説明

アミンとポリカルボン酸との付加物、並びにこのような付加物を含む濾材

アミンとポリカルボン酸との付加物、及び、このような付加物の製造方法が、本明細書で開示される。シアン化塩素を除去するために、このような付加物を使用することができる。濾材を形成するために、このような付加物を支持体上に提供する方法も開示される。濾過システムを形成するために、このような濾材を、触媒と、及び/又は多孔質高分子ウェブと組み合わせる方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シアン化塩素は、きわめて有毒なガスであり、そのため、呼吸用の空気からシアン化塩素を除去することが非常に望ましい。特定のアミン、例えば、トリエチレンジアミンはシアン化塩素を除去可能であることが判明しており、多くの場合、呼吸保護などの用途で、活性炭などの吸着材と組み合わせて(例えば、吸着材上に組み込んで)使用される。
【0002】
一酸化炭素もまた有毒であり、そのため、呼吸用の空気流から一酸化炭素を除去することもまた非常に望ましい。様々な材料及び物質(例えば、周知のHopcalite触媒、及び特定の金属触媒、例えば、金)は、一酸化炭素の酸化を触媒して二酸化炭素にすることができることが判明しており、様々な呼吸保護器具に用いることが提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書では、アミン付加物及びこのような付加物の製造方法が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、付加物は、トリエチレンジアミン(以後、TEDAと略す)をポリカルボン酸と組み合わせることにより形成される。本発明者らは、TEDAをこのような付加物の中に形成することにより、TEDAの揮発性が低下し、それゆえにTEDAの望ましくない副作用(例えば、臭い、目及び皮膚を刺激する傾向、特定の触媒の効果を害する又は低減させる傾向、特定の濾材、特に、いわゆるエレクトレット濾材、の効果を低減させる傾向など)の多くを削減する一方で、TEDAがシアン化塩素を除去する能力を保存する又は更には高めるという驚くべき結果を発見した。
【0005】
また、このような付加物を形成するためにTEDAとポリカルボン酸とを組み合わせる方法も開示される。更に、特に有用であることが判明している付加組成物も開示される。更に、濾材を形成するための支持体(例えば、活性炭及び特定のアルミナなどの大きな又は拡大された表面積の材料)上への付加物の組み込みも開示される。このような濾材は、様々なタイプの呼吸保護製品及びシステムに有用に採用することができる。
【0006】
更に、例えば、シアン化塩素の除去に有用である本明細書に記載される付加物(特に、支持体上に提供される付加物)を他の物質、例えば、一酸化炭素、の除去に有用である触媒と組み合わせて含む濾過システムが開示される。発明者らは、このような付加物及びこのような触媒が、いずれか一方がもう一方の性能を容認できないほど低減させることなく、同一の濾過システムで採用できるという驚くべき結果を発見した。特定の実施形態では、このような触媒は、一酸化炭素の酸化を触媒して二酸化炭素にするために使用できる約0.5nm〜約50nm寸法の金クラスターを含む。このような金触媒は、アミンにより害されやすいことが知られている(例えば、その触媒活性が妨害されることが知られている)。本発明者らは、このような金触媒とTEDAは、TEDAがポリカルボン酸との付加物の形態で存在するならば、同一の濾過システム内で使用できるという驚くべき結果を発見した。
【0007】
更に、例えば、シアン化塩素の除去に有用である本明細書に記載される付加物(特に、支持体上に提供される付加物)を微粒子の除去に有用である濾材と組み合わせて含む濾過システムが開示される。特に、このような付加物は、一般にエレクトレットウェブと呼ばれるタイプの多孔質高分子濾材と組み合わせると有用である。発明者らは、このような付加物及びエレクトレットウェブが、いずれか一方がもう一方の性能を容認できないほど低減させることなく、同一の濾過システムで採用できるという驚異的結果を発見した。
【0008】
TEDA/ポリカルボン酸付加物を含有する濾材、このような付加物を金触媒と組み合わせて含有する濾過システム、及び/又は、このような付加物をエレクトレットウェブと組み合わせて含有する濾過システムは、本明細書で詳細に記載されるように、呼吸保護器具に含むことができる。このような呼吸保護器具には、個人保護(すなわち、1人の人間の保護)用、又はいわゆる集団の保護(すなわち、複数の人間が曝される空気を保護又は処理する器具)用の器具を挙げることができる。このような集合的保護器具は、例えば、車両、建物、労働環境(鉱業場、工場など)及びこれらに類する場で使用することができる。
【0009】
それゆえに、支持体及びこの支持体上に提供されるトリエチレンジアミン及びポリカルボン酸との付加物を含む濾材が、一態様で本明細書に開示される。
【0010】
トリエチレンジアミン及び少なくとも1つのポリカルボン酸を提供する工程、これらの付加物を形成するのに有効な条件下でトリエチレンジアミンをポリカルボン酸と組み合わせる工程、並びに、付加物が支持体上に提供されるようにする工程、を含む濾材の製造方法が、別の態様で本明細書において開示される。
【0011】
支持体上に提供されたトリエチレンジアミン及びポリカルボン酸との付加物を有する支持体を含む濾材を供給する工程、及び、ガス流を濾材に曝露する工程、を含むガス流からシアン化塩素を除去する方法が、別の態様で本明細書において開示される。
【0012】
トリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物を含む支持体を含む濾材、及び、一酸化炭素の酸化に活性である触媒、を含む濾過システムが、更に別の態様で本明細書に開示される。
【0013】
トリエチレンジアミン及びポリカルボン酸との付加物を含む支持体を含む濾材、及び、多孔質高分子ウェブを含む濾材、を含む濾過システムが、更に別の態様で本明細書において開示される。
【0014】
付加物が、トリエチレンジアミンとコハク酸との1:1化学量論的付加物(この付加物は、4.4(100)、2.4(14)、3.1(12)、4.1Å(11)のX線回折パターンを呈する)、トリエチレンジアミンとコハク酸との1:1化学量論的付加物(この付加物は、3.9(100)、5.0(89)、4.3(62)、5.6(55)、3.8Å(51)のX線回折パターンを呈する)、トリエチレンジアミンとリンゴ酸との1:1化学量論的付加物(この付加物は、6.2(31)、5.5(44)、4.8(36)、4.6(57)、3.9(55)、3.4Å(100)のX線回折パターンを呈する)、トリエチレンジアミンと酒石酸との1:1化学量論的付加物、トリエチレンジアミンとマロン酸との1:1化学量論的付加物、トリエチレンジアミンとクエン酸との1:1化学量論的付加物、及びトリエチレンジアミンとグルタミン酸との1:1化学量論的付加物からなる群から選択されるトリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物が、更に別の態様で本明細書において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】例示的な濾過システムの断面概略図。
【図2】個人保護用の例示的な呼吸器具の斜視図。
【図3】別の例示的な濾過システムの断面概略図。
【図4】COを酸化する能力について試験触媒試料に対して使用される試験システムを概略的に示す。
【0016】
図面及び図面中の要素は、注記しない限り、一定の縮尺には従っていない。図において、類似の参照番号は、全体を通して類似の特徴を示すために使用される。「最上部」、「底部」、「上部」、「下部」、「上」、「下」、「前部」、「後部」、並びに「第一」及び「第二」などの用語が本開示中で使用され得るが、これらの用語は相対的な意味においてのみ使用されることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
アミン
アミンとポリカルボン酸とを組み合わせることにより形成される付加物が本明細書に開示される。様々な実施形態では、アミンは、一級、二級又は三級であってもよく、室温(すなわち、約25℃)、101.3kPa(1atm)において固体であっても液体であってもよい。好ましいアミンは、シアン化塩素及びこれに類するものなどの有毒ガスを除去する少なくともある程度の能力を有する。様々な実施形態では、好適なアミンの代表的な例には、トリエチルアミン(TEA)又はキヌクリジン(QUIN)、トリエチレンジアミン(TEDA)、ピリジン、ピリジン−4−カルボン酸(P4CA)などのピリジンカルボン酸、これらの組み合わせなどを挙げてもよい。現時点で好ましい実施形態では、アミンは、トリエチレンジアミン(通常、TEDAと略される)であり、これはまた1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(通常、DABCOと略される)としても知られる。
【0018】
ポリカルボン酸
本明細書で使用するとき、用語「ポリカルボン酸」は、少なくとも2つのカルボン酸基を含有する有機分子を意味する。このような分子は、一般形式では、R(COOH)と書くことができ、式中、xは2以上であり、Rは共有結合(シュウ酸の場合)又は炭化水素部分(例えば、アルキル、芳香族、アルケニルなどの基)を含むことができる。一実施形態では、ポリカルボン酸は、2つのカルボン酸(COOH)基を含む。それゆえに、好適なポリカルボン酸には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの組み合わせを挙げてもよい。別の実施形態では、ポリカルボン酸は3つのカルボン酸基を含む。このタイプの好適なカルボン酸には、例えば、クエン酸が挙げられる。更に別の実施形態では、ポリカルボン酸は4つ以上のカルボン酸基を含む。特定の実施形態では、ポリカルボン酸は高分子性である。例えば、ポリカルボン酸は、ポリ(アクリル酸)により例示されるようなペンダントカルボン酸基を有する比較的長鎖の主鎖を含むことができる。
【0019】
一実施形態では、ポリカルボン酸は、カルボン酸基の一部ではない(すなわち、カルボン酸基上に存在するヒドロキシルに加えて)少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する。このようなヒドロキシポリカルボン酸は、これらの適度な酸性と低毒性のために、特に関心が持たれ、2、3又は4以上のカルボン酸基を有するポリカルボン酸を含むことができる。例えば、好適なヒドロキシカルボン酸には、例としてリンゴ酸、クエン酸及び酒石酸を挙げてもよい。
【0020】
