説明

アルコールの回収方法

【課題】原料として使用可能な高純度なアルコールを簡便に、かつ高収率で回収できる方法を提供すること。
【解決手段】アルコールと、式(I):


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表す)
で表されるケトン化合物とを含有する混合液からアルコールを回収する方法であって、前記混合液を、ポリオール化合物及び触媒と混合し、得られた混合液からアルコールを回収するアルコールの回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールとケトン化合物を含有する混合液から、アルコールを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相互に沸点が近い溶媒の混合液から高純度の単一溶媒を分離することは困難である。アルコールとケトン化合物を含有する混合溶媒からアルコールを蒸留により回収する場合においても、共沸現象により一定比率の混合液としてのみ回収されるという問題がある。そこで、共沸組成の混合液から高純度の単一溶媒を分離するために、蒸留装置に特殊な工夫を施した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているような、相互に沸点が近い溶媒の混合液から高純度の単一溶媒を分離するために特殊な蒸留精製装置を設けるには、膨大な投資が必要となり得る。
【0005】
また、高純度の単一溶媒を分離するために混合液へ触媒等を添加して、目的の溶媒以外の成分を自己縮合等により消費させた場合、目的の溶媒を回収した後の混合溶媒残渣には、廃棄処分しなければならない副生成物が多量に生成する。副生成物が生成するならば、廃棄しなければならない化合物ではなく工業上有用な化合物が生成すると再利用が可能である。
【0006】
本発明の課題は、原料として使用可能な高純度なアルコールを簡便に、かつ高収率で回収できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルコールと、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表す)
で表されるケトン化合物とを含有する混合液からアルコールを回収する方法であって、前記混合液を、ポリオール化合物及び触媒と混合し、得られた混合液からアルコールを回収するアルコールの回収方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、アルコールとケトンの混合液から、高純度のアルコールを簡便に、かつ高収率で回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アルコールとケトン化合物とを含有する混合液を、ポリオール化合物及び触媒と混合した後、アルコールを回収する方法である。混合液中のケトン化合物がポリオール化合物と反応すると、混合液中のアルコールに対するケトン化合物の割合が低くなり、蒸留等により、高純度なアルコールを回収することができる。また、ケトン化合物とポリオール化合物との反応により、工業上有用なジオキソラン化合物が生成し、不要な高沸点化合物の副生成も抑制される。
【0012】
混合液に含まれるアルコール、即ち本発明の方法により回収されるアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の脂肪族アルコール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール等が挙げられる。これらのなかでは、メタノール、エタノール等の沸点が低い、炭素数1〜4の低級脂肪族アルコールが回収効率の観点から好ましい。
【0013】
また、混合液に含まれるケトン化合物は、式(I):
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表す)
で表される。直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
式(I)で表されるケトン化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0017】
混合液に含有されるアルコールとケトン化合物の混合割合は特に限定されない。本発明では、アルコールとケトン化合物を含有する混合液として、各種化合物の製造後、残存した混合溶媒を用いることができる。従って、本発明の方法により、そのまま廃棄処分と成り得る混合溶媒からもアルコールを効率よく回収し、再利用することができる。
【0018】
アルコール及びケトン化合物を含有する混合液は、そのままポリオール化合物及び触媒との混合に供してもよいが、金属等の無機成分やポリマー等の有機成分の固形不純物を含有する場合には、予めろ過処理等により取り除いた後、用いてもよい。例えば、固形不純物として無機成分や有機成分を含む混合液を一晩静置した上澄み液をデカンテーションにより分離した後、汎用ろ過膜を通過させることにより、固形不純物が効率的に除去された混合溶液を得ることができる。
【0019】
一方、ポリオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール等のジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、トリエチロールプロパン等のトリオール等が挙げられるが、ケトン化合物との反応性が良好である点から、グリセリン等の、式(II):
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R3〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜4の整数を示す)
で表される化合物が好ましい。
【0022】
ポリオール化合物の使用量は、ポリオール化合物との反応によるケトン化合物の消費及び未反応のポリオール化合物による副生成物の生成防止の観点から、混合液に含まれるケトン化合物1.0モルに対して、0.01〜20.0モルが好ましく、0.1〜15.0モルがより好ましく、1.0〜8.0モルがさらに好ましい。
【0023】
触媒としては、ポリオール化合物とケトン化合物との反応を促進するものであれば特に限定されないが、具体的には酸触媒を用いることができる。
【0024】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、シュウ酸、ヘプタン酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸等が挙げられ、これらのなかでも、回収効率の観点から、パラトルエンスルホン酸が好ましい。
【0025】
酸触媒と塩基触媒は、酸性を示せば、両者を併用してもよい。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基等が挙げられる。
【0026】
触媒の使用量は、ケトン化合物1.0モルに対して、0.005〜0.5モルが好ましく、0.01〜0.1モルがより好ましい。
【0027】
アルコールとケトン化合物を含む混合液は、反応釜、重合釜、蒸留釜等に仕込むことができる。ポリオール化合物と触媒は、予め混合して混合液と混合しても、別々に混合液と混合してもよく、また混合液に直接添加しても、アルコールを回収する塔内から添加してもよい。さらに、ポリオール化合物と触媒は、一括で混合しても、分割又は滴下等の方法により混合してもよい。混合の態様は特に限定されないが、混合液中のケトン化合物とポリオール化合物との反応を促進する観点から、予め加熱した混合液とポリオール化合物及び触媒とを混合するか、混合液とポリオール化合物及び触媒とを混合しながら又は混合した後に加熱することが好ましい。ケトン化合物とポリオール化合物とを反応させるための加熱温度は、30〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましい。
【0028】
アルコールの回収を開始する時期は、混合液とポリオール化合物及び触媒とを混合した後であれば、特に限定されないが、より高純度のアルコールを回収する観点からは、ケトン化合物とポリオール化合物との反応が開始した後、即ちケトン化合物がポリオール化合物との反応により消費され、ケトン化合物に対するアルコールの割合が増加し始めた時点以降に、アルコールの回収を開始することが好ましく、ケトン化合物とポリオール化合物の反応後、得られた反応液からアルコールを回収することがより好ましい。また、アルコールとポリオールとの反応は触媒による可逆反応であるため、反応後そのままアルコールを回収するとケトン化合物が再生し、回収アルコールに混入する。そこで、酸性触媒を中和し失活させることにより、効率よくアルコールを回収することができる。中和に使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。中和後のpHは、好ましくは6〜12、より好ましくは8〜11である。
【0029】
アルコールを回収する方法として、蒸留等の一般的な方法を用いることができ、また、アルコールを回収する塔としては濃縮管(塔)や蒸留塔等を用いることができる。従来の方法では、混合液中のケトン化合物がアルコールと共沸するため、沸点が相互に近い場合には、高純度のアルコールを回収することが難しく、段数の多い蒸留塔等の高度に精製するための特殊な装置でも困難であるが、本発明では、一般に汎用されている装置を用いた蒸留操作により、アルコールを高純度かつ高収率で回収することができる。
【0030】
蒸留により回収するアルコールは、純度により初留と主留に分けられ、場合により後留としても回収できる。初留、主留、後留の切り替え条件は限定されない。
【0031】
本発明の方法によれば高純度のアルコールを得ることができるため、例えば、留出液中のアルコール含有量が95.0重量%よりも多い時点でも本発明の方法を適用することができる。
【0032】
アルコールの回収は、濃縮回収溶媒中のアルコールの含有量が95.0重量%以下となった時、または、留出液が留出しなくなったときを終了点として判断することができる。アルコールの含有量は、GC(ガスクロマトグラフィー)やLC(液体クロマトグラフィー)等の一般的な分析機器を用いて測定することができる。
【0033】
アルコールの回収は、常温及び減圧のいずれの条件下で行ってもよい。
【0034】
アルコール回収後、残存した混合液又は反応液には、ケトン化合物とポリオール化合物との反応により生成した、式(III):
【0035】
【化4】

