説明

アムラ果実加工品

【課題】 必要以上に糖度を上げることなく、かつアムラ果実のシャキシャキ感を維持した状態の加工品を提供すること。
【解決手段】 復元強度が0.5−1.0、水溶性固形分が25%−60%、pHが3.0−4.5、100gあたりのポリフェノール含量が100mg−3000mg、食物繊維含量が0.1%−5%であることを特徴とするアムラ果実加工品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムラ果実加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
インドにおいては、サンスクリット語のアーユルヴェーダ(Ayurveda)と称する生命科学が知られている。この語は、生命・寿命を意味するアーユス(Ayus)と、知識・真理を意味するヴェーダ(Veda)の合成語である。アーユルヴェーダは、インド国民の80%以上に利用され、これを教育する医科大学も100校以上あるなど、インドでは伝統的医療となっている。
近年の健康への関心の増加に鑑み、中国の漢方と同様に、アーユルヴェーダへの関心が高まりつつある。医食同源の視点から、アーユルヴェーダで処方される薬用植物は、一般食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、及び保健機能食品等の各種食品の素材として応用の可能性がある。
【0003】
アーユルヴェーダにおいて、重要な薬用植物とされるアムラ(学名:Emblica officinalis Gaertn又はPhyllanthus embilica、別名:アーマラキー、又はマラッカノキ)は、代表的な果実(三果、トリパラ)の一つであり、宇宙最初の木とされている。その果実は、アーユルヴェーダの治療では、眼病、肺炎、貧血及び細菌性赤痢などの処方に用いられている。また、インドでは、アムラは、砂糖漬け食品としてのムラッパ(murabba)、又はピクルスの素材として用いられている。
アムラ果実は、約2〜5cm程度の大きさであり、皮は薄く、果肉は緑色から淡黄色を呈している。アムラ果実には、多量のポリフェノール類、ビタミンCが含有されている。しかしながら、生果実には渋味・苦味・酸味が強く、そのままで飲食に供することは困難である。
【0004】
このため、インドにおいては砂糖漬けとして販売されているが、水溶性固形分の表記の一種である糖度が60以上と高すぎることから、食品材料としての応用に乏しい。この問題を打開するために、いくつかの開発が行われている(特許文献1、2を参照)。特許文献1には、アムラ果実を調味シロップに漬け、加熱処理する技術が開示されている。また、特許文献2には、アムラ果実をペクチナーゼで処理する技術が開示されている。
しかし、従来の技術において得られるアムラ果実加工品は、糖度が高く、アムラ果実が有するシャキシャキ感に乏しい、或いは酵素を用いるために高価となってしまうなど、アムラ果実を食品に応用するための問題が残されていた。
【特許文献1】特開2001−29008号公報
【特許文献2】特開2005−73503号公報
【特許文献3】特開2006−335713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、必要以上に糖度を上げることなく、かつアムラ果実のシャキシャキ感を維持した状態のアムラ果実加工品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにアムラ果実加工品の果肉の復元強度が0.5−1.0、水溶性固形分が25%−60%、100gあたりのポリフェノール含量が100mg−3000mg、食物繊維含量が0.1%−5%であることを特徴とする。
【0007】
上記発明において、水溶性固形分が25%−60%、pHが3.0−4.5であることが好ましい。
また、前記アムラ果実加工品の果肉含量が、10%−50%であることが好ましい。
また、前記アムラ果実加工品は、デザート用プレパレーション及び飲料に用いられることが好ましい。
また、製造工程においては、ゲル化剤及び/または増粘剤を添加することが好ましい。
また、製造工程においては、pH調整に酸及び/又はアルカリ塩を用いることが好ましい。
【0008】
アムラ果実とは、アムラ(学名:Emblica officinalis Gaertn又はPhyllanthus embilica、別名:アーマラキー又はマラッカノキ)の木に実る果実であり、約2〜5cm程度の大きさであり、皮は薄く、果肉は緑色から薄黄色を呈している。果実の内部には1個の種子がある。
【0009】
果肉の復元強度とは、果肉が備えている復元力を数値化したものである。生のアムラ果実の復元強度は高い(約0.8−1)が、従来のシロップ漬けのアムラ果実では、復元強度は低い(約0.3以下)。復元強度が高いと、アムラ果実が本来持っているシャキシャキとした歯ごたえ(例えば、リンゴを噛んだようなシャキシャキ感)を維持できており、アムラ果実の繊維を感じにくい。一方、シロップ漬けのアムラ果実では、シャキシャキ感に乏しく、アムラ果実の繊維感が強い。このため、食後に歯の隙間に繊維が残ることがある。
【0010】
本明細書において、復元強度は、アムラ果実について復元強度試験を行った後、下記式において定義される。
すなわち、復元強度=h1/h0……(式1)
但し、式(1)中、「h0」は、果肉の復元強度試験において負荷処理前の高さを意味し、「h1」は果肉の復元強度試験において負荷処理後の果肉の高さを意味する。
復元強度試験の実施方法は次の通りである。まず、果肉の高さが1mm−10mm、質量が10mg−1100mgのものを選定し、負荷処理前の果肉の高さを測定し、h0とする。その果肉を重力の方向に対してほぼ垂直に載置された紙上に置き、負荷処理を行なった後、再び果肉の高さを測定し、h1とする。
