説明

アラビノキシラン及びα−グルカンを含む飲料

【課題】コクが効果的に高められた飲料を提供する。
【解決手段】500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンとを含む。前記アラビノキシランは、分子量が9000Da以上である。また、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラビノキシラン及びα−グルカンを含む飲料に関し、特に、アラビノキシラン及びα−グルカンの含有量が高い飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物繊維を含有する飲料が提案されている。例えば、特許文献1には、発酵アルコール飲料の製造方法において、原料中のβ−グルカンをできるだけ残存させつつ、高い麦汁濾過性を得るために、当該原料にヘミセルラーゼ活性の高い繊維質分解酵素を作用させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−083239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、食物繊維が飲料のコクに与える影響については、十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、コクが効果的に高められた飲料を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料は、500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンとを含むことを特徴とする。本発明によれば、コクが効果的に高められた飲料を提供することができる。
【0007】
また、前記飲料において、前記アラビノキシランは、分子量が9000Da以上のアラビノキシランを含むこととしてもよい。
【0008】
また、前記いずれかの飲料は、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含むこととしてもよい。この場合、前記β−グルカンは、分子量が1000Da以下のβ−グルカンを含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コクが効果的に高められた飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、飲料におけるアラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量と、当該飲料のコクとを評価した結果の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る実施例において、飲料に含まれるアラビノキシランの分子量分布を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る実施例において、飲料に含まれるβ−グルカンの分子量分布を評価した結果の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例において、飲料におけるアラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量と、当該飲料のコクとを評価した結果の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0012】
本実施形態に係る飲料(以下、「本飲料」という。)は、500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンとを含む飲料である。なお、1ppmは、1×10−6g/g−飲料(0.0001wt%、約0.001g/L−飲料)を示す。
【0013】
本飲料において、アラビノキシランの含有量は、500ppm以上であれば特に限られないが、例えば、800ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。なお、本飲料におけるアラビノキシランの含有量の上限値は特に限られないが、当該アラビノキシランの含有量は、例えば、5000ppm以下であることとしてもよい。
【0014】
本飲料に含まれるアラビノキシランは、分子量が9000Da以上のアラビノキシラン(以下、「高分子量アラビノキシラン」という。)を含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のアラビノキシランを含み、当該アラビノキシランは、高分子量アラビノキシランを含むこととなる。
【0015】
高分子量アラビノキシランの分子量の上限値は特に限られないが、当該高分子量アラビノキシランは、例えば、分子量が9000Da以上、25000Da以下のアラビノキシランであることとしてもよい。
【0016】
本飲料は、高分子量アラビノキシランを80ppm以上含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のアラビノキシランを含み、当該アラビノキシランは、高分子量アラビノキシランを80ppm以上含むこととなる。また、本飲料は、高分子アラビノキシランを100ppm以上含むこととしてもよい。本飲料における高分子量アラビノキシランの含有量の上限値は特に限られないが、当該高分子量アラビノキシランの含有量は、例えば、500ppm以下であることとしてもよい。
【0017】
また、本飲料に含まれるアラビノキシランの含有量に対する高分子量アラビノキシランの割合は、5重量%以上であることとしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のアラビノキシランを含み、当該アラビノキシランの含有量に対する高分子量アラビノキシランの含有量の割合は、5重量%以上であることとなる。