【0036】
(式中、R1〜R及びmは前記と同じであり、R1とR2とは結合して環を形成していてもよい)
で表されるジオキソラン化合物が含まれている。かかるジオキソラン化合物は、低臭気、低皮膚刺激性であるため紫外線硬化材料等、各種分野に応用可能な化合物であり、混合液又は反応液から分離することにより、工業材料として再利用することができる。本発明の方法は、ケトン化合物とポリオール化合物との混合物からのアルコールの回収方法としてだけでなく、ケトン化合物とポリオール化合物を用いたジオキソラン化合物の製造方法としても有用である。
【0037】
ジオキソラン化合物は、適宜、分離、精製等の処理を施すことにより、混合液又は反応液から高純度なジオキソラン化合物として得ることができる。精製、分離等の処理としては、例えばろ過、液−液溶媒抽出、遠心分離、カラムクロマトグラフィー、蒸留、エバポレーターを用いた濃縮処理等の一般的な方法を用いることができる。具体的には、例えば、アルコール回収後残存した混合液を、そのまま蒸留精製する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
オールダーショウ(段数10)蒸留塔及び還流管を設置した蒸留器に、メタノールとメチルエチルケトンとの混合液(メタノール/メチルエチルケトン=500g/56g)556gを加えた後、さらにグリセリン142g(メチルエチルケトン1モルに対して2モル)と触媒としてパラトルエンスルホン酸・一水和物7g(メチルエチルケトン1モルに対して0.05モル)とを加え、攪拌しながら混合液の温度が65〜70℃になるまで加熱した。1時間還流させた後、冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液8.9gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノール純度(GC面積%)が95%以上となった時点で主留に切り替えて回収した。回収して得られた初留の液量は140g(メタノール含有率:85重量%[GC面積:75.0%]、メチルエチルケトン含有率:15重量%[GC面積25.0%])、主留の液量は306g(メタノール含有率:98.3重量%[GC面積:98.1%]、メチルエチルケトン含有率:1.3重量%[GC面積1.5%])であった。該主留の液は11個のフラクションに分割して回収した液の混合液であり、表1に示すように、最も純度の高かったフラクションの液はメタノール含有率が99.4重量%[GC面積99.4%]であった。メタノール及びメチルエチルケトンの含有量は、下記条件下で行ったガスクロマトグラフィー(GC)測定により得られたクロマトチャートから算出した。
【0040】
〔GC測定条件〕
カラム:Zebron ZB-1 30m×0.32mm×0.25μm
気化室温度:230℃
キャリアガス:ヘリウム
流速:1.5mL/min
スプリット比:50
検出器:FID
検出器温度:240℃
カラム昇温条件:70〜230℃(10℃/min)、230℃(5min)
【0041】
【表1】

