説明

アリ用毒餌剤

【課題】アリを誘き寄せやすく、かつ、アリの好む湿り気を有する毒餌剤を、搬送時や使用中において垂れにくいものとし、しかも、その製造に要するコストを低減して安価に得られるようにする。
【解決手段】毒餌剤Aは、少なくとも、殺虫剤と、ショ糖と、グリセリンと、水飴と、粉体とを構成成分として含み、これら成分をゲル状又はペースト状となるように混ぜ合わされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリを防除するためのアリ用毒餌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アリは、捕獲した餌をその場では食さず、巣まで運んでから食すという習性を有していることは広く知られている。そこで、このようなアリの習性を利用して、アリの好む餌と食毒剤とを混ぜた毒餌剤をアリの活動域や巣の周囲、家屋の周囲に散布したり、容器に収容した状態で置いたりして、アリを防除することが行われている。
【0003】
また、アリは、吸蜜性を持っているので、乾燥した固形餌よりも湿り気のある餌を喫食しやすいことも知られている。この習性を利用した毒餌剤としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の毒餌剤にはゼラチンが含有されており、このゼラチンのゼリー強度及び粘度を所定の範囲にすることで、搬送中や使用中における毒餌剤の垂れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−99704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように毒餌剤にゼラチンを含有させた場合、毒餌剤の製造時には、ゼラチンが溶解する温度まで加熱(60℃〜80℃)する加熱工程と、溶解したゼラチンを冷却して凝固させる冷却工程とが必要である。特に、ゼリー強度及び粘度を所定の範囲内にするためには、加熱工程では十分な攪拌が必要で、さらに、冷却工程では常温でゆっくりと冷却させなければならず、毒餌剤の製造に長時間要する。また、製造設備としては、加熱設備及び冷却設備が必要で大がかりになる。従って、毒餌剤のコスト高を招く。
【0006】
また、アリの防除力を向上させるためには、アリを毒餌剤までいかにして誘き寄せるかが重要である。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アリを誘き寄せやすく、かつ、アリの好む湿り気を有する毒餌剤を、搬送時や使用中において垂れにくいものとし、しかも、その製造に要するコストを低減して安価に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、アリを防除するためのアリ用毒餌剤であって、少なくとも、殺虫剤と、ショ糖と、グリセリンと、水飴と、粉体とを構成成分として含み、これら成分をゲル状又はペースト状となるように混ぜ合わされてなることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、グリセリン及び水飴の有する保湿作用により、毒餌剤の表面には湿り気が付与される。また、水飴は粘性を有しており、この水飴とグリセリンを粉体に混合することで、従来例のようなコスト高の要因となるゼラチンを用いなくても、垂れにくいゲル状又はペースト状の毒餌剤とすることが可能になる。さらに、アリの好むショ糖及び水飴が混合されていることで、アリを誘き寄せやすい毒餌剤とすることが可能になる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、粉体は、動物性又は植物性原料からなることを特徴とするものである。
【0011】
すなわち、アリは、動物性及び植物性原料からなるものに誘引される性質があり、これらを粉体の原料にすることでアリをより一層誘き寄せやすくすることが可能になる。
【0012】
第3の発明は、第1または2の発明において、水飴の混合量は、ショ糖の析出が起こらないように設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、ショ糖を完全に溶解させた状態にできるので、ショ糖によりアリを効果的に誘引することが可能になる。
