説明

アミンボランを用いる含フッ素アミン化合物の製造方法

【課題】特殊な装置を必要とせず、一段反応で、毒性の高い還元剤を使用することなく、アミン類の共存下含フッ素カルボン酸化合物の還元的アミノ化により含フッ素アミン化合物を高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】アミン類共存下、含フッ素カルボン酸化合物をボランアミン錯体と反応させ、含フッ素アミン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素アミン化合物を製造する方法に関する。より詳しくは、含フッ素カルボン酸化合物をアミン類の共存下、ボランアミン錯体を用いて還元し含フッ素アミン化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素アミン化合物は医農薬中間体あるいは電子材料原料等として広範に利用されている極めて有用な化合物である。この含フッ素アミン化合物の合成方法としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4等に示されるようなアミン化合物と含フッ素アルデヒド化合物の共存下、還元剤を反応させる方法がある。この方法の場合、原料分子の反応性は高く、また、原料分子中に含まれるフッ素原子は原理的にはすべて目的物中に導入できるため、効率的な方法と言える。しかしながら、特許文献1の場合はアミン化合物が低級脂肪族アミンに限られる問題を有する。一方、特許文献2〜4の場合は還元剤として極めて有毒なシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いるため、大量生産において廃棄などの問題が発生する。さらに、反応試薬である含フッ素アルデヒド化合物が高価であったり、入手が限られたり、取り扱いや保存に問題がある場合がある。
【0003】
一方、含フッ素アルデヒド化合物の代わりに対応する含フッ素カルボン酸化合物を用いる還元的アミノ化反応については、還元剤が水素化ホウ素ナトリウムの場合に報告がある。しかし、極めて低収率で対応する含フッ素アミン化合物が製造されているにすぎない。すなわち、インドリンをトリフルオロ酢酸と混合し、水素化ホウ素ナトリウムを加えて加温すると、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)インドリンが7%の収率で得られ、原料が51%の収率で回収されている(非特許文献1参照)。非特許文献2によれば、キノリン及びイソキノリンをトリフルオロ酢酸と混合し、水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元すると1,2,3,4−テトラヒドロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−キノリン及び−イソキノリンがそれぞれ17%及び21%の収率で得られている。N−メチルアニリンとの反応では2%の収率でN−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンを得ている(非特許文献3参照)。又、非特許文献4の場合はアミン化合物が芳香族第一アミンに限られる問題を有する。さらに、アミン化合物と含フッ素カルボン酸化合物の共存下、還元剤としてボランアミン錯体を用いる還元的アミノ化反応の報告は全くない。
【0004】
【特許文献1】欧州特許 第156470号明細書
【特許文献2】WO 2001/16108号公報
【特許文献3】WO 2002/066475号公報
【特許文献4】WO 2005/085185号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,96(1974),7812
【非特許文献2】Synthesis,(1970),650
【非特許文献3】Heterocycles,22(1984)379
【非特許文献4】Acta Pharm.Jugost.,30(1980)121
【非特許文献5】J.Fluorine Chem.,12(1978)293
【非特許文献6】Tetrahedron,60(2004)7899
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものである。即ち、含フッ素アルデヒド化合物を使用せず、その代わりに入手しやすく、安定な含フッ素カルボン酸化合物を用い、毒性の高い還元剤を使用することなく、アミン類の共存下、ボランアミン錯体を用いて還元的アミノ化反応を行い、含フッ素アミン化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑み本発明者らは鋭意検討した結果、特殊な装置を必要とせず、一段反応で、含フッ素カルボン酸化合物をアミン類の共存下、特定の還元剤を用いて還元することにより、高収率で含フッ素アミン化合物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は下記要旨に関わるものである。
【0007】
1.下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xはフッ素原子または水素原子を示し、nは1〜10の整数を示す。)で表される含フッ素カルボン酸化合物を、下記一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数4〜30のアリール基を示す。なお、R及びRは末端で、ヘテロ原子の介在あるいは非介在下で、互いに結合し環状構造をなしていてもよい。)で表されるアミン類の存在下ボランアミン錯体を用いて還元的アミノ化反応を行い、下記一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、X、n、R及びRは前記定義に同じである。)で表される含フッ素アミン化合物を製造する方法。
【0014】
2.ボランアミン錯体が2−ピコリンボランまたは4−ピコリンボランであることを特徴とする前期1に記載の含フッ素アミン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特殊な装置を必要とせず、一段反応で、毒性の高い還元剤を使用することなく、含フッ素アルデヒド化合物を使用することなく、その代わりに、入手しやすく、安定な含フッ素カルボン酸化合物を用い、アミン類の存在下ボランアミン錯体を用いて還元し、含フッ素アミン化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、前記一般式(1)のカルボン酸化合物を原料として用いる。一般式(1)においてX(CF)n−は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基またはヒドロパーフルオロアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基及びパーフルオロデシル基等が挙げられる。
【0017】
また、式中、R及びRは、同一または非同一であり、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数4〜30のアリール基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基及びエイコサン基等を挙げることができる。アルキル基の置換基としては、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エステル基、アルキルチオ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子等を挙げることができる。炭素数4〜30のアリール基としては、例えば、フラン基、ピロール基、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等を挙げることができる。アリール基の置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ケトン基、エステル基、カルボン酸基、アルキルチオ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子等を挙げることができる。また、RとRは、ヘテロ原子の介在または非介在下、互いに結合し環状構造をなしていてもよい。
【0018】
本発明方法により得られる含フッ素アミン化合物は、前記一般式(3)で表され、例えば、(2,2,2−トリフルオロエチル)アミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)メチルアミン、N−(2,2−ジフルオロエチル)メチルアミン、N−(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチルアミン、N−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)メチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)エチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−n−プロピルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)イソプロピルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−n−ブチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−メトキシエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−クロロエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ジメチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ジエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ジ−n−プロピルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ジ−n−ブチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−メトキシアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−メトキシアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4−メトキシアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4−クロロアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4−シアノアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−メチルアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−エチルアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−メチル−4−メチルアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−メチル−4−メトキシアニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1−ナフチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)インドリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、N−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)ピペリジン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N’−フェニルピペラジンおよびN−(2,2,2−トリフルオロエチル)モルホリン等を挙げることができるが、前記一般式(3)に包含される含フッ素アミン化合物であればこれらの例示に限定されることはない。
【0019】
本発明では、はじめに含フッ素カルボン酸化合物をボランアミン錯体で還元し、発生する活性なアルデヒド又はその同価体と共存するアミン類との反応成績体をさらに還元することにより含フッ素アミン類を合成する。本発明に依れば、ほとんど例外なく目的とする含フッ素アミン類を合成することができる。例えば、オルト位にニトロ基を有するN−トリフルオルエチルアニリンは対応するN−トリフルオロアセチル体のジボラン還元でも5%しか得られないが(非特許文献5参照)本発明に依れば収率よく還元反応を行うことができる(実施例参照)。
【0020】
ボランアミン錯体としては、メチルアミンボラン、エチルアミンボラン、t−ブチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンアミン、トリエチルアミンボラン等のボラン脂肪族アミン錯体、ジエチルアニリンボラン等のボラン芳香族アミン錯体及びボランピリジン錯体等を挙げることができる。特に、これらボランアミン錯体のうち、2−および4−ピコリンボラン錯体は、含フッ素アミン化合物の収率の面で優れ、安全性に関わる取り扱いの面において利点を有する(非特許文献6参照)。ボランアミン錯体の使用量は、アミン類に対し、モル比で2〜10倍、通常、5〜7倍である。
【0021】
また、還元反応を行う際、含フッ素カルボン酸化合物を溶媒として使用できるが、通常、非プロトン性溶媒と混合して使用する。非プロトン性溶媒としては特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン等のアルカン類、トルエン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類等を挙げることができる。含フッ素カルボン酸化合物の使用量は通常アミン類に対し、重量比で5〜20倍である。
また、還元反応を行う際の反応温度は、−20℃〜150℃、好ましくは20℃〜120℃である。反応時間は温度によって影響されるが、通常、1分から2時間である。
【0022】
還元反応後、公知の抽出法、蒸留法、晶析法またはクロマトグラフ等により含フッ素アミン化合物を単離することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1 N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
アニリン(240mg,2.58mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(1.38g、12.9mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4)に付しN−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(301mg,67%)を得た。
IR(neat):3420,1610,1520,1450,1400,1340,1280,1260,1160,830,760,700,670,620cm−1
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 3.76(q,2H,CH),3.91(brs,1H,NH),6.67−7.27(m,5H,Ar−H)
EI−MS m/z 175(M,46.39),156(4.69),136(8.25),124(1.68),106(100.00),104(14.53),77(33.86),69(9.38),51(11.27)