【0042】
塔底に残存した混合液の各成分を測定した結果、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール61g、グリセリン170g及びメタノール2gの残存が確認された。メチルエチルケトンは残存していなかった。
【0043】
塔底に存在する混合液を、エバポレーターでメタノール、グリセリンを留去、蒸留精製することにより、高純度の(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールが得られた。
【0044】
実施例2
オールダーショウ(段数10)蒸留塔及び還流管を設置した蒸留器に、メタノールとメチルエチルケトンとの混合液(メタノール/メチルエチルケトン=500g/56g)556gを加えた後、さらにグリセリン142g(メチルエチルケトン1モルに対して2モル)と触媒として硫酸1.9g(シクロヘキサノン1モルに対して0.025モル)とを加え、攪拌しながら混合液の温度が65〜70℃になるまで加熱した。1時間還流させた後、冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液8.9gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は304g(メタノール含有率:98.3重量%[GC面積:98.1%]、メチルエチルケトン含有率:1.3重量%[GC面積1.5%])であった。
【0045】
塔底に残存した混合液の各成分を測定した結果、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール60g、グリセリン172g及びメタノール3gの残存が確認された。メチルエチルケトンは残存していなかった。
【0046】
塔底に存在する混合液を、エバポレーターでメタノール、グリセリンを留去、蒸留精製することにより、高純度の(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールが得られた。
【0047】
実施例3
オールダーショウ(段数10)蒸留塔及び還流管を設置した蒸留器に、メタノールとメチルエチルケトンとの混合液(メタノール/メチルエチルケトン=500g/56g)556gを加えた後、さらにグリセリン142g(メチルエチルケトン1モルに対して2モル)と触媒としてメタンスルホン酸3.7g(メチルエチルケトン1モルに対して0.05モル)とを加え、攪拌しながら混合液の温度が65〜70℃になるまで加熱した。1時間還流させた後、冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液8.9gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は306g(メタノール含有率:98.3重量%[GC面積:98.1%]、メチルエチルケトン含有率:1.3重量%[GC面積1.5%])であった。
【0048】
塔底に残存した混合液の各成分を測定した結果、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール61g、グリセリン170g及びメタノール2gの残存が確認された。メチルエチルケトンは残存していなかった。
【0049】
塔底に存在する混合液を、エバポレーターでメタノール、グリセリンを留去、蒸留精製することにより、高純度の(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールが得られた。
【0050】
実施例4
オールダーショウ(段数10)蒸留塔及び還流管を設置した蒸留器に、メタノールとシクロヘキサノンとの混合液(メタノール/シクロヘキサノン=500g/76g)576gを加えた後、さらにグリセリン142g(シクロヘキサノン1モルに対して2モル)と触媒としてパラトルエンスルホン酸7g(シクロヘキサノン1モルに対して0.05モル)とを加え、攪拌しながら混合液の温度が65〜70℃になるまで加熱した。1時間還流させた後、冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液8.9gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は310g(メタノール含有率:98.5重量%[GC面積:98.3%]、シクロヘキサノン含有率:0.8重量%[GC面積0.7%])であった。
【0051】
塔底に残存した混合液の各成分を測定した結果、シクロヘキサンスピロ-2’-(1’,3’-ジオキソラン-4’-イル)メタノール79g、グリセリン169g及びメタノール2gの残存が確認された。シクロヘキサノンは残存していなかった。
【0052】
塔底に存在する混合液を、エバポレーターでメタノール、グリセリンを留去、蒸留精製することにより、高純度の(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールが得られた。
【0053】
実施例5
還流管及び攪拌機を設置した1リットル容のセパラブルフラスコに、メタノールとメチルエチルケトンとの混合液(メタノール/メチルエチルケトン=500g/56g)556gを加え、さらにグリセリン426g(メチルエチルケトン1モルに対して6モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸・一水和物27g(メチルエチルケトン1モルに対して0.18モル)を添加した後に加熱し、68℃で5時間還流した。フラスコ内の混合液中のメチルエチルケトン量を測定したところ、メチルエチルケトンが11.2g残存していた(メチルエチルケトン消費率:80.0%)。冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液32.8gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は453g(メタノール含有率:98.3重量%[GC面積:98.1%]、メチルエチルケトン含有率:1.3重量%[GC面積1.5%])であった。
