業者はまた、反射の位置が、回折計においてサンプルが位置する正確な高さ、温度及び回折計のゼロ較正に影響を受け得ることも理解する。サンプル表面の平面性もまた小さい影響を有し得る。反射の位置の正確な値は、例えば物質の結晶化度の差異に起因してサンプルごとにわずかに変わり得る。自動ピーク検出プログラムの使用又は手動の主観的なピーク決定もまた、反射の報告された位置にわずかに影響を及ぼし得る。機器の性能の差異がピーク分解能に影響を及ぼし得ることは当業者に明らかである。従って示される回折パターンデータは、絶対値として解釈されるべきではない。
【0134】
一般に、X線粉末ディフラクトグラムにおける回折角の測定誤差は、Cu Kα線を使用した場合約5%又はそれ以下、特に+0.5°(2シータ)から−0.5°(2シータ)の範囲内であり、そしてこのような程度の測定誤差は、図1〜5のX線粉末回折パターンについて考える場合、並びに表1及び2を読む場合に考慮に入れるべきである。
【0135】
サンプル物質の製造に由来する微量の結晶不純物、例えば塩残留物、例えば乾燥、塩析及び/又はpH調節工程からの硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウムが回折を引き起こし得ること、そしてこのような結晶不純物からの、期待されるピークの近傍に回折角を有するピークがこのような結晶不純物から全体的に又は部分的に生じ得るということも当業者は理解するだろう。
【0136】
多くの化合物からの回折パターンは、例えばInternational Centre for Diffraction Data(ICDD)からのPowder Diffraction File(PDF)データベースのようなデータベースからシミュレートすることができる。当業者はこのようなシミュレートされた回折パターンを実験から得たパターンと比較することができる。
【0137】
示差走査熱量測定(DSC)を30℃〜300℃で窒素下にて穴のあいた蓋を備えたアルミニウムサンプルカップでPerkin Elmer Diamond DSC機器を使用して行った。走査速度は毎分10℃であった。サンプルサイズは1mg未満であった。DSC開始温度及びピーク温度、さらにはエネルギー値が、例えばサンプルの純度及びサンプルサイズに起因して、そして機器のパラメータ、特に温度走査速度に起因して変化し得ることは周知である。従って、示されるDSCデータは絶対値と解釈されるべきではない。
【0138】
当業者は、本明細書に示されるデータと比較できるデータを標準的な方法(例えば、Hoehne、G.W.H.et al(1996)、Differential Scanning Calorimetry、Springer、Berlinに記載されるような方法)に従って収集することができるように、示差走査熱量計に関する機器パラメータを調整することができる。
【0139】
周囲温度から250℃の熱重量分析(TGA)を、窒素下にて白金サンプルカップ中でPerkin Elmer Pyris 1 TGA熱重量分析計を使用して行った。走査速度は毎分10℃であった。サンプルサイズは1mg未満であった。TGAトレース(trace)が、例えばサンプルサイズに起因して、そして機器パラメータ、特に温度走査速度に起因して変動し得ることは周知である。従って、示されるTGAデータは絶対値として解釈されるべきではない。
【0140】
以下の略号が使用されている:
Ac アセチル;
aq. 水性;
Boc2O 二炭酸ジ−tert−ブチル;
DCM ジクロロメタン;
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン;
DMF N,N−ジメチルホルムアミド;
DMSO ジメチルスルホキシド;
DSC 示差走査熱量測定
EtOH エタノール;
MeOH メタノール;
HMDS ビス(トリメチルシリル)アミド;
NBS N−ブロモコハク酸イミド;
r.t. 室温;
THF テトラヒドロフラン;
TFA トリフルオロ酢酸;
TGA 熱重量分析
XRPD X線粉末回折
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
Et3N トリエチルアミン
【0141】
使用した出発物質は、販売業者から入手可能であったか又は文献の手順にしたがって製造され、そして報告されたデータと一致する実験データを有していた。
【0142】
中間体実施例1:5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−ボロン酸(4)
【化20】