【0014】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、周壁部の無いバリアフリー構造の容器に収容されることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、水飴の粘着性によって毒餌剤が容器の内面に粘着した状態で保持される。この状態で、容器がバリアフリー構造であるため、アリが容器内の毒餌剤まで達しやすくなる。そして、毒餌剤が垂れにくいゲル状又はペースト状であるため、容器がバリアフリー構造であっても容器から垂れてしまうのが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、少なくとも、ショ糖と、グリセリンと、水飴と、粉体とをゲル状又はペースト状となるように混ぜ合わせて毒餌剤としたので、アリを誘き寄せやすく、かつ、アリの好む湿り気を有する毒餌剤とすることができるとともに、使用前や使用中において垂れにくくすることができる。さらに、従来例のゼラチンを含有する場合のような加熱工程及び冷却工程が不要なので、コストを低減できる。
【0017】
第2の発明によれば、粉体の原料を動物性又は植物性原料としたので、アリをより一層誘き寄せやすくすることができ、防除力を向上させることができる。
【0018】
第3の発明によれば、ショ糖の析出が起こらないように水飴の混合量を設定しているので、アリを効果的に誘引することができ、防除力をより一層向上させることができる。
【0019】
第4の発明によれば、毒餌剤をバリアフリー構造の容器に収容した状態で垂れることなく使用できるので、高い防除力を長期間に亘って得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態にかかる毒餌剤が収容される容器の斜視図である。
【図2】容器の平面図である。
【図3】容器の底面図である。
【図4】容器の正面図である。
【図5】容器の背面図である。
【図6】容器の左側面図である。
【図7】図2におけるVII−VII線断面図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】毒餌剤の使用状態を説明する図である。
【図10】複数の容器を連結した状態の斜視図である。
【図11】複数の容器を連結した状態の平面図である。
【図12】容器を分離した状態の平面図である。
【図13】柱状部を変更した容器を示す図1相当図である。
【図14】容器の変形例にかかる図1相当図である。
【図15】容器の変形例にかかる図2相当図である。
【図16】容器の変形例にかかる図3相当図である。
【図17】容器の変形例にかかる図4相当図である。
【図18】図15におけるXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】図17におけるXIX−XIX線断面図である。
【図20】図17におけるXX−XX線断面図である。
【図21】容器の変形例にかかる図9相当図である。
【図22】容器の変形例にかかる図11相当図である。
【図23】容器の変形例にかかる図12相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図9に示すように、本発明の実施形態にかかるアリ用毒餌剤Aは、容器1に収容された状態で使用される。
【0023】
毒餌剤Aは、フィプロニルの5%溶液(殺虫剤)、溶剤、ホウ酸、グリセリン、煮干を粉末状にした煮干粉、グラニュー糖、水飴、マッシュポテトを乾燥させた乾燥マッシュポテト、アモルデンFS−140(防腐剤)、ビトレックス(安息香酸デナトニウム)及びイオン交換水を構成成分として含んでいる。
【0024】
毒餌剤Aの成分中、ホウ酸は、毒餌剤Aが腐るのを防止するための防腐剤の目的で混合されている。また、グリセリン及び水飴は、毒餌剤Aに湿り気を与えるための保湿剤の目的で混合している。また、煮干粉及びグラニュー糖は、アリを誘引するための誘引剤である。また、乾燥マッシュポテトは、毒餌剤Aの基材になるとともに、アリの誘引剤としても作用する。ビトレックスは毒餌剤Aに強い苦みを与えて誤飲防止を図るものである。
【0025】
上記成分は、ムラのないように十分に混練されている。また、上記成分の配合割合は、毒餌剤Aがペースト状となるように設定されている。イオン交換水の量が多くなるほど毒餌剤Aの粘度は低下し、また、水飴の量が多くなるほど毒餌剤Aの粘性が高まる。さらに、煮干粉及び乾燥マッシュポテトの量を増やしすぎると毒餌剤Aがバラバラになりやすくなるので、これらの量は毒餌剤Aがペースト状を維持できるように設定されている。また、この実施形態では、毒餌剤Aにキサンタンガムのような増粘剤を混合していない。増粘剤により粘性を高めた場合には、アリが毒餌剤Aに付着して離れようとした際に毒餌剤Aが糸を引くようになり、アリが毒餌剤Aに引っ付いたままとなってしまう虞れがあるためである。