【0018】
本飲料に含まれるアラビノキシランは、分子量が5000Da以下のアラビノキシラン(以下、「低分子量アラビノキシラン」という。)をさらに含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のアラビノキシランを含み、当該アラビノキシランは、高分子量アラビノキシラン及び低分子量アラビノキシランを含むこととなる。
【0019】
低分子量アラビノキシランは、分子量が3000Da以下のアラビノキシランであることとしてもよい。低分子量アラビノキシランの分子量の下限値は特に限られないが、当該低分子量アラビノキシランは、例えば、分子量が300Da以上、5000Da以下のアラビノキシランであることとしてもよい。
【0020】
本飲料において、α−グルカンの含有量は、23000ppm以上であれば特に限られないが、例えば、24000ppm以上であることが好ましい。なお、本飲料におけるα−グルカンの含有量の上限値は特に限られないが、当該α−グルカンの含有量は、例えば、40000ppm以下であることとしてもよい。
【0021】
本飲料は、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンと、500ppm以上のβ−グルカンとを含むこととなる。
【0022】
本飲料において、β−グルカンの含有量は、500ppm以上であれば特に限られないが、例えば、800ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。なお、本飲料におけるβ−グルカンの含有量の上限値は特に限られないが、当該β−グルカンの含有量は、例えば、10000ppm以下であることとしてもよい。
【0023】
本飲料に含まれるβ−グルカンは、分子量が1000Da以下のβ−グルカン(以下、「低分子量β−グルカン」という。)を含むこととしてもよい。この場合、飲料は、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含み、当該β−グルカンは、低分子量β−グルカンを含むこととなる。
【0024】
低分子量β−グルカンの分子量の下限値は特に限られないが、当該低分子量β−グルカンは、例えば、分子量が300Da以上、1000Da以下のβ−グルカンであることとしてもよい。低分子量β−グルカンは、例えば、分子量が900Da以下のβ−グルカンであることとしてもよい。
【0025】
本飲料は、低分子量β−グルカンを300ppm以上含むこととしてもよい。この場合、本飲料は、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含み、当該β−グルカンは、低分子量β−グルカンを300ppm以上含むこととなる。また、本飲料は、低分子量β−グルカンを500ppm以上含むこととしてもよい。本飲料における低分子量β−グルカンの含有量の上限値は特に限られないが、当該低分子量β−グルカンの含有量は、例えば、6000ppm以下であることとしてもよい。
【0026】
また、本飲料に含まれるβ−グルカンの含有量に対する低分子量β−グルカンの割合は、60重量%以上であることとしてもよく、80重量%以上であることが好ましい。この場合、本飲料は、例えば、500ppm以上のβ−グルカンを含み、当該β−グルカンの含有量に対する低分子量β−グルカンの含有量の割合は、60重量%以上であることとなる。
【0027】
本飲料の粘度は、特に限られないが、例えば、2.0mPa・s以下であることとしてもよい。すなわち、本飲料の粘度は、従来一般的な飲料と同程度である。すなわち、例えば、本飲料がβ−グルカンを含む場合、当該β−グルカンが所定割合以上の低分子量β−グルカンを含むことにより、本飲料の粘度が過剰に増加することはない。
【0028】
本飲料は、上述のような特性を備えた飲料であれば特に限られない。すなわち、本飲料は、例えば、発泡性飲料又は非発泡性飲料であることとしてもよい。本発明において、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有し、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性と、を含む泡特性を有する飲料である。非発泡性飲料は、このような泡特性を有しない飲料である。
【0029】
また、本飲料は、例えば、アルコール飲料又はノンアルコール飲料であることしてもよい。本発明において、アルコール飲料は、例えば、エタノールを1体積%以上の濃度で含有する(アルコール分1度以上の)飲料である。この場合、ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の飲料である。
【0030】
また、本飲料は、発泡性アルコール飲料又は発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料及び発泡性ノンアルコール飲料は、それぞれ上述したような泡特性を有するアルコール飲料及びノンアルコール飲料である。
【0031】
発泡性アルコール飲料は、例えば、ビール、発泡酒、及びビール又は発泡酒と蒸留酒等の他のアルコール飲料とを混合して得られる発泡性アルコール飲料からなる群より選択されることとしてもよい。
【0032】
