説明

アルキル化アミンの調製方法

本発明は、一般式(I)
【化1】


の化合物を調製するための方法であって、NaYフォージャサイト型ゼオライトの存在下に、一般式(II)
【化2】


の化合物を一般式(III)
【化3】


の化合物又は式(IV)
【化4】


の化合物と反応させることによる方法に関する(式中、Ar、X、R、及びnはそれぞれ請求項1と同義である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な中間体を構成する、例えば染料の調製に用いられる、モノ−N−アルキル化芳香族ジアミンの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、NaYフォージャサイト型ゼオライトの存在下に芳香族アミンを炭酸ジメチルでメチル化することが開示されている。
【0003】
【非特許文献1】J.Org.Chem.、2003年、第68巻、pp.7374〜7378
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、本方法を芳香族ジアミンに用いると、一方のアミノ基にのみ選択的にモノ−N−アルキル化が起こる一方で、他方のアミノ基が不変のままであることがここに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって本発明は、一般式(I)
【化1】

(式中、
Arは芳香族環又は複素芳香族環系であり、
Xは置換基であり、
nは0〜6であり、
Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、又はベンジル基である)
の化合物を調製するための方法であって、NaYフォージャサイト型ゼオライトの存在下に、一般式(II)
【化2】

(式中、Ar、X、及びnはそれぞれ上記と同義である)の化合物を、一般式(III)
【化3】

(式中、Rは上記と同義である)の化合物又は式(IV)
【化4】

の化合物と反応させることによる方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明による好ましい方法においては、
Arはベンゼン環、縮合ベンゼン環、ピリジン環、又はピリミジン環であり、
XはC〜Cアルキル、−COOR、−COR、−OR、−NHCOR、SO、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−SOM、又はOR、OCOR、若しくはNHCORで置換されたC〜Cアルキルであり
(ここで、Rは水素、C〜Cアルキル、又はOR、OCOR、若しくはNHCORで置換されたC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、ハロゲン、又はOH若しくはOCORで置換されたC〜Cアルキルであり、
Mは水素又はナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属である)、
nは0、1、又は2であり、
RはC〜Cアルキル又はヒドロキシ−C〜Cアルキルであり、
前記−NH基及び前記−NHR基は互いにオルト位又はメタ位にあってもよい。
【0007】
〜Cアルキル基は直鎖又は分岐であってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルである。同様に、ヒドロキシ−C〜Cアルキルにも同じことが当てはまる。ハロゲンは、例えば、フッ素、塩素、又は臭素である。
【0008】
本発明による好ましい方法においては、
Arはベンゼン環であり、
Xはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−COOH、−COOMe、−COOEt、−NHCOMe、塩素、シアノ、又はニトロであり、
nは0、1、又は2であり、
Rはメチル、エチル、又はヒドロキシエチルである。
【0009】
本発明による非常に好ましい方法においては、一般式(I)の化合物は、式(Ia)
【化5】

で表される化合物である。
【0010】
本発明によるさらなる好ましい方法においては、使用される触媒は改質されたNaYフォージャサイト型ゼオライトであり、特に好ましくは、リチウム塩共触媒、例えば、炭酸水素リチウム又は炭酸リチウムを添加することによって改質が行われる。
【0011】
本発明による方法のさらなる変形形態においては、反応混合物の沸点を超える反応温度が得られるように、密閉された反応槽内で加圧下に実施される。反応混合物は、例えば約20barまでの加圧下に置いてもよい。
【0012】
本発明による方法のさらなる変形形態においては、この反応混合物の加熱(場合によっては必要となる)は電子レンジ内で実施される。
【0013】
本発明による方法のさらなる変形形態においては、反応体又は生成物の望ましくない反応、例えば酸化反応を防止することを目的として、不活性ガス雰囲気中(例えば、窒素又はアルゴン中)で実施される。
【0014】
NaYフォージャサイト型のゼオライトは周知であり、市販品を購入してもよい。
【0015】
一般式(I)の化合物は、例えば染料の調製、例えばEP第0 256 650 A1号明細書及びEP第0 315 045 A1号明細書に記載されているような反応染料の調製に有用な中間体である。
【実施例】
【0016】
実施例1
予備乾燥したNaYフォージャサイト型ゼオライト1.0gをオルト−フェニレンジアミン1.0g(9.2mmol)及び炭酸ジメチル30ml(0.31mol)と混合した。クロマトグラフィーによる検査で変換の完了が示されるまで、この混合物を環流下で5時間反応させた。混合物を室温に冷却した後、触媒を濾別し、メタノールで洗浄した。濾液を合一し、減圧下で蒸発させることによって濃縮し、N−メチル−オルト−フェニレンジアミン0.84gを黄色の粘稠油状物の形態で得た。
【0017】
結果として得られた化合物のH NMR及び質量スペクトルは予想と完全に一致した。アルドリッチ(Aldrich)社から入手した比較用試料を用いた共クロマトグラフィー(Co−Chromatographie)においても同様の一致が見られ、より高度にアルキル化された化合物は存在しなかった。
【0018】
実施例2〜8
上述の実施例1と同様にして、以下に具体的に示した式(II)の化合物も、対応する式(I)の最終生成物に変換することができる。以下の表において、DMCは炭酸ジメチルを意味し、DECは炭酸ジエチルを意味し、ECは炭酸エチレン(前記式(IV)の化合物)を意味する。
【0019】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、
Arは芳香族又は複素芳香族環系であり、
Xは置換基であり、
nは0〜6であり、
Rはアルキル、ヒドロキシアルキル、又はベンジル基である)
の化合物を調製するための方法であって、NaYフォージャサイト型ゼオライトの存在下に、一般式(II)
【化2】

(式中、Ar、X、及びnはそれぞれ上記と同義である)の化合物を、一般式(III)
【化3】

(式中、Rは上記と同義である)の化合物又は式(IV)、
【化4】

の化合物と反応させることによる方法。
【請求項2】
Arがベンゼン環、縮合ベンゼン環、ピリジン環、又はピリミジン環であり、
XがC〜Cアルキル、−COOR、−COR、−OR、−NHCOR、SO、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−SOM、又はOR、OCOR、若しくはNHCORで置換されたC〜Cアルキルであり
(ここで、Rは水素、C〜Cアルキル、又はOR、OCOR、若しくはNHCORで置換されたC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキル、ハロゲン、又はOH若しくはOCORで置換されたC〜Cアルキルであり、
Mは水素又はナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属である)、
nが0、1、又は2であり、
RがC〜Cアルキル又はヒドロキシ−C〜Cアルキルであり、
前記−NH基及び前記−NHR基が互いにオルト位又はメタ位にあってもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Arがベンゼン環であり、
Xが、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−COOH、−COOMe、−COOEt、−NHCOMe、塩素、シアノ、又はニトロであり、
nが、0、1、又は2であり、
Rが、メチル、エチル、又はヒドロキシエチルである、請求項1及び/又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(I)の化合物が、式(Ia)
【化5】

で表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
使用される触媒が、改質されたNaYフォージャサイト型ゼオライトである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記改質が、リチウム塩共触媒、例えば炭酸水素リチウム又は炭酸リチウムを添加することによって実施されるである、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2008−508233(P2008−508233A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523066(P2007−523066)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053591
【国際公開番号】WO2006/013164
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】