圧力P(N/cm)=負荷重/果肉面積………(式2)
負荷重は一定の圧力(P=0.1−1.0)をかけたとき上記式2から算出する。
果肉の下面側に載置された紙とほぼ平行になるように、果肉の上面側から負荷を面接触させながら与える。例えば、適当な質量を備えた分銅などを果肉の上面に載せることで、負荷処理を行うことができる。果肉に対して、負荷重を5分間与えた後に負荷を取り除く。
【0011】
糖とは甘味のある炭水化物であり、単糖類として、ショ糖、ブドウ糖、ハチミツ、二糖類として砂糖、麦芽糖、乳糖、蔗糖、トレハロース、セロビオ−ス、イルマルトース、ゲンチオビースなど、オリゴ糖類として、ゲンチアノース、ラフィノース、パノース、スタキオ−スなど、糖アルコール類として、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アラビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、パラチニットなど、高甘味な糖類として、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチンなどを示す。本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
【0012】
デザート用プレパレーションとは、ヨーグルト、ゼリー、アイスクリームなどのデザートに用いられる調製品のことを意味している。本発明においては、アムラ果実加工品、またはアムラ果実一次加工品をデザート用プレパレーションとして用いることができる。
アムラ果実一次加工品とは、アムラ果実をブランチング処理、表皮を除去および水洗する処理、およびアムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割って種子を除去する種子除去処理を経た後、凍結したことを特徴とする。
ブランチング処理とは、アムラ果実に含まれる酵素を不活性化し、貯蔵中の品質の低下や変色を防ぐための軽い湯通し加工を意味している。本発明においては、ブランチング処理は、アムラ果実を水に漬け、所定の温度(例えば、70℃〜98℃)で、所定の時間(例えば、2分間〜15分間)加熱処理する。このとき、時間が短すぎると酵素の失活処理が十分ではないため、アムラ果実が変色する。一方、時間が長すぎると、アムラ果実が必要以上に柔らかくなってしまい、シャキシャキ感が無くなってしまう。そのような、至適条件については、当業者であれば、決定することができる。
また、アムラ果実加工品は、アムラ果実一次加工品を用いて調製することが好ましい。
飲料とは、飲むためのものを意味しており、具体的には、ジュース、栄養ドリンク、機能性飲料、炭酸飲料、乳飲料、乳酸菌飲料(飲むヨーグルトを含む)、清涼飲料、コーヒー、アルコール飲料などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
【0013】
ゲル化剤とは、液体をゼリー状に固めて、ゲル化する作用を持つ物質を意味する。例えば、ゼラチン、ペクチン、寒天(アガー)、カラギーナンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
増粘剤とは、飲料を含む食品に、とろみを付けるための食品添加物を意味している。例えば、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
pH調整のために用いられる酸とは、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、α−ケトグルタル酸、フィチン酸及び乳酸など果実や野菜に酸味成分として多量に含まれる酸などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
pH調整のために用いられるアルカリ塩とは、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、D−酒石酸水素カリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム等のアルカリ塩などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、色、風味、食感が良好なアムラ果実加工品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0016】
次に、本発明を更に詳細に説明するために、試験例及び実施例を説明する。
<試験例1> アムラ果実加工品の調製
急速冷凍したアムラ果実1000gを90℃にて5分間の加熱処理を行った後、アムラ果実に水道水を添加しつつ撹拌しながら冷却し、表皮を除去および水洗を行った。
次に、アムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割りながら種子を除去した。こうして、アムラ果実一次加工品(770g)を得た。
【0017】
次に、冷凍しておいたアムラ果実一次加工品(770g)を一辺が6.4mmの略立方体状に切断し、これに砂糖(814g)を振りかけてまぶした。アムラ果実が解凍するのを待つことで、解凍に伴うドリップにより砂糖を溶解させた。アムラ果実(1584g)をステンレスのビーカーに入れ、水(561g)、ペクチン(7.7g)、ローカストビーンガム(1.1g)、及びクエン酸ナトリウム(2.2g)を添加した後、60℃まで加熱した。その後、レモン果汁(44g)を加えて、90℃まで加熱し、5分間の加熱殺菌を行った。撹拌しながら、45℃まで冷却した後、表1に示した所定量まで水分を添加し、カップに充填した。これを冷蔵庫で冷却した。こうして、アムラ果実加工品(2000g)を得た。
【0018】
【表1】