【0026】
毒餌剤Aの成分中、アリがよく好むグラニュー糖の重量割合が最も多い。グラニュー糖は、例えば、毒餌剤Aの100g中に20g以上含有させるのが好ましい。グラニュー糖は、全量が水飴に溶解していて析出しないようになっている。つまり、水飴の重量割合は、グラニュー糖が析出しないように設定されており、例えば、毒餌剤Aの100g中に10g以上含有させるのが好ましい。
【0027】
また、保湿剤として作用する水飴及びグリセリンを混合していることで、毒餌剤Aには湿り気を与えてしっとりとした感触を持たせることが可能となっている。アリは、吸蜜性を持っているので、しっとりとした(保湿されている)毒餌剤Aを好んで食することになる。本実施形態では、水飴及びグリセリンの量を調整することでアリの好む程度のしっとり感を与えている。水飴の重量割合は、グラニュー糖の重量割合よりも少なくてよく、例えば、グラニュー糖の1/2程度の重量割合が好ましい。水飴及びグリセリンによる毒餌剤A表面のしっとり感は、屋内や屋外で放置しても数ヶ月程度維持される。
【0028】
また、水飴の持つ粘着性により、毒餌剤Aには容器1へ粘着するようになる。
【0029】
また、グリセリンの量は、水が毒餌剤Aから垂れ出さないように適切に設定されている。具体的には、グリセリンの重量割合は、グラニュー糖の重量割合よりも小さく、例えば、毒餌剤A全体の重量割合の1/10〜1/3程度が好ましい。このグリセリンには、甘みがあるので、アリの誘引剤としても作用する。
【0030】
また、煮干粉及び乾燥マッシュポテトを混合させることで、長期間に亘って所定形状を維持できる形状維持性が得られる。グリセリンや水飴だけで毒餌剤Aを構成した場合には垂れやすく形状の崩れやすい毒餌剤Aとなってしまうが、粉体を混合することで毒餌剤Aの形状が崩れにくくなる。
【0031】
また、アリは動物性及び植物性原料からなるものを好むので、動物性原料の粉体である煮干粉と、植物性原料の乾燥マッシュポテトとを混合することで、毒餌剤Aにはアリが寄ってきやすくなる。粉末マッシュポテトは、例えば、毒餌剤Aの100g中、10g以上含有させるのが好ましい。また、煮干粉も同じくらい含有させるのが好ましい。
【0032】
また、水飴の粘性と、煮干粉及び乾燥マッシュポテトの形状維持性とにより、毒餌剤Aは、常温雰囲気から夏場の外気温程度の高温雰囲気中において垂れにくい性質を有する高粘度のペースト状になる。毒餌剤Aの垂れにくさは、毒餌剤Aの使用を開始してから数ヶ月程度維持される。毒餌剤Aの垂れにくさは、従来例のゼラチンを用いることなく得ることができるので、ゼラチンの加熱及び冷却のための時間や設備が不要で、毒餌剤Aの製造にあたってはコストの低減が図られることになる。
【0033】
また、毒餌剤Aは、ペースト状でなくてもよく、例えば、流動性を失って多少の弾性と固さを持ってゼリー状に固化したゲル状としてもよい。これは各成分の調整によって変更可能である。
【0034】
尚、グラニュー糖の代わりに、上白糖や三温糖、黒砂糖等を用いてもよく、これらを混合したものを用いてもよい。つまり、毒餌剤Aにはショ糖が含まれていればよい。
【0035】
また、毒餌剤Aには、米粉、米ぬか、トウモロコシ粉、小麦粉、でんぷん等の植物性原料からなる粉体を混合させてもよい。
【0036】
また、殺虫剤は上記したものに限られず、従来周知の他の殺虫剤であってもよい。
【0037】
また、毒餌剤Aには、煮干粉と粉末マッシュポテトの一方のみを混合させるようにしてもよい。
【0038】
また、防腐剤や安息香酸デナトニウムは必要に応じて混合すればよく、本発明に必須なものではない。
【0039】
次に、毒餌剤Aを収容する容器1について詳細に説明する。
【0040】
毒餌剤Aが収容された容器1は、例えば、屋外の地面や、屋内の床面(図9に符号Gで示す)等の設置場所に設置される。
【0041】
図1〜図7に示すように、容器1は、設置場所に置かれる設置用板部10と、設置用板部10と対向するように配置される対向板部20と、対向板部20を設置用板部10に対し間隔をあけた状態で連結する第1〜第3柱状部31〜33とを備えている。
