説明

アルキル−グリコシドで増強されたワクチン接種

本明細書に記載されるのは、アルキルグリコシドを含む被験体の非侵襲的免疫化のための方法である。また、本明細書に記載されるのは、被験体の非侵襲的免疫化のための組成物、キット、およびデバイスである。(1)AIDSおよびインフルエンザを含むウイルス、(2)破傷風およびTBを含む細菌、(3)マラリアを含む寄生虫、および(4)広範な癌のタイプを含む悪性腫瘍はすべて、特別の設備および医療人員を必要とすることなく非侵襲的ワクチンで予防され得るか、または処置され得る。本明細書に記載される組成物、デバイス、および方法は、この長く継続する必要性を取り扱う。本発明の組成物は、ワクチンの皮膚透過を促進するアルキルグリコシドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年2月23日に出願された米国仮出願第60/655,318号への優先権の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
脊椎動物の免疫システムの活性化は、病原体および悪性腫瘍に対して動物を保護するための重要な機構である。この免疫システムは、体液性ブランチおよび細胞性ブランチを含む多くの相互作用成分からなる。体液性免疫は、抗原に直接結合する抗体を含む。体液性免疫のエフェクターとしての抗体分子は、Bリンパ球によって分泌される。細胞性免疫は、その他の細胞を認識および殺傷し、そして非自己抗原を産生する特殊な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。CTLは、MHC(主要組織適合性複合体)クラスI分子に結合された標的細胞の表面上に出現する分解されたペプチドフラグメントに応答する。細胞内で産生されたタンパク質は、細胞代謝の一部としてペプチドに連続的に分解されることが理解される。これらのフラグメントはMHC分子に結合し、そして細胞表面に輸送される。従って、細胞性免疫システムは、身体中のすべての細胞で産生されたタンパク質のスペクトルを絶え間なくモニターし、そして非自己抗原を産生する任意の細胞を排除するよう釣合わせる。
【0003】
ワクチン接種は、抗原に応答するために動物をプライムするプロセスである。抗原は、タンパク質として(古典的)、または、次に、抗原を発現する遺伝子として投与され得る(遺伝子免疫化)。このプロセスは、TおよびBリンパ球、その他のタイプのリンパ系細胞、ならびに抗原を処理し得、そして免疫システムを活性化し得る形態でそれを提示する特殊な抗原提示細胞(APC)を含む。遺伝子ワクチンの投与のための現在の方法は侵襲的手順に焦点をあて、これは、ニードルによる注射、乱切法、および遺伝子銃で仲介される貫通を含む。侵襲的技法を用いる接種は、特別の医療訓練をともなう設備および人員を必要とし、そして、通常、不快さおよび潜在的な危険(例えば、出血、感染)をともなう。
【0004】
ワクチンの効目は、腫瘍または病原体による後の抗原投与に対する保護の延長によって測定される。有効なワクチンは、最小数の接種の後の、疾患に対する標的介入のための高力価および長く継続する保護免疫を含み得る。例えば、遺伝子免疫は、動物自身の細胞で特定タンパク質をコードする遺伝子を発現することによって、このタンパク質に対する免疫応答を惹起するためのアプローチである。インビボにおける持続した抗原提示から得られる実質的な抗原増幅および免疫刺激は、抗原に対する強固な免疫を誘導し得る。遺伝子免疫は特定タンパク質に対する免疫応答を産生するためのワクチン接種プロトコールを単純にする。なぜなら、ワクチン開発のために必要な慣用的に要求されるしばしば困難なステップであるタンパク質精製およびアジュバントとの組み合わせの両方がないからである。遺伝子免疫化はタンパク質の単離を必要としないので、生化学的に精製されるとき、立体配座エピトープを失い得るタンパク質にとっては特に価値がある。遺伝子ワクチンはまた、干渉を惹起することなく、または効目に影響することなく組み合わせて投与され得、これは、複数抗原に対するワクチン接種スキームを単純にし得る。
【0005】
ワクチンを投与することに対する非侵襲的アプローチが調査されている。例えば、局所的に適用されるタンパク質を基礎にしたワクチンが研究されているが(非特許文献1);それらの有用性は制限されている。遺伝子ワクチンの効目は、一般に、自然の感染に類似の抗原のデノボ合成に起因してタンパク質ワクチンの効目より優れている(非特許文献2)。
【非特許文献1】Glennら、「コレラトキシンによって可能とされる皮膚免疫化」Nature 391:851、1998
【非特許文献2】McDonnellおよびAskai、「DNAワクチン」、New Engl J Med 334:42〜45、1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に記載のように、ワクチン化は、通常、装備、例えばシリンジニードルまたは遺伝子銃、およびワクチンの投与のために特別の熟練を必要とする。医療的訓練および装備なしの人員によるワクチンの接種のための大いなる必要性および願いが当該技術分野にはある。多数の疾患が、非侵襲的ワクチン接種の開発によって免疫化され得る可能性がある。なぜなら、この手順は、単純であり、有効であり、経済的であり、痛みがなく、そして潜在的に安全であるからである。結果として、非侵襲的ワクチン接種は、医療資源が供給不足である開発途上国、および患者の心地良さに起因して先進国におけるサービス達成区域を押し上げ得る。(1)AIDSおよびインフルエンザを含むウイルス、(2)破傷風およびTBを含む細菌、(3)マラリアを含む寄生虫、および(4)広範な癌のタイプを含む悪性腫瘍はすべて、特別の設備および医療人員を必要とすることなく非侵襲的ワクチンで予防され得るか、または処置され得る。本明細書に記載される組成物、デバイス、および方法は、この長く継続する必要性を取り扱う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
本明細書に記載されるのは、被験体の非侵襲的免疫化のための方法である。また、本明細書に記載されるのは、被験体の非侵襲的免疫化のための組成物、キット、およびデバイスである。本発明の利点は、一部は以下の説明で提示され、そして一部はこの説明で明らかであるか、または以下に説明される局面の実施によって学ばれ得る。以下に説明される利点は、添付の請求項中で詳細に指摘される要素および組み合わせによって実現され、そして達成される。先行する一般的説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のみであり、そして制限的でないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(詳細な説明)
本発明の化合物、組成物、キット、デバイス、および/または方法が開示され、そして説明される前に、以下に説明される局面は、特定の化合物、合成方法、または使用に制限されず、従って、勿論、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語法もまた、特定の局面のみを説明する目的のためであり、そして制限的であることは意図されないことが理解されるべきである。
【0009】
本明細書および添付の請求項では、以下の意味を有することが規定される多くの用語への参照がなされる:
明細書および本明細書の請求項の全体で、語「包含する(comprize)」および「包含している(comprising)」および「包含する(comprizes)」のようなこの語のその他の形態は、制限されずに含むことを意味し、例えば、その他の添加物、成分、整数、またはステップを排除することは意図されない。
【0010】
明細書および添付の請求項中で用いられるとき、文脈が明瞭にそうでないことを示さなければ、単数形態「a」、「an」および「the」は複数の参照物を含むことが注目されなければならない。それ故、例えば、「薬学的キャリア」への参照は、2つ以上のこのようなキャリアの混合物を含むなどである。
【0011】
「随意の」または「必要に応じて」は、引き続き記載される事象または状況が生じても良いし、または生じなくてもよく、しかもこの記載は、この事象または状況が生じる事例およびそれが生じない事例を含むことを意味する。例えば、語句「必要に応じて置換された低級アルキル」は、低級アルキル基が置換されてもされなくても良く、しかもこの記載は、非置換低級アルキルおよび置換が存在している低級アルキルの両方を含む。
【0012】
範囲は、本明細書中で、「約」の付く1つの特定値から、そして/または「約」の付く別の特定値として表現され得る。このような範囲が表現されるとき、別の局面は、1つの特定値から、そして/または他方の特定値までを含む。同様に、複数の値が先行詞「約」の使用による近似として表現されるとき、この特定の値は別の局面を形成することが理解される。さらに、これらの範囲の各々の終点は、他方の終点に関連し、およびこの他方の終点とは独立であることの両方で重要であることが理解される。
【0013】
開示されるのは、開示される方法および組成物のために用いられ得るか、それと組み合わせて用いられ得るか、その調製のために用いられ得るか、またはその産物である化合物、組成物、および成分である。これの材料およびその他の材料は、本明細書中に開示され、そしてこれらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グルーブなどが開示されるとき、これら化合物の各々の種々の個々の組み合わせおよび集合的組み合わせおよび順列の詳細な参照が明示して開示されなくとも良く、各々は詳細に企図され、そして本明細書中に記載されていることが理解される。例えば、多くの異なるアルキルグリコシドおよびワクチンが開示され、そして論議されている場合、このアルキルグリコシドとワクチンとの各々およびすべての組み合わせおよび順列が、そうでないことが特定して示されていなければ、詳細に企図される。従って、分子A、B、およびCのクラスが開示され、そして分子D、E、およびFのクラス、および組み合わせ分子A−Dが開示される場合、そのときは、たとえ各々が個々に記載されていなくても、各々が個々に、そして集合的に企図される。それ故、これ例では、各々の組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが詳細に企図され、そしてA、B、およびC;D、E、およびF;ならびに組み合わせA−Dの開示から開示されると考えられるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた、特定して企図され、そして開示される。それ故、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブグループが特定して企図され、そしてA、B、およびC;D、E、およびF;ならびに組み合わせA−Dの開示から開示されると考えられるべきである。この概念は、本開示のすべての局面に適用され、これには、制限されないで、開示された組成物を作製および用いる方法にかけるステップが含まれる。それ故、実施され得る種々のさらなるステップが存在する場合、これらの付加的ステップの各々は、開示される方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施され得、しかも、各々のこのような組み合わせが詳細に企図され、そして開示されると考えられるべきである。
【0014】