【0019】
<試験例2>アムラシロップ煮の調製
果皮と種子を除去したアムラ果実(1000g)を一辺が6.4mmの略立方体状に切断し、表2で示される組成のシロップ(1000g)と混合させ、121℃、5分間加熱処理した。撹拌しながら、45℃まで冷却した後、カップに充填した。これを冷蔵庫で冷却した。こうして、アムラシロップ煮(1500g)を得た。
【0020】
【表2】

【0021】
<試験例3>糖漬けアムラの調製
アムラ果実(1000g)を1.0%のミョウバン水で洗浄し、2Lの1.0%のミョウバン水に一晩漬けておいた。24時間後に取り出し、1.0%のミョウバン水で洗浄した後、沸騰したお湯で2分間茹で、25%の砂糖水1Lと混合させて、一晩つけておいた。アムラ果実を取り出してシロップのみを煮詰め、クエン酸を4g添加しアムラ果実を戻し、一晩おいた。アムラを取り出してシロップを煮詰め、再びアムラ果実を戻して、24時間漬け込む工程を4回繰り返し、糖漬けアムラ(1500g)を得た。
【0022】
<試験例1>−<試験例3>の加工品について、色調、果肉含量、水溶性固形分、pH、可食部100gあたりのポリフェノール含量、ビタミンC含量、食物繊維含量、及びP=0.2の時の復元強度を測定した結果について表3に示した。
【0023】
【表3】

【0024】
<試験例1>のアムラプレパレーションは復元強度0.77と高いため、アムラ果実が本来持っているシャキシャキとした歯ごたえを維持できており、アムラ果実の繊維を感じにくかった。<試験例2>のアムラシロップ煮は復元強度が0.27と小さいため、シャキシャキ感に乏しく、アムラ果実の繊維感が強かった。このため、食後に歯の隙間に繊維が残った。<試験例3>の糖漬けアムラの復元強度は0.48と比較的高い値を示したが、シャキシャキとした食感は無く、果肉がボロボロと崩れるような食感であった。さらに、製造工程中にかかる熱履歴が高く、ビタミンCの減少が見られ、色調も悪かった。また、工程上、水溶性成分の流出が大きいので、ポリフェノール含量が少なかった。
【0025】
<試験例4> 各アムラ果実加工品についての風味官能試験
<試験例1>−<試験例3>で得られたアムラ加工品について、男女合計10名のパネラーによる風味についての官能試験を行った。好ましい(5点)やや好ましい(4点)普通(3点)やや好ましくない(2点)好ましくない(1点)として5点満点による平均点を表4に示した。
【0026】
【表4】