【0143】
a) ベンゾフラン−5−オール(2)
5−メトキシベンゾフラン(1)(0.50g、3.38mmol)のジクロロメタン(15mL)中撹拌溶液に、三臭化ホウ素(16.87mL、16.87mmol、1Mジクロロメタン溶液)をゆっくりと0℃で加えた。反応混合物を室温まで温め、そして4時間撹拌した。次いで反応混合物を0℃に冷却し、飽和NaHCO3水溶液でクエンチし、そしてジクロロメタン(3x50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(25mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮して化合物(2)をオフホワイト固体(300mg)として得、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ:7.59(d、J=1.95Hz、1H)、7.35(d、J=8.59Hz、1H)、7.00(d、J=2.73Hz、1H)、6.80(dd、8.59、2.74Hz、1H)、6.67(m、1H)、4.66(s、1H)
【0144】
b) 5−エトキシメトキシベンゾフラン(3)
ベンゾフラン−5−オール(2)(257mg、1.92mmol)のDMF(3mL)中撹拌溶液に、NaH(81mg、1.92mmol、57%油中分散)を0℃で加えた。反応混合物を室温まで温めて1時間撹拌した。次いでクロロメチルエチルエーテル(214μL、2.30mmol)を0℃までで滴下し、そしてこの混合物を室温でさらに1時間撹拌した。水(10mL)を加え、そして反応混合物を酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして真空で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりヘキサン中10%酢酸エチルを使用して精製し、化合物(3)(273mg)を無色油状物として得た。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ:7.59(d、J=1.95Hz、1H)、7.39(d、J=8.16Hz,1H)、7.27(d、J=2.73Hz、1H)、6.99(dd、J=8.98、2.34Hz、1H)、6.70(m、1H)、5.24(s、2H)、3.77(q、J=7.03Hz、2H)、1.25(t、J=7.03Hz、3H)。
【0145】
c) 5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−ボロン酸(4)
5−エトキシメトキシベンゾフラン(3)(265mg、1.38mmol)のTHF(5mL)中撹拌溶液に、−78℃でn−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液、0.56mL、1.44mmol)を滴下した。反応混合物を1時間撹拌した後、ホウ酸トリイソプロピル(0.635mL、2.76mmol)をゆっくりと加え、そしてさらに20分間−78℃で撹拌を続けた。反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)でクエンチし、そして室温まで昇温させた。水(10mL)を加え、そして得られた混合物をジエチルエーテル(2x50mL)で抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。酢酸エチル及びヘキサンから再結晶して粗生成物を精製し、所望の化合物(4)(170mg)を白色固体として得た。
1H NMR (DMSO−d6、400MHz) δ:8.54(s、2H)、7.48(d、J=8.6Hz、1H)、7.39(s、1H)、7.30(d、J=2.7Hz、1H)、7.02(dd、J=8.8、2.5Hz、1H)、5.23(s、2H)、3.68(q、J=7.0Hz、2H)、1.14(t、J=7.0Hz、3H)
【0146】
最終前駆体実施例1:[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(8)の合成
【化21】

【0147】
6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イルアミン(5)
【化22】

2−ニトロ−ピリジン−3−イルアミン(5.06g、36.40mmol)及び酢酸ナトリウム(2.99g、36.46mmol)の酢酸(40mL)中撹拌懸濁液に、臭素(2.5mL、48.79mmol)の酢酸(8ml)中溶液を滴下し、そして反応混合物を終夜撹拌した。酢酸を減圧下で除去した。残留物を0℃に冷却し、飽和炭酸水素溶液で中和してpHを約7に調節し、そして酢酸エチル(4x50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチルを用いてトリチュレーションして化合物(5)(5.1g)を黄色固体として得た。
1H NMR(DMSO−d6、400MHz) δ:7.66(d、J=8.6Hz、1H)、7.58(s、2H)、7.49(d、J=8.6Hz、1H)
ESMS:m/z 216.33 [M−1]-
【0148】
d) (6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(6)
【化23】