【0042】
設置用板部10は、樹脂材を略平板状に成形してなるものである。図3に示すように、設置用板部10の形状は、容器1の底面から見て、5枚の花びらを有する花をモチーフにした形状であり、全体が例えば透光性を有する薄いピンク色等に着色されている。設置用板部10の外周側には、花びらを形作るように延出した第1〜第5延出部11〜15が設けられている。これら延出部11〜15は同じ形状であり、設置用板部10の周方向に等間隔に配置されて放射状に延び、図9に示す設置面Gに沿うような形状となっている。
【0043】
図7に示すように、設置用板部10における容器1内側に位置する内面10aには、対向板部20側へ向けて突出して周方向に延びる突条部16が形成されている。図8に示すように、突条部16は、平面視で円環を形成するように周方向に連続していて、その中心は、設置用板部10の中心と略一致している。
【0044】
突条部16の幅は、全周に亘って同じに設定されている。図7に示すように、突条部16の高さは、該突条部16の幅方向の中央部よりも、設置用板部10の中心に寄った部位が最も高くなっており、この最も高い部分は、設置用板部10の内面10aからの高さh1が、3mm以下に設定されている。その理由としては、外部から容器1内に雨水等の水が侵入するのを防止する機能、あるいは毒餌剤Aが容器1から脱落するのを防止する機能を維持しつつ、アリの接近性(毒餌剤Aへの接近のし易さ)に支障のない程度の高さとするためである。
【0045】
突条部16の外周側を構成する外周面16aは、設置用板部10の中心側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。また、突条部16の内周側を構成する内周面16bは、設置用板部10の外側に行くほど対向板部20に近づくように傾斜する傾斜面で構成されている。内周面16bの外縁は、外周面16aの内縁に連なっている。従って、突条部16の縦方向の断面は略三角形状となっている。
【0046】
外周面16aの傾斜度合いは、内周面16bの傾斜度合いよりも小さく設定されており、外周面16aが比較的緩やかになっている。また、外周面16aには、アリの滑り止めとなるように、シボ加工(滑り止め加工)が全周に亘って形成されている。尚、外周面16aには、シボ以外の滑り止め加工を施してもよく、例えば、微小な凸又は凹を形成してもよい。
【0047】
設置用板部10の内面10aのうち、突条部16よりも内側部分は毒餌剤Aが載置される毒餌剤載置面10cとされている。毒餌剤載置面10cは、略平面で構成されている。この毒餌剤載置面10cと、第1〜第5延出部11〜15の内面とは、略同一面上に位置するようになっている。
【0048】
図9にも示すように、設置用板部10の内面10aの外周側には、アリを設置用板部10の中央側へと案内するための傾斜面(害虫案内面)10dが形成されている。傾斜面10dは、設置用板部10の外周縁に行くほど設置場所の面Gに接近するような傾斜角度となっている。この傾斜面10dは、図8に示すように、設置用板部10の略全周に亘るように形成されており、第1〜第5延出部11〜15の形状に対応して、平面視で湾曲しながら延びている。傾斜面10dの形成によって、設置用板部10の外周側の厚みは外周縁に行くほど薄くなっている。また、傾斜面10dには、上記突条部16の外周面16aと同様に滑り止め加工が施されている。傾斜面10dの幅は、例えば2mm以上5mm以下に設定するのが好ましい。
【0049】
設置用板部10の延出部11〜15における傾斜面10d以外の部分の厚みT(図9に示す)は、0.5mm以上3.0mm以下に設定されている。これにより、第1〜第5延出部11〜15がアリの障害となりにくい。また、設置用板部10は、匍匐状態のアリの頭部位置よりも高い所まで延びるような周壁部の無い、いわゆるバリアフリー構造とされており、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0050】
尚、設置用板部10の外周側には、匍匐状態にあるアリの頭部位置よりも低い高さの突条を設けてもよく、この程度の低い突条であれば、アリの警戒心がそれほど高まることはない。
【0051】
図3に示すように、設置用板部10の容器1外側に位置する外面10bには、第1凹部11a〜15aが形成されている。これら第1凹部11a〜15aは、それぞれ、第1〜第5延出部11〜15の中央部に位置している。また、設置用板部10の外面10bには、隣り合う延出部11〜15の間に対応する部分に第2凹部10gが形成されている。
