説明

アラミド繊維強化集成材

【課題】本発明は、繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層含む集成材であり、軽量で、高タフネス、高剛性、高吸湿性で且つ木材の乾燥収縮に対する追随性の良好な集成材に関する。
【解決手段】特定のアラミド繊維、特にパラ型アラミド繊維及び/又はメタ型アラミド繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層貼り合わせてなる集成材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の切削加工された木材を接着剤を介して複数積層してなる集成材であって、高タフネス性、高剛性で地震時撓みが大きく軽量な集成材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材の繊維方向に長く切削加工したひき板あるいは小角材を、その繊維方向を互いに平行にして接着剤を用いて貼り合わせた材料として集成材が知られている。近年大型建築物の構造材の地震対する耐震性を上げるため主に建築における柱、梁のような骨組材に繊維強化樹脂成形体を接着剤を介して複数積層してなる集成材が注目されている。例えば特開平6−122178号公報には、弾性率20t/mm以上の炭素繊維を用いて、引き抜き成形にて成形した炭素繊維強化樹脂複合材を介して接着した炭素繊維強化集成材が提案されている。確かに炭素繊維強化樹脂複合体は鉄鋼材に比べ軽く、強度が劣らないものが得られるものの、また炭素繊維は吸湿性が殆んどなく、樹脂複合体として天然木材と集成材とした場合、木材の乾燥収縮に対する追随性に劣るという問題点があり、また、樹脂との接着が弱いという欠点があり、耐屈曲疲労性や、また圧縮方向のあるいは厚さ方向の応力集中が働いた場合に脆いという欠点を有している。
【特許文献1】特開平6−122178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層含む集成材であり、軽量で、高タフネス、高剛性かつ高吸湿性、木材の乾燥収縮に対する追随性の良好な集成材に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、特定のアラミド繊維、特にパラ型アラミド繊維及び/又はメタ型アラミド繊維強化樹脂複合体を少なくとも一層貼り合わせてなる集成材とすることにより、上記の課題が解消されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0005】
本発明のアラミド繊維強化集成材を用いることにより、軽量で高剛性、従来品より高タフネス性で高吸湿性、木材の乾燥収縮に対する追随性の良好な集成材とすることができるので構造物の梁材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
繊維強化樹脂複合体の繊維としてはパラ型全芳香族ポリアミド繊維が弾性率の点で好ましいが種々の弾性率の天然木材と組み合わせる上でパラ型アラミド繊維とメタ型アラミド繊維を混用して弾性率を調整することが好ましい。
【0007】
アラミド繊維は吸湿性が高く、パラ型アラミド繊維で2%以上、メタ型アラミド繊維で5%以上の吸湿性を有し、天然セルロース繊維に近い吸湿性を有しているため、繊維強化樹脂複合体とした後でも高い吸湿性が期待でき、天然木材との集成材とした時に特に有用である。
【0008】
アラミド繊維の使用量としては繊維強化樹脂複合体全体重量に対して40〜70%が好ましい。ここでパラ型アラミド繊維とメタ型アラミド繊維の比率は貼り合わせる木材の吸湿性、剛性に応じて、任意の範囲で行うことができる。
【0009】
本発明で用いる木材としては従来の集成材に使用されている木材であれば特に限定されるものではなく、通常、檜、杉、ツガ、トウヒ等の木材が用いられる。そして、かかる木材は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、使用する木材の形状としても、特に限定されるものではなく、通常、木材の繊維方向に長く切削加工したひき板や小角材等の形状で用いられる。
【0010】
本発明の集成材はかかる木材とアラミド繊維樹脂複合体を接着剤を介して複数積層してなるものである。該木材はその繊維方向を互いに平行にして積層されるのが一般的であり、その積層枚数はその使用目的及び該木材により異なるが、通常は4〜5枚程度、すなわち全体の板厚として10〜15cm程度とするのがよい。また、これらの木材を積層するには各木材の表面に接着剤、例えばレゾルシン樹脂や尿素樹脂等を使用して加熱炉、高周波加熱等の手段により105℃〜180℃、5〜6時間程度加熱すればよい。
【0011】
本発明の集成材は、この集成材の少なくとも一層がパラ型アラミド繊維及び/又はメタ型アラミド繊維を用いたアラミド繊維強化樹脂複合材であることを特徴とするが、好ましくは、該アラミド繊維強化樹脂複合材を、少なくとも、いずれか一方の面の表層を形成する木材と、それに隣接する内側の木材の間に介在させるのが好ましい。これは、曲げ剛性及びタフネス性を高めるためには、アラミド繊維強化樹脂複合材の層が表面に近ければ近い程有利であること、及びアラミド繊維強化樹脂複合材の層が最外層であると見映えが今一つであることから、該アラミド繊維強化樹脂複合材を、少なくともいずれか一方の面の表層を形成する木材と、その隣接する内側の木材の間に介在させることが好ましい。さらにアラミド繊維強化樹脂複合材を介在する面としては集成材に対して引っ張り応力がかかる面に補強介在するのがよい。
【0012】