6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イルアミン(5)(854mg、3.92mmol)のTHF(50mL)中撹拌溶液に、NaHMDS(5.09mL.5.09mmol、THF中1M)を0℃で加えた。15分間撹拌した後、二炭酸ジ−tert−ブチル(853mg、3.91mmol)のTHF(5mL)溶液を30分かけて加えた。反応混合物を3.5時間室温で撹拌し、次いで飽和NaHCO3水溶液を加えた。反応混合物を酢酸エチル(3x50mL)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりヘキサン中10%酢酸エチルを使用して精製し、化合物(6)(293mg)をオフホワイト固体として得た。
1H NMR (400MHz、クロロホルム−d) δ:9.41(br.s.、1H
)、9.00(d、J=8.6Hz、1H)、7.73(d、J=9.0Hz、1H)、1.55 ppm(s、9H)
ESMS:m/z 318.36[M+1]+
【0149】
e) (6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(7)
【化24】

(6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(6)(290mg、0.91mmol)のDMF(10mL)中撹拌溶液に、NaH(57mg、1.36mmol、57%油中分散)を0℃で加えた。15分撹拌した後、ヨウ化メチル(79μL、1.27mmol)を加え、そして反応混合物を1時間撹拌した。次いで反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液(15mL)でクエンチし、そして酢酸エチル(2x40mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりヘキサン中20%酢酸エチルを使用して精製し、化合物(7)(268mg)を淡黄色固体として得た。
1H NMR (400MHz、クロロホルム−d) δ:7.78(d、J=8.2Hz、1H)、7.66(d、J=8.2Hz、1H)、3.29(s、3H)、1.39(br.s.、9H)
ESMS:m/z 276.36 [M−56]-
【0150】
f) [6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(8)
【化25】

5−エトキシメトキシベンゾフランボロン酸(4)(140mg、0.593mmol)の脱気したエタノール(10mL)溶液に、(6−ブロモ−2−ニトロ−ピリジン−3−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(7)(151mg、0.455mmol)、Pd(PPh32Cl2(42mg、0.059mmol)及びEt3N(127μL、0.909mmol)を加えた。反応混合物を100℃で30分間マイクロ波反応器において撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。残留物を水(15mL)で希釈し、そして混合物を酢酸エチル(3x50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりヘキサン中20%酢酸エチルを使用して精製した。溶媒を蒸発させて表題化合物8(170mg)を淡黄色固体として得た。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δ:8.10(d、J=8.20Hz、1H)、7.84(d、J=8.20Hz、1H)、7.50(s、1H)、7.45(d、J=8.98Hz、1H)、7.32(d、J=1.95Hz、1H)、7.02−7.16(m、1H)、5.27(s、2H)、3.78(q、J=6.63Hz、2H)、3.32(s、3H)、1.36(br.s.、9H)、1.26(t、J=7.22Hz、3H)
ESMS:m/z 444.51[M+1]+
DSC:109.5℃で開始して110.8℃がピークの吸熱事象 ΔH 89.6Jg-1 TGA:室温と160℃の間に顕著な事象はなかった
【0151】
【表1】