【0052】
図2に示すように、対向板部20は、設置用板部10と同じ形状とされている。すなわち、対向板部20は、第1〜第5延出部21〜25を有し、また、図7に示すように、対向板部20の内面20aには、外周面26a及び内周面26bを有する突条部26と、後述する害虫案内面となる傾斜面20dとが形成されている。対向板部20の外面20bには、図1及び図2に示すように、第1凹部21a〜25aと、第2凹部20gとが形成されている。
【0053】
また、対向板部20は、設置用板部10と同様に、周壁部の無いバリアフリー構造とされており、従って、容器1の側部は設置用板部10側から対向板部20側に亘って全体が開放されている。さらに、対向板部20は、設置用板部10と略平行である。
【0054】
図2や図3に破線で示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、略円形断面を有している。図4〜図6に示すように、第1〜第3柱状部31〜33は、それぞれ、設置用板部10と一体成形される基端側部31a〜33aと、対向板部20と一体成形される先端側部31b〜33bとを備えている。
【0055】
尚、基端側部31a〜33aの長さと、先端側部31b〜33bの長さとは、同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0056】
図8に示すように、第1柱状部31の基端側部31aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第2延出部12との間から突出している。第2柱状部32の基端側部32aは、設置用板部10の内面における第3延出部13と第4延出部14との間から突出している。第3柱状部33の基端側部33aは、設置用板部10の内面における第1延出部11と第5延出部15との間から突出している。
【0057】
また、同様に、第1柱状部31の先端側部31bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第2延出部22との間から突出している。第2柱状部32の先端側部32bは、対向板部20の内面における第3延出部23と第4延出部24との間から突出している。第3柱状部33の先端側部33bは、対向板部20の内面における第1延出部21と第5延出部25との間から突出している。
【0058】
基端側部31a〜33aの先端面は、先端側部31b〜33bの突出方向先端面と溶着されている。溶着時に用いられる方法としては、例えば超音波溶着法が挙げられるが、これ以外の方法で溶着するようにしてもよいし、例えば、接着剤で接着するようにしてもよい。
【0059】
容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2は、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定されている。従って、容器1は、例えば放り投げられた際に、設置用板部10と対向板部20との一方が設置場所に接するように倒れやすい、扁平形状となっており、設置用板部10及び対向板部20が鉛直に延びるような姿勢で立つことは殆ど無いように設計されている。尚、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1は、例えば、25mm以上50mm以下に設定されており、小型の容器1となっている。
【0060】
図9に示すように、容器1に収容される毒餌剤Aは、略球状に成形されており、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置されている。毒餌剤Aの直径は、設置用板部10の内面10aと対向板部20の内面20aとの離間寸法h2(図4に示す)よりも予め大きめに設定されている。そして、毒餌剤Aは、毒餌剤載置面10cに載置された状態で、対向板部20の内面20aにおける突条部26よりも内側の面にも接触するようになっている。この状態で毒餌剤Aが僅かに押し潰された状態で容器1に保持される。
【0061】
上記毒餌剤Aは、水飴の持つ粘着性により、設置用板部10の毒餌剤載置面10cに粘着し、また、対向板部20の内面20aにも粘着する。このとき、毒餌剤Aは上述の形状維持性を備えているので、搬送等の通常の取扱いで容器1から外れて落ちることはなく、また、垂れたりすることもない。