様々な実施形態では、ポリカルボン酸は、炭化水素部分及び上記任意のヒドロキシル基に加えて、他の置換基又は基を含むことができる。例えば、R基は、任意の好適な構成要素又は置換基(例えば、グルタミン酸の場合のようにNH、チオリンゴ酸の場合のようにHS、など)を含むことができる。
【0021】
理論又は機構に束縛されるものではないが、このようなポリカルボン酸のブレンステッド酸性(すなわち、これらが1つ以上の供与可能なプロトンを所有すること)は、少なくとも部分的には、これらがTEDAと好適な付加物を形成できることが要因となっていると仮定されている。特に、これらが幾分酸性(すなわち、弱酸性)であることにより、ポリカルボン酸とTEDAとの間に十分な酸/塩基相互作用を促進し、付加物を形成し得るが、これは、欠点となり得るような、TEDAを完全にプロトン化して塩を形成するほどの酸性を有することはない(例えば、本発明者らは、TEDAがHCLと反応すると、TEDAのオニウム塩(ビス塩酸塩)の形成が生じることを発見したが、この塩はシアン化塩素の除去において良好に機能しない)。それゆえに、ポリカルボン酸は、有利なことに、酸性でイオン化可能又は供与可能なプロトンを含有するが、完全なプロトン移動(すなわち、塩形成)は、付加物の形成において発生し得ないことが特記される。
【0022】
単一のポリカルボン酸を使用してもよく、又は複数のポリカルボン酸(例えば、上記ポリカルボン酸の任意のもの)を組み合わせて使用してもよい。ポリカルボン酸とTEDAとが付加物を形成する能力を容認できないほど低減させない限り、又は付加物が本明細書に記載されている機能を実行する能力を容認できないほど低減させない限り、他の化合物、物質などが様々な目的のために存在してもよい。
【0023】
一実施形態では、ポリカルボン酸は水溶性であり、これにより、付加物は本明細書において後述されるように溶液系(例えば、水系)方法により製造可能にすることができる。特定の実施形態では、ポリカルボン酸は、25℃において0.2重量%の濃度で水中に溶解させるとき、透明な等方性の液体を形成するのに十分な程度に水溶性である。
【0024】
一実施形態では、ポリカルボン酸は、比較的低分子量(例えば、上記で列挙した酸の多くにより例示されるように、150グラム/モル未満)である。他の実施形態では、ポリカルボン酸は、高分子量(例えば、150グラム/モル超、200グラム/モル超又は300グラム/モル超)を有してもよい。更なる実施形態では、ポリカルボン酸は、約1000グラム/モル未満、500グラム/モル未満又は約300グラム/モル未満の分子量を有してもよい。上記高分子ポリカルボン酸は、比較的高分子量、例えば、1000グラム/モルを有してもよい。ポリカルボン酸が水溶性であることが(例えば、溶液系加工における補助のために)望まれる場合には、高分子ポリカルボン酸の分子量は、最適な水溶性に関して選択される。
【0025】
付加物及びその特性
本明細書に開示されている、TEDAと様々なポリカルボン酸との付加物は錯体として記載することもでき、本明細書により教示される方法に従って再現性良く製造可能であり、本明細書に開示されるような再現可能な特性を呈する。発明者らは、このような付加物がTEDAの欠点及び副作用を低減させるのに有用である一方で、TEDAがシアン化塩素を除去する能力を保存する又は潜在的には更に高めることを発見した。
【0026】
特に、TEDAを付加物に形成することは、遊離(非錯体型の)TEDAと比較して、TEDAの揮発性を低減するのに役立つことができる。TEDAの特性(臭い、皮膚及び目を刺激する能力、特定の触媒を害する能力、特定の高分子材料の変色を引き起こす能力など)により、このような揮発性の低減はきわめて有用である。
【0027】
本発明者らはまた、本明細書に記載されている付加物が予想外にも高熱安定性を有することができることを発見した。例えば、いくつかの付加物は、有意な重量喪失なしに、長時間の高温への曝露(例えば、真空下で60℃において乾燥させられる)を持ちこたえることが観察されている。熱重量試験(例えば、様々な温度への加熱で生じる重量喪失の量及び/又は率の測定)は、いくつかの付加物が単峰型の重量喪失VS.温度の曲線を呈することを明らかにしている。このことは、加熱すると、TEDA含有付加物が解離して低温でTEDAを放出する/揮発させる(遊離させる)よりもむしろ、この付加物が高温で揮発し得ることを示す。このような結果は、多くのこのようなアミン含有物質(例えば、塩化アンモニウムなどのオニウム塩)が、加熱すると、解離して、その結果、構成要素が別々に揮発すると通常知られている事実を考慮すると、予想外であり得る。
【0028】
熱重量試験はまた、いくつかの付加物が、TEDA構成要素の比較的低い(予想される)Tmax(TEDAはきわめて揮発性であるのでTmaxを測定するのは困難である)に近いよりもむしろ、ポリカルボン酸構成要素の比較的高いTmaxに近い及びいくつかの場合にはそれよりも高くさえあるTmax(加熱時の重量喪失の最高率の温度)を有することを明らかにしている(表1の実施例のセクションを参照されたい)。このような発見(付加物のTmaxが最高Tmaxの親構成要素のものに近い又はそれよりも高いこと)は予想外である。
【0029】
加えて、本発明者らは、本明細書に記載の付加物の形態のTDEAが、保存されている又は更には高められている、シアン化塩素を除去する能力を有することができることを発見した(例えば、特定のTEDA/付加物は、付加物の形態ではないTEDAにより呈されるよりも、本明細書に記載のように、長いCK耐用期間を呈することができることが発見されている)。TEDAは、揮発性が低減されている付加物に形成することができるが、この付加物中でTEDAは依然としてシアン化塩素により接近可能であり、シアン化塩素と相互作用して、例えば、ガス流からシアン化塩素を除去できるという驚くべき発見がなされた。
【0030】
付加物及びその組成物
様々なポリカルボン酸とのTEDAの付加物が本明細書において開示される。特定の実施形態では、付加物は、TEDA分子とポリカルボン酸分子との間で約1:1の化学量論比を有する(しかしながら、このような化学量論比は、特定の化学結合を形成するためにいずれかの種類の特定の化学反応が、付加物の形成において生じることを意味しない)。
【0031】
本明細書において開示されている少なくともいくつかの付加物は、多形体(多形性は、いくつかの分子錯体が固体状態において2つ以上の形態、例えば、2つ以上の結晶性形態を取る特性として本明細書において定義される)であるように思われる。このような多形体の構造は製造方法に対して感受性を有することができ、同一の親構成要素からの異なる多形体は明確に異なる特性を有することができる。このような多形体は、多くの場合、X線回折、赤外線吸収、示差走査熱量測定及びこれらに類するものなどの方法によって特徴付けられる。例えば、異なる多形体は、典型的には、回折パターンを呈する(すなわち、異なる2つのθ(散乱)角において見られる異なるセットのピーク(強度))。
【0032】
本明細書に開示されている付加物は、1つ以上の水分子(例えば、水和水)を含んでもよい。付加物における水の存在又は不在は、調製方法に依存し得る。それゆえに、いくつかの場合では、付加物は、調製されるときに1つ以上の水和水を含み得る(例えば、本明細書で後述する実施例2のTEDA−コハク酸付加物に関しては、3561cm−1及び3476cm−1における赤外分光ピークは、υOH帯であると思われ、1642cm−1におけるピークはδOH帯であると思われ、これらは全て水和水を示す)。たとえ、初めに水を欠いているように調製されたとしても、いくつかの場合には、付加物は保管時及び/又は使用時に水を獲得することがある(例えば、付加物は、湿潤空気への曝露時に水を獲得することがある)。例えば、いくつかの付加物は、可逆的に水を獲得することができるように思われる(例えば、水飽和空気又は窒素に曝露されるとき)。いくつかの場合には、水和した付加物及び無水の付加物の混合物が見出され得る。
【0033】
付加物の製造方法
好適に制御された条件下で、TEDA及び好適なポリカルボン酸は、組み合わせて付加物を形成するために、結び付けることができる。このことは必ずしも、TEDAと酸との間の確定した化学結合(例えば、共有結合、イオン結合など)の形成を意味するものではない。更に、これは必ずしも、特定の分子構造を有する生成物の形成を意味するものでもない。むしろ、上述のように、TEDAとポリカルボン酸との組み合わせの付加生成物は、錯体又は多形体として説明され得る。
【0034】
このような付加物を製造する様々な方法が本明細書に開示される。このような方法は、TEDA及び1つ以上のポリカルボン酸を結び付けて組み合わせて付加物を形成する任意の手順を含む。例えば、TEDAを支持体上に付着させてもよく、その後、付加物が形成できるような条件下でポリカルボン酸が支持体上に付着させられる。あるいは、ポリカルボン酸をまず付着させてもよく、その後、付加物が形成できるような条件下でTEDAが付着させられる。このような付着は、付加物形成が生じるように条件が制御される限り、例えば、蒸着、昇華、含浸などの任意の既知の方法により生じ得る。
【0035】
様々な実施形態では、このような付加物の形成に最適な条件下でTEDA及び酸が接触するようにされるプロセスを使用することができる。例えば、TEDAは、付加物を形成するために酸と組み合わせるのを阻止するような方法で、TEDAと反応できるか、TEDAと錯体を形成できるか、TEDAの周りにクラスター形成できるか、ないしは別の方法でTEDAと化学反応又は物理的にブロックできる他の構成要素(例えば、分子、原子、コロイド、ミセルなど)がほとんど又は全く存在しない環境で提供することができる。特に、付加物を形成するために最大限接近可能な条件(例えば、支持体などの固体材料上で圧縮しない)でTEDAを提供することが有利であり得る。同様に、同程度に接近可能な条件でポリカルボン酸を提供することが有利であり得る。それゆえに、一実施形態では、TEDAと酸とを物理的に混合して一緒に粉砕するTEDAとポリカルボン酸とを組み合わせる方法が開示される。
【0036】