また、本飲料は、例えば、原料の一部として大麦原料を使用して製造された飲料であることとしてもよい。この場合、本飲料は、例えば、原料の一部として大麦原料を使用して製造された発泡性飲料であることとしてもよく、原料の一部として大麦原料を使用して製造されたアルコール飲料であることとしてもよく、原料の一部として大麦原料を使用して製造された発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。なお、これらの場合、大麦原料は、例えば、大麦麦芽及び/又は大麦(発芽させていない大麦)を含むこととしてもよい。
【0033】
本飲料は、上述のように高濃度でアラビノキシラン及びα−グルカンを含むことにより、優れたコクを有する飲料である。すなわち、本発明の発明者らは、食物繊維が飲料のコクに与える影響について鋭意検討を重ねた結果、飲料において、所定濃度以上のアラビノキシランと、所定濃度以上のα−グルカンという特定の組み合わせを実現することにより、当該飲料のコクが顕著に高められることを独自に見出した。また、発明者らは、飲料がさらに所定濃度以上のβ−グルカンを含むことにより、当該飲料のコクがより顕著に高められることも独自に見出した。
【0034】
次に、本飲料の製造方法(以下、「本方法」という。)について説明する。本方法は、飲料において、上述したアラビノキシランとα−グルカンとの特有の組み合わせ、又はアラビノキシランとα−グルカンとβ−グルカンとの特有の組み合わせを実現できる方法であれば特に限られない。
【0035】
すなわち、本飲料が発泡性飲料である場合、本方法は、例えば、酵母が資化可能な炭素源及び窒素源を含む原料を使用して発酵前液を調製する発酵前工程と、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程とを有することとしてもよい。
【0036】
この場合、発酵前工程で準備する原料は、酵母が資化可能な炭素源(発酵性糖)及び窒素源(アミノ酸等)を含むものであれば特に限られないが、例えば、大麦原料を含むこととしてもよい。大麦原料は、例えば、大麦麦芽及び/又は大麦を含むこととしてもよい。なお、大麦麦芽は、適切な温度で、酸素の存在下、大麦に適切な量の水分を浸み込ませ、発芽させることにより、調製することができる。
【0037】
大麦麦芽及び大麦の種類は特に限られないが、大麦としては、例えば、乾燥重量あたり5重量%以上のβ−グルカンを含む大麦(以下、「高β−グルカン大麦」という。)を好ましく使用することができる。高β−グルカン大麦は、例えば、乾燥重量あたり5重量%以上、20重量%以下のβ−グルカンを含有する大麦であることとしてもよい。
【0038】
なお、ビール等の発泡性アルコール飲料の製造に使用される通常の大麦麦芽は、β−グルカンの含有量が高いものであっても、乾燥重量あたり3重量%〜5重量%のβ−グルカンを含有するに過ぎない。
【0039】
高β−グルカン大麦としては、高β−グルカン裸麦及び/又は高β−グルカン皮麦を使用することができ、穀皮を有しないことにより効率的な成分抽出等の利点が得られる高β−グルカン裸麦を好ましく使用することができる。
【0040】
大麦としては、高β−グルカン大麦ではない大麦を使用することとしてもよく、高β−グルカン大麦ではない大麦と高β−グルカン大麦とを組み合わせて使用することとしてもよい。
【0041】
また、大麦麦芽としては、高β−グルカン大麦ではない大麦の麦芽を使用することとしてもよく、高β−グルカン大麦を発芽させることにより調製された高β−グルカン大麦麦芽を使用することとしてもよく、これらを組み合わせて使用することとしてもよい。
【0042】
大麦原料が高β−グルカン大麦を含む場合、発酵前液の原料に占める当該高β−グルカン大麦の割合は、特に限られないが、例えば、当該原料は、5〜95重量%の当該高β−グルカン大麦と含むこととしてもよく、35〜80重量%の当該高β−グルカン大麦を含むことが好ましい。
【0043】
さらに、大麦原料が大麦麦芽と高β−グルカン大麦とを含む場合、発酵前液の原料に占める当該大麦麦芽及び当該高β−グルカン大麦の割合は、特に限られないが、例えば、当該原料は、5〜95重量%の当該大麦麦芽及び5〜95重量%の当該高β−グルカン大麦を含むこととしてもよく、20〜65重量%の当該大麦麦芽及び35〜80重量%の当該高β−グルカン大麦を含むことが好ましい。
【0044】
また、大麦原料が高β−グルカン大麦麦芽及び高β−グルカン大麦を含む場合、発酵前液の原料に占める当該高β−グルカン大麦麦芽及び当該高β−グルカン大麦の割合は、特に限られないが、例えば、当該原料は、5〜95重量%の当該高β−グルカン大麦麦芽及び5〜95重量%の当該高β−グルカン大麦を含むこととしてもよく、35〜65重量%の当該β−グルカン大麦麦芽及び35〜65重量%の当該高β−グルカン大麦を含むことが好ましい。
【0045】
発酵前工程において、大麦原料を含む原料を使用して発酵前液を調製する場合には、当該大麦原料に、β−グルカン分解酵素及びデンプン分解酵素による酵素処理を施すこととしてもよい。
【0046】
β−グルカン分解酵素としては、β−グルカンを分解できる酵素であれば特に限られず、例えば、β−グルカナーゼを好ましく使用することができる。β−グルカン分解酵素としては、大麦原料に対して外的に添加できるものを使用することとしてもよく、微生物により生成されたものを使用することとしてもよい。
【0047】
デンプン分解酵素としては、デンプンを分解できる酵素であれば特に限られず、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ及びリミットデキストリナーゼからなる群より選択される1種以上を好ましく使用することができる。デンプン分解酵素としては、大麦原料に対して外的に添加できるものを使用することとしてもよく、微生物により生成されたものを使用することとしてもよい。
【0048】
