説明

アルツハイマー病の予防用及び処置用免疫原性ペプチド組成物

【課題】アルツハイマー病の予防及び処置に有用なペプチド免疫原を有する組成物の提供。
【解決手段】MHC結合モチーフの種々のクラスIIを有するヘルパーT細胞エピトープ(Th)と結合する、主要な機能性/制御部位、アミロイドβ(Aβ)ペプチドのN末端フラグメントを有するペプチド免疫原であり、Aβペプチドの主要な機能性/制御部位に対して、部位配向性免疫応答を導き出し、抗体を生成する、該抗体は、可溶性Aβ1−42ペプチド及びアルツハイマー病の患者の脳で形成されるアミロイドプラークと高い交差反応性を有する、ペプチド免疫原。
【効果】可溶性Aβ1−42ペプチドと交差反応性である、導き出された抗体は、フィブリル離解を促進し、「可溶性Aβ由来毒」の免疫中性化を導くフィブリル凝集を抑制し、アミロイドプラークと交差反応性であり、脳からの該プラークの浄化を促進する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病の予防及び処置に有用なペプチド免疫原を有する組成物に関する。特に、ペプチド免疫原は、MHC結合モチーフの種々のクラスIIを有するヘルパーT細胞エピトープ(Th)に結合される、主要な機能性/制御部位、アミロイドβ(Aβ)ペプチドのN末端フラグメントを有する。ペプチド免疫原は、Aβペプチドの主要な機能性/制御部位に対して、部位配向性(site-directed)の免疫応答を導き出し、抗体を生成する。該抗体は、可溶性Aβ1−42ペプチド及びアルツハイマー病の患者の脳で形成されるアミロイドプラークと高い交差反応性を有する。可溶性Aβ1−42ペプチドと交差反応性である、導き出された抗体は、フィブリル離解(disaggregation)を促進し、「可溶性Aβ由来毒」の免疫中性化(immunoneutoralization)を導くフィブリル凝集を抑制し、アミロイドプラークと交差反応性であり、脳からの該プラークの浄化を促進する。したがって、ペプチド免疫原を有する本発明の組成物は、アルツハイマー病の予防及び処置に有用である。
【発明の背景】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、患者の認識能力の欠損及び重篤な挙動異常性によって特徴づけられ、最後には患者の死を導く、慢性の神経変性疾患である。現在、米国には250万人〜400万人、世界には1700万人〜2500万人のAD患者が存在する。西洋社会では、心臓病、ガン、及び発作に次いで、死亡原因の第4位にある。アリセプト(ARICEPT)(商標)、アセチルコリンステラーゼ抑制剤は、アルツハイマー患者の衰える速度を減速させるものとしてFDAによって認められている。しかしながら、ある限られた期間及びある患者にだけに有効である。現在まで、このひどい病気に対する決定的な処置又は治療法はない。
【0003】
2種の微小な沈着物、即ち神経細線維もつれ(neurofibrillary tangle)(NFT)及び老人性アミロイドプラークは、この病気の病理学上の顕著な特徴としてアロイス・アルツハイマーによって同定された。神経細線維もつれは、互いにねじれている、2つの10nm幅のフィラメントからなり、一対のらせんフィラメント(paired helical filaments)(PHFs)と呼ばれており、その主要な成分はリン酸化タウである。タウタンパク質の262位のアミノ酸のセリンのリン酸化は、タウの生理学的な機能不全を導く重要な工程である。PHFsは、細胞内であり、異常な樹状の工程及び軸索工程、又は老人性アミロイドプラークの周辺を作る神経突起の多くで観察される。老人性アミロイドプラークは、アミロイド沈着物の細胞核と共に、横断面が150μmまでの面積での組織破壊された神経網フィラメントからなる。脳のアミロイドプラークは、PHFsとは超構造的に異なり、対をなしてねじれていない、4〜8nm幅のフィラメントである。プラーク核は、ペプチドの凝集体からなり、初期段階ではA4と呼ばれ、相対分子量(M)が約4000である(マスターズ(Masters)ら、Proc Natl Acad Sci USA、1985、82:4245-4249)。
【0004】
現在はアミロイドβペプチド(又はAβ1−42)と名前を変えた、A4の一部のアミノ酸配列は、それがアルツハイマー病又はダウン症候群の患者の脳血管から単離されたアミロイドβタンパク質と類似することがわかった(グレンナー(Glenner)及びワン(Wong)、Biochem Biophys Res Comm, 1984; 120: 885-890; 122: 1131-1135)。
【0005】
Aβ1−42は、多くの理由から、ADと関連すると仮説されている。第一に、周辺アミロイド症、例えば原発性L鎖病又は続発性AAアミロイド症において、大きなアミロイドの負担は、組織及び器官の機能不全に関連する。第二に、アミロイドプラーク密度は、ADの生前痴呆スコア(premortem demetia score)に積極的に関連する。第三に、Aβ1−42沈着は、AD及びダウン症候群などの関連する疾患における神経病理学上の初期的なマーカーであり、それは、NFT形成よりも20〜30年先んじることができる。第四に、β−アミロイド症は、AD及び関連する疾患に比較的に特異性である。第五に、Aβ1−42は、ニューロンにとって有毒である(ヤンクナー(Yankner)ら、Science, 1990; 250: 279-282)。最後に、構造的なアミロイド前駆タンパク質(APP)遺伝子におけるミスセンス突然変異は、家族性ADの初期兆候に生じる(ゲーテ(Goate)ら、Nature, 1991; 349: 704-706;ミュラン(Mullan)ら、Nature Genetics, 1992; 1: 345-347)。特に、そのような突然変異によって劇的なAβ1−42過生産が引き起こされる(シトロン(Citron)ら、Nature, 1992; 360: 672-674)。
【0006】
1987年、カング(Kang)ら(Nature, 1987; 325: 733-737)及び他の3つのグループ(アンダートン(Anderton)の1987年状況報告、Nature, 1987; 325: 658-659及びバーンズ(Barnes)、Science, 1987; 235: 846-847)は、それぞれ独立に、Aβ1−42が由来する遺伝子をクローン化した。今やアミロイド前駆タンパク質(APP)として知られている、この遺伝子は、実質的にすべての組織で発現される、MW:約79,000の695個のアミノ酸残基からなるタンパク質をコードする。APPのスプライシング可変体は少なくとも5種あり、そのうちの4種は、β−アミロイドペプチド配列を含んでいる。
【0007】
4種の遺伝子は、ADの家族性形態で、含まれている。この遺伝子の3種、βAPP、プレセニリン1(presenilin 1)及びプレセニリン2(presenilin 2)は、変異されると、ADの常染色体の支配的な初期形態を生じる。第4種目の遺伝子、アポリポプロテインE(Apolipoprotein E)は、天然の多形態、ApoE4を有し、この疾患の進行を主な遺伝学的な危険因子を表す。いくつかの明白な遺伝子における変化によって、当初は42残基、その後40残基のペプチドが細胞毒プラークへと結果的に凝集すると共に、Aβ1−42産生とその浄化における慢性的なアンバランスをもたらすことができるという概念は、入手可能な証拠によって支持されている。この証拠は、これらの4種の遺伝子の各々における欠陥が、(1) Aβ1−42ペプチドの産生及び/又は沈着を増大させることにより、又は(2)組織からのApoE4の浄化を減少させることにより、AD表現型の素因をつくることをを強く支持している(セルコー(Selkoe)、J. Biol. Chem., 1996; 271: 18295-18298)。
【0008】
入手データから、多分相互に関連づけられるある範囲のメカニズムにより、凝集するが単量体ではないAβ1−42ペプチドが細胞機能不全及びインビトロの細胞死を誘発できることがわかる。これらには、酸化損傷(トーマス(Thomas)ら、Nature, 1996; 380: 168-171;ベール(Behl)ら、Cell, 1994; 77: 817-827)、細胞内カルシウムホメオスタシスの変化(アリスペ(Arispe)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993; 90: 567-571)、及び細胞骨格再構成(ブシグリオ(Busciglio)ら、Neuron, 1995; 14: 879-888)が含まれる。アミロイド誘発カスケードにおける主要な工程のいくつかを十分に知ることは、該カスケード仮説が熱く議論されていたとしても、生じてくる。
【0009】
アミロイド誘発カスケードの一工程又はその他の工程を阻害することができる小分子を同定する医薬上のアプローチが順調に進行中である。特に興味深いことは、2つのアプローチである。ニューロン細胞又は神経膠細胞からのAβ1−42ペプチドの分泌を減少させることによりAβ1−42ペプチドの凝集を妨害する試み又はこれらの細胞外凝集体がニューロン細胞又は神経膠細胞及びその方法を産生する毒性を阻害する試みである。第三のアプローチは、凝集化Aβ1−42(微小神経膠刺激、古典的な補カスケードの活性、サイトカイン放出、及び反応性星状細胞を含む)によってトリガーされることがわかっている特別な炎症反応を制御する試みは、アルツハイマー患者にとって有益であるものと立証されるかもしれない。
【0010】