代替的な実施形態は、TEDAとポリカルボン酸とを共通の混合物(例えば、水、アルコール、水−アルコール混合物などのような好適な溶媒又は溶媒混合物での溶液)の中に配置(例えば、懸濁、溶解など)し、その後、溶媒の一部又は本質的に全てを除去する方法を含む。本発明者らは、このようなプロセスが付加物の形成において特に有用であることを発見した。様々な実施形態では、TEDA及びポリカルボン酸は、初期溶液中で付加物を形成してもよく(付加物は溶液除去、濾過などによって回収される)、又は、TEDA及びポリカルボン酸は、後期又は最終段階の溶液除去時、例えば、乾燥、沈殿及び/又は結晶化プロセスと共に、付加物を形成してもよい。また、様々な実施形態では、TEDA及び/又はポリカルボン酸は、安定な溶液を形成するために共通の混合物中に溶解させてもよく、あるいは、一方又はもう一方を準安定性の溶液の形態で存在させてもよく、あるいは、一方又はもう一方を懸濁液の形態で存在させてもよい(いくつかの場合には、1つの構成要素は、もう一方の構成要素の添加に先立って懸濁液を含んでもよく、この添加は第一の構成要素がより良好に溶解できるようにすることができ、その結果、溶液が形成される)。好適な付加生成物が再現可能にプロセスから得ることができる限り、任意のこのような状況は、本明細書に開示されている方法に包含される。
【0037】
様々な実施形態では、1:1付加物を形成するのに適した範囲にある量でTEDA及びポリカルボン酸は結び付けられる(例えば、約1.1:1のTEDA/酸から約1.1:1の酸/TEDAまでの範囲の化学量論比で、TEDA及び酸を一緒にする)付加物の製造方法が本明細書に開示される。特定の実施形態では、材料が組み合わされた後に遊離TEDA(すなわち、酸を有する付加物の形態ではないTEDA)がほとんど又は全く存在しないことを提供するために、わずかに過剰な酸を使用することができる。このような構成は、上述したような遊離TEDAの逆作用(揮発性など)を最小化することができる。更なる実施形態では、製造プロセスは、材料を組み合わせた後に、遊離TEDAの除去を含むことができる。このようなプロセスには、例えば、加熱を挙げることができ、これは付加物が支持体上に付着する前又は付着した後のいずれかで行うことができる。
【0038】
高分子(例えば、高分子量)ポリカルボン酸の場合、1:1分子量比の酸分子とTEDA分子は、低分子量ポリカルボン酸を使用するときに得られるようには存在し得ない。すなわち、ポリマー主鎖の様々な部分上のカルボン酸基は、異なるTEDA分子と相互作用することができ、それゆえにTEDA分子対ポリカルボン酸の1:1の比は、存在し得ない。このような場合、付加物は、1:1化学量論的付加物を含み得ない。にもかかわらず、このようなTEDA/高分子ポリカルボン酸組み合わせ生成物は、本発明者により想到されるような付加物の概念の範囲内にある。
【0039】
支持体
一実施形態では、TEDA及びポリカルボン酸は、濾材を形成するために支持体上に提供される(例えば、通過する空気から汚染物質を除去するために設計された、通気性構造体、組立体、マトリックス、粒子の集合体など)。
【0040】
支持体は、広範囲の基材から選択され得る。支持体は、回旋状非平坦及び/又は多孔質表面を有してもよく、様々な実施形態では、付加物を含む1つ以上の含浸物を、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約1.5重量%又は少なくとも約3重量%で組み込むことができる。
【0041】
支持体は多くの形態を有し得る。このような形態の代表的な例には、織布又は不織布;接着、融着又は焼結ブロック、粒子、顆粒又はペレット、濾材アレイなどが挙げられる。一実施形態では、支持体は、比較的大きな表面積を有する粒子を含む。様々な実施形態では、このような粒子は、少なくとも約85m/g、少なくとも約300m/g又は少なくとも約900m/gの(BET)比表面積(ISO 9277:1995に記載の手順により測定できる)を有する。更なる実施形態では、このような粒子は、最大で約2000m/g又は最大で約1500m/gのBET比表面積を有する。
【0042】
支持体は、多孔性を有してもよい。一実施形態では、支持体は、約0.4を超える多孔率(すなわち、支持体媒質の総体積に対する孔空隙の体積比)を有する。このような多孔率は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)を介して観察及び測定することができる。
【0043】
特定の実施形態では、支持体は、ナノ多孔性を有する(すなわち、支持体は、TEMにより特性評価されるとき、約0.4を超える多孔率及び約1nm〜約100nmの寸法範囲の平均孔直径を有する)。
【0044】
特定の実施形態では、支持体媒質は、以下の式を使用して計算した場合に、1〜10nmの寸法範囲の孔のナノ多孔質総体積が、1〜100nmの寸法範囲の孔の総体積の約20パーセントを超える(すなわち、以下の式を使用して約0.20を超える)。
【数1】

式中、NPCは支持体媒質のナノ多孔質体積を示し、CPvは、孔半径nでの蓄積孔体積を示し、グラム当たり立方センチメートル(cm/g)単位であり、及びnはナノメートル単位での孔半径である。
【0045】
特定の実施形態では、ナノ多孔質体積は、TEMにより得られたデータを使用して計算される。代替的実施形態では、使用されるデータは、ASTM Standard Practice D4641−94に記載されている技術に従う窒素脱着等温線の使用により得られる。
【0046】
支持体は、様々な材料から製造され得る。このような材料の代表的な例には、紙、木材、ポリマー及び他の合成材料、炭素質材料、ケイ素質材料(シリカなど)、金属、金属化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な金属酸化物の代表的な例には、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、鉄、スズ、アンチモン、バリウム、ランタン、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及びこれらの組み合わせの酸化物、硫化物、窒化物又はこれらに類する化合物が挙げられる。好適な炭素質材料の代表的な例には、活性炭及びグラファイトが挙げられる。好適な活性炭は、石炭、ココナッツ、泥炭及びこれらの組み合わせなどの広範囲の供給源から抽出され得る。
【0047】
一実施形態では、活性炭は、ウェトラライトとして既知のクラスの材料を含み、これは一般に、銅、モリブデン、銀、バナジウム、亜鉛などのような特定の金属又は金属酸化物を含有する活性炭として記述することができる。更なる実施形態では、活性炭は、米国特許第5,344,626号に一般に記載されている物質を含む。特定の実施形態では、活性炭は、金属が周期表の6〜12族にある第一の金属塩と、金属が周期表の1族にある金属炭酸塩を含む第二の金属塩とを含む。
【0048】
特定の実施形態では、支持体は、ゲスト/ホスト構造を含む。このような支持体は、比較的大きなホスト粒子(例えば、より大きな粒子、粉末、ペレット、顆粒及びこれらの組み合わせ)上に又は比較的大きな非粒子状ホスト材料(例えば、織布及び不織布、膜、プレート、濾材アレイ及びこれらの組み合わせ)上に比較的小さなゲスト粒子を提供(例えば、付着、吸着、増殖若しくは接着)することにより製造することができる。このようなゲスト/ホスト構造は、大きな粒子の望ましいガス流特性、例えば、圧力低下を保持しながら、より大きな総表面積を提供することができる。このような場合、付加物は、ゲスト、ホスト又は両方の上に配置することができる。
【0049】
ゲスト及び/又はホストのいずれかは、本明細書において定義されるような多孔性又はナノ多孔性を有することができる。ゲスト及びホストは、本明細書に記載されているように、様々な支持体材料から製造することができる。特定の実施形態では、ゲスト材料はチタニアを含み、ホスト材料は活性炭を含む。
【0050】
一般的に、ゲスト/ホスト支持体を作製するために、様々な方法が使用され得る。一実施形態では、より小さなゲスト粒子は、1つ以上の接着剤と共に、溶液中に混合され、そしてこの混合物は、より大きなホスト粒子と組み合わせられる。別の実施形態では、ゲスト−ホスト複合体は、ゲスト材料とホスト材料とを物理的に混合することにより調製される。
【0051】
支持体上に付加物を提供する方法
一実施形態では、付加物が形成され、その後、形成された付加物は支持体上/中に組み込まれる(特定の支持体、例えば、多孔質材料、に関しては、このような上/中の区別は特徴付けるのが困難であり、いずれの用語も、付加物が支持体の内側及び/又は外側表面と接触して配置される任意のプロセスを広く包含することを意図されている)。例えば、前述の混合/粉砕プロセスにより予備形成された付加物を、支持体上に付着することができる。別の実施形態では、付加物は、支持体上にその場で形成される。例えば、TEDAは支持体上に組み込む(例えば、付着、含浸、圧縮など)ことができ、その後、ポリカルボン酸が添加されて付加物を形成する。あるいは、ポリカルボン酸を支持体上に組み込むことができ、その後、TEDAが添加されて付加物を形成する。
【0052】
別の実施形態では、例えば、共通の溶媒中にTEDAとポリカルボン酸とを溶解させる前述したプロセスにより得られる混合物(例えば、溶液、準安定性の溶液、懸濁液など)が支持体上に組み込まれ(例えば、付着、含浸、コーティング、散布、霧化など)、その後、一部又は全ての溶媒を除去する(例えば、蒸発させる)。このような実施形態は、濾材の製造において大規模加工を可能にするのに特定の利点を有し得る。
【0053】
様々な実施形態では、好適な量のTEDAとポリカルボン酸を選択することができ、及び/又は加工条件を選択することができ、その結果、約1:1のTEDA/ポリカルボン酸の化学量論比を有する付加物が得られる。特に、混合/粉砕方法及び共通溶液方法は、TEDA/ポリカルボン酸の化学量論比を選択可能にすることができ、並びに、約1:1のTEDA/ポリカルボン酸の化学量論比を有する付加物の形成を促進するような方法で構成要素を組み合わせるのを可能にすることができる。このことは、いずれかの構成要素(遊離TEDAに関連して上述した問題を考慮すると、特にTEDA)の過剰を取り除く必要性を最小化するのに有利であり得る。しかしながら、このような除去手順を、所望されるならば、実行することができる。例えば、支持体は、遊離TEDAを揮発させるために、加熱することができる。
【0054】
特定の実施形態では、いわゆる初期湿潤含浸法を使用して、支持体上に付加物を付着させる。このような方法では、付加物又は付加物前駆体構成要素を含有する水性混合物(例えば、水中の付加物の溶液、懸濁液など、又は、付加物前駆体などの溶液、懸濁液など)が提供される。前述したように、水性混合物は、他の成分(例えば、様々なタイプの共溶媒(1つ又は複数))を所望により含んでもよい。一定の攪拌を行いながら支持体に水性混合物を徐々に加える。これを、支持体が水性混合物で飽和したように見えるまで続ける(典型的には、支持体は初め乾燥しており、そのため、支持体の飽和点は、より容易に観察される)。次に、湿潤した支持体を適温で好適な時間にわたって乾燥させる。例として、約50℃〜約250℃、好ましくは約80℃〜約180℃の範囲の温度で、約30分〜約10時間の範囲の時間にわたっての、含浸された支持体の乾燥が、好適であろう。次に、含浸された支持体を冷却する。所望により、含浸、乾燥及び冷却を1回以上繰り返して、追加的な量のアミン付加物を支持体上/中に含浸させてもよい。乾燥時間及び温度は、所望であれば増加させて、任意の遊離TEDA(すなわち、付加物の一部ではないTEDA)が追い出されるのを確実にしてもよい。追い出された任意の遊離アミンは回収されて、次に所望により再利用又は廃棄することができる。