また、大麦原料が大麦麦芽及び高β−グルカン大麦を含む場合、β−グルカン分解酵素の使用量は、当該大麦麦芽及び高β−グルカン大麦に含まれるβ−グルカンを分解できる範囲であれば特に限られないが、例えば、当該高β−グルカン大麦あたり0.3U/g以上であることとしてもよく、1.0U/g以上であることとしてもよく、2.0U/g以上であることとしてもよい。また、β−グルカン分解酵素の使用量は、高β−グルカン大麦あたり0.3U/g以上、20U/g以下であることとしてもよく、1.0U/g以上、20U/g以下であることが好ましい。
【0049】
酵素処理は、大麦原料をβ−グルカン分解酵素及びデンプン分解酵素と接触させつつ当該酵素が作用する温度で維持することにより実施することができる。すなわち、酵素処理は、例えば、大麦原料と、β−グルカン分解酵素と、デンプン分解酵素と、水とを混合し、得られた混合液を50〜90℃で維持することにより実施することができる。
【0050】
なお、発酵前液の原料は、ホップを含むこととしてもよい。すなわち、発酵前工程においては、例えば、大麦原料とホップとを含む原料を使用して発酵前液を調製することとしてもよい。
【0051】
発酵工程においては、発酵前工程で調製された発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。すなわち、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0〜40℃の範囲)に調整された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。発酵開始時の発酵液における酵母数は適宜調節することができ、例えば、1×10cells/mL〜3×10cells/mLの範囲内とする。
【0052】
次いで、この発酵液を所定の温度で所定の時間維持することにより発酵を行う。発酵の温度は適宜調節することができ、例えば、0〜40℃の範囲内とすることができ、6〜15℃の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
【0054】
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び香味成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度は、例えば、1〜20体積%とすることができ、好ましくは1〜10体積%とすることができ、より好ましくは3〜10体積%とすることができる。
【0055】
このような発酵前工程及び発酵工程を有する本方法によって、発泡性飲料である本飲料を好ましく製造することができる。すなわち、本方法において、大麦麦芽を含む原料を使用して発泡性アルコール飲料を製造する場合には、本飲料は、ビール又は発泡酒である。
【0056】
また、本方法において、ビール又は発泡酒と、蒸留酒等の他のアルコール飲料とを混合して発泡性アルコール飲料を製造することもできる。この場合、本方法においては、例えば、上述のようにして得られたビール又は発泡酒と、他のアルコール飲料とを混合する。
【0057】
他のアルコール飲料は、特に限られないが、蒸留酒(いわゆるスピリッツ)を好ましく使用することができる。蒸留酒としては、例えば、穀物(大麦、小麦、米、蕎麦、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ、サトウキビ等)を原料として製造され、エタノールを10〜90体積%含むものを好ましく使用することができる。
【0058】
また、本方法においては、発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。すなわち、本方法においては、例えば、上述のようにして得られた発泡性アルコール飲料に含まれるエタノールの濃度を低減する処理及び/又は当該発泡性アルコール飲料からエタノールを除去する処理を行うことにより、発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。
【0059】
また、本方法は、予め製造された飲料に、少なくともアラビノキシラン及びα−グルカンを外的に添加することにより、500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンとを少なくとも含む飲料を製造する方法であることとしてもよい。
【0060】
予め製造された飲料は、少なくともアラビノキシラン及びα−グルカンを外的に添加できるものであれば特に限られず、例えば、上述のようなアルコール発酵を経て製造された発泡性飲料(発泡性アルコール飲料又は発泡性ノンアルコール飲料)を好ましく使用することができる。
【0061】
添加するアラビノキシラン及びα−グルカンは、飲料に対して外的に添加できるよう調製されたものであれば特に限られない。アラビノキシランとしては、上述した高分子量アラビノキシランを含むものを好ましく使用することができる。
【0062】
また、本方法においては、予め製造された飲料に、さらにβ−グルカンを外的に添加することにより、500ppm以上のβ−グルカンをさらに含む飲料を製造することとしてもよい。
【0063】
この場合、添加するβ−グルカンは、飲料に対して外的に添加できるよう調製されたものであれば特に限られないが、上述した低分子量β−グルカンを含むものを好ましく使用することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0065】
[飲料の製造]
高β−グルカン大麦麦芽ではない大麦麦芽を48重量%、及び副原料として高β−グルカン裸麦を52重量%含む大麦原料を使用して発泡性アルコール飲料である本飲料を製造した。すなわち、まず、2Lの湯(50℃)に、259gの大麦麦芽(原料あたり47.3重量%)、281gの高β−グルカン裸麦(原料あたり51.4重量%)、0.56gの市販のβ−グルカナーゼ(4.15U/g−高β−グルカン裸麦)、0.04gの市販のα−アミラーゼを添加して原料液を調製した。