【0027】
<試験例1>のアムラプレパレーションは糖酸バランスがよく、苦味を低減した。無香料にもかかわらず、アムラ本来の香りが活かされており、またアムラの苦味は少し残ることで、後味がすっきりとして、癖になる味がした。<試験例2>のアムラシロップ煮は甘味と苦味のバランスが悪いため、シロップと果肉の一体感が無く、アムラ特有の収斂味が口の中に残った。また、レトルト処理をしているので、レトルト臭が残った。<試験例3>の糖漬けアムラは甘味が強く苦味が消されているが、糖酸バランスが悪く、風味のバランスも悪かった。
【0028】
<試験例5> 各アムラ果実加工品についての食感官能試験
<試験例1>−<試験例3>で得られたアムラ加工品について、男女合計10名のパネラーによる食感についての官能試験を行った。好ましい(5点)やや好ましい(4点)普通(3点)やや好ましくない(2点)好ましくない(1点)として5点満点による平均点を表5に示した。
【0029】
【表5】

【0030】
<試験例1>のアムラプレパレーションは、アムラ果実が本来持っているシャキシャキとした歯ごたえを維持できており、アムラ果実の繊維を感じにくかった。<試験例2>のアムラシロップ煮は、シャキシャキ感に乏しく、アムラ果実の繊維感が強かった。このため、食後に歯の隙間に繊維が残ってしまった。<試験例3>の糖漬けアムラは、シャキシャキとした食感は無く、果肉がボロボロと崩れるような食感であった。
【0031】
<試験例6> 水溶性固形分に関する試験
<試験例1>のアムラ果実一次加工品について、水溶性固形分に関する試験を行った。表1中の砂糖の質量%を変化させた。
実施例1−5として、砂糖の質量%をそれぞれ、20、25、35、40、及び50とした。また、比較例1−4として、砂糖の質量%をそれぞれ、5、10、15、及び60とした。上記各例において、質量%の増減分は、水の質量%を変化させることで補った。
各アムラ果実加工品に関して、食感、果肉感、製造の容易性、及び混合の容易さについて、表6に示した。
【0032】
【表6】

【0033】
このように、実施例1−5では、糖酸バランスがとれており、苦味の低減、良好な食感、及び製造も容易であることがわかった。一方、比較例1、2、3では、苦味、食感が良好とは言えなかった。また、比較例4では、苦味はほぼ無くなったものの、シロップ部が少なく、流動性が低いため製造に困難なことがわかった。なお、従来技術のシロップ漬けでは、60%砂糖含有アムラ加工品(比較例4に該当)であっても、シャキシャキ感に乏しいため、果肉感が少なかった。
【0034】
<試験例7> 果肉含量に関する試験
<試験例1>のアムラ果実一次加工品について、果肉含量に関する試験を行った。表1中のアムラ果実一次加工品の質量%を変化させた。
実施例6−10として、アムラ果実一次加工品の質量%をそれぞれ、10、15、35、40、及び50とした。また、比較例5−8として、アムラ果実一次加工品の質量%をそれぞれ、5、7.5、60、及び65とした。上記各例において、質量%の増減分は、水の質量%を変化させることで補った。
各アムラ果実加工品に関して、食感、果肉感、製造の容易性、及び混合の容易さについて、表7に示した。
【0035】
【表7】

【0036】
このように、実施例6−10では、糖酸バランスがとれており、苦味の低減、良好な食感、及び製造も容易であることがわかった。一方、比較例5、6では、苦味、食感が良好とは言えなかった。また、比較例7、8では、苦味はほぼ無くなったものの、製造に困難なことがわかった。
【0037】
<試験例8> アムラ果実一次加工品の褐変防止効果
アムラ果実一次加工品とブランチング処理せずに水洗、種子を除去したアムラ果実を用いて、褐変防止効果を確認した。アムラ果実一次加工品とアムラ果実を25℃、3日間放置した後、果実から果汁を搾り出し、不要物をフィルターにより除去した。得られた果汁を2.5倍希釈して色差計(日本電色工業(株)製;ZE-2000)を用い色調の変化を比較した。色差計のL値(値が100に近ければ白色が強いことを示し、値が0に近ければ黒色の強いことを示す。)、a 値(値が大きければより赤色が強いことを示し、値が小さければ緑色の強いことを示す。)、およびb 値(値が大きければより黄色が強いことを示し、値が小さければ青色の強いことを示す。)を測定した。結果を表8に示した。
【0038】
【表8】