【0055】
他の材料が含浸技術を使用して支持体中/上に含浸されることが望ましい場合には、付加物は、他の含浸物の含浸前、含浸中及び又は含浸後に支持体中/上に含浸されてもよい。1つ以上の他の共含浸物が、昇華、物理蒸着、化学蒸着又はこれらに類するものなどの他の非湿潤含浸法により支持体中/上に含浸される特定の実施形態では、付加物の湿潤含浸は、他の非湿潤含浸工程の前又は後で実施されてもよい。
【0056】
支持体中/上に組み込まれる付加物の量は、幅広い範囲で変動し得る。通常、ごく少量しか使用されない場合には、濾材のシアン化塩素耐用期間は、本明細書において後述される試験において測定されるように、所望されるよりも短くなり得る。一方で、あまりに多くの付加物を使うことは、濾材が他の汚染物質(有機蒸気、酸性ガスなど)を除去する能力を低減する傾向を有し得る。これらの点を考慮すると、様々な実施形態では、付加物は、全て100重量部の支持体と比較して、少なくとも約0.1重量部のTEDA、少なくとも約0.5重量部のTEDA又は少なくとも約3.0重量部のTEDAに相当する濃度で支持体中/上に取り入れることができる。更なる実施形態では、付加物は、全て100重量部の支持体と比較して、最大で約25重量部のTEDA、最大で約10重量部のTEDA又は最大で約6重量部のTEDAに相当する濃度で支持体中/上に取り入れることができる。
【0057】
濾過システム
TEDA/ポリカルボン酸付加物を含む濾材を含むことに加えて、1つ以上の触媒を含む濾過システムが本明細書で開示される。様々な実施形態では、このような触媒は、TEDA/ポリカルボン酸付加物と同一の支持体上に、又は、別個の支持体上に配置されてもよい。このような別個の支持体は、TEDA/ポリカルボン酸付加物を含む支持体と混ぜ合わされてもよく(図1の実施形態において本明細書で後に詳細に説明されるように)、又は、TEDA/ポリカルボン酸付加物を含む支持体からは別個の位置(例えば、カートリッジ内の別個の層の中、別個のカートリッジ内)であってもよい。例えば、使用される特定の触媒の性能がTEDA/ポリカルボン酸付加物の存在に何らかの形で感受性を有する場合には、触媒が付加物の上流にあるように、触媒を濾過システム内に配置してもよい(本文においては、上流とは、濾過システムの作動時に、濾過システムを通って流れるガス流が、TEDA/ポリカルボン酸付加物に遭遇するのに先立って、触媒に遭遇することを意味する)。逆に、付加物の性能が触媒の存在に何らかの形で感受性を有する場合には、TEDA/ポリカルボン酸付加物を触媒から上流の濾過システム内に配置してもよい。
【0058】
様々な実施形態では、このような濾過システムで有用であり得る触媒には、白金、銀、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及びこれらの組み合わせなどの金属触媒が挙げられる。特定の実施形態では、触媒活性金が、単独で、又は、上記に列挙した他の金属触媒の1つ以上と組み合わせて、使用される。本文においては、触媒活性金とは、例えば、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する活性を有する約0.5nm〜約50nmのクラスター寸法の金を意味する。このような金触媒は、アミン(TEDAなど)に感受性を有すると当業者に知られている、すなわち、アミンは、CO酸化などの反応において金の触媒活性を害する又は阻止する傾向を有することが知られている。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、TEDAがポリカルボン酸を有する付加物の中に形成されるとき、触媒活性金がアミンの存在に対して、より低い感受性しか有さなくなることを発見した。それゆえに、本発明者の発見は、TEDAによるシアン化塩素除去及び触媒活性金によるCO酸化という2つの機能性を有する濾過システムの使用を可能にする。
【0059】
触媒活性金は、いわゆる湿潤法(溶液付着及びこれに類するものなど)及び化学蒸着などの様々な方法で付着することができ、所望により任意の好適な基材上に付着することができる。様々な特定の実施形態では、金は物理蒸着により付着することができ、及び/又は、組成、寸法又は多孔性の特定の特性を有するか、若しくはゲスト/ホスト構造を含むか、若しくは様々な促進剤材料を含むか、若しくは他の特性及び特質を有する支持体上に付着することができ、これらは全て米国特許出願公開第2005/0095189号に詳細が記載されている。
【0060】
TEDA/ポリカルボン酸付加物を含む濾材を含むことに加えて、多孔質高分子ウェブ系濾材を含む濾過システムもまた本明細書で開示される。このような多孔質高分子ウェブは、織布、不織布(多くの場合、ポリオレフィンいわゆる茶色の微小繊維から構成される)、連続気泡発泡材料及びこれらに類するものを含み、多くの場合、微粒子の濾過のために使用される。
【0061】
一実施形態では、多孔質高分子ウェブは、いわゆるエレクトレットウェブ、すなわち、少なくとも準永久電荷を呈する誘電性材料を含むウェブ、を含む。このような帯電しているウェブは、例えば、Kubikらが(米国特許第4,215,682号で)繊維形成時に溶融吹き込みされている繊維の中に永続的電荷を取り入れるための方法を記載して以来、知られている。様々な実施形態では、このようなエレクトレットウェブは、プラズマフッ素化(例えば、米国特許第6,409,806号に記載)などの方法により、又は、フッ素性化学物質溶解付加物の組み込み(例えば、米国特許第5,025,052号に記載)により、達成されるように、フッ素化材料を含んでもよい。様々な追加的な実施形態では、このようなウェブは、米国特許第5,496,507号に記載されているようなハイドロ帯電した(hydrocharged)材料(すなわち、ウェブを水流に曝露することにより電荷が付与されるウェブ)を含んでもよい。
【0062】
エレクトレットウェブは、アミン(TEDAなど)に感受性を有すると当業者に知られている、すなわち、アミンは、エレクトレットウェブの効率を低減させる傾向を有すると知られている。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、TEDAがポリカルボン酸を有する付加物の中に形成されるとき、このようなエレクトレットウェブがアミンの存在に対して、より低い感受性しか有さなくなることを発見した。それゆえに、本発明者の発見は、シアン化塩素を除去するためのTEDA、及び、微粒子の優れた除去を提供するエレクトレットウェブという2つの機能性を有する濾過システムの使用を可能にする。
【0063】
濾過システムは、任意の数の方法で、TEDA/ポリカルボン酸付加物(典型的には支持体上)及び多孔質高分子ウェブの両方を含有して製造されてもよい。一実施形態では、TEDA/ポリカルボン酸付加物は、多孔質高分子ウェブ中/上に付着ないしは別の方法で配置してもよく又は組み込んでもよい(すなわち、多孔質高分子ウェブは、本明細書において前述したような構成でTEDA/ポリカルボン酸付加物のための支持体として機能してもよい)。別の実施形態では、付加物は、支持体(例えば、活性炭)上に提供することができ、これは次に多孔質高分子ウェブ中/上に付着、埋め込み、混ぜ合わせなどを行われる。更に別の実施形態では、多孔質高分子ウェブ及びTEDA/ポリカルボン酸付加物は、濾過システムの別個の位置(例えば、カートリッジ内の別個の層、別個のカートリッジ内など)で存在してもよい。例えば、このような多孔質高分子ウェブは、多くの場合、上流層として濾過システム内に配置され、追加的な濾材(例えば、活性炭)は多孔質高分子ウェブ層から下流に存在する(本文においては、上流とは、濾過システムの操作中に、濾過システムを通って流れるガス流が、TEDA/ポリカルボン酸付加物に遭遇するのに先立って、多孔質高分子ウェブ層に遭遇することを意味する)。このような構成は、本明細書で後述される図3の例示的な方法により示される。
【0064】
要約すると、多孔質高分子ウェブは、上記構成のいずれかにおいて濾過システム内に存在し、エレクトレット材料を含んでもよい。多孔質高分子ウェブは、全て当該技術分野において既知の方法に従って、平坦であってもよく、ひだ状であってもよく、強化構造により支持されるなどしてもよい。更に、本明細書に記載されるような濾過システムは、上記金触媒及び上記多孔質高分子ウェブ(エレクトレットウェブを含む)の両方と組み合わせて、TEDA/ポリカルボン酸付加物を含んでもよい。
【0065】
本明細書に開示されるような濾材又は濾過システムはまた、好適な濾過剤を含んでもよい。このような濾過剤は、付加物を含む支持体上、触媒(使用される場合)を含む支持体上、又は濾過システムのどこか他の箇所に提供することができる。用語「濾過剤」は、通常、気流から1つ以上の所望されないガスを濾過するのを助け得る任意の成分を指す。様々な実施形態では、好適な濾過剤には、銅、亜鉛、モリブデン、銀、ニッケル、バナジウム、タングステン、イットリウム、コバルト及びこれらの組み合わせの1つ以上を含有する金属、金属合金、金属間組成物、化合物が挙げられる。例えば、Cuは、HCN、HS及び酸性ガスを濾過するのを助けることができ、Znは、HCN、シアン化塩素、シアン及びNHを濾過するのを助けることができ、Agは、ヒ素ガスを濾過するのを助けることができ、Ni及びCoは各々独立にHCNを濾過するのを助けることができる。
【0066】
このような濾材(付加物を含む濾材又は触媒を含む濾材を含んでもよい)は、濾過剤及び濾材の総重量に基づいて、約0.1〜約20重量%の濾過剤を有して、組み込まれ得る。濾過剤は、典型的には、塩、酸化物、炭酸塩又はこれらに類するものとして提供され、溶液加工、昇華加工、流動床加工又はこれらに類するものを加工を介して組み込まれる。
【0067】
水は、濾過システム内に存在する様々な濾材のいずれかのために所望される含浸物であっても又はなくてもよい。例えば、金属触媒、特に触媒活性金、が含まれる場合には、水分が、長期間にわたる保管時に触媒の活性を損う恐れがある。したがって、金属触媒(例えば、触媒活性金)が含まれる場合には、濾過システム内に存在する水の量を最小化することが望ましいであろう。それゆえに、様々な実施形態では、濾過システムは、濾材100重量部当たり約2重量部未満又は約1重量部未満の水を含む濾材を含み得る。
【0068】