【0066】
次いで、原料液を順次50℃で30分、65℃で60分、及び75℃で3分維持するインフュージョン法により、酵素処理を含む仕込みを実施し、5Lの麦汁を得た。そのうち3.5Lの麦汁に対して7gのホップペレットを添加し、煮沸を行った。
【0067】
煮沸後の冷却した麦汁(発酵前液)に下面醗酵酵母を1.0%(w/v)添加して発酵液を調製した。この発酵液を使用して前発酵を行い、その後、さらに熟成を行うことで、最終的に、約5体積%のエタノールを含む発泡性アルコール飲料である本飲料を得た。
【0068】
[α−グルカン及びβ−グルカンの定量]
上述のようにして製造した本飲料の一部をサンプルとして使用し、当該発泡性アルコール飲料に含まれるα−グルカン及びβ−グルカンを定量した。すなわち、サンプル中のα−グルカン及びβ−グルカンをそれぞれ酵素で加水分解し、生じたグルコースをグルコースオキシダーゼ反応及び比色法により定量し、最終的に、加水分解による水の増加分に基づく補正を行って、本飲料におけるα−グルカン及びβ−グルカンの含有量を算出した。
【0069】
具体的に、まず、サンプルに下面発酵酵母を5%(w/v)添加し、20℃で18時間振とうすることにより、当該サンプル中の遊離グルコースを当該酵母に消費させた。そして、酵素法により、サンプル中のα−グルカンをグルコースに分解した。すなわち、376μLのサンプル又は376μLの蒸留水(対照)に8μLの市販の耐熱性α−アミラーゼを添加し、得られた混合液を95℃で30分間インキュベートした。
【0070】
次に、8μLの市販のプロテアーゼを添加し、得られた混合液を60℃で30分インキュベートした。さらに、8μLの市販のアミログルコシダーゼを添加し、得られた混合液を60℃で30分間インキュベートした。こうしてサンプル中のα−グルカンをグルコースに分解した。
【0071】
また、β−グルカン分解酵素、グルコース標準液及びグルコース定量試薬を含む市販のβ−グルカン定量キット(Mixed−linkage beta−glucan assay kit K−BGLU、Megazayme社製)を使用した酵素法により、サンプル中のβ−グルカンをグルコースに分解した。
【0072】
すなわち、900μLのサンプル又は900μLの蒸留水(対照)に、100μLのリケナーゼ(上記キット内の試薬)を添加し、得られた混合液を40℃で5分間インキュベートした。次に、この混合液の一部(100μL)に100μLのβ−グルコシダーゼ(上記キット内の試薬)を添加し、得られた混合液を40℃で15分間インキュベートした。こうしてサンプル中のβ−グルカンをグルコースに分解した。
【0073】
次に、蒸留水を使用して、上述のα−グルカンの分解により得られたサンプルを80倍に希釈するとともに、上述のβ−グルカンの分解により得られたサンプルを2倍に希釈した。希釈したそれぞれのサンプル40μLに、900μLのGOPOD試薬(上記キット内の試薬)を添加し、得られた混合液を40℃で20分間インキュベートした。反応後のサンプルを96穴マイクロプレートの各ウェルに250μLずつ移し、市販のマイクロプレートリーダーを使用して、当該サンプルの505nmの吸光度を測定した。
【0074】
一方、グルコース標準液(上記キット内の試薬)を蒸留水で希釈して、グルコースを250ppm、500ppm又は750ppm含むグルコース溶液を調製し、上述の場合と同様にGOPOD試薬による反応を行った。マイクロプレートリーダーを使用して、反応後の各グルコース溶液の505nmの吸光度を測定し、検量線を作成した。
【0075】
そして、得られた検量線と、上述のように測定されたサンプルの吸光度とに基づいて、グルコース濃度を算出した。さらに、この算出値を、サンプルの希釈倍率と加水分解による水の生成量とにより補正して、すなわち、次の式「α−グルカン又はβ−グルカンの含有量=算出されたグルコース濃度×希釈率×加水分解補正(162/180)」により、本飲料中のα−グルカン含有量及びβ−グルカン含有量を算出した。
【0076】
[アラビノキシランの定量]
上述のようにして製造した本飲料の一部をサンプルとして使用し、当該本飲料に含まれるアラビノキシランを定量した。すなわち、サンプル、及び市販の小麦由来アラビノキシラン(300kDa P−WAXYM、Megazyme社製)を含む標準液のそれぞれに含まれるアラビノキシランを酵素で加水分解し、加水分解後の当該サンプル及び標準液中のキシロース含有量を測定し、当該測定値に基づいて当該サンプル中のアラビノキシラン含有量を算出した。
【0077】
具体的に、まず、上述のα−グルカン及びβ−グルカンの場合と同様に、サンプルに酵母を添加してインキュベートすることにより、当該酵母に当該サンプル中の発酵性糖を消費させた。
【0078】
次に、サンプルの一部(10μL)に、10μLの8Mトリフルオロ酢酸を添加し、得られた混合液を、市販のサーマルサイクラーを使用して、100℃で3時間インキュベートすることにより、当該サンプル中の非発酵性糖を加水分解した。さらに、加水分解後のサンプルに、内部標準として1mMラムノースを10μL添加し、減圧濃縮により乾燥固化した。
【0079】
乾燥固化物を40μLの2−プロパノールで洗浄後、再度減圧濃縮し、40μLのピリジン/メタノール溶液(ピリジン:メタノール=1:9(体積比))に溶解した。さらに、10μLの無水酢酸を添加し、遮光して室温で30分間置き、N−アセチル化反応を行った。反応後のサンプルを、上述の場合と同様に乾燥固化した。
【0080】
