説明

アラーム管理システム、およびアラーム管理システムに用いられる携帯端末

【課題】本発明は、製造プラント向け監視制御装置における機器の異常に対して、作業者が早期に対処できるようにするアラーム管理システムを提供する。
【解決手段】本発明は、製造プラントのフィールド機器のアラーム管理システムにおいて、フィールド機器の異常を監視するオペレータコンソールと、オペレータコンソールから無線送信されるフィールド機器の異常の情報が表示されるディスプレイを有する携帯端末とを備え、フィールド機器の異常の場合に、少なくとも発生日時、機器を示す名称、発生箇所、対処方法を携帯端末のディスプレイへ表示させる構成を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造プラントのフィールド機器の監視制御装置に係るアラーム管理システム、およびアラーム管理システムに用いられる携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
監視制御装置は、製造プラントの運転を監視したり制御したりするオートメーション機器として広く用いられる。
【0003】
この監視制御装置は、製造プラントの現場に設置されているバルブ、モータ、ポンプ等のフィールド機器の状態を監視している。そして、フィールド機器に異常が生じた場合には、センサが異常を示すことから監視制御装置がアラームを発生して、異常が発生したフィールド機器がどれであるかを、作業者へ知らせる機能を有している。
【0004】
さらに、アラームを複数の作業者へ知らせるだけでなく、対処方法を考える上で参考になる対象機器の管理情報も合わせて知らせることにより、対処が容易になる技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−318147号公開公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、アラームを受け取った作業者は、対象機器の場所と状態を把握することはできるが、対処方法を考えなければならないので、早期な対応は望むべくもない。また、どの作業者が対処を行おうとしているのか、対処を終了したのかがデータとして残らないため、機器の管理情報としては、不完全である。
【0007】
本発明は、製造プラント向け監視制御装置における機器の異常に対して、作業者が早期に対処できるアラーム管理システム、およびアラーム管理システムに用いられる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は製造プラントのフィールド機器の異常を監視するオペレータコンソールと、該オペレータコンソールから無線送信される、前記フィールド機器の異常の情報が表示されるディスプレイを有する携帯端末とを備え、前記携帯端末のディスプレイに表示される前記異常の情報は、少なくとも発生日時、前記フィールド機器を示す名称、発生箇所、対処方法を含むことを特徴とする。
【0009】
また、製造プラントのフィールド機器のアラーム管理システムで用いられ、フィールド機器の異常を監視するオペレータコンソールから無線送信される情報をディスプレイに表示する携帯端末であって、フィールド機器の異常の場合に、少なくともフィールド機器を示す名称と発生日時と対処方法とをディスプレイに表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造プラント向け監視制御装置におけるフィールド機器の異常に対して、作業者が早期に対処できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、分散型デジタル計装システムにおけるプラント監視制御装置の全体構成図である。
【0013】
プラント監視制御装置は、図1に示すような構成を備えており、オペレータコンソール100は、通信ネットワーク105を介してマルチコントローラ101と接続され、マルチコントローラ101はプラントで使用しているバルブ、モータ、ポンプ等などのフィールド機器103とプロセス入出力装置102を介して接続されている。
【0014】
フィールド機器103が故障等で異常となった場合、マルチコントローラ101がフィールド機器103からの異常信号を受付け、オペレータコンソール100へ送信し、オペレータコンソール100はアラーム発生メッセージを表示する。
【0015】
オペレータコンソール100は通信ネットワーク105を介して携帯端末用アンテナ104から携帯端末106へ異常が発生したフィールド機器103を特定する情報、異常の発生日時等のアラーム内容やその対処方法を送信する。
【0016】
携帯端末106は、送信されたフィールド機器103を特定する情報、異常の発生日時等のアラーム内容やその対処方法を表示する。あるいは、対処方法そのものは携帯端末106に記憶させておき、送信された対処方法のコードから携帯端末106に記憶された対処方法を携帯端末106が選択し、表示するようにしてもよい。
【0017】
図2は、オペレータコンソール100の概略構成を示す構成図で、中央演算ユニットCPU200、ハードディスクH/D201、ディスプレイ202、入出力装置203から構成されており、フィールド機器103で発生したアラームを操作者が確認する操作は、入出力装置203に設けられた確認ボタン204を押し下げることにより実施される。
【0018】
