アルツハイマー・アミロイド−ベータ・ペプチドへの結合が増加した、突然変異体低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質
突然変異体低密度リポタンパク質関連タンパク質−1は、野生型相同体に比較して、より高いアフィニティでアルツハイマー・アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合する。この結合を用いて、Aβを検出するかまたは被験体の体の残りからAβを分離することも可能である。アルツハイマー病において、該結合を用いて、Aβを検出することによって診断結果を提供するか、Aβを除去することによって治療を提供するか、またはその両方を提供することも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー・アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドへの結合を改善させる、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1の突然変異に関する。この特異的結合を用いて、Aβを検出するかまたは被験体の体の残りからAβを分離することも可能である。アルツハイマー病において、本発明を用いて、Aβを検出することによって診断結果を提供するか、Aβを除去することによって治療を提供するか、またはその両方を提供することも可能である。
【背景技術】
【0002】
アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドは、アルツハイマー病(AD)の病態に関与することが知られる。このペプチドは、脳実質および血管系におけるアミロイドの主な構成要素である。老人斑から抽出されるAβは、主に、ペプチドAβ1−40(Aβ40)およびAβ1−42(Aβ42)であり;血管アミロイドは、主に、ペプチドAβ1−39およびAβ40である。血液、脳脊髄液(CSF)、および脳に存在するAβの主な可溶性型はAβ40である。血液、CSF、および脳間質液(ISF)中に循環している可溶性Aβは、遊離ペプチドとして存在し、そして/またはアポリポタンパク質E(アポE)、アポリポタンパク質J(アポJ)、他のリポタンパク質、アルブミン、α2−マクログロブリン(α2M)、およびトランスサイレチンと会合して存在しうる。
【0003】
アミロイド仮説によると、脳における神経毒性Aβ42の集積が、AD病変形成を開始する主な事象である(HardyおよびSelkoe, 2002)。Aβ42集積の増加は、ADの家族型におけるように、Aβの産生増加に、そして/または遅発性ADにおけるように、Aβクリアランス障害に関連する可能性もある(Selkoe, 2001; ZlokovicおよびFrangione, 2003)。脳におけるAβレベルの増加は、神経毒性Aβオリゴマーの形成、および進行性のシナプス、神経突起、およびニューロン機能不全を生じる(Walshら, 2002; Dahlgrenら, 2002; Kayedら, 2003; Gongら, 2003)。Aβ内のミスセンス突然変異は、主に、オランダ突然変異(コドン693でのGからC、22位でのGluからGln)およびアイオワ突然変異(コドン694でのGからA、23位でのAspからAsn)を持つ患者におけるように、主に血管沈着に関連する。血管向性(vasculotropic)オランダ(E22Q)またはアイオワ(D23N)突然変異体Aβは、原線維形成増進および脳血管細胞に対する毒性を示し、一方、オランダ/アイオワ二重突然変異体Aβ(E22Q、D23N)は、オランダおよびアイオワ血管向性突然変異体の両方に比較して加速した病態形成特性を有する(Van Nostrandら, 2001)。
【0004】
終末糖化産物(RAGE)受容体、スカベンジャーA型受容体(SR−A)、天然LRP−1、およびLRP−2などの細胞表面タンパク質は、低ナノモル濃度で遊離ペプチドとして(例えばRAGE、SR−A)、そして/またはアポE、アポJ、またはα2Mとの複合体中で(例えば天然LRP−1、LRP−2)、Aβに結合する。しかし、野生型相同体よりも高いアフィニティでAβに直接結合する突然変異体LRP−1は、開示されなかった。
【0005】
WO 01/90758およびUS 2004/0259159は、脳からのAβの血管クリアランスを仲介する際のLRP−1の役割を記載する。LRP−1発現または活性の増加を用いて、Aβを除去することも可能であり、そしてそれによってアルツハイマー病の被験体または該疾患を発展させるリスクがある被験体を治療することも可能であると解説された。
【0006】
WO 2005/122712およびUS 2007/0054318は、Aβに結合させ、そしてAβを脳から除去するための可溶性LRP−1の使用を記載する。LRP−1の可溶性クラスターIIまたはIV(それぞれ、LRPIIまたはLRPIV)は、in vitroおよびin vivoで、他の既知のリガンド(例えば、tPA、アポE2、アポE3、アポE4、MMP9)よりも一桁から二桁高いアフィニティで、Aβに結合することが示された。in vivoで、LRP−1の野生型(wt)クラスターIV(wt−LRPIV)は、強いAβ末梢シンク活性を発揮し、これは脳からのAβクリアランスを生じ、トランスジェニックマウスにおいて、アミロイド関連病変を有意に減少させ、そして機能的転帰を改善する。Aβ前駆体タンパク質(APP)である、クニッツ型プロテアーゼ阻害剤(KPI)ドメインを有するが、より短いAPP695(KPIドメインを欠く、脳中の最も一般的なAPPアイソフォーム)ではないAPP770アイソフォームは、in vitroで、LRP−1に結合し、培養線維芽細胞において、APP分解を生じることが示された。Deaneら(2004)およびSagareら(2007)を参照されたい。
【0007】
本明細書において、本発明者らは、APP695がwt−LRPIVに結合しないことを示す。さらに、KPIドメインを含有するAPPアイソフォーム(例えば、APP770、APP751、およびsAPPβ)は、Aβ結合部位で、wt−LRPIVに検出可能に結合しない。KPI含有APPアイソフォームは、wt−LRPIVに対して非常に弱い結合を示し、該結合は、Aβに関するものより二桁低かった。wt−LRPIVに対するKPI含有APPアイソフォームのこの弱い結合は、KPI特異的抗体または組換えKPIペプチドで無効にされ、これらはAβ結合には影響しなかった(すなわち、結合は、LRP−1のAβ結合ポケットに特異的ではなかった)。本発明者らは、アスパラギン酸からグリシンへの残基343での単一突然変異(D343G)を含有する突然変異体LRP−1が、wt−LRPIVよりも3倍高いアフィニティでAβ42に結合し(Kd 〜1.5nM)、そしてwt−LRPIVよりも、Aβ40およびAβ42に対して、対照マウスにおけるAβ末梢シンク作用より30〜50%の有意に高い作用を発揮することを見出した。さらに、突然変異体LRPIVは、KPI含有APPアイソフォーム(すなわち、APP770、APP751、およびsAPPβ)に検出可能には結合せず、そして血液脳関門を横断しなかった。突然変異体LRPIVおよびwt−LRPIVは、どちらも、脳におけるAPPレベルおよび/または代謝を改変するのに失敗した。したがって、脳または末梢において、APP代謝にいかなる有意な影響も及ぼさずに、wt−LRPIVよりも、Aβに対する高い結合アフィニティを持つ突然変異体LRP−1を、特異的Aβシンク剤として用いることも可能である。
【0008】
突然変異体LRP−1タンパク質および該タンパク質をコードする核酸、薬剤および組成物、ならびに治療法および診断法におけるその使用は、アミロイドの形成および疾患におけるその役割に適用可能であることを本明細書に解説する。重要なことに、突然変異体LRP−1は、血液脳関門を越えて中枢神経系からのAβ枯渇のため、末梢におけるシンクとして作用する。本発明の他の利点を以下に論じるか、またはこうした利点は、これらの考察から、当業者には明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 01/90758
【特許文献2】US 2004/0259159
【特許文献3】WO 2005/122712
【特許文献4】US 2007/0054318
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】HardyおよびSelkoe, 2002
【非特許文献2】Selkoe, 2001
【非特許文献3】ZlokovicおよびFrangione, 2003
【非特許文献4】Walshら, 2002
【非特許文献5】Dahlgrenら, 2002
【非特許文献6】Kayedら, 2003
【非特許文献7】Gongら, 2003
【非特許文献8】Van Nostrandら, 2001
【非特許文献9】Deaneら(2004)
【非特許文献10】Sagareら(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)の突然変異によって、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに対する結合アフィニティを改善することである。天然LRP−1による結合に比較した際、突然変異体LRP−1が、Aβに特異的に結合するより高いアフィニティを有することが好ましい。さらに、1またはそれより多いカルシウム結合断片において少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を含むLRP−1誘導体が、1またはそれより多いカルシウム結合断片における野生型アスパラギン酸を置換しない以外はすべての突然変異を含むLRP−1誘導体よりも、少なくとも2倍高いアフィニティで、Aβに結合することが好ましい。より好ましくは、アスパラギン酸置換は、Aβに対する少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍高いアフィニティを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、突然変異体LRP−1を提供する。突然変異体LRP−1は、LRP−1由来の1またはそれより多いドメイン、および場合によって、LRP−1に由来しない1またはそれより多いドメイン(すなわち、天然タンパク質には存在しない異種ドメイン)で構成されてもよい。少なくともクラスターIIおよび/またはクラスターIVが含有されることが好ましく;クラスターIIおよび/またはクラスターIVのみから本質的になってもよい。より好ましくは、該LRP−1は、少なくともクラスターIVを含有するか、またはクラスターIVのみから本質的になり;他方が存在するならば、クラスターIIまたはクラスターIVを含有しなくてもよい。突然変異体LRP−1は、場合による他のドメイン:細胞の外への分泌を指示するシグナルペプチド(例えば新生ポリペプチドを小胞体にターゲティングし、膜を渡ってポリペプチドを転位置させ、そして分泌経路を通じて、任意の修飾を伴うポリペプチドを輸送する、疎水性アミノ酸配列)およびポリペプチドを脂質二重層に付着させるドメイン(例えば、膜を渡るドッキングのための膜貫通ドメインまたは膜内への挿入のための脂質ドメイン)を含有してもまたは含有しなくてもよい。溶液中のAβに結合するには、可溶性LRP−1突然変異体が好ましく、これはおそらく、天然タンパク質の少なくとも膜貫通ドメインを除去することによる。突然変異体LRP−1は、固体支持体に、可逆的にまたは非可逆的に付着してもよい(例えば、それぞれ化学的に不安定または安定である、共有結合を用いる)。これは天然LRP−1に同一ではなく、したがって、天然アミノ酸配列の1またはそれより多いドメインが突然変異(例えば置換、付加、欠失)しなければならない一方、Aβへの結合能が改善される(例えば好ましくは、突然変異を持たない同等のタンパク質に比較して、少なくとも2倍優れた結合)。ヒトまたは別の哺乳動物を供給源として用いることもまた好ましく、そして突然変異体LRP−1(例えばヒト患者に注入されるヒトまたはヒト化哺乳動物LRP−1突然変異体)を投与した被験体において、検出可能な免疫反応が誘発されないこともまた好ましい。
【0013】
治療において薬剤として(例えば疾患を有する被験体における療法または疾患を発展させるリスクがある被験体における予防)、または診断においてAβ検出のための直接結合剤として、突然変異体LRP−1を用いてもよい。療法または予防組成物は、突然変異体LRP−1および少なくとも1つの薬学的に許容されうるキャリアー(例えば生理学的塩および緩衝液の溶液)で構成される。体の循環系を通じて、または機械によって(例えばアフェレーシス、または突然変異体LRP−1/Aβ複合体を形成し、そして該複合体を体から除去する他の体外技術)、被験体からAβを除去することによって、あるいはアミロイド沈着を減少させることによって、Aβを不活性化させることも可能である。診断組成物は、突然変異体LRP−1および少なくとも1つの検出可能標識(例えば、色、酵素、蛍光、発光、磁性または常磁性、あるいは放射性検出のための部分)で構成される。突然変異体LRP−1および検出可能標識は共有結合していてもまたはしていなくてもよい。あるいは、1またはそれより多い特異的結合対を通じて付着していてもよい。結合は、被験体の体内または体外で、溶液中で、または支持体上に固定されたものの1つと起こってもよい。Aβに直接結合した突然変異体LRP−1は、実験室アッセイを用いて(すなわちin vitro診断法)、あるいは蛍光、磁気共鳴、またはX線画像化によって、被験体の体において(すなわちin vivo診断法)、体液または組織から調製された標本において、検出可能である。被験体は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトである。
【0014】
本発明のさらなる側面は、以下の詳細な説明および請求項、ならびにその一般化から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−1】図1−1は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図1−2】図1−2は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図1−3】図1−3は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図2】図2は、LRPIV断片がAβに高いアフィニティで結合することを示す。グラフは、ヒトAβ40(図2A)およびAβ42(図2B)の異なるレベルでのLRPIV断片に対する結合曲線である。Aβ40(図2C)およびAβ42(図2D)への断片結合に関する結合定数(Kd)を示す。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図3】図3は、突然変異体LRPIVが、LRP−1の他のリガンドよりも高いアフィニティでAβに結合することを示す。グラフは、固定されたMT007−LRPIV(図3A)およびGAR−LRPIV(図3B)に対するヒトアポE2(E2)、アポE3(E3)、アポE4(E4)、tPA、MMP9、および因子IXaに関する結合曲線である。MT007−LRPIV(図3C)およびGAR−LRPIV(図3D)へのリガンド結合に関するKdを示す。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図4】図4は、突然変異体LRPIVが野生型LRPIVに比較して低いアフィニティでAPPに結合することを示す。グラフは、可溶性KPI(クニッツ型プロテアーゼ阻害剤)ドメインおよび抗KPI抗体(mAb4.1)の非存在下および存在下での、固定されたGAR−LRPIVに対するAPP695(図4A)、固定されたGAR−LRPIVに対するAPP770(図4B)およびAPP751(図4C)、ならびに可溶性KPIドメインおよびmAb4.1の非存在下および存在下での、固定されたGAR−LRPIVに対するAβ40(図4D)およびAβ42(図4E)に関する結合曲線である。GAR−LRPIVに対するAβ40、Aβ42、APP770、及びAPP751結合に関するKdを図4Fに示す。図4Gにおいて、固定されたGAR−LRPIVおよびMT007−LRPIVに対するAPP770結合に関するKdを比較する。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図5】図5は、突然変異体LRPIVが、野生型LRPIVよりも高い、脳Aβを低下させる能力を有することを示す。治療後の血漿Aβ40(図5A)、血漿Aβ42(図5B)、脳Aβ40(図5C)、および脳Aβ42(図5D)を示す。対照(すなわち野生型)マウスをビヒクルおよびGAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV(静脈内、20μg/日)で5日間治療した。治療期間終了時、マウスの血漿および脳試料を収集した。AβレベルをELISAによって決定した。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成熟低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)は、少なくとも5つの異なるタイプのドメインで構成される:(i)リガンド結合性システインリッチ反復、(ii)上皮増殖因子(EGF)受容体様システインリッチ反復、(iii)YWTD反復、(iv)膜貫通ドメイン、および(v)細胞質ドメイン。シグナルペプチドは、分泌経路内に転位置した後、切断される。LRP−1におけるリガンド結合型ドメインは、2〜11の間の断片を含有する4つのクラスター(クラスターI〜IV)で存在する。結合部位がマッピングされているLRP−1に対するリガンドの大部分は、これらのリガンド結合型ドメインと相互作用する(クラスターIIおよびIVは、個々に、またはともに、Aβペプチドの結合に寄与する)。これらの後に、EGF前駆体相同ドメインが続き、これは、2つのEGF反復、プロペラ様構造に配置された6つのYWTD反復、および別のEGF反復で構成される。6つのEGF反復が膜貫通ドメインに先行する。細胞質ドメインは、エンドサイトーシス機構、ならびに細胞シグナル伝達に関与する細胞質アダプターおよび足場タンパク質のドッキング部位として働く、2つのNPxY反復で構成される。LRP−1の重鎖(515kDa)は4つのリガンド結合ドメインを含有し、そしてLRP−1の軽鎖(85kDa)は膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含有する。突然変異体LRP−1は、重鎖またはその断片のみで構成されてもよい。可溶性LRP−1に関しては、該タンパク質は膜貫通ドメインを欠き、そして好ましくはまた細胞質ドメインも欠いてもよい。
【0017】
LRP−1は、いくつかのタンパク質ファミリーに相当する少なくとも30の異なるリガンドを認識し、これらには、リポタンパク質、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ阻害剤複合体、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、細菌毒素、ウイルス、および多様な他の細胞内タンパク質が含まれる。LRP−1に認識されるリガンドの最大グループは、プロテイナーゼまたはタンパク質分解活性制御に関与する分子である。特定のセリンプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼは、LRP−1に直接結合する一方、いくつかの他のプロテイナーゼは、特異的阻害剤と複合体化された場合のみに結合する。これらの阻害剤は、タンパク質分解的切断または小分子アミンとの反応後に生じるコンホメーション変化の後にのみ、LRP−1によって認識される。対照的に、LRP−1は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の天然および複合体化型の両方を認識する。LRP−1はまた、多量体マトリックスタンパク質トロンボスポンジン−1およびトロンボスポンジン−2にも結合し、そしてシュードモナス属(Pseudomonas)外毒素Aおよびマイナー群ヒト・ライノウイルスを細胞内に送達する。さらに、LRP−1は、HSP96、HIV−1 Tatタンパク質、ならびにLRP−1および他のLDL受容体ファミリーメンバーの分子シャペロンとして機能する小胞体常在タンパク質であるRAPを含む、いくつかの細胞内タンパク質を認識する。
