説明

アルデヒド含有化合物による液体製剤化第VII(a)因子ポリペプチドの安定化

本発明は、第VII因子ポリペプチドを含有する、化学的及び/又は物理的分解に対して安定化した液状の水性製薬用組成物、このような組成物を調製及び使用するための方法、並びにこのような組成物を収容するバイアル、及び第VII因子-反応性症候群の処置におけるこのような組成物の使用を指向する。主な実施態様は、少なくとも0.01mg/mLの第VII因子ポリペプチド(i);約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤(ii);及びR-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤(iii)、例えばベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、又は5-ホルミル-4-メチルイミダゾールを含有する液状の水性製薬用組成物により表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第VII(a)因子ポリペプチドを含有する液状の水性製薬用組成物;このような組成物を調製及び使用するための方法;このような組成物を収容する容器、及び第VII(a)因子-反応性疾患を処置するためのこのような組成物の使用に関する。特に、本発明は化学的/物理的分解に対して安定化された液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固第VIIa因子は、血友病A、血友病B、グランツマン血小板無力症、及びFVII(a)欠乏症等の、血液凝固疾患を処置するための重要な治療剤であることが証明されている。また、生死にかかわる、びまん性又は外科的にアクセスできない出血を患ってはいるが、その他の点では血液凝固疾患ではないヒトにおいて、血液凝固性を高めるのに使用されている。現在、商業的に入手可能な組換え第VIIa因子製剤であるノボセブン(NovoSeven)(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)は、1.2mgの組換えヒト第VIIa因子、5.84mgのNaCl、2.94mgのCaCl.2HO、2.64mgのGlyGly、0.14mgのポリソルバート80、及び60.0mgのマンニトールのフリーズドライケーキを含有するバイアル(約3.0mLの容器容量)として提供されている。この生成物は、使用直前に、2.0mLの注射用水(WFI)を添加することにより、pH5.5に再構成され、よって約0.6mg/mLのFVIIa濃縮物が生じる。
【0003】
製造されたタンパク質剤を液体に保持するか、又はフリーズドライするかの決定は、通常は、それら2つの形態でのタンパク質剤の安定性に基づいてなされる。タンパク質安定性は、とりわけ、イオン強度、pH、温度、凍結及び解凍の繰り返しサイクル、剪断力への暴露、及びタンパク質それ自体の性質等の要因に影響を受ける可能性がある。活性タンパク質のいくつかは、例えば変性及び凝集(溶解性及び不溶解性の凝集体形成)に帰する物理的不安定性、並びに、例えば2〜3例を挙げると、加水分解、脱アミド化及び酸化に帰する化学的不安定性の結果として失われる可能性がある。タンパク質医薬品の安定性の一般的レビューについて、例えばManningら, Pharmaceutical Research 6:903-918(1989)が参照される。
【0004】
タンパク質の不安定性が発生する可能性は広く認識されており、特定のタンパク質に特異的な不安定さに関連した問題を予測することは困難である。不安定なことで、活性度が低下し、毒性が増加し、及び/又は免疫原性が増加したタンパク質副産物、又は誘導体の形成に至る可能性がある。さらに、翻訳後修飾、例えばN末端におけるある種のグルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化及び炭水化物側鎖の付加は、保存時に修飾の潜在的部位を提供する。
【0005】
さらに、第VII(a)因子ポリペプチド等、セリンプロテアーゼの液体製剤は、それら自体が生体酵素及び基質であるため、自己分解を受けてしまう。第II(a)因子、第VII(a)因子、第IX(a)因子、第X(a)因子及び第XI(a)因子は、セリンプロテアーゼの4つの具体例である。プロテアーゼ、例えばFVIIポリペプチドの処方は、FVII(a)ポリペプチドが、同じ製剤において、他のFVIIポリペプチドに容易に切断され、それら自体が不活性になるため、製薬工業にとっては大きな挑戦である。液体製剤において、FVII(a)ポリペプチドは数時間内に自己分解してしまうおそれがあり、FVII(a)ポリペプチドの濃度が高い場合は、特に深刻な問題となる。よって、FVII(a)ポリペプチドの液体製剤の製造において、自己分解は、克服するための最も大きな障害である。
【0006】
よって、任意のタンパク質組成物の安全性及び効能は、その安定性に直接関連している。分子運動の可能性が極めて増加しており、よって分子相互作用の可能性が増加することから、液体における安定性の維持には、凍結乾燥形態での安定性の維持とは異なるアプローチが必要となる。タンパク質濃度が増加することで凝集体が形成される傾向にあるために、濃縮溶液における安定性の維持は、上述したものとはさらに異なる。
【0007】