【0152】
中間体実施例2:(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)
【化26】

【0153】
g) 5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(10)
6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(1.0g、7.18mmol)のCH3CN(100mL)中撹拌溶液に、遮光して窒素雰囲気下にてN−ブロモコハク酸イミド(636mg、3.59mmol)を0℃で加えた。1時間後、追加分のN−ブロモコハク酸イミド(636mg、3.59mmol)を加えた。反応混合物を室温まで昇温させて、撹拌を終夜続けた。次いでこの混合物に飽和Na223水溶液を加えてクエンチし、そして酢酸エチル (3x30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、MgSO4(無水)で乾燥し、そして真空で濃縮した。粗生成物をBiotageによりヘキサン中10%酢酸エチルを使用して精製し、5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(10) 1.2gを得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6) δ ppm:7.84(d、J=8.98Hz、1H)、7.03(s、2H)、6.66(d、J=8.98Hz、1H)
【0154】
h) (5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)
5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(900mg、4.12mmol)の乾燥THF(40mL)溶液に、NaHMDS(THF中1M、5.8mL)を0℃で加えた。15分間撹拌した後、Boc2O(901mg、4.12mmol)のTHF(5mL)溶液を0℃で30分かけてゆっくりと加えた。得られた混合物を室温まで温め、3時間撹拌し、飽和NaHCO3水溶液でクエンチして酢酸エチル(3x30mL)で抽出した。合わせた抽出物を水そしてブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。残留物をBiotageによりヘキサン中5〜10%酢酸エチルを使用して精製し、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)786mgを得た。
1H NMR (400MHz、クロロホルム−d)δppm:8.14(d、J=8.98Hz、1H)、8.03(d、J=8.59Hz、1H)、7.52(s、1H)、1.53(s、9H)
【0155】
i) (5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)
(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)(800mg、2.52mmol)の乾燥DMF(15mL)溶液に、NaH(60%鉱油中分散、191mg、4.53mmol)を0℃で加えた。得られた混合物を30分間0℃で撹拌し、次いでヨウ化メチル(0.23mL、3.68mmol)を加えた。反応混合物を30分間10℃で撹拌した後、飽和NH4Cl水溶液(15mL)を加えた。反応混合物を酢酸エチル(3x30mL)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで抽出し、MgSO4(無水)で乾燥し、そして減圧下で濃縮した。粗生成物をBiotageによりヘキサン中10%酢酸エチルを使用して精製し、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル12(789mg)を得た。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δppm:8.12(d、J=8.60Hz、1H)、7.95(d、J=8.99Hz、1H)、3.40(s、3H)、1.55(s、9H)
【0156】
または(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)についての代替の手順:
【化27】

【0157】
g) 5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(10)
6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(9)(5.1g、18.4mmol)のMeCN(125mL)中撹拌溶液に、窒素雰囲気下にてN−ブロモコハク酸イミド(3.43g、19.3mmol)を0℃で加えた。1時間後、N−ブロモコハク酸イミド(3.57g、20.1mmol)をさらに加えた。反応混合物を室温まで昇温させ、撹拌を終夜続けた。水(125mL)を加えて生成物を沈殿させた。このスラリーを0℃に冷却し、そして沈殿した生成物をろ過により単離し、予め混合したMeCN:水(1:1)で洗浄し、そして真空下で40℃にて乾燥して5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(2)3.8gを得た。
1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δppm:7.84(d、J=8.98Hz、1H)、7.03(s、2H)、6.66(d、J=8.98Hz、1H)
【0158】
h) (5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)
5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(10)(3.8g、18.4mmol)の乾燥THF(40mL)溶液に、NaHMDS(THF中1M、45mL、45mmol)を0℃で加えた。15分間撹拌した後、Boc2Oの溶液(THF中28.3質量%、14.2g、18.4mmol)を0℃で1時間かけてゆっくりと加えた。得られた混合物をNaHSO4水溶液(1M、110mL、110mmol)でクエンチし、そして室温まで温めた。水相を廃棄し、そして生成物を含有する有機相を減圧下で濃縮した。残留物をTHF(40mL)に溶解し、そして不純物をヘプタン(160mL)を加えて沈殿させてろ過により除去した。透明なろ過した生成物を含有する溶液を蒸発乾固して4.2g(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)を暗赤褐色残留物として得、これをさらに精製することなく次の工程で使用した。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δppm:8.14(d、J=8.98Hz、1H)、8.03(d、J=8.59Hz、1H)、7.52(s、1H)、1.53(s、9H)
【0159】
i) (5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)
(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(11)(4.2g、13.2mmol)の乾燥DMF(21mL)溶液に、DBU(5.02g、33.0mmol)!を0℃で加えた。ヨウ化メチル(3.75g、26.4mmol)を0℃でゆっくりと加えた。3時間0℃で撹拌した後、反応混合物をクエンチし、そして生成物をNaHSO4水溶液(1M)を加えて沈殿させた。粗生成物をろ過により単離し、そしてMeCNと水との混合物から再結晶することにより精製して(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル12(1.55 g)を得た。
1H NMR(400MHz、クロロホルム−d)δppm:8.12(d、J=8.60Hz、1H)、7.95(d、J=8.99Hz、1H)、3.40(s、3H)、1.55(s、9H)
【0160】
最終前駆体実施例2:[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)の合成
【化28】