【0018】
LRP−1はどのようにして、この多様なリガンドを特異的に認識するのだろうか? 個々のリガンド結合ドメインの結晶学および核磁気共鳴によって、各リガンド結合ドメインの短いループ中のアミノ酸配列可変性が、反復のユニークな輪郭表面および電荷密度を生じることが明らかになった。異なるリガンド結合ドメインをLRP−1軽鎖に融合させ、そして細胞における発現後、個々のリガンドのエンドサイトーシスを仲介する能力を測定することによって、LRP−1「ミニ受容体」が作製されてきている。好ましくは、可溶性LRP−1断片は、組換え技術によって作製されてもよく、そしてin vitroで、異なるリガンドに結合する能力に関して、異なるリガンド結合ドメインをスクリーニングする。本明細書において、本発明者らは、Aβの特異的結合において、リガンド結合ドメイン(クラスターIVを参照されたい)内のカルシウム結合断片の役割を立証する。これらは、協同で作用して、カルシウムおよびAβペプチドの結合を協調させている可能性もある。したがって、Aβ結合を異種ポリペプチド上に移植して(免疫原性を減少させるためのげっ歯類抗体のヒト化を参考にされたい)、突然変異体LRP−1を作製してもよい。
【0019】
「断片」は、全長LRP−1の分子量より少ない分子量を持つLRP−1の特定の突然変異である。突然変異体LRP−1のアミノ酸配列の分子量は、LRP−1の単一リガンド結合ドメインおよび重鎖(515kDa)の分子量の間であってもよい。例えば、突然変異体LRP−1は、約30kDa〜約55kDaであってもよいが、より小さいおよびより大きい断片の両方が可能である。特に、可溶性LRP−1のクラスターII(配列番号2)および/またはクラスターIV(配列番号3)、あるいは1またはそれより多いそのカルシウム結合断片が好ましい。したがって、約65kDa(一次アミノ酸配列にグリコシル化配列が加わったもの)未満の相対分子量を有する突然変異体LRP−1が可能である。対照的に、突然変異体分子量を最小化することが望ましい場合は、突然変異体LRP−1からのクラスターIIまたはクラスターIVのいずれかの排除(すなわちそれぞれ、クラスターIVまたはクラスターIIのみを含むもの)が好ましい。野生型LRP−1タンパク質および該タンパク質をコードする核酸、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列、またはその成熟型は、ヒト(例えば寄託番号CAA32112、NP 002323、Q07954、またはS02392)、他の哺乳動物(例えばウシ、モルモット、マウス、ラット)由来であってもよいし、あるいはその多型および変異体であってもよい。天然LRP−1タンパク質を化学的に操作(例えば加水分解的切断または酵素的タンパク質分解)して、ポリペプチド断片を作製してもよいが、細菌、カビまたは酵母、昆虫、あるいは哺乳動物細胞または生物における組換え技術によってこれらの断片を作製することが好ましい。遺伝子キメラを用いて、突然変異体LRP−1を1またはそれより多い異種ドメインに融合させてもよい。突然変異体LRP−1をコードする核酸を培養細胞または生物内に導入し(例えば核トランスファー、トランスフェクション、遺伝子組換え、特に体内での幹細胞への、または体内への移植)、そこでポリペプチドが翻訳され、そしてプロセシングされてもよい。例えば、突然変異体LRP−1タンパク質は、ウイルス感染またはトランスフェクションによって細胞内に導入される発現構築物から産生されてもよい。発現構築物は、好ましくは、血管細胞特異的であるか、またはウイルス由来であるか、またはその組み合わせである、制御領域(例えばプロモーター、エンハンサー)から転写される。これらは、キャリアー中でタンパク質および他の核酸と会合してもよい(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはレトロウイルス由来のウイルス粒子中にパッケージングされるか、リポソーム中に被包されるか、あるいはポリマーと複合体化される)。in vivo治療には、被験体血管系内への、薬学的組成物(例えばウイルスまたは核酸含有溶液)の直接滴下が含まれる。ex vivo治療のため、被験体またはドナー由来の細胞(例えば血管細胞またはその子孫)をin vitroでウイルス感染させるかまたはトランスフェクションし、そして次いで、被験体の血管系内に移植してもよい。細胞は、特に脳、動脈、または網内系の臓器の、そしてより特に、血液脳関門の大脳動脈、肝臓、または幹細胞の、血管細胞(例えば平滑筋細胞)であってもよい。
【0020】
可溶性LRP−1を作製する好ましい方法は、野生型膜貫通ドメインを突然変異させる(例えばミスセンスまたは欠失突然変異)ことを伴う。例えば、膜貫通ドメインの前の部位に停止コドンを導入してもよいし、または膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする部分を欠失させてもよい。クラスターIVまたはそのいくつかのカルシウム結合断片を含むミニ受容体もまた産生してもよく(例えば遺伝子スプライシングまたはアダプタープライマーを用いた増幅によって)、そしてAβ結合に用いてもよい。突然変異体LRP−1を、細胞膜の脂質二重層または別の支持体に付着させ、そして次いで、脱離させ/加水分解して、突然変異体LRP−1を作製してもよい。例えば、タンパク質分解酵素は、細胞外部のペプチド結合を加水分解可能であるし、またはリパーゼは、脂質二重層中に挿入されたスフィンゴ糖脂質アンカーを加水分解可能である。あるいは、突然変異体LRP−1は、Aβへの結合前、結合中、または結合後に、支持体上に固定されていてもまたはいなくてもよい。
【0021】
タンパク質融合体を作製し、そして用いてもよい。天然LRP−1シグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドを用いて、ER膜を渡ってタンパク質を転位置させ、そして分泌経路を通じて、これを輸送してもよい。突然変異体LRP−1はグリコシル化またはそうでなければ翻訳後修飾されてもよい。局在化ドメイン(例えば抗体または結合対の別のメンバー)を用いて、組織、臓器、または被験体の体の他の部分において、可溶性LRP−1突然変異体の局所濃度を増加させてもよい。例えば、ビオチン化またはストレプトアビジンとの融合は、可溶性LRP−1突然変異体を、同族結合メンバー(それぞれ、アビジンまたはビオチン)がその中に/またはそこに付着している体の部分に局在化させることも可能である。
【0022】
例えば、カルシウム結合断片中の少なくとも1つの突然変異は、ヒトまたは他の哺乳動物(例えばウシ、モルモット、マウス、またはラット)由来のLRPスーパーファミリーの任意のメンバー、特にLRP−1相同体において作製されてもよい。突然変異体LRP−1相同体のアミノ酸またはヌクレオチド配列はまた、他の既知の置換、欠失、挿入、異種ドメインの融合、変異体、または多型も含んでもよい。
【0023】
本明細書で研究する受容体−リガンド系に関しては、LRP−1リガンド(例えばアポE、アポJ、α2M)およびRAPは、Aβに結合するのに必要ではない。可溶性LRP−1突然変異体は、溶液中に遊離のAβに結合することも可能であるし、あるいは突然変異体LRP−1またはAβのいずれかが固相に最初に付着していることも可能である。突然変異体LRP−1およびAβ間で結合した後、次いで、結合前、結合中、または結合後の任意の時点で、どちらかまたは両方を支持体(例えば細胞、組織、または人工的固体支持体)上に固定してもよい。突然変異体LRP−1/Aβ複合体を単離してもまたは検出してもよい。アルツハイマー病を治療する候補化合物は、受容体−リガンド系の構成要素である少なくとも1つの遺伝子、転写物、またはタンパク質と相互作用して、受容体活性(すなわちAβの血管クリアランス)を増加させてもよいし、そして療法または予防を提供する能力に関してスクリーニングされてもよい。これらの産物をアッセイ(例えばmt−LRP−1を用いてAβを検出する診断法)で、または治療に用いてもよいし;好適には、これらは、アッセイキットまたは薬剤形式(例えば単一または多用量パッケージ)中にパッケージングされる。
【0024】
可溶性LRP−1突然変異体のAβへの直接結合は、溶液中または支持体上で起こってもよい。アッセイ形式は、未結合Aβからの結合Aβの分離を必要としてもまたはしなくてもよい(すなわち不均一または均一形式)。検出可能なシグナルは、直接または間接的に、結合複合体の任意の部分に付着してもよく、競合的に、増幅されて、またはその任意の組み合わせで測定されてもよい。ブロッキングまたは洗浄工程を挿入して、感度および/または特異性を改善してもよい。結合前、結合後、または結合中の、支持体への可溶性LRP−1突然変異体の付着は、以前付着されなかった受容体の捕捉を生じる。米国特許5,143,854および5,412,087を参照されたい。受容体−リガンド系の構成要素のタンパク質および/または転写物レベルで、存在量を測定してもよい。
【0025】
また、可溶性LRP−1突然変異体を支持体に付着させてもよい。支持体は、固体または多孔性であってもよく、そしてシート、ビーズ、または線維として形成されてもよい。支持体は、綿、絹、またはウール;セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、または陽性荷電ナイロン;天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、またはスチレンブタジエンゴム;アガロースまたはポリアクリルアミド;ケイ素またはシリコーン;結晶、無定形または不純物シリカ(例えば水晶)またはシリケート(例えばガラス);ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、メタクリル酸ポリメチル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフロリド、酢酸ポリビニル、塩化ポリビニル、またはポリビニルピロリドン;あるいはその組み合わせで作製されてもよい。結合がモニター可能であり、そしてシグナルが光によって伝達可能であるように、光学的に透明である材料が好ましい。こうした試薬は、同族分子間の特異的相互作用によって、溶液中のAβの捕捉を可能にし、そして次いで、支持体上にAβを固定可能である。
【0026】
可溶性LRP−1突然変異体を、反応基、例えばカルボキシ、アミノ、またはヒドロキシラジカルを通じて、支持体に付着させてもよく;付着はまた、支持体上に直接、接触プリンティング、ピンでのスポッティング、ペンでのピペッティング、またはノズルでのスプレーを行うことによっても実行可能である。あるいは、可溶性LRP−1突然変異体は、特異的結合対(例えば抗体−ジゴキシゲニン/ハプテン/ペプチド、ビオチン−アビジン/ストレプトアビジン、グルタチオンSトランスフェラーゼ−グルタチオン、マルトース結合タンパク質−マルトース、ポリヒスチジン−ニッケル、プロテインAまたはG/免疫グロブリン)の相互作用によって、支持体に可逆的に付着してもよく;非可逆的付着が望ましい場合、架橋を用いてもよい。
【0027】
好適な検出のため、容易にアッセイされるレポーターの可溶性LRP−1突然変異体への付着を用いてもよい。レポーターは、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、細菌/昆虫/海洋無脊椎動物ルシフェラーゼ(LUC)、緑色および赤色蛍光タンパク質(それぞれGFPおよびRFP)、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)、β−ラクタマーゼ、およびその誘導体(例えば青色EBFP、シアンECFP、黄緑色EYFP、脱安定化GFP変異体、安定化GFP変異体、またはClontechによるLIVING COLORS蛍光タンパク質として販売される融合変異体)であってもよい。レポーターは、好ましくは色素原、蛍光、または発光シグナルによってアッセイされる同族基質を用いる。あるいは、可溶性LRP−1突然変異体は、同族抗体またはアフィニティ樹脂が入手可能な、異種エピトープ(例えばFLAG、MYC、SV40 T抗原、グルタチオントランスフェラーゼ、ヘキサヒスチジン、マルトース結合タンパク質)でタグ化されていてもよい。
【0028】
可溶性LRP−1突然変異体は、発現ベクターにおいて、適切なコード領域を遺伝子連結することによって、あるいは化学的架橋による結合メンバー上の反応部分への直接化学的連結によって、特異的結合対の1つのメンバーに連結させてもよい。これらをアフィニティ試薬として用いて、Aβとの特異的結合に関与する相互作用を同定し、単離し、そして検出することも可能である。これは、溶液中の、または支持体に固定された複合体を生じる。
【0029】
突然変異体LRP−1を、薬剤、診断剤として用いてもよく、あるいは本明細書に開示する1またはそれより多い有用性を持つ療法または診断組成物を配合するために用いてもよい。これらをin vitroで体液または培養中の組織に投与してもよいし、in vivoで被験体の体に投与してもよい。あるいはex vivoで被験体の体外で細胞に投与して、後に同じ被験体または別の被験体の体に戻してもよい。被験体の体から標本を採取した後、そして実験室アッセイの前に、体液および組織をさらにプロセシングしてもよい。例えば、細胞を脱凝集させるかまたは溶解するか、あるいは固形組織として提供してもよい。標本を、アッセイ前に、乾燥型または凍結型で保存してもよい。
【0030】
化合物またはその誘導体を用いて、薬剤または他の薬学的組成物を産生してもよい。薬学的に許容されうるキャリアーをさらに含む組成物、および組成物を被験体に送達するのに有用な構成要素をさらに含む組成物が、当該技術分野に知られる。こうしたキャリアーおよび他の構成要素を本発明の組成物に添加することは、十分に当該技術分野の技術レベル内である。
【0031】
可溶性LRP−1突然変異体に結合させるか、または体の循環(例えば網内系)を通じて可溶性LRP−1突然変異体に結合したAβを除去することによって、あるいは機械(例えばアフィニティクロマトグラフィー、電気泳動、ろ過、沈殿)によって、未結合Aβの濃度を減少させることも可能である。被験体の体からのAβの除去によって、または被験体の体のアミロイド沈着の減少によって、治療の有効性を評価してもよい。これは可溶性LRP−1突然変異体を用いてその量および/または位置を検出することも可能な、ヒト患者または動物モデルにおいて達成可能である。本明細書記載の治療様式は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のエンドサイトーシスおよび分解における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の役割を同定する、米国特許6,156,311に記載される機構とはかなり異なることに注目しなければならない。
【0032】
標識または他の検出可能部分を、可溶性LRP−1突然変異体に付着させてもよいし、または構造画像化:例えばX線コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像化(MRI)、または他の光学検出技術のため、造影剤を含めてもよい。単一光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)などの機能的画像化もまた用いてもよい。脳または血管系におけるアミロイド負荷のMRI評価のため、可溶性LRP−1突然変異体を標識(例えばガドリニウム)してもよい。血液脳関門(BBB)透過処理剤を用いた、脳におけるアミロイド負荷のSPECT評価のため、あるいは、BBB透過処理剤を用いたまたは用いない脳アミロイド血管障害評価のため、可溶性LRP−1突然変異体を標識してもよい(例えば76Br、123I)。
【0033】
また、例えば:診断、疾患に対するリスクがあるものまたはすでに罹患しているものの同定、あるいは疾患の段階またはその進行の決定などの方法を実行する際に使用するためのキットにおいて、試薬を提供してもよい。さらに、以下の:疾患の自然経過に介入することが望ましいかどうかの評価、疾患経過の改変、進行を停止させるかまたは遅延させる初期介入、機能の回復または維持の促進、有益な療法または予防のためのターゲットの提供、候補薬剤または医学的措置の比較、あるいは薬剤または医学的措置の有効性の決定などの、疾患の治療に関連する方法において、試薬を用いてもよい。これらの方法を実行するための指示、参照値および陽性/陰性対照、ならびに患者情報(例えば遺伝子型、病歴、疾患症状、遺伝子発現からの転写または翻訳収量、生理学的または病理学的知見)を含有する関係型データベースは、本発明の考慮される側面であってもよい他の産物である。
【0034】
療法または予防が必要な被験体に投与される治療の量および度合いは、罹患患者を治療するのに有効である。本発明を単独で、または他の既知の方法と組み合わせて、用いてもよい。被験体は任意のヒトまたは動物であってもよい。哺乳動物、特にヒトおよびげっ歯類または霊長類疾患モデルを治療してもよい。したがって、獣医学的方法および医学的方法の両方が可能である。
【0035】
1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または該タンパク質(単数または複数)をコードする核酸(単数または複数)を含有する薬学的組成物または診断組成物を、血液脳関門を通じた通過のために、または内皮と直接接触させるために順応した配合物として投与してもよい。あるいは、組成物を培地に添加してもよい。突然変異体タンパク質または核酸に加えて、こうした組成物は、生理学的に許容されうるキャリアー、および投与を促進しそして/または取り込みを増進させることが知られる他の成分(例えば生理食塩水、ジメチルスルホキシド、脂質、ポリマー、アフィニティに基づく細胞特異的ターゲティング系)を含有してもよい。組成物を、ゲル、スポンジ、または他の浸透性マトリックス(例えばペレットまたはディスクとして形成される)中に組成物を取り込んでもよいし、そして持続局所放出のため、内皮近傍に配置してもよい。単一用量で、または異なる時点で投与される多数回用量で、投与されてもよい。
【0036】
1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または該タンパク質(単数または複数)をコードする核酸(単数または複数)を含有する薬学的組成物または診断組成物を、任意の既知の経路によって、体内に投与してもよい。例えば、組成物を粘膜、肺、局部、あるいは他の局所または全身経路(例えば腸内および非経口)によって投与してもよい。用語「非経口」には、限定なしに、皮下、皮内、真皮下、筋内、クモ膜下腔内、動脈内、静脈内、および他の注射または注入技術が含まれる。
【0037】
用量の量およびタイミング、配合、および投与経路の適切な選択は、アルツハイマー病またはそのリスクにある被験体において、好ましい反応を達成し(すなわち有効性)、そして過度の毒性または他の害を回避する(すなわち安全性)目標とともに実行されうる。したがって、「有効な」は、望ましい効果を達成する条件の日常的な操作を伴う選択を指す。
【0038】
