説明

アルキルベンゼン誘導体の製造方法

【課題】良好な収率で、純度良くアルキルベンゼン誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】酸の存在下、アルキル基、アルコキシル基等の置換基を有していてもよいベンゼン誘導体およびハロゲン化アルキル化合物の反応による一般式(3)で表されるアルキルベンゼン誘導体の製造方法において、酸の存在下、前記ベンゼン誘導体にアルキル化合物の供給を開始した後さらに酸を追加供給し、かつアルキル化合物をベンゼン誘導体1モルにつき0.01〜0.8モル供給することを特徴とするアルキルベンゼン誘導体の製造方法。


(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいはハロゲン原子を表し、Rは直鎖、分岐、または環状のアルキル基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキルベンゼン誘導体の製造方法に関する、さらに詳しくは、ベンゼン誘導体とアルキルハライド、またはヒドロキシアルキルを、酸の存在下に反応させるアルキルベンゼン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルベンゼン誘導体は、染料、色素、ファインケミカル、医薬品及び農業用製品の生産に有用な中間体である。従来、アルキルベンゼン誘導体は、例えば、酸(例:ルイス酸、プロトン酸)の存在下、ベンゼン誘導体とハロゲン化アルキルとの反応(フリーデルクラフツ反応)により製造されている(非特許文献1)。この反応により様々なアルキルベンゼン誘導体が製造されているが、工業的に充分に満足できる製造方法とは言い難く種々の問題を有している。
例えば、後記非特許文献2には、ベンゼンおよび酸(例えば、塩化アルミニウム、塩化第二鉄)の混合物に、tert-ペンチルクロライドを滴下供給することからなるtert-ペンチルベンゼンの製造方法が記載されている。また、後記非特許文献3には、ベンゼンおよびtert-ペンチルクロライドの混合物に、酸(例えば、塩化アルミニウム)を数回に分けて供給することからなるtert-ペンチルベンゼンの製造方法が記載されている。
【0003】
しかしながら、これらの方法によるアルキルベンゼン誘導体の製造では収率および純度において満足な結果が得られているとは言い難い。使用するアルキルハライドのアルキル基の種類により、得られたアルキルベンゼン誘導体は、いくつかの異性体混合物となることがある。例えば、アルキルハライドのアルキル基が1級アルキル基、あるいは2級アルキル基の場合には、反応中に幾つかのアルキルカチオンが複雑に生成し、その結果、様々な異性体を含むアルキルベンゼン誘導体が製造され、目的とするアルキルベンゼン誘導体の収率が低下する。このように、アルキルベンゼン誘導体の製造法は、これまで種々のものが知られているが、さらに収率よく高純度にてアルキルベンゼン誘導体の得られる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】新実験化学講座、14−I、60、(1977)(丸善株式会社)
【非特許文献2】J.Amer.Chem.Soc.,74、292(1952)
【非特許文献3】J.Amer.Chem.Soc.,78、2000(1956)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アルキルベンゼン誘導体を副生物の生成を抑制しつつ簡便に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、アルキルベンゼン誘導体の製造方法に関して、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(i) 酸の存在下、一般式(1)で表されるベンゼン誘導体および一般式(2)で表されるアルキル化合物の反応による一般式(3)で表されるアルキルベンゼン誘導体の製造方法において、
酸の存在下、前記ベンゼン誘導体にアルキル化合物の供給を開始した後さらに酸を追加供給し、かつアルキル化合物をベンゼン誘導体1モルにつき0.01〜0.8モル供給することを特徴とするアルキルベンゼン誘導体の製造方法。
【0007】

(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいはハロゲン原子を表す)
【0008】

(式中、Zは水酸基またはハロゲン原子を表し、Rは直鎖、分岐、または環状のアルキル基を表す)
【0009】

(式中、X、X及びRは前記と同じものを表す)