確認ボタン204は、生体認証機能を備えており、例えば確認ボタン204の指が接触する面に指紋センサを設け、CPU200は、確認された指紋とH/D201に記憶された指紋とを照合し、確認ボタン204を押し下げた操作者を特定する。
【0019】
図3は、上記のアラーム確認の手順を示すフローチャートである。
【0020】
図2に示した確認ボタン204を操作者が押し下げることによってCPU200は、指紋認証情報を取得する(ステップ300)。CPU200は、取得した指紋とH/D201に登録されている指紋とを比較照合し(ステップ301)、登録されている指紋と一致しなかった場合には、ディスプレイ202に確認操作不可ガイダンスを表示させて、確認の手順を終了する(ステップ302)。
【0021】
したがって、H/D201に登録されている指紋を有する操作者が確認をしない限り、アラームの発生が確認できたことにはならない。
【0022】
ステップ301で登録されている指紋と一致した場合には、CPU200は、確認ボタン204が押し下げられた日時をH/D201へ記録し(ステップ303)、H/D201に登録された指紋と一致した操作者の氏名またはIDをH/D201へ記録し(ステップ304)、発生したアラームのデータを削除してアラームを解除して終了する(ステップ305)。
【0023】
CPU200は、アラーム解除後、通信ネットワークを介して携帯端末用アンテナ104から、アラームの内容を携帯端末106へ送信する。
【0024】
図4、図5は、オペレータコンソール100のディスプレイ202に表示される画面の例を示す画面図である。
【0025】
図4において、ディスプレイ202に表示されたウィンドウ400には、発生したアラーム内容を示す領域401が設けられ、操作者がこのアラーム内容の詳細を確認する場合は、領域401をクリック等で指定することで、発生日、タグ、内容、確認日、確認者を一覧表示するアラーム履歴ウィンドウ402が表示される。
【0026】
タグとは機器の名称やIDを示す。図4の例では、TICA−101という名称の機器が異常となり、2007年3月10日9時11分23秒にアラームが発生したことが表示されている。
【0027】
図2に示した確認ボタン204を押し下げてアラームを確認した操作者の名前はAABB、その日時は、2007年3月10日9時15分12秒であることが表示されている。このTICA−101という機器が複数回のアラームを発生している場合は、アラーム履歴ウィンドウ402にその複数の履歴が表示される。
【0028】
また、複数の機器がアラームを発生して未だ誰も確認していない場合は、領域401に複数の機器のアラーム内容が表示される。操作者の名前の代わりにIDなどを表示してもよい。
【0029】
図5には、アラームの発生位置が目視的に容易にわかる表示の一例が示されている。
【0030】
図4に示したアラームの内容を示す領域401の一部に発生箇所ボタン501を設けておき、この発生箇所ボタンを押すようにクリック等をすることで、図5に示すような地図情報画面503を表示するようにする。
【0031】
地図情報画面503には、端部に「発生箇所」の名称が表示され、反応缶エリアの地図情報が模式的に表示され、場所の情報としてアラームを発生した機器であるTICA−101の機器名称504と位置を示す矢印が地図情報に表示されている。
【0032】
また、TICA−101が反応缶Aの温度計であることを示す表示505も合わせて表示されている。これによって、この画面を見た操作者は、反応缶Aの温度計TICA−101が異常であるということが一目で理解することができる。
【0033】
図5のアラームの内容を示す領域401にさらに、内容転送ボタン502を設け、内容転送ボタン502を押すようにクリック等をすることで、図4や図5に表示された内容を、図1に示した携帯端末106へ無線等により送信することができる。
【0034】
携帯端末106は、プラント設備の近くにいる作業者が携帯し、オペレータコンソール100からアラーム送信があると、全ての携帯端末106が着信表示または音声で、作業者に対して着信があったことを伝える。
【0035】
図6、図7は、携帯端末106のディスプレイ601に表示されるメッセージの一例を示す画面図である。
【0036】
また、ディスプレイ601の周辺には、指認証領域602、確認ボタン603が設けられている。画面には、アラーム内容、発生箇所、対処方法が表示されている。
【0037】
対処方法は、オペレータコンソール100で決定した対処方法が携帯端末106へ無線送信される。または、携帯端末に対処方法を記憶させておき、対処方法を示すコードを無線送信し、このコードに一致する対処方法を表示させるようにすれば、無線で送信するデータ量を少なくすることができ、通信時間を短縮することができる。
【0038】
携帯端末106でアラームの内容と対処方法を見た作業者は、指認証領域602で認証後に、確認ボタン603を押すことで、携帯端末106が作業者の情報を無線送信し、オペレータコンソール100で作業者の誰が確認したかを視認することができる。
【0039】
複数の作業者が確認操作を行い、異常を生じた機器のところへ向かうのは、効率がよくないので、最初に確認ボタン603が押された携帯端末106のIDが、オペレータコンソール100へ送信されるとともに他の携帯端末106にも送信される。
【0040】
他の携帯端末のディスプレイ601には、最初に確認ボタン603が押された携帯端末106のIDが表示され、確認ボタン603を押しても確認の情報が送信されない、あるいは送信されても、オペレータコンソール100では最初に確認した携帯端末106とはみなさない。