アラミド繊維強化樹脂複合材としては、一般に引抜成形により成形したシート状のものが好ましく、補強繊維方向が一方向となった一方向シート、補強繊維方向が2次元方向となったクロスシート、補強繊維方向が3次元方向となった3方向クロスシート、補強繊維方向が4次元方向となった4方向クロスシート、更には該多方向シートと多軸クロスシートを重ね合わせ両者の長所を兼ね備えたハイブリッドシート等いずれでも使用することができる。引抜成形法とは、各種繊維を連続的に引き出し、マトリックス樹脂に含浸させ、所望の断面形状をした金型内を通過させ、賦形する成形法であり、均一断面の長尺成形品を連続的に製造できるFRPの成形法である。使用するアラミド繊維としては、得られる集成材のタフネス性、剛性を向上するために、弾性率5〜130GPa、好ましくは中弾性品以上、30〜120GPaのものが好ましい。
【0013】
補強繊維としては通常長繊維が用いられるが、短繊維を長繊維とともに使用しても良い。更に得られる集成材の剛性に応じて必要であればガラス繊維等の無機、有機繊維を少量混入させることができる。混入される繊維の形態としては特に限定されないが、例えばアラミド繊維の一方向シートにガラス繊維を混入する例を考えると繊維方向に対して垂直方向に横糸として混入するかあるいはガラス繊維からなるガラススクリムをアラミド繊維と併用することにより混入させることができる。また用いられるマトリックス樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン樹脂、レゾルシン樹脂、尿素樹脂あるいはメラミン樹脂等の樹脂が挙げられ、特に好ましくはエポキシ樹脂である。
【0014】
本発明では、かかるアラミド繊維強化樹脂複合材を接着させるが、その方法としては、木材の繊維方向とほぼ同方向に補強繊維の補強方向を合わせるように配置して接着させるのが通常であるが、必要に応じて補強方向が交差するようにシート状のアラミド繊維強化樹脂複合材を積層したものを使用してもよい。
【0015】
なお、かかる集成材は必要に応じて表層の木材の更に外側を木材および/又は化粧材等で覆ってもよい。本発明の集成材は通常の集成材として使用される用途に適用できるが、特に学校、体育館、講堂や教会等の大型建築物の構造材や大型木造船等に好適である。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えないかぎり下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
以下本発明の好適な実施例について、添付図面を参照にして説明する。
【0017】
[実施例1]
図1にアラミド繊維複合材で補強した集成材の概略図を示す。図1に示すように、集成材の表層とその隣接層の間にアラミド繊維樹脂複合体を挟み込み、接着させる。
アラミド繊維樹脂複合体として、繊維として弾性率が74GPa のパラ型アラミド繊維“テクノーラ”(帝人テクノプロダクツ製)を、マトリックスレジンとしてエポキシ樹脂“アラルダイトGY−260”(日本チバガイギー)を用いて、引抜成形にて成形したアラミド繊維シートを使用した。
【0018】
アラミド繊維シートは補強量に応じて裁断し、木材の間に挟み込み、集成材を補強する。集成材料の木材は杉材小片を使用した。杉材小片1の寸法は、厚み3cm、幅15cm、長さ500cmで有り、積層数は5枚とした。
【0019】
ベースの集成材の表層とその隣接層の間に、一方向シート(寸法幅15cm、長さ500cm)を挟み込みシートの両表面にエポキシ樹脂接着剤、“ダイナミックボンドB−910”(大日本色材社製)を塗布した。このシートの上に、再び杉材小片を1枚積層し、加圧接着し、本発明のアラミド繊維強化集成材を得た。このものは剛性、タフネス性、乾燥収縮時の追随性が良好で、構造物の梁材として良好であった。
【0020】
[実施例2]
アラミド繊維を繊物とした以外は、実施例1と同様にして、アラミド繊維強化集成材を得た。このものは剛性、タフネス性、乾燥収縮時の追随性が良好で、構造物の梁材として良好であった。
【0021】
[実施例3]
繊維として、弾性率8GPaのメタ型アラミド繊維“コーネックス”(帝人テクノプロダクツ製)とパラ型アラミド繊維“テクノーラ”(帝人テクノプロダクツ製)の比率が1:1になるようにした以外は実施例1と同様に行いアラミド繊維強化集成材を得た。このものは剛性、タフネス性、乾燥収縮時の追随性が良好で、構造物の梁材として良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は高タフネス、高剛性、また木材の乾燥収縮に対する追随性の良好な集成材に関するものであり、アラミド繊維強化樹脂複合材を木材層の間に介在させた集成材は大型建築物の構造材や家屋の梁材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明による、アラミド繊維強化樹脂複合材により補強された集成材の1例を斜め方向から見た説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 杉材小片
2 アラミド繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工された木材を接着剤を介して複数積層してなる集成材であって、該集成材の少なくとも一層に弾性率5〜130GPaのアラミド繊維からなる繊維状シートに樹脂を含浸して成形したアラミド繊維強化樹脂複合材を介在して接着し、構成したことを特徴とするアラミド繊維強化集成材。
【請求項2】
アラミド繊維がパラ型アラミド繊維及び/又はメタ型アラミド繊維である請求項1記載のアラミド繊維強化集成材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−245457(P2007−245457A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70514(P2006−70514)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】