説明

アルコール性疲労改善剤

【課題】健常人のアルコール摂取により起こる疲労、すなわちアルコール性疲労に対して、その症状を有効に改善する改善剤を提供すること。
【解決手段】飲酒はストレス発散やコミュニケーション向上など、充実した生活を送るために広く受け入れられている習慣であるが、反面、アルコール摂取により翌日の倦怠感などの疲労につながる場合も多くみられる。それゆえ、アルコール摂取により起こる疲労、すなわち、アルコール性疲労を軽減、改善するために、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩との2成分を有効成分として含有する安全で効果的なアルコール性疲労改善剤を提供する。本発明のアルコール性疲労改善剤は、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与することができ、また、継続投与の形で投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するアルコール性疲労を改善するためのアルコール性疲労改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人間が日常生活の中で感じる疲労は、眠気とだるさに関する症状、注意集中の困難に関する症状、及び、身体的違和感の症状のような各種の症状として感じられる疲労感、疲労の自覚症状として認識される。疲労としては、生理的疲労及び病的疲労が挙げられる。生理的疲労とは、肉体的、精神的、若しくは両者の機能が低下した状態のことを指し、健康を維持する為の防御反応として定義される。具体的には、仕事、家事、余暇のスポーツ等の日常活動において現われる疲労のことを指す。また、病的疲労とは、心臓病、気管支喘息、肝炎、貧血、代謝性疾患、筋肉疾患、各種の感染症、癌等の基礎疾患に伴う症状として現われる疲労、および慢性疲労症候群、精神的な原因によるうつ病、スポーツによるオーバートレーニング症候群等における疲労を指し、各種の疾病や障害からくる疲労感や疲労の自覚症状として定義されている。
【0003】
また、疲労の中には、アルコール摂取によって起こる疲労がある。飲酒はストレス発散やコミュニケーション向上など、充実した生活を送るために広く受け入れられている習慣であるが、反面、アルコール摂取により翌日の倦怠感などの疲労につながる場合も多くみられる。アルコールは、摂取後、肝臓の細胞内酵素により解毒されるが、その解毒の過程で、或いは、解毒に際して滞積されるアセトアルデヒドのような代謝物による影響から、各種の症状を引き起こし、かかる症状からくる疲労感、すなわち、アルコール摂取により起こる疲労(以下、「アルコール性疲労」という)を招来する。
【0004】
従来より、このようなアルコール性疲労に対しては、各種の栄養剤や、ストレス改善剤が対処療法的に摂取されているが、アルコール摂取により起こる疲労に対して、直接的にその症状を改善する有効な改善剤は提供されていない。
【0005】
一方、各種の生理、薬理機能を有し、人間の生理機能や障害に対する改善作用を有する物質として、オルニチンが知られている。オルニチンは、成長ホルモンを分泌させ筋肉合成を増強する、或いは、基礎代謝を高め肥満を予防する食品素材として、米国及び日本を中心に用いられている。また、オルニチンは、欧州では肝臓障害を改善する医薬品としてL−オルニチンL−アスパラギン酸塩の形態で用いられている。オルニチンの薬理的な機能に基いて、各種の症状改善剤が開示されている。例えば、血中アンモニア値の上昇が関与する病的な疲労において、オルニチン又はその塩を投与することで血中アンモニア値が低下し、病的な疲労を回復するための改善剤が開示されている(特許文献1〜3及び非特許文献1)。
【0006】
また、生理的疲労に対して、オルニチン又はその塩を有効成分とする疲労自覚症状を改善する組成物(特許文献8)が知られており、病的疲労に対してオルニチン又はその塩を有効成分とする疲労自覚症状改善用組成物或いは疲労軽減剤(特許文献10)が知られている。
【0007】
その他、オルニチンを利用したその他の改善剤として、オルニチン又はその塩を有効成分とする寝つき又は寝起き改善剤(特許文献4)が、肌質改善剤(特許文献5)、冷え症改善剤(特許文献6)、睡眠改善剤(特許文献7)、及び血液流動性改善剤(特許文献9)が知られている。
【0008】
このように、オルニチンの各種の薬理機能から、各種改善剤が開示されているが、健常人のアルコール性疲労が、オルニチン又はその塩によって改善されることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭41−8592号公報。
【特許文献2】特公昭42−7767号公報。
【特許文献3】特公昭46−3194号公報。
【特許文献4】特開2006−342148号公報。
【特許文献5】特開2007−31375号公報。
【特許文献6】特開2007−119348号公報。
【特許文献7】特開2008−50352号公報。
【特許文献8】国際公開番号WO2007/040244。
【特許文献9】国際公開番号WO2007/049628。
【特許文献10】国際公開番号WO2007/142286。
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Arzneim.-Forsch.(Drug Res.), 1970, vol8, p1064-1067.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、健常人のアルコール性疲労に対して、その症状を有効に改善する改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、アルコール性疲労の改善剤について鋭意検討する中で、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するものがアルコール性疲労の改善に有効な作用を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するアルコール性疲労改善剤からなる。
【0013】
本発明のアルコール性疲労改善剤は、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与することができ、また、継続投与の形で投与することができる。本発明のアルコール性疲労改善剤は、特に限定されないが、経口投与の形態で投与することが望ましい。また、本発明は、アルコール性疲労改善剤の製造のための、オルニチン又はその塩、或いは、アラニン又はその塩の成分の使用を包含する。
【0014】
