説明

アルカリ金属ドープオキシフッ化マグネシウム触媒の存在下において1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパンを2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに脱塩化水素化する方法および前記触媒を製造する方法

フッ素化オレフィンを製造するための方法に関する。該方法は、隣接する炭素原子上に少なくとも1個の水素原子および少なくとも1個の塩素原子を有するヒドロクロロフルオロカーボンを、触媒有効量の触媒組成物の存在下で脱塩化水素化する工程を有する。該触媒組成物は以下に表される:n重量% MX/M’O(式中、0<y<1および0<z<2であり、y+z/2=1であり;Mは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択されるアルカリ金属イオンであり;Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンイオンであり;M’は二価金属イオンであり;nは、MXおよびM’Oの全重量に基づいて約0.05%から約50%であるMXの重量百分率であり、yおよびzは、それぞれM’Oにおける酸素およびフッ素のモル分率である)。また、触媒組成物を製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年5月30日に出願した米国仮出願第61/057,477号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、触媒の存在下で1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(244bb)を脱塩化水素化することによって2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を製造するための方法に関する。本発明はさらに、アルカリ金属ドープオキシフッ化マグネシウム触媒を製造するための2つの方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロロフルオロカーボン類(CFCs)などの塩素含有化合物は、冷媒、気泡発泡剤、洗浄剤、溶媒、熱伝達媒体、滅菌剤、エアゾール噴霧剤、誘電体、消火剤および動力サイクル作動流体として用いられている。こうした塩素含有化合物は、地球のオゾン層に有害である恐れがある。さらに、CFCの代替物として使用されるヒドロフルオロカーボン類(HFCs)の多くは、地球温暖化に寄与することも認められている。これらの理由のため、より環境に優しい新規化合物を開発する必要がある。地球温暖化係数(GWP:global warming potential)が低い化合物である2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)は、こうした環境に優しい化合物のひとつである。
【0004】
1234yfは、CFCである1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(244bb)の脱塩化水素化により製造することができる。こうした反応において高度の変換および/または選択性をもたらす触媒系を有することが望ましいと思われる。CFCをHFCに変換するためのその他の脱塩化水素化方法において同様に有用である触媒系を有することもさらに望ましいと思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、フッ素化オレフィンを製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、隣接する炭素原子上に少なくとも1個の水素原子および少なくとも1個の塩素原子を有するヒドロクロロフルオロカーボンを、触媒有効量の触媒組成物の存在下で脱塩化水素化する工程を有する。該触媒組成物は、n重量% MX/M’Oとして表される(式中、0<y<1および0<z<2であり、y+z/2=1であり;Mは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択されるアルカリ金属イオンであり;Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンイオンであり、M’は二価金属イオンであり;nは、MXおよびM’Oの全重量に基づいて約0.05%から約50%であるMXの重量百分率であり;そして、yおよびzは、それぞれM’Oにおける酸素およびフッ素のモル分率である)。
【0007】
さらに、本発明によれば、固体触媒組成物を調製するための方法が提供される。該方法は(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;(B)有効量の二価金属オキシフッ化物を、該アルカリ金属ハロゲン化物溶液中に混合することによってスラリーを形成し、任意選択により該スラリーを押し出すことによって押出物を形成する工程;(C)溶媒を該スラリーまたは該押出物から実質的に除去することによって固体残渣を形成する工程;(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣組成物を焼成する工程;(E)該焼成試料を微粉末に粉砕する工程;および(F)該微粉末をペレット化することによって触媒組成物のペレットを形成する工程;を有する。
【0008】