本明細書中に開示される特定の材料、化合物、組成物、および成分は、市販されて得られるか、または当業者に一般に公知の技法を用いて容易に合成され得る。例えば、開示される化合物および組成物を調製する際に用いられる出発材料および試薬は、Aldrich Chemical Co.、(Milwaukee、Wis.)、Acros Organics(Morris Plains、H.J.)、Fisher Scientific(Pittsburg、Pa.)、またはSigma(St.Louis、Mo.)のような商業的供給元から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagent for Organic Synthesis、1〜17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、1〜5巻および補遣(Elsevier Science Publishers、1989);Organic Reactions、1〜40巻(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry、(John Wiley and Sons、第4版);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.1989)のような参考文献に提示される手順に従う、当業者に公知の方法によって調製される。
【0015】
(A.組成物)
以下に説明されるように、本明細書中の方法は、アルキルグリコシドおよびワクチンを被験体に逐次的または同時に投与することを企図する。このアルキルグリコシドおよびワクチンを同時に投与する1つの方法は、投与の前にこれら化合物を一緒に混合することである。このアルキルグリコシドおよびこのワクチンの選択ならびに混合条件に依存して、このアルキルグリコシドおよびこのワクチンは、互いと反応しても良いし、しなくても良い。以下に説明されるのは、本明細書で用いられ得るアルキルグリコシドおよびワクチンの異なる局面である。
【0016】
(1.アルキルグリコシド)
アルキルグリコシドは、被験体を免疫化するためにワクチンと組み合わせ用いられる。本明細書で用いられるとき、用語「アルキル基」は、1〜25炭素原子の分岐または非分岐飽和炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。より長い鎖のアルキル基の例は、制限されずに、オレエート基またはパルミテート基を含む。「低級アルキル」基は、1〜6の炭素原子を含むアルキル基である。
【0017】
用語アルキルはまた、本明細書中では、「アルケン」または「アルケニル基」として知られる不飽和炭化水素を含むために用いられ、これらは、本明細書中で用いられるとき、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式を備えた少なくとも2の炭素原子の炭化水素基をいう。(AB)C=C(CD)のような非対称構造は、EおよびZ異性体(cisおよびtrans)の両方を含むことが意図される。
【0018】
本明細書に開示されるアルキル基はまた置換され得る。本明細書で用いられるとき、用語「置換され」は、有機化合物のすべての許容可能な置換基を含むことが企図される。広い局面では、これら許容可能な置換基は、有機化合物の非環状および環状、分岐および非分岐、炭素環およびヘテロ環、ならびに芳香族および非芳香族置換基を含む。例示の置換基は、例えば、以下に記載されるものを含む。上記許容可能な置換基は、適切な有機化合物について1つ以上であり得、そして同じかまたは異なり得る。本開示の目的には、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基、および/またはこれらヘテロ原子の原子価を満たす本明細書中に記載される有機化合物の任意の許容可能な置換基を有し得る。本開示は、有機化合物の許容可能な置換基によって任意の様式で制限されることは意図されない。また、用語「置換」または「で置換される」は、このような置換が置換された原子およびこの置換基の許容された原子価に従うこと、しかもこの置換が、安定な化合物、例えば、再転位、環化、遊離などによるように自然に変換を行わない化合物を生じるという暗黙の条件を含む。例えば、アルキル基は、制限されないで、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド、またはチオールを含む1つ以上の基で置換され得る。
【0019】
1つの局面では、アルキルグリコシドは、任意の疎水性アルキル基に結合によって連結された任意の糖類/炭水化物である。これは、制限されないで、エーテル結合を経由して糖類/炭水化物のアノマー炭素に結合されたアルキル基、およびエーテル結合により糖類/炭水化物のアノマー炭素に結合されたアルキル基を含む。アルキル基と糖類/炭水化物のその他の結合もまた可能であり、例えば、チオエーテル、チオエステル、アミン、アミド、ウレア、カルバメートなどがある。所望の疎水性および糖類部分の親水性に依存して、任意の所望のサイズの疎水性アルキル基が選択され得る。1つの局面では、アルキル基は、6〜25の炭素原子、6〜20の炭素原子、6〜18の炭素原子、6〜16の炭素原子、6〜14の炭素原子であり得る。その他の実施形態では、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25の基であり得、ここで、任意の陳述された値が、必要に応じて上方または下方の終点を形成し得る。用語「糖類」は、制限されないで、直鎖または環形態にある単糖類、オリゴ糖類を含む。オリゴ糖類は、2つ以上の単糖残基を有する糖類であり、その一方、多糖類は、2つ以上の単糖単位を有する。
【0020】
アルキルグリコシドは、一般に、被験体に非毒性である。本明細書で用いられるとき、「非毒性」は、被験体への投与に適切であるように十分に低い毒性を有する分子として規定される。このアルキルグリコシドは、それが付与される組織に対し非刺激性であることが所望される。このアルキルグリコシドは、細胞への損傷を引き起こさないように、細胞に対して最小の毒性であるべきである。任意の所定のアルキルグリコシドについての毒性は、用いられるアルキルグリコシドの濃度で変動し得る。選択されたアルキルグリコシドが身体によって代謝されるか、または排除される場合、そしてこの代謝または排除が有害に毒性でない様式でなされる場合もまた有利である。1つの局面では、このアルキルグリコシドは、非毒性であり得る。
【0021】
このアルキルグリコシドの親水性特徴もまた、親水性−親油性バランス数として定量され得る。用語「親水性−親油性バランス数(HLB)」は、先に記載のように(Schick、Nonionic Surfactants、Marcel Dekker,Inc.New York、607頁、1967)、算出され得るか、または実験的に決定され得るかいずれかであり得る個々の界面活性剤の特徴である。HLBは、式:20×MW親水性成分/(MW疎水性成分+MW親水性成分)によって算出され、ここでMW=分子量(Rosen、Surfactant and Interfacial Phenomena、John Wiley、New York、242〜245頁、1978)である。このHLBは、界面活性剤の親水性特徴の直接的表現であり、すなわち、このHLBが大きい程、化合物はより親水性である。1つの実施形態では、アルキルグリコシドは、約10〜20、11〜19、11〜18、11〜17、11〜16、または11〜15の範囲にある親水性−親油性バランス数を有する。その他の実施形態では、アルキルグリコシドは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の親水性−親油性バランス数を有し、ここで、任意の述べられる値が、適切であるとき上方または下方の終点を形成し得る。このアルキルグリコシドの糖部分は、任意の現在市販され入手可能な糖類の種から選択され得るか、または合成され得る。この糖は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、または糖鎖を形成するそれらの組み合わせである。本明細書で有用な例の糖類は、制限されないで、エリスロース、スレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、マルトース、セロビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、またはそれらの誘導体もしくは組み合わせを含む。
【0022】
その他の例では、この糖内の1つ以上の酸素原子が、身体中のグリコヒドロラーゼによる加水分解切断に対する感受性を低減するために硫黄で置換され得る(DefayeおよびGelas、in Studies in Natrural Product Chemistry、Atta−ur−Rahman編、Elsevier、Amsterdam、8巻、315〜357、1991)。例えば、糖の環のヘテロ原子が酸素または硫黄のいずれかであり得るか、またはオリゴ糖中の単糖間の結合が酸素または硫黄であり得る(HortonおよびWander、「Thio Sugars and Derivatives、」 The Carbohydrates:Chemistry and Biochemistry、ReymanおよびHorton編、Academic Press、New York、第2版、IB巻、799〜842頁、1972)。オリゴ糖は、αまたはβいずれかのアノマー立体配座を有し得る(Pacsuら、in Methods in Carbohydrate Chemistry、Whistlerら編、Academic Press、New York、2巻、376〜385頁、1963を参照のこと)。
【0023】
多くのアルキルグリコシドは、当該技術分野で公知の技法を用いて合成され得る。例えば、それらの全体が参考として援用される、Rosevearら、Biochemistry 19:4108〜4115、1980;KoeltzowおよびUrfer、J Am Oil Chem Soc、61:1651〜1655、1984;米国特許第3,219,656号;米国特許第3,839,318号、;Liら、J Biol Chem、266:10723〜10726、1991;またはGopalanら、J Biol Chem、267:9629〜9638、1992が、アルキルグリコシドを合成するために用いられ得る。
【0024】
なおその他の例では、疎水性アルキル基と親水性の糖との間の結合は、制限されないで、グリコシド結合、チオグリコシド結合(Horton)、アミド結合(Carbohydrates as Organic Raw Materials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、1991)、ウレイド結合(オーストリア特許第386,414号(1988);Chem.Abstr.110:137536頁、1989、GruberおよびGreber、「反応性シュークロース誘導体」Carbohydrates as Organic Raw Materrials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、95〜116頁、1991)、またはエステル結合(Sugar Esters:Preparation and Application、Colbertら、Noyes Data Corp.、New Jersey、1974)を含む。
【0025】