すなわち、具体的には本発明は、(1)オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するアルコール性疲労改善剤や、(2)アルコール性疲労改善剤が、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものであることを特徴とする上記(1)記載のアルコール性疲労改善剤や、(3)アルコール性疲労改善剤が、継続投与のためのものであることを特徴とする上記(1)記載のアルコール性疲労改善剤や、(4)アルコール性疲労改善剤が、経口投与の形態で製剤化されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のアルコール性疲労改善剤や、(5)アルコール性疲労改善剤の製造のための、オルニチン又はその塩、或いは、アラニン又はその塩の成分の使用からなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、健常人のアルコール性疲労に対して、その症状を有効に改善する安全で効果的なアルコール性疲労改善剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例におけるオルニチンとアラニンの組み合わせによるアルコール性疲労改善効果についての試験において、オルニチン(オルニチンアスパラギン酸塩)とアラニン併用摂取、若しくはオルニチン(オルニチンアスパラギン酸塩)単独摂取、若しくはアラニン単独摂取による、アルコール投与翌日の運動量低下抑制効果(アルコール性疲労抑制効果)を示す図である。I群、II群、III群、IV群、V群は、それぞれコントロール群、エタノール投与群、オルニチン混餌+エタノール投与群、オルニチン及びアラニン混餌+エタノール投与群、アラニン混餌+エタノール投与群を示す。図において、縦軸は遊泳時間を示す。また、図中、*印は、危険率5%未満、**印は、危険率1%未満で有意差があることを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するアルコール性疲労改善剤からなる。本発明で用いられるオルニチンとしては、L−オルニチン及びD−オルニチンが挙げられる。また、本発明で用いられるアラニンとしては、L−アラニン及びD−アラニンが挙げられる。オルニチン及びアラニンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法、素材から抽出する方法等により取得して用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。
【0018】
L−オルニチンを化学的に合成する方法としては、例えば、Coll.Czechoslov.Chem.Commun.,24,1993(1959)に記載の方法が挙げられる。L−オルニチンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−24096号公報、特開昭61−119194号公報に記載の方法が挙げられる。また、L−オルニチン及びD−オルニチンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。オルニチンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。その他、塩以外の形態として、ペプチドや素材抽出物など、オルニチンが含まれる全ての物質が利用できる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。
【0019】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。
有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩が挙げられる。上記のオルニチンの塩のうち、塩酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、α−ケトグルタル酸塩、アスパラギン酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、又は2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明のアルコール性疲労改善剤には、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とに加え、適宜、各用途に適した添加剤を含有させることができる。該添加剤としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、グルタミン、セリン、グリシン、システイン、スレオニン等のアミノ酸等が挙げられる。
【0021】
また、必要に応じて、その他の成分を含有させることで、よりアルコール性疲労改善に適した組成物とすることができる。その他の成分としては、例えば、麦由来の成分、麦芽、麦汁、ホップ、ホップエキス、生茶葉抽出物、玄米、はと麦、ハブ茶、とうもろこし、コラーゲンペプチド、飲用海洋深層水、乾燥ローズヒップ、黒豆、黒胡麻、キダチアロエ、ゆずの皮、ビタミン、ビタミンC、香辛料抽出物、紅茶、カフェイン、果糖ぶどう糖液糖、食塩、シトルリン、有機酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸鉄、グルコン酸カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、砂糖、酸味料、脱脂粉乳、乳タンパク、乳ペプチド、サイクロデキストリン等が挙げられる。また、本発明のアルコール性疲労改善用組成物は、必要に応じて薬理学的に許容される一種又は二種以上の担体、更に、必要に応じて他の治療のための有効成分を含有していてもよい。
【0022】
本発明のアルコール性疲労改善剤は、オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを必要に応じ担体等と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。製剤の投与形態は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与又は、例えば静脈内、腹膜内若しくは皮下投与等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与がより好ましい。投与する剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、縣濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好適に用いられる。
【0023】
本発明のアルコール性疲労改善剤を製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。経口投与に適当な、例えばシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して、製剤化することができる。
【0024】
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
【0025】
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0026】
経口投与に適当な製剤は、そのまま、又は、例えばビール、発酵アルコール飲料、ビールテイスト飲料、ジュース類、清涼飲料水、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉練り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、チューインガム、キャンディー、スナック菓子等の菓子類、パン類、麺類、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、スープ類、調味料等、粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態としてアルコール性疲労改善用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