液状組成物を開発する場合は、多くの要因が考慮される。短期間(6ヶ月未満)の液体安定性を得るには、全体的な構造的変化、例えば変性及び凝集を回避することが必要となる。これらのプロセスは、多くのタンパク質に関する文献に記載されており、安定剤の多くの具体例が存在している。一つのタンパク質の安定化に効果的な薬剤は、実際には、他のものを不安定にさせるように作用することはよく知られている。タンパク質が全体的な構造変化に対して安定であると、長時間(例えば6ヶ月以上)安定している液状組成物の開発は、そのタンパク質に特異的な分解タイプから、タンパク質をさらに安定化させることに依存している。より特異的な分解タイプには、例えば、ジスルフィド結合のスクランブル、所定残基の酸化、脱アミド、環化が含まれ得る。個々の分解種を正確に突き止めることは、常に可能であるわけではないが、関心あるタンパク質のみを安定化させる、特定の賦形剤の能力をモニターするための、わずかな変化をモニターするアッセイが開発されている。
【0008】
組成物のpHは、注射/注入時に、生理学的に適した範囲にあることが望ましい。タンパク質組成物の一般的レビューとして、例えばClelandら: The development of stable protein compositions: A closer look at protein aggregation, deamidation and oxidation, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1993, 10(4): 307-377;及びWangら, Parenteral compositions of proteins and peptides: Stability and stabilizers, Journal of Parenteral Science and Technology 1988 (Supplement), 42 (2S)を参照のこと。
【0009】
第VIIa因子はいくつかの分解経路、特に凝集(二量体化)、酸化及び自己分解的切断(ペプチド骨格のクリッピング又は「重鎖分解」)を受ける。さらに、沈殿が生じる可能性もある。これらの反応の多くは、タンパク質から水分を除去することにより、かなり遅延化することができる。
【0010】
注射の直前に、WFIを用いて再構成されるフリーズドライされた固形物よりも、保存液体製剤の使用に関連して、いくつかの利点がある。最も顕著には、保存液はフリーズドライされた生成物よりも、さらに簡便に使用される。第VIIa因子ポリペプチドの液体製剤を開発することで、再構成エラーが無視でき、よって投与精度が増し;さらに生成物の臨床的使用が簡略化され、ひいては患者のコンプライアンスが向上する。理想的には、第VIIa因子ポリペプチドの組成物は、広範囲のタンパク質濃度で6ヶ月以上安定しているべきであり、投与経路に関してはフレキシブルであってよい。一般的に、さらに高度に濃縮された溶液により、低用量での投与が可能となり、静脈以外の非経口投与にとっては、有利な条件が提供されることになる可能性がある。よって、液状組成物は、投与及び使用の容易性に関して、フリーズドライ生成物よりも多くの利点を有することができる。
【0011】
現在、液体製剤化FVIIa生成物は商業的に入手できない。この発明の目的は、保存と送達の双方に適切であり、化学的及び/又は物理的分解生成物の量が、生理学的に許容可能な程度である、第VII(a)因子ポリペプチドの液状の製薬用組成物を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、FVIIaアミド分解活性におけるアルデヒドの効果を示す。実験された全てのアルデヒドは、アミド分解活性を阻害する。
【図2】図2は、第VIIa因子の融点(変性温度)における、アルデヒドの効果を示す。3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド及びベンズアルデヒドは、高濃度で変性温度に影響を及ぼす。5-ホルミル-4-メチルイミダゾールは、約100mMの濃度まで、変性温度に影響を及ぼさない。
【図3】図3は、アルデヒド溶液における、14日後のFVIIaの断片化を示す。実験された全てのアルデヒドは、FVIIa断片化の量を低下させる。
【図4】図4は、FVIIa/アルデヒド製剤の希釈時における、プロテアーゼ活性の回復度を示す。プロテアーゼ活性の回復度は、アルデヒドを含有しないFVIIa溶液の新鮮なサンプルのプロテアーゼ活性度と比較される。
【図5】図5は、種々の濃度のベンズアルデヒド溶液における、4週間後のFVIIa断片化を示す。ベンズアルデヒド濃度が増加すると。FVIIa断片化のパーセンテージが低下する。
【発明の概要】
【0013】
本発明者は、改善された安定性を示す第VII(a)因子ポリペプチドの液状製薬用組成物を作製した。これらの組成物において、第VII(a)因子ポリペプチドは、R-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤と共に製剤化される。本発明者は、前記R-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤が、他のセリンプロテアーゼ、すなわちFII(a)、FIX(a)、FX(a)、FXI(a)プロテインC及びプロテインSを安定化するのに使用可能であることを予期している。
【0014】