さらに、本発明によれば、触媒組成物を調製するための別の方法が提供される。該方法は(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;(B)二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を、該アルカリ金属ハロゲン化物溶液と混合することによってスラリーを形成する工程;(C)溶媒を該スラリーから実質的に除去することによって、該アルカリ金属ハロゲン化物、および該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数の固体残渣を形成する工程;(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣組成物を焼成する工程;(E)該焼成試料を微粉末に粉砕する工程;(F)該微粉末をペレット化することによってペレットを形成する工程;および(G)該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を二価金属オキシフッ化物に変換するのに十分な条件下で、該ペレットをHFと接触させることによって触媒組成物のペレットを形成する工程;を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、フッ素化オレフィンを製造するのに有用である。隣接する炭素原子上に少なくとも1個の水素原子および少なくとも1個の塩素原子を有するヒドロクロロフルオロカーボンは、触媒有効量の触媒組成物の存在下で脱塩化水素化される。該触媒組成物は以下の通りに表される:
n重量% MX/M’O
【0010】
「n」は、MXおよびM’Oの全重量に基づいた触媒組成物におけるMXの重量百分率(重量%の値)を表す。該重量百分率は、好ましくは約0.05%から約50%、より好ましくは約5%から約15%、最も好ましくは約7.5%から約12.5%の範囲である。
【0011】
「MX」はアルカリ金属ハロゲン化物を示す。「M」は、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択されるアルカリ金属イオンである。好ましいアルカリ金属イオンとして、KおよびCsが挙げられる。「X」は、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンイオンである。好ましいハロゲンイオンとして、FおよびClが挙げられる。アルカリ金属ハロゲン化物の例として、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、LiF、NaF、KFおよびCsFが挙げられる。
【0012】
「M’O」は二価金属オキシフッ化物を示す。M’は二価金属イオンである。有用な二価金属イオンとして、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Fe2+、Co2+、Cu2+およびZn2+が挙げられる。好ましい二価金属イオンとして、Mg2+およびNi2+が挙げられる。「y」および「z」は、それぞれM’Oにおける酸素およびフッ素のモル分率を表し、0<y<1および0<z<2であり、y+z/2=1である。二価金属オキシフッ化物の例として、Mg、Ni、Co、CuおよびZnのオキシフッ化物が挙げられる。
【0013】
好ましい触媒組成物において、「n」は約10%であり、Mは、Na、KおよびCsの中から選択され、Xは、F、ClおよびBrの中から選択され、M’は、Mg2+およびNi2+から選択される。別の好ましい触媒組成物において、「n」は約10%であり、Mは、KおよびCsの中から選択される。Xは、FおよびClの中から選択される。M’は、Mg2+およびNi2+の中から選択される。
【0014】
本発明の方法は、隣接する炭素原子上に少なくとも1個の水素原子および少なくとも1個の塩素原子を有するヒドロクロロフルオロカーボンの脱塩化水素化を介してフッ素化オレフィンを製造するのに有用である。表1に、ヒドロクロロフルオロカーボンおよびそれらに対応するフッ素化オレフィン生成物を列挙する。
【0015】
【表1】

【0016】
好ましいヒドロクロロフルオロカーボンは、1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(244bb)であり、対応するフッ素化オレフィン生成物は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)である。
フッ素化オレフィン、すなわちヒドロフルオロカーボンまたはフルオロカーボンに加えて、生成物混合物は、変換されなかったヒドロクロロフルオロカーボンおよび副生成物の塩化水素を有する場合もある。
【0017】
目的生成物のための増強したまたは向上した選択性は、本発明の重要な特徴である。脱塩化水素化反応は、約50%以上、好ましくは約70%以上、最も好ましくは約90%以上の選択率で実施されるのが好ましい。変換は、約5%以上、最も好ましくは約20%以上であるのが好ましい。
【0018】
脱塩化水素化は、約200℃から約800℃、好ましくは約300℃から約600℃、より好ましくは約350℃から約500℃の温度範囲にて触媒の存在下で実施することができる。超大気圧、大気圧および準大気圧など様々な反応圧力を使用することができると企図される。
【0019】
脱塩化水素化は、任意選択により、酸化剤の存在下または非存在下で実施することができる。酸化剤の有用な例として、これらに限定されないが、酸素および二酸化炭素が挙げられる。酸化剤の使用により、触媒の寿命を延長することができる。酸化剤は純粋であってもよく、または反応器内に導入する前に窒素などの不活性ガスで希釈することもできる。酸化剤の濃度は、有機供給原料の容量に基づいて一般に約1容量%から約10容量%、好ましくは約2容量%から5容量%である。