しかしながら、水分は気流から酸性ガスを除去するのを有利に助けることができる。したがって、(特に金属触媒が含まれない場合には)様々な実施形態では、濾材100重量部当たり少なくとも約2重量部で、最大約15重量部又は最大約12重量部の水を含み得る。
【0069】
本明細書に記載されるような濾材及び/又は濾過システムは、産業環境で見出される広範囲の有毒ガス及び蒸気並びにまた化学兵器として使用される化学物質を除去するための呼吸保護における用途に好適である。この濾過システムは、適切な産業用フィルター認可仕様及び国際的に認められた軍事用フィルター性能仕様の両方により要求される性能レベルを達成することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示されている付加物及び/又は触媒は、例えば、活性炭が低沸点有毒ガスを除去する能力を向上させるために、活性炭支持体と共に使用される。特定の適用では、これらの濾材及び/又は濾過システムは、個人及び/又は集団(例えば、ビル又はモーター車両)の呼吸保護具に連通して呼吸空気を濾過するために使用される。呼吸保護器具には、呼吸空気として使用者(1人又は複数)に清浄な若しくは清浄化された空気又は酸素を提供するための、器具又は装置が挙げられる。このような器具には、例えば、フルフェイスレスピレータ、ハーフマスクレスピレータ、給気フード、電動式空気浄化レスピレータ(PAPR)などを挙げてもよい。本明細書に開示されている濾材及び/又は濾過システムの広範な能力は、これらを、例えば、フェイスマスク上への適合、又は電動式空気浄化レスピレータシステム上への単独又は複数での適合といった広範な種類の用途に好適にする。1つのこのような電動式システムは、3M Companyから商標「BREATHE−EASY」の下で市販されている。しかしながら、本発明の有用性は呼吸保護具に限定されず、産業プロセスに関連して空気又は他の気体を浄化するために使用することもできる。
【0070】
図1、2及び3は、本明細書に開示されている組成物、方法及び/又は器具が個人用保護器具の中に組みこまれ得る様々な例示的な様式を示す。まず、図1は、例示的な濾過システム30の断面図を模式的に示す。濾過システム30は、本明細書に開示されている付加物を含有する濾材33で充填できる内部空隙31を含む(濾材33は、例えば、本明細書で前述したように、TEDA/ポリカルボン酸付加物を含む活性炭粒子、顆粒などを含むことができる)。
【0071】
内部31は所望により、1つ以上の追加的な濾材35を更に含んでもよい。例えば、追加的な濾材35は、米国特許出願公開第2007/027079号に記載されているような、チタニアゲスト粒子上に触媒活性金が付着し、炭素質ホスト粒子上に支持されている形態のCO酸化触媒を含むことができる。本明細書に詳細に記載されてきたように、このような構成は、濾材33上のTEDA/ポリカルボン酸付加物が、CO酸化触媒を不適当に害することなく、CO酸化触媒を含有する濾材35と同一の濾過システム内に共存できるという事実により可能になる。
【0072】
濾材33及び基材35は、図1に描かれている例示的な実施形態において、内部31内の同一の濾床の中に混ざり合っているように示される。広範囲の他の配置方法もまた使用され得る。1つの代替案として、濾材33及び基材35は、流入空気がまず濾床のうちの1つを通過して次にもう一方を通過するように、内部31内の別個の濾床で提供されてもよい。付加物を含む濾材33又は触媒を含む濾材35のいずれかを、本明細書において前に提示された説明に従って、上流に配置することができる。
【0073】
内部31で使用される濾材33及び基材35の相対量は広い範囲にわたって変化してもよい。例として、濾材33の濾材35に対する重量比は、少なくとも約1:50、少なくとも約1:20又は少なくとも約1:5であり得る。更なる実施形態では、濾材33の濾材35に対する重量比は、最大約50:1、最大約20:1又は最大約5:1であり得る。
【0074】
図1の例示的な濾過システム30を更に参照すると、ハウジング32及び穿孔カバー34が濾材33及び濾材35を囲む。このシステムを使用する際、空気(又は濾過されることになる任意のガス流)は、開口部36を通って入り、濾材33及び濾材35に接触するようになり、ここで、少なくとも一部の潜在的に有害な物質(空気中に存在する場合)は、濾材33及び濾材35により吸収され、反応を生じ、ないしは別の方法で処置され、又は空気中から除去される。次に、この空気は、支持体40上に搭載された弁38を介して出る。
【0075】
差込部42及び差込フランジ44により濾過システム30は、図2に示される例示的な呼吸器具50などの呼吸保護器具に交換可能に取り付けることができる。器具50は、米国特許第5,062,421号及び米国特許出願公開第2006/0096911号に記載されているものと同様のいわゆるハーフマスクである。器具50は、比較的薄く堅い構造部材、すなわち挿入部54の周りに挿入成形することができる、柔軟なフェイスピース52を備える。挿入部54は、要素30を装置50の頬の部位に取り外し可能に取り付けるために、呼気弁55及び埋め込まれた差込ネジ付き開口部(図示されず)を備える。調節可能なヘッドバンド56及びネックストラップ58は、装置50が着用者の鼻及び口を覆って確実に着用することを可能にする。
【0076】
図3は、別の例示的な濾過システム130の断面図を模式的に示す。濾過システム130は、本明細書に記載されているような付加物を含有する濾材133を含有する内部空隙131を含む(内部空隙131はまた、上述したように、所望により、追加的な濾材を含有することもできる)。濾過システム130は更に、濾材133の上流に配置される多孔質高分子濾過層137を含む。図3に例示される特定の構成では、多孔質高分子濾過層137は、穿孔仕切134の外側に配置される。このような構成は、例えば、濾過システム130に嵌め込まれているないしは別の方法で固定されている又は取り付けられているキャップ139(空気が流れるようにする開口部141を含む)内に層137を提供することにより達成することができる。このような例示的な構成は、図3に示される。
【0077】
このシステムを使用する際、周囲空気は、開口部141を通って濾過システム130に入り、多孔質高分子濾過層137を通過し、ここで、少なくとも一部の粒子(空気中に存在する場合)が空気から除去される。次に、この空気は、開口部136を通過し、濾材133に接触するようになり、ここで、少なくとも一部の潜在的に有害な物質(空気中に存在する場合)は、濾材133により吸収され、反応を生じ、ないしは別の方法で処置され、又は空気中から除去される。次に、この空気は、支持体140上に搭載された弁138を介して出る。
【0078】
図3の濾過システムは、前述したものと同様な方法で、図2のものと同様の個人用呼吸保護器具の中に組み込むことができる。
【実施例】
【0079】
本明細書で見出される開示は更に、以下の詳細な実施例に関して記載される。これらの実施例は、種々の具体的なかつ好ましい実施形態及び技術を更に例示するために提供するものである。しかしながら、本発明の範囲内で多くの変更及び修正がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0080】
付加組成物及び特性
以下の実施例では、全ての化学試薬は、特に断らない限り、Sima−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。
【0081】
X線回折分析による特性評価が、当業者に周知の方法及び装置を使用して行われた。特に、XRDは、Philips(PANalytical,Westborough,MA)自動垂直回折計、銅Kα放射線及び散乱放射線の比例検出器登録の使用により、(θ/2θ)測量走査の形態で反射配置データを収集することによって、行われた。回折計に、可変入射ビームスリット、固定回折ビームスリット、及びグラファイト回折ビームモノクロメータを取り付けた。試料をめのう乳鉢で混練し、単結晶石英から構成されるゼロバックグラウンド試料ホルダーに乾燥粉末として適用した。測量走査は、0.04度のステップ寸法及び6秒の滞留時間を使用して3〜55度(2θ)で行った。45kV及び35mAのX線発生装置設定を使用した。生じる粉末回折データの分析を、Jade(version 7.5,Materials Data Inc.,Livermore,CA)回折ソフトウェア組の使用により、達成した。全ての2つのθピークをBraggsの法則に従って計算されるようにオングストロームでの単位格子面間隔に変換し、そのように報告している。全ての場合で、最高強度のピークに相当する面間隔が(100の)データとして報告され、全ての他の間隔はこれに標準化される。例えば、100%ピークに比較して14%の相対強度を有する4.5Åにおける面間隔ピークは、4.5(14)として報告されるものとする。
【0082】
赤外線(IR)分光法による特性評価を当業者に周知の標準的な方法及び装置の使用により行った。スペクトルをNujol混練で測定し、特徴的な帯のみ報告している。核磁気共鳴(NMR)分光法を同様に当業者に周知の標準的な方法及び装置の使用により行った。示差走査熱量(DSC)分析及び熱重量分析(TGA)を、各々TA装置MDS C2920及びTGA 2950を使用して、当業者に周知の方法に従って行った。インジウム及びスズ標準を使用してDSC装置を較正した。ニッケル及びアルメル標準を使用してTGA装置についての温度較正を行った。DSC分析については10℃/分の名目加熱率を使用し、TGA分析については50℃/分の名目加熱率を使用した。50mL/分での窒素パージをDSC及びTGAの両方に適用した。
【0083】
不確定性(例えば、プラス又はマイナスの値)は、下記実施例における様々な数値、パラメータ及び結果について個別に報告されていない。しかしながら、このような方法を使用して行われる典型的な分析に相当する精度を有するような、XRD、IR、NMR、DSC、TGAなどのこのような数は全て、当業者により理解されるであろう。すなわち、これらの値のいくつかの変動は、試料調製及び例示的な技術に、並びに使用される測定装置の精確性に依存して、予想されるであろう。
【0084】
実施例1.TEDA−コハク酸
50mLの水の中にTEDA(11.8g、0.1mole)の溶液を調製した。5.9g(0.05モル)のコハク酸を50mLの水の中に攪拌して、これは曇って見える懸濁液又は溶液を提供した。TEDA溶液及びコハク酸溶液を組み合わせて攪拌し、この点で透明で無色の溶液を得た。水を減圧下で50℃において除去し、このプロセス中に固体生成物が溶液から沈殿した。固体を16時間間、動的真空下に維持し、その後、最終固体生成物は11.2gの重さであった。
【0085】