【0161】
j) [5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)
【化29】

【0162】
実施例1(工程d)に記載される手順と同じ手順に従って、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12)(100mg、0.30mmol)及び5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−ボロン酸(4)(92.5mg、0.39mmol)を使用して製造した。実施例1dに記載されるように後処理し、続いて粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによりヘキサン中10〜25%酢酸エチルを使用して精製した。溶媒を蒸発させて所望の化合物(13)120mgを黄色がかった固体として得た。
1H NMR(400MHz、アセトン)δ ppm:8.48(d、J=8.59Hz、1H)、8.36(d、J=8.98Hz、1H)、7.48(d、J=8.98Hz、1H)、7.37(d、J=2.73Hz、1H)、7.23(s、1H)、7.09(dd、J=8.98、2.34Hz、1H)、5.28(s、2H)、3.74(q、J=7.02Hz、2H)、3.43(s、3H)、1.58(s、9H)、1.19(t、J=7.02Hz、3H)
ESMS:m/z 444.44[M+1]+;388.45[(M−56)+1]+
DSC:81.0℃で開始して83.4℃がピークの吸熱事象、ΔH 76.4 Jg-1TGA:室温と160℃との間で顕著な事象はなかった。
【0163】
又は[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)についての代替j) [5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(13)
5−エトキシメトキシベンゾフランボロン酸(4)(0.69g、2.63mmol)の脱気したエタノール(17.5mL)溶液に、(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル12(0.50g、1.51mmol)、Pd(PPh32Cl2(0.14g、0.20mmol)及びEt3N(0.48mL、3.46mmol)を加えた。反応混合物を90℃で30分間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、きれいに(clear)ろ過した。揮発性物質を減圧下で除去した。残留物を水で希釈し、そして混合物を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物をブラインで洗浄し、そして減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。溶媒を蒸発させて表題化合物13(収率58%)を得た。
1H NMR(400MHz、アセトン)δ ppm:8.48(d、J=8.59Hz、1H)、8.36(d、J=8.98Hz、1H)、7.48(d、J=8.98Hz、1H)、7.37(d、J=2.73Hz、1H)、7.23(s、1H)、7.09(dd、J=8.98、2.34Hz、1H)、5.28(s、2H)、3.74(q、J=7.02Hz、2H)、3.43(s、3H)、1.58(s、9H)、1.19(t、J=7.02Hz、3H)
ESMS:m/z 444.44[M+1]+;388.45[(M−56)+1]+
【0164】
【表2】