本明細書で有用なアルキルグリコシドの例は、制限されずに、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、およびオクタデシルα−またはβ−D−マルトシドまたは−グルコシドを含み、これらは、例えば、KoeltzowおよびUrfer、J Am Oil Chem Soc、61:1651〜1655、1984に開示の方法に従って合成され得るか、またはAnatrace Inc.(Maumee、Ohio)、Calbiochem、(San Diego、CA)、またはFluka Chemie、(Switzerland)のような供給者から商業的に得られる。適切なアルキルグリコシドのその他の例は、制限されないで、シュークロースのヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、およびオクタデシルエステルを含む。さらなる例は、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ドデシル−、トリデシル−、およびテトラデシル−β−D−チオマルトシドのようなアルキルチオマルトシドを含み、これらは、DefayeおよびPederson、「炭水化物変換技術のためのフッ化水素、溶媒および試薬」Carbohydrates as Organic Raw Materials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、247〜265頁、1991、およびFerenci、J Bacteriol 144:7〜11、1980に開示される方法に従って合成され得る。その他の適切な例は、ヘプチル−またはオクチル−1−チオ−α−またはβ−D−グルコピラノシドのようなアルキルチオグルコシドを含み、これらは、Anatrace,Inc.(Maumee、Ohio)のような供給源から市販され入手可能であるか、または、例えば、SaitoおよびTsuchiya、Chem Pharm Bull、33:503〜508、1985に開示される方法によって合成され得る。なおさらなる例は、例えば、BinderおよびRobyt、Carbohydr Res、140:9〜20、1985中に開示される方法に従って合成され得るアルキルトリシュークロース、および、例えば、KoeltzowおよびUrfer、J Am Oil Chem、61:1651〜1655、1984中に開示される方法に従って合成され得るアルキルマルトトリオシドを含む。シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドは、さらなる適切な例であり、そして、例えば、オーストリア特許第382,381号(1987)、Chem Abstr 108:114719、1988、およびGruberおよびGreber「反応性シュークロース誘導体」Carbohydrates as Organic Raw Materials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、95〜116頁、1991に開示される方法に従って合成され得る。アルキル鎖にアミド結合によって連結されたパラチノースまたはイソマルタミンの誘導体、およびアルキル鎖に尿素によって連結されたイソマルタミンの誘導体がまた適切であり、そして、例えば、Kunz、「界面活性剤およびポリマーの合成のための中間体としてのシュークロースを基礎にした親水性構築ブロック」Carbohydrates as Organic Raw Materials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、127〜153、127〜153頁、1991に開示される方法に従って合成され得る。シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイドおよびシュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドもまた適切な例であり、そして、例えば、オーストリア特許第382、381号(1987)、Chem Abstr 108:114719、1988、およびGruberおよびGreber、「反応性シュークロース誘導体」Carbohydrates as Organic Raw Materials、Lichtenthaler編、VCH Publishers、New York、95〜116頁、1991に開示される方法に従って合成され得る。この段落で開示される参考文献は、各々、少なくともアルキルグリコシドの合成のそれらの教示について参考として本明細書中に援用される。
【0026】
さらなる例では、このアルキルグリコシドは、9、10、12または14炭素原子のアルキル鎖へのグリコシド結合によって連結されたマルトース、シュークロース、グルコース、またはそれらの組み合わせ、例えば、ノニル−、デシル−、ドデシル−およびテトラデシルスクロシド、グルコシド、およびマルトシドであり得る。これらの例では、これら組成物は非毒性である。なぜなら、それらはアルコールとオリゴ糖に分解されるからである。
【0027】
上記の局面は、本明細書で用いられ得るアルキルグリコシドのタイプの例示であり、そして排他的ではない。上記に記載されるこれらアルキルグリコシドの任意の誘導体が同様に企図される。
【0028】
(2.ワクチン)
本明細書中で用いられるとき、用語「ワクチン」は、投与に際し、被験体において免疫学的応答を誘導または可能にする任意の作用剤である。1つの例では、このワクチンは、タンパク質を基礎にしたワクチン、DNAを基礎にしたワクチン、またはRNAを基礎にしたワクチンであり得る。その他の例では、このワクチンは、抗狂犬病血清;抗毒素(Latrodectus mactans有毒グモ);抗毒素(Micrurus Fulvius);抗毒素(ガラガラヘビ科)多価;BCGワクチン;ボツリヌス抗毒素;コレラワクチン;ジフテリア抗毒素;ジフテリアトキソイド;ジフテリアトキソイド吸収型;グロブリン、免疫;B型肝炎免疫グロブリン;B型肝炎ウイルスワクチン不活性型;インフルエンザウイルスワクチン;麻疹ウイルスワクチン生;髄膜炎菌多糖ワクチングループA;髄膜炎菌多糖ワクチングループC;流行性耳下腺炎ワクチン生;百日咳免疫グロブリン;百日咳ワクチン;百日咳ワクチン吸収型;ペストワクチン;ポリオウイルスワクチン不活性型;ポリオウイルスワクチン生経口;狂犬病免疫グロブリン;狂犬病ワクチン;Rh(D)免疫グロブリン;風疹ウイルスワクチン生;スモールポックスワクチン;破傷風抗毒素;破傷風グロブリン;ジフテリア・破傷風・百日咳三種混合ワクチン;ジフテリア・破傷風・百日咳三種混合ワクチン吸収型;チフスワクチン;黄熱病ワクチン;ワクシニア免疫グロブリン;または水痘‐帯状疱疹免疫グロブリンであり得る。
【0029】
本明細書で開示される多くの例では、上記ワクチンはベクターである。本明細書で用いられるとき、「ベクター」は、1つの環境から別の環境への実体の移送を可能または促進するツールである。1つの例では、米国特許第5,990,091号、国際公開番号WO99/60164号および同WO98/00166号、van Ginkelら、「アデノウイルス遺伝子送達は、とりわけ、ベクターおよびその移入遺伝子に対する別個の肺関連Tヘルパー細胞応答を惹起する」J Immunol 159(2):685〜93、1997;およびOsterhausら、「ヒトにおける急性呼吸ウイルス感染および麻疹に対するワクチン接種」Immunology 184(2〜3):180〜92、1992に記載される技法および産物は、発現される遺伝子産物、抗体およびそれらの使用、外来核酸分子のインビボおよびインビトロ発現のためのベクター、発現されるべき核酸分子の発現を駆動するか、またはそれに作動可能に連結するためのプロモーター、このようなベクターを生成する方法および記録、このようなベクターまたは核酸分子または抗体を含む組成物、投与量、および投与の様式および/または経路(鼻投与のための組成物を含む)に関する情報を含み、本発明の実施において採用され得、そしてそれらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0030】
その他の例では、ベクター組成物は、ベクターを適切なキャリアまたは希釈剤と混合することによって処方される。別の例では、遺伝子産物、免疫学的産物、または抗体組成物が、遺伝子、免疫産物、または抗体を適切なキャリアまたは希釈剤と混合することによって処方され得る;例えば、米国特許第5,990,091号、国際公開番号WO99/60164号および同WO98/00166、およびこれらの中に引用される文献を参照のこと。
【0031】
いくつかの例では、上記ベクターは、例えば、インフルエンザ赤血球凝集素、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザM2、破傷風致死因子、狂犬病糖タンパク質、HBV表面抗原、HIV gp120、HIV gp160、ヒト癌胎児性抗原、マラリアCSP、マラリアSSP、マラリアMSP、マラリアpfg、結核菌HSPまたはそれらの変異株をコードする遺伝子を発現する。なおその他の例では、被験体における免疫応答は、例えば、表皮細胞または粘膜細胞のような被験体の細胞中で目的の抗原をコードする遺伝子を発現する遺伝子ベクターによって誘導される。さらなる例では、目的の抗原は、制限されないで、インフルエンザ赤血球凝集素、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザM2、破傷風トキシンC−フラグメント、炭疽保護抗原、炭疽致死因子、炭疽発芽および外成長関連タンパク質、狂犬病糖タンパク質、HBV表面抗原、HIV gp120、HIV gp160、ヒト癌胎児性抗原、マラリアCSP、マラリアSSP、マラリアMSP、マラリアpfg、および結核菌HSPを含む。なおその他の例では、上記免疫応答は、病原体または新生物に対する。その他の例では、上記遺伝子ベクターは、予防ワクチンまたは治療ワクチンとして用いられる。なおその他の例では、上記遺伝子ベクターは、被験体の細胞中で目的の抗原を発現し得る遺伝子ベクターを含む。
【0032】
開示される組成物および方法では、上記ベクターは、外来DNAであり得る。ベクター中の発現のための外来DNA(例えば、目的のエピトープ、抗原、または治療剤をコードする)に関し、米国特許第5,990,091号、および国際公開番号WO98/00166号および同WO99/60164号、およびその中に引用される文献、および文献は、外来DNA、ならびに核酸分子の発現を増大するための転写因子および/または翻訳因子の発現を開示している。これの文献中に引用される任意の外来核酸分子、プロモーター、およびベクターは、本明細書中に開示される組成物および方法において存在し得る。用いられ得る外来核酸のさらなる例は、米国特許第6,004,777号;同第5,997,878号;同第5,976,552号;同第5,972,597号;同第5,858,368号;同第5、863,542号;同第5,833,975号;同第5,863,542号;同第5,843,456号;同第5,766,598号;同第5,766,597号;同第5,762,939号;同第5,756,102号;同第5,756,101号;および同第5,494,807号に開示され、これらの各々は、少なくとも外来核酸のそれらの教示について本明細書中に参考として援用される。
【0033】
多くの例では、上記ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、レトロトランスポゾン、トランスポゾン、ウイルス殻、またはDNAベクターであり得る。別の局面では、上記ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクターおよびDNAベクターは、組換えベクターであり得る。いくつかの例では、上記免疫応答は、インフルエンザAに対してである。その他の例では、このインフルエンザAに対する免疫応答は、インフルエンザ赤血球凝集素、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザM2、またはそれらのフラグメントをコードする遺伝子を被験体細胞中で発現する遺伝子ベクターによって誘導される。別の局面では、上記ベクターは、ウイルスベクターおよびプラスミドDNAであり得る。