元素分析は、下記に報告される重量百分率で以下の元素が存在することを明らかにした。TEDA(C12)とコハク酸(C)との1:1化学量論比を表す化学式C1018に対応する計算された重量百分率もまた(丸括弧内に)提示される(実験判明VS.1:1化学量論比計算重量百分率は後続の例において同様に報告される)。
【0086】
炭素:51.2重量%(52.2);水素7.5(7.8);窒素11.6(12.2)。
【0087】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:4.4(100)、2.4(14)、3.1(12)、4.1Å(11)。
【0088】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:1693cm−1
【0089】
示差走査熱量分析は、59℃及び53℃での溶解吸熱を明らかにした。
【0090】
実施例2.TEDA−コハク酸−H
コハク酸(5.9g、0.05モル)及びTEDA(5.6g、0.05モル)を60℃で500mLのエタノール中に溶解した。透明な溶液をビーカーの中に配置し、蒸発させた。3日後、約50mLだけ溶液が残っていた。濾過は、9.4g(81%)の白色の結晶を生じ、これを5mLの冷たいエタノールで2度洗浄し、次に空気乾燥させた。4℃に冷却後、濾液と洗浄液との組み合わせが1.3gの追加的生成物に付着した。
元素分析(C1020についての実験判明値VS.計算値):
炭素48.3(48.4);水素7.7(8.1);窒素9.8(11.3)。
【0091】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:3.9(100)、5.0(89)、4.3(62)、5.6(55)、3.8Å(51)。
【0092】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:3561、3476、2480(広域)、1690、1642cm−1
【0093】
熱重量分析(TGA)は126℃により約6%重量喪失を明らかにした。これは、付加物当たりおよそ1つの水和水の喪失を表すと思われる(1:1のTEDA/コハク酸付加物に基づいて1つの水和水を失うと予測される、計算された重量喪失は7.3重量%であるものとする)。
【0094】
実施例3.TEDA−酒石酸
TEDA(11.2g、0.1モル)及び酒石酸(L−(+)−酒石酸、15.0g、0.1モル、Merck Co.(Rahway,N.J.))を50mLの温水中で攪拌しながら組み合わせた。ロータリーエバポレーターを使用して、水を60℃で除去した。残留物を60℃で24時間にわたって動的真空下に維持した。白色の塊として25.6g(98%)の生成物が残った。
【0095】
元素分析(C1018についての実験判明値VS.計算値):
炭素45.9(45.8);水素7.0(6.9);窒素10.8(10.7)。
【0096】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:4.9(16)、4.5(100)、2.4Å(16)。
【0097】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:3423、3340、1649cm−1
【0098】
示差走査熱量分析は、66℃での溶解吸熱を明らかにした(再結晶化なし)。
【0099】
固体生成物の15N核磁気共鳴(NMR)は、少なくともδ30(ppm、液体NHに関して)におけるピークを明らかにした。
【0100】
実施例4.TEDA−マロン酸
マロン酸(10.4g、0.1モル)を50mLエタノール中の11.2g(0.1モル)TEDAの溶液に加えた。1時間にわたる攪拌後、混合物を加熱して沸騰させ、次に室温に冷却した。濾過により、白色結晶として9.4g(44%)の生成物を得た。
【0101】
元素分析(C16についての実験判明値VS.計算値):
炭素49.9(50.0);水素7.1(7.4);窒素12.7(13.0)。
【0102】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:6.2(31)、5.5(44)、4.8(36)、4.6(57)、3.9(85)、3.6(100)、2.5Å(35)。
【0103】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:2350、1702cm−1
示差走査熱量分析は、いかなる観察可能な溶解吸熱も明らかにしなかった。
【0104】
実施例5.TEDA−クエン酸
無水クエン酸(19.2g、0.1モル、Biorad Corp.(Richmond,Cal.))を75mLのエタノール中のTEDA(11.2g、0.1モル)の溶液に加えた。混合物を加熱して沸騰させ、室温に冷却し、次に14時間にわたって攪拌した。濾過により、真空乾燥後に白色結晶として生成物29.0g(96%)を得た。
【0105】
元素分析(C1220についての実験判明値VS.計算値):
炭素46.5(47.4);水素6.5(6.6);窒素9.1(9.2)。
【0106】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:5.0(44)、4.9(81)、4.9(39)、4.7(100)、4.0Å(28)。
【0107】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:3408、2470、1958、1730cm−1
【0108】
実施例6.TEDA−リンゴ酸
DL−リンゴ酸(13.4g、0.1モル、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)を100mLの温エタノール中に溶解した。激しく攪拌しながら、25mLのエタノール中の11.2g(0.1モル)のTEDAを加えた。粘稠な白色沈殿として生成物が分離した。濾過により単離し、吸引して乾燥させ、次に真空下で乾燥させた。収量は22.6g(92%)であった。
【0109】
元素分析(C10についての実験判明値VS.計算値):
炭素49.1(48.8);水素7.2(7.3);窒素11.3(11.4)。
【0110】
X線回折は少なくとも以下のピークを明らかにした:6.2(31)、5.5(44)、4.8(36)、4.6(57)、3.9(55)、3.4Å(100)。
【0111】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:3433、2457、1885、1717cm−1
【0112】
実施例7.TEDA−グルタミン酸
TEDA(11.2g、0.1モル)を150mLの温水中の14.7g(0.1モル)のL−グルタミン酸の懸濁液に加えた。生じた透明な溶液をロータリーエバポレーター上で乾燥状態にさせた。生成物を乳鉢内で粉末化し、60℃で16時間にわたって真空乾燥させた。収量は24.7g(95%)であった。
【0113】
元素分析(C1121についての実験判明値VS.計算値):
炭素51.2(51.0);水素7.9(8.1);窒素15.7(16.2)。
【0114】
赤外線分析は少なくとも以下のピークを明らかにした:3048、2573、2522、2135、1638、1592cm−1
【0115】
熱重量分析は、170℃において鋭い(重量喪失率)ピーク(約35%の重量喪失を表す)を示し、220、224及び295℃における広いピークがこれに続いた。実質的な(6%)残留物が988℃で残ったが、これはおそらく、揮発よりもむしろ試料の総分解を示している。
【0116】
熱重量試験総括
実施例1〜7(実施例2は除く)の熱重量試験データを表1に示す。これらのデータでは、Tmax(付加物)は、付加物の測定されたTmax(重量喪失率が最大の温度)であり、Tmax(酸)は、カルボン酸単独の測定されたTmaxである。
【表1】

【0117】
シアン化塩素耐用期間試験
図4は、ガス流からのシアン化塩素の除去についての吸着試料の性能を評価するために、様々な吸着試料をシアン化塩素負荷にかけるのに使用される試験システムを示す。調節器(3M Model W−2806 Air Filtration and Regulation Panel,3M(St.Paul,MN)により、高圧力圧縮空気を圧力降下し、調節し、濾過して、微粒子及び油を除去した。流量計(デュワーインスツルメント社(DwyerInstruments)、インディアナ州ミシガンシティ(MichiganCity))により計測されながら0〜200SCFHの範囲で所望の主要な気流速度に設定されて、弁(ホーク社(HokeInc)、サウスカロライナ州スパタンバーグ(Spartanburg))が使用される。流量計は、乾燥ガス試験測定器(American Meter、model DTM−325、図示せず)を使用して較正される。
【0118】
主要な空気流は加熱された蒸留水槽上の上部空間を通過して、次に250mL混合フラスコの中に入る。混合フラスコ内の相対湿度は、RHセンサー(タイプ850−252(ジェネラル・イースタン(General Eastern)社、マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))を使用して、観測する。RHセンサーは、湿度制御器(PID制御器シリーズCN1201AT(Omega Engineering(Stamford,CT))に電気信号を提供し、RHを設定値に維持するため、水中ヒーターに電力を送達する。指示がない限り、相対湿度は92%に制御される。
【0119】
H.Schroder in Z.anor.allg.Chem.297,296(1958)に記載の方法を使用して、高純度シアン化塩素を調製し、鋼製レクチャーボトルに保管した。
【0120】
[Zn(CN)]+4Cl=>4ClCN+2KCl+ZnCl
シアン化塩素の5重量%のピロリン酸ナトリウムを安定剤として加えた。シアン化塩素のレクチャーボトルは、シアン化塩素蒸気の流れを供給する。
【0121】
シアン化塩素体積測定流量を測定するために、流管042−15−GLを有するAalborg 150mm PTFE−ガラスロータメータが使用される。所望のシアン化塩素流量を設定するために、ステンレス鋼製微量絞り弁(Whitey Co.SS21RS4(Highland Heights,OH))が使用される。
【0122】