【0020】
反応器内に配置させたまま長期におよぶ使用の後、触媒を定期的に再生させることが有利な場合もある。触媒の再生は、当技術分野において知られている任意の手段により達成することができる。一つの方法は、酸素、または窒素で希釈した酸素を、約200℃から約600℃(好ましくは約350℃から約450℃)の温度で約0.5時間から約3日間触媒上を通過させ、続いて約25℃から約600℃(好ましくは約200℃から約400℃)の温度でハロゲン化処理することによる。
【0021】
脱塩化水素化は、耐食性反応容器内で実施するのが好ましい。耐食性材料の例は、ハステロイ(Hastelloy)、インコネル(Inconel)およびモネル(Monel)である。該容器は固定または流動触媒床を有することができる。所望であれば、操作中に反応器内で窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを用いることができる。
【0022】
触媒組成物は、本発明の方法(第一の方法)に従って調製することができる。該方法は(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;(B)有効量の二価金属オキシフッ化物を、該アルカリ金属ハロゲン化物溶液中に混合することによってスラリーを形成する工程;(C)溶媒を該スラリーから実質的に除去することによって固体残渣を形成する工程;(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣組成物を焼成する工程;(E)該焼成試料を微粉末に粉砕する工程;および(F)該微粉末をペレット化することによって触媒組成物のペレットを形成する工程;を有する。
【0023】
該触媒組成物は、本発明の別の方法(第二の方法)に従って調製することができる。該方法は(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;(B)二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を、該アルカリ金属ハロゲン化物溶液中に混合することによってスラリーを形成する工程;(C)溶媒を該スラリーから実質的に除去することによって、該アルカリ金属ハロゲン化物、および該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数の固体残渣を形成する工程;(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣組成物を焼成する工程;(E)該焼成試料を微粉末に粉砕する工程;(F)該微粉末をペレット化することによってペレットを形成する工程;および(G)該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を二価金属オキシフッ化物に変換するのに十分な条件下で、該ペレットをHFと接触させる工程;を有する。
【0024】
選択される溶媒は、その溶媒中にアルカリ金属ハロゲン化物が容易に溶解するものである。使用される特定の溶媒は、アルカリ金属ハロゲン化物の選択に依存することができる。本発明において有用な溶媒として、これらに限定されないが、水、アルコール(一価および多価)およびエーテルが挙げられる。好ましいアルコールは、1個から5個の炭素を有する。水は最も好ましい溶媒である。二価金属オキシフッ化物は、アルカリ金属ハロゲン化物/溶媒混合物(混合されたもの)に直接添加することができ、またはアルカリ金属ハロゲン化物に使用される同じ溶媒の一分量中に予備混合し、この予備混合物をアルカリ金属ハロゲン化物/溶媒混合物に直接添加することもできる。
【0025】
上記の2つの方法のいずれかにおいて、該溶媒は、スラリーから溶媒の一部を取り去ってペースト(成形可能な塊)を形成すること、および該ペーストを乾燥して粉末を形成することにより、除去するのが好ましい。該溶媒は、ペーストが形成されるように、周囲温度または高温での激しい撹拌、蒸発、沈殿およびデカント、遠心分離またはろ過など当技術分野において知られている任意の通常の方法により取り去るのが好ましい。次いで、該ペーストを任意の既知の常法、例えば炉加熱、噴霧乾燥または蒸発により乾燥させることによって、実質的に自由流動性の粉末を形成することが好ましい。該溶媒は、触媒組成物が、組成物の全重量に基づき、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の溶媒になるように除去する。最も好ましくは、溶媒の除去後、触媒組成物には実質的に溶媒がない。
【0026】
溶媒を除去した後、固体残渣は、実質的な焼成を行うのに十分な条件で焼成するのが好ましい。焼成は、約300℃から約600℃、より好ましくは約400℃から約450℃の温度で実施するのが好ましい。焼成は、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスの存在下で実施するのが好ましい。焼成は、約2時間から約8時間、より好ましくは約4時間から約6時間の期間実施するのが好ましい。焼成は、超大気圧、大気圧および準大気圧など様々な圧力で実施することができる。大気圧が好ましい。
【0027】
固体残渣を焼成した後、焼成された固体塊を粉砕することによって微粉末を形成する。該微粉末は次いで、ペレット形態にペレット化する。所望であれば、潤滑剤および結合剤(バインダー)などの賦形剤を、ペレット化の前に該粉末に添加することができる。
