説明

アルキルベンゼンの製造方法

【課題】ベンゼンとオレフィンを反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、有効成分であるベンゼンの損失を抑制することができるという、優れた特徴を有するアルキルベンゼンの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも下記の第一工程及び第二工程を含み、第二工程で得られたベンゼンを含む軽沸分を、炭化水素混合油からC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラントの原料と混合して使用することにより、該軽沸分中のベンゼンを芳香族炭化水素製造プラントの原料の一部として有効利用するアルキルベンゼンの製造方法。
第一工程:ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを得る工程
第二工程:第一工程で得られた反応液を蒸留に付し、反応液からベンゼンを含む軽沸分を分離する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルベンゼンの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、ベンゼンとオレフィンを反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、有効成分であるベンゼンの損失を抑制することができるという、優れた特徴を有するアルキルベンゼンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを製造する方法は公知である(たとえば特許文献1参照。)。中でも、ベンゼンとプロピレンを反応させて得られるクメン及びメタジイソプロピルベンゼンは、フェノール樹脂、医薬品や染料などの各種化成品、タイヤ用接着剤の原料として利用されており、その安定かつ効率的な生産は非常に重要である。
【0003】
ここで、ベンゼンとオレフィンを反応させて得られたアルキルベンゼン反応液を蒸留して製品であるアルキルベンゼンを分離して回収する際、未反応のベンゼン及び副生する他のアルキルベンゼン(製品以外のアルキルベンゼン)は、分離回収して反応工程へリサイクルされる。
【0004】
一方で、原料であるオレフィン及びベンゼンに同伴する、C2〜C7の非芳香族炭化水素を主成分とする軽沸成分は、プロセス内への蓄積を防止するため、系外へ抜き出す必要があり、焼却処理するのが一般であった。ところが、該軽沸成分からなる留分中には、未反応のベンゼンも含まれており、上記焼却処理により、ベンゼンの損失が発生するという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−325175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、ベンゼンとオレフィンを反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、有効成分であるベンゼンの損失を抑制することができるという、優れた特徴を有するアルキルベンゼンの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、ベンゼンとオレフィンを反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、少なくとも下記の第一工程及び第二工程を含み、第二工程で得られたベンゼンを含む軽沸分を、炭化水素混合油からC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラントの原料と混合して使用することにより、該軽沸分中のベンゼンを芳香族炭化水素製造プラントの原料の一部として有効利用するアルキルベンゼンの製造方法に係るものである。
第一工程:ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを得る工程
第二工程:第一工程で得られた反応液を蒸留に付し、反応液からベンゼンを含む軽沸分を分離する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、有効成分であるベンゼンの損失を抑制することができるという、優れた特徴を有するアルキルベンゼンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを製造する方法である。
【0010】
オレフィンとしては、プロピレンをあげることができる。
【0011】
アルキルベンゼンとしては、クメン及びメタジイソプロピルベンゼンをあげることができる。
【0012】
本発明は、少なくとも下記の第一工程及び第二工程を含む。
【0013】
第一工程は、ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを得る工程である。第一工程は、公知であり、本発明においても反応温度、圧力、時間、触媒相の形態、ベンゼンとオレフィン比率等の反応条件は該公知の方法を用いることができる。本工程における反応条件の相違は本発明に何ら影響を与えるものではない。
【0014】
原料であるベンゼン及びプロピレンについては、その純度が高い程、プロセスに持ち込まれる軽沸成分が少なくなるため、軽沸成分の抜き出しに伴うベンゼン損失量の観点からは高純度であることが好ましい。一方、高純度の原料精製に伴う精製コストは大幅に増加する。本発明における原料の純度に特に制限はないが、ベンゼン損失量と原料精製コストの兼ね合いから、ベンゼン純度98.0〜99.8wt%、プロピレン純度98.0〜99.0vol%であることが好ましい。
【0015】