550ppmのシアン化塩素の濃度で組み合わされたシアン化塩素/空気混合物は、流速32L/分及び92%RHで頂部及び底部に29/42連結部を装備するポリカーボネートボックスに流入する。試験されるべき吸着物を含有している試験固定具を底部29/42装着部上に搭載する(好適な固定具の図は、ASTM Standard Guide for Gas−Phase Adsorption Testing of Activated Carbon−D5160−95の図2に示されている)。特定の吸着体積、典型的には75mLを、内径8.9cm(3.5インチ)のアルミニウム製試験固定具の中に装填する。スノーストーム充填技術(スクリーンを含有する装填カラムを通って試験固定具に降り積もって、下地全体に吸着物を均一に分散させる)を使用して、固定具に混合物を装填した。典型的な下地の厚さは、およそ1.2cm(0.45in)である。
【0123】
試験を開始するために、550ppm及び92%RHにおけるシアン化塩素/空気混合物の安定な32L/分の流れを、頂部29/42連結部を通してポリカーボネートボックスに取り入れる。気体サンプリング弁及び水素炎イオン化検出器を装備したSRI 8610Cガスクロマトグラフ(SRI Instruments(Torrance,CA))によって、吸着剤床を出るシアン化塩素濃度を測定する。真空源はGCの気体サンプリング弁を介して試験排気口から連続的に約50mL/分の試料を引き出す。定期的に弁は、Chromosorb W−HP80/100上10%Carbowax 20M(Alltech part 12106PC、Alltech Associates(Deerfield,IL))の1.8メートル(6ft)×0.32cm(1/8インチ)カラム上に試料を注入する。シアン化塩素は空気から分離され、その濃度を、水素炎イオン化検出器(検出可能なシアン化塩素最低濃度は約0.5ppm)により測定する。空気を充填した39.2Lのステンレス鋼製槽の中に既知の体積のシアン化塩素蒸気を注入することにより調製された空気混合物中のシアン化塩素を使用して、GCを較正した。内部ファンは、槽の内部で混合物を循環させる。真空源は混合物の試料を分析のためにGCの気体サンプリング弁の中に引き込む。FIDの較正は、典型的には、0.5〜600ppmのシアン化塩素の全範囲にわたって直線である。
【0124】
シアン化塩素のppmVS.時間のプロットを行い、シアン化塩素耐用期間(CK耐用期間又はCK寿命としても知られる)を決定するのに使用する。この試験では、シアン化塩素耐用期間は、3ppmを超えるシアン化塩素がフィルターの下流側で検出される(最初のシアン化塩素曝露からの)時間として定義される。この耐用期間は記録され、様々な試料の相対的な性能を比較するために使用することができる。
【0125】
金触媒試験
金CO酸化触媒における様々な材料(例えば、TEDA/ポリカルボン酸付加物試料)の影響を判定するために、触媒を害する試験を行う。全ての場合で、使用される金触媒は、米国特許出願公開第2007/0207079号、実施例3に記載されているものと同様の方法で調製される。
【0126】
20mlの試料(例えば、様々な付加物を含有する活性炭など)を0.2L(8oz)ガラス瓶の中に注ぐ。上記で参照した金触媒7mlを含有する20mlバイアル瓶もまた蓋をせずに0.2L(8oz)瓶内に配置する。次に、0.2L(8oz)瓶に蓋をして、7日間にわたって71℃の炉内に配置する。炉から取り出し、室温に冷却した後、0.2L(8oz)瓶を開け、金触媒を含有する20mlバイアル瓶を取り出し、触媒性能試験を行うまで蓋をする。
【0127】
米国特許出願公開第2005/0095189号、試験方法#2に記載の手順と同様の方法で、触媒性能試験を行う。3600ppmの一酸化炭素(CO)濃度及び9.6lpmの流速を有するガス流に触媒を曝露する。触媒から下流の一酸化炭素濃度を検出し、COのppm(百万分率)VS.時間の表を作る。(米国特許出願公開第2005/0095189号の試験方法とはわずかな差異で、)(最初のCO曝露から)23分の時点でのCOのppmが報告され、様々な試料に曝露された触媒の相対的な性能を比較するために使用することができる。
【0128】
比較例C1
米国特許出願公開第2007/0207079号、実施例3に列挙されているものと同様の方法で金触媒の試料を調製し、TEDA又は付加物への任意の曝露がないことを除き上記金触媒CO値試験に概要が示されている手順に従って熟成させた。
【0129】
表2に示されるように、試料は、128ppmCO(上記手順により23分において測定)の金触媒試験値を呈することが判明した。
【0130】
比較例C2
以下の手順に概要が示されるものと同様の方法で、初期湿潤コーティングにより、12×20 Kuraray GG活性炭(Kuraray Chemical Company(Osaka JP))上にTEDAをコーティングした:炭素質量に基づいておよそ3%のTEDAを含有する水性混合物を供給した。初期湿潤点に到達したように見える(目視検査による)まで、小さな漸増量の混合物をおよそ50gのGG炭素に加えた。これによって初期湿潤条件に相当する水の炭素に対する比率が判定され、水性TEDA混合物を初期湿潤率における炭素に加えたときには、100部当たり3部の、炭素上の名目TEDA荷重が生じ得るように、選択されたTEDA濃度で、選択された量の水性混合物を調製した。次に、目標の初期湿潤率に到達するまで、活性炭のバッチに水性TEDA混合物を小さな漸増量で頻繁に攪拌しながら加えた。次に、炭素を時折混合しながら2時間にわたって浸漬させておいた。次に、炭素をガラス製ベーキング皿の中に単層で広げ、105℃で2時間にわたって乾燥させた。
【0131】
表2に示されるように、この試料は、14分のシアン化塩素耐用期間及び2216ppmCOの金触媒試験値を有することが判明した。
【0132】
比較例C3
米国特許第5,344,626号、実施例6に記載されている方法と同様の方法で活性炭を調製した。比較例2に上述されているものと同様の方法で、初期湿潤率を決定し、その後、TEDAの水性混合物を調製し、初期湿潤コーティングにより活性炭上に付着させた。
【0133】
TEDAが付着したこの活性炭の試料は、105℃で2時間にわたって乾燥すると、18分のシアン化塩素耐用期間及び3117ppmCOの金触媒試験値を有することが判明した。試料は、105℃で6時間にわたって乾燥すると、29分のシアン化塩素耐用期間及び1049ppmCOの金触媒試験値を有することが判明した。
【0134】
実施例8〜11.比較例C2の活性炭上のTEDA/ポリカルボン酸付加物
Kuraray GG活性炭について、初期湿潤点に対応する水の重量比を決定した。表1(「水の質量」、「TEDAの質量」及び「酸の質量」の列)に示されている量で材料を計量し、水中で攪拌することにより、TEDAとポリカルボン酸との水性混合物を作製した。各水性混合物に加えられるTEDAの量は、その量の混合物が炭素100重量部当たり約3重量部のTEDAの最終付着量を生じるように組み合わせるために選択された(各試料について特定の、炭素上に付着したTEDAの計算された最終重量%が、表2の「最終重量%」の列に示される)。各水性混合物に加えられたポリカルボン酸の量は、名目上1:1のポリカルボン酸のTEDAに対する化学量論比を提供するように選択された。
【0135】
特定の試料について水性混合物/活性炭の重量比(上述のように決定)を使用して、初期湿潤技術により、各水性混合物を表2(「GGの質量」)に列挙される量のGG炭素(12×20寸法)上に取り入れた。試料を105℃で2時間にわたって乾燥させた。次に、TEDA/ポリカルボン酸付加物が付着している活性炭をシアン化塩素耐用期間試験及び金触媒試験で試験したが、この結果は表3に示されている。
【表2】

【表3】

【0136】
実施例12〜15.比較例C3の活性炭上のTEDA/ポリカルボン酸付加物
米国特許第5,344,626号、実施例6に記載されている方法と同様の方法で活性炭を調製した。初期湿潤点に対応する水の重量比を決定した。実施例8〜11について上述したのと同様の方法で、TEDAとポリカルボン酸との水性混合物を作製し、炭素上に付着させ、乾燥させた。再び、炭素100部当たり約3部のTEDAの最終比率に相当するTEDA量を目標にし、名目上1:1のポリカルボン酸のTEDAに対する化学量論比を提供するように、ポリカルボン酸の量を選択した。次に、TEDA/ポリカルボン酸付加物が付着している活性炭をシアン化塩素耐用期間試験及び金触媒試験で試験したが、この結果は表5に示されている。
【表4】

【表5】

【0137】
実施例16.比較例C3の活性炭上のTEDA/ポリ(アクリル酸)
米国特許第5,344,626号、実施例6に記載されている方法と同様の方法で活性炭を調製した。500mLビーカーの中で磁気攪拌しながら、平均M=250,000のポリ(アクリル酸)の35重量%水溶液12.59グラムを214.12グラムのDI水と組み合わせた。6.90グラムのTEDAをゆっくりと加え、溶解するまで攪拌した。199.86グラムの溶液を1Lビーカーの中で250.53グラムの活性炭に注ぎ、わずかに攪拌し、16時間にわたって放置した。次に、活性炭を105℃で2時間にわたって乾燥させた。次に、TEDA/ポリ(アクリル酸)が付着している活性炭をシアン化塩素耐用期間試験及び金触媒試験で試験したが、この結果は下の表6に示されている。
【表6】

【表7】

【0138】
多孔質高分子エレクトレットウェブ
Wente,Van A.,「Superfine Thermoplastic Fiber」,Industrial and Engineering Chemistry,vol.48.No.8,1956,pp 1342〜1346に記載のものと同様の溶融吹込方法によって、多孔質高分子不織布ウェブを調製した。米国特許出願公開第2003/0134515号に記載のものと同様の方法を使用して、Cを含有する雰囲気中におけるプラズマ処理によって、ウェブをフッ素化した。米国特許出願公開第2003/0134515号に記載のものと同様の方法を使用して、ウェブ上に水を衝突させることにより、ウェブを充電した。
【0139】
エレクトレット劣化試験
エレクトレットウェブの濾過特性への様々な材料(例えば、TEDA/ポリカルボン酸付加物試料)の影響を判定するために、多孔質高分子エレクトレットウェブ試験を行う。75mlの試料(例えば、様々な付加物を含有する活性炭など)を0.9L(32オンス)ガラス瓶の中に注ぐ。瓶をかき混ぜて均一層を作る。多孔質高分子ウェブの13.2cm(5.25”)ディスク4枚を瓶の壁に対して垂直に配置する。次に、0.9L(32オンス)瓶に蓋をして、7日間にわたって71℃の炉内に配置する。炉から取り出し、室温に冷却した後で、瓶を開け、試験ウェブを取り出し、性能試験が行われるまで密閉した瓶の中に配置する。
【0140】
フタル酸ジオクチル浸透試験