【0028】
第二の方法において、ペレットは、二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数から二価金属オキシフッ化物への変換をもたらすのに十分な条件下でHFと接触させる。変換は、約300℃から約600℃、好ましくは約350℃から約550℃、最も好ましくは約400℃から約500℃の温度で実施する。変換は大気圧で実施するのが好ましい。しかしながら、所望であれば、超大気圧および準大気圧を使用することができる。変換は、約0.5時間から約20時間、好ましくは約1時間から約8時間、最も好ましくは約2時間から約4時間の期間実施する。
【0029】
以下は本発明の実施例であり、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0030】
以下の実施例により、本発明の方法を使用することにより調製される選択二価金属のオキシフッ化物をベースとする触媒が、244bbから1234yfへの脱塩化水素化に対して活性および選択的であり、かつ、それらの対照となる二価金属フッ化物をベースとする触媒よりも活性であることを実証する。
【0031】
実施例1:HF処理した10重量%のCsCl/MgO触媒上による244bbの脱ハロゲン化水素
実施例1において、(a)99.9%CsCl 6.67グラムを水200ml中に溶解することによってCsCl水溶液を形成し;(b)MgO 60.00グラムを該CsCl溶液中に混合することによってスラリーを形成し;(c)室温から80℃で激しく撹拌して該スラリーから水を除去することによってペーストを形成し;(d)該ペーストを100℃から120℃で8時間、乾燥器内で乾燥させることによって固体残渣を形成し;(e)該固体残渣を400℃にて窒素下で4時間焼成し、(f)該焼成試料を乳棒付き乳鉢内で粉砕することによって微粉末を形成し、(f)該粉末をペレット化することによってペレットを形成する;ことにより、10重量%のCsCl/MgO触媒を調製した。このペレット20ccを1.905cm(3/4インチ)のモネル反応器内に充填し、反応の前に、5%HF/N流を用いて350〜490℃で2時間処理した。
【0032】
次いで、99.1%244bb/0.4%1233xf(モルパーセント)の混合物を、6グラム/時間(g/h)の速度で、触媒床に通過させた。触媒床の底部温度および触媒床の最上部温度を記録および報告した。表2に見られる通り、HF処理した10重量%のCsCl/MgO触媒は、約33%の244bb変換率および約97%の1234yf選択率をもたらした。その活性は、同様の条件下における10重量%のCsCl/MgF触媒の活性よりも約60%高かった。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例2:HF処理した10重量%のCsF/MgO触媒上による244bbの脱ハロゲン化水素
実施例2において、(a)99.9%CsF 6.67グラムを水200ml中に溶解することによってCsF水溶液を形成し;(b)MgO 60.00グラムを該CsF溶液中に混合することによってスラリーを形成し;(c)室温から80℃で激しく撹拌して水を該スラリーから除去することによってペーストを形成し;(d)該ペーストを100℃から120℃で8時間、乾燥器内で乾燥することによって固体残渣を形成し;(e)該固体残渣を400℃にて窒素下で4時間焼成し;(f)該焼成試料を乳棒付き乳鉢内で粉砕することによって微粉末を形成し;(g)該粉末をペレット化することによってペレットを形成する;ことにより、10重量%のCsF/MgO触媒を調製した。このペレット20ccを1.905cm(3/4インチ)のモネル反応器に充填し、反応の前に、5%HF/N流を用いて350〜490℃で2時間処理した。
【0035】
次いで、99.1%244bb/0.4%1233xf(モルパーセント)の混合物を、6グラム/時間(g/h)の速度で、触媒床に通過させた。触媒床の底部温度および触媒床の最上部温度を記録および報告した。表3に見られる通り、HF処理した10重量%のCsF/MgO触媒は、約28%の244bb変換率および約98%の1234yf選択率をもたらした。その活性は、同様の条件下における10重量%のCsF/MgF触媒の活性よりも約40%高かった。
【0036】
【表3】

【0037】
前述の記載は、本発明の例示に過ぎないことを理解されるべきである。様々な変更および修正が、本発明から逸脱することなく当業者により考案され得る。すなわち、本発明は、添付の請求項の範囲内に含まれる全てのこうした変更、修正および改変を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化オレフィンを製造するための方法であって、
隣接する炭素原子上に少なくとも1個の水素原子および少なくとも1個の塩素原子を有するヒドロクロロフルオロカーボンを、以下に表される触媒組成物の触媒有効量の存在下において、脱塩化水素化する工程を含む、前記方法:
n重量% MX/M’O
(式中、0<y<1および0<z<2であり、y+z/2=1であり;Mは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択されるアルカリ金属イオンであり;Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンイオンであり;M’は二価金属イオンであり;nは、MXおよびM’Oの全重量に基づいて約0.05%から約50%であるMXの重量百分率であり;そして、yおよびzは、それぞれM’Oにおける酸素およびフッ素のモル分率である)。