【0062】
図10及び図11に示すように、使用前の容器1は、10個が連結された状態で一体化されている。容器1の対向板部20の外縁部には、隣接する容器1の対向板部20の外縁部に連結する連結片81が形成されている。また、設置用板部10の外縁部にも、同様な連結片80が形成されている。
【0063】
各容器1の設置用板部10は、連結片80を介して一体成形され、また、対向板部20は、連結片81を介して一体成形されるようになっている。対向板部20の連結片81は、設置用板部10の連結片80よりも脆弱に形成されており、後述する超音波溶着時の振動によって割れて分離するようになっている。分離後の連結片81を、図12に符号81a、81bで示す。符号81aは図1等にも示す。また、設置用板部10の連結部80は、折り曲げ方向に力を加えることで割れて分離するようになっている。分離後の連結片80を、同図に符号80a、80bで示す。符号80aは図1等にも示す。
【0064】
10枚の設置用板部10の第1〜第3柱状部31〜33の基端側部31a〜33aのうち、任意の数個は、対向板部20の先端側部31b〜33bに嵌って位置決めされるようになっている。すなわち、図7に示すように、所定の容器1の基端側部32aの先端面には凹部45が形成され、この凹部45の形成された基端側部32aに対応する先端側部32bには凹部45に嵌合する凸部46が形成されている。
【0065】
次に、上記のように構成された容器1の製造要領について説明する。まず、10枚の設置用板部10を縦2枚、横5枚となるように並んだ状態となるように、かつ、連結部80により連結された状態となるように一体成形する。また、10枚の対向板部20を同様に、連結部81により連結された状態となるように一体成形する。
【0066】
次いで、毒餌剤Aを各設置用板部10の毒餌剤載置面10cに載置する。
【0067】
その後、設置用板部10の上から対向板部20を被せるように配置し、図7に示すように、凸部46を凹部45に嵌合させる。これにより、対向板部20が設置用板部10に位置決めされる。その後、対向板部20を周知の超音波溶着機によって振動させることで、各柱状部31〜33の基端側部31a〜33aが先端側部31b〜33bに溶着する。この溶着時には、振動によって対向板部20の連結部81が分離するので、各容器1は、設置用板部10の連結部80のみで連結された状態となっている。
【0068】
尚、超音波溶着時に、設置用板部10の連結部80を分離させるようにして、容器1を対向板部20の連結部81のみで連結してもよい。
【0069】
このようにして、図10に示すように10個の容器1が一体化した製品100が得られる。この製品100は例えば樹脂フィルム等で包装されて流通する。各容器1が設置用板部10の連結部80で連結されているので、使用前まで、各容器1が分離することはなく、取扱いが容易である。
【0070】
そして、使用する際には、容器1を手で持って設置用板部10の連結部80を折るように力を加えるだけで連結部80が割れ、容器1を分離させて任意の複数箇所に置くことができる。
【0071】
各容器1を設置場所に設置する際には、放り投げればよい。容器1の設置用板部10と対向板部20との離間方向の寸法h2を、設置用板部10及び対向板部20の外形寸法W1よりも十分に小さく設定して容器1を扁平形状としているので、放り投げるだけで、設置用板部10又は対向板部20が設置場所に接する姿勢となる。
【0072】
放り投げられた容器1が着地する際には、毒餌剤Aに多少の衝撃が加わるが、毒餌剤Aは容器1に接着していて形状維持性を有しているので、この程度の衝撃で毒餌剤Aが容器1から外れることはない。
【0073】
図9に基づいて、容器1が、設置用板部10が設置場所に接する姿勢で置かれた場合について説明する。設置用板部10の外周側に周壁部が無く開放されているので、アリの様な小型害虫にとっては、乗り越えられない様な高さを有する障害物となる周壁部が無いことになり、よって、アリが毒餌剤Aまで容易に到達できることとなる。つまり、容器1の構造は、アリが毒餌剤Aまで到達するのを阻害しないような構造となっている。
【0074】
この毒餌剤Aには、アリの好むショ糖及び水飴が混合されていることで、アリを誘き寄せやすい。また、毒餌剤Aの表面には、グリセリン及び水飴の有する保湿作用により湿り気が付与されているので、アリが吸蜜行動をとりやすく、毒餌剤Aを食しやすい。