よって、本発明の一態様は、少なくとも0.01mg/mLの第VII(a)因子ポリペプチド(i);約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤(ii);及び一般式R-CHOの安定剤を含む少なくとも一の安定剤(iii)を含有する、液状の水性製薬用組成物であって、該Rが、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、C1−6-アルコキシ、C1−6-アルキルアミノ、又はC2−6-ジアルキルアミノを表すRC(=O)-を示す組成物に関する。
【0015】
本発明の第2の態様は、約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤(ii);及びR-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤(iii)を含有する溶液に、少なくとも0.01mg/mL濃度で、第VII(a)因子ポリペプチド(i)を提供する工程を含む、第VII(a)因子ポリペプチドの液状の水性製薬用組成物を調製する方法であって、該Rが、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、C1−6-アルコキシ、C1−6-アルキルアミノ、又はC2−6-ジアルキルアミノを表すRC(=O)-を示す組成物を調製する方法に関する。
【0016】
本発明の第3の態様は、医薬として使用される、液状の水性製薬用組成物に関する。
本発明の第4の態様は、第VII(a)因子反応性疾患を処置する医薬を製造するための、液状の水性製薬用組成物の使用に関する。
本発明の第5の態様は、第VII(a)因子反応性疾患を処置するための方法であって、該方法が、有効量の液状の水性製薬用組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含む方法に関する。
本発明の第6の態様は、液状の水性製薬用組成物、場合によっては不活性ガスを収容する気密容器に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
不活性FVIIa及び活性FVIIaとして公知の、セリンプロテアーゼ第VIIa因子には、2つの既知の自然に生じる立体構造が存在する。不活性FVIIaは、第IXa因子、第Xa因子又は第FVIIa因子のいずれか一つにより、153位{16}(角括弧内はトリプシノーゲンナンバリング)の前のペプチド結合で切断され、3次元の不活性立体構造を維持している、静脈内プロテアーゼである。活性FVIIaは、血管壁損傷において、組織因子(TF)により主としてインビボで誘発される、3次元の活性立体構造を表す。トリプシンにおいて、新規に形成されたN-末端は、活性化ポケットと称される腔に自発的に挿入し、Asp343{194}への塩橋が形成される。塩橋の形成により、触媒装置の成熟に至り、すなわち、基質が、間隙及びオキシアニオンホールに結合する。これと同様のメカニズムが全てのセリンプロテアーゼに適用されるが、活性時、FVIIaは、N-末端挿入性に乏しいため、非常に低い触媒活性しか有さない。TFは、このプロセスをアロステリックに容易にし、その生理学的基質へのFVIIaの活性を、際だって促進させる。しかしながら、TFが存在しない場合でさえ、静脈内不活性FVIIaと活性FVIIaとの間に平衡は存在し、約95%のFVIIaが、通常、不活性立体構造で存在し、約5%のFVIIaが、通常、活性立体構造で存在する。
【0018】
不活性FVIIa立体構造が製薬用製剤中で保持され、血流に放出されるまで、有用な活性FVIIaに転換することが非常に難しいが、最も所望もされている。
いくつかのアルデヒドはアミンと化学的に反応し、イミン類(シッフ塩基)を形成することは公知である(Dohnoら, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16681-16684; Geら, J. Agric. Food Chem. 1997, 45, 1619-1623):

本発明に関し、R'-NHは不活性FVIIaポリペプチドのアミン末端を表し、R-CHOはアルデヒド含有安定剤を表す。プロトン化していないアミン[末端]のみがアルデヒドに付加可能である場合、アミン及びイミン(シッフ塩基)は双方とも塩基であるが、異なる塩基度を有しているため、イミン形成の速度及び全ての成分の平衡濃度は、反応混合物のpHに依存する(Sayerら, J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 4277-4287; Garcia del Vadoら, J. Mol. Catal. A: Chem. 1996, 111, 193-201)。
【0019】
通常、シッフ塩基は、僅かに酸性の条件下、例えば酢酸の存在下で調製される。しかしながら、プロトン化していない形態のアミンだけは、アルデヒドと反応する。よって、非常に強い酸性条件下では、遊離のアミノ基の濃度は律速となり(すなわち、アミン形成が律速の最も遅い工程になる)、イミン形成速度が再度低下するであろう。様々に異なるアミンが反応混合物に存在する場合、わずかに酸性の条件下では、より高い割合の、より低い塩基度のアミンが、そのプロトン化していない形態で存在しているため、最も塩基度の低いアミンが、まずアミン又はイミンに転換されるであろう。
【0020】
タンパク質においては、通常、N-末端アミノ基とリジンの側鎖アミノ基の2種類のアミノ基が存在する。N-末端アミノ基は、カルボニル基に隣接して位置しているため、リジンの側鎖アミノ基より、塩基度は低い。タンパク質へのアルデヒドの添加時、このわずかに異なる塩基度により、側鎖アミノ基との場合よりも、N-末端アミノ基との方が、より素早いイミン形成に至る。