AD介入の上述の医薬上のアプローチと異なり、免疫学的な介入も試みられている。ソロマン(Soloman)ら(Proc. Natl. Acad. Sci., 1996; 93: 452-455;Proc. Natl. Aca. Sci., 1997; 94: 4109-4112)は、ヒトAβ1−42ペプチドのN末端領域の部位に向けた、3種の特異的なモノクローナル抗体が、前もって形成されたフィブリルに異なる度合いで結合し、神経毒性効果の離解(disaggregation)及び阻害をもたらすことを示した。これらの抗体は、原繊維Aβ1−42の形成を防止することもわかった。ソロマンら(WO01/18169)は、Aβ1−42ペプチドのエピトープのファージディスプレイ(phage display)を調製し、ファージ表示エピトープ又は該エピトープを含有するペプチドをマウスに腹腔内投与し、抗体をAβ1−42ペプチドに導き出すことも試みた。ラットのフェノクロモサイトーマ(phenochromocytoma)でのインビトロ試験により、抗血清の1:5希釈物がAβ1−42ペプチドの神経毒性を予防することがわかった。1:5及び1:20での希釈物の抗血清は、フィブリル形態の甚大な悪化と共に、Aβのフィブリル構造をインビトロで粉砕することもわかった。しかしながら、第一の注入に用いたアジュバントは、フロイント完全アジュバントであり、第二の注入には、フロイント不完全アジュバントであった。用いたアジュバントは全て、ヒトに用いるには不適切である。また、これらの粗いアジュバントを用いたにも関わらず、生成した抗体のレベルは低いので有効ではない。
【0011】
次に、シェンク(Schenk)ら(Nature, 1999; 400: 173-177)は、Aβ1−42ペプチドでの免疫化が、ADのマウスモデルにおいて、アミロイドプラーク及び関連するジストロフィー神経突起の形成を阻害することを示した。しかしながら、Aβ1−42ペプチドの低免疫原性のため、使用した方法は、粗い病変形成アジュバントでの抗原の繰り返し投与を要し、プラーク形成に影響を及ぼすのに必要な抗Aβ1−42プラーク抗体を高レベルで得た。また、Aβ1−42ペプチドでの免疫化は、毒性のアミロイドそのもののさらなる蓄積を誘発するかもしれないことに留意すべきであった(アラウヨ(Araujo, DM)及びコットマン(Cotman, CW)、Brain Res., 1992: 569; 141-145)。
【0012】
これらの批評にも関わらず、類似の活性免疫化によるトランスジェニックADマウスモデルでのさらなる研究は、ADの免疫予防学的アプローチ及び免疫療法的アプローチに信用を与えた。ジェーナス(Janus)ら(Nature, 2000; 408: 979-982)は、挙動障害及びプラークを減少させる、ADのためのマウスモデルでのAβ1−42ペプチド免疫化を記述する。モルガン(Morgan)ら(Nature, 2000; 408: 982-985)は、マウスモデルにおける記憶欠失を予防するAβ1−42ペプチドワクチン化を記述する。
【0013】
免疫治療の有効性を直接的に支持するものは、Aβ−ペプチドに対する抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の周辺投与がアミロイドの負担を減少させる観察から由来する(WO99/27944;バード(Bard)ら、Nature Medicine, 2000; 6: 916-919)。比較的穏やかな血清レベルであるために、これらの受動的に投与された抗体、モノクローナル3D6(抗Aβ1−5)及び10D5(抗Aβ1−12)又はポリクローナル抗Aβ1−42、は、中枢神経系に入ることができた。そこで、抗体は、プラークに結合し、存在するアミロイドプラークの浄化を誘発した。バードらは、PDAPPマウス(即ち、血小板由来成長因子プロモータによって導かれるAPPミニ遺伝子でトランスジェニックされたマウス)の脳断面又はAD患者の脳組織で生体外(ex vivo)アッセイで検査したとき、Aβ−ペプチドに対する抗体は、小膠細胞へトリガーを引き、Fc受容体仲介食菌作用及びそれに続くペプチド崩壊によりプラークを浄化させることを報告した。この研究は、受動的に投与された、Aβ1−42ペプチドに対する抗体及びAβ1−42N末端領域が、ADのマウスモデルのプラーク沈着の程度を減少させること;及び部位配向性ワクチンによって導き出されたモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体が治療学上関連性の高いレベルでCNSへ入ることができることを例証した。
【0014】
ADのためのマウスモデルにおける免疫学上の仲介の見込みのある発見にも関わらず、ヒトに適切な対ADワクチンは、遙か遠くに存在する(チャップマン(Chapman)、Nature, 2000; 408: 915-916)。主要なハードルは、ヒトに有用な免疫原性組成物を設計及び配合するのに必要な熱心な研究にあり、それによりはじめて、ADへの実際的なワクチンを達成できる。ガイドとなる実験データに基づくいくつかの問題として次のものがある。(1)Aβ内の抗体認識の特異的ターゲット部位はどれであるのか?。(2)免疫原はどんな形態で存在すべきであるのか?。(3)治療学的なレベルにある抗体を導き出す抗原を達成する前に、他のどんな部位を含む必要があるのか?。(4)ヒトへの臨床学上許容可能なアジュバントを用いる有効なワクチン配送システムは何であるのか?。
【0015】
文献に開示されていることと為すべきとして存在していることとには大きなギャップがある。適切な特異的ターゲット部位(即ち、重合体化Aβ1−42プラーク又は単量体可溶性Aβ1−42ペプチド)は何なのか、及び特異的部位は、免疫学上の介入にはどのように機能させるべきであるのか。過去10年間に亘ってAβ1−42に関する5,000もの文献があるにも関わらず、アミロイドカスケード仮説は、熱く語られており、その問題:介入に用いられるべきAβ1−42の形態は、議論が続いている。テリー(Terry)及びその仲間によって議論されている、問題の心臓部は、原繊維アミロイド負荷と神経学的な機能不全の測定との間の弱い関連性である(『アルツハイマー病の神経病理学及びその変更の構造的基礎(The Neuropathology of Alzheimer Disease and the Structure Basis of its Alterations)』、テリーら編、アルツハイマー病(Alzheimer Disease)、p.187-206、Lippincott Williams and Wilkins, 1999)。
【0016】
AD患者において、アミロイド沈着物はしばしば、ニューロンの損傷部位から離れて形成される。病理学的痴呆との最も関連することは、シナプス末端の欠損である。しかしながら、シナプス末端の欠損は、アミロイド負荷とほとんど関連がない。病気の発現がアミロイド負荷と弱く関連しているならば、Aβの役割は何であるのか?。クライン(Klein)らの文献、タイトル“Targeting small Aβ1−42 oligomers: the solution to an Alzheimer’s desease conumdrum?”(Trends in Neurosciences, 2001; 24: 219-224)は、フィブリルがAβの毒性形態であるだけでなく、ADに最も関連がある神経毒でも多分あることを示唆している。小オリゴマー及びプロトフィブリルは、Aβ1−42由来拡散性リガンドとも呼ばれ、神経学上、潜在的な毒性活性を有しているのかもしれない。
【0017】
成功裡にある免疫学上の仲介としてのADワクチンは、高い親和性を有する部位配向性抗体を導き出すように設計される免疫原を要する。この抗体は、脳組織の老人性プラークと結合し、神経膠細胞によりプラークの浄化を促進し、可溶性Aβ由来毒を免疫中性化(immunoneutralize)する。
【0018】
免疫原性に乏しい部位特異性(site-specific)ペプチドに対する部位配向性抗体の親和性を高く上げる問題は、10年間知られている。免疫学者及びワクチン学者はしばしば、WO99/27944に例証される、古典的なハプテン[ペプチド]キャリアタンパク質共役物(conjugate)アプローチに頼る。ADに対する部位配向性ワクチンの開発に関して、フレンケル(Frenkel)らは、上述したように”EFRH”ファージ投与によるAβ1−42プラークに対する免疫化を試みた(Proc. Natl. Acad. Sci., 2000; 97: 11455-11459、WO01/18169)。
【0019】
Aβ1−42ペプチド凝集体又はAβ1−42ペプチドフラグメント−キャリアタンパク質共役物(WO99/27944)を用いるアプローチ、及び試薬として”EFRHペプチド”を表示するフィラメントファージを用いて患者のアミロイド沈着に対する免疫応答を誘発するアプローチは、扱いにくく且つ効果的でない。例えば、EFRHエピトープを表示する1011ファージの4回目の免疫化後、モルモット免疫血清中の抗体の>95%が該ファージに対抗する。抗体の少量のみ(<5%)が、可溶性Aβ1−42ペプチドに対抗する(フレンケル(Frenkel)ら、Vaccine 2001, 19: 2615-2619、WO01/18169)。
【0020】
より扱いにくくない方法は、EP526,511及びWO99/27944に記載されている。これらは、既に確立されたADの患者を処置するためにAβ1−42ペプチドを投与すること、及びAD患者の“有効な”免疫応答を発生する条件下でAβ1−42又は他の免疫原を患者に投与することを開示する。しかしながら、WO99/27944を見ると、そこに開示されるワクチン設計には欠陥があることがわかる。
【0021】
特に、医薬上許容可能な且つ有効なワクチン配送システムの欠如に問題がある。WO99/27944は、活性ワクチン成分として、Aβ1−42ペプチド又はコレラ毒のようなキャリア分子に共役するAβ1−42の活性フラグメントを開示する。WO 99/27944の4頁を参照のこと。免疫原を含有する医薬組成物は、フロイント完全アジュバント[CFA]を含むべきではないことを第5頁は示唆しているが、トランスジェニックマウスのADの処置のためのAβ1−42ワクチンの効験を示す実施例のみが、CFA中に大量の凝集化Aβ42ペプチドを用いていた。免疫応答を向上させるのに開示される免疫原性試薬と共に用いられるべき好ましいアジュバントが反復的に詳説されているにも関わらず、CFA/ICFAを用いる配合物のみが抗体の十分な高力価をもたらすことを実験データは示していた。WO99/27944の25頁を参照のこと。実施例1において、ADに対するAβ1−42の予防効験がPDAPPマウスにおいて例証されていた。しかしながら、投与された配合物は、マウス当たりフロイント完全アジュバント[CFA]でエマルション化された凝集化Aβ1−42100μgの量(WO99/27944の34頁)、次いで、フロイント不完全アジュバントでエマルション化した同一のAβ1−42ペプチドの多数の追加投与(booster)を含む。実施例IXにおいて、異なるアジュバントに対するマウスでの免疫応答が研究された。潜在的な免疫原と称されるAN1792(即ち凝集化ヒトAβ42)と共にアジュバント:MPL、ミョウバン(Alum)、QS21、及びCFA/ICFAを用いたとき、Aβ1−4に対する抗体のレベルは、CFA/ICFAワクチンを受けたマウスと比較して統計学上著しく減少した。WO99/27944の表9及び59〜64頁を参照のこと。