【0034】
別の例では、上記ベクターはアデノウイルスであり得る。1つの例では、このアデノウイルス組換え体は、E1−欠損、E3−欠損、および/またはE4−欠損アデノウイルスベクター、またはすべてのウイルス遺伝子が欠失される「からっぽ(gutless)」アデノウイルスベクターを含み得る。この「からっぽ」アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターファミリーにおける最新モデルである。その複製は、ヘルパーウイルスおよびE1aおよびCreの両方を発現する特別のヒト293細胞株、天然の環境では存在しない条件を必要とする。このベクターはすべてのウイルス遺伝子が奪われ;それ故、ワクチンキャリアとしてのベクターは、非免疫原性であり、そして再ワクチン接種のために複数回接種され得る。この「からっぽ」アデノウイルスベクターはまた、移入遺伝子を収容するために36kbのスペースを含み、それ故、多数の抗原遺伝子の細胞中への同時送達を可能にする。RGDモチーフのような特有の配列モチーフが、アデノウイルスベクターのH−Iループ中に挿入され得、その感染性を増大する。アデノウイルス組換え体は、上記に記載されたような任意のアデノウイルスベクター中に特定の移入遺伝子または移入遺伝子のフラグメントをクローニングすることにより構築される。1つの例では、このアデノウイルス組換え体は、免疫化剤としての使用のために非侵襲的様式で被験体の表皮細胞または粘膜細胞を形質導入するために用いられ得る。1つの例では、このアデノウイルスベクターは、そのE1領域が欠損であり得る。別の例では、このアデノウイルスベクターは、そのE3領域が欠損であり得る。さらなる例では、このアデノウイルスベクターは、そのE1およびE3領域が欠損であり得る。別の例では、上記DNAは、プラスミド形態である。
【0035】
本明細書に開示されるのはまた、例えば、同時刺激遺伝子、サイトカイン遺伝子、またはケモカインのような免疫調節遺伝子をコードし得る遺伝子ベクターである。この局面では、遺伝子は、GM−CSF遺伝子、B7−1遺伝子、B7−2遺伝子、インターロイキン−2遺伝子、インターロイキン−12遺伝子およびインターフェロン遺伝子であり得る。
【0036】
その他の例では、上記ベクターは、発現に必要な転写/翻訳信号とともに、全長遺伝子、遺伝子のフラグメントまたはいくつかの遺伝子、または、例えば、ユビキチンまたはCpG−リッチな合成DNAのような免疫調節配列と融合された遺伝子フラグメントをコードし得る。
【0037】
その他の例では、上記ベクターは、すべてのウイルス遺伝子が欠失されている。
【0038】
なおその他の例では、上記ベクターは、被験体において抗腫瘍効果を誘導する。さらなる例では、上記ベクターは、癌遺伝子、腫瘍サプレッサー遺伝子、または腫瘍関連遺伝子を発現する。別の例では、上記ベクターは、例えば、同時刺激遺伝子およびサイトカイン遺伝子のような遺伝子をさらに含む。
【0039】
本明細書にまた開示されるのは、上記ベクターがDNA/アデノウイルス複合体であるとき、プラスミドDNAが、例えば、ポリエチレンイミンまたはポリリジンのような適切な試薬を利用してアデノウイルスベクターと複合体化される。この局面では、この複合体内のアデノウイルスベクターは、「生き」ているか、またはUV照射により「殺傷され」るかのいずれかであり得る。UV不活性化アデノウイルスベクターは、DNA媒介トランスフェクションを容易にするためにレセプター結合リガンドおよびエンドソーム溶解剤として用いられ得る。1つの例では、このDNA/アデノウイルス複合体は、免疫化剤としとの使用のために非侵襲的様式で被験体の表皮細胞または粘膜細胞をトランスフェクトするために用いられ得る。
【0040】
その他の例では、DNA/リポソーム複合体が免疫化剤としとの使用のために非侵襲的様式で被験体の表皮細胞または粘膜細胞をトランスフェクトするためのベクターとして用いられ得る。
【0041】
なおその他の例では、上記ベクターは、体液性および/または細胞性免疫応答を起させるためにアジュバントとして作用し得る免疫調節分子をコードし得る。このような分子は、制限されないで、サイトカイン、同時刺激分子、または免疫応答の経路を変更し得る任意の分子を含む。
【0042】
本明細書で用いられるワクチンは、任意の数の形態をとり得、そして任意の特定のポリペプチドをコードする任意の特定の遺伝子材料に制限されない。ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、トランスポゾン、レトロトランスポゾン、ウイルス様粒子、およびDNAベクターを含むすべての形態のベクターが、非侵襲的ワクチンキャリアとして用いられるとき、本明細書中で企図される。
【0043】
(3.薬学的組成物)
本明細書に開示されるのはまた、薬学的組成物を生成するために少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられ得る上記に記載の任意のアルキルグリコシドおよびワクチンである。多くの例では、この薬学的組成物は、アルキルグリコシドおよびベクターを含む。この薬学的組成物は、当該技術分野で公知の技法を用いて調製され得る。1つの例では、この組成物は、アルキルグリコシドおよび/またはワクチンを薬学的に受容可能なキャリアと混合することによって調製される。用語「混合すること」は、2つの成分を一緒に混合することとして規定される。混合されるべき成分に依存して、2つ以上の成分間に化学的または物理的相互作用が存在しても良いし、していなくても良い。
【0044】
薬学的に受容可能なキャリアは、当業者に公知である。これらの最も代表的なものは、滅菌水、生理食塩水、および生理学的pHにある緩衝化溶液のような溶液を含む、ヒトへの投与のための標準的なキャリアである。
【0045】
薬学的送達のために意図される分子は、薬学的組成物中に処方され得る。薬学的組成物は、選択の分子に加え、キャリア、シックナー、希釈剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤などを含み得る。薬学的組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症性薬剤、麻酔剤などのような、1つ以上の活性成分を含み得る。
【0046】
投与のための調製物は、滅菌水溶液または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含む。非水性キャリアの例は、生理食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液を含む。開示される組成物および方法の付随する使用のために必要な場合、非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル、または固定油を含む。開示される組成物および方法の付随する使用のために必要な場合、静脈内ビヒクルは、流体および栄養補給剤、(リンゲルのデキストロースを基礎にするような)電解質補給剤などを含む。保存剤およびその他の添加物がまた存在し得、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどである。
【0047】
局所投与のための処方物は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、軟膏、坐剤、スプレー(例えば、エアロゾル)、液体および粉末を含み得る。従来の薬学的キャリア、水、粉末または油状ベース、シックナーなどが必要であり得るか、または所望され得る。上記アルキルグリコシドおよびワクチンは、要求または所望され得るとき、滅菌条件下、生理学的に受容可能なキャリアおよび任意の保存剤、緩衝液、推進剤、または吸収エンハンサーと混合され得る。局所投与のための組成物、例えば、クリームまたは軟膏であり得る粘性組成物、ならびに鼻および粘膜投与のための組成物の調製には、本明細書中に引用される文献、例えば、米国特許第5,990,091号、国際公開番号WO98/00166号および同WO99/60164号への参照がなされる。
【0048】
上記組成物が、粘膜、眼、鼻、または吸入によって投与されるときの場合には、この処方物は、ドロップ、スプレー、エアロゾル、または持続放出フォーマットの形態であり得る。このスプレーおよびエアロゾルは、適切な分与器の使用により達成され得る。上記持続放出フォーマットは、眼挿入物、腐食性微小粒子、膨潤性粘液接着性粒子、pH感受性微小粒子、ナノ粒子/ラテックスシステム、イオン交換樹脂およびその他のポリマーゲルおよびインプラント(例えば、Alza Corp.(Mountain View、California)から入手可能であり、そして国際公開番号WO91/19481号に記載されるようなOcusert)であり得る。これのシステムは、吸収性表面との延長された薬物接触を維持し、ウォシュアウトおよび非生産的薬物損失を防ぐ。
【0049】
特定の場合におけるアルキルグリコシドおよびワクチンの実際の好ましい量は、利用されている特定化合物、処方される特定の組成物、適用の様式、および処置されている特定の位置および患者に従って変動し得る。所定の宿主に対する投与量は、従来の考慮、例えば、被験化合物および公知の薬剤の鑑別活性の慣習的比較により、例えば、適切な従来の薬学的プロトコールにより決定され得る。医師および処方者、薬学的化合物の用量を決定する当業者は、標準的な推奨(Physicians Desk Reference、Barnhart Publishing、1999)に従って用量を決定することの問題は有さない。
【0050】
(使用の方法)
本明細書中に記載される方法は、被験体の非侵襲的免疫化において有用である。本明細書で用いられるとき、用語「非侵襲的」は、上記ワクチンを送達するためにデバイスで被験体の組織の貫通を含まない任意の技法として規定される。用語「非侵襲的」は、しかし、被験体への上記アルキルグリコシドおよびワクチンの投与の前に被験体の任意の前処理を含む。例えば、被験体の皮膚は、研磨材(例えば、パッドまたはブラシ)で磨かれ得、皮膚をこのアルキルグリコシドおよびワクチンに対してより透過性にする。1つの例では、本明細書中に記載されるのは、被験体の皮膚を通るワクチンの貫通を増加するための方法であり、以下を包含する:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、この被験体の皮膚を貫通するワクチンの量が工程(b)後で、工程(a)の非存在下で皮膚を貫通するワクチンの量と比較したときより多い工程。
【0051】
別の例では、本明細書で記載されるのは、被験体において免疫応答を増大する方法であり:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、工程(b)後の免疫応答が、工程(a)の非存在下の免疫応答と比較したときより大きい工程、を包含する。
【0052】
さらなる例では、本明細書に記載されるのは、被験体において治療応答を誘導または可能にする方法であり:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、この被験体において治療応答を誘導または可能にする工程、を包含する。
【0053】
別の例では、本明細書に記載されるのは、被験体において免疫応答または治療応答を誘導または可能にする方法であり:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の皮膚細胞を有効量のワクチンと接触する工程、を包含する。
【0054】