(ii)酸の追加供給を、一般式(2)で表わされる化合物全量の15%を供給した後に実施する(i)に記載の製造方法
(iii)酸の追加供給を、一般式(2)で表わされる化合物全量の20〜90%供給した後に実施する(i)に記載の製造方法
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、染料、色素、ファインケミカル、医薬品、および農業用製品の中間体として有用なアルキルベンゼン誘導体を、酸の存在下、ベンゼン誘導体とアルキルハライド、またはヒドロキシアルキルから簡便な方法で製造することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明は、酸の存在下、一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体1モルに対し、0.01〜0.8モルの一般式(2)で表わされる化合物の供給を開始し、式(2)化合物の反応系への供給開始後に、さらに酸を追加供給することからなる一般式(3)で表わされるアルキルベンゼン誘導体の製造方法に関するものである。
【0012】

(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいはハロゲン原子を表す)
【0013】

(式中、Zは水酸基またはハロゲン原子を表し、Rは直鎖、分岐、または環状のアルキル基を表す)
【0014】

(式中、X、X及びRは前記と同じものを表す)
【0015】
(酸)
本発明の製造方法に用いる酸としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、塩化第二スズ、塩化アンチモン、塩化ガリウム、臭化ガリウムなどのルイス酸;フッ化水素、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸などのプロトン酸などを挙げることができる。酸としては、好ましくはルイス酸であり、より好ましくは塩化アルミニウム、塩化第二鉄であり、さらに好ましくは塩化第二鉄である。酸は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよく、勿論、ルイス酸とプロトン酸を併用してもよい。
酸の使用量は特に制限されないが、一般式(2)で表わされる化合物に対して、一般に0.01〜70モル%、好ましくは0.1〜50モル%、より好ましくは0.5〜40モル%である。
【0016】
前記の酸の好ましい供給方法としては、つぎのような方法が挙げられる。
一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体と共に、予め一部の酸を反応系内に存在させ、一般式(2)で表わされる化合物の供給を開始した後、残りの酸を反応系内に追加供給し、反応を継続する方法である(供給法a)。
この(供給法a)を適用する場合、予め反応系内に存在させておく酸の量に関しては、使用する酸全量の1〜99%、好ましくは5〜95%、より好ましくは10〜90%程度に調整する。
【0017】
また、残りの酸を反応系内に供給する時期としては、一般に、供給する一般式(2)で表わされる化合物の15%が供給された後であり、好ましくは20〜90%が供給された後であり、さらに好ましくは30〜80%が供給された後である。また、(供給法a)において、残りの酸を反応系内に供給するにあたり酸は一括で供給してもよく、或いは複数に分割して供給してもよい。
【0018】
(ベンゼン誘導体)
一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体において、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいはハロゲン原子を表し;好ましくは、水素原子、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数3〜40の置換または未置換のアリール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり;より好ましくは水素原子である。
【0019】
一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体の具体例としては、例えば、ベンゼン、メチルベンゼン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、イソペンチルベンゼン、ネオペンチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、(2−エチルブチル)ベンゼン、n−ヘプチルベンゼン、n−オクチルベンゼン、(2−エチルヘキシル)ベンゼン、tert−オクチルベンゼン、n−デシルベンゼン、n−ドデシルベンゼン、n−テトラデシルベンゼン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、
(4−メチルシクロヘキシル)ベンゼン、(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ベンゼン、
【0020】
1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,2−ジイソプロピルベンゼン、1,2−ジイソブチルベンゼン、1,2−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ−tert−ブチルベンゼン、2−tert−ブチル−メチルベンゼン、
【0021】
メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、n−プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、n−ブトキシベンゼン、イソブトキシベンゼン、sec−ブトキシベンゼン、n−ペンチルオキシベンゼン、イソペンチルオキシベンゼン、ネオペンチルオキシベンゼン、n−ヘキシルオキシベンゼン、(2−エチルブチルオキシ)ベンゼン、n−オクチルオキシベンゼン、n−デシルオキシベンゼン、n−ドデシルオキシベンゼン、n−テトラデシルオキシベンゼン、シクロヘキシルオキシベンゼン;