【0022】
Aβ1−42ペプチドフラグメントを用いた場合(アミノ酸1〜5、1〜12、13〜28、及び33〜42のヒトAβ1−42ペプチド)、各フラグメントは、タンパク質キャリアとしてのヒツジ抗マウスIgGと結合した。後述の文献において、Aβペプチドフラグメントに対する抗体の効験は、モノクローナル抗体での受動的免疫化によってのみ示すことができた(バード(Bard)ら、Nature Medicine 2000; 6: 916-919)。ヒツジ抗マウスIgGと結合した、これらのフラグメントの効験は、示されなかった。よって、有効であると示された唯一の免疫原は、CFA/ICFA中の凝集化Aβ1−42ペプチドであった。
【0023】
現在まで、有効であると示されたワクチン配合物はすべて、アジュバントとしてCFA/IFAを使用していた。よって、Aβ1−42をターゲットとするペプチド免疫原は、ヒツジ抗マウスイムノグロブリンへの様々なAβ1−42フラグメントの共役物、抗CD3抗体へのm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを介した合成Aβ13−28の共役物、又は凝集化Aβ1−42ペプチドのみによって調製されている。これらの免疫原、即ちAβ42ペプチドそのもの又はAβ1−42ペプチド−キャリアタンパク質共役物は、第1の免疫化のために、フロイント完全アジュバントでエマルション化され、次いでフロイント不完全アジュバント中でさらに追加投与した(boost)(ジョンソン-ウッド(Johnson-Wood)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997; 94: 1550-1555;ジェーナス(Janus)ら、Nature, 2000; 408: 979-982;モルガン(Morgan)ら、Nature, 2000; 408: 982-985)。WO99/27944又はCFA及びICFAをアジュバントとして用いるその他の文献に開示される配合物は、障害を引き起こし、ヒトへの使用にはあまりに粗すぎる。したがって、ヒトへの使用に適切なAD用ワクチン組成物は先行技術には開示されていない。
【0024】
要約すると、クライン(EP526,511)の先の開示によると、ADの処置のためのAβ1−42ペプチドの潜在能力を示唆する言及があるにも関わらず、ワクチン配合物を解決する課題は、このキーとなる課題を向けたものをWO99/27944には実際には提供されていない。
【0025】
ペプチド−キャリアタンパク質共役物及びAβ1−42凝集体での他の不利益は、これらの分子が非常に複雑であり且つ同定しにくいことであり、製造方法に関する有効な質的制御工程を開発するのが困難である。さらなる不利益は、Aβ1−42ペプチド又はそのフラグメントがヒトに投与されると、それらが自身の分子(self molecule)であることである。よって、ヒトにおいてより免疫原性であるか又はより非免疫原性である。したがって、ヒトに投与するための臨床上利用可能なワクチン配合物を開発することが必要である。
【0026】
乱雑な(promiscuous)Thエピトープを用いて、有効なT細胞ヘルプを引き起こすことができ、免疫原性に乏しいB細胞エピトープと結合して潜在的な免疫原を提供することができる。よく設計された、乱雑なTh/B細胞エピトープ・キメラペプチドは、Th応答及び異なるMHCハプロタイプを発現する遺伝学上異なる母集団の大抵の種において得られる抗体反応を導き出す際において有効であることが分かっている。はしかウイルスFタンパク質及びB型ウイルス性肝炎表面抗原などの多くの病原体由来の乱雑なThが知られている。表1及び表2は、短くて免疫原性の乏しいペプチド、デカペプチドホルモンLHRH(US5,759,511及び6,025,468)を強化するのに有効であることがわかっている既知の乱雑なThの多くをリストアップする。
【0027】
潜在的なThエピトープは、その大きさが約15〜40長のアミノ酸残基の範囲にあり、共通の構造的特徴をしばしば共有し、且つ特異的な目印となる配列を含むことができる。例えば、Thの共通の特徴は、疎水性アミノ酸残基がらせんの一表面を支配し、荷電及び極性残基が周表面を支配する両親媒性らせん、αらせん構造を含むことにある(シーズ(Cease)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1987; 84: 4249-4253)。Thエピトープは、Gly又は荷電残基についで2つ又は3つの疎水性残基、さらに1つの荷電又は極性残基が続くような、さらなる第一のアミノ酸パターンを含むことがしばしばである。このパターンは、ロスバード(Rothbard)配列と呼ばれるものである。Thエピトープはしばしば、正荷電残基が荷電残基後の第4番目、第5番目及び第8番目の位置で疎水性残基に次いであるという、規則1、4、5及び8に従う。これらの構造は全て、共通の疎水性アミノ酸、荷電極性アミノ酸を有してなるので、各構造は単一のThエピトープ内で同時に存在することができる(パーチドス(Partidos)ら、J. Gen. Virol., 1991; 72: 1293)。乱雑なT細胞エピトープの全てではないが、ほとんどが、上述の周期性の少なくとも1つにフィットする。これらの特徴は、組合せThエピトープを含む、理想化人工Th部位の設計に含むことができる。組合せTh部位の設計に関して、可変可能な位置及び好ましいアミノ酸のリストがMHC結合モチーフに利用可能である(マイスター(Meister)ら、Vaccine, 1995; 13: 581-591)。なお、組合せThの製造方法は、構造化合成抗原ライブラリーと呼ばれる組合せライブラリーペプチドに開示されている(ワン(Wang)ら、WO95/11998)。よって、規則1、4、5及び8は、組合せTh部位における不変且つ縮退した位置を示し、かつ人工Thの免疫応答性の範囲を大きく広げる縮退部位のための残基を選択する既知の組合せMHC結合モチーフと共に、適用することができる。表2、WO99/66957、及びWO95/11998を参照のこと。
【0028】
ワン(Wang)ら(US5,759,551)は、免疫刺激性要素を用いて自身タンパク質アミリン(Amylin)を免疫原性にすることを示唆した。ワンらは、非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)、アミリンの過産生により引き起こされるアミロイド原性疾患の処置用ワクチンとして免疫原性合成アミリンペプチドを投与することを示唆した(US5,759,551の第19欄9〜39行)。アミリンは、ランゲルハンス島のβ細胞によって産生されるアミノ酸残基37個のペプチドホルモンである。アミリンの過産生の結果、膵臓内のアミロイド原性疾患を導く不溶性アミロイドの沈着が生じる。アミリンの過産生と同様に、Aβ1−42ペプチドの過産生により、AD患者の脳内に不溶性アミロイドの沈着が導かれる。しかしながら、アミリンとAβ1−42ペプチドとでは、限定された配列相同関係しか存在しない。アミリン32−35のアミノ酸残基の短い伸縮、VGSNだけが、Aβ24−27に相当する。アミリンペプチドに対して産生される抗体は、可溶性Aβ1−42ペプチドに交差反応性ではないと予想され、且つEFRH配列が重要であることが示されているソロマン(Soloman)ら及びシェンク(Schenk)らによる研究によると、脳内のアミロイドプラークの浄化を促進しないと予想される。
【0029】
AD患者の脳内の老人性プラークに対して高い交差反応性を有する、Aβ1−42ペプチドのN末端機能性部位に対して高い親和性の抗体を高レベルで生成することができる免疫原を開発することが本発明の目的である。Aβ1−42ペプチド及び老人性プラークに結合することによって生成する、この抗体は、これらのプラークを脳から浄化することを促進し、フィブリル離解を促進し、繊維原凝集を阻害し、かつ『可溶性Aβ由来毒』[Aβ由来拡散性リガンド又はADDLsとも言う]を免疫中性化することが予想される。
【0030】
また、本発明の目的は、アルツハイマー病の予防及び処置のためのヒト用又は獣医学用に適切であるワクチン配送ビヒクルを開発することにある。
【発明の簡単な説明】
【0031】
本発明は、可溶性Aβ1−42ペプチド及びアルツハイマー病(AD)患者の脳のプラークの双方に高い交差反応性を有する、Aβペプチドの主要な機能性/調節部位に対する抗体を誘発できる合成ペプチドを含有する免疫原性組成物に関する。免疫原性組成物は、それをAD患者又はADに感染しやすい者に投与すると、脳内のアミロイドプラークの浄化及び可溶性Aβ由来毒の免疫中性化を促進しADを予防且つ処置することが期待される。特に、本発明のペプチド免疫原は、Aβ1−42ペプチドのEFRH、配列番号65、又はAβ1−42ペプチドフラグメントの免疫学上機能性類似体を含有する10〜28個のアミノ酸残基からなる群から選ばれるN末端Aβ1−42ペプチドの短いフラグメントに結合する配列番号1〜64からなる群から選ばれるThエピトープ及びそれらの免疫学上機能性類似体を含有する。好ましくは、Aβ1−42ペプチドフラグメントは、配列番号66〜69又はそれらの免疫学上機能性類似体からなる群から選ばれる。
【0032】
また、本発明は、リポシン(liposyn)、サポニン(saponin)、スクアレン、L121、エマルジゲン(emulsigen)・モノホスフィリル脂質A(MPL)、ポリソルベート80、QS21、モンタニド(Montanide)ISA51、ISA35、ISA206及びISA720並びに他のアジュバント及び乳化剤からなる群から選ばれるアジュバント又は乳化剤を含有する医薬上許容可能なワクチン配合物中に免疫学上有効量のペプチド組成物を含有する免疫原性組成物を提供する。