【0054】
塔底に残存した混合液の各成分を測定した結果、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール90g、グリセリン355g及びメタノール1gの残存が確認された。メチルエチルケトンは残存していなかった。
【0055】
塔底に存在する混合液を、エバポレーターでメタノール、グリセリンを留去、蒸留精製することにより、高純度の(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノールが得られた。
【0056】
比較例1
還流管及び攪拌機を設置した1リットル容のセパラブルフラスコに、メタノールとメチルエチルケトンとの混合液(メタノール/メチルエチルケトン=500g/56g)556gを加え、炭酸ナトリウム27g(メチルエチルケトン1モルに対して0.46モル)を添加した後に加熱し、68℃で5時間還流した。フラスコ内の混合液中のメチルエチルケトン含量を測定したところ、メチルエチルケトンの消費は確認されず、56g残存していた(メチルエチルケトン消費率:0%)。さらに加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は254g(メタノール含有率:98.2重量%[GC面積:98.0%]、メチルエチルケトン含有率:1.4重量%[GC面積1.6%])であった。
【0057】
比較例2
炭酸ナトリウムの代わりに、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液27g(メチルエチルケトン1モルに対して0.18モル)を添加した以外は比較例1と同様に行った。フラスコ内の混合液中のメチルエチルケトン量を測定したところ、メチルエチルケトンの消費はほとんど確認されず、55g残存していた(メチルエチルケトン消費率:2%)。さらに加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は252g(メタノール含有率:98.2重量%[GC面積:98.0%]、メチルエチルケトン含有率:1.4重量%[GC面積1.6%])であった。
【0058】
比較例3
炭酸ナトリウムの代わりに、パラトルエンスルホン酸・一水和物27g(メチルエチルケトン1モルに対して0.18モル)を添加した以外は比較例1と同様に行った。フラスコ内の混合液中のメチルエチルケトン量を測定したところ、メチルエチルケトンの消費はほとんど確認されず、55g残存していた(メチルエチルケトン消費率:2%)。冷却し室温で、28重量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液32.8gを加え触媒を中和した(pH2→10)。再び加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は255g(メタノール含有率:98.2重量%[GC面積:98.0%]、メチルエチルケトン含有率:1.4重量%[GC面積1.6%])であった。
【0059】
比較例4
炭酸ナトリウムを使用しなかった以外は、比較例1と同様に操作を行った。還流後、フラスコ内の混合液中のメチルエチルケトン量を測定したところ、メチルエチルケトンの消費はほとんど確認されず、55g残存していた(メチルエチルケトン消費率:1%)。さらに加熱し、塔頂から留出開始したメタノール混合液を初留として回収し、メタノールがGC面積95%以上の留分を主留として回収した。主留の液量は254g(メタノール含有率:98.2重量%[GC面積:98.0%]、メチルエチルケトン含有率:1.4重量%[GC面積1.6%])であった。
【0060】
以上の結果より、実施例の方法によって、ケトン化合物がポリオール化合物との反応により消費された結果、高純度なアルコールを高収率で回収することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、工業原料等に有用な高純度のアルコールを効率よく回収することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールと、式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1〜18のアルキル基又はフェニル基を表す)
で表されるケトン化合物とを含有する混合液からアルコールを回収する方法であって、前記混合液を、ポリオール化合物及び触媒と混合し、得られた混合液からアルコールを回収するアルコールの回収方法。
【請求項2】
混合液をポリオール化合物及び触媒と混合した後、ケトン化合物とポリオール化合物との反応が開始した後に、アルコールの回収を開始する請求項1記載のアルコールの回収方法。
【請求項3】
ポリオール化合物が、式(II):
【化2】

(式中、R3〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜4の整数を示す)
で表される化合物である請求項1又は2記載のアルコールの回収方法。

【公開番号】特開2010−222301(P2010−222301A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71878(P2009−71878)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】