【0039】
表8から、一次処理したアムラ果実は3日経過してもL、a、b値に変化は見られなかった。一方、ブランチング処理しなかったアムラ果実は3日後に褐変化しており、褐変の程度を表す色調のL 値も90程度に減少した。また、b値が顕著に増加したことから、色調が青色から黄色に変化したことが分かった。さらに、a値が減少したことから、色調が緑色から赤色に変化したことが分かった。
【0040】
アムラには血液の流動性を改善する優れた効果を有するため、血行障害の発生を防止することができ、ひいては冷え性の改善ができる(特許文献3を参照)。アムラの血流促進で寝つきが良くなり(冷え性対策)、アムラ及び、水溶性食物繊維、ペクチンによる食物繊維効果で翌朝の整腸に優れた効果を持つとともに、軽い夜食として、小腹がすいた時にアムラのシャキシャキ食感が満足感を与えてくれる。また、砂糖不使用で、寝る前にも安心して食すことが出来る。
【0041】
<試験例8> ヨーグルトの調製
市販の脱脂乳(明治乳業社製、蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、これを90℃で15分間加熱殺菌した後、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種した。さらに、これを均一に混合し、100mLの容器に分注・充填した後、密封して37℃で20時間発酵させた後、冷却することで、ヨーグルトを得た。
【0042】
<試験例9> 夜食ヨーグルト用アムラ果実加工品の調製
冷凍しておいたアムラ果実一次加工品を一辺が6.4mmの略立方体状に切断し、これに水溶性食物繊維(サンファイバー 太陽化学(株)製)を振りかけてまぶした。アムラ果実が解凍するのを待つことで、解凍に伴うドリップによりサンファイバーを溶解させた。アムラ果実をステンレスのビーカーに入れ、ハチミツ、水、ペクチン、及びクエン酸ナトリウムを添加した後、60℃まで加熱した。その後、レモン果汁を加えて、90℃まで加熱し、5分間の加熱殺菌を行った。撹拌しながら、45℃まで冷却した後、表9に示した所定量まで水分を添加し、カップに充填した。これを冷蔵庫で冷却し、夜食ヨーグルト用アムラ果実加工品を得た。この加工品の水溶性固形分は35、復元強度は0.75で、甘すぎず、シャキシャキ感に富んでいた。
【0043】
【表9】

【0044】
<試験例10> アムラ入りヨーグルトの調製
ヨーグルト80gと<試験例9>で得られたアムラ果実加工品、<試験例2>のアムラシロップ煮と<試験例3>の糖漬けアムラの可食部部分それぞれ20gを混合することで、夜食ヨーグルトを得た。ただし、アムラシロップ煮と糖漬けアムラはドリップが多量に含まれるためヨーグルトに加える際に、ドリップを除いた可食部部分を添加した。
【0045】
<試験例11> 血流改善効果の試験
上記試験例10で調製したアムラ入りヨーグルト及びプレーンヨーグルト100gを食し、4時間後の血液を採血し、血流速度をMC−FANにて測定した。
【0046】
(1)採血方法
真空採血管(テルモ(株)製:ヘパリンナトリウム処理)を用いて、座位安静状態で健常者の肘正中皮静脈より採血を行った。得られた血液(試験血液)は、1mLずつ分注し、測定に使用した。
【0047】
(2)血流速度の測定
血流速度の測定は、MC−FAN(日立原町電子工業製)を用いて行った。また、血液を通過させる血管モデルの微細加工流路として、流路の深さ4.5μm、深さの中央部の流路幅7μm、流路長30μmの微細な溝を形成する8736本並列のマイクロチャネルアレイが配置されているシリコン単結晶基板(Bloody6−7;日立原町電子工業製)を用いた。そして、血液100μLを20cm水柱差で流し、全血通過時間を血流通過時間として測定した。これと同時に、血液が流れる様子を顕微鏡−ビデオカメラのシステムで撮影記録した。測定値は、全て3回測定したものの平均値を用いた。得られた血流通過時間は、生理食塩水100μLが通過するのに要した時間を12秒として補正した。そしてこの補正値に基づいて血流速度(μL/秒)を計算により求めた。その結果を表10に示した。
【0048】
【表10】