1日1回短時間に渡って体内に投与される1またはそれより多い突然変異体LRP−1の急速投与(bolus)が、好適な投薬スケジュールである。あるいは、突然変異体タンパク質(単数または複数)または核酸(単数または複数)の有効1日用量を、投与の目的のため、多数の用量に分割してもよく、例えば1日あたり2〜12の用量に分けてもよい。薬学的組成物中の突然変異体LRP−1の投薬量もまた、被験体の体内において、特に脳の血管内皮中およびその周囲で、一過性のまたは持続される濃度を達成し、そして望ましい療法反応または防御を生じるため、多様であってもよい。しかし、望ましい療法効果を達成するために必要であるよりも低い用量レベルで開始し、そして望ましい効果が達成されるまで投薬量を次第に増加させることもまた、当該技術分野の技術範囲内である。同様に、診断組成物中の突然変異体LRP−1の投薬レベルは、被験体体内のAβの検出の望ましい感度および特異性を達成するため、多様であることも可能である。
【0039】
投与される突然変異体LRP−1の量は、タンパク質または核酸投与の生物活性および生物学的利用能(例えば、体内での半減期、安定性、代謝);化学特性(例えば分子量、疎水性、可溶性);経路(例えば非経口、特に静脈内)およびスケジューリング(例えば1ヶ月または1年あたりの頻度、連続用量間の期間)等、当業者に知られる要因に応じる。全身投与のため、血液脳関門を通じた突然変異体LRP−1の通過が重要である。任意の特定の被験体に関して達成しようとする特定の用量レベルは、年齢、性別、健康状態、病歴、体重、1またはそれより多い他の薬剤との組み合わせ、および疾患の重症度を含む、多様な要因に応じうることもまた理解されるであろう。
【0040】
用語、アルツハイマー病の「治療」は、とりわけ、被験体において1またはそれより多い症状を減少させるかまたは軽減し、1またはそれより多い症状が悪化するかまたは進行することを防止し、回復を促進するかまたは予後を改善し、そして/または罹患していない被験体において疾患を防止するとともに、存在する疾患の進行を遅延させるかまたは減少させることを指す。所定の被験体に関して、症状の改善、その悪化、退行、または進行は、客観的または主観的尺度によって決定可能である。罹患率または死亡率の改善(例えば選択した集団に関する、生存曲線の延長)として、治療の有効性を測定することも可能である。予防法(例えば再発発生の防止または減少)もまた、治療と見なされる。治療はまた、他の現存する治療様式(例えばARICEPTまたはドネペジル、EXELONまたはリバスチグミン、抗アミロイドワクチン、頭の体操(mental exercise)または刺激)との組み合わせを伴ってもよい。したがって、1またはそれより多い他の薬剤および1またはそれより多い他の医学的処置を含む組み合わせ治療を実施してもよい。
【0041】
被験体に投与される突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または核酸の量は、好ましくは、その投与から生じる利点を上回る毒性または他の有害な影響を誘導しない量である。さらなる目的は、数を減少させ、重症度を減じ、そして/または別の方式で、認識される治療標準に比較した際に、疾患症状の苦痛を軽減させることである。本発明はまた、神経変性障害一般:例えば認知症、抑鬱、錯乱、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、運動協調性の喪失、多発性硬化症、脳卒中、および失神に対しても有効でありうる。
【0042】
突然変異体LRP−1タンパク質または核酸の産生は、適切な政府監督官庁によって、医薬品安全性試験実施基準(GLP)、ならびに製造管理および品質管理に関する基準(GMP)に関して規制されるであろう。これは正確でそして包括的な記録管理、ならびにQA/QCのモニタリングを必要とする。官庁および施設委員会による患者プロトコルの監視は、また、インフォームドコンセントが得られており;製品の安全性、生物活性、適切な投薬量、および有効性が段階的に研究されており;結果が統計的に有意であり;そして道徳的指針に従っていることを確実にするよう想定される。動物モデルを用いたプロトコル、ならびに毒性化学薬品の使用、および法令順守の類似の監視が必要である。
【0043】
療法的使用のため、適切な監督官庁は、生物製剤に関する純度の許容されうるレベル(例えば外来のタンパク質および核酸の欠如);無菌性(例えば微生物の欠如);宿主細胞混入の欠如(例えば1mLあたり0.5内毒素単位未満);および強度(例えば遺伝子トランスファーおよび発現効率)も特定するであろう。別の目的は、突然変異体LRP−1タンパク質または核酸の一貫したそして再現可能な産生を確実にしうることであり、これは生物製剤の強度を改善しつつ、純粋で、無菌であり、そして発熱物質を含まない製品を確実にするよう用いられる製造管理および品質管理に関する基準に適合することも可能である。
【0044】
本明細書において、血液脳関門での突然変異体LRP−1およびAβの間の直接または間接的な相互作用は、高いβシート含量およびAβ内の遺伝的突然変異を含むAβ種の保持を促進しつつ、可溶性Aβ40を一掃することによって、神経毒性および血管向性Aβ集積に決定的に影響を及ぼしうる。Aβ内の突然変異は、突然変異体Aβがmt−LRP−1に結合するアフィニティに有意に影響を及ぼさない。LRP−1と対照的に、RAGEは、脳内への循環Aβの連続流入を仲介し、そしてトランスジェニックAPPモデルにおいて、そしてADにおいて、脳血管系で過剰発現される(Deaneら、2003)。血液脳関門でのまたは血管系における突然変異体LRP−1の作用が、直接作用して、RAGEが仲介するAβ取り込みを阻害するか、または間接的に作用して、末梢における遊離Aβに結合し、それによって脳におけるAβの濃度低下を生じることによって、CNSにおけるAβのレベルを減少させる可能性がある。適用には、脳アミロイド血管疾患(CAA)を伴うアルツハイマー病の家族性型(FAD)の被験体、例えばオランダまたはアイオワ突然変異を伴う患者(FAD/CAA)が含まれる。突然変異体LRP−1は、野生型および突然変異体Aβペプチドの両方に結合するため、突然変異体LRP−1は、アルツハイマー病、FAD/CAA、およびダウン症候群において、血管病変に関連する変化を視覚化するため、脳の画像化剤として、診断目的に使用可能である。
【0045】
突然変異体LRP−1は、より高いアフィニティでAβに結合するため、これらを用いて、脳から血液内へのAβの放出を促進してもよい。遊離Aβおよび可溶性LRP−1突然変異体に結合したAβのレベルを用いて、アルツハイマー病、FAD/CAA、およびダウン症候群に関する、in vitro結合アッセイ(例えば二重サンドイッチELISA血液試験)を開発してもよい。作用機構は、抗Aβ抗体、ゲルゾリン、GM1、およびsRAGEなどの他の末梢Aβ結合剤と類似の循環野生型または突然変異体Aβの隔離であってもよい。全身循環中のAβを隔離し、そして脳内への血液脳関門を渡るAβ輸送を防止する、人工的な「シンク」としてmt−LRP−1を用いてもよい。1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または核酸(単数または複数)を用いると、(1)これらが、野生型クラスターIIおよび/またはクラスターIVを含む野生型相同体、ゲルゾリン、GM1、sLRP−1、またはsRAGEと比較して、より高いアフィニティでAβに結合し、そして(2)これらが、クラスターIIおよびIVを含む可溶性LRP−1に比較して、より小さいサイズであるため、治療される被験体によく許容されるはずであり、そしてそれによって、脳および脳血管における免疫または神経炎症反応を回避するはずであるという利点を提供する。
【0046】
突然変異体LRP−1のこれらの特性を用いて、末梢シンク剤として作用させることによって、トランスジェニックFAD/CAAマウス、アルツハイマー病の他の動物モデル、またはアルツハイマー病およびFAD/CAA患者の脳におけるAβのレベルを低下させることも可能である。この目的のため、1またはそれより多い突然変異体LRP−1を単独で、または神経保護剤(例えばGuoら、2004に記載されるような活性化プロテインC)とともに、または被験体における循環Aβを低下させる他の療法;Aβに対する免疫またはワクチン接種;ガングリオシド、ゲルゾリン、またはsRAGEの投与;アミロイド前駆体タンパク質のベータ/ガンマ・セクレターゼ仲介性プロセシングの阻害;血液脳関門の浸透圧開放(Neuweltら、1985);脳脊髄液産生の正常化(Silverbergら、2003);またはその組み合わせとともに用いてもよい。
【0047】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、そしてその実施を制限するかまたは別の方式で限定することを意図されない。
【実施例】
【0048】
本発明者らは、13の突然変異体LRP−1をスクリーニングし、そしてこれらをクラスターIVのリガンド結合ドメインを含むLRP−1の可溶性誘導体(LRPIV)に比較した。7つは、天然アミノ酸配列に比較していかなる突然変異も含まずに、LRPIVの異なる断片を含む。6つは、LRPIV中に点突然変異:配列番号1中のD3354G、D3394G、D3556G、D3595G、D3633G、およびD3674Gを有した。配列番号1中のD3674Gは、クラスターIV(配列番号3)中のD343Gに対応する。MT007−LRPIVは、以下の実施例のリード化合物である。
【0049】
LRPIVは、11の補体関連モチーフ(CR21〜CR31)を含有し、そのうち9つはカルシウム結合断片であり、これは特異的および直接Aβ結合の推定上の決定因子である。表面プラズモン共鳴分析を用いて、CR24〜CR28は、LRPIVの最も有効なカルシウム結合断片であることが示された(Meijerら、2007)。3つの三重反復、CR24〜CR26、CR25〜CR27、およびCR26〜CR28は、RAPと強く相互作用する。CR24〜CR26は、活性化α2−マクログロブリン(α2M*)および因子VIII軽鎖(FVIII LC)に対する最高の結合アフィニティを有する一方、CR26〜CR28は、因子IXa(FIXa)結合の最適な領域であった(Meijerら、2007)。CR23およびCR31は、特異的および直接Aβ結合に寄与しているようではない。本発明者らは、CR24〜CR28を用いて、LRPIVの可溶性カルシウム結合誘導体を産生し、そして高アフィニティAβ結合に関してスクリーニングした。少なくとも3つのカルシウム結合断片が、RAP、α2M*、FVIII LC、およびFIXaに結合するのに必要である一方、Aβ結合に必要な反復の最小数は明らかでない。したがって、4つのカルシウム結合断片(CR24〜CR27およびCR25〜CR28)、3つのカルシウム結合断片(CR25〜CR27)、2つのカルシウム結合断片(CR25〜CR26およびCR26〜CR27)および1つのカルシウム結合断片(CR25およびCR26)を含有するLRPIV断片を産生した。
【0050】
GST−RAPアフィニティクロマトグラフィーを用いて、すべての主なリガンド結合ドメインを含むLRPIVを精製した。精製LRPIVのN末端アミノ酸配列によって、LRPIVのアミノ酸配列のN末端に3つの外来のグリシン−アラニン−アルギニン(GAR)アミノ酸が存在することが明らかになった(GAR−LRPIV)。tPAシグナルペプチドは、フューリン切断部位: −7RFRRGAR−1、式中、エンドプロテアーゼは、RFRR↓GARで切断し、突然変異体LRP−1のN末端に3つの外来アミノ酸を生じる、を含有する。エンドプロテアーゼは、外来アミノ酸を除去しなかった。選択的Aβ結合に関して、GAR−LRPIVをスクリーニングした。
【0051】
cDNAの合成およびクローニング。SuperScript II RT(Invitrogen)を用いて、ヒト脾臓総RNA(Clontech)から第一鎖cDNAを合成した。ヒトLRP1配列(NM 002332)に基づいて、プライマーを設計した。Pfx−DNAポリメラーゼ(Invitrogen)およびそのそれぞれのプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、cDNAからLRPIVドメインを増幅し、そしてpcDNA3.3 TOPOベクター内にクローニングした。この構築物を用い、PCRを用いて、LRPIVの11反復(CR21〜CR31)、2種類の4反復(CR24〜CR27およびCR25〜CR28)、1種類の3反復(CR25〜CR27)、2種類の2反復(CR25〜CR26、CR26〜CR27)および2種類の単一反復誘導体を増幅し、そして哺乳動物発現ベクター、pSecTag2 B(Invitrogen)のHindIIIおよびBamHI制限部位の間にクローニングして、可溶性タンパク質を発現させた。pSecTag2 Bベクターは、N末端上にIgKリーダーペプチドを、そしてC末端上にMycタグおよびHis6タグを有する。129bpの順方向プライマー(Kozak配列、開始コドン、tPAシグナルペプチド配列およびLRPIV配列を有する)およびHindII制限部位を含む逆方向プライマーを用い、いかなるタグも含まない全長分泌LRPIV(wt−LRPIV)を増幅し、そしてpcDNA3.3 TOPOベクター内にクローニングした。Quickchange Lightning部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて、6つのカルシウム結合部位で、突然変異体LRPIV変異体を作製した。それぞれのプライマーセットとともに、WT−LRPIVをテンプレートとして用いた。突然変異プラスミドの挿入を、配列で検証し、SacIおよびHindIIIで消化し、そしてSacI−HindIII消化したwt−LRPIVプラスミド内にクローニングした。
【0052】
タンパク質発現。1mM CaCl2、2mM Glutamaxを補充したCDOpti CHO培地中、振盪装置上、37℃で、懸濁チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を増殖させた。FreeStyle MAX試薬(Invitrogen)を用いて、各構築物で、CHO細胞を安定トランスフェクションした。トランスフェクション5日後、抗生物質を含有する培地内に細胞を移した、pCDNA 3.3 TOPOには700μg/mLジェネティシン、またはpSecTag2には200μg/mLハイグロマイシン。12〜15日後、Clone Matrix(Genetix)混合物(40% Clone Matrix、50% 2xCDOpti CHO、および抗生物質)を含有する100mmx10mmペトリ皿に、約5000の抗生物質耐性細胞をプレーティングした。約3週後、50〜60の単一クローンを拾い、そして48ウェルプレート中、CDOpti CHO培地内に移した。3日後、LRPIV抗体を用いたウェスタンブロット分析によって、発現されたLRPIVに関して、培地を試験した。続いて、選択したクローンを12ウェルおよび6ウェルプレート内に移した。単一の選択クローンをフラスコに移し、そして懸濁培養中で増殖させた。ファーンバックフラスコ中でLRPIV発現を行った。2mM glutamax、1mM CaCl2、および10%CHO CD Efficient Feed A(Invitrogen)を含有するCDOpti CHO中、1x106/mL細胞密度で培養を開始した。毎日、血球計算板(Hausser Scientific Partnership、ペンシルバニア州ホーシャム)を用いて細胞を計数し、そしてGlucCellTM試験ストリップ(CESCO Bioengineering Co.、台湾・台中)を用いてグルコースレベルを測定した。グルコースレベルが馴化培地中2g/L未満に落ちたら、2mM glutamaxおよび1mM CaCl2を含有する10%Feed Aを細胞に補った。通常、培養4日後にフィーディングが必要であった。タンパク質を10日間発現させ、遠心分離によって培地を採取し、そして0.2μmフィルターを通じて、上清をろ過した。CR25〜CR26、CR26〜CR27、CR26、CR27、および突然変異体D3351G、D3592G、D3630Gの分泌は非常に低かった。したがって、これらの変異体はスクリーニングから排除された。
【0053】
Ni−NTAアガロース(Qiagen)を用いて、バッチ中で、His6タグを含有するLRPIVの異なる断片を精製した。馴化培地を10%グリセロール、150mM NaCl、10mMイミダゾール、および洗浄したNi−NTA樹脂と混合し、振盪しながら室温で30分間放置し、そして洗浄緩衝液(10%グリセロール、300mM NaCl、10mMイミダゾールおよび50mM NaH2PO4、pH8)で洗浄した。結合したタンパク質を、50mMリン酸緩衝液、pH8中の250mMイミダゾールで溶出させた。溶出したタンパク質を50KDaカットオフフィルター(Millipore、マサチューセッツ州ビラリカ)に通過させた。GST−RAPアフィニティカラムを用いて、単一アフィニティ精製工程によって、wt−LRPIVを精製した。GST−RAPを発現させ、B−PER GST融合タンパク質精製キット(Pierce)を用いてアフィニティ精製し、そしてAminoLink Plusカップリングキット(Pierce)を用いて、アガロースビーズ上に固定した。抗LRPIV−抗体アフィニティカラムを用いて、一工程で、突然変異体LRPIV変異体を精製した。AminoLink Plusカップリングキットを用いて、アガロースビーズに純粋な抗LRPIV抗体を固定することによって、抗LRPIV−抗体カラムを調製した。約100mlの馴化培地を洗浄緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl)で3X希釈し、抗LRPIV抗体アフィニティカラム上に装填し、900mLの洗浄緩衝液で洗浄し、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.5)で溶出させ、2M Tris緩衝液(pH9.5)で中和し、そして10KDaカットオフフィルター(Millipore)を用いて濃縮した。50mM炭酸−重炭酸緩衝液(pH9)に対して、各精製LRPIV変異体を透析した。これらの純度を銀染色によって確認し、そしてウェスタンブロット分析によって同定した。
【0054】
タンパク質の発現レベルが低く、そしてAβ40への結合が非常に低いため、単一反復(CR25およびCR26)および二重反復(CR25〜26およびCR26〜27)をスクリーニングから除去した。
【0055】
GAR−LRPIVに比較して、4反復(CR24〜27およびCR25〜28)および3反復(CR25〜27)は、4〜8倍低いアフィニティでAβ40に結合する(図2A〜2B)。対照的に、GAR−LRPIVに比較して、4つのCRおよび3つのCRは、類似のアフィニティでAβ42に結合する(図2C〜2D)。GAR−LRPIVに比較して、RAP結合領域外部のカルシウム結合部位に突然変異(D343G)を有するMT007−LRPIVは、それぞれ、2.5倍および1.5倍高いアフィニティの選択的結合をAβ42およびAβ40に対して示した(図2A〜2D)。D343G突然変異が、LRPIVにおいてコンホメーション変化を引き起こし、これがAβの選択的結合を増進させた可能性がある。Sagareら(2007)が用いたタグ化LRPIVに比較して、MT007−LRPIVは、Aβ42およびAβ40に対して、それぞれ、2.6倍および1.4倍高いアフィニティを有した。LRP−1は、他のリガンドと相互作用するため、本発明者らはまた、これらに対するLRPIVの結合アフィニティも比較した。GAR−LRPIVに比較して、MT007−LRPIVは、それぞれ、2.5倍および1.5倍高いアフィニティでAβ42およびAβ40に結合し;2倍低いアフィニティでアポEに、そしてそれぞれ、2倍、3倍および4倍低いアフィニティでtPA、MMP9、およびFIXaに弱く結合する(図3A〜3D)。α2M*およびGAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV間にはほとんど相互作用がなかった。LRP−1はKPI(クニッツ型プロテアーゼ阻害剤)ドメイン(Kounnasら、1995)を通じてAPPと相互作用するため、本発明者らは、GAR−LRPIV、およびKPIドメインを含む(APP770、APP751)またはKPIドメインを含まない(APP695)APPアイソフォーム間の相互作用を決定した。APP695は、脳における主なAPPアイソフォームである。GAR−LRPIVはAPP695に結合しない(図4A)一方、APP770(図4B)およびAPP751(図4C)に対する弱い結合があり、これは可溶性KPIドメインまたは抗KPI抗体(mAb4.1)で置換された。しかし、Aβ40およびAβ42に対するGAR−LRPIV結合は、可溶性KPIまたはmAb4.1によって影響を受けなかった(図4D〜4E)。GAR−LRPIVおよびAPP770またはAPP751間の結合アフィニティは、Aβ40およびAβ42のものより、それぞれ、50倍および25倍低かった(図4F)。APP770およびGAR−LRPIV間の結合アフィニティは、APP770およびMT007−LRPIV間のものより3倍大きかった(図4G)。Aβ40およびAβ42に選択的にそして高アフィニティで結合するため、脳におけるAβペプチドの末梢シンクとして作用することによってアルツハイマー病を治療するためのリード化合物として、MT007−LRPIVを選択した。