【0033】
また、本発明は、1種又はそれ以上の免疫原性ペプチドをホ乳類に、ある期間、Aβ1−42ペプチドの機能性/調節部位に対する抗体を誘発するのに十分な条件下で投与することにより、アミロイドプラークの浄化促進及び可溶性Aβ由来毒の中性化を誘発しホ乳類のアルツハイマー病を予防及び処置する方法を提供する。本発明のワクチンの典型例は、医薬上許容可能なアジュバント及び/又はキャリア中の油中水滴型エマルションとして配合されるワクチン中に、ペプチド免疫原を5〜1000μg含有するペプチド組成物である。ワクチンの典型的な投与法は、0、4週間、及び8週間のインターバルの免疫化スケジュールで、1回の投与当たり0.5〜2mLでワクチン配合物を筋内注射するものである。
【0034】
本発明のさらなる他の面は、各フラグメントがAβ1−42ペプチドのアミノ酸残基1を含有する、10〜28個のアミノ酸からなる群から選ばれるN末端Aβ1−42ペプチドフラグメントに結合するヘルパーT細胞(Th)エピトープからなる約30〜約60個のアミノ酸の免疫原性合成ペプチドに関する。D、アスパラギン酸をアミノ酸残基1と称する、配列番号65を参照のこと。好ましくは、N末端Aβ1−42ペプチドフラグメントは、配列番号66〜69又はAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントのペプチド類似体からなる群から選ばれる。免疫原性領域を分離するアミノ酸スペーサを任意に含んでもよい。スペーサにより分離される免疫原性領域の要素は、ペプチドハプテンの免疫反応性が実質的に維持されるか又はN末端Aβペプチドフラグメント、可溶性Aβ1−42ペプチド及びプラークへの免疫反応性が発生することを条件として、いかなる順序でも共有結合することができる。
【0035】
N末端Aβ1−42フラグメント免疫原への合成ペプチドの免疫原性に影響を与える重要な因子は、Tヘルパー細胞エピトープ(Th)による免疫系への存在である。このようなThは、ターゲットとなるAβペプチドにとって外来性である離間したThペプチド領域要素上に配置される外来Thエピトープによるペプチド免疫原へ供給されるのが最も確かである。そのようなペプチド免疫原は、組替えDNA発現によるハイブリッドポリペプチドとして産生することができる。これらは、ホストに適切な、AβペプチドからのターゲットハプテンB細胞部位及びTヘルパーエピトープ(Th)を含有する合成ペプチド免疫原として、より簡易により安価に供給される。このようなペプチドは、抗体結合部位に加えて、ヘルパーT細胞受容体及びIIクラスMHC分子と反応し(バビット(Babbitt)ら、Nature, 1985; 317: 359)、それによりターゲット抗体結合部位に対する強い部位特異的な抗体反応を刺激する。以前より、このようなThは、凝集化全長Aβペプチドに内因性Thによる作業可能なAβ1−42ペプチド免疫原のために供給され(WO99/66957;WO99/27944;ジェーナス(Janus)ら、2000、モルガン(Morgan)ら、2000)、キャリアタンパク質によって供給することができる。全て合成のペプチド免疫原は、生成物が簡単な質量制御により化学的に定義することができるという利点、Aβ1−42ペプチド凝集体、キャリア共役物及び組替ポリペプチドを超えた利点を享受する。この合成ペプチド免疫原は安定である。手の込んだ下流プロセシング又は手の込んだ作製の器用さは不要である。したがって、エピトープ抑制などの不所望な応答は避けられる。
【0036】
合成N末端機能性部位配向性Aβペプチド免疫原の免疫原性は、(1)N末端Aβ1−42ペプチドフラグメントを選択した外来性の乱雑なTh部位であって、母集団の多くはそれに反応性であるTh部位と組合わせること;及び(2)Aβペプチドフラグメントをそのレパートリーを組合わせ化学により広げたThと組合わせること、により最適化し、それにより、遺伝学上異なる母集団の可変性の免疫反応に適応させることができる。
【0037】
本発明のペプチド組成物は、可溶性Aβ1−42及びAD患者の脳内のプラークと交差反応性を有する、Aβペプチドの主要な機能性/調節部位に対する抗体の産生を刺激することにおいて有効であることがわかる。モルモット及びヒヒで得られた免疫原性データ、及び得られた特異的な免疫血清による、ヒトAD脳断面内に存在するアミロイドプラークの免疫ペルオキシダーゼ染色から得られたデータに基づいて、適切に配合された本発明のペプチド免疫原がヒトに有効であることが期待される。ヒヒは、その免疫応答がヒトのそれに非常に似ている種であることにおいて、ヒヒで得られたデータが特に重要であることに注意すべきである。
【発明の詳細な説明】
【0038】
本発明は、Aβペプチドの主要な機能性/調節部位に対して特異性を有し、可溶性Aβ1−42及びアルツハイマー病(AD)患者の脳内のプラークと交差反応性を有する、高力価ポリクローナル抗体の生成のための新規なペプチド組成物に関する。ペプチド組成物によって生成した抗体は、非常に部位特異的(site-specific)であり、Aβ1−42と結合し且つ脳内のアミロイドプラークと結合する。よって、本発明は、ADの予防及び処置のための、アミロイドプラークの浄化及び脳内の可溶性Aβ由来毒の免疫中性化を促進する有効な方法を提供する。
【0039】
10〜28個のアミノ酸からなる群から選ばれるN末端Aβ1−42ペプチドフラグメントであって各フラグメントがAβ1−42ペプチド(配列番号65)のEFRHを有するN末端Aβ1−42ペプチドフラグメントは、それ自身によっては非免疫原性である、短い直鎖ペプチドである。この短いAβ1−42ペプチドフラグメントは、キャリアタンパク質、例えば、キーホール・リムペット・ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)と化学結合させることにより、又は組替えDNA発現、例えばB型肝炎表面抗原によるキャリアポリペプチドへの融合化により、免疫潜在化(immunopotentiate)させることができる。このような『Aβペプチド−キャリアタンパク質』ワクチンの欠陥は、生成される抗体の主要部がキャリアタンパク質に対して非機能性抗体であることである。
【0040】
本発明の免疫原は、10〜28個のアミノ酸から成るAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントを含有する、全て合成のペプチド免疫原である。該フラグメントは各々、配列番号1〜64からなる群から選ばれる乱雑なThエピトープと結合する、Aβ1−42ペプチドのEFRHを含有する。本発明の免疫原は、Aβ1−42ペプチド及びその凝集体と結合し且つ脳内のアミロイドプラークと交差反応性を有する部位特異的な抗体の産生を導き出し、アミロイドプラークの浄化促進及び脳内の可溶性Aβ由来毒の免疫中性化を提供する。したがって、本発明の免疫原は、ADの予防及び処置に有効である。
【0041】
本発明に有用なヘルパーT細胞エピトープ(Th)は、多種のIIクラスMHC結合モチーフを含有する。N末端Aβ1−42ペプチドフラグメントと共有結合するThの特別な例を提供する。本発明の免疫原ペプチドで免疫化した動物からの抗血清の結果から、潜在的な部位配向性Aβペプチド反応性抗体が、遺伝学上異なる母集団で生成されることが例証される。
【0042】
一般に、本発明の合成免疫原性ペプチドは、約20〜100のアミノ酸長であり、(i)配列番号1〜64からなる群から選ばれるヘルパーT細胞(Th)エピトープ;及び(ii)各フラグメントがAβ1−42ペプチドのEFRHを有する、約10〜28のアミノ酸残基のAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントを含有し、(iii)免疫原性領域を分離する少なくとも1つのアミノ酸からなるスペーサを任意に含有する。
【0043】
好ましくは、Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントは、配列番号66〜69及び免疫学上有効なそれらの類似体からなる群から選ばれる。Thペプチドは、任意にスペーサを有してもよい、Aβ1−42ペプチドのターゲットN末端フラグメントのN末端又はC末端のいずれかに共有結合する(例えば、Gly−Gly、ε−N Lys)。本発明のペプチド免疫原は、次の式のひとつにより表される。
(A)−(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)−B−(Th)−X;又は(A)−(Th)−B−(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)−X。
式中、各Aは独立にアミノ酸であり;
各Bはアミノ酸、Gly−Gly、(α,ε-N)−Lys、及びPro−Pro−Xaa−Pro−Xaa−Pro(配列番号73)からなる群から選ばれる結合基であり;
各Thは、ヘルパーT細胞エピトープを構成するアミノ酸配列、又はそれらの免疫向上(immune enhancing)類似体又はセグメントを有し;
(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、合成ペプチドB細胞ターゲット部位抗原であり、約10から約28個のアミノ酸残基であり、各フラグメントがAβ1−42ペプチドのEFRH又はその免疫学上機能性類似体を有し;
Xはアミノ酸のα−COOH又はα―CONHであり;
nは0〜約10であり、mは1〜約4であり、oは0〜約10である。
【0044】
本発明のペプチド免疫原は、アミノ酸残基を約20〜約100、好ましくは約25〜約60有する。(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、配列番号66〜69からなる群から選ばれるのが好ましく、Thエピトープは、配列番号1、3、4、5、6、7、8、9、20、38〜40、47〜51及び52〜54からなる群から選ばれるのが好ましい。m=1、n=1、及びO=1又は2であるのが好ましい。
【0045】