【0165】
放射標識実施例1
[5−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルからの[18F](2−(2−18F−フルオロ−6−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル)ベンゾフラン−5−オールの製造手順
18F−フッ化物を、炭酸カリウム水溶液(0.5M、10mL)及び水(18MΩ、15mL)を用いてプレコンディショニングした(pre−conditioned)QMA SepPak Lightカートリッジ(Waters)でサイクロトロンターゲット溶液からオンラインで単離した。3分後、QMA SepPak lightを、2mLずつのkryptofix(4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアゾビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン)(99mg、0.26mmol)の溶液及び炭酸カリウム(16mg、0.12mmol)水(0.85mL)溶液及び乾燥アセトニトリル(20mL)を用いてフラッシングした。溶出液を窒素気流下(110mL/分)で乾燥するまで160℃にて加熱し、RTまで冷却し、そして5−(5−(エトキシメトキシ)ベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロピリジン−2−イル(メチル)カルバミン酸tert−ブチル(3mg、6.8μmol)のDMSO(1mL)溶液を加えた。混合物を85℃で15分間加熱し、次いで70℃に冷却し、そして塩酸(6M、0.25mL)を加えた。30分後、反応混合物を水(0.5mL)で希釈し、そして半分取HPLCカラム(ACE C−18カラム、5250mm、5μm)上にロードし、これをMeOH/HCO2NH4(0.1M)(50:50(v/v))で6mL/分で溶出した。34分に溶出したフラクションを集め、蒸発乾固させて、残留物をリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)及びプロピレングリコール中エタノール(70%)の5:3(v/v)混合物に再溶解し、そして滅菌フィルター(0.22μm、Millipore)を通してろ過した。見積もられた放射化学的収率:3%。放射化学的純度(HPLC):>99%。生成物のMS/MSスペクトルは標準品の未標識2−(2−フルオロ−6−メチルアミノ−ピリジン−3−イル)−ベンゾフラン−5−オールのスペクトルと適合していた。
【0166】
未標識2−(2−フルオロ−6−メチルアミノ−ピリジン−3−イル)−ベンゾフラン−5−オールは、WO2007/086800に記載される競合結合アッセイにおいて13nMのIC50を示す。
【0167】
N−[6−[5−(エトキシメトキシ)ベンゾフラン−2−イル]−2−ニトロ−3−ピリジル]−N−メチル−カルバミン酸tert−ブチルからの[18F]2−(6−フルオロ−5−メチルアミノ−2−ピリジル)ベンゾフラン−5−オールの製造手順
18F−フッ化物を、炭酸カリウム水溶液(0.5M、10mL)及び水(18MΩ、15mL)を用いてプレコンディショニングしたQMA SepPak Lightカートリッジ(Waters)でサイクロトロンターゲット溶液からオンラインで単離した。3分後、QMA SepPak lightを、2mLずつのkryptofix(4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアゾビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン)(99mg、0.26mmol)の溶液及び炭酸カリウム(16mg、0.12mmol)水(0.85mL)溶液及び乾燥アセトニトリル(20mL)を用いてフラッシングした。溶出液を窒素気流下(110mL/分)で乾燥するまで160℃にて加熱し、RTまで冷却し、そして6−(5−(エトキシメトキシ)ベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロピリジン−3−イル(メチル)カルバミン酸tert−ブチル(2.7mg、0.26mmol)のアセトニトリル(1mL)溶液を加えた。混合物を85℃で15分間加熱し、次いで70℃に冷却し、そして塩酸(2M、1mL)を加えた。30分後、反応混合物を水(0.5mL)で希釈し、そして半分取HPLCカラム(Waters μBondapak C−18カラム、7.8300mm、10μm)上にロードし、これをMeOH/HCO2NH4(0.1M)(30:70 (v/v))で6mL/分で溶出した。24分に溶出したフラクションを集め、蒸発乾固させて、残留物をリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)に再溶解し、そして滅菌擬ルター(0.22μm、Millipore)に通してろ過した。放射化学的収率:11%。放射化学的純度(HPLC):>99%。生成物のMS/MSスペクトルは、標準品の未標識2−(6−フルオロ−5−メチルアミノ−2−ピリジル)ベンゾフラン−5−オールのスペクトルと適合した。
【0168】
未標識2−(6−フルオロ−5−メチルアミノ−2−ピリジル)ベンゾフラン−5−オール WO2007/086800に記載される競合結合アッセイにおいて44nMのIC50

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[6−(5−エトキシメトキシベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルである化合物又はその塩。
【請求項2】
結晶形態である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
結晶形態が70℃と300℃との間で開始する少なくとも1つの吸熱事象を有する、請求項2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
2シータ=約13.51°に少なくとも1つの特異的な回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
以下の回折ピーク:11.27、12.00、13.51、15.53、16.82、17.91、及び23.72°(2シータ)を含む結晶形態である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
標識された化合物を製造するための合成前駆体としての、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩の使用。
【請求項7】
標識が18F原子である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
標識された化合物が、2−(6−[18F]−フルオロ−5−メチルアミノ−ピリジン−2−イル)−ベンゾフラン−5−オール又はその塩である、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−ボロン酸を製造する方法であって、該方法は:
溶媒中で脱保護試薬を用いて化合物1を化合物2に変換すること;
溶媒中で塩基及び保護試薬を用いて化合物2を化合物3に変換すること;並びに
塩基を用いて化合物3を脱保護すること、及び脱保護生成物とトリアルキルボレートとを溶媒中で混合することを含む工程により化合物3を5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−ボロン酸に変換すること
を含み、ここで;
化合物1は:
【化1】