【0056】
脳Aβレベルを低下させるためのLRPIV in vivo有効性。野生型マウス(2〜3ヶ月齢のC57BL6)を、キャリアーのみ(ビヒクル)、GAR−LRPIV、またはMT007−LRPIV(静脈内、20μg)で5日間、毎日治療した。Sagareら(2007)に記載される類似のプロトコルを参照されたい。投薬期間終了時、脳組織および血漿を収集し、そしてELISAによってAβレベルを決定した。ビヒクルと比較すると、LRPIV類似体はどちらもAβ40およびAβ42の血漿レベルが増加し、そして脳における対応物が減少する一方、MT007−LRPIVに対する反応は有意により高かった(図5A〜5D)。MT007−LRPIVは血漿において、Aβ40およびAβ42と、有意により多く結合し(図5Aおよび5B)、そしてGAR−LRPIVよりも、脳Aβレベルを低下させる際により有効であった(図5Cおよび5D)。どのくらい迅速にMT007−LRPIVが脳Aβレベルを減少させうるかを決定するため、MT007−LRPIV(10μg)またはビヒクルの単回静脈内急速投与で、同じ年齢のC57B6マウスを治療した。12時間後、脳および血漿におけるAβレベルをELISAによって決定した。ビヒクルに比較して、MT007−LRPIVは、血漿Aβ40およびAβ42を、それぞれ、1.33倍および2.85倍増加させ、そして脳Aβ40およびAβ42を1.68倍および1.45倍減少させた。したがって、MT007−LRPIVは、中枢神経系にあるAβに関してさえ、Aβの有効な末梢シンクである。
【0057】
突然変異体LRP−1の免疫原性。免疫原性試験のため、ミリグラム量の突然変異体LRP−1タンパク質が必要である。受容体関連タンパク質(RAP)を含有するカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーは、弱くしかRAPに結合しない突然変異体LRPIVタンパク質の単離には使用不能である。MT007−LRPIVは、GST−RAPカラムに結合しないため、抗LRPIV抗体カラムを用いて、アフィニティクロマトグラフィーによって単離し、その結果、回収は劣っていた。したがって、本発明者らは、イオン交換カラムを用いた別の単離プロセスを開発し、これはより優れた精製および収量を生じた(以下を参照されたい)。精製タンパク質(2.2mg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、そして免疫原性試験のため、外部実験室に送った。およそ8〜10週齢のBALB/c雌マウスを用いる。3つの用量(20、40、および80μg/kg)のMT007−LRPIVを試験した。マウスに隔週で4回注射した。各用量の1週後、血液を収集し、プロセシングし、そしてQED(Bioscience Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)によるELISAによって、MT007−LRPIVに対する抗体を用いて試験した。免疫学的応答はなかった。
【0058】
MT007−LRPIVタンパク質をCHO細胞において発現させた。単離プロセスは、CHO細胞からの宿主細胞タンパク質(HCP)による混入の可能性を残しうる。したがって、本発明者らは、2つの独立の方法によって最終精製タンパク質調製物中のHCP混入を追った。(A)ウェスタンブロット分析:試料を還元条件下、SDS−PAGE上で分離し、そして次いで、ニトロセルロース膜にトランスファーした。非特異的部位をブロッキングした後、CHOタンパク質不含培地に対して作製したヤギ抗体を含有する溶液に、膜を曝露した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で抗体を標識した。洗浄後、ECL法を用いて、タンパク質を検出した。抗体(Cygnus Technologies)はポリクローナルであり、そして多数の潜在的な混入物:すなわち、SDS/DTT可溶化CHO細胞由来の、および馴化CHOタンパク質不含培地中に見られるHCP由来の40を超える異なるCHO HCPバンドに対する広い反応性を持って生成された。(B)ELISA:Cygnus Technologiesから商業的に入手可能なキットを用いた。これはウェスタンブロッティングよりもより感受性である。キットは、精製とは独立に、産物に混入しうる本質的にすべてのHCPと反応する。未結合馴化培地中に見られるアフィニティ精製CHO HCPに対して抗体を生成した。ウェスタンブロッティングによって検出可能なシグナルは観察されなかった。ELISAによって、HCP混入は100ppm未満であることが示され、これは一般的に許容されうると見なされる(Cygnus Technologies)。
【0059】
潜在的な副作用。研究によって、タグ化LRPIV(1μg/日および40μg/kg、腹腔内)で3ヶ月治療したマウスは潜在的な副作用を持たないことが示された(Sagareら、2007)。GAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV(20μg静脈内、毎日5日間)で治療したマウス(C57B6)の組織試料および血漿を潜在的な副作用に関して分析したが、まったく観察されなかった。コレステロール、アポE、tPA、プロMMP9、およびグルコースの血漿レベルにおいては有意な変化はなかった。単回静脈内急速投与40μg/kgを投与されたマウスの別個の群(C57BL6、2〜3ヶ月齢)において、2時間後に血液試料を除去し、そして活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)として血漿凝固時間を決定した。これは不変であった。肝臓および脳において、LDLRまたはLRP−1の発現レベルに検出可能な変化はなかった。さらに、リン酸化LRP−1レベルは脳において検出可能な変化はなかった。さらに、脳におけるAPPレベルは、LRPIV治療によって不変であった。GAR−LRPIVまたはMT007−LRPIVはCSFに進入しなかった。
【0060】
参考文献
【0061】
【化1−1】
【0062】
【化1−2】
本明細書に引用する特許、特許出願、書籍、および他の刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0063】
請求項の意味およびその法律的同等物の範囲内にあるすべての修飾および置換は、その範囲内に含まれるものとする。転換句「含む(comprising)」を用いた請求項は、請求項の範囲内に他の要素が含まれることを許す;本発明はまた、「含む」用語の代わりに、転換句「から本質的になる」(すなわち、本発明の運用に実質的に影響を及ぼさないならば、請求項の範囲内に他の要素が含まれることを可能にする)および転換句「からなる」(すなわち、本発明に通常関連する不純物または重要ではない活性以外は、請求項に列挙される要素のみを許す)を用いた請求項によっても記載される。例えば、「クラスターIIおよび/またはクラスターIVから本質的になる」は、他の機能ドメインがAβの結合に影響を及ぼさないならば、該ドメインの包含を可能にする一方、「クラスターIIおよび/またはクラスターIVからなる」は、他の機能ドメインの包含を禁じるであろう。これらの3つの転換句のいずれを用いて、本発明を請求することも可能である。
【0064】
本明細書に記載される要素は、請求項に明確に列挙されない限り、請求する発明の限定と見なされてはならないことを理解すべきである。特に、突然変異体LRP−1は、好ましくはヒトの、LRP−1の天然アミノ酸またはヌクレオチド配列から、欠失させて1またはそれより多いLRP−1ドメインの単位を単離し、挿入して1またはそれより多いLRP−1ドメインを互いに分離し、融合させて間に外来のアミノ酸を含みまたは含まずに1またはそれより多いLRP−1ドメインの単位を連結し、そして天然配列中の1またはそれより多いアミノ酸またはヌクレオチドを置換することによって、想定されうる。したがって、付与される請求項は、法的保護の範囲を決定するための基礎であり、明細書から請求項に限定が読み込まれるのではない。対比して、先行技術は、請求される本発明を予期するかまたは新規性を消滅させる具体的な態様の度合いまで、本発明から排除される。
【0065】
さらに、請求項の制限間またはその中の特定の関係は、請求項に明らかに列挙されない限り、意図されない(例えば、製品請求項中の構成要素の配置または方法請求項中の工程の順序は、明らかに言及されない限り、請求項の制限ではない)。本明細書に開示する個々の要素のすべてのありうる組み合わせおよび順列は、本発明の側面であると見なされる。同様に、本発明の説明の一般化は、本発明の一部と見なされる。
【0066】
前述から、当業者には、本発明がその精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形式で具象化可能であることが明らかであろう。記載される態様は、制限ではなく、例示としてのみ見なされ、これは本発明に提供する法的保護の範囲が、本明細書によるよりも、付随する請求項によって示されるためである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー・アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドへの結合を改善させる、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1の突然変異に関する。この特異的結合を用いて、Aβを検出するかまたは被験体の体の残りからAβを分離することも可能である。アルツハイマー病において、本発明を用いて、Aβを検出することによって診断結果を提供するか、Aβを除去することによって治療を提供するか、またはその両方を提供することも可能である。
【背景技術】
【0002】
アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドは、アルツハイマー病(AD)の病態に関与することが知られる。このペプチドは、脳実質および血管系におけるアミロイドの主な構成要素である。老人斑から抽出されるAβは、主に、ペプチドAβ1−40(Aβ40)およびAβ1−42(Aβ42)であり;血管アミロイドは、主に、ペプチドAβ1−39およびAβ40である。血液、脳脊髄液(CSF)、および脳に存在するAβの主な可溶性型はAβ40である。血液、CSF、および脳間質液(ISF)中に循環している可溶性Aβは、遊離ペプチドとして存在し、そして/またはアポリポタンパク質E(アポE)、アポリポタンパク質J(アポJ)、他のリポタンパク質、アルブミン、α2−マクログロブリン(α2M)、およびトランスサイレチンと会合して存在しうる。
【0003】
アミロイド仮説によると、脳における神経毒性Aβ42の集積が、AD病変形成を開始する主な事象である(HardyおよびSelkoe, 2002)。Aβ42集積の増加は、ADの家族型におけるように、Aβの産生増加に、そして/または遅発性ADにおけるように、Aβクリアランス障害に関連する可能性もある(Selkoe, 2001; ZlokovicおよびFrangione, 2003)。脳におけるAβレベルの増加は、神経毒性Aβオリゴマーの形成、および進行性のシナプス、神経突起、およびニューロン機能不全を生じる(Walshら, 2002; Dahlgrenら, 2002; Kayedら, 2003; Gongら, 2003)。Aβ内のミスセンス突然変異は、主に、オランダ突然変異(コドン693でのGからC、22位でのGluからGln)およびアイオワ突然変異(コドン694でのGからA、23位でのAspからAsn)を持つ患者におけるように、主に血管沈着に関連する。血管向性(vasculotropic)オランダ(E22Q)またはアイオワ(D23N)突然変異体Aβは、原線維形成増進および脳血管細胞に対する毒性を示し、一方、オランダ/アイオワ二重突然変異体Aβ(E22Q、D23N)は、オランダおよびアイオワ血管向性突然変異体の両方に比較して加速した病態形成特性を有する(Van Nostrandら, 2001)。
【0004】
終末糖化産物(RAGE)受容体、スカベンジャーA型受容体(SR−A)、天然LRP−1、およびLRP−2などの細胞表面タンパク質は、低ナノモル濃度で遊離ペプチドとして(例えばRAGE、SR−A)、そして/またはアポE、アポJ、またはα2Mとの複合体中で(例えば天然LRP−1、LRP−2)、Aβに結合する。しかし、野生型相同体よりも高いアフィニティでAβに直接結合する突然変異体LRP−1は、開示されなかった。
【0005】
WO 01/90758およびUS 2004/0259159は、脳からのAβの血管クリアランスを仲介する際のLRP−1の役割を記載する。LRP−1発現または活性の増加を用いて、Aβを除去することも可能であり、そしてそれによってアルツハイマー病の被験体または該疾患を発展させるリスクがある被験体を治療することも可能であると解説された。
【0006】
WO 2005/122712およびUS 2007/0054318は、Aβに結合させ、そしてAβを脳から除去するための可溶性LRP−1の使用を記載する。LRP−1の可溶性クラスターIIまたはIV(それぞれ、LRPIIまたはLRPIV)は、in vitroおよびin vivoで、他の既知のリガンド(例えば、tPA、アポE2、アポE3、アポE4、MMP9)よりも一桁から二桁高いアフィニティで、Aβに結合することが示された。in vivoで、LRP−1の野生型(wt)クラスターIV(wt−LRPIV)は、強いAβ末梢シンク活性を発揮し、これは脳からのAβクリアランスを生じ、トランスジェニックマウスにおいて、アミロイド関連病変を有意に減少させ、そして機能的転帰を改善する。Aβ前駆体タンパク質(APP)である、クニッツ型プロテアーゼ阻害剤(KPI)ドメインを有するが、より短いAPP695(KPIドメインを欠く、脳中の最も一般的なAPPアイソフォーム)ではないAPP770アイソフォームは、in vitroで、LRP−1に結合し、培養線維芽細胞において、APP分解を生じることが示された。Deaneら(2004)およびSagareら(2007)を参照されたい。
【0007】
本明細書において、本発明者らは、APP695がwt−LRPIVに結合しないことを示す。さらに、KPIドメインを含有するAPPアイソフォーム(例えば、APP770、APP751、およびsAPPβ)は、Aβ結合部位で、wt−LRPIVに検出可能に結合しない。KPI含有APPアイソフォームは、wt−LRPIVに対して非常に弱い結合を示し、該結合は、Aβに関するものより二桁低かった。wt−LRPIVに対するKPI含有APPアイソフォームのこの弱い結合は、KPI特異的抗体または組換えKPIペプチドで無効にされ、これらはAβ結合には影響しなかった(すなわち、結合は、LRP−1のAβ結合ポケットに特異的ではなかった)。本発明者らは、アスパラギン酸からグリシンへの残基343での単一突然変異(D343G)を含有する突然変異体LRP−1が、wt−LRPIVよりも3倍高いアフィニティでAβ42に結合し(Kd 〜1.5nM)、そしてwt−LRPIVよりも、Aβ40およびAβ42に対して、対照マウスにおけるAβ末梢シンク作用より30〜50%の有意に高い作用を発揮することを見出した。さらに、突然変異体LRPIVは、KPI含有APPアイソフォーム(すなわち、APP770、APP751、およびsAPPβ)に検出可能には結合せず、そして血液脳関門を横断しなかった。突然変異体LRPIVおよびwt−LRPIVは、どちらも、脳におけるAPPレベルおよび/または代謝を改変するのに失敗した。したがって、脳または末梢において、APP代謝にいかなる有意な影響も及ぼさずに、wt−LRPIVよりも、Aβに対する高い結合アフィニティを持つ突然変異体LRP−1を、特異的Aβシンク剤として用いることも可能である。
【0008】
突然変異体LRP−1タンパク質および該タンパク質をコードする核酸、薬剤および組成物、ならびに治療法および診断法におけるその使用は、アミロイドの形成および疾患におけるその役割に適用可能であることを本明細書に解説する。重要なことに、突然変異体LRP−1は、血液脳関門を越えて中枢神経系からのAβ枯渇のため、末梢におけるシンクとして作用する。本発明の他の利点を以下に論じるか、またはこうした利点は、これらの考察から、当業者には明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 01/90758
【特許文献2】US 2004/0259159
【特許文献3】WO 2005/122712
【特許文献4】US 2007/0054318
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】HardyおよびSelkoe, 2002
【非特許文献2】Selkoe, 2001
【非特許文献3】ZlokovicおよびFrangione, 2003
【非特許文献4】Walshら, 2002
【非特許文献5】Dahlgrenら, 2002
【非特許文献6】Kayedら, 2003
【非特許文献7】Gongら, 2003
【非特許文献8】Van Nostrandら, 2001
【非特許文献9】Deaneら(2004)
【非特許文献10】Sagareら(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)の突然変異によって、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに対する結合アフィニティを改善することである。天然LRP−1による結合に比較した際、突然変異体LRP−1が、Aβに特異的に結合するより高いアフィニティを有することが好ましい。さらに、1またはそれより多いカルシウム結合断片において少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を含むLRP−1誘導体が、1またはそれより多いカルシウム結合断片における野生型アスパラギン酸を置換しない以外はすべての突然変異を含むLRP−1誘導体よりも、少なくとも2倍高いアフィニティで、Aβに結合することが好ましい。より好ましくは、アスパラギン酸置換は、Aβに対する少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍高いアフィニティを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、突然変異体LRP−1を提供する。突然変異体LRP−1は、LRP−1由来の1またはそれより多いドメイン、および場合によって、LRP−1に由来しない1またはそれより多いドメイン(すなわち、天然タンパク質には存在しない異種ドメイン)で構成されてもよい。少なくともクラスターIIおよび/またはクラスターIVが含有されることが好ましく;クラスターIIおよび/またはクラスターIVのみから本質的になってもよい。より好ましくは、該LRP−1は、少なくともクラスターIVを含有するか、またはクラスターIVのみから本質的になり;他方が存在するならば、クラスターIIまたはクラスターIVを含有しなくてもよい。突然変異体LRP−1は、場合による他のドメイン:細胞の外への分泌を指示するシグナルペプチド(例えば新生ポリペプチドを小胞体にターゲティングし、膜を渡ってポリペプチドを転位置させ、そして分泌経路を通じて、任意の修飾を伴うポリペプチドを輸送する、疎水性アミノ酸配列)およびポリペプチドを脂質二重層に付着させるドメイン(例えば、膜を渡るドッキングのための膜貫通ドメインまたは膜内への挿入のための脂質ドメイン)を含有してもまたは含有しなくてもよい。溶液中のAβに結合するには、可溶性LRP−1突然変異体が好ましく、これはおそらく、天然タンパク質の少なくとも膜貫通ドメインを除去することによる。突然変異体LRP−1は、固体支持体に、可逆的にまたは非可逆的に付着してもよい(例えば、それぞれ化学的に不安定または安定である、共有結合を用いる)。これは天然LRP−1に同一ではなく、したがって、天然アミノ酸配列の1またはそれより多いドメインが突然変異(例えば置換、付加、欠失)しなければならない一方、Aβへの結合能が改善される(例えば好ましくは、突然変異を持たない同等のタンパク質に比較して、少なくとも2倍優れた結合)。ヒトまたは別の哺乳動物を供給源として用いることもまた好ましく、そして突然変異体LRP−1(例えばヒト患者に注入されるヒトまたはヒト化哺乳動物LRP−1突然変異体)を投与した被験体において、検出可能な免疫反応が誘発されないこともまた好ましい。