Aがアミノ酸であるとき、天然のアミノ酸であっても非天然のアミノ酸であってもよい。非天然アミノ酸として、ε−Nリジン、β−アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ−アミノ酪酸、ホモセリン及びシトルリンなどが挙げられるが、これに限定されない。天然のアミノ酸として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。mが1より大であるとき、2つ又はそれ以上のAがアミノ酸であり、各々のアミノ酸は、独立に、同じであっても異なってもよい。(A)は、スペーサ、例えばGly−Gly、ε−N Lysを含んでもよい。
【0046】
Bはスペーサであり、上述のように、天然のアミノ酸であっても非天然のアミノ酸であってもよいアミノ酸である。各々のBは、独立に、同じであっても異なってもよい。Bのアミノ酸は、乱雑なThエピトープとAβ1−42ペプチドのN末端フラグメント(例えば配列番号66〜69)又はその免疫学的機能性類似体との間のスペーサ、例えば、Gly−Gly、ε−Lys又はリジンを提供することもできる。また、B細胞エピトープ、即ちAβ1−42ペプチドのN末端フラグメント又はその免疫学的機能性類似体からThエピトープを物理的に離間させることにより、Gly−Gly又はε−Lysスペーサは、ThエピトープをAβ1−42ペプチドのN末端フラグメント又はその免疫学的機能性類似体に結合することにより生成される人為的な2次構造を中断し、それによりTh及び/又はB細胞応答間の相互作用を排除することができる。Bのアミノ酸は、ThとAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントの離間を増大させる可撓性ヒンジとして作用するスペーサを形成することもできる。可撓性ヒンジをコードする配列の例は、イムノグロブリン重鎖ヒンジ領域にある。可撓性ヒンジ配列はしばしば、プロリンリッチである。ある特定の有用な可撓性ヒンジは、配列Pro−Pro−Xaa−Pro−Xaa−Pro(配列番号77)によって提供される。ここで、Xaaは、あるアミノ酸であり、好ましくはアスパラギン酸であるのがよい。Bのアミノ酸によってもたらされる構造的な離間により、ペプチド免疫原と適切なTh細胞及びB細胞とのより効率的な相互作用が可能となり、Thエピトープ及び抗体導出エピトープ又はそれらの免疫学的機能性類似体への免疫応答を高めることができる。
【0047】
Thは、Thエピトープを有するアミノ酸(天然又は非天然アミノ酸)の配列である。Thエピトープは、連続エピトープであっても不連続エピトープであってもよい。不連続エピトープにおいて、Thのアミノ酸のすべてが必要なわけではない。Thエピトープ又はその類似体もしくはそのフラグメントは、Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントに対する免疫応答を増大するか又は刺激することができる。免疫支配的であり且つ乱雑なThエピトープは、広く縮退するMHCタイプを有する動物及びヒトの種(population)にわたって広く反応性であり且つ高反応性である(パーチドスら(Partidos)、1991; US 5,759,551)。問題となるペプチドのThエピトープは、約10〜約50のアミノ酸、好ましくは約10〜約30のアミノ酸である。多くのThエピトープが存在するとき(即ち、m≧2)、各Thエピトープは、同じであっても異なってもよい。Thセグメントは、Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントに対する免疫応答を増大するか又は刺激するのに十分なThエピトープの隣接する(contiguous)部分を有する。
【0048】
本発明のThエピトープには、表1(配列番号1〜21)に例示するものを含むが、これらに限定されない外来病原体由来のものが含まれる。また、Thエピトープとして、WO99/66957に開示され且つ配列番号22〜64として本願の表2にリストアップした理想化人工Th及び人工理想化組合せThが含まれる。組合せThを有するペプチドは、Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント、A及びB、と共に、単一の固相ペプチド合成で同時に産生される。Thエピトープは、Th刺激機能が本質的に修飾されない限り、1〜10のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失及び挿入を有する、その免疫学的機能性類似体も含む。
【0049】
本発明の合成ペプチドにおいて、Thエピトープは、スペーサBを介して、Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント又はその免疫学的機能性類似体のN末端又はC末端のいずれかと共有結合する。Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントの免疫学的機能性類似体は、Aβ1−42ペプチドとの交差反応である免疫応答が導き出される限り、1〜約4個のアミノ酸残基の保存的置換、付加、欠失及び挿入を含むことができる。保存的置換、付加、及び挿入は、上述した天然又は非天然アミノ酸で達成することができる。
【0050】
本発明の好ましいペプチド免疫原は、配列番号66〜69又はその免疫学的機能性類似体;スペーサ(例えばGly−Gly、ε−Lys);HBs Th(配列番号1);HBc Th(配列番号20);MVF Th(配列番号8,9);PT Th(配列番号4,5,7);TT Th(配列番号3,4,6);CT Th(配列番号12,21);DT Th(配列番号13,14);配列番号38〜40、47〜51からなる群から選ばれる、MVF Th由来人工Th;配列番号52〜54からなる群から選ばれる、HBV Th由来人工Th;からなる群から選ばれるAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントを有するものである。表1及び2を参照のこと。
【0051】
2つ又はそれ以上のThエピトープとの本題のペプチド免疫原のカクテルを含むペプチド組成物は、広い種(population)において免疫効験(immunoefficacy)を増大させることができ、これによりAβ1−42ペプチド及びそのフラグメントへの免疫応答をもたらすことができる。
【0052】
本発明のペプチド免疫原は、当業者によく知られている化学合成法により製造することができる。例えば、フィールズ(Fields)ら、合成ペプチド:ユーザーズガイド(Synthetic Peptides: A User’s Guide)の第3章(Grant, W. H. Freeman & Co.編、New York, NY, 1992, p. 77)を参照のこと。したがって、ペプチドは、例えば、アプライド・バイオシステム・ペプチド合成器 モデル430A又は431上で、側鎖を保護したアミノ酸を用いるt−Boc又はF−moc化学によりα−NH保護化固相合成の自動メリーフィールド法を用いて合成することができる。Thエピトープのための組合せライブラリーペプチドを有するペプチド構築物の調製は、ある変化させる位置で、カップリングのための代替アミノ酸の混合物を提供することにより達成することができる。所望のペプチド免疫原の集合体の完成後、レジンを標準手続きにしたがって処理し、レジンからペプチドを切断し、アミノ酸側鎖の機能性基を脱保護する。フリーのペプチドは、HPLCにより精製され、生化学的、例えばアミノ酸分析又は配列決定によって同定される。ペプチドの精製法及び同定法は、当業者によく知られている。
【0053】
本発明の免疫原も、分岐鎖ポリ−リシル核レジンに直接所望のペプチド構築物を合成することにより、分岐鎖ポリマーとして調製することができる(ワン(Wang)ら、Science, 1991; 254: 285-288)。
【0054】
また、長鎖の合成ペプチド免疫原は、既知の組替えDNA技術により合成することができる。そのような技術は、詳細なプロトコールと共に既知の標準マニュアルに提供される。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、アミノ酸配列をコードする核酸配列、好ましくは遺伝子が発現される有機体に最適であるコドンと共に該核酸配列を得る。次いで、典型的には、ペプチド、及び、必要ならば制限要素をコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって、合成遺伝子を産生する。合成遺伝子を好適なクローニングベクターに挿入し、ホスト細胞にトランスフェクトする。その後、選択された発現系及びホストにふさわしい適切な条件下で、ペプチドを発現する。ペプチドは、標準の方法により精製及び同定される。
【0055】
本発明のペプチド組成物の効験は、本発明のペプチドを含有する免疫原組成物を動物、例えばモルモットに注入することによって確認することができる。表4、配列番号70〜75を参照のこと。Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント及び可溶性Aβ1−42ペプチドに対する体液免疫応答をモニターする。用いた作業の詳細は、後述の実施例に提供する。
【0056】
本発明の他の面は、医薬上許容可能な配送系で、1種又はそれ以上の本発明のペプチド免疫原を免疫学上有効量で含有するペプチド組成物を提供する。したがって、対象となるペプチド組成物は、ワクチンの処方に通常用いられる、医薬上許容可能なアジュバント、キャリヤ又は他の成分を用いるワクチンとして配合することができる。本発明において用いることができる成分として、ミョウバン(alum)、リポシン(liposyn)、サポニン(saponin)、スクアレン、L121、エマルジゲン(emulsigen)・モノホスフィリル脂質A(MPL)、ポリソルベート80、QS21、モンタニド(Montanide)ISA51、ISA35、ISA206及びISA720並びに他の有効なアジュバント及び乳化剤がある。組成物は、速放性(immediate release)又は徐放性(sustained release)のいずれに対しても配合することができる。組成物は、全身性免疫の誘導のため、例えば、微粒子での捕捉(entrapment)又は共投与によって、配合することもできる。そのような配合物は、当業者にとって簡単に利用可能である。