2−メトキシ−メチルベンゼン、4−メトキシ−メチルベンゼン、2−メトキシ−エチルベンゼン、3−メトキシ−エチルベンゼン;
1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,5−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジ−n−ブトキシベンゼン;
4−エトキシ−メトキシベンゼン、2−エトキシ−メトキシベンゼン、
【0022】
フェニルベンゼン、(4−メチルフェニル)ベンゼン、(3−メチルフェニル)ベンゼン、(4−メトキシフェニル)ベンゼン、2−フェニル−メチルベンゼン、2−フェニル−メトキシベンゼン、3−フェニル−フルオロベンゼン;
フルオロベンゼン、クロロベンゼン
などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体としては、より好ましくはベンゼン、メチルベンゼンであり、さらに好ましくはベンゼンである。
【0023】
(アルキル化合物)
一般式(2)で表される化合物において、Zは水酸基またはハロゲン原子を表し、好ましくは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表し、より好ましくは、水酸基、塩素原子、または臭素原子である。
一般式(2)で表される化合物において、Rは直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜16の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。
【0024】
Rで表される直鎖、分岐または環状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、n−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−n−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、1−エチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、1−ヘプチルオクチル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、1−オクチルノニル基、n−オクタデシル基、1−ノニルデシル基、1−デシルウンデシル基、n−エイコシル基、n−ドコシル基、n−テトラコシル基、シクロヘキシルメチル基、(1−イソプロピルシクロヘキシル)メチル基、2−シクロヘキシルエチル基、ボルネル基、イソボルネル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルナンメチル基、1−ビシクロ〔2.2.2〕オクチル基、1−アダマンチル基、3−ノルアダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,6−ジイソプロピルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロヘキシル基、2−フェニルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロテトラデシル基などを挙げることができる。
Rとしては、より好ましくは、炭素数3〜10の分岐または環状の2級アルキル基、あるいは炭素数3〜10の分岐または環状の3級アルキル基であり、さらに好ましくは、tert−ブチル基、tert−ペンチル基である。
【0025】
一般式(2)で表される化合物は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。勿論、Rが同じ基で、Zが異なる基である化合物(例えば、tert−ペンチルアルコールとtert−ペンチルハライド)を併用することもできる。
【0026】
(反応)
一般式(1)で表されるベンゼン誘導体の量は、一般式(2)で表わされる化合物の量に対して、過剰に使用して実施することが好ましく、本発明の製造方法においては、一般式(1)で表されるベンゼン誘導体1モルに対して、一般式(2)で表わされる化合物は0.01〜0.8モル使用し、より好ましくは、0.02〜0.5モル使用する。
一般式(2)で表される化合物の供給速度は特に制限されるものではないが、単位時間あたり供給する一般式(2)の化合物全量の10〜70%、より好ましくは20〜60%を供給する。一般式(2)で表わされる化合物の供給方法に関しては、特に制限されるものではないが、断続的に、あるいは連続的に反応系内に供給することができる。
一般式(2)で表わされる化合物の供給に際し、一般式(2)で表わされる化合物はニートで供給することができ、さらには、後述する有機溶媒に溶解された状態で供給することができる。さらには、一般式(2)で表わされる化合物は、反応に使用する一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体に溶解された状態で供給することができる。
【0027】
本発明の製造方法は有機溶媒の非存在下に実施可能ではあるが、所望により有機溶媒の存在下で実施することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ニトロメタン、二硫化炭素、アセトニトリルなどの極性溶媒などの有機溶媒を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
本発明の製造方法において、所望により使用する有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体の濃度が、一般には0.1M〜5Mとなる量、より好ましくは0.25M〜2Mとなる量に調製する。
本発明は、酸の存在下、一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体に一般式(2)で表わされるアルキル化合物の供給を開始した後、さらに酸を追加供給し、かつ該アルキル化合物をベンゼン誘導体1モルにつき0.01〜0.8モル供給することからなる一般式(3)で表わされるアルキルベンゼン誘導体を製造する方法であり、高収率で所望のアルキルベンゼン誘導体を製造することができる。
【0028】