【0041】
なお、ある携帯端末を操作できる作業者を特定するために指認証を使用している場合には、指認証に登録されていない作業者が、確認ボタン603を押しても、確認情報は送信できない。
【0042】
さらに、作業者の技量の程度によって、対処可能な内容を区別したい場合は、送信するアラーム内容を送信する携帯端末と、送信しない携帯端末とをID等で予め区別しておく。
【0043】
最初の確認の情報がオペレータコンソール100へ届くと、オペレータコンソールは、作業終了時に行われるべき内容を送信し、携帯端末106のディスプレイ601の表示が更新される。
【0044】
図7には、その一例として、アラーム内容、発生箇所の他に、対処後に確認ボタン603を押す指示が表示されている例が示されている。この内容は、最初に確認情報を送信した携帯端末106に限らず、他の作業者の携帯端末106にも更新表示される。
【0045】
そして、最初に確認情報を送信した作業者かどうかにかかわらず、実際に対処を行った作業者が、対処の終了時に指認証領域602での指認証と確認ボタン603押し下げによる対処終了情報を送信する。
【0046】
対処終了情報を受信したオペレータコンソール100は、当該アラームの対処が終了した旨と、受信した日時、作業者名またはIDとを、H/D201へ格納する。
【0047】
以上の構成により、作業者が機器の異常の発生箇所と対処方法を認識し易くなり、対処時間が短くなって、機器の異常による損害が大きくなることを防止できる。
【0048】
また、オペレータコンソール100により、操作者がアラーム発生を作業者が確認したかどうかと、機器の修理や交換等の対処が終了したかどうかとを確認できるので、アラーム発生と対処の進捗を早期に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】分散型デジタル計装システムにおけるプラント監視制御装置の全体構成図。
【図2】オペレータコンソールの概略構成を示す構成図。
【図3】アラーム確認の手順を示すフローチャート。
【図4】オペレータコンソールのディスプレイに表示される画面の例を示す画面図。
【図5】オペレータコンソールのディスプレイに表示される画面の別例を示す画面図。
【図6】携帯端末のディスプレイに表示されるメッセージの一例を示す画面図。
【図7】携帯端末のディスプレイに表示されるメッセージの別の一例を示す画面図。
【符号の説明】
【0050】
100…オペレータコンソール、103…フィールド機器、104…携帯端末用アンテナ、106…携帯端末、200…CPU、201…H/D、202…ディスプレイ、203…入出力装置、204…確認ボタン、400…ウィンドウ、401…領域、402…アラーム履歴ウィンドウ、501…発生箇所ボタン、502…内容転送ボタン、503…地図情報画面、601…ディスプレイ、602…指認証領域、603…確認ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プラントのフィールド機器の異常を監視するオペレータコンソールと、該オペレータコンソールから無線送信される、前記フィールド機器の異常の情報が表示されるディスプレイを有する携帯端末とを備え、前記携帯端末のディスプレイに表示される前記異常の情報は、少なくとも発生日時、前記フィールド機器を示す名称、発生箇所、対処方法を含むことを特徴とするアラーム管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のアラーム管理システムにおいて、
前記オペレータコンソールは前記フィールド機器の異常の情報が表示されるディスプレイを有し、前記異常の情報はフィールド機器の異常の内容を示す表を含むことを特徴とするアラーム管理システム。
【請求項3】
請求項1記載のアラーム管理システムにおいて、
前記オペレータコンソールは、前記フィールド機器の異常の情報が表示されるディスプレイを有し、前記異常の情報は前記フィールド機器の異常に係るアラーム発生箇所を地図情報画面内に示す表示を含むことを特徴とするアラーム管理システム。
【請求項4】
請求項1記載のアラーム管理システムにおいて、
前記オペレータコンソールは、前記フィールド機器の異常に対処した作業者からの対処終了通知を、該作業者の認証を経て受信する機能を有することを特徴とするアラーム管理システム。
【請求項5】
製造プラントのフィールド機器のアラーム管理システムで用いられ、前記フィールド機器の異常を監視するオペレータコンソールから無線送信される異常の情報が表示できるディスプレイをもった携帯端末であって、前記異常の情報は、少なくとも前記フィールド機器を示す名称と発生日時と対処方法を含むことを特徴とするアラーム管理システムに用いられる携帯端末。
【請求項6】
請求項5記載の携帯端末において、
前記フィールド機器の異常に対処した作業者の作業終了通知を前記オペレータコンソールへ送信するために、該作業者の認証を行う認証領域と、作業終了通知を送信させる確認ボタンとを備えたことを特徴とするアラーム管理システムに用いられる携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−86983(P2009−86983A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255299(P2007−255299)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】