Certitest Model 8130 Automated filter Test(TSI,Inc.(Shoreview,MN)から入手可能)を使用し、NIOSH Determination of Particulate Filter Penetration to Test Against Liquid Particulates for Negative Pressure Air Purifying Respirators Standard Test Procedure No.RCT−APR−0051に記載のものと同様の装置及び手順を42CFR,Part 84,Subpart G,Section 84.63(a)(c)(d)及びSubpart K,Section 84.181;Volume 60,No.110,June 8 1995に記載されているように使用して、フタル酸ジオクチル(DOP)エアゾール負荷浸透試験を行う。DOP粒子は、およそ185nmの名目幾何平均直径で生成される。1分当たりおよそ42.5リットルの流速で、およそ25秒の期間にわたって、ガス流中で多孔質高分子エレクトレットウェブの試料(およそ100cmの露出試料面積)上に粒子を衝突させる。いかなるイオナイザー又はエアゾール中和剤も試験中には作用しない。所与の試料についてのDOP透過%は、(光散乱によって測定されるような)ウェブ試料から上流及び下流のガス流における測定されたDOP濃度に基づいて計算される。浸透は%で報告される。
【0141】
比較例C4
上述のように多孔質高分子エレクトレットウェブの試料を調製し、71℃での劣化に曝露した。表8に示されるように、試料は、8.3%のDOP透過を呈することが判明した。
【0142】
比較例C5
多孔質高分子エレクトレットウェブの試料を上述のように調製し、いかなるTEDA又は付加物も存在しないことを除いてエレクトレット劣化試験に概要が示されている手順に従って71℃で劣化させた。表8に示されるように、試料は、18.1%のDOP透過を呈することが判明した。
【0143】
比較例C6
米国特許第5,344,626号、実施例6に記載されている方法と同様の方法で活性炭を調製した。比較例3に上述されているものと同様の方法で、TEDAの水性混合物を調製し、初期湿潤コーティングにより活性炭上に付着させた。この実施例では、水性混合物中のTEDA濃度及び水性混合物の量は、TEDA活性炭上のTEDAの名目荷重1.5%を提供するように選択された。TEDAが付着しているこの活性炭の試料を、105℃で6時間にわたって乾燥させた。
【0144】
上述のように多孔質高分子エレクトレットウェブの試料を調製し、エレクトレット劣化試験に概要が示されている手順に従って、TEDAが装填された活性炭の存在下で71℃で劣化させた。表8に示されるように、試料は、54.1%のDOP透過を呈することが判明した。
【0145】
実施例17〜19.比較例C2又はC3の活性炭上のTEDA/ポリカルボン酸付加物に曝露されたエレクトレットウェブ。
【0146】
Kuraray GG活性炭を得て、更に、米国特許第5,344,626号、実施例6に記載の方法と同様の方法で、活性炭を調製した。各々、比較例2及び3について上記で概要を示したように、初期湿潤点に対応する水の重量比を決定した。上述したのと同様の方法で、TEDAとポリカルボン酸との水性混合物を作製し、炭素上に付着させ、乾燥させた。TEDA濃度及び水性TEDA混合物の量は、下記のように、1.5%又は3.0%のいずれかの炭素上の名目TEDA荷重を達成するように組み合わせるために、様々な場合で選択された。各水性TEDA混合物に加えられたポリカルボン酸の量は、名目上1:1のポリカルボン酸のTEDAに対する化学量論比を提供するように選択された。次に、多孔質高分子エレクトレットウェブ試料を、付加物(上記の比較例における除外されたものを有する)を有する活性炭の存在下で71℃の劣化にかけた。次に、ウェブをフタル酸ジオクチル浸透試験で試験したが、この結果は表8に示される。
【表8】

【0147】
上記の試験及び試験結果は予測ではなく例示のみを意図したものであり、試験方法が変われば異なる結果が生じ得るとが考えられる。前述の詳細な説明及び実施例は理解を明確化するためにのみ提示されている。それらから無用の限定を解するべきでない。特に、本開示の見出し及び/又は小見出しは、読む便宜上提供されたものであり、それらから無用の限定を解するべきではない。
【0148】
これで、本発明について、そのいくつかの実施形態に関連して説明した。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態において変更を加えられることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載された厳密な詳細及び構造に限定されるべきではなく、それよりもむしろ、特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びそれらの構造の等価物によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材であって、
支持体、及び
前記支持体上に提供されるトリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物、を含む、濾材。
【請求項2】
前記付加物が1:1化学量論的付加物である、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記支持体が、第一の金属塩であって、前記金属が周期表の6〜12族にある金属塩と、金属炭酸塩を含む第二の金属塩であって、前記金属が周期表の1族にある金属炭酸塩を含む金属塩と、を含む活性炭を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸が、カルボン酸基の部分ではない少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する、請求項1に記載の濾材。
【請求項5】
前記付加物が少なくとも1つの水和水を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸がコハク酸である、請求項1に記載の濾材。
【請求項7】
前記支持体がゲスト/ホスト構造を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項8】
前記濾材が呼吸保護器具の中にある、請求項1に記載の濾材。
【請求項9】
濾材の製造方法であって、トリエチレンジアミン及び少なくとも1つのポリカルボン酸を提供する工程、
これらの付加物を形成するのに有効な条件下で、前記トリエチレンジアミンを前記ポリカルボン酸と組み合わせる工程、
並びに
前記付加物が支持体上に提供されるようにする工程、を含む、濾材の製造方法。
【請求項10】
前記方法が、前記トリエチレンジアミンと前記少なくとも1つのポリカルボン酸とを混合して混合物にする工程、前記混合物を前記支持体上に付着させる工程、及び前記支持体を乾燥する工程、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が、所望により少なくとも1つのアルコールを含む水溶液又は懸濁液を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を前記支持体上に付着させる工程が、初期湿潤含浸により行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ガス流からシアン化塩素を除去する方法であって、
支持体上に提供されたトリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物を有する前記支持体を含む濾材を供給する工程、
及び
前記ガス流を前記濾材に曝露する工程、を含む、方法。
【請求項14】
前記付加物が1:1化学量論的付加物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記支持体が、第一の金属塩であって、前記金属が周期表の6〜12族にある金属塩と、金属炭酸塩を含む第二の金属塩であって、前記金属が周期表の1族にある金属炭酸塩を含む金属塩と、を含む活性炭を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
濾過システムであって、
トリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物を含む支持体を含む濾材、
及び
一酸化炭素の酸化に活性である触媒、を含む、濾過システム。
【請求項17】
前記触媒が、約0.5nm〜約50nm寸法の金クラスターを含む、請求項16に記載の濾過システム。
【請求項18】
前記濾過システムが呼吸保護器具の中にある、請求項16に記載の濾過システム。
【請求項19】
濾過システムであって、
トリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物を含む支持体を含む濾材、
及び
多孔質高分子ウェブを含む濾材、を含む濾過システム。
【請求項20】
前記多孔質高分子ウェブがエレクトレットウェブを含む、請求項19に記載の濾過システム。
【請求項21】
前記濾過システムが呼吸保護器具の中にある、請求項20に記載の濾過システム。
【請求項22】
トリエチレンジアミンとポリカルボン酸との付加物であって、前記付加物が、
4.4(100)、2.4(14)、3.1(12)、4.1Å(11)のX線回折パターンを呈するトリエチレンジアミンとコハク酸との1:1化学量論的付加物、
3.9(100)、5.0(89)、4.3(62)、5.6(55)、3.8Å(51)のX線回折パターンを呈するトリエチレンジアミンとコハク酸との1:1化学量論的付加物、
6.2(31)、5.5(44)、4.8(36)、4.6(57)、3.9(55)、3.4Å(100)のX線回折パターンを呈するトリエチレンジアミンとリンゴ酸との1:1化学量論的付加物、
トリエチレンジアミンと酒石酸との1:1化学量論的付加物、
トリエチレンジアミンとマロン酸との1:1化学量論的付加物、
トリエチレンジアミンとクエン酸との1:1化学量論的付加物、
及び
トリエチレンジアミンとグルタミン酸との1:1化学量論的付加物とからなる群から選択される、付加物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517614(P2011−517614A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547703(P2010−547703)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/034237
【国際公開番号】WO2009/105406
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】