【0013】
治療において薬剤として(例えば疾患を有する被験体における療法または疾患を発展させるリスクがある被験体における予防)、または診断においてAβ検出のための直接結合剤として、突然変異体LRP−1を用いてもよい。療法または予防組成物は、突然変異体LRP−1および少なくとも1つの薬学的に許容されうるキャリアー(例えば生理学的塩および緩衝液の溶液)で構成される。体の循環系を通じて、または機械によって(例えばアフェレーシス、または突然変異体LRP−1/Aβ複合体を形成し、そして該複合体を体から除去する他の体外技術)、被験体からAβを除去することによって、あるいはアミロイド沈着を減少させることによって、Aβを不活性化させることも可能である。診断組成物は、突然変異体LRP−1および少なくとも1つの検出可能標識(例えば、色、酵素、蛍光、発光、磁性または常磁性、あるいは放射性検出のための部分)で構成される。突然変異体LRP−1および検出可能標識は共有結合していてもまたはしていなくてもよい。あるいは、1またはそれより多い特異的結合対を通じて付着していてもよい。結合は、被験体の体内または体外で、溶液中で、または支持体上に固定されたものの1つと起こってもよい。Aβに直接結合した突然変異体LRP−1は、実験室アッセイを用いて(すなわちin vitro診断法)、あるいは蛍光、磁気共鳴、またはX線画像化によって、被験体の体において(すなわちin vivo診断法)、体液または組織から調製された標本において、検出可能である。被験体は哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトである。
【0014】
本発明のさらなる側面は、以下の詳細な説明および請求項、ならびにその一般化から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−1】図1−1は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図1−2】図1−2は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図1−3】図1−3は、LRP−1のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。LRPIIミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR7)における少なくともD184G突然変異は、LRP−1由来のクラスターII(配列番号2)から本質的になる。LRPIVミニ受容体のカルシウム結合断片(すなわち補体反復モチーフCR29)における少なくともD343G突然変異は、LRP−1由来のクラスターIV(配列番号3)から本質的になる。補体反復モチーフのいくつかのみ(LRPIIのCR3〜CR10およびLRPIVのCR21〜CR31、配列番号4〜22)がカルシウム結合断片であり、この中で、アスパラギン酸の突然変異が、Aβペプチドへのミニ受容体の結合に影響を及ぼすであろう。カルシウム結合断片中、Aβペプチドへの結合に影響を及ぼすように操作されるアスパラギン酸は、システインに続く:すなわちCR3(配列番号4)、CR4(配列番号5)、CR7(配列番号8)、CR21(配列番号12)、CR22(配列番号13)、CR24(配列番号15)、CR25(配列番号16)、CR26(配列番号17)、CR27(配列番号18)、CR28(配列番号19)、CR29(配列番号20)、およびCR30(配列番号21)。アスパラギン酸(D)のグリシン(G)での置換が好ましい。これらの位で作製してもよい他のありうる置換は、アラニン(A)、セリン(S)、およびスレオニン(T)である。
【図2】図2は、LRPIV断片がAβに高いアフィニティで結合することを示す。グラフは、ヒトAβ40(図2A)およびAβ42(図2B)の異なるレベルでのLRPIV断片に対する結合曲線である。Aβ40(図2C)およびAβ42(図2D)への断片結合に関する結合定数(Kd)を示す。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図3】図3は、突然変異体LRPIVが、LRP−1の他のリガンドよりも高いアフィニティでAβに結合することを示す。グラフは、固定されたMT007−LRPIV(図3A)およびGAR−LRPIV(図3B)に対するヒトアポE2(E2)、アポE3(E3)、アポE4(E4)、tPA、MMP9、および因子IXaに関する結合曲線である。MT007−LRPIV(図3C)およびGAR−LRPIV(図3D)へのリガンド結合に関するKdを示す。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図4】図4は、突然変異体LRPIVが野生型LRPIVに比較して低いアフィニティでAPPに結合することを示す。グラフは、可溶性KPI(クニッツ型プロテアーゼ阻害剤)ドメインおよび抗KPI抗体(mAb4.1)の非存在下および存在下での、固定されたGAR−LRPIVに対するAPP695(図4A)、固定されたGAR−LRPIVに対するAPP770(図4B)およびAPP751(図4C)、ならびに可溶性KPIドメインおよびmAb4.1の非存在下および存在下での、固定されたGAR−LRPIVに対するAβ40(図4D)およびAβ42(図4E)に関する結合曲線である。GAR−LRPIVに対するAβ40、Aβ42、APP770、及びAPP751結合に関するKdを図4Fに示す。図4Gにおいて、固定されたGAR−LRPIVおよびMT007−LRPIVに対するAPP770結合に関するKdを比較する。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【図5】図5は、突然変異体LRPIVが、野生型LRPIVよりも高い、脳Aβを低下させる能力を有することを示す。治療後の血漿Aβ40(図5A)、血漿Aβ42(図5B)、脳Aβ40(図5C)、および脳Aβ42(図5D)を示す。対照(すなわち野生型)マウスをビヒクルおよびGAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV(静脈内、20μg/日)で5日間治療した。治療期間終了時、マウスの血漿および脳試料を収集した。AβレベルをELISAによって決定した。値は平均±s.e.m.であり、群あたりn=3アッセイである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成熟低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)は、少なくとも5つの異なるタイプのドメインで構成される:(i)リガンド結合性システインリッチ反復、(ii)上皮増殖因子(EGF)受容体様システインリッチ反復、(iii)YWTD反復、(iv)膜貫通ドメイン、および(v)細胞質ドメイン。シグナルペプチドは、分泌経路内に転位置した後、切断される。LRP−1におけるリガンド結合型ドメインは、2〜11の間の断片を含有する4つのクラスター(クラスターI〜IV)で存在する。結合部位がマッピングされているLRP−1に対するリガンドの大部分は、これらのリガンド結合型ドメインと相互作用する(クラスターIIおよびIVは、個々に、またはともに、Aβペプチドの結合に寄与する)。これらの後に、EGF前駆体相同ドメインが続き、これは、2つのEGF反復、プロペラ様構造に配置された6つのYWTD反復、および別のEGF反復で構成される。6つのEGF反復が膜貫通ドメインに先行する。細胞質ドメインは、エンドサイトーシス機構、ならびに細胞シグナル伝達に関与する細胞質アダプターおよび足場タンパク質のドッキング部位として働く、2つのNPxY反復で構成される。LRP−1の重鎖(515kDa)は4つのリガンド結合ドメインを含有し、そしてLRP−1の軽鎖(85kDa)は膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含有する。突然変異体LRP−1は、重鎖またはその断片のみで構成されてもよい。可溶性LRP−1に関しては、該タンパク質は膜貫通ドメインを欠き、そして好ましくはまた細胞質ドメインも欠いてもよい。
【0017】
LRP−1は、いくつかのタンパク質ファミリーに相当する少なくとも30の異なるリガンドを認識し、これらには、リポタンパク質、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ阻害剤複合体、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、細菌毒素、ウイルス、および多様な他の細胞内タンパク質が含まれる。LRP−1に認識されるリガンドの最大グループは、プロテイナーゼまたはタンパク質分解活性制御に関与する分子である。特定のセリンプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼは、LRP−1に直接結合する一方、いくつかの他のプロテイナーゼは、特異的阻害剤と複合体化された場合のみに結合する。これらの阻害剤は、タンパク質分解的切断または小分子アミンとの反応後に生じるコンホメーション変化の後にのみ、LRP−1によって認識される。対照的に、LRP−1は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の天然および複合体化型の両方を認識する。LRP−1はまた、多量体マトリックスタンパク質トロンボスポンジン−1およびトロンボスポンジン−2にも結合し、そしてシュードモナス属(Pseudomonas)外毒素Aおよびマイナー群ヒト・ライノウイルスを細胞内に送達する。さらに、LRP−1は、HSP96、HIV−1 Tatタンパク質、ならびにLRP−1および他のLDL受容体ファミリーメンバーの分子シャペロンとして機能する小胞体常在タンパク質であるRAPを含む、いくつかの細胞内タンパク質を認識する。
【0018】
LRP−1はどのようにして、この多様なリガンドを特異的に認識するのだろうか? 個々のリガンド結合ドメインの結晶学および核磁気共鳴によって、各リガンド結合ドメインの短いループ中のアミノ酸配列可変性が、反復のユニークな輪郭表面および電荷密度を生じることが明らかになった。異なるリガンド結合ドメインをLRP−1軽鎖に融合させ、そして細胞における発現後、個々のリガンドのエンドサイトーシスを仲介する能力を測定することによって、LRP−1「ミニ受容体」が作製されてきている。好ましくは、可溶性LRP−1断片は、組換え技術によって作製されてもよく、そしてin vitroで、異なるリガンドに結合する能力に関して、異なるリガンド結合ドメインをスクリーニングする。本明細書において、本発明者らは、Aβの特異的結合において、リガンド結合ドメイン(クラスターIVを参照されたい)内のカルシウム結合断片の役割を立証する。これらは、協同で作用して、カルシウムおよびAβペプチドの結合を協調させている可能性もある。したがって、Aβ結合を異種ポリペプチド上に移植して(免疫原性を減少させるためのげっ歯類抗体のヒト化を参考にされたい)、突然変異体LRP−1を作製してもよい。
【0019】
「断片」は、全長LRP−1の分子量より少ない分子量を持つLRP−1の特定の突然変異である。突然変異体LRP−1のアミノ酸配列の分子量は、LRP−1の単一リガンド結合ドメインおよび重鎖(515kDa)の分子量の間であってもよい。例えば、突然変異体LRP−1は、約30kDa〜約55kDaであってもよいが、より小さいおよびより大きい断片の両方が可能である。特に、可溶性LRP−1のクラスターII(配列番号2)および/またはクラスターIV(配列番号3)、あるいは1またはそれより多いそのカルシウム結合断片が好ましい。したがって、約65kDa(一次アミノ酸配列にグリコシル化配列が加わったもの)未満の相対分子量を有する突然変異体LRP−1が可能である。対照的に、突然変異体分子量を最小化することが望ましい場合は、突然変異体LRP−1からのクラスターIIまたはクラスターIVのいずれかの排除(すなわちそれぞれ、クラスターIVまたはクラスターIIのみを含むもの)が好ましい。野生型LRP−1タンパク質および該タンパク質をコードする核酸、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列、またはその成熟型は、ヒト(例えば寄託番号CAA32112、NP 002323、Q07954、またはS02392)、他の哺乳動物(例えばウシ、モルモット、マウス、ラット)由来であってもよいし、あるいはその多型および変異体であってもよい。天然LRP−1タンパク質を化学的に操作(例えば加水分解的切断または酵素的タンパク質分解)して、ポリペプチド断片を作製してもよいが、細菌、カビまたは酵母、昆虫、あるいは哺乳動物細胞または生物における組換え技術によってこれらの断片を作製することが好ましい。遺伝子キメラを用いて、突然変異体LRP−1を1またはそれより多い異種ドメインに融合させてもよい。突然変異体LRP−1をコードする核酸を培養細胞または生物内に導入し(例えば核トランスファー、トランスフェクション、遺伝子組換え、特に体内での幹細胞への、または体内への移植)、そこでポリペプチドが翻訳され、そしてプロセシングされてもよい。例えば、突然変異体LRP−1タンパク質は、ウイルス感染またはトランスフェクションによって細胞内に導入される発現構築物から産生されてもよい。発現構築物は、好ましくは、血管細胞特異的であるか、またはウイルス由来であるか、またはその組み合わせである、制御領域(例えばプロモーター、エンハンサー)から転写される。これらは、キャリアー中でタンパク質および他の核酸と会合してもよい(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはレトロウイルス由来のウイルス粒子中にパッケージングされるか、リポソーム中に被包されるか、あるいはポリマーと複合体化される)。in vivo治療には、被験体血管系内への、薬学的組成物(例えばウイルスまたは核酸含有溶液)の直接滴下が含まれる。ex vivo治療のため、被験体またはドナー由来の細胞(例えば血管細胞またはその子孫)をin vitroでウイルス感染させるかまたはトランスフェクションし、そして次いで、被験体の血管系内に移植してもよい。細胞は、特に脳、動脈、または網内系の臓器の、そしてより特に、血液脳関門の大脳動脈、肝臓、または幹細胞の、血管細胞(例えば平滑筋細胞)であってもよい。
【0020】
可溶性LRP−1を作製する好ましい方法は、野生型膜貫通ドメインを突然変異させる(例えばミスセンスまたは欠失突然変異)ことを伴う。例えば、膜貫通ドメインの前の部位に停止コドンを導入してもよいし、または膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする部分を欠失させてもよい。クラスターIVまたはそのいくつかのカルシウム結合断片を含むミニ受容体もまた産生してもよく(例えば遺伝子スプライシングまたはアダプタープライマーを用いた増幅によって)、そしてAβ結合に用いてもよい。突然変異体LRP−1を、細胞膜の脂質二重層または別の支持体に付着させ、そして次いで、脱離させ/加水分解して、突然変異体LRP−1を作製してもよい。例えば、タンパク質分解酵素は、細胞外部のペプチド結合を加水分解可能であるし、またはリパーゼは、脂質二重層中に挿入されたスフィンゴ糖脂質アンカーを加水分解可能である。あるいは、突然変異体LRP−1は、Aβへの結合前、結合中、または結合後に、支持体上に固定されていてもまたはいなくてもよい。
【0021】
タンパク質融合体を作製し、そして用いてもよい。天然LRP−1シグナルペプチドまたは異種シグナルペプチドを用いて、ER膜を渡ってタンパク質を転位置させ、そして分泌経路を通じて、これを輸送してもよい。突然変異体LRP−1はグリコシル化またはそうでなければ翻訳後修飾されてもよい。局在化ドメイン(例えば抗体または結合対の別のメンバー)を用いて、組織、臓器、または被験体の体の他の部分において、可溶性LRP−1突然変異体の局所濃度を増加させてもよい。例えば、ビオチン化またはストレプトアビジンとの融合は、可溶性LRP−1突然変異体を、同族結合メンバー(それぞれ、アビジンまたはビオチン)がその中に/またはそこに付着している体の部分に局在化させることも可能である。
【0022】
例えば、カルシウム結合断片中の少なくとも1つの突然変異は、ヒトまたは他の哺乳動物(例えばウシ、モルモット、マウス、またはラット)由来のLRPスーパーファミリーの任意のメンバー、特にLRP−1相同体において作製されてもよい。突然変異体LRP−1相同体のアミノ酸またはヌクレオチド配列はまた、他の既知の置換、欠失、挿入、異種ドメインの融合、変異体、または多型も含んでもよい。
【0023】
本明細書で研究する受容体−リガンド系に関しては、LRP−1リガンド(例えばアポE、アポJ、α2M)およびRAPは、Aβに結合するのに必要ではない。可溶性LRP−1突然変異体は、溶液中に遊離のAβに結合することも可能であるし、あるいは突然変異体LRP−1またはAβのいずれかが固相に最初に付着していることも可能である。突然変異体LRP−1およびAβ間で結合した後、次いで、結合前、結合中、または結合後の任意の時点で、どちらかまたは両方を支持体(例えば細胞、組織、または人工的固体支持体)上に固定してもよい。突然変異体LRP−1/Aβ複合体を単離してもまたは検出してもよい。アルツハイマー病を治療する候補化合物は、受容体−リガンド系の構成要素である少なくとも1つの遺伝子、転写物、またはタンパク質と相互作用して、受容体活性(すなわちAβの血管クリアランス)を増加させてもよいし、そして療法または予防を提供する能力に関してスクリーニングされてもよい。これらの産物をアッセイ(例えばmt−LRP−1を用いてAβを検出する診断法)で、または治療に用いてもよいし;好適には、これらは、アッセイキットまたは薬剤形式(例えば単一または多用量パッケージ)中にパッケージングされる。
【0024】
可溶性LRP−1突然変異体のAβへの直接結合は、溶液中または支持体上で起こってもよい。アッセイ形式は、未結合Aβからの結合Aβの分離を必要としてもまたはしなくてもよい(すなわち不均一または均一形式)。検出可能なシグナルは、直接または間接的に、結合複合体の任意の部分に付着してもよく、競合的に、増幅されて、またはその任意の組み合わせで測定されてもよい。ブロッキングまたは洗浄工程を挿入して、感度および/または特異性を改善してもよい。結合前、結合後、または結合中の、支持体への可溶性LRP−1突然変異体の付着は、以前付着されなかった受容体の捕捉を生じる。米国特許5,143,854および5,412,087を参照されたい。受容体−リガンド系の構成要素のタンパク質および/または転写物レベルで、存在量を測定してもよい。