【0021】
過度のアルデヒドと一緒の場合、ほとんどのアミノ基はアミン又はイミンとして存在し、遊離のアミノ基はほとんど残っていないであろう。他方、イミンが多量の水に溶解し、別のアミンが存在しているならば、イミンの加水分解が生じ、当初のイミンのアミン成分が遊離になる可能性がある。
【0022】
本発明の発明者は、わずかに酸性の条件下で1当量のアルデヒドがタンパク質に添加された場合、主としてN-末端アミノ基と共に、アミン又はイミンが形成されるであろうと予期している。従って、FVIIa中のN-末端アミノ基が、プロテアーゼの3次元活性化に重要であるため、可逆的イミン形成が可能なアルデヒドの添加は、FVIIaの水溶液の安定性を高めるであろう。このような安定化溶液の哺乳動物への注射時、すなわち希釈時及び多くの他のアミンの存在下で、FVIIaのイミンは加水分解され、このプロテアーゼの活性は回復するであろう。
【0023】
よって、本発明は、FVIIaポリペプチドのアミン末端に可逆的に結合する、低分子量のアルデヒド含有化合物の使用を含む。高濃度では、アルデヒド含有化合物は、表面接触可能な遊離のアミン、特にN-末端のアミンに結合し、よってFVIIaポリペプチドのアミン末端の、その活性化ポケットへの挿入を防止する。しかしながら、血流への注射時、製薬用製剤は希釈されている。よって、FVIIaポリペプチドのアミン末端は、アルデヒドからは解離しており、その活性化ポケットへの挿入が可能で、活性化3次元立体構造の形をとることのできるFVIIaポリペプチドに至る。
【0024】
最初のスクリーニングにおいては、ベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、5-ホルミル-4-メチルイミダゾールの4つのアルデヒド含有化合物がテストされる。
【0025】
上述したように、本発明は、第VII(a)因子ポリペプチドを含有する、新規の安定した液状の水性製薬用組成物の開発にある。特に、液状の水性製薬用組成物は、少なくとも0.01mg/mLの第VII因子ポリペプチド(i);約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤(ii);及びR-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤(iii)を含有し、ここで、該Rは、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、C1−6-アルコキシ、C1−6-アルキルアミノ、又はC2−6-ジアルキルアミノを表すRC(=O)-を示す。
【0026】
「C1−6-アルキル」なる用語は、1〜6の炭素原子を有する、分枝状又は直鎖状であってよい、非環式及び環式の飽和した炭化水素基を含むことを意図している。特定の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロプロピルメチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル等が含まれる。同様に、「C1−4-アルキル」なる用語は、1〜4の炭素原子を有する、分枝状又は直鎖状であってよい、非環式及び環式の飽和した炭化水素基を含む。
【0027】
同様に、「C2−6-アルケニル」なる用語は、2〜6の炭素原子と一の不飽和結合を有する、分枝状又は直鎖状であってよい、非環式及び環式の炭化水素基を含むことを意図している。C2−6-アルケニル基の例は、ビニル、アリル、ブト-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ペント-1-エン-1-イル、及びヘキセ-1-エン-1-イルである。
【0028】
1−6-アルキル及びC2−6-アルケニル基に関連して、「置換されていてもよい」なる用語は、当該問題の基が、1又は複数回、好ましくは1-3回、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ(すなわちC1−6-アルキル-オキシ)、C2−6-アルケニルオキシ、オキソ(ケト又はアルデヒド官能性を形成)、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルカルボニル、アミノ、モノ-及びジ(C1−6-アルキル)アミノ、ハロゲンから選択される基(類)で置換されていてもよいことを意味することを意図しており、ここで任意のアリール及びヘテロシクリルは、置換されていてもよいアリール及びヘテロシクリルについて、特に以下に記載されるように置換されていてもよい。
【0029】
「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
ここで使用される場合、「アリール」なる用語は、完全又は部分的に芳香族の炭素環又は環系、例えばフェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラシル(anthracyl)、フェナントラシル、ピレニル、ベンゾピレニル、フルオレニル、及びキサンセニル(xanthenyl)を示すことを意図しており、フェニルが好ましい実施例である。
【0030】