〔式中、XおよびXは一般式(1)の場合と同じ意味を表し、Rは一般式(2)の場合と同じ意味を表す〕
なお、一般式(3)において、好ましくはXおよびXは水素原子であり、Rはtert−ブチル基またはtert−ペンチル基である。
本発明の製造方法を実施する場合、酸、一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体、および一般式(2)で表わされる化合物の装入方法に関しては、特に制限されるものではないが、好ましくは、酸、および一般式(1)で表わされるベンゼン誘導体の混合物を、所望により、有機溶媒存在下、撹拌、混合し、その後、一般式(2)で表わされる化合物を供給し、反応を開始する。
本発明の製造方法は、大気雰囲気下で実施することが可能であるが、一般には不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)の存在下で実施することが好ましい。
【0029】
また、一般式(2)で表わされる化合物において、Zがハロゲン原子であるハロゲン化アルキルを使用した場合、副生するハロゲン化水素を反応系外に排出しながら実施することが好ましい。
反応温度は、好ましくは−20℃〜100℃程度、より好ましくは−10℃〜90℃程度、さらに好ましくは、−10℃〜70℃で実施する。
また、反応は常圧で実施してもよく、また、必要に応じ、減圧または加圧条件下で実施することも可能である。好ましくは、常圧で実施する。
本発明の製造方法を実施するに際して、使用する反応装置の種類、形態に関しては特に限定するものではないが、一般には、槽型、管型、塔型の反応装置を用いることができる。また、製造工程を、回分式(バッチ式)で実施することができ、さらには、連続的に実施することもできる。
また、製造に使用する反応装置は、様々な撹拌装置を備えることができる。係る撹拌装置としては、例えば、パドル型撹拌機、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ラインミキサー、ラインホモミキサー等の高速撹拌機、さらにはスタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサーなどを挙げることができる。
尚、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの方法で追跡することができる。
本発明の方法により製造される一般式(3)で表わされるアルキルベンゼン誘導体は、反応終了後、例えば、必要に応じ、有機溶媒を留去した後、水洗、あるいは塩基性水溶液と洗浄した後、クロマトグラフィー法、蒸留、再結晶などの一般に公知の方法により単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(FD−MS)分析、IR分析、H−NMR、13C−NMRなどの各種分析方法により同定することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄8.1g(0.05mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、tert−ペンチルクロライド106.5g(1mol)を、1時間を要して連続的に供給した。その後、塩化第二鉄8.1g(0.05mol)を反応混合物に供給した。引き続き、反応混合物に、tert−ペンチルクロライド106.5g(1mol)を、10℃にて1.5時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を20℃で2時間撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。
有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。このtert−ペンチルベンゼンを含有する混合物に関し、高速液体クロマトグラフィーを用いた単純面積法により組成分析を行い、その結果を第1表に示した。その後、蒸留を行い、287g(収率97%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0031】
(実施例2)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄3.2g(0.02mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、tert−ペンチルクロライド42.6g(0.6mol)を、1時間を要して連続的に供給した。その後、塩化第二鉄4.9g(0.03mol)を反応混合物に供給した。引き続き、反応混合物に、tert−ペンチルクロライド149.1g(1.4mol)を、10℃にて2時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。また、蒸留を行い、278g(収率94%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0032】
(実施例3)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄6.5g(0.04mol)よりなる混合物に、15℃にてアルゴン気流下、tert−ペンチルクロライド149.1g(1.4mol)を、3時間を要して連続的に供給した。その後、塩化第二鉄8.1g(0.05mol)を反応混合物に供給した。引き続き、反応混合物に、tert−ペンチルクロライド42.6g(0.6mol)を、15℃にて2時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を、20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。また、蒸留を行い、290g(収率98%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0033】
(実施例4)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄8.1g(0.05mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、tert−ブチルクロライド46.3g(0.5mol)を、1時間を要して連続的に供給した。その後、塩化第二鉄8.1g(0.05mol)を反応混合物に供給した。引き続き、反応混合物に、tert−ブチルクロライド139g(1.5mol)を、10℃にて1.5時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を、20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ブチルベンゼンを含有する混合物を得た。このtert−ブチルベンゼンを含有する混合物に関し、高速液体クロマトグラフィーを用いた単純面積法により組成分析を行い、その結果を第1表に示した。その後、蒸留を行い、264g(収率93%)のtert−ブチルベンゼンを得た。
【0034】
(実施例5)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄8.1g(0.05mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、tert−ペンチルクロライド106.5g(1mol)を、1時間を要して連続的に供給した。その後、塩化第二鉄8.1g(0.05mol)を反応混合物に供給した。引き続き、反応混合物に、tert−ペンチルクロライド85.2g(0.8mol)およびtert−ペンチルアルコール17.6g(0.2mol)の混合物を、10℃にて1.5時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を、20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。このtert−ペンチルベンゼンを含有する混合物に関し、高速液体クロマトグラフィーを用いた単純面積法により組成分析を行い、その結果を第1表に示した。その後、蒸留を行い、284g(収率96%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0035】
(比較例1)
ベンゼン780g(10mol)、および塩化第二鉄8.1g(0.05mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、tert−ペンチルクロライド213g(2mol)を、2.5時間を要して連続的に供給した後、反応混合物を、20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。このtert−ペンチルベンゼンを含有する混合物に関し、高速液体クロマトグラフィーを用いた単純面積法により組成分析を行い、その結果を第1表に示した。また、蒸留を行い、178g(収率60%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0036】
(比較例2)
ベンゼン780g(10mol)、およびtert−ペンチルクロライド203g(2mol)よりなる混合物に、10℃にてアルゴン気流下、塩化アルミニウム7.0g(0.052mol)を、2.5時間の間に、3回に分けて供給した後、反応混合物を、20℃で2時間撹拌した。反応混合物を、濾過した後、濾液を200gの水で4回洗い、有機相を分離した。有機相から未反応のベンゼンを減圧下で留去し、tert−ペンチルベンゼンを含有する混合物を得た。このtert−ペンチルベンゼンを含有する混合物に関し、高速液体クロマトグラフィーを用いた単純面積法により組成分析を行い、その結果を第1表に示した。また、蒸留を行い、201g(収率68%)のtert−ペンチルベンゼンを得た。
【0037】