第二工程は、第一工程で得られた反応液を蒸留に付し、反応液からベンゼンを含む軽沸分を分離する工程である。
【0016】
該軽沸分は、原料であるベンゼン及びプロピレンに同伴するC2〜C7の非芳香炭化水素を主成分とするが、第一工程で得られた反応液を蒸留に付し得られる軽沸留分中には、未反応のベンゼンが20〜95wt%存在する。前述の通り、該軽沸分はプロセス内への蓄積を防止するために系外へ抜き出されるのであるが、ベンゼンと沸点が非常に近い成分が多いため、蒸留による分離においては、ベンゼンを含む形で抜き出す必要があるためである。
【0017】
蒸留は、公知の方法によることができるが、該軽沸分は塔頂よりベンゼンを含む軽沸留分として得られる。軽沸分の抜き出しは、プロセス内の軽沸分の量を安定させる観点からは連続であることが好ましいが、原料の純度によっては間欠としてもよい。塔底からは、ベンゼン、アルキルベンゼン、重質成分等が抜き出されるが、該第二工程以降に必要となる蒸留設備の数の観点からは、ベンゼン及び/又はアルキルベンゼンをサイドカットとして抜き出すことが好ましい。
【0018】
本発明においては、第二工程で得られたベンゼンを含む軽沸分を、炭化水素混合油からC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラントの原料と混合して使用することにより、該軽沸分中のベンゼンを芳香族炭化水素製造プラントの原料の一部として有効利用する。
【0019】
炭化水素混合油からC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラントは、BTXプラントとして公知であり、C6〜C8芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等をあげることができる。
【0020】
本発明の最大の特徴は、該軽沸分中のベンゼンを芳香族炭化水素製造プラントの原料の一部として有効利用する点にある。従来の方法によると、該軽沸分は、含まれているベンゼンと共に焼却処理されるのが一般であったのである。
【0021】
なお、第一工程の触媒として、液体塩化アルミ錯体触媒を用いた場合は、前記の第一工程と第二工程の間に、触媒を洗浄・除去する工程を含ませることが好ましい。
【実施例】
【0022】
次に本発明を実施例により説明する。
実施例1
図1は液体塩化アルミ錯体触媒を用いたメタジイソプロピルベンゼン製造の概略フローであるが、これによって本発明が限定されるものではない。
第一工程(3)として、液体塩化アルミニウム錯体触媒の存在下、ベンゼン(純度:99.6wt%)(1)とプロピレン(純度:98.5vol%)(2)をアルキル化及びトランスアルキル化反応に付しメタジイソプロピルベンゼンを含む反応液(5)を得た。該反応液は軽沸分を0.5wt%、未反応のベンゼンを3.5wt%含有していた。なお、イソプロピル基とフェニル基のモル比は1.78の条件で反応を行った。
第二工程(6)として、トレイ式の蒸留塔に第一工程で得られた反応液(5)を15800kg/Hでフィードし、塔頂から軽沸留分(7)を100kg/Hで抜き出した。該軽沸留分中には、85wt%のベンゼンが含まれていた。また、サイドカットとして、ベンゼン及びクメンを含む留分(8)を3900kg/Hで抜き出し第一工程へリサイクルし、塔底からはメタジイソプロピルベンゼン及びその他のアルキルベンゼンを含む留分(9)を抜き出した。
第二工程(6)で得られた軽沸留分(7)を、炭化水素混合油からベンゼン、トルエン、キシレン等のC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラント(BTXプラント)(10)の原料と混合して使用し、該軽沸留分中のベンゼンを回収した。
なお、第一工程(3)と第二工程(6)の間に、触媒の洗浄・除去工程(4)を介在させた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1のフローの概要を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
(1)原料ベンゼン
(2)原料プロピレン
(3)第一工程
(4)触媒の洗浄・除去工程
(5)反応液
(6)第二工程
(7)軽沸留分(ベンゼンを含む)
(8)ベンゼン及びクメンを含む留分
(9)メタジイソプロピルベンゼン及びその他のアルキルベンゼンを含む留分
(10)BTXプラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゼンとオレフィンを反応させてアルキルベンゼンを製造する方法であって、少なくとも下記の第一工程及び第二工程を含み、第二工程で得られたベンゼンを含む軽沸分を、炭化水素混合油からC6〜C8芳香族炭化水素を各々分離して得る芳香族炭化水素製造プラントの原料と混合して使用することにより、該軽沸分を芳香族炭化水素製造プラントの原料の一部として有効利用するアルキルベンゼンの製造方法。
第一工程:ベンゼンとオレフィンを液体塩化アルミ錯体触媒又は酸性ゼオライト触媒の存在下で反応させてアルキルベンゼンを得る工程
第二工程:第一工程で得られた反応液を蒸留に付し、反応液からベンゼンを含む軽沸分を分離する工程
【請求項2】
オレフィンがプロピレンであり、アルキルベンゼンがクメン又はメタジイソプロピルベンゼンである請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138085(P2010−138085A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314144(P2008−314144)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】