【0049】
(3)結果及び考察
本実施形態のアムラ果実加工品を加えないコントロールでは、血流速度が1.34μL/秒であったのに対し、本発明のアムラ果実加工品及びアムラシロップ煮、糖漬けアムラを加えた試験区では、血流速度がそれぞれ2.59μL/秒、1.72μL/秒、1.42μL/秒であった。アムラシロップ煮、糖漬けアムラの血流速度がコントロールと差異がなかったのは、ドリップの中にアムラ果実の有効成分が溶出してしまったために血流改善効果が確認されなかった。つまり、アムラ果実加工品はヨーグルトに添加した状態でも血流改善効果があり、色、風味、食感が優れ、機能性成分を余すことなく摂取できる、今までに無かった最良の形態である。
【0050】
<試験例12> 冷え性改善効果と整腸作用の確認試験
日頃、手足の冷えを感じている女性6人を被験者として、1ヶ月間、アムラ果実加工品入りヨーグルトもしくはプレーンヨーグルト(プラセボ)を毎晩100gずつ摂取させた。1ヶ月後、「手先の温かさ」、「足先の温かさ」、「便通」、「お腹の調子」の項目についてモニター試験を行った。モニターの評価基準として、好ましい(+2点)やや好ましい(+1点)普通(0点)やや好ましくない(−1点)好ましくない(−2点)とした。冷え性改善効果と整腸作用についてそれぞれ表11、12に示した。
【0051】
別の月に、同じ被験者に対して、アムラ果実加工品入りヨーグルトとプレーンヨーグルト(プラセボ)を入れ替えて、同様にモニター試験を行った。
【0052】
【表11】

【0053】
【表12】

【0054】
アムラ果実加工品を食することにより、冷え性の改善効果、整腸作用が確認された。また、整腸作用に関してはヨーグルトとアムラ果実加工品の組み合わせることでの相乗効果が確認された。
【0055】
<応用例>
次に、本実施形態のアムラ果実加工品をデザート用プレパレーション、飲料、製菓・製パンなどに応用する際の具体例と、その特徴について、表13にまとめた。
【0056】
【表13】

【0057】
なお、上記表によっては、本実施形態のアムラ果実加工品の応用例は限定されない。
このように、本実施形態によれば、苦味・酸味が低減され、無香料でも美味しいアムラ果実加工品が提供できた。また、ポリフェノール、ビタミンC、食物繊維が大きく損なわれることなく、様々な食品のプレパレーションなどに応用することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラ果実加工品の果肉の復元強度が0.5−1.0、100gあたりのポリフェノール含量が100mg−3000mg、食物繊維含量が0.1%−5%であることを特徴とするアムラ果実加工品。
【請求項2】
水溶性固形分が25%−60%、pHが3.0−4.5であることを特徴とする請求項1記載のアムラ果実加工品。
【請求項3】
前記アムラ果実加工品の果肉含量が、10%−50%であることを特徴とする請求項1または2記載のアムラ果実加工品。
【請求項4】
前記アムラ果実加工品は、デザート用プレパレーション及び製菓・製パン及び飲料に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のアムラ果実加工品。
【請求項5】
製造工程においては、ゲル化剤及び/または増粘剤を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のアムラ果実加工品。
【請求項6】
製造工程においては、pH調整に酸及び/又はアルカリ塩を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のアムラ果実加工品。
【請求項7】
アムラ果実を加熱するブランチング処理、表皮を除去および水洗する処理、およびアムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割って種子を除去する種子除去処理を経た後、凍結したことを特徴とするアムラ果実一次加工品。
【請求項8】
請求項7に記載のアムラ果実一次加工品を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のアムラ果実加工品。