【0025】
実施例2 N−(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)アニリンの合成
アニリン(172mg,1.85mmol)をノナフルオロ吉草酸(2mL)に溶かした溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(988mg、9.23mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応溶液に冷却下10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。この溶液に冷却下10%NaCO(15mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4次いで1:10)に付しはじめにN−(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)アニリン(258mg,43%、mp77−78℃)を次いで2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−N−フェニルペンタンアミド(180mg、29%)を得た。
N−(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)アニリン
IR(neat):1620,1600,1500,1280cm−1
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 3.88(t,3H,NH+CH),6.70(d,2H,Ar−H),6.82(t,1H,Ar−H),7.19−7.26(m,2H,Ar−H)
EI−MS m/z 325(M,12.62),155(6.84),106(100.00),77(7.23)
2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−N−フェニルペンタンアミド
EI−MS m/z 339(M,93.64),120(100.00),92(47.96),77(60.83)
【0026】
実施例3 4−エトキシカルボニル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
4−エトキシカルボニルアニリン(296mg,1.79mmol)、トリフルオロロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(959mg、8.96mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4)に付し4−エトキシカルボニル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(397mg,90%、トルエンから再結晶mp94−94℃)を得た。
元素分析 理論値C,53.44;H,4.89;N,5.67 実測値C,53.54;H,4.94;N,5.75
IR(KBr):3380,1695,1605,1540,1520,1275,1250,1180,1150,770cm−11H−NMR(270MHz,CDCl)δ 1.37(t,3H、CH),3.79−389(m,2H,CH),4.33(q,2H,CH),4.37(brs,1H,NH),6.67(d,2H,Ar−H),7.92(d,2H,Ar−H)EI−MS m/z 247(M,52.81),202(100.00),178(22.18),150(26,44)
【0027】
実施例4 2−ニトロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
2−ニトロアニリン(177mg,1.28mmol)、トリフルオロ酢酸(4mL)の溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(656mg、6.41mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(12mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:2)に付し2−ニトロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(187mg,66%、トルエンから再結晶mp91−92℃)を得た。次いで原料(37mg、18%)を回収した。
EI−MS m/z 220(M,100.00),151(59.29),133(34.98),105(26.95)
【0028】
実施例5 4−クロロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
4−クロロアニリン(254mg,1.99mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(1.07g、9.96mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:8)に付し4−クロロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(317mg,76%)を得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 3.68−3.80(m,2H,CH),3.94(brs,1H,NH),6.62(d,2H,Ar−H),7.17(d,2H,Ar−H).
【0029】
実施例6 N−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
N−メチルアニリン(211mg,1.97mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(1.06g、9.86mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4)に付しN−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(246mg,66%)を得た。
IR(neat):1610,1510,1380,1170,1150,1100,1000,980,830,760,700,670cm−1
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 3.05(s,3H,CH),3.81−3.90(q,2H,CH),6.79−6.83(m,3H,Ar−H),7.24−7.29(m,2H,Ar−H)
EI−MS m/z 189(M,46.68),120(100.00),105(12.94),104(11.95),77(16.78)
【0030】
実施例7 N−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの合成
実施例4の4−ピコリンボランをトリメチルアミンボランに置き換え同様の実験を行ったところN−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンを54%で得た。
【0031】
実施例8 N−(2,2,2−トリフルオロエチル)インドリン
インドリン(119mg,1.00mmol)、トリフルオロ酢酸(1mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下2−ピコリンボラン(428mg、4.00mmol)を加え、105℃で30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(20mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:10)に付しN−(2,2,2−トリフルオロエチル)インドリン(94mg,64%)を得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 3.06(t,2H,CH),3.53−3.67(m,4H,CHx2),6.51(d,1H,Ar−H),6.73(t,1H,Ar−H),7.06−7.13(m,2H,Ar−H)