【請求項2】
二価金属イオンがMg2+またはNi2+であり、アルカリ金属イオンがCsまたはKであり、ハロゲンイオンがFおよびClからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素化オレフィンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項4】
(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;および
(B)有効量の二価金属オキシフッ化物を該アルカリ金属ハロゲン化物溶液中に混合することによってスラリーを形成する工程;
を含む方法。
【請求項5】
(C)溶媒を該スラリーから実質的に除去することによって固体残渣を形成する工程;
(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣を焼成する工程;および
(E)該焼成残渣を粉末に粉砕する工程;および
(F)該粉末をペレット化することによって固体触媒組成物を形成する工程;
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(C)該スラリーを押し出すことによって押出物を形成する工程;
(D)溶媒を該押出物から実質的に除去することによって固体残渣を形成する工程;および
(E)任意選択により、実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣を焼成する工程;
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の方法であって、該触媒組成物が以下に表されるものである方法:
n重量% MX/M’O
(式中、該アルカリ金属ハロゲン化物はMXにより表され;該二価金属オキシフッ化物はM’Oにより表され;0<y<1および0<z<2であり、y+z/2=1であり;Mは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択されるアルカリ金属イオンであり;Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンイオンであり;M’は二価金属イオンであり;nは、MXおよびM’Oの全重量に基づいて約0.05%から約50%であるMXの重量百分率であり、yおよびzは、それぞれM’Oにおける酸素およびフッ素のモル分率である)。
【請求項8】
(A)(i)アルカリ金属ハロゲン化物を有効量の溶媒中に溶解すること、あるいは(ii)アルカリ金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数をハロゲン化水素の水溶液中に溶解すること、によってアルカリ金属ハロゲン化物溶液を形成する工程;および
(B)二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を該アルカリ金属ハロゲン化物溶液中に混合することによってスラリーを形成する工程;
を含む方法。
【請求項9】
(C)溶媒を該スラリーまたは押出物から実質的に除去することによって、該アルカリ金属ハロゲン化物、および該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数の固体残渣を形成する工程;
(D)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣を焼成することによって焼成残渣を形成する工程;
(E)該焼成残渣を粉末に粉砕する工程;
(F)該粉末をペレット化することによってペレットを形成する工程;および
(G)該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を二価金属オキシフッ化物に変換するのに十分な条件下で、該ペレットをHFと接触させる工程;
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(C)該スラリーを押し出すことによって押出物を形成する工程;
(D)溶媒を該押出物から実質的に除去することによって、該アルカリ金属ハロゲン化物、および該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数の固体残渣を形成する工程;
(E)実質的な焼成を行うのに十分な条件で該固体残渣を焼成することによって焼成残渣を形成する工程;
(F)該焼成残渣を粉末に粉砕する工程;
(G)該粉末をペレット化することによってペレットを形成する工程;および
(H)該二価金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩の1つまたは複数を二価金属オキシフッ化物に変換するのに十分な条件下で、該ペレットをHFと接触させる工程;
をさらに含む、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−523652(P2011−523652A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511806(P2011−511806)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045414
【国際公開番号】WO2009/155029
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】