乾燥固化物を10μLの蒸留水に再溶解し、さらに40μLの4−アミノ安息香酸エチルエステル(ABEE)化試薬(40081、生化学バイオビジネス社)を加え、80℃で60分間インキュベートし、ABEE誘導化反応を行った。反応後のサンプルに200μLの蒸留水と200μLのクロロホルムとを添加し、得られた混合液を20400×gで2分間遠心し、水相(上層)を回収した。
【0081】
一方、キシロースを0.5〜16mMの濃度で含む標準液を調製し、ラムノースを添加後、上述の場合と同様にして、N−アセチル化反応及びABEE誘導化を行い、水相を回収した。
【0082】
これら回収された水相を40℃で10分間維持することで、クロロホルムを蒸発させ除去した。こうして得られたサンプルをバイアルに移し、次の条件で蛍光HPLC分析を行った。
【0083】
すなわち、サンプルの注入量は5μLとした。カラムとしては、Honenpack C18(75mm×4.6mm、J−オイルミルズ社製)を使用し、当該カラムの温度は30℃に維持した。
【0084】
また、HPLCにおいて、A液として0.2Mほう酸カリウム緩衝液(pH8.9)とアセトニトリルとの混合液(93:7)、B液として0.02%トリフルオロ酢酸とアセトリニルとの混合液(1:1)を使用し、流速1mL/分にて、0〜32分はA液(分析)、32〜37分はB液(洗浄)、及び37〜47分はA液(平衡化)を流した。また、検出において、励起波長は305nm、蛍光波長は360nmとした。
【0085】
このような蛍光HPLC分析により得られたクロマトグラムにおける各ピーク面積の積分値を、付属ソフトウェアを使用して算出し、標準液の分析結果との比較から、サンプル中のキシロース濃度を算出した。
【0086】
また、発泡性アルコール飲料中の遊離キシロースの含有量を差し引くため、上述の加水分解処理を省いて対照サンプルを調製し、上述の場合と同様に、当該対照サンプル中のキシロース含有量を求めた。
【0087】
そして、加水分解により増加したキシロース含有量が、本飲料中のアラビノキシランに由来するものと仮定して、標準液の加水分解により生じたキシロース含有量との比較により、当該本飲料中のアラビノキシラン含有量を算出した。
【0088】
[市販の飲料]
比較の対照として、市販の発泡性アルコール飲料を準備した。すなわち、市販のビール(大麦麦芽使用比率67%以上)、市販の発泡酒(大麦麦芽使用比率67%未満)、及び発泡酒とスピリッツとを混合して製造された市販の発泡性アルコール飲料をそれぞれ準備した。そして、各飲料の一部をサンプルとして使用して、上述の場合と同様に、当該飲料中の、α−グルカン、β−グルカン及びアラビノキシランの含有量を算出した。
【0089】
[旨味及びコクの評価]
市販の味覚センサー(SA402B、インセント社製)を使用して、市販のビール、市販の発泡酒、発泡酒とスピリッツとを混合して製造された市販の発泡性アルコール飲料及び上述のようにして製造した本飲料の旨味及びコクを評価した。すなわち、ガス抜きした各飲料100mLをサンプルとして使用して、味覚センサーの測定を行い、得られたデータを専用の解析ソフトウェアにより解析した。
【0090】
図1には、飲料におけるアラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量と、当該飲料のコクとを評価した結果を示す。実施例1−1は本飲料、比較例1−1は市販のビール、比較例1−2は市販の発泡酒、比較例1−3は発泡酒とスピリッツとを混合して製造された市販の発泡性アルコール飲料の結果をそれぞれ示す。
【0091】
図1に示すように、市販の発泡性アルコール飲料において、アラビノキシラン含有量は350ppm以下、α−グルカン含有量は20800ppm以下、β−グルカン含有量は380ppm以下であった。
【0092】
これに対し、本飲料においては、アラビノキシラン含有量は1310ppmであり、α−グルカン含有量は24700ppmであり、β−グルカン含有量は1860ppmであった。すなわち、本飲料は、アラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの全ての含有量が、市販の発泡性アルコール飲料のそれに比べて顕著に大きかった。
【0093】
そして、図1に示すように、味覚センサーによるコクを評価した結果(図1の「味覚センサー(コク)」欄)、市販のビールの評価点数を「0.00」とした場合、市販の発泡酒の評価点数は「−0.68」であり、発泡酒とスピリッツとを混合して製造された市販の発泡性アルコール飲料の評価点数は「−0.41」であり、いずれも市販のビールと比較してコクが少ないと評価された。これに対し、本飲料の評価点数は「0.46」であった。すなわち、本飲料は、いずれの市販の発泡性アルコール飲料に比べても、顕著なコクを有するものと評価された。
【0094】
[アラビノキシラン及びβ−グルカンの分子量分布]
本飲料の一部をサンプルとして使用し、当該本飲料に含まれるアラビノキシラン及びβ−グルカンの分子量分布を分析した。まず、サンプルの前処理を行った。すなわち、サンプルに下面発酵酵母を5%(w/v)添加し、20℃で18時間振とうすることにより、当該酵母に当該サンプル中の遊離グルコースを消費させた。その後、サンプルを遠心し、遠心後の上清を回収し、当該上清を0.45μmフィルターによりろ過した。
【0095】
次に、ゲルろ過クロマトグラフィーを実施した。すなわち、ゲルろ過カラムへのイオン性物質の吸着を防ぐ目的で、2mLのサンプルに0.5gの市販の脱イオン用イオン交換樹脂を加えて、室温で30分間往復振とうした。振とう後、サンプルを数分間静置した。
【0096】