【0057】
本発明の免疫原は、皮下、経口、筋内、非経口又は腸内経路などの従来の経路のいかなるものによっても投与することができる。免疫原は、単一の投与量であっても多投与量であっても投与することができる。好適な免疫スケジュールは、当業者にとって即座に決定でき、利用可能である。
【0058】
本発明のペプチド組成物は、1種又はそれ以上の本発明のペプチド免疫原を有効量、及び医薬上利用可能なキャリアを有する。好適な投与単位形態内のこのような組成物は一般に、体重1kg当たり免疫原を約0.25μg〜約500μg含む。多投与量で配送されるとき、有効量は、投与単位で分けるのが都合よい。例えば、ペプチド免疫原を体重1kg当たりのペプチド免疫原の初期投与量を例えば0.0025〜0.5mg;好ましくは1〜50μgで、注射、好ましくは筋内注射で、投与され、同投与量を追加投与すべきである(booster)。投与量は、ワクチン及び治療術において知られているように、患者の年齢、体重及び一般的な健康状態に依存する。
【0059】
合成Aβ1−42ペプチド免疫原の免疫応答は、オヘイガン(O’Hagan)ら(Vaccine, 1991; 9: 768-771)に記載される、あるタイプの生分解性微粒子内又はその上での捕捉を介する配送により証明することができる。免疫原は、生分解性微粒子内のアジュバントと共に又はそれなしでカプセル化することができ、免疫応答を潜在化させ、持続性応答又は周期的な応答のための、及び経口投与のための、時間制御した放出を提供することができる。
【0060】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供される。本発明の範囲は、提供される特定のペプチド免疫原及び組成物に限定されない。実施例は、本発明のペプチド免疫原が、Aβ1−10フラグメント及びAβ1−42フラグメントの双方に対する部位配向性抗体、並びに初期免疫化から4週間と同じほど早くに可溶性Aβ1−42ペプチドに対する交差反応性抗体を導き出すのに有用であることを例証する。
【実施例1】
【0061】
本発明のAβペプチド免疫原を合成する典型的な方法
表4(配列番号70〜76)にリストアップしたペプチド免疫原を、Fmoc化学物質を用いる、アプライド・バイオシステム・自動ペプチドシンセサイザー(モデル430、431及び433A)によるメリーフィールド固相合成技術により個々に合成した。組合せライブラリーTh、即ちMvF由来Th1−8(配列番号38〜40)などの理想化人工Th部位を有するペプチド免疫原の調製は、設計において特定したある位置で化学結合させるための所望のアミノ酸の混合物を提供することにより、達成できる。所望のペプチドの集合体の完成後、トリフルオロ酢酸を用いる標準的な方法によりレジンを処理し、レジンからペプチドを切り出し、アミノ酸の側鎖の保護基を脱保護する。切り出され、抽出され、洗浄されたペプチドは、HPLCにより精製され、質量分析器及び逆相HPLCにより同定された。
【実施例2】
【0062】
本発明のAβペプチド免疫原の免疫原性の評価
Aβ由来ペプチド免疫原を、以下に概説する免疫化プロトコール実験及び免疫原性の測定のための血清学アッセイによって特定されるモルモットのグループに基づいて評価した。
標準実験設計:
免疫原:(1)個々のペプチド免疫原;又は
(2)各実施例で特定されるペプチド免疫原の等モル量の混合物。
投与量:特記しない限り免疫化にあたり0.5mL中に100μg。
経路:特記しない限り、筋内。
アジュバント:特記しない限り、フロイント完全アジュバント(CFA)/フロイント不完全アジュバント(IFA);又は油中水滴型エマルション。CFA/IFA群は、0週目にCFA、次週にIFAを受けた。
投与スケジュール:0週、3週間、6週間、または特記する。
採血スケジュール:0週、5週間、8週間、または特記する。
種:ダンカン−ハートリー(Duncan-Hartley)・モルモット、又は特記する。
アッセイ:各免疫血清の抗ペプチド活性に対して特定のELISA。固相基質はAβペプチドフラグメント、例えばAβ1−14又は完全長Aβ1−42(配列番号67及び65)であった。血液を収集し、血清に処理し、ターゲットペプチドでのELISA前に貯蔵した。
【0063】
Aβペプチド及び可溶性Aβ1−42ペプチドに対して導き出された抗体の免疫活性を、イムノソルベントとしてAβ1−42ペプチドフラグメント、配列番号67又は65でコーティングした、96ウエル平板マイクロタイタプレートを用いるELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)で求めた。濃度5μg/mLのペプチド免疫原溶液の少量(100μL)を37℃で1時間インキュベートした。3%ゼラチン/PBS溶液で37℃で1時間行う他のインキュベーションにより、プレートをブロック化した。その後、このブロック化プレートを乾燥し、アッセイに用いた。検査用免疫血清の少量(100μL)を、まずは試料用希釈バッファで1:100に希釈し、その後順次10倍に希釈して、ペプチドでコーティングしたプレートに添加した。このプレートを37℃で1時間インキュベートした。
【0064】
このプレートを、0.05%PBS/ツゥイーン(Tween(商標))バッファで6回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ・ラベル化ヒツジ抗種の特異性抗体100μLを適当な希釈度で、共役希釈バッファ(0.5M NaClを含むリン酸バッファ、及び正常ヒツジ血清)内に添加した。このプレートを、上述の洗浄前に、37℃で1時間インキュベートした。その後、o-フェニレンジアミン基質溶液を少量(100μL)添加した。5〜15分間、発色させ、その後、2N HSOを50μL添加して、酵素色反応を停止させた。各ウエルの内容物のA492nmをプレートリーダーで読み込ませた。カットオフA492nmを0.5に設定して、吸光度の線形回帰分析に基づいてELISA力価を計算した。選択したカットオフ値は、希釈化ノーマルコントロール試料が0.15未満である値に対して厳密であった。
【実施例3】
【0065】
部位配向性Aβペプチド系合成ワクチンの最適設計のためのAβ1−42及びそのN末端フラグメントの相対免疫原性の同定
Aβペプチドに対して高い親和性を有し且つ可溶性Aβ1−42ペプチド及びAD患者の脳内のプラークに高い交差反応性を有する抗体を高レベルで生成する全体的な合成ワクチンを設計するために、Aβ1−42及びそのN末端フラグメントの相対免疫原性をまず最初に同定した。Aβ1−42ペプチド内の種々の領域の相対免疫原性特性を測定するために、ヒト用に適した緩和アジュバント、ミョウバン(Alum)を初期の研究に用いた。Aβ1−42ペプチド及びそのN末端フラグメント、Aβ1−28の相対免疫原性を比較した。免疫原性の評価は、実施例2に記載した手順にしたがって行った。意外にも、Aβ1−28は、Aβ1−42ペプチドよりもより免疫原性であることがわかり、C末端Aβ29−42内に免疫抑制があることを示唆している(表5)。
【0066】
次に、Aβ1−28の免疫原性を、Aβ1−42のより短鎖のN末端フラグメントであるAβ1−14と比較した。ワクチンを配合する油中水滴型エマルションの調製に、ヒト用に適する、より潜在的なアジュバントを用いた。表6に示すように、得られたデータに基づいて、3つのAβペプチド(即ち、Aβ1−14、Aβ1−28及びAβ1−42)の相対免疫原性は、Aβ1−28>Aβ1−42>Aβ1−14とランク付けされた。驚くことに、Aβ1−42からC末端側の14量体が欠損することは、免疫原性を減少させるよりもむしろ、向上させた。Aβに対する抗体応答は、ELISAデータ(表6)が示すように、N末端領域、特にAβ1−14 N末端フラグメントに主に向けられている。しかしながら、Aβ1−28フラグメントのC末端をさらに短くしてAβ1−14フラグメントを形成すると、免疫原性が落ちる結果となった。
【0067】
この短鎖Aβ1−14フラグメントは、ソロモン(Solomon)らによって報告されるように、Aβ1−42ペプチドの位置3〜6に位置する、主要な機能性/制限部位、EFRHを含む。このエピトープを抗体によってブロック化することにより、凝集体の動向(dynamics)及び既に形成された凝集体の再溶解が調節される(ソロマン(Soloman)ら、Proc. Natl. Acad. Sci., 1996; 93: 452-455;Proc. Natl. Acad. Sci., 1997; 94: 4109-4112)。抗Aβ1−28及びAβ1−42抗体の多くは、このエピトープを含むAβ1−42ペプチドのN末端フラグメントに向けられている(表6)。しかしながら、Aβ1−14フラグメントはそれ自身、免疫原性が低い。この実験結果から、Aβ15−28セグメント内の内因性Thエピトープの存在が示唆される。この内因性Thエピトープにより、モルモットでのAβ1−28及びAβ1−42ペプチドの控えめな免疫原性が説明される。
【0068】
Aβ15−28フラグメントにThエピトープが存在することは望ましい。しかしながら、限定されたヒトMHC分子、適切な投与量及びヒト用に許されるアジュバントのタイプの制限に直面したとき、成功を収めるヒトワクチンのためのより潜在的な免疫原を設計できることが望ましい。したがって、我々は、HBV Th(配列番号1)由来のThなどの外来又は外因性ThをAβ1−28ペプチド(配列番号66)のC末端に結合することを試みた。表6に示すように、外因性Thエピトープにより、Aβ1−28フラグメントの免疫原性が著しく向上した。Aβ1−28フラグメントで工学設計した免疫原への抗体応答は、ペプチド免疫原(配列番号70)の機能性N末端に向けたままであった。このことは、この構築物が、Aβ1−28フラグメント又はAβ1−28フラグメントのみよりも、よりよい免疫原であることを示す。このペプチド免疫原(配列番号70)は、次の式を有するペプチド免疫原である。
(A)(AβペプチドのN末端フラグメント)−B−(Th)