さらなる例では、本明細書に記載されるのは、被験体の粘膜表面を通るワクチンの貫通を増加する方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによってこの患者の粘膜表面を貫通するワクチンの量が工程(b)後に、工程(a)の不在下でこの粘膜表面を貫通するワクチンの量と比較したときより多い工程を包含し、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない。
【0055】
別の例では、本明細書に記載されるのは、被験体における免疫応答を増大する方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって免疫応答が工程(b)後に、工程(a)の不在下の全身免疫応答と比較したときより多い工程を包含し、そして、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない。
【0056】
さらなる例では、本明細書に記載されるのは、被験体における治療応答を誘導または可能にする方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって被験体における治療応答を誘導または可能にする工程を包含し、そして、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない。
【0057】
別の例では、本明細書に記載されるのは、被験体における免疫応答または治療応答を誘導または可能にする方法であり:
(a)被験体の粘膜細胞を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜細胞を有効量のワクチンと接触する工程を包含し、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない。
【0058】
1つの例では、本明細書に記載されるのは、被験体の粘膜表面を通るベクターの貫通を増加する方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、この粘膜表面を貫通するベクターの量が、工程(b)後、工程(a)の非存在下で吸収されるベクターの量と比較されるときより多い工程、を包含する。
【0059】
別の例では、本明細書に記載されるのは、被験体における免疫応答を増大する方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、免疫応答が、工程(b)後、工程(a)の非存在下の全身免疫応答と比較されるときより多い工程、を包含する。
【0060】
さらなる例では、本明細書に記載されるのは、被験体における治療応答を誘導または可能にする方法であり:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)この被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、この被験体における治療応答を誘導または可能にする工程、を包含する。
【0061】
種々の局面で、本明細書中に記載される方法は、被験体における免疫応答(例えば、全身または局所免疫応答)または治療応答(例えば、全身または局所治療応答)を誘導または可能にし得る。「誘導する」は、誘導ステップの前には存在しなかった所望の応答または結果を開始することを意味する。用語「可能にする」は、この可能にするステップの前と同じレベルで所望の応答を持続すること、または経時的に所望の応答を増加することを意味する。用語「増加する」は、所望の応答を誘導すること、および可能にすることの両方を含む。「被験体」は個体を意味する。この被験体は、任意の脊椎動物を含み得る。この被験体は、霊長類またはヒトのような哺乳類であり得る。この用語「被験体」はまた、制限されないで、ネコ、イヌなど、家畜類(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)を含む飼い馴らした動物を含む。この被験体はまた、鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、または七面鳥)、爬虫類、両生類、または魚類を含み得る。
【0062】
アルキルグリコシドの被験体への投与は、アルキルグリコシドの非存在下でワクチンを投与することと比較したとき、このワクチンが与え得る所望の効果(例えば、被験体の免疫化)を増大または増加する。免疫応答に関して、いくつかの方法のいずれかによって得られる免疫応答は、当該技術分野で公知その他の検出手段の中で、抗原に対して特異的な抗体の存在を検出すること、T細胞増殖応答を決定すること、細胞傷害性T細胞増殖応答を決定することを含むいくつかの方法にいずれかによって決定され得る。このような方法は、当該分野で公知であり、そして本明細書中に記載される。「免疫応答」は、免疫システムの任意の応答を意味し、制限されないで、細胞性ならびに局所的および全身的体液免疫を含み、例えば、CD8+CTLに抗原特異的誘導、T細胞増殖応答およびサイトカイン放出を含むヘルパーT細胞応答を含むCTL応答、および抗体応答を含むB細胞応答がある。「治療的応答」は、ワクチンの投与に起因する疾患または疾患の症状の予防または軽減を意味する。例えば、インフルエンザワクチンは、患者をインフルエンザ感染から防ぐか、または感染の場合には、感染または結果の症状を減ずるかのいずれかである。別の例では、ウイルスの伝播後投与される狂犬病ワクチンは、疾患の進行を防ぐ。
【0063】
1つの例では、例えば、ベクターのようなワクチンと組み合わせたアルキルグリコシドの使用は、このワクチンの皮膚または粘膜表面中への貫通(すなわち吸収)を、このアルキルグリコシドの非存在下でのこのワクチンの投与と比較されるとき、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍より多く増加し得る。同様に、上記アルキルグリコシドは、免疫化または治療効果を、このアルキルグリコシドの非存在下でのこのワクチンの投与と比較されるとき、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍より多く増加し得る。
【0064】
上記アルキルグリコシドおよびワクチンは、被験体に逐次的または同時に投与され得る。従って、1つの例では、アルキルグリコシドが被験体に最初投与され得、次いで、ワクチンの投与が続く。この例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは、同じか、または異なる媒体で投与され得る。別の例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは混合されて組成物を形成得、次いで、被験体への組成物の投与が続く。
【0065】
アルキルグリコシドおよびワクチンは、局所的または全身処置が所望されるか否か、および処置されるべき領域に依存して多くの方法で被験体に投与され得る。1つの例では、投与は局所的であり得、眼、膣、直腸、または鼻を含む。別の例では、投与の様式は吸入によってであり得る。一般に、投与の様式は、ニードルまたはシリンジの使用を含まない。1つの例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは、ドロップ、スプレー、エアロゾル、持続放出形式、またはそれらの組み合わせの形態で投与される。
【0066】
別の例では、この投与ステップは、例えば、目的の遺伝子を含む遺伝子ベクターのようなワクチンを送達デバイス上に配置する工程、およびその中に目的の遺伝子を含む遺伝子ベクターを有するこのデバイスを被験体の皮膚に付与する工程をさらに包含する。
【0067】
別の例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは、このアルキルグリコシドおよびワクチンを被験体の皮膚に付与することによって投与される。この例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは、任意のデバイスを利用することなく皮膚への遺伝子材料の直接移入によるか、または包帯または包帯様デバイスを利用して裸の皮膚と接触することにより被験体に投与され得る。1つの例では、アルキルグリコシドおよびワクチンは、水溶液中にある。理論によって拘束されることは希望しないが、アルキルグリコシドは、皮膚をワクチンに対してより透過可能にし、そしてこのワクチンが被覆の角質層を通過する能力を促進し、その結果、ワクチンが表皮層および真皮層により効率的に到達し得ると考えられる。
【0068】
別の例では、例えば、非侵襲的技法を用いてアルキルグリコシドおよびワクチンと接触され得る表皮または粘膜細胞のような被験体の任意の細胞が、免疫または治療応答を誘導または可能にするために用いられ得る。「接触する」は、少なくとも1つの物質の別の物質への緊密な物理的接触によって曝される事例を意味する。例えば、接触することは、薬学的薬剤のような物質を細胞と接触することを含み得る。細胞は、試験化合物、例えば、アルキルグリコシドおよびワクチンと、培養培地にこの薬剤を添加することにより(連続的注入により、ボーラス送達により、またはこの薬剤を含む培地に培地を交換することにより)、またはこの薬剤をインビボで細胞外流体に添加することにより(局所送達、全身送達、静脈内注入、ボーラス送達、または連続的注入により)接触され得る。あるいは、この接触ステップは、インビトロまたはエクスビボで実施され得る。細胞または細胞のグループとの接触の持続時間は、この試験化合物が、この細胞を浴する培地または細胞外流体中の生理学的に有効なレベルで、または推定される生理学的に有効なレベルで存在する時間によって決定される。
【0069】
本明細書中に記載される方法は、1つ以上のアルキルグリコシドおよびワクチンの使用を企図する。例えば、2つ以上のワクチンが、1つ以上のアルキルグリコシドと混合され得、被験体に投与されるべき組成物を生成する。別の例では、1つ以上のアルキルグリコシドが最初に投与され得、次いで2つ以上の異なるワクチンの投与が続く。本明細書に記載される非侵襲的方法はまた、侵襲的技法を利用するその他の治療と組み合わせて用いられ得る。それ故、1つの例では、ワクチンは、アルキルグリコシドおよびワクチンの非侵襲的投与の前またはその後で侵襲的技法を用いて被験体に投与され得る。本明細書に記載される方法はまた、症状の治療または処置、および/または免疫学的組成物のブースター投与、および/またはプライム−ブーストレジメ中の経過中のような、アルキルグリコシドおよびワクチンの周期的投与を企図し、ここで、逐次的投与のための時間および様式は、過度の実験を要することなく確認され得る。
【0070】
上記のように、投与されるべきアルキルグリコシドおよびベクターの量は、選択されるアルキルグリコシドおよびベクター、投与の様式、および被験体に依存して変動する。「有効量」は、所望の結果(単数または複数)、例えば、遺伝子の発現を増加することを達成するために必要な治療的な量を意味する。1つの例では、アルキルグリコシドの量は、組成物の重量で約0.01%〜約10%、約0.01%〜約9%、約0.01%〜約8%、約0.01%〜約7%、約0.01%〜約6%、約0.01%〜約5%、約0.01%〜約4%、約0.01%〜約3%、約0.01%〜約2%、約0.01%〜約1%、約0.01%〜約0.9%、約0.01%〜約0.8%、約0.01%〜約0.7%、約0.01%〜約0.6%、約0.01%〜約0.5%、約0.05%〜約0.5%、または約0.125%〜約0.5%の範囲である。その他の例では、ワクチンの量は、1または数マイクログラムから数百または数千マイクログラムまで変動し得、例えば、1μg〜1mg、1μg〜0.75mg、1μg〜0.5mg、1μg〜0.1mgである。別の例では、投与されるべきワクチンの量は、一日あたり体重あたり100ng/kg〜100mg/kg、100ng/kg〜75mg/kg、100ng/kg〜50mg/kg、100ng/kg〜10mg/kgである。投与されるべきアルキルグリコシドおよびワクチンの量は、当該技術分野で公知の技法を用いて容易に決定され得る。