サンプルの上清を0.45μmフィルターでろ過後、ゲルろ過カラム(Superdex peptide 10/300GL、GEヘルスケア・ジャパン社製)を使用したゲルろ過クロマトグラフィーを実施した。
【0097】
溶離液としては10mM Tris−HCl(pH7.0)を使用し、FPLC(AKTA purifier、GEヘルスケア・ジャパン社製)を使用して、流速0.5mL/分で溶出液を250μLずつ分画して採取した。
【0098】
次に、採取された各フラクション中のβ−グルカンに由来するグルコースを定量した。市販のβ−グルカン定量キット(Mixed−linkage beta−glucan assay kit、K−BGLU、Megazayme社製)内のリケナーゼとβ−グルコシダーゼとを1:5の比率で混合し、得られた混合液を96連PCRプレートの各ウェル(容量200μL)に60μLずつ分注した。
【0099】
さらに各ウェル中の混合液にいずれかのフラクション100μL又は蒸留水100μL(対照)を添加し、各ウェルにゴム製のシールで蓋をして、市販のPCRサーマルサイクラーを使用して、40℃で30分間インキュベートした。
【0100】
反応終了後、各ウェル中の溶液を10μLずつ採取し、新しい96穴マイクロプレートの各ウェルに移した。この各ウェル中の溶液に、40℃のGOPOD試薬(上記キット内の試薬)を200μL添加した。一方、他のウェルに、250ppm、500ppm又は750ppmの濃度でグルコースを含む標準液を10μLずつ添加し、同様にGOPOD試薬を添加した。96穴マイクロプレートをラップで包み、40℃で20分間インキュベートした。
【0101】
その後、市販のマイクロプレートリーダーを使用して、各ウェル内の溶液の505nmの吸光度を測定した。そして、測定された吸光度と、同様に測定されたグルコース標準液の吸光度とに基づき、グルコース濃度を算出した。
【0102】
また、採取された各フラクション中のアラビノキシランに由来するキシロースを定量した。すなわち、上述のようにして採取された各フラクションの一部(10μL)に、10μLの8Mトリフルオロ酢酸を添加し、得られた混合液を市販のサーマルサイクラーを使用して、100℃で3時間インキュベートし、当該各フラクション中のアラビノキシランを加水分解した。加水分解後のサンプルに、内部標準として1mMラムノースを10μL添加し、減圧濃縮により乾燥固化した。
【0103】
乾燥固化物を40μLの2−プロパノールで洗浄後、再度減圧濃縮し、40μLのピリジン/メタノール溶液(ピリジン:メタノール=1:9(体積比))に溶解した。さらに、10μLの無水酢酸を添加後、遮光して室温に30分間置き、N−アセチル化反応を行った。反応後のサンプルを、上述の場合と同様に乾燥固化した。
【0104】
その後、乾燥固化物を10μLの蒸留水に再溶解し、さらに40μLの4−アミノ安息香酸エチルエステル(ABEE)化試薬(40081、生化学バイオビジネス社製)を添加し、80℃で60分間インキュベートし、ABEE誘導化反応を行った。
【0105】
反応後のサンプルに200μLの蒸留水と200μLのクロロホルムとを添加し、20400×gで2分間遠心し、水相(上層)を回収した。一方、キシロース標準液を調製し、内部標準のラムノースを添加した後、上述の場合と同様にして、N−アセチル化反応及びABEE誘導化を行い、水相を回収した。これら回収された水相を40℃で10分間維持することで、クロロホルムを蒸発させ除去した。その後、次の条件でサンプルの蛍光HPLC分析を行った。
【0106】
すなわち、サンプルの注入量は5μLとした。カラムとしては、Honenpack C18(75mm×4.6mm、J−オイルミルズ社製)を使用し、当該カラムの温度は30℃に維持した。
【0107】
また、HPLCにおいて、A液として0.2Mほう酸カリウム緩衝液(pH8.9)とアセトニトリルとの混合液(93:7)、B液として0.02%トリフルオロ酢酸とアセトリニルとの混合液(1:1)を使用し、流速1mL/分にて、0〜32分はA液(分析)、32〜37分はB液(洗浄)、及び37〜47分はA液(平衡化)を流した。また、検出において、励起波長は305nm、蛍光波長は360nmとした。
【0108】
このような蛍光HPLC分析により得られたクロマトグラムにおける各ピーク面積の積分値を、付属ソフトウェアを使用して算出し、標準液の分析結果との比較から、サンプル中のキシロース濃度を算出した。そして、各ピーク面積の積分値と、標準液を使用して同様に得られた結果との比較に基づき、各フラクション中のキシロース含有量を算出した。
【0109】
図2には、上述のようにして本飲料に含まれるアラビノキシランの分子量分布を評価した結果を示す。図2において、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーで得られた各フラクションに割り当てられた番号(フラクション番号)を示し、縦軸は、当該各フラクションに含まれているアラビノキシランに由来するキシロースの濃度(mg/mL)を示す。
【0110】
図2に示すように、本飲料は、フラクション番号30付近の第一のピークに係る分子量が比較的大きな高分子量アラビノキシランと、フラクション番号60付近の第二のピークに係る分子量が比較的小さな低分子量アラビノキシランとを含むことが確認された。高分子量アラビノキシランの分子量は9600〜20000Daであり、低分子量アラビノキシランの分子量は800〜1200Daであった。
【0111】
また、第一のピークの面積に基づき、本飲料におけるアラビノキシランの含有量に対する高分子量アラビノキシランの含有量の割合は、約8重量%であると算出された。すなわち、本飲料における高分子量アラビノキシランの含有量は、約100ppmと算出された。
【0112】