【0027】
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張であるオルニチン又はその塩を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液又は塩溶液とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種又はそれ以上の補助成分を添加してもよい。
【0028】
本発明のアルコール性疲労改善剤中のオルニチンまたはその塩の濃度は、製剤の種類、当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、オルニチンまたはその塩として、通常は0.001〜90重量%、好ましくは0.01〜80重量%、特に好ましくは0.02〜70重量%である。また、本発明のアルコール性疲労改善剤中のアラニン又はその塩の濃度は、製剤の種類、当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、アラニン又はその塩として、通常は0.001〜90重量%、好ましくは0.01〜80重量%、特に好ましくは0.02〜70重量%である。本発明のアルコール性疲労改善剤中のオルニチンとアラニンとの重量比は、通常は1:0.001〜20、好ましくは1:0.05〜10、更に好ましくは1:0.1〜5である。
【0029】
本発明の製剤の投与量及び投与回数は、投与形態、投与される者の年齢、体重等に応じて異なるが、成人に対し一日あたりオルニチン又はその塩として、通常は5mg〜30g、好ましくは50mg〜10g、特に好ましくは100mg〜3g、更に好ましくは200mg〜1gとなるように、1日に1回ないし数回に分けて投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1日間〜3ヶ月間である。
【0030】
本発明の製剤の投与量および投与回数は、投与形態、投与される者の年齢、体重等に応じて異なるが、成人に対し一日あたりアラニン又はその塩として、通常は1mg〜30g、好ましくは10mg〜10g、特に好ましくは20mg〜3g、更に好ましくは40mg〜1gとなるように、1日に1回ないし数回に分けて投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1日間〜3ヶ月間である。
【0031】
本発明のアルコール性疲労改善剤を、医薬品または飲食品として投与又は摂取することによりアルコール性疲労を改善することができる。
【0032】
アルコール性疲労としては特に限定されないが、好ましくは飲酒翌日にみられる眠気とだるさ、注意集中の困難に関する症状があげられる。眠気とだるさに関する症状としては、例えば頭が重い、全身がだるい、足がだるい、すぐに息が切れる、あくびがでる、頭がぼんやりする、眠い、目が疲れる、立っているのが辛い等があげられる。注意集中の困難に関する症状としては、例えば考えがまとまらない、話しをするのが嫌になる、いらいらする、気が散る、物事に熱心になれない、ちょっとしたことが思い出せない、することに間違いが多くなる等があげられる。
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
[オルニチンのアルコール性疲労(運動量低下)改善効果についての試験]
<試験方法>
日本エスエルシー株式会社より購入したddYマウス(オス)5週齢100匹を標準食(AIN93G)で1週間馴化した後、体重の8%の重りをつけて水温25.5±0.5℃で強制遊泳させた。飼育条件は明期8:00−20:00、暗期20:00−8:00とし、遊泳実験は全て15時間の絶食の後に実施した。遊泳時間が同程度の個体を50匹選別し、遊泳時間および体重が群間で均一になるように10匹ずつ以下の通り群分け(I〜V群)をした。
【0035】
I及びII群の餌にはAIN93Gを用い、III群の餌にはAIN93Gに0.02%のオルニチン(0.04%オルニチンアスパラギン酸塩)を混合したもの(以下、オルニチン混餌という)を用い、IV群の餌にはAIN93Gに0.02%のオルニチン(0.04%オルニチンアスパラギン酸塩)と0.02%のアラニンを混合したもの(以下、オルニチン/アラニン混餌という)を用い、V群の餌にはAIN93Gに0.02%のアラニンを混合したもの(以下、アラニン混餌という)を用いて、それぞれ1週間飼育した。試験前日夜に全群絶食後、I群には生理食塩水を、II、III、VI、V群には体重1kg当たり4gのエタノールを投与した。15時間の絶食の後、翌日午前中に上述した強制遊泳試験を実施し、マウスを遊泳させ疲労困憊するまでの遊泳時間を測定した。疲労困憊の基準は、マウスの鼻が5秒間水中に沈んだ時点とした。結果を図1に示す。
【0036】
<結果>
図1に示すとおり、I群(AIN93G摂取)と比較して、II群(AIN93G摂取、エタノール投与)で、エタノール投与の影響でマウスが疲労していることを示す遊泳時間の低下が見られた。一方、この遊泳時間の低下はIII群(オルニチン混餌、エタノール投与)とV群(アラニン混餌、エタノール投与)では有意な抑制は見られなかったが、IV群(オルニチン/アラニン混餌、エタノール投与)では有意な抑制が見られ、エタノール摂取による遊泳時間低下を抑制する効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、健常人のアルコール摂取により起こる疲労、すなわちアルコール性疲労に対
して、その症状を有効に改善する安全で効果的なアルコール性疲労改善剤を提供する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルニチン又はその塩と、アラニン又はその塩とを有効成分として含有するアルコール性疲労改善剤。
【請求項2】
アルコール性疲労改善剤が、アルコール摂取前に又はアルコール摂取後に投与するためのものであることを特徴とする請求項1記載のアルコール性疲労改善剤。
【請求項3】
アルコール性疲労改善剤が、継続投与のためのものであることを特徴とする請求項1記載のアルコール性疲労改善剤。
【請求項4】
アルコール性疲労改善剤が、経口投与の形態で製剤化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のアルコール性疲労改善剤。
【請求項5】
アルコール性疲労改善剤の製造のための、オルニチン又はその塩、或いは、アラニン又はその塩の成分の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−126669(P2012−126669A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278811(P2010−278811)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【出願人】(594197388)小岩井乳業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】