「ヘテロシクリル」及び「複素環」なる用語は、一又は複数の炭素原子が、ヘテロ原子、例えば窒素(=N-又は-NH)、硫黄(-S-)、及び/又は酸素(-O-)原子で置き換えられた、飽和、部分的に不飽和、部分的に芳香族又は完全に芳香族の炭素環又は環系を示すことを意図している。このようなヘテロシクリル基の例は、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、クマリル、フリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾオキソゾリル、ジアゾリル、ジアゾリニル、ジアゾリジニル、トリアゾリル、トリアゾリニル、トリアゾリジニル、テトラゾール等である。好ましいヘテロシクリル基は、5-、6-又は7-員の単環基、例えばイソオキサゾリル、イソオキサゾリニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、ピロリル、ピロリニル、ジアゾリル、ジアゾリニル、トリアゾリル、トリアゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル等である。
【0031】
「アリール」、「ヘテロシクリル」及び「複素環」なる用語に関連して、「置換されていてもよい」なる用語は、当該問題の基が、1又は複数回、好ましくは1-3回、ヒドロキシ(エノール系に存在する場合、互変異性ケト型で表され得る)、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、フェニル、ベンジル、C1−6-アルコキシ、オキソ(互変異性エノール型で表され得る)、カルボキシ、C1−6-アルコキシカルボニル、C1−6-アルキルカルボニル、アミノ、モノ-及びジ(C1−6-アルキル)アミノ、ジハロゲン-C1−4-アルキル、トリハロゲン-C1−4-アルキル、及びハロゲンから選択される基(類)で置換されていてもよいことを意味することを意図している。置換基の最も典型的な例は、ヒドロキシル、C1−4-アルキル、オキソ、アミノ、モノ-及びジメチルアミノ、及びハロゲンである。
【0032】
R-CHOモチーフは、安定剤の安定化効果にとって特に重要であると考えられており、ここで、該Rは、ヒドロキシ、メトキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、メチル、エチル、イソプロピル、又はシアノで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、メトキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、メチル、エチル、イソプロピル、又はシアノで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、メチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、メトキシ、エトキシ、メチルアミノ、又はジメチルアミノを表すRC(=O)-を示す。
【0033】
他の実施態様において、R-CHOモチーフのRは、ヒドロキシ、カルボキシル、又はヒドロキシメチルで一回又は複数回置換されていてもよいフェニル;ヒドロキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、又はメチルで一回又は複数回置換されていてもよいイミダゾリル;R、R、及びRが独立して、水素、メチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、メトキシ、エトキシ、メチルアミノ、又はジメチルアミノを表すRC(=O)-を示す。
特定の一実施態様において、R及びRの少なくとも一は水素である。
【0034】
他の実施態様において、安定剤(iii)は、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ピバル酸アルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、イソブチルアルデヒド、4-メチル-5-ホルミルイミダゾール、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシピバアルデヒド(hydroxypivaldehyde)、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、サリチルアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2-カルボキシベンズアルデヒド、4-カルボキシベンズアルデヒド、2-ホルミルピリジン、3-ホルミルピリジン、4-ホルミルピリジン、2-ホルミルイミダゾール、4-ホルミルイミダゾール、及び2-ヒドロキシメチル-4-ホルミルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも一である。
【0035】
本発明の化合物は、一又は複数の不斉中心を有していてよく、特に示されない限りは、分離して、立体異性体(光学異性体)、純粋な又は部分的に精製された立体異性体又はそれらのラセミ混合物が、本発明の範囲に含まれる。
【0036】
安定剤(又は安定剤類)(iii)の濃度は、典型的には少なくとも1μMである。所望する(又は必要な)濃度は、典型的には、選択された安定剤(又は安定剤類)、特に第VII(a)因子ポリペプチドに対する選択された安定剤の結合親和性に依存する。
【0037】