【0071】
本明細書にまた記載されるのは、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで遺伝子産物、免疫学的産物、または抗体を産生する方法である。1つの例では、遺伝子産物は、被験体の細胞から単離され得、ここで、例えば、ベクターのようなワクチンは、本明細書中に記載される組成物および方法を用いて被験体に投与された。別の例では、本明細書中に記載された方法によって得られた免疫学的産物、抗体、または発現産物は、そして免疫学的産物、発現された産物、または抗体が代表的に用いられる様式で、インビトロで発現され、そして用いられ得る。この例では、免疫学的産物、発現産物、または抗体は、例えば、診断、アッセイ、およびエクスビボ治療においてのようなインビトロおよび/またはエクスビボ適用で採用され得る。国際公開番号WO99/60164号および同WO98/00166号は、遺伝子産物および/または免疫学的応答を発現し、インビトロで増殖し、そして宿主または動物に再導入される細胞の使用を開示している。別の例では、本明細書に記載される方法から産生および単離される発現抗体または遺伝子産物が、免疫または治療応答を誘導または可能にするために、サブユニットエピトープ、抗原、治療薬、または抗体の投与に類似の様式で、組成物中で投与され得る。
【0072】
(C.デバイスおよびキット)
本明細書に記載されるのは、本明細書に記載され、そして請求項に記載される任意の組成物を含む送達デバイスである。1つの例では、この送達デバイスは、帯具、パッチ、接着性包帯、スポットオン(spot−on)処方物およびその付与デバイス、ポアオン(pour−on)処方物およびその付与デバイス、ロールオン(roll−on)処方物およびその付与デバイス、シャンプー処方物およびその付与デバイスなどであり得る。ポアオンおよびスポットオン処方物は、米国特許番号第6,010,710号および同第5,475,005号に記載される。ロールオンデバイスは、米国特許第5,897,267号に記載される。これらの文献の内容は、それの教示について参考として本明細書によって援用される。
【0073】
1つの例では、上記デバイスは接着性包帯である。図1を参照して、非侵襲的ワクチン接種のためのデバイスが示される。このワクチン送達デバイスは、その中にブレッブを有する非アレルゲン性の皮膚接着性パッチを含む。1つの例では、このパッチは、プラスチックをさらに備え、直径が約1cmである。ワクチン組成物は、このブレッブ内に配置され得る。別の例では、このブレッブは、約1mLのワクチン(液体、再調製流体とともに凍結乾燥粉末、およびその改変物として)を含む。別の例では、皮膚と接触するこのブレッブの表面は、反対の表面よりは意図的に弱くし、その結果、この反対表面に圧力が付与されるとき、この下面は壊れ、そしてこのブレッブのワクチン内容物を皮膚上に放出する。プラスチックパッチは、皮膚表面に対してこのワクチンを捕捉する。この例では、アルキルグリコシドは皮膚に付与され得、パッチの付与が続き、またはそれに代わって、パッチは、アルキルグリコシドおよびワクチンを含み得る。
【0074】
本明細書にまた開示されるのは、ワクチンの非侵襲的送達のための組成物の調製用のキットである。このキットは、アルキルグリコシド、ワクチンおよび必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む。これら成分は、それ自体のパッケージング中に各々別個のコンテナ中に存在し得、そしてこのキットは、必要に応じてこれら成分の混合および/またはこの組成物の投与のための指示書を含み得る。このキットはまた、必要に応じて送達デバイスを含む。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本明細書に記載され、そして請求項に記載の化合物、組成物、および方法がどのように作製され、そして評価されるかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、そして純粋に例示であることが意図され、そして本発明者らが本発明者らの発明と考えるものの範囲を制限することは意図されない。数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にすることを行ったが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。そうでないことが示されなければ、部は重量部であり、温度は℃であるか、または周囲温度であり、そして圧力は大気圧またはその近傍である。例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、および記載されるプロセスから得られた産物純度および収率を最適化するために用いられ得るその他の反応範囲および条件である、反応条件の多くの改変例および反応条件の組み合わせが存在する。合理的および慣用の実験のみがこのようなプロセス条件を最適化するために必要である。
【0076】
角質層のアブレーションなくして同時投与されるとき、テトラデシル−β−Dマルトシド(Anatraceから購入)のE.coli−ベクターの皮膚上ワクチンの効目を増大する能力の予備試験を行った。詳細には、マウスを、示された濃度でTDMと混合されたtetCを発現するE.coliベクターの局所的付与によって免疫し、そして免疫2ヶ月後に血清を分析した。皮膚をブラシ処理によってアブレートしなかったとき、コントロールに対する増加は観察されなかった。
【0077】
角質層のアブレーションなくして同時投与されるとき、アデノウイルス−ベクターの皮膚上ワクチンの効目を増大するTDMの能力の試験もまた行った。ここでは、マウスは、示された濃度のTDMとともにtetCを発現するアデノウイルスベクターの局所的付与によって免疫化し、そして免疫1ヵ月後に血清を分析した。コントロールに対する有意な増加は観察されなかった。
【0078】
マウスの皮膚をTDMの局所的付与の前に機械的にブラシ処理することによってアブレートした後、裸の皮膚に示された濃度でTDMをインキュベートし、電子顕微鏡の下、皮膚構築の検査を行った。図2は、TDM界面活性剤による角質層の透過処理を示す。
【0079】
角質層のアブレーションとともに同時投与されたとき、E.coli−ベクターの皮膚上ワクチンの効目を増大するTDMの能力の試験もまた行った。ここで、マウス皮膚は、示された濃度でのTDMの局所的付与の前に機械的ブラシ処理によりアブレートされた。15分のインキュベーションの後、TDMを除去し、そしてマウスを、tetCを発現するE.coliベクターの局所的付与によって免疫化し、そして免疫化後2週間目に血清を分析した。これらの結果を図3に示す。
【0080】
本出願を通じて種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、それらの全体が、本明細書に記載される化合物、組成物および方法をより完全に説明するために、本明細書によって参照として本出願中に援用される。
【0081】
種々の改変および変更が、本明細書中に記載される化合物、組成物および方法になされ得る。本明細書中に記載される化合物、組成物および方法のその他の局面は、本明細書中に開示される化合物、組成物および方法の詳細および実施を考慮することから明らかである。本明細書および実施例は例示として考慮されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
本明細書に援用され、そしてその一部を構成する添付の図面は、以下に説明されるいくつかの局面を例示する。同様の番号は、図面全体で同じ要素を表す。
【図1】図1は、非侵襲的ワクチンの投与のためのデバイスを示す。
【図2】図2は、テトラデシル−β−D−マトルシド界面活性剤による角質層の透過処理を示す。
【図3】図3は、上皮ワクチンエンハンサーとしてのテトラデシル−β−D−マトルシド(TDM)の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の皮膚を通るワクチンの貫通を増加する方法であって:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、該被験体の皮膚を貫通するワクチンの量が工程(b)後で、工程(a)の非存在下で吸収されるワクチンの量と比較したときより多い工程、を包含する、方法。
【請求項2】
被験体において免疫応答を増大する方法であって:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、工程(b)後の免疫応答が、工程(a)の非存在下の免疫応答と比較したときより大きい工程、を包含する、方法。
【請求項3】
被験体において治療応答を誘導または可能にする方法であって:
(a)被験体の皮膚を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の皮膚を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって、該被験体において治療応答を誘導または可能にする工程、を包含する、方法。
【請求項4】
前記アルキルグリコシドが、非イオン性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキルグリコシドが、親水性糖に結合によって連結される疎水性アルキル基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル基が、6〜24の炭素を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル基が、6〜14の炭素を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記糖が、エリスロース、スレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、マルトース、セロビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、またはそれらの誘導体もしくは組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記結合が、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、ウレイド結合、エステル結合、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記アルキルグリコシドが、約10〜20の範囲にある親水性−新油性バランス数を備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルキルグリコシドが、アルキルチオマルトシド、アルキルチオグルコシド、またはアルキルチオシュークロースを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルキルグリコシドが、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルα−もしくはβ−D−マルトシド;ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルα−またはβ−D−グルコシド;シュークロースのヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルエステル;ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ドデシル−、トリデシル−、またはテトラデシル−β−D−チオマルトシド;ヘプチル−またはオクチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド;ヘプチル−またはオクチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド;シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって連結されたパラチノースまたはイソマルタミンの誘導体;アルキル鎖に尿素によって連結されたイソマルタミンの誘導体;シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド;またはシュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルグリコシドが、グリコシド結合によって、6〜14の炭素原子を有するアルキル基に連結されたマルトース、シュークロース、グルコース、またはその組み合わせを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキルグリコシドが、約0.01%〜10%の範囲にある濃度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワクチンが、ベクターワクチン、タンパク質を基礎にしたワクチン、DNAを基礎にしたワクチン、またはRNAを基礎にしたワクチンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ワクチンが、ベクターを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ワクチンが、ウイルスベクターを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ワクチンが、細菌ベクターを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ベクターが、E.coliベクターを含む、請求項18に記載の-方法。
【請求項20】
前記ベクターが、遺伝子産物をコードする核酸分子を含み、そして発現する、請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記核酸分子が、抗原をコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸分子が、前記ベクターに対して外因性または異種である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記外因性または異種核酸分子が、エピトープをコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記外因性または異種核酸分子が、被験体の病原体からの1つ以上の抗原またはその一部分、または被験体の病原体からの1つ以上のエピトープをコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記外因性または異種核酸分子が、免疫調節遺伝子または治療遺伝子をコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫調節遺伝子が、同時刺激物質、サイトカイン、ケモカインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ワクチンが、免疫学的応答を刺激および/または調節する遺伝子産物をコードする核酸分子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ワクチンが、内因性および/または外因性核酸分子を翻訳する核酸分子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ワクチンが、病原体または新生物に対して全身免疫応答を誘導する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸分子が:インフルエンザ赤血球凝集素、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザM2、破傷風トキシンC−フラグメント、炭疽保護抗原、炭疽致死因子、炭疽発芽および外成長関連タンパク質、狂犬病糖タンパク質、HBV表面抗原、HIV gp120、HIV gp160、ヒト癌胎児性抗原、マラリアCSP、マラリアSSP、マラリアMSPおよびマラリアpfgの1つ以上をコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記ワクチンが、DNA/リポソーム複合体を含む、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ワクチンが、前記被験体の自然の病原体に一致するか、または前記被験体の自然の病原体である、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記被験体が、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、または魚類である、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳類が、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、またはブタを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記鳥類が、ニワトリ、アヒル、または七面鳥を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、非侵襲的に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、パッチ、軟膏、クリーム、ローション、ドロップ、スプレー、エアロゾル、持続放出形式、またはそれらの組み合わせの形態で前記被験体に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、前記被験体に局所的に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記被験体への局所投与の際に、前記ワクチンが該被験体の角質層を貫通し、そして該被験体の真皮層および表皮層に到達する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、前記被験体に逐次的に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、前記被験体に同時に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項42】
第2のワクチンが、工程(a)および/または(b)の前に侵襲的に投与される、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫応答が、全身的免疫応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項44】
工程(a)の前に、前記皮膚を研磨材でブラシ処理する、請求項1〜3のいずか1項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜44の方法によって産生される遺伝子産物。
【請求項46】
被験体において免疫応答または治療応答を誘導または可能にする方法であって:
(a)被験体の皮膚細胞を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の皮膚細胞を有効量のワクチンと接触する工程、を包含する、方法。
【請求項47】
前記接触する工程が、インビトロである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記接触する工程が、インビボである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記接触する工程が、エクスビボである、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
被験体の粘膜表面を通るワクチンの貫通を増加する方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって該患者の粘膜表面を貫通するワクチンの量が工程(b)後に、工程(a)の不在下で吸収されるワクチンの量と比較したときより多い工程を包含し、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない、方法。
【請求項51】
被験体における免疫応答を増大する方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって全身免疫応答が工程(b)後に、工程(a)の不在下の全身免疫応答と比較したときより多い工程を包含し、そして、ここで、該接触工程(a)および(b)が吸入によって実施されない、方法。
【請求項52】
被験体における治療応答を誘導または可能にする方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のワクチンと接触する工程であって、それによって該被験体における治療応答を誘導または可能にする工程を包含し、そして、ここで、該接触工程(a)および(b)が吸入によって実施されない、方法。
【請求項53】
前記アルキルグリコシドが、非イオン性である、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記アルキルグリコシドが、親水性糖に結合によって連結される疎水性アルキル基を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記アルキル基が、6〜24の炭素を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記アルキル基が、6〜14の炭素を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記糖が、エリスロース、スレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、マルトース、セロビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、またはそれらの誘導体もしくは組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記結合が、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、ウレイド結合、エステル結合、またはそれらの組み合わせを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記アルキルグリコシドが、約10〜20の範囲にある親水性−新油性バランス数を備える、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記アルキルグリコシドが、アルキルチオマルトシド、アルキルチオグルコシド、またはアルキルチオシュークロースを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記アルキルグリコシドが、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルα−もしくはβ−D−マルトシド;ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルα−またはβ−D−グルコシド;シュークロースのヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