【0025】
また、可溶性LRP−1突然変異体を支持体に付着させてもよい。支持体は、固体または多孔性であってもよく、そしてシート、ビーズ、または線維として形成されてもよい。支持体は、綿、絹、またはウール;セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、または陽性荷電ナイロン;天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、またはスチレンブタジエンゴム;アガロースまたはポリアクリルアミド;ケイ素またはシリコーン;結晶、無定形または不純物シリカ(例えば水晶)またはシリケート(例えばガラス);ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、メタクリル酸ポリメチル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフロリド、酢酸ポリビニル、塩化ポリビニル、またはポリビニルピロリドン;あるいはその組み合わせで作製されてもよい。結合がモニター可能であり、そしてシグナルが光によって伝達可能であるように、光学的に透明である材料が好ましい。こうした試薬は、同族分子間の特異的相互作用によって、溶液中のAβの捕捉を可能にし、そして次いで、支持体上にAβを固定可能である。
【0026】
可溶性LRP−1突然変異体を、反応基、例えばカルボキシ、アミノ、またはヒドロキシラジカルを通じて、支持体に付着させてもよく;付着はまた、支持体上に直接、接触プリンティング、ピンでのスポッティング、ペンでのピペッティング、またはノズルでのスプレーを行うことによっても実行可能である。あるいは、可溶性LRP−1突然変異体は、特異的結合対(例えば抗体−ジゴキシゲニン/ハプテン/ペプチド、ビオチン−アビジン/ストレプトアビジン、グルタチオンSトランスフェラーゼ−グルタチオン、マルトース結合タンパク質−マルトース、ポリヒスチジン−ニッケル、プロテインAまたはG/免疫グロブリン)の相互作用によって、支持体に可逆的に付着してもよく;非可逆的付着が望ましい場合、架橋を用いてもよい。
【0027】
好適な検出のため、容易にアッセイされるレポーターの可溶性LRP−1突然変異体への付着を用いてもよい。レポーターは、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、細菌/昆虫/海洋無脊椎動物ルシフェラーゼ(LUC)、緑色および赤色蛍光タンパク質(それぞれGFPおよびRFP)、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)、β−ラクタマーゼ、およびその誘導体(例えば青色EBFP、シアンECFP、黄緑色EYFP、脱安定化GFP変異体、安定化GFP変異体、またはClontechによるLIVING COLORS蛍光タンパク質として販売される融合変異体)であってもよい。レポーターは、好ましくは色素原、蛍光、または発光シグナルによってアッセイされる同族基質を用いる。あるいは、可溶性LRP−1突然変異体は、同族抗体またはアフィニティ樹脂が入手可能な、異種エピトープ(例えばFLAG、MYC、SV40 T抗原、グルタチオントランスフェラーゼ、ヘキサヒスチジン、マルトース結合タンパク質)でタグ化されていてもよい。
【0028】
可溶性LRP−1突然変異体は、発現ベクターにおいて、適切なコード領域を遺伝子連結することによって、あるいは化学的架橋による結合メンバー上の反応部分への直接化学的連結によって、特異的結合対の1つのメンバーに連結させてもよい。これらをアフィニティ試薬として用いて、Aβとの特異的結合に関与する相互作用を同定し、単離し、そして検出することも可能である。これは、溶液中の、または支持体に固定された複合体を生じる。
【0029】
突然変異体LRP−1を、薬剤、診断剤として用いてもよく、あるいは本明細書に開示する1またはそれより多い有用性を持つ療法または診断組成物を配合するために用いてもよい。これらをin vitroで体液または培養中の組織に投与してもよいし、in vivoで被験体の体に投与してもよい。あるいはex vivoで被験体の体外で細胞に投与して、後に同じ被験体または別の被験体の体に戻してもよい。被験体の体から標本を採取した後、そして実験室アッセイの前に、体液および組織をさらにプロセシングしてもよい。例えば、細胞を脱凝集させるかまたは溶解するか、あるいは固形組織として提供してもよい。標本を、アッセイ前に、乾燥型または凍結型で保存してもよい。
【0030】
化合物またはその誘導体を用いて、薬剤または他の薬学的組成物を産生してもよい。薬学的に許容されうるキャリアーをさらに含む組成物、および組成物を被験体に送達するのに有用な構成要素をさらに含む組成物が、当該技術分野に知られる。こうしたキャリアーおよび他の構成要素を本発明の組成物に添加することは、十分に当該技術分野の技術レベル内である。
【0031】
可溶性LRP−1突然変異体に結合させるか、または体の循環(例えば網内系)を通じて可溶性LRP−1突然変異体に結合したAβを除去することによって、あるいは機械(例えばアフィニティクロマトグラフィー、電気泳動、ろ過、沈殿)によって、未結合Aβの濃度を減少させることも可能である。被験体の体からのAβの除去によって、または被験体の体のアミロイド沈着の減少によって、治療の有効性を評価してもよい。これは可溶性LRP−1突然変異体を用いてその量および/または位置を検出することも可能な、ヒト患者または動物モデルにおいて達成可能である。本明細書記載の治療様式は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のエンドサイトーシスおよび分解における低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質の役割を同定する、米国特許6,156,311に記載される機構とはかなり異なることに注目しなければならない。
【0032】
標識または他の検出可能部分を、可溶性LRP−1突然変異体に付着させてもよいし、または構造画像化:例えばX線コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像化(MRI)、または他の光学検出技術のため、造影剤を含めてもよい。単一光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)などの機能的画像化もまた用いてもよい。脳または血管系におけるアミロイド負荷のMRI評価のため、可溶性LRP−1突然変異体を標識(例えばガドリニウム)してもよい。血液脳関門(BBB)透過処理剤を用いた、脳におけるアミロイド負荷のSPECT評価のため、あるいは、BBB透過処理剤を用いたまたは用いない脳アミロイド血管障害評価のため、可溶性LRP−1突然変異体を標識してもよい(例えば76Br、123I)。
【0033】
また、例えば:診断、疾患に対するリスクがあるものまたはすでに罹患しているものの同定、あるいは疾患の段階またはその進行の決定などの方法を実行する際に使用するためのキットにおいて、試薬を提供してもよい。さらに、以下の:疾患の自然経過に介入することが望ましいかどうかの評価、疾患経過の改変、進行を停止させるかまたは遅延させる初期介入、機能の回復または維持の促進、有益な療法または予防のためのターゲットの提供、候補薬剤または医学的措置の比較、あるいは薬剤または医学的措置の有効性の決定などの、疾患の治療に関連する方法において、試薬を用いてもよい。これらの方法を実行するための指示、参照値および陽性/陰性対照、ならびに患者情報(例えば遺伝子型、病歴、疾患症状、遺伝子発現からの転写または翻訳収量、生理学的または病理学的知見)を含有する関係型データベースは、本発明の考慮される側面であってもよい他の産物である。
【0034】
療法または予防が必要な被験体に投与される治療の量および度合いは、罹患患者を治療するのに有効である。本発明を単独で、または他の既知の方法と組み合わせて、用いてもよい。被験体は任意のヒトまたは動物であってもよい。哺乳動物、特にヒトおよびげっ歯類または霊長類疾患モデルを治療してもよい。したがって、獣医学的方法および医学的方法の両方が可能である。
【0035】
1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または該タンパク質(単数または複数)をコードする核酸(単数または複数)を含有する薬学的組成物または診断組成物を、血液脳関門を通じた通過のために、または内皮と直接接触させるために順応した配合物として投与してもよい。あるいは、組成物を培地に添加してもよい。突然変異体タンパク質または核酸に加えて、こうした組成物は、生理学的に許容されうるキャリアー、および投与を促進しそして/または取り込みを増進させることが知られる他の成分(例えば生理食塩水、ジメチルスルホキシド、脂質、ポリマー、アフィニティに基づく細胞特異的ターゲティング系)を含有してもよい。組成物を、ゲル、スポンジ、または他の浸透性マトリックス(例えばペレットまたはディスクとして形成される)中に組成物を取り込んでもよいし、そして持続局所放出のため、内皮近傍に配置してもよい。単一用量で、または異なる時点で投与される多数回用量で、投与されてもよい。
【0036】
1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または該タンパク質(単数または複数)をコードする核酸(単数または複数)を含有する薬学的組成物または診断組成物を、任意の既知の経路によって、体内に投与してもよい。例えば、組成物を粘膜、肺、局部、あるいは他の局所または全身経路(例えば腸内および非経口)によって投与してもよい。用語「非経口」には、限定なしに、皮下、皮内、真皮下、筋内、クモ膜下腔内、動脈内、静脈内、および他の注射または注入技術が含まれる。
【0037】
用量の量およびタイミング、配合、および投与経路の適切な選択は、アルツハイマー病またはそのリスクにある被験体において、好ましい反応を達成し(すなわち有効性)、そして過度の毒性または他の害を回避する(すなわち安全性)目標とともに実行されうる。したがって、「有効な」は、望ましい効果を達成する条件の日常的な操作を伴う選択を指す。
【0038】
1日1回短時間に渡って体内に投与される1またはそれより多い突然変異体LRP−1の急速投与(bolus)が、好適な投薬スケジュールである。あるいは、突然変異体タンパク質(単数または複数)または核酸(単数または複数)の有効1日用量を、投与の目的のため、多数の用量に分割してもよく、例えば1日あたり2〜12の用量に分けてもよい。薬学的組成物中の突然変異体LRP−1の投薬量もまた、被験体の体内において、特に脳の血管内皮中およびその周囲で、一過性のまたは持続される濃度を達成し、そして望ましい療法反応または防御を生じるため、多様であってもよい。しかし、望ましい療法効果を達成するために必要であるよりも低い用量レベルで開始し、そして望ましい効果が達成されるまで投薬量を次第に増加させることもまた、当該技術分野の技術範囲内である。同様に、診断組成物中の突然変異体LRP−1の投薬レベルは、被験体体内のAβの検出の望ましい感度および特異性を達成するため、多様であることも可能である。
【0039】
投与される突然変異体LRP−1の量は、タンパク質または核酸投与の生物活性および生物学的利用能(例えば、体内での半減期、安定性、代謝);化学特性(例えば分子量、疎水性、可溶性);経路(例えば非経口、特に静脈内)およびスケジューリング(例えば1ヶ月または1年あたりの頻度、連続用量間の期間)等、当業者に知られる要因に応じる。全身投与のため、血液脳関門を通じた突然変異体LRP−1の通過が重要である。任意の特定の被験体に関して達成しようとする特定の用量レベルは、年齢、性別、健康状態、病歴、体重、1またはそれより多い他の薬剤との組み合わせ、および疾患の重症度を含む、多様な要因に応じうることもまた理解されるであろう。
【0040】
用語、アルツハイマー病の「治療」は、とりわけ、被験体において1またはそれより多い症状を減少させるかまたは軽減し、1またはそれより多い症状が悪化するかまたは進行することを防止し、回復を促進するかまたは予後を改善し、そして/または罹患していない被験体において疾患を防止するとともに、存在する疾患の進行を遅延させるかまたは減少させることを指す。所定の被験体に関して、症状の改善、その悪化、退行、または進行は、客観的または主観的尺度によって決定可能である。罹患率または死亡率の改善(例えば選択した集団に関する、生存曲線の延長)として、治療の有効性を測定することも可能である。予防法(例えば再発発生の防止または減少)もまた、治療と見なされる。治療はまた、他の現存する治療様式(例えばARICEPTまたはドネペジル、EXELONまたはリバスチグミン、抗アミロイドワクチン、頭の体操(mental exercise)または刺激)との組み合わせを伴ってもよい。したがって、1またはそれより多い他の薬剤および1またはそれより多い他の医学的処置を含む組み合わせ治療を実施してもよい。
【0041】
被験体に投与される突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または核酸の量は、好ましくは、その投与から生じる利点を上回る毒性または他の有害な影響を誘導しない量である。さらなる目的は、数を減少させ、重症度を減じ、そして/または別の方式で、認識される治療標準に比較した際に、疾患症状の苦痛を軽減させることである。本発明はまた、神経変性障害一般:例えば認知症、抑鬱、錯乱、クロイツフェルト−ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、運動協調性の喪失、多発性硬化症、脳卒中、および失神に対しても有効でありうる。
【0042】
突然変異体LRP−1タンパク質または核酸の産生は、適切な政府監督官庁によって、医薬品安全性試験実施基準(GLP)、ならびに製造管理および品質管理に関する基準(GMP)に関して規制されるであろう。これは正確でそして包括的な記録管理、ならびにQA/QCのモニタリングを必要とする。官庁および施設委員会による患者プロトコルの監視は、また、インフォームドコンセントが得られており;製品の安全性、生物活性、適切な投薬量、および有効性が段階的に研究されており;結果が統計的に有意であり;そして道徳的指針に従っていることを確実にするよう想定される。動物モデルを用いたプロトコル、ならびに毒性化学薬品の使用、および法令順守の類似の監視が必要である。
【0043】
療法的使用のため、適切な監督官庁は、生物製剤に関する純度の許容されうるレベル(例えば外来のタンパク質および核酸の欠如);無菌性(例えば微生物の欠如);宿主細胞混入の欠如(例えば1mLあたり0.5内毒素単位未満);および強度(例えば遺伝子トランスファーおよび発現効率)も特定するであろう。別の目的は、突然変異体LRP−1タンパク質または核酸の一貫したそして再現可能な産生を確実にしうることであり、これは生物製剤の強度を改善しつつ、純粋で、無菌であり、そして発熱物質を含まない製品を確実にするよう用いられる製造管理および品質管理に関する基準に適合することも可能である。
【0044】
本明細書において、血液脳関門での突然変異体LRP−1およびAβの間の直接または間接的な相互作用は、高いβシート含量およびAβ内の遺伝的突然変異を含むAβ種の保持を促進しつつ、可溶性Aβ40を一掃することによって、神経毒性および血管向性Aβ集積に決定的に影響を及ぼしうる。Aβ内の突然変異は、突然変異体Aβがmt−LRP−1に結合するアフィニティに有意に影響を及ぼさない。LRP−1と対照的に、RAGEは、脳内への循環Aβの連続流入を仲介し、そしてトランスジェニックAPPモデルにおいて、そしてADにおいて、脳血管系で過剰発現される(Deaneら、2003)。血液脳関門でのまたは血管系における突然変異体LRP−1の作用が、直接作用して、RAGEが仲介するAβ取り込みを阻害するか、または間接的に作用して、末梢における遊離Aβに結合し、それによって脳におけるAβの濃度低下を生じることによって、CNSにおけるAβのレベルを減少させる可能性がある。適用には、脳アミロイド血管疾患(CAA)を伴うアルツハイマー病の家族性型(FAD)の被験体、例えばオランダまたはアイオワ突然変異を伴う患者(FAD/CAA)が含まれる。突然変異体LRP−1は、野生型および突然変異体Aβペプチドの両方に結合するため、突然変異体LRP−1は、アルツハイマー病、FAD/CAA、およびダウン症候群において、血管病変に関連する変化を視覚化するため、脳の画像化剤として、診断目的に使用可能である。
【0045】
突然変異体LRP−1は、より高いアフィニティでAβに結合するため、これらを用いて、脳から血液内へのAβの放出を促進してもよい。遊離Aβおよび可溶性LRP−1突然変異体に結合したAβのレベルを用いて、アルツハイマー病、FAD/CAA、およびダウン症候群に関する、in vitro結合アッセイ(例えば二重サンドイッチELISA血液試験)を開発してもよい。作用機構は、抗Aβ抗体、ゲルゾリン、GM1、およびsRAGEなどの他の末梢Aβ結合剤と類似の循環野生型または突然変異体Aβの隔離であってもよい。全身循環中のAβを隔離し、そして脳内への血液脳関門を渡るAβ輸送を防止する、人工的な「シンク」としてmt−LRP−1を用いてもよい。1またはそれより多い突然変異体LRP−1タンパク質(単数または複数)または核酸(単数または複数)を用いると、(1)これらが、野生型クラスターIIおよび/またはクラスターIVを含む野生型相同体、ゲルゾリン、GM1、sLRP−1、またはsRAGEと比較して、より高いアフィニティでAβに結合し、そして(2)これらが、クラスターIIおよびIVを含む可溶性LRP−1に比較して、より小さいサイズであるため、治療される被験体によく許容されるはずであり、そしてそれによって、脳および脳血管における免疫または神経炎症反応を回避するはずであるという利点を提供する。
【0046】
突然変異体LRP−1のこれらの特性を用いて、末梢シンク剤として作用させることによって、トランスジェニックFAD/CAAマウス、アルツハイマー病の他の動物モデル、またはアルツハイマー病およびFAD/CAA患者の脳におけるAβのレベルを低下させることも可能である。この目的のため、1またはそれより多い突然変異体LRP−1を単独で、または神経保護剤(例えばGuoら、2004に記載されるような活性化プロテインC)とともに、または被験体における循環Aβを低下させる他の療法;Aβに対する免疫またはワクチン接種;ガングリオシド、ゲルゾリン、またはsRAGEの投与;アミロイド前駆体タンパク質のベータ/ガンマ・セクレターゼ仲介性プロセシングの阻害;血液脳関門の浸透圧開放(Neuweltら、1985);脳脊髄液産生の正常化(Silverbergら、2003);またはその組み合わせとともに用いてもよい。
【0047】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、そしてその実施を制限するかまたは別の方式で限定することを意図されない。
【実施例】
【0048】
本発明者らは、13の突然変異体LRP−1をスクリーニングし、そしてこれらをクラスターIVのリガンド結合ドメインを含むLRP−1の可溶性誘導体(LRPIV)に比較した。7つは、天然アミノ酸配列に比較していかなる突然変異も含まずに、LRPIVの異なる断片を含む。6つは、LRPIV中に点突然変異:配列番号1中のD3354G、D3394G、D3556G、D3595G、D3633G、およびD3674Gを有した。配列番号1中のD3674Gは、クラスターIV(配列番号3)中のD343Gに対応する。MT007−LRPIVは、以下の実施例のリード化合物である。
【0049】