種々の実施態様において、安定剤(iii)は、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも150μM、少なくとも250μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、少なくとも2mM、少なくとも4mM、少なくとも5mM、少なくとも8mM、少なくとも9mM、少なくとも10mM、少なくとも15mM、少なくとも20mM、例えば1-10000μM、10-10000μM、20-10000μM、50-10000μM、10-5000μM、10-2000μM、20-5000μM、20-2000μM、50-5000μM、0.1-100mM、0.1-75mM、0.1-50mM、0.1-10mM、0.2-75mM、0.2-50mM、0.2-20mM、0.5-75mM、0.5-50mM、0.5-100mM、0.5-200mM、1-200mM、150-200mM、1-100mM、5-100mM、10-100mM又は5-80mMの範囲の濃度で存在する。
【0038】
一実施態様において、安定剤(iii)は、ベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、及び5-ホルミル-4-メチルイミダゾールから選択されるアルデヒドであり;該薬剤の濃度は、少なくとも1mM、例えば少なくとも2mMであるが、置換されたアルデヒド類が低濃度で添加可能であるという理由でも、さらに強力になるように考慮される。
【0039】
一実施態様において、安定剤(iii)はベンズアルデヒドである。さらなる実施態様において、(iii)は、約0.5-100mM、例えば約1-100mM;例えば約5-100mM;例えば約10-100mM;例えば約5-80mMの濃度のベンズアルデヒドである。
一実施態様において、安定剤(iii)は3-ヒドロキシベンズアルデヒドである。
一実施態様において、安定剤(iii)は4-ヒドロキシベンズアルデヒドである。
一実施態様において、安定剤(iii)は5-ホルミル-4-メチルイミダゾールである。さらなる実施態様において、(iii)は、約0.5−200mM;例えば約1−200mM;例えば約150−200mMの濃度の5-ホルミル-4-メチルイミダゾールである。
【0040】
種々の実施態様において、安定剤(iii)とFVII(a)ポリペプチドとのモル比(薬剤(iii):FVII(a))は、0.1以上、0.5以上、1以上、2以上、5以上、10以上、25以上、100以上、250以上、1000以上、2500以上、又は5000以上、例えば0.1−10000、0.1−5000、0.1−2500、0.1−1000、0.1−250、0.1−100、0.1−25、0.1−10、0.5−10000、0.5−5000、0.5−2500、0.5−1000、0.5−250、0.5−100、0.5−25、0.5−10、1−10000、1−5000、1−2500、1−1000、1−250、1−100;1−25;1−10、10−10000、10−5000、10−250、1000−10000、又は1000−5000の範囲内である。
所望する濃度は、典型的には、選択された安定剤(又は安定剤類)、特に第VII(a)因子ポリペプチドに対する選択された安定剤の結合親和性に依存する。
【0041】
製薬用組成物の生物学的効果は、主として第VII(a)因子ポリペプチドの存在によるものであるが、他の活性成分も、第VII(a)因子ポリペプチドと組合せて含まれてよい。
ここで使用される場合、「第VII(a)因子ポリペプチド」又は「FVII(a)ポリペプチド」なる用語は、野生型ヒト第VIIa因子のアミノ酸配列1-406(すなわち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)、そのアミノ酸配列変異体を含む任意のタンパク質、並びに第VII(a)因子誘導体、及び任意のFVII(a)野生型又はFVII(a)配列変異体の第VII(a)因子コンジュゲートを意味する。これには、FVII(a)変異体、第VII(a)因子-関連ポリペプチド、第VII(a)因子誘導体、及び第VII(a)因子コンジュゲートで、野生型ヒト第VIIa因子と実質的に同様又は改善された生物活性を示すものが含まれる。
ここで使用される場合、「野生型ヒトFVIIa」とは、米国特許第4,784,950号に開示されているアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、その活性形態である。
【0042】
「第VII因子」なる用語は、それらの未切断(チモーゲン)形態にある第VII因子ポリペプチド、並びに第VIIa因子と命名される、それぞれの生物活性形態が生じるようにタンパク質分解的にプロセシングされたものを含むことを意図している。典型的には、第VII因子は残基152と153の間が切断されて、第VIIa因子を生じる。「第VII因子ポリペプチド」なる用語には、第VIIa因子の生物活性が実質的に修飾されている、又は野生型第VIIa因子の活性に対して低下している変異体を含むポリペプチドが含まれる。これらのポリペプチドには、限定されるものではないが、ポリペプチドの生物活性を修飾又は破壊する、特定のアミノ酸配列の変化が導入された、第VII因子又は第VIIa因子が含まれる。
【0043】
血液凝固における第VIIa因子の生物活性は、(i)組織因子(TF)へ結合、及び(ii)第IX因子又は第X因子のタンパク質分解的切断を触媒し、活性化した第IX因子又は第X因子(それぞれ第IXa因子又は第Xa因子)を生成する能力に由来する。
【0044】