、トリデシル−、テトラデシル−、ペンタデシル−、ヘキサデシル−、ヘプタデシル−、またはオクタデシルエステル;ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ドデシル−、トリデシル−、またはテトラデシル−β−D−チオマルトシド;ヘプチル−またはオクチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド;ヘプチル−またはオクチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド;シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって連結されたパラチノースまたはイソマルタミンの誘導体;アルキル鎖に尿素によって連結されたイソマルタミンの誘導体;シュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド;またはシュークロースβ−アミノ−アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記アルキルグリコシドが、グリコシド結合によって、6〜14の炭素原子を有するアルキル基に連結されたマルトース、シュークロース、グルコース、またはその組み合わせを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記アルキルグリコシドが、グリコシド結合によって、6〜14の炭素原子を有するアルキル基に連結されたマルトース、シュークロース、グルコース、またはその組み合わせを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記アルキルグリコシドが、約0.01%〜10%の範囲にある濃度を有する、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記ワクチンが、ベクターワクチン、タンパク質を基礎にしたワクチン、DNAを基礎にしたワクチン、またはRNAを基礎にしたワクチンである、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記ワクチンが、ベクターを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記ワクチンが、ウイルスベクターを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記ワクチンが、細菌ベクターを含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記ベクターが、E.coliベクターを含む、請求項68に記載の-方法。
【請求項70】
前記ベクターが、遺伝子産物をコードする核酸分子を含み、そして発現する、請求項66〜69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記核酸分子が、抗原をコードする、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記核酸分子が、前記ベクターに対して外因性または異種である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記外因性または異種核酸分子が、エピトープをコードする、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記外因性または異種核酸分子が、被験体の病原体からの1つ以上の抗原またはその一部分、または被験体の病原体からの1つ以上のエピトープをコードする、請求項27に記載の方法。
【請求項75】
前記外因性または異種核酸分子が、免疫調節遺伝子または治療遺伝子をコードする、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記免疫調節遺伝子が、同時刺激物質、サイトカイン、ケモカインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記ワクチンが、免疫学的応答を刺激および/または調節する遺伝子産物をコードする核酸分子を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記ワクチンが、内因性および/または外因性核酸分子を翻訳する核酸分子を含む、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記ワクチンが、病原体または新生物に対して全身免疫応答を誘導する、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記核酸分子が:インフルエンザ赤血球凝集素、インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザM2、破傷風トキシンC−フラグメント、炭疽保護抗原、炭疽致死因子、炭疽発芽および外成長関連タンパク質、狂犬病糖タンパク質、HBV表面抗原、HIV gp120、HIV gp160、ヒト癌胎児性抗原、マラリアCSP、マラリアSSP、マラリアMSPおよびマラリアpfgの1つ以上をコードする、請求項70に記載の方法。
【請求項81】
前記ワクチンが、DNA/リポソーム複合体を含む、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記ワクチンが、前記被験体の自然の病原体に一致するか、または前記被験体の自然の病原体である、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記被験体が、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、または魚類である、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記哺乳類が、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、またはブタを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記鳥類が、ニワトリ、アヒル、または七面鳥を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、非侵襲的に投与される、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、パッチ、軟膏、クリーム、ローション、ドロップ、スプレー、エアロゾル、持続放出形式、またはそれらの組み合わせの形態で前記被験体に投与される、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、前記被験体に逐次的に投与される、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記アルキルグリコシドおよびワクチンが、前記被験体に同時に投与される、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項90】
第2のワクチンが、工程(a)および/または(b)の前に侵襲的に投与される、請求項50〜52のいずか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記免疫応答が、全身的免疫応答である、請求項51に記載の方法。
【請求項92】
請求項50〜91の方法によって産生される遺伝子産物。
【請求項93】
被験体における免疫応答または治療応答を誘導または可能にする方法であって:
(a)被験体の粘膜細胞を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜細胞を有効量のワクチンと接触する工程を包含し、ここで、工程(a)および(b)が吸入によって実施されない、方法。
【請求項94】
前記接触する工程が、インビトロである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記接触する工程が、インビボである、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記接触する工程が、エクスビボである、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
被験体の粘膜表面を通るベクターの貫通を増加する方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、該粘膜表面を貫通するベクターの量が、工程(b)の後、工程(a)の非存在下で吸収されるベクターの量と比較されるときより多い工程、を包含する、方法。
【請求項98】
被験体における免疫応答を増大する方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、免疫応答が、工程(b)の後、工程(a)の非存在下の全身免疫応答と比較されるときより多い工程、を包含する、方法。
【請求項99】
前記免疫応答が、全身免疫応答を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
被験体における治療応答を誘導または可能にする方法であって:
(a)被験体の粘膜表面を有効量のアルキルグリコシドと接触する工程;および
(b)該被験体の粘膜表面を有効量のベクターと接触する工程であって、それによって、該被験体における治療応答を誘導または可能にする工程、を包含する、方法。
【請求項101】
アルキルグリコシドおよびベクターを含む、組成物。
【請求項102】
前記組成物が、クリーム、軟膏、ローション、ドロップ、スプレー、エアロゾル、持続放出形式、またはそれらの組み合わせの形態である、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
請求項101に記載の組成物、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項104】
前記薬学的組成物が、クリーム、軟膏、ローション、ドロップ、スプレー、エアロゾル、持続放出形式、またはそれらの組み合わせの形態である、請求項101に記載の薬学的組成物。
【請求項105】
アルキルグリコシドおよびベクターを含む、キット。
【請求項106】
前記キットが、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
請求項101に記載の組成物を含む送達デバイス。
【請求項108】
請求項103に記載の組成物を含む送達デバイス。
【請求項109】
前記デバイスが、パッチ、帯具、接着剤、または包帯を備える、請求項107または108に記載の送達デバイス。
【請求項110】
請求項101または103の組成物を含む、スポットオン処方物、ロールオン処方物、またはシャンプー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−531581(P2008−531581A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557150(P2007−557150)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/006391
【国際公開番号】WO2006/091722
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507282897)ユーエービー リサーチ ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】