ここで、AはαNHであり、Aβ1−28はAβ1−42のN末端フラグメントであり;Bはグリシンであり;Thは外来病原体、HBsAg Th(配列番号1)由来のヘルパーT細胞エピトープであり、nは1であり、mは1であり、かつoは2である。
【実施例4】
【0069】
AD用Aβ系合成ワクチン開発のためのAβの最低限のN末端フラグメント
EFRH残基を有する主要な機能性/調節部位はAβ1−42ペプチドの位置3〜6に位置する(ソロマン(Soloman)ら、Proc. Natl. Acad. Sci., 1996; 93: 452-455;Proc. Natl. Acad. Sci., 1997; 94: 4109-4112)ので、本発明の合成免疫原へと含めるためのAβの最適なB細胞ターゲット部位として、Aβ1−42ペプチドの最短のN末端フラグメントを探索することは有用である。
【0070】
Aβの短鎖非免疫原性N末端フラグメントのいくつか、即ちAβ1−28と共にAβ1−10、Aβ1−12、Aβ1−14、の各々を、代表的な理想化人工Th(配列番号51)として設計された免疫原に含めた。結合は、εN−Lysスペーサを介した。短鎖Aβフラグメントは低免疫原性であると予想されたので、工学設計構築物を強アジュバントと共に配合した。3つの合成構築物を、フロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント中に配合し、実施例2に記載する手順に基づいてその免疫原性を検査した。表7に示すように、4つのペプチド免疫原はすべて、Log10ELISA力価が4.3〜5.6(即ち104.3〜105.6)の範囲であり且つ初期免疫化後4週間しか経っていないのに完全長Aβ1−42ペプチドに対して高交差反応性である高免疫原性であった。より重要なことは、各々が理想化人工Th(配列番号51)と結合したAβ1−10、Aβ1−12及びAβ1−14と同じほど短いフラグメントは、開示する人工Thエピトープ(表7)との結合後、免疫原性が高いことがわかった。これらのペプチド免疫原は、次の式にしたがって設計されていた。
(A)−(AβペプチドのN末端フラグメント)−(B)−(Th)
ここで、AはαNHであり、N末端フラグメントはAβ1−10、Aβ1−12、Aβ1−14又はAβ1−28であり;Bは、イプシロンアミノ基を介して次のアミノ酸と結合するスペーサであるεNリジンであり;Thは理想化人工Th、MVF Th1−16(配列番号51)由来のヘルパーT細胞エピトープであり、nは1であり、mは1であり、かつoは1である。
【0071】
AβのN末端フラグメントの長さを10量体未満までさらに短くすると、より限定された免疫原性、即ち不所望な免疫原性が得られる結果となることがわかった。10アミノ酸より短いペプチドは、II属MHC分子による受容体認識には問題があるようである(免疫学(Immunology)、第5版、ロイト(Roitt)ら編、Mosby International Ltd., London, pp88-89)。
【0072】
Aβの本研究に基づき、Aβ1−42由来の有用なB細胞部位は、その大きさが約10〜約28の残基の範囲であるべきである。
【実施例5】
【0073】
人工Thエピトープに結合した合成ペプチド免疫原によってターゲットとされる部位配向性免疫反応性
AβペプチドのAβ1−14などの非免疫原性N末端フラグメントを、εNリジンスペーサを介してMVF Th1−16(配列番号51)と名付けた人工Thペプチドに結合するか、又は標準の化学カップリング手順を介して従来のキャリアタンパク質KLHに結合した。2つの免疫原性構築物を、実施例2に記載する手順にしたがって、モルモットにおいて、Aβペプチドに対する相対的『部位配向性』免疫原性、及び各キャリア、即ち人工Thエピトープ又はKLHキャリアタンパク質、に対する抗体の得られた各反応性に関して評価した。コントロール免疫原として短鎖Aβ1−14ペプチドのみ、及び2つの免疫原性構築物を、アジュバントISA51を含む油中水滴型エマルションに配合した。なお、この配合はヒト用に適する。表8に示すように、N末端Aβ1−14フラグメントは、予想通り、それ自身、非免疫原性であった。Aβ1−14フラグメント及び人工Thを含む合成免疫原(配列番号73)は、Aβ1−14に対する部位配向性抗体を導き出す高免疫原性であることがわかった。この抗体は、初期免疫化後4週間と同じ時期に、可溶性Aβ1−42ペプチドに対して高交差反応性(初期免疫化後、4週間及び6週間に対してLog10力価がそれぞれ4.094及び4.126)であることがわかった。これらのAβ反応性が高力価である免疫血清を、MVF Th1−16(配列番号51)でコーティングしたプレート上でELISAにより検査すると、これらはネガティブ(初期免疫化後、4週間及び6週間に対してLog10力価がそれぞれ0.038及び0.064)であることがわかった。これは、関連しない抗体が産生されていないことを示す。表8に示すように、得られたデータから、本発明のペプチド免疫原の部位配向特性に関する高い特異性が例証された。
【0074】
キャリアタンパク質KLHを有する免疫原は、従来のペプチド−キャリア共役物と高い免疫活性(例えば初期免疫化後、4週間及び6週間に対してLog10力価がそれぞれ4.903及び5.018)を有することがわかった。しかしながら、導き出された抗体は、可溶性Aβ1−42ペプチドとの交差反応性は控えめでしかない(例えば初期免疫化後、4週間及び6週間に対してLog10力価がそれぞれ3.342及び2.736)ことがわかった。これは、配列番号73よりも約10倍〜100倍低い。意外にも、本発明のペプチド免疫原は、部位配向性が高く、注目された。関連しないキャリア部位に向けたものよりもむしろ、AβペプチドのN末端フラグメント上での抗凝集及び離解(disaggregation)に向けた機能的に重要な抗体が生成された。
【実施例6】
【0075】
老人性プラークへの交差反応性によるAβペプチド免疫原の評価
モルモット及びヒヒでAβペプチド免疫原に対して発生した免疫血清の、ポリマー状老人性プラークへの交差反応性に関する評価のために、プラーク及びもつれ及びアミロイドプラークを含むチロフラビンS陽性血管(TSBV)のAD患者の脳を用いた。プラーク及びTSBV反応性を、アビジン−ビオチン化抗体複合体(ABC)法を用いる免疫ペルオキシダーゼ染色法、又は特異性抗IgG種のローダミン接合化Fabフラグメントを用いる免疫フルオレセンス染色法により検出した。モルモットの血清はすべて、力価の最終点をいくつかの試料で決定して、1:100の希釈度で検査した。ヒヒの血清はすべて、1:50の希釈度で検査した。免疫血清及び予備免疫血清の評価は、記載されるガスキン博士(ガスキン(Gaskin)ら、J. Exp. Med. 165: 245, 1987)のコードの下、行った。
【0076】
図1において、2人のAD患者からの脳の連続断面図を、まず10倍の倍率で検査した。断面図(a)、(b)及び(c)はAD脳1からであり、断面図(d)、(e)及び(f)はAD脳2からである。初期免疫化後6週目で収集したモルモットからの予備免疫血清及び免疫血清を、プラーク及び神経フィラメントもつれが多いAD側頭皮質からのクリオスタット(cryostat)断面で免疫ペルオキシダーゼ染色法により検査した。図1a及び1bのスライドで示す最初の研究に用いた免疫血清は、ISA51の油中水滴型エマルション中で調製したAβ1−28−εK−MvF Th1−16(配列番号74)で免疫化した動物から得た。これらの結果から、チロフラビンS陽性血管(TSBV)の老人性プラーク及びアミロイドプラークの双方に著しく結合することがわかる。CFA/ICFAで調製した当量の免疫原に対して生じる免疫血清の交差反応性は、図1b及び1dのスライドで示される。意外にも、ISA51で配合したワクチンで得た結果と比較して、血管(TSBV)のAβ1−28プラークへの優先的な結合は、CFA/ICFAワクチンに対して生じる血清について観察された。これは、ISA51で配合したワクチンによって導き出される抗体が、CFA/ICFA中で配合されるワクチンによって生じる抗体と区別可能であることを意味する。また、本発明にしたがって配合したワクチンによって生成される抗体は、脳組織内の老人性プラークに対して所望の交差反応性を有する抗体を提供した。予備免疫血清は、図1c及び1fのスライドに示す、相当する連続断面図において、染色が観察されなかった。
【0077】
さらに、希釈度1:100の予備免疫血清及び免疫血清でのAD脳1の連続断面図の免疫ペルオキシダーゼ染色を、40倍の倍率で、図2a〜2eに示す。ISA51の油中水滴型エマルション中で調製したAβ1−28−εK−MVF Th1−16(配列番号74)で免疫化した動物から得た血清は、図2a及び2dのスライドに示すように、核のパターンを形成するプラークを強く染色した。また、驚くべきことに、対応するCFA/ICFA配合物に対して調製した免疫血清での染色は、プラークとの反応性において異なる染色パターンを呈した。脳組織におけるプラークよりもむしろ、図2bに示す血管において支配的であった。予備免疫血清は、図2cに示すように、断面図を染色しなかった。CFA/ICFA中のAβ1−42ペプチドのみで免疫化によって生成した超免疫血清は、ELISAによるAβ1−28との反応性は強かったにも関わらず、図2eに示す断面図において、驚くべき程に弱い染色パターンしか呈しなかった。
【0078】