本発明の目的について、第VII因子ポリペプチドの生物活性(「第VII因子の生物活性」)は、例えばここに記載されるアッセイ3等、血液凝固を促進させる調製物の能力を測定することにより定量化されてよい。このアッセイにおいて、生物活性は対照サンプルに対する凝固時間の低減度合いとして表され、1単位/mLの第VII因子活性を有するプールされたヒト血清標準体と比較することにより、「第VII因子単位」に転換される。また、第VIIa因子の生物活性は、(i)第X因子、及び脂質膜に包埋したTFを含む系において、活性化した第X因子(第Xa因子)を生成する、第VIIa因子又は第VII因子-関連ポリペプチドの能力を測定し(Perssonら, J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii)水系における第X因子の加水分解度を測定し(「インビトロタンパク質分解アッセイ」、以下のアッセイ2を参照);(iii)表面プラズモン共鳴をベースにした装置を使用し、TFに対する第VIIa因子又は第VII因子-関連ポリペプチドの物理的結合度を測定し(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);又は(iv)第VIIa因子及び/又は第VII因子-関連ポリペプチドによる合成基質の加水分解度を測定する(「インビトロ加水分解アッセイ」、以下のアッセイ1を参照)ことにより定量化されてよい。
【0045】
野生型第VIIa因子に対して実質的に同等又は改善された生物活性を有する第VII因子変異体には、一又は複数の上述した凝血アッセイ(アッセイ3)、タンパク質分解アッセイ(アッセイ2)、又はTF結合アッセイでテストされる場合、同じ細胞系で生成される第VIIa因子の特異的活性の少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%、少なくとも約75%、又は少なくとも約90%を示すものが含まれる。野生型第VIIa因子に対して実質的に低減した生物活性を有する第VII因子変異体は、一又は複数の上述した凝血アッセイ(アッセイ3)、タンパク質分解アッセイ(アッセイ2)、又はTF結合アッセイでテストされる場合、同じ細胞系で生成される野生型第VIIa因子の特異的活性の少なくとも約25%未満、例えば約10%未満、又は約5%未満のものである。野生型第VII因子に対して実質的に修飾された生物活性を有する第VII因子変異体には、限定されるものではないが、TF-独立性第X因子タンパク質分解活性を示す、第VII因子変異体、及びTFに結合するが、第X因子を切断しないものが含まれる。
【0046】
野生型第VII因子と実質的に同等又は良好な生物活性を示すかどうか、又は野生型第VII因子に対して実質的に変化又は低減した生物活性を示すかどうかにかかわらず、第VII因子変異体には、、限定されるものではないが、一又は複数のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換による、野生型第VII因子の配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。
【0047】
野生型第VII因子と実質的に同等の生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的例には、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa(Linoら, Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);米国特許第5,580,560号に開示されたような、増加したタンパク質分解安定性を示すFVIIa変異体;残基290と291の間、又は残基315と316の間が、タンパク質分解的に切断された第VIIa因子(Mollerupら, Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);第VIIa因子の酸化形態(Kornfeltら, Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);PCT/DK02/00189に開示されているFVII変異体;及び国際公開第02/38162号(Scripps Research Institute)に開示されたような、増加したタンパク質分解安定性を示すFVII変異体;国際公開第99/20767号(ミネソタ大学)に開示されたような、高められた膜結合性を示し、修飾されたGla-ドメインを有するFVII変異体;及び国際公開第01/58935号(Maxygen ApS)に開示されたようなFVII変異体が含まれる。
【0048】
野生型FVIIaと比較して増加した生物活性を有するVII因子変異体の非限定的例には、国際公開第01/83725号、国際公開第02/22776号、国際公開第02/077218号、国際公開第03/027147号、国際公開第03/37932号;国際公開第02/38162号(Scripps Research Institute)に開示されているようなFVII変異体;及び日本国特許第2001061479号(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されているような高められた活性を有するFVIIa変異体が含まれる。
野生型第VII因子と比較して実質的に低減した又は変化した生物活性を有する第VII因子変異体の非限定的例には、R152E-FVIIa(Wildgooseら, Biochem 29:3413-3420、1990)が含まれる。
【0049】