【0075】
以上説明したように、この実施形態にかかる毒餌剤Aによれば、ショ糖と、グリセリンと、水飴と、粉体と主成分とし、これらをペースト状となるように混ぜ合わせて毒餌剤Aとしたので、アリを誘き寄せやすく、かつ、アリの好む湿り気を有する毒餌剤Aとすることができるとともに、使用前や使用中において垂れにくくすることができる。さらに、従来例のゼラチンを含有する場合のような加熱工程及び冷却工程が不要なので、コストを低減できる。
【0076】
また、動物性原料及び植物性原料の粉体を毒餌剤Aに混合したので、アリをより一層誘き寄せやすくすることができ、防除力を向上させることができる。
【0077】
また、ショ糖の析出が起こらないように水飴の混合量を設定しているので、アリをショ糖によって効果的に誘引することができ、防除力をより一層向上させることができる。
【0078】
また、毒餌剤Aをバリアフリー構造の容器1に収容した状態で垂れることなく使用できるので、高い防除力を長期間に亘って得ることができる。
【0079】
また、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合についても、同様に、対向板部20の外周側に周壁部が無く開放されているので、上記したように、毒餌剤Aの誘引成分が拡散しやすくなるとともに、アリの警戒心を弱めることができる。よって、アリが毒餌剤Aまで達しやすくなる。
【0080】
つまり、容器1を放り投げた際に、設置用板部10と対向板部20とのどちらが設置場所に接する姿勢となっても、同程度の高い防除力が得られるので、設置時の方向性が無く、取扱いが容易である。
【0081】
また、対向板部20に、載置面部10cよりも外側へ延出する第1〜第5延出部21〜25を設けたので、設置用板部10が設置面Gに接する姿勢で容器1が設置された際に、第1〜第5延出部21〜25を庇部として機能させることができる。これにより、アリが好んで出入りする環境を作り出すことができ、防除力をより一層向上できる。また、対向板部20が設置面Gに接する姿勢で設置された際には、設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15が庇部として機能することになる。
【0082】
尚、上記容器1には柱状部を3本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。例えば、図13に示すように、各容器1に5本の柱状部35を設けるようにしてもよい。このものでは、各柱状部35が設置用板部10の第1〜第5延出部11〜15と、対向板部20の第1〜第5延出部21〜25とを連結するように延びている。また、各柱状部35は容器1の周方向に長い略長円形の断面を有している。
【0083】
また、容器1の構造は、図14〜23に示す変形例のような構造としてもよい。
【0084】
すなわち、図16に示すように、変形例にかかる容器1の設置用板部50は、葉っぱをモチーフにした細長い形状であり、全体が例えば透光性を有する薄い緑色等に着色されている。設置用板部50の内面50aには、外周面56a及び内周面56bを有する突条部56が形成されている。図20に示すように、突条部56は、設置用板部50の長手方向中央部よりも一方側に偏位している。内面50aにおける突条部56の内側部分が毒餌剤載置面50cである。設置用板部50の内面50aの外周側には、害虫案内面となる傾斜面50dが形成されている。傾斜面50dは、設置用板部50の略全周に亘るように形成されており、平面視で湾曲している。
【0085】
設置用板部50は、バリアフリー構造とされており、図14に示すように、容器1の側部は開放されるようになっている。
【0086】
図16に示すように、設置用板部50の外面50bには、凹部50gが形成されている。凹部50gは葉の葉脈を形作るように延びている。
【0087】
図15に示すように、対向板部60は、設置用板部50と略同じ形状とされており、図18に示すように、対向板部60の内面60aには、外周面66a及び内周面66bを有する突条部66と、害虫案内面となる傾斜面60dとが形成されている。図14に示すように、対向板部60の外面60bには、凹部60gが形成されている。対向板部60もバリアフリー構造である。
【0088】