図3には、上述のようにして本飲料に含まれるβ−グルカンの分子量分布を評価した結果を示す。図3において、横軸はゲルろ過クロマトグラフィーで得られた各フラクションに割り当てられた番号(フラクション番号)を示し、縦軸は、当該各フラクションに含まれているβ−グルカンに由来するグルコースの濃度(mg/mL)を示す。
【0113】
図3に示すように、本飲料は、β−グルカンとして、フラクション番号66付近のピークに係る分子量が比較的小さな低分子量β−グルカンを主に含むことが確認された。低分子量β−グルカンの分子量は、300〜900Daであった。
【0114】
また、フラクション番号66付近のピークの面積に基づき、本飲料におけるβ−グルカンの含有量に対する低分子量β−グルカンの含有量の割合は、約95重量%であると算出された。すなわち、本飲料における低分子量β−グルカンの含有量は、約1770ppmと算出された。
【0115】
[粘度の測定]
本飲料の粘度を測定した。粘度は、ウベローデ粘度計を使用して20℃にて測定した。ウベローデ粘度計としては、JIS 8803−1978に準拠し、粘度計定数が0.002〜0.008×10−6/sのものを使用した。
【0116】
測定の結果、本飲料の粘度は、1.57mPa・sであった。また、市販のビールの粘度を測定したところ、1.72mPa・sであった。すなわち、本飲料の粘度は、市販のビールと同程度であった。
【実施例2】
【0117】
市販のビールに、アラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンからなる群より選択される1つ以上を所定の濃度となるように添加し、熟練したパネリスト7名による官能検査を行った。官能検査は、評点法で行い、平均点を算出した。飲料が強いコクを有する場合には5点、飲料がやや強いコクを有する場合には4点、飲料が強くはないがコクを有する場合は3点、飲料がわずかにコクを有する場合には2点、飲料がコクを有するとまではいえない場合には1点が付与された。
【0118】
アラビノキシランとしては、市販のアラビノキシラン(日食アラビノキシラン、日本食品化工株式会社製)を使用した。この市販のアラビノキシランは、分子量が20000〜700000Da程度のアラビノキシランと、分子量が2000〜3000程度のアラビノキシランとを含むものであった。α−グルカンとしては、市販のα−グルカン(K.D.L.−R60、日本コーンスターチ株式会社製)を使用した。
【0119】
β−グルカンとしては、市販のβ−グルカン(大麦β−グルカン ES−70S、株式会社ADEKA製)に過剰量の市販のβ−グルカンを添加して酵素反応を行うことにより、低分子化されたβ−グルカンを使用した。なお、この酵素処理によって、市販のβ−グルカンの粘度が顕著に低下したことが確認された。
【0120】
図4には、飲料におけるアラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量と、当該飲料のコクとを評価した結果を示す。図2の「官能評価(コク)」欄に示される数値は、官能評価の結果として付与された点数であり、当該点数が高いほど、飲料が優れたコクを有していると評価されたことを示す。
【0121】
比較例2−1は、アラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量を、上述の比較例1−1として使用した市販のビールと同等になるように調製した飲料を使用した例であり、コクの点数は「1.0」であった。また、比較例2−2〜比較例2−4は、アラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンのいずれか1つのみの含有量を増加させた例であり、コクの点数は「2.0」以下であった。
【0122】
これらに対し、実施例2−1ではアラビノキシラン含有量を500ppmに増加させ、且つα−グルカン含有量を25000に増加させ、実施例2−2ではアラビノキシラン含有量をさらに1000ppmに増加させた。そして、このようにアラビノキシラン及びα−グルカンの含有量をともに増加させることによって、飲料のコクが顕著に高められた。
【0123】
また、実施例2−3ではβ−グルカン含有量も500ppmに増加させ、実施例2−4ではβ−グルカン含有量をさらに1000ppmに増加させた。そして、このようにアラビノキシラン、α−グルカン及びβ−グルカンの含有量を増加させることによって、飲料のコクがより顕著に高められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500ppm以上のアラビノキシランと、23000ppm以上のα−グルカンとを含む
ことを特徴とする飲料。
【請求項2】
前記アラビノキシランは、分子量が9000Da以上のアラビノキシランを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
500ppm以上のβ−グルカンをさらに含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
前記β−グルカンは、分子量が1000Da以下のβ−グルカンを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の飲料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−48574(P2013−48574A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187632(P2011−187632)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】