EI−MS m/z 201(M,37.77),132(100.00),117(25.12)
【0032】
実施例9 N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N,N−ジフェニルアミンの合成
N,N−ジフェニルアミン(270mg,1.60mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(853mg、7.98mmol)を加え、105℃で30分加熱した。次いで4−ピコリンボラン(342mg、3.19mmol)を追加し、105℃で更に30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:8)に付しN−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N,N−ジフェニルアミン(323mg,81%)を得た。
EI−MS m/z 251(M,58.10),182(100.00),77(26.25)
【0033】
実施例10 N−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルルアミンの合成
N−メチルベンジルアミン(215mg,1.77mmol)、トリフルオロ酢酸(2.5mL)、ジメトキシエタン(2.5mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(949mg、8.87mmol)を加え、105℃で30分加熱した。次いで4−ピコリンボラン(380mg、3.55mmol)を追加し、105℃で更に30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4)に付しN−メチルN−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルルアミン(218mg,61%)を得た。
IR(neat):2800,1500,1460,1410,1320,1270,1150,1130,1100,1050,750,700cm−1
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 2.43(s,3H,CH),2.98−3.09(q,2H,CH),3.72(s,2H,CH),7.24−7.34(m,5H,Ar−H)
EI−MS m/z 203(M,29.84),134(41.30),126(22.88),91(100.00)
【0034】
実施例11 N−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルルアミンの合成
実施例10の4−ピコリンボランをトリメチルアミンボランに置き換え同様の実験を行ったところN−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)ベンジルルアミンを22%で得た。
【0035】
実施例12 N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンの合成
1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(247mg,1.86mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(992mg、9.27mmol)を加え、105℃で30分加熱した。次いで4−ピコリンボラン(397mg、3.71mmol)を追加し、105℃で更に30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:8)に付しN−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(333mg,84%)を得た。
EI−MS m/z 215(M,74.20),214(100.00),146(36.98),104(86.70)
【0036】
実施例13 N−フェニル−N’−(2,2,2−トリフルオロエチル)ピペラジンの合成
1−フェニルピペラジン(208mg,1.28mmol)、トリフルオロ酢酸(3mL)、ジメトキシエタン(3mL)の混合溶液に、氷冷下4−ピコリンボラン(686mg、6.41mmol)を加え、105℃で30分加熱した。次いで4−ピコリンボラン(274mg、2.56mmol)を追加し、105℃で更に30分加熱した。反応後溶媒を減圧留去し、残渣に10%HCl(10mL)を加え、110℃で30分間加熱還流した。反応溶液に冷却下10%NaCO(10mL)及び固体のNaCOを加えてアルカリ性とし、水層をAcOEt(25mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。有機溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt−hexane=1:4)に付しN−フェニル−N’−(2,2,2−トリフルオロエチル)ピペラジン(283mg,90%、AcOEt−hexaneから再結晶mp61−62℃)を得た。
元素分析 理論値C,59.01;H,6.19;N,11.47 実測値C,59.04;H,6.23;N,11.72
IR(KBr):2850,2830,1610,1515,1460,1320,1270,1170,1150,1105,760,690cm−1
H−NMR(270MHz,CDCl)δ 2.83(t,4H,CH×2),3.03(q,2H,CH),3.21(t,4H,CH×2),6.84−6.94(m,3H,Ar−H),7.23−7.30(m,2H,Ar−H)
EI−MS m/z 244(M,100.00),132(18.89),106(24.17),105(64.74)
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、毒性の高い還元剤を使用せず、アミン類共存下含フッ素カルボン酸化合物の還元により含フッ素アミン化合物を高収率で製造することができる。含フッ素アミン化合物は医農薬中間体、電子材料用原料として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Xはフッ素原子または水素原子を示し、nは1〜10の整数を示す。)で表される含フッ素カルボン酸化合物を、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数4〜30のアリール基を示す。なお、R及びRは末端で、ヘテロ原子の介在あるいは非介在下で、互いに結合し環状構造をなしていてもよい。)で表されるアミン類の存在下ボランアミン錯体を用いて還元的アミノ化反応を行い、下記一般式(3)
【化3】

(式中、X、n、R及びRは前記定義に同じである。)で表される含フッ素アミン化合物を製造する方法。
【請求項2】
ボランアミン錯体が2−ピコリンボランまたは4−ピコリンボランであることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素アミン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−57359(P2009−57359A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256077(P2007−256077)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000159065)
【Fターム(参考)】