図15に示すように、変形例の容器1は、第1〜第4柱状部71〜74を備えている。第1〜第4柱状部71〜74は、略長円断面を有している。図17に示すように、第1〜第4柱状部71〜74は、それぞれ、設置用板部50と一体成形される基端側部71a〜74aと、対向板部60と一体成形される先端側部71b〜74bとを備えている。
【0089】
第1柱状部71は、容器1の長手方向一端側(図16における下側)に位置している。また、第2柱状部72及び第3柱状部73は、容器1の長手方向中央部近傍に位置している。また、第4柱状部74は、容器1の長手方向他端側(図16における上側)に位置している。
【0090】
図20に示すように、先端側部71b〜74bは筒状とされている。図14に示すように、対向板部60には、先端側部71b〜74bの中空部分に連通する貫通孔60fが形成されている。
【0091】
基端側部71a〜74aの先端面と、先端側部71b〜74bの突出方向先端面とは溶着されている。
【0092】
また、この容器1も扁平形状となるように各部の寸法が設定されている。
【0093】
使用前の容器1は、図21及び図22に示すように、10個が連結された状態で一体化されている。設置用板部50は連結片80により連結され、対向板部60は連結片81により連結されている。
【0094】
容器1が、設置用板部50が設置場所に接する姿勢で置かれた場合には、設置用板部50の外周側に周壁部が無く開放されているので、アリが毒餌剤Aまで達しやすくなる。この状態では、対向板部60の長手方向の両側が庇部として機能することになり、アリが好んで出入りする暗い環境を容器1内部に作り出すことが可能になる。
【0095】
また、対向板部20が設置場所に接する姿勢で設置された場合についても、同様に、アリが毒餌剤Aまで達しやすくなる。
【0096】
尚、変形例の容器1には柱状部を4本設けているが、柱状部の数はこれに限られるものではない。
【0097】
また、上記説明では、10個の容器1を1つにして製品100を構成した場合について説明しているが、製品100を構成する容器1の個数はこれに限られるものではなく、任意の個数で構成すればよい。また、1つの容器1を単独で流通させるようにしてもよい。
【0098】
また、各容器1を一体化する際、設置用板部10側の連結部80を全て連結するようにしているが、これに限らず、一部を非連結とするようにしてもよい。これにより、使用前に容器1を簡単に分離させることができる。
【0099】
また、容器1の材質は、樹脂以外にも、例えば、紙であってもよい。
【0100】
また、容器1の形状は一例を示すものであり、花や葉以外の形状であってもよいのはもちろんのことである。
【0101】
また、毒餌剤Aの形状は球形に限られるものではなく、例えば、柱状であってもよい。また、毒餌剤Aは、上記した容器1以外の容器に収容することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明にかかる毒餌剤は、例えばバリアフリー構造の容器に収容して使用するのに適している。
【符号の説明】
【0103】
1 容器
10 設置用板部
20 対向板部
31〜33 柱状部
A 毒餌剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリを防除するためのアリ用毒餌剤であって、
少なくとも、殺虫剤と、ショ糖と、グリセリンと、水飴と、粉体とを構成成分として含み、これら成分をゲル状又はペースト状となるように混ぜ合わされてなることを特徴とするアリ用毒餌剤。
【請求項2】
請求項1の発明において、
粉体は、動物性又は植物性原料からなることを特徴とするアリ用毒餌剤。
【請求項3】
請求項1または2の発明において、
水飴の混合量は、ショ糖の析出が起こらないように設定されていることを特徴とするアリ用毒餌剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つの発明において、
周壁部の無いバリアフリー構造の容器に収容されることを特徴とするアリ用毒餌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−98945(P2011−98945A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256404(P2009−256404)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】