実施例3、4及び5に記載した種々のワクチン配合物で免疫化したモルモットから得た11種の集めた免疫血清及び予備免疫血清で、AD脳組織の同様の免疫染色を行った。これらの血清はまた、Aβ1−14ELISAによる機能性部位での抗体反応性、及びAβ1−42ELISAによる可溶性Aβ1−42での抗体反応性を評価した(表9)。一般に、3つのアッセイすべてにおいて検査した血清で、並行的な傾向が見られた。表9に示すように、予備免疫血清及びISA51の油中水滴型エマルション中に配合した短鎖ペプチドAβ1−14のみに対して生ずる血清の抗ペプチド反応性は低く、プラークへの交差反応性は、無視できるものであった。控えめな反応性が、ミョウバン(Alum)及びISA51中に配合したAβ1−28ペプチドのみ、並びにKLMに共役したAβ1−14及びISA中に配合したAβ1−14でワクチン化した動物からの血清に観察された。一方、機能性Aβ1−14部位、可溶性Aβ、及びAD患者の脳組織断面図中のプラーク及びTSBVへの著しい部位配向性反応性が、本発明の合成Aβ/Th免疫原で免疫化した動物由来の血清で観察された。したがって、これらの研究から得た結果から、外来Thエピトープに結合する、アミノ酸を1〜28個から約1〜10個有するAβ1−42のN末端フラグメントを有するペプチド免疫原の優れた免疫原性及び有用な免疫原性が例証された。また、この結果から、外来Thエピトープが存在することにより本発明のペプチド免疫原の免疫原性を驚くべき程度にまで向上させることがわかった。ヒトへの利用が許容可能である臨床上許容可能なワクチン配合物における本発明のペプチド免疫原は、AD患者の脳組織内の老人性プラークに対して所望の交差反応性を有する抗体を発生した。
【実施例7】
【0079】
ADへの免疫治療上の効験の予想としてのヒヒにおける代表的なAβペプチドワクチンの免疫原性
ISA51の油中水滴型エマルションに、25μg/0.5mL、100μg/0.5mL及び400μg/0.5mLの投与量で配合した、代表的な合成免疫原、Aβ1−28−εK−MVF Th1−16(配列番号74)を、3匹のヒヒ、Y299、X398、X1198に、初期免疫化から0週、3週目及び6週目のスケジュールで与えた。初期免疫後5週目及び8週目(wpi)での予備免疫血清及び血清を収集した。比較のために、ミョウバン(Alum)、ヒト用に認可されている標準アジュバント、に配合したフリーのペプチドAβ1−28及びAβ1−42の等モル混合物を100μg/0.5mLの投与量で4匹目のヒヒ、X798に与えた。予備免疫血清を、ネガティブコントロールとして用いた。
【0080】
4匹の免疫化動物すべてからの血清を収集し、(0、5及び8wpiで収集した血清について)Aβ1−14ELISAによる機能性部位との抗体反応性、及びAβ1−42ELISAによる可溶性Aβ1−42との反応性について評価した。老人性プラーク及びチオフラビンS陽性血管中のプラークとの抗血清(8wpiのみ)の交差反応性を、実施例6に記載したように、免疫染色法により評価した。抗ヒヒIgを用いる代わりに、用いた抗体検知器は、ヒトのすべてのアイソタイプを認識し且つヒヒIgGと交差反応性である抗ヒトIgGからのFabフラグメントであった。
【0081】
3種のアッセイすべてにおいて検査した血清で、再度、並行的な傾向が観察された。表10に示すように、予備免疫血清は陰性であった。ミョウバン(Alum)に配合したAβ1−28及びAβ1−42でワクチン化した動物X798からの血清との控えめなELISA反応性が観察された。しかしながら、この血清の反応性は、老人性プラークの認識のためには弱かった。比較するに、Aβ1−14の機能性部位、可溶性Aβ1−42、及びAD患者の脳断面におけるプラーク及びTSBVに対する、著しい部位配向性の反応性が、100μg/0.5mL及び400μg/0.5mLの双方の投与量でISA51で配合した、本発明の代表的な組成物(配列番号74)で免疫化した動物の初期免疫化から8週目で収集した血清に観察された。したがって、このヒヒでの研究から得た結果から、ヒトに適切なワクチン配合物での本発明の免疫原の有用性が例証された。免疫原性の向上(Aβの機能性部位に対して特定の抗体力価において10〜100倍の増大)は、ヒトのそれに非常に類似するヒヒの免疫応答性を有する従来技術のペプチドワクチンと比較して、非常に著しい。
【0082】
同様に、2〜3種の本発明の合成免疫原を含む混合物を、投与当たり約25〜1000μgでのワクチンへの配合物に用いて、ADの予防及び処置において遺伝学上縮退したヒトの母集団に機能性抗Aβ1−14抗体を導くことができる。広いMHC認識を達成するのに提供される本発明のペプチド免疫原の乱雑なThエピトープの存在により、ヒトにおける広い免疫原性が予想される。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0093】
図1a、1b、1c、1d、1e及び1fは、希釈度1:100での免疫血清及び予備免疫血清での倍率10×での、アビジン−ビオチン化抗体複合体(ABC)法を用いた、2つのAD脳からの連続断面の免疫ペルオキシダーゼ染色を示す写真である。図1a、及び1dは、チオフラビンS陽性血管(『BV』とラベル)上、抗体が老人性プラーク及びAβプラークの双方(共に『P』とラベル)に著しく結合することを示す。この抗体は、ISA51の油中水滴型エマルション中で調製したAβ1−28−εK−MVF Th1−16(配列番号74)を用いるモルモット中で生成した。図1b及び1eは、CFA/ICFA中の同一のペプチド免疫原に対して生じた抗体の交差反応性を示す。図1c及び1fは、予備免疫血清を用いる脳断面を示す。
【0094】
図2a、2b、2c、2d、及び2eは、希釈度1:100での免疫血清及び予備免疫血清での倍率40×での、AD脳の連続断面の免疫ペルオキシダーゼ染色を示す写真である。図2a及び2dは、ISA51の油中水滴型エマルション中で調製したAβ1−28−εK−MVF Th1−16(配列番号74)で免疫化したモルモット中の抗体が、核のパターンを形成するプラーク(P)を強く染色したことを示す。図2bは、CFA/ICFA配合物中の同一の免疫原を用いるADモルモット脳の染色パターンの写真である。この抗血清は、血管(BV)上のプラークと支配的に反応した。図2cは、予備免疫血清でのモルモットの脳断面の写真であり、染色がないことを示している。図2eは、CFA/ICFA中でAβ1−28ペプチドのみで免疫化することにより生成した超免疫での脳断面を示す。ELISAによるAβ1−28で強い反応性を示したにも関わらず、驚くべき程弱い染色しか観察されない。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)MVF Th1(配列番号22)及び配列番号23〜50からなる群から選ばれるその類似体からなる群から選ばれるヘルパーT細胞(Th);
(ii) 10〜28個のアミノ酸残基からなるアミロイドβペプチド(Aβ1−42ペプチド((配列番号65))のN末端フラグメントであって、各フラグメントがAβ1−42ペプチドのアミノ酸残基1を有するN末端フラグメント;を有し、且つ
(iii)免疫原性の領域を分離する、少なくとも1つのアミノ酸からなるスペーサを任意に有する、ペプチド免疫原。
【請求項2】
スペーサがアミノ酸、Gly−Gly、(α,ε-N)−Lys、及びPro−Pro−Xaa−Pro−Xaa−Pro(配列番号73)からなる群から選ばれる請求項1記載のペプチド免疫原。
【請求項3】
スペーサがGly−Glyである請求項2記載のペプチド免疫原。
【請求項4】
スペーサがε-N−Lysである請求項2記載のペプチド免疫原。
【請求項5】
Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントが配列番号66〜69からなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチド免疫原。
【請求項6】
式(A)−(アミロイドβペプチド(Aβ1−42ペプチド((配列番号65))のN末端フラグメント)−B−(Th)−X;又は式(A)−(Th)−B−(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)−Xのうちの1つで表されるペプチド免疫原であって、
各Aは独立にアミノ酸であり;
各Bはアミノ酸、Gly−Gly、(α,ε-N)−Lys、及びPro−Pro−Xaa−Pro−Xaa−Pro(配列番号73)からなる群から選ばれる結合基であり;
Thは、MVF Th1(配列番号22)及び配列番号23〜50からなる群から選ばれるその類似体からなる群から選ばれるヘルパーT細胞(Th)エピトープを構成するアミノ酸配列を有し、;
(Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメント)は、10個から28個のアミノ酸残基であり、各フラグメントはAβ1−42ペプチドのGlu−Phe−Arg−His(EFRH)を有し;
Xはアミノ酸のα−COOH又はα―CONHであり;
nは0〜10であり、mは1〜4であり、oは0〜10である、上記ペプチド免疫原。
【請求項7】
スペーサがGly−Glyである請求項記載のペプチド免疫原。
【請求項8】
スペーサがε-N−Lysである請求項記載のペプチド免疫原。
【請求項9】
Aβ1−42ペプチドのN末端フラグメントが、配列番号66〜69からなる群から選ばれる請求項6〜8のいずれか1項記載のペプチド免疫原。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項記載のペプチド免疫原並びにミョウバン、リポシン(liposyn)、サポニン(saponin)、スクアレン、L121、エマルジゲン(emulsigen)・モノホスフィリル脂質A(monophosphyryl lipid A)(MPL)、ポリソルベート80、QS21、モンタニド(Montanide)ISA51、ISA35、ISA206及びISA720からなる群から選ばれる製薬上許容可能なアジュバント及び/又はキャリアを有する組成物。

【公開番号】特開2009−221213(P2009−221213A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123670(P2009−123670)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【分割の表示】特願2002−592863(P2002−592863)の分割
【原出願日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【出願人】(591015142)ユナイテッド・バイオメディカル・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】UNITED BIOMEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】