に相当し;
化合物2は:
【化2】

に相当し;そして
化合物3は:
【化3】

に相当する、方法。
【請求項10】
ジクロロメタン中でBBr3を使用して化合物1を化合物2に変換すること;
ジメチルホルムアミド中でNaH及びCH3CH2OCH2Clを使用して化合物2を化合物3に変換すること;並びに
n−ブチルリチウムを使用して化合物3を脱保護すること及び脱保護生成物をホウ酸トリイソプロピルとテトラヒドロフラン中で混合することを含む工程により化合物3を5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−ボロン酸に変換すること
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
[6−(5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−イル)−2−ニトロ−ピリジン−3−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを製造する方法であって、該方法は:
塩基の存在下で保護基を使用して化合物5中のアミノ基を保護することを含む工程により化合物5を化合物6に変換すること;
塩基の存在下でアルキル化剤を使用して化合物6をアルキル化することを含む工程により化合物6を化合物7に変換すること;並びに
溶媒中でパラジウム触媒及び塩基の存在下にて化合物7と化合物4とを反応させること;
を含み、ここで;
化合物4は:
【化4】

に相当し;
化合物5は:
【化5】

に相当し;
化合物6は:
【化6】

に相当し;そして
化合物7は:
【化7】

に相当する、方法。
【請求項12】
ナトリウムヘキサメチルジシラジドの存在下で二炭酸t−ブチルを使用して化合物5中のアミノ基を保護することを含む工程により化合物5を化合物6に変換すること;
NaHの存在下でCH3Iを使用して化合物6をアルキル化することを含む工程により化合物6を化合物7に変換すること;並びに
エタノール中でジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)及び(CH3CH23Nの存在下にて化合物7と化合物4とを反応させること
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを製造する方法であって、該方法は:
臭素化試薬を使用して溶媒中で化合物9を臭素化することを含む工程により化合物9を化合物10に変換すること;
塩基の存在下にて溶媒中で化合物10と化合物11とを混合し、続いて二炭酸t−ブチルを加えることを含む工程により化合物10を化合物11に変換すること;及び
溶媒中で塩基の存在下にてアルキル化試薬を使用して化合物11をアルキル化することを含む工程により化合物11を(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに変換すること;
を含み、ここで;
化合物9は:
【化8】

に相当し;
化合物10は:
【化9】

に相当し;
化合物11は:
【化10】

に相当する、方法。
【請求項14】
CH3CN中でn−ブロモコハク酸イミドを使用して化合物9を臭素化することを含む工程により化合物9を化合物10に変換すること;
溶媒中でナトリウムヘキサメチルジシラジドの存在下にて化合物10と化合物11とを混合し、続いて二炭酸t−ブチルを加えることを含む工程により化合物10を化合物11に変換すること;及び
ジメチルホルムアミド中でNaHの存在下にてCH3Iを使用して化合物11をアルキル化することを含む工程により化合物11を(5−ブロモ−6−ニトロ−ピリジン−2−イル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルに変換すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
[5−(5−エトキシメトキシ−ベンゾフラン−2−イル)−6−ニトロ−ピリジン−2−イル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステルである化合物又はその塩。
【請求項16】
結晶形態である、請求項15に記載の化合物又はその塩。
【請求項17】
結晶形態が70℃と300℃との間で開始する少なくとも1つの吸熱事象を有する、請求項16に記載の化合物又はその塩。
【請求項18】
2シータ=約6.18°に少なくとも1つの特異的な回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態である、請求項16に記載の化合物又はその塩。
【請求項19】
以下の回折ピーク:6.18、9.14、11.67、14.98、及び16.44°(2シータ)を含む結晶形態である、請求項16に記載の化合物又はその塩。
【請求項20】
標識された化合物を製造するための合成前駆体としての、請求項15又は16に記載の化合物又はその塩の使用。
【請求項21】
標識が18F原子である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
標識された化合物が2−(2−[18F]−フルオロ−6−メチルアミノ−ピリジン−3−イル)−ベンゾフラン−5−オール又はその塩である、請求項20又は21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501324(P2012−501324A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524942(P2011−524942)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050972
【国際公開番号】WO2010/024769
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】