LRPIVは、11の補体関連モチーフ(CR21〜CR31)を含有し、そのうち9つはカルシウム結合断片であり、これは特異的および直接Aβ結合の推定上の決定因子である。表面プラズモン共鳴分析を用いて、CR24〜CR28は、LRPIVの最も有効なカルシウム結合断片であることが示された(Meijerら、2007)。3つの三重反復、CR24〜CR26、CR25〜CR27、およびCR26〜CR28は、RAPと強く相互作用する。CR24〜CR26は、活性化α2−マクログロブリン(α2M*)および因子VIII軽鎖(FVIII LC)に対する最高の結合アフィニティを有する一方、CR26〜CR28は、因子IXa(FIXa)結合の最適な領域であった(Meijerら、2007)。CR23およびCR31は、特異的および直接Aβ結合に寄与しているようではない。本発明者らは、CR24〜CR28を用いて、LRPIVの可溶性カルシウム結合誘導体を産生し、そして高アフィニティAβ結合に関してスクリーニングした。少なくとも3つのカルシウム結合断片が、RAP、α2M*、FVIII LC、およびFIXaに結合するのに必要である一方、Aβ結合に必要な反復の最小数は明らかでない。したがって、4つのカルシウム結合断片(CR24〜CR27およびCR25〜CR28)、3つのカルシウム結合断片(CR25〜CR27)、2つのカルシウム結合断片(CR25〜CR26およびCR26〜CR27)および1つのカルシウム結合断片(CR25およびCR26)を含有するLRPIV断片を産生した。
【0050】
GST−RAPアフィニティクロマトグラフィーを用いて、すべての主なリガンド結合ドメインを含むLRPIVを精製した。精製LRPIVのN末端アミノ酸配列によって、LRPIVのアミノ酸配列のN末端に3つの外来のグリシン−アラニン−アルギニン(GAR)アミノ酸が存在することが明らかになった(GAR−LRPIV)。tPAシグナルペプチドは、フューリン切断部位: −7RFRRGAR−1、式中、エンドプロテアーゼは、RFRR↓GARで切断し、突然変異体LRP−1のN末端に3つの外来アミノ酸を生じる、を含有する。エンドプロテアーゼは、外来アミノ酸を除去しなかった。選択的Aβ結合に関して、GAR−LRPIVをスクリーニングした。
【0051】
cDNAの合成およびクローニング。SuperScript II RT(Invitrogen)を用いて、ヒト脾臓総RNA(Clontech)から第一鎖cDNAを合成した。ヒトLRP1配列(NM 002332)に基づいて、プライマーを設計した。Pfx−DNAポリメラーゼ(Invitrogen)およびそのそれぞれのプライマーセットを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、cDNAからLRPIVドメインを増幅し、そしてpcDNA3.3 TOPOベクター内にクローニングした。この構築物を用い、PCRを用いて、LRPIVの11反復(CR21〜CR31)、2種類の4反復(CR24〜CR27およびCR25〜CR28)、1種類の3反復(CR25〜CR27)、2種類の2反復(CR25〜CR26、CR26〜CR27)および2種類の単一反復誘導体を増幅し、そして哺乳動物発現ベクター、pSecTag2 B(Invitrogen)のHindIIIおよびBamHI制限部位の間にクローニングして、可溶性タンパク質を発現させた。pSecTag2 Bベクターは、N末端上にIgKリーダーペプチドを、そしてC末端上にMycタグおよびHis6タグを有する。129bpの順方向プライマー(Kozak配列、開始コドン、tPAシグナルペプチド配列およびLRPIV配列を有する)およびHindII制限部位を含む逆方向プライマーを用い、いかなるタグも含まない全長分泌LRPIV(wt−LRPIV)を増幅し、そしてpcDNA3.3 TOPOベクター内にクローニングした。Quickchange Lightning部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて、6つのカルシウム結合部位で、突然変異体LRPIV変異体を作製した。それぞれのプライマーセットとともに、WT−LRPIVをテンプレートとして用いた。突然変異プラスミドの挿入を、配列で検証し、SacIおよびHindIIIで消化し、そしてSacI−HindIII消化したwt−LRPIVプラスミド内にクローニングした。
【0052】
タンパク質発現。1mM CaCl2、2mM Glutamaxを補充したCDOpti CHO培地中、振盪装置上、37℃で、懸濁チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を増殖させた。FreeStyle MAX試薬(Invitrogen)を用いて、各構築物で、CHO細胞を安定トランスフェクションした。トランスフェクション5日後、抗生物質を含有する培地内に細胞を移した、pCDNA 3.3 TOPOには700μg/mLジェネティシン、またはpSecTag2には200μg/mLハイグロマイシン。12〜15日後、Clone Matrix(Genetix)混合物(40% Clone Matrix、50% 2xCDOpti CHO、および抗生物質)を含有する100mmx10mmペトリ皿に、約5000の抗生物質耐性細胞をプレーティングした。約3週後、50〜60の単一クローンを拾い、そして48ウェルプレート中、CDOpti CHO培地内に移した。3日後、LRPIV抗体を用いたウェスタンブロット分析によって、発現されたLRPIVに関して、培地を試験した。続いて、選択したクローンを12ウェルおよび6ウェルプレート内に移した。単一の選択クローンをフラスコに移し、そして懸濁培養中で増殖させた。ファーンバックフラスコ中でLRPIV発現を行った。2mM glutamax、1mM CaCl2、および10%CHO CD Efficient Feed A(Invitrogen)を含有するCDOpti CHO中、1x106/mL細胞密度で培養を開始した。毎日、血球計算板(Hausser Scientific Partnership、ペンシルバニア州ホーシャム)を用いて細胞を計数し、そしてGlucCellTM試験ストリップ(CESCO Bioengineering Co.、台湾・台中)を用いてグルコースレベルを測定した。グルコースレベルが馴化培地中2g/L未満に落ちたら、2mM glutamaxおよび1mM CaCl2を含有する10%Feed Aを細胞に補った。通常、培養4日後にフィーディングが必要であった。タンパク質を10日間発現させ、遠心分離によって培地を採取し、そして0.2μmフィルターを通じて、上清をろ過した。CR25〜CR26、CR26〜CR27、CR26、CR27、および突然変異体D3351G、D3592G、D3630Gの分泌は非常に低かった。したがって、これらの変異体はスクリーニングから排除された。
【0053】
Ni−NTAアガロース(Qiagen)を用いて、バッチ中で、His6タグを含有するLRPIVの異なる断片を精製した。馴化培地を10%グリセロール、150mM NaCl、10mMイミダゾール、および洗浄したNi−NTA樹脂と混合し、振盪しながら室温で30分間放置し、そして洗浄緩衝液(10%グリセロール、300mM NaCl、10mMイミダゾールおよび50mM NaH2PO4、pH8)で洗浄した。結合したタンパク質を、50mMリン酸緩衝液、pH8中の250mMイミダゾールで溶出させた。溶出したタンパク質を50KDaカットオフフィルター(Millipore、マサチューセッツ州ビラリカ)に通過させた。GST−RAPアフィニティカラムを用いて、単一アフィニティ精製工程によって、wt−LRPIVを精製した。GST−RAPを発現させ、B−PER GST融合タンパク質精製キット(Pierce)を用いてアフィニティ精製し、そしてAminoLink Plusカップリングキット(Pierce)を用いて、アガロースビーズ上に固定した。抗LRPIV−抗体アフィニティカラムを用いて、一工程で、突然変異体LRPIV変異体を精製した。AminoLink Plusカップリングキットを用いて、アガロースビーズに純粋な抗LRPIV抗体を固定することによって、抗LRPIV−抗体カラムを調製した。約100mlの馴化培地を洗浄緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl)で3X希釈し、抗LRPIV抗体アフィニティカラム上に装填し、900mLの洗浄緩衝液で洗浄し、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.5)で溶出させ、2M Tris緩衝液(pH9.5)で中和し、そして10KDaカットオフフィルター(Millipore)を用いて濃縮した。50mM炭酸−重炭酸緩衝液(pH9)に対して、各精製LRPIV変異体を透析した。これらの純度を銀染色によって確認し、そしてウェスタンブロット分析によって同定した。
【0054】
タンパク質の発現レベルが低く、そしてAβ40への結合が非常に低いため、単一反復(CR25およびCR26)および二重反復(CR25〜26およびCR26〜27)をスクリーニングから除去した。
【0055】
GAR−LRPIVに比較して、4反復(CR24〜27およびCR25〜28)および3反復(CR25〜27)は、4〜8倍低いアフィニティでAβ40に結合する(図2A〜2B)。対照的に、GAR−LRPIVに比較して、4つのCRおよび3つのCRは、類似のアフィニティでAβ42に結合する(図2C〜2D)。GAR−LRPIVに比較して、RAP結合領域外部のカルシウム結合部位に突然変異(D343G)を有するMT007−LRPIVは、それぞれ、2.5倍および1.5倍高いアフィニティの選択的結合をAβ42およびAβ40に対して示した(図2A〜2D)。D343G突然変異が、LRPIVにおいてコンホメーション変化を引き起こし、これがAβの選択的結合を増進させた可能性がある。Sagareら(2007)が用いたタグ化LRPIVに比較して、MT007−LRPIVは、Aβ42およびAβ40に対して、それぞれ、2.6倍および1.4倍高いアフィニティを有した。LRP−1は、他のリガンドと相互作用するため、本発明者らはまた、これらに対するLRPIVの結合アフィニティも比較した。GAR−LRPIVに比較して、MT007−LRPIVは、それぞれ、2.5倍および1.5倍高いアフィニティでAβ42およびAβ40に結合し;2倍低いアフィニティでアポEに、そしてそれぞれ、2倍、3倍および4倍低いアフィニティでtPA、MMP9、およびFIXaに弱く結合する(図3A〜3D)。α2M*およびGAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV間にはほとんど相互作用がなかった。LRP−1はKPI(クニッツ型プロテアーゼ阻害剤)ドメイン(Kounnasら、1995)を通じてAPPと相互作用するため、本発明者らは、GAR−LRPIV、およびKPIドメインを含む(APP770、APP751)またはKPIドメインを含まない(APP695)APPアイソフォーム間の相互作用を決定した。APP695は、脳における主なAPPアイソフォームである。GAR−LRPIVはAPP695に結合しない(図4A)一方、APP770(図4B)およびAPP751(図4C)に対する弱い結合があり、これは可溶性KPIドメインまたは抗KPI抗体(mAb4.1)で置換された。しかし、Aβ40およびAβ42に対するGAR−LRPIV結合は、可溶性KPIまたはmAb4.1によって影響を受けなかった(図4D〜4E)。GAR−LRPIVおよびAPP770またはAPP751間の結合アフィニティは、Aβ40およびAβ42のものより、それぞれ、50倍および25倍低かった(図4F)。APP770およびGAR−LRPIV間の結合アフィニティは、APP770およびMT007−LRPIV間のものより3倍大きかった(図4G)。Aβ40およびAβ42に選択的にそして高アフィニティで結合するため、脳におけるAβペプチドの末梢シンクとして作用することによってアルツハイマー病を治療するためのリード化合物として、MT007−LRPIVを選択した。
【0056】
脳Aβレベルを低下させるためのLRPIV in vivo有効性。野生型マウス(2〜3ヶ月齢のC57BL6)を、キャリアーのみ(ビヒクル)、GAR−LRPIV、またはMT007−LRPIV(静脈内、20μg)で5日間、毎日治療した。Sagareら(2007)に記載される類似のプロトコルを参照されたい。投薬期間終了時、脳組織および血漿を収集し、そしてELISAによってAβレベルを決定した。ビヒクルと比較すると、LRPIV類似体はどちらもAβ40およびAβ42の血漿レベルが増加し、そして脳における対応物が減少する一方、MT007−LRPIVに対する反応は有意により高かった(図5A〜5D)。MT007−LRPIVは血漿において、Aβ40およびAβ42と、有意により多く結合し(図5Aおよび5B)、そしてGAR−LRPIVよりも、脳Aβレベルを低下させる際により有効であった(図5Cおよび5D)。どのくらい迅速にMT007−LRPIVが脳Aβレベルを減少させうるかを決定するため、MT007−LRPIV(10μg)またはビヒクルの単回静脈内急速投与で、同じ年齢のC57B6マウスを治療した。12時間後、脳および血漿におけるAβレベルをELISAによって決定した。ビヒクルに比較して、MT007−LRPIVは、血漿Aβ40およびAβ42を、それぞれ、1.33倍および2.85倍増加させ、そして脳Aβ40およびAβ42を1.68倍および1.45倍減少させた。したがって、MT007−LRPIVは、中枢神経系にあるAβに関してさえ、Aβの有効な末梢シンクである。
【0057】
突然変異体LRP−1の免疫原性。免疫原性試験のため、ミリグラム量の突然変異体LRP−1タンパク質が必要である。受容体関連タンパク質(RAP)を含有するカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーは、弱くしかRAPに結合しない突然変異体LRPIVタンパク質の単離には使用不能である。MT007−LRPIVは、GST−RAPカラムに結合しないため、抗LRPIV抗体カラムを用いて、アフィニティクロマトグラフィーによって単離し、その結果、回収は劣っていた。したがって、本発明者らは、イオン交換カラムを用いた別の単離プロセスを開発し、これはより優れた精製および収量を生じた(以下を参照されたい)。精製タンパク質(2.2mg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、そして免疫原性試験のため、外部実験室に送った。およそ8〜10週齢のBALB/c雌マウスを用いる。3つの用量(20、40、および80μg/kg)のMT007−LRPIVを試験した。マウスに隔週で4回注射した。各用量の1週後、血液を収集し、プロセシングし、そしてQED(Bioscience Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)によるELISAによって、MT007−LRPIVに対する抗体を用いて試験した。免疫学的応答はなかった。
【0058】
MT007−LRPIVタンパク質をCHO細胞において発現させた。単離プロセスは、CHO細胞からの宿主細胞タンパク質(HCP)による混入の可能性を残しうる。したがって、本発明者らは、2つの独立の方法によって最終精製タンパク質調製物中のHCP混入を追った。(A)ウェスタンブロット分析:試料を還元条件下、SDS−PAGE上で分離し、そして次いで、ニトロセルロース膜にトランスファーした。非特異的部位をブロッキングした後、CHOタンパク質不含培地に対して作製したヤギ抗体を含有する溶液に、膜を曝露した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で抗体を標識した。洗浄後、ECL法を用いて、タンパク質を検出した。抗体(Cygnus Technologies)はポリクローナルであり、そして多数の潜在的な混入物:すなわち、SDS/DTT可溶化CHO細胞由来の、および馴化CHOタンパク質不含培地中に見られるHCP由来の40を超える異なるCHO HCPバンドに対する広い反応性を持って生成された。(B)ELISA:Cygnus Technologiesから商業的に入手可能なキットを用いた。これはウェスタンブロッティングよりもより感受性である。キットは、精製とは独立に、産物に混入しうる本質的にすべてのHCPと反応する。未結合馴化培地中に見られるアフィニティ精製CHO HCPに対して抗体を生成した。ウェスタンブロッティングによって検出可能なシグナルは観察されなかった。ELISAによって、HCP混入は100ppm未満であることが示され、これは一般的に許容されうると見なされる(Cygnus Technologies)。
【0059】
潜在的な副作用。研究によって、タグ化LRPIV(1μg/日および40μg/kg、腹腔内)で3ヶ月治療したマウスは潜在的な副作用を持たないことが示された(Sagareら、2007)。GAR−LRPIVまたはMT007−LRPIV(20μg静脈内、毎日5日間)で治療したマウス(C57B6)の組織試料および血漿を潜在的な副作用に関して分析したが、まったく観察されなかった。コレステロール、アポE、tPA、プロMMP9、およびグルコースの血漿レベルにおいては有意な変化はなかった。単回静脈内急速投与40μg/kgを投与されたマウスの別個の群(C57BL6、2〜3ヶ月齢)において、2時間後に血液試料を除去し、そして活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)として血漿凝固時間を決定した。これは不変であった。肝臓および脳において、LDLRまたはLRP−1の発現レベルに検出可能な変化はなかった。さらに、リン酸化LRP−1レベルは脳において検出可能な変化はなかった。さらに、脳におけるAPPレベルは、LRPIV治療によって不変であった。GAR−LRPIVまたはMT007−LRPIVはCSFに進入しなかった。
【0060】
参考文献
【0061】
【化1−1】
【0062】
【化1−2】
本明細書に引用する特許、特許出願、書籍、および他の刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0063】
請求項の意味およびその法律的同等物の範囲内にあるすべての修飾および置換は、その範囲内に含まれるものとする。転換句「含む(comprising)」を用いた請求項は、請求項の範囲内に他の要素が含まれることを許す;本発明はまた、「含む」用語の代わりに、転換句「から本質的になる」(すなわち、本発明の運用に実質的に影響を及ぼさないならば、請求項の範囲内に他の要素が含まれることを可能にする)および転換句「からなる」(すなわち、本発明に通常関連する不純物または重要ではない活性以外は、請求項に列挙される要素のみを許す)を用いた請求項によっても記載される。例えば、「クラスターIIおよび/またはクラスターIVから本質的になる」は、他の機能ドメインがAβの結合に影響を及ぼさないならば、該ドメインの包含を可能にする一方、「クラスターIIおよび/またはクラスターIVからなる」は、他の機能ドメインの包含を禁じるであろう。これらの3つの転換句のいずれを用いて、本発明を請求することも可能である。
【0064】
本明細書に記載される要素は、請求項に明確に列挙されない限り、請求する発明の限定と見なされてはならないことを理解すべきである。特に、突然変異体LRP−1は、好ましくはヒトの、LRP−1の天然アミノ酸またはヌクレオチド配列から、欠失させて1またはそれより多いLRP−1ドメインの単位を単離し、挿入して1またはそれより多いLRP−1ドメインを互いに分離し、融合させて間に外来のアミノ酸を含みまたは含まずに1またはそれより多いLRP−1ドメインの単位を連結し、そして天然配列中の1またはそれより多いアミノ酸またはヌクレオチドを置換することによって、想定されうる。したがって、付与される請求項は、法的保護の範囲を決定するための基礎であり、明細書から請求項に限定が読み込まれるのではない。対比して、先行技術は、請求される本発明を予期するかまたは新規性を消滅させる具体的な態様の度合いまで、本発明から排除される。