第1表中、「目的物」は、目的とするアルキルベンゼン誘導体(tert−ブチルベンゼン、あるいはtert−ペンチルベンゼン)を表し、「副生物」は未同定の不純物を表す。
第1表より、本発明の製造方法は、目的とするアルキルベンゼン誘導体を収率よく製造することができ、またそのアルキルベンゼン誘導体の純度もよく、また不純物の生成が抑制されていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法で、高純度なアルキルベンゼン誘導体を製造することができる。また、本発明により製造されるアルキルベンゼン誘導体は、各種染料、色素、医薬・農薬や電子材料などの原料として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の存在下、一般式(1)で表されるベンゼン誘導体および一般式(2)で表されるアルキル化合物の反応による一般式(3)で表されるアルキルベンゼン誘導体の製造方法において、
酸の存在下、前記ベンゼン誘導体にハロゲン化アルキルの供給を開始した後さらに酸を追加供給し、かつアルキル化合物をベンゼン誘導体1モルにつき0.01〜0.8モル供給することを特徴とするアルキルベンゼン誘導体の製造方法。

(式中、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、直鎖、分岐、または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいはハロゲン原子を表す)

(式中、Zは水酸基またはハロゲン原子を表し、Rは直鎖、分岐、または環状のアルキル基を表す)

(式中、X、X及びRは前記と同じものを表す)
【請求項2】
酸の追加供給を、一般式(2)で表わされる化合物全量の15%を供給した後に実施する請求項1の製造方法。
【請求項3】
酸の追加供給を、一般式(2)で表わされる化合物全量の20〜90%を供給した後に実施する請求項1の製造方法。

【公開番号】特開2011−79751(P2011−79751A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231254(P2009−231254)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】