【0065】
さらに、請求項の制限間またはその中の特定の関係は、請求項に明らかに列挙されない限り、意図されない(例えば、製品請求項中の構成要素の配置または方法請求項中の工程の順序は、明らかに言及されない限り、請求項の制限ではない)。本明細書に開示する個々の要素のすべてのありうる組み合わせおよび順列は、本発明の側面であると見なされる。同様に、本発明の説明の一般化は、本発明の一部と見なされる。
【0066】
前述から、当業者には、本発明がその精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形式で具象化可能であることが明らかであろう。記載される態様は、制限ではなく、例示としてのみ見なされ、これは本発明に提供する法的保護の範囲が、本明細書によるよりも、付随する請求項によって示されるためである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突然変異体低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)であって、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合し、そしてLRP−1の1またはそれより多いカルシウム結合断片において少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、前記LRP−1突然変異体。
【請求項2】
1またはそれより多いカルシウム結合断片内で、突然変異アスパラギン酸にシステインが先行する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項3】
突然変異が、アラニン、グリシン、セリン、およびスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸へのアスパラギン酸の置換であり;好ましくはアスパラギン酸(D)からグリシン(G)への突然変異がある、請求項1または2のLRP−1突然変異体。
【請求項4】
突然変異が、LRPIIにおけるD23G、D64G、D184G、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;好ましくは少なくともD184G突然変異である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項5】
突然変異が、LRPIVにおけるD23G、D63G、D143G、D184G、D225G、D264G、D302G、D343G、D386G、およびその組み合わせからなる群より選択され;好ましくは少なくともD343G突然変異である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項6】
配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、およびその組み合わせからなる群より選択される突然変異カルシウム結合断片;好ましくは少なくとも配列番号8および/または配列番号20を含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項7】
少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、または少なくとも9のカルシウム結合断片;好ましくは12またはそれより少ないカルシウム結合断片を含む、請求項1〜6のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項8】
配列番号2および/または配列番号3を含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項9】
クラスターIIから本質的になり、そしてCR3、CR4、およびCR7からなる群より選択される1またはそれより多いカルシウム結合断片;好ましくは少なくともCR7において、少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項10】
クラスターIVから本質的になり、そしてCR21、CR22、CR24、CR25、CR26、CR27、CR28、CR29、およびCR30からなる群より選択される1またはそれより多いカルシウム結合断片;好ましくは少なくともCR29において、少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項11】
分泌を仲介する少なくとも1つのドメインで構成される、請求項1〜10のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項12】
可溶性である請求項1〜11のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項13】
膜貫通ドメインで構成されない、請求項12のLRP−1突然変異体。
【請求項14】
ヒト由来である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項15】
ヒトにおいて免疫反応を誘発しない、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項16】
少なくとも1つの異種ドメインをさらに含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項17】
(i)請求項1〜16のいずれか一項におけるような突然変異体LRP−1および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容されうるキャリアーで構成される、Aβを不活性化させるための組成物。
【請求項18】
(i)請求項1〜16のいずれか一項におけるような突然変異体LRP−1および(ii)少なくとも1つの検出可能標識で構成される、Aβを検出するための診断組成物。
【請求項19】
前記突然変異体LRP−1および前記の少なくとも1つの検出可能標識が共有結合している、請求項18の診断組成物。
【請求項20】
前記突然変異体LRP−1および前記の少なくとも1つの検出可能標識が共有結合していない、請求項18の診断組成物。
【請求項21】
前記の少なくとも1つの検出可能標識が、前記突然変異体LRP−1の異種ドメインに共有結合している、請求項18の診断組成物。
【請求項22】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)の1またはそれより多いカルシウム結合断片においてアスパラギン酸の突然変異を持たないLRP−1誘導体よりも高いアフィニティでアミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合する、薬剤または診断剤の製造のための、LRP−1突然変異体誘導体の使用。
【請求項23】
被験体の体液および/または組織におけるアミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合させる方法であって:
(a)可溶性低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)突然変異体を提供し、そして
(b)前記可溶性LRP−1突然変異体を、前記Aβが特異的に結合されるように、前記被験体の少なくとも前記体液および/または組織と接触させる
工程を含む、前記方法。
【請求項24】
前記可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体の体内で、前記Aβに結合する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体の体外で、前記Aβに結合する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体を、前記被験体の体から除去する、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体体内のアミロイド沈着が減少するように不活性化される、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体を検出する工程をさらに含む、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
Aβが、血液、血漿、血清、間質液(ISF)、および脳脊髄液(CSF)からなる群より選択される体液中で結合している、請求項23〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
Aβが、脳および他の中枢神経系組織、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、およびその組み合わせ;大脳動脈、内膜血管、および側頭動脈からなる群より選択される組織、好ましくは血管内皮中で結合している、請求項23〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
天然低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)よりも少なくとも10倍高いアフィニティで、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合する、突然変異体LRP−1突然変異体の使用。
【請求項32】
被験体の体からAβを除去するための、請求項31記載の使用。
【請求項33】
被験体の体におけるアミロイド沈着を減少させるための、請求項31記載の使用。
【請求項34】
被験体の体におけるAβを位置決定するための、請求項31記載の使用。
【請求項35】
被験体の体におけるアミロイドとしてのAβの沈着を防止する、請求項31記載の使用。
【請求項1】
突然変異体低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)であって、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合し、そしてLRP−1の1またはそれより多いカルシウム結合断片において少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、前記LRP−1突然変異体。
【請求項2】
1またはそれより多いカルシウム結合断片内で、突然変異アスパラギン酸にシステインが先行する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項3】
突然変異が、アラニン、グリシン、セリン、およびスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸へのアスパラギン酸の置換であり;好ましくはアスパラギン酸(D)からグリシン(G)への突然変異がある、請求項1または2のLRP−1突然変異体。
【請求項4】
突然変異が、LRPIIにおけるD23G、D64G、D184G、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;好ましくは少なくともD184G突然変異である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項5】
突然変異が、LRPIVにおけるD23G、D63G、D143G、D184G、D225G、D264G、D302G、D343G、D386G、およびその組み合わせからなる群より選択され;好ましくは少なくともD343G突然変異である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項6】
配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、およびその組み合わせからなる群より選択される突然変異カルシウム結合断片;好ましくは少なくとも配列番号8および/または配列番号20を含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項7】
少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、または少なくとも9のカルシウム結合断片;好ましくは12またはそれより少ないカルシウム結合断片を含む、請求項1〜6のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項8】
配列番号2および/または配列番号3を含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項9】
クラスターIIから本質的になり、そしてCR3、CR4、およびCR7からなる群より選択される1またはそれより多いカルシウム結合断片;好ましくは少なくともCR7において、少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項10】
クラスターIVから本質的になり、そしてCR21、CR22、CR24、CR25、CR26、CR27、CR28、CR29、およびCR30からなる群より選択される1またはそれより多いカルシウム結合断片;好ましくは少なくともCR29において、少なくとも1つのアスパラギン酸突然変異を有する、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項11】
分泌を仲介する少なくとも1つのドメインで構成される、請求項1〜10のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項12】
可溶性である請求項1〜11のいずれか一項のLRP−1突然変異体。
【請求項13】
膜貫通ドメインで構成されない、請求項12のLRP−1突然変異体。
【請求項14】
ヒト由来である、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項15】
ヒトにおいて免疫反応を誘発しない、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項16】
少なくとも1つの異種ドメインをさらに含む、請求項1のLRP−1突然変異体。
【請求項17】
(i)請求項1〜16のいずれか一項におけるような突然変異体LRP−1および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容されうるキャリアーで構成される、Aβを不活性化させるための組成物。
【請求項18】
(i)請求項1〜16のいずれか一項におけるような突然変異体LRP−1および(ii)少なくとも1つの検出可能標識で構成される、Aβを検出するための診断組成物。
【請求項19】
前記突然変異体LRP−1および前記の少なくとも1つの検出可能標識が共有結合している、請求項18の診断組成物。
【請求項20】
前記突然変異体LRP−1および前記の少なくとも1つの検出可能標識が共有結合していない、請求項18の診断組成物。
【請求項21】
前記の少なくとも1つの検出可能標識が、前記突然変異体LRP−1の異種ドメインに共有結合している、請求項18の診断組成物。
【請求項22】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)の1またはそれより多いカルシウム結合断片においてアスパラギン酸の突然変異を持たないLRP−1誘導体よりも高いアフィニティでアミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合する、薬剤または診断剤の製造のための、LRP−1突然変異体誘導体の使用。
【請求項23】
被験体の体液および/または組織におけるアミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合させる方法であって:
(a)可溶性低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)突然変異体を提供し、そして
(b)前記可溶性LRP−1突然変異体を、前記Aβが特異的に結合されるように、前記被験体の少なくとも前記体液および/または組織と接触させる
工程を含む、前記方法。
【請求項24】
前記可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体の体内で、前記Aβに結合する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体の体外で、前記Aβに結合する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体を、前記被験体の体から除去する、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体が、前記被験体体内のアミロイド沈着が減少するように不活性化される、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
Aβに結合した可溶性LRP−1突然変異体を検出する工程をさらに含む、請求項23〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
Aβが、血液、血漿、血清、間質液(ISF)、および脳脊髄液(CSF)からなる群より選択される体液中で結合している、請求項23〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
Aβが、脳および他の中枢神経系組織、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、およびその組み合わせ;大脳動脈、内膜血管、および側頭動脈からなる群より選択される組織、好ましくは血管内皮中で結合している、請求項23〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
天然低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質−1(LRP−1)よりも少なくとも10倍高いアフィニティで、アミロイド−ベータ(Aβ)ペプチドに結合する、突然変異体LRP−1突然変異体の使用。
【請求項32】
被験体の体からAβを除去するための、請求項31記載の使用。
【請求項33】
被験体の体におけるアミロイド沈着を減少させるための、請求項31記載の使用。
【請求項34】
被験体の体におけるAβを位置決定するための、請求項31記載の使用。
【請求項35】
被験体の体におけるアミロイドとしてのAβの沈着を防止する、請求項31記載の使用。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【図1−2】
【図1−3】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【公表番号】特表2013−507917(P2013−507917A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534177(P2012−534177)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/002769
【国際公開番号】WO2011/046622
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512099932)ズィーズィー・アルツテック・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/002769
【国際公開番号】WO2011/046622
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512099932)ズィーズィー・アルツテック・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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