第VII因子ポリペプチドの例には、限定されるものではないが、野生型第VII因子、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、及びS336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/K337A-FVII、F374Y/V158D-FVII、F374Y/E296V-FVII、F374Y/M298Q-FVII、F374Y/V158T-FVII、F374Y/S314E-FVII、F374Y/L305V-FVII、F374Y/L305V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D-FVII、F374Y/L305V/E296V-FVII、F374Y/L305V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T-FVII、F374Y/L305V/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E-FVII、F374Y/K337A/V158T-FVII、F374Y/K337A/M298Q-FVII、F374Y/K337A/E296V-FVII、F374Y/K337A/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q-FVII、F374Y/V158D/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q-FVII、F374Y/V158T/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E-FVII、F374Y/S314E/M298Q-FVII、F374Y/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII、F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII、F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII、F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII、F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII、F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII、F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII、F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII、F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII、F3
74Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、S52A-第VII因子、S60A-第VII因子;R152E-第VII因子、S344A-第VII因子、Glaが欠失した第FVIIa因子;及びP11Q/K33E-FVII、T106N-FVII、K143N/N145T-FVII、V253N-FVII、R290N/A292T-FVII、G291N-FVII、R315N/V317T-FVII、K143N/N145T/R315N/V317T-FVII;及び233Thrから240Asnのアミノ酸配列に、置換、付加又は欠失を有するFVII;304Argから329Cysのアミノ酸配列に、置換、付加又は欠失を有するFVII;及びIle153-Arg223のアミノ酸配列に、置換、付加又は欠失を有するFVIIが含まれる。
【0050】
いくつかの実施態様において、第VII因子ポリペプチドはヒト第VIIa因子(hFVIIa)、好ましくは組換え的に作製されたヒト第VIIa因子(rhVIIa)である。
他の実施態様において、第VII因子ポリペプチドは第VII(a)因子配列変異体である。
いくつかの実施態様において、第VII因子ポリペプチドは、野生型ヒト第VII因子とは異なるグリコシル化を有する。
【0051】
他の実施態様において、第VII因子ポリペプチドは第VII因子誘導体である。ここで使用される場合「第VII因子誘導体」なる用語は、親ペプチドの一又は複数のアミノ酸が、例えばアルキル化、グリコシル化、ペグ化、アシル化、エステル形成又はアミド形成等により、遺伝的及び/又は化学的及び/又は酵素的に修飾されている、野生型第VII因子に対して、実質的に同等又は改善された生物活性を示す、FVIIポリペプチドを称することを意図している。これには、限定されるものではないが、ペグ化したヒト第VIIa因子、システイン-ペグ化されたヒト第VIIa因子、及びそれらの変異体が含まれる。第VII因子誘導体の非限定的例には、国際公開第03/31464号及び米国特許出願第20040043446号、米国特許第20040063911号、米国特許第20040142856号、米国特許第20040137557号、米国特許第20040132640号、国際公開第2007022512号、及び米国特許第20070105755号(Neose Technologies, Inc.)に開示されたグリコペグ化されたFVII誘導体;国際公開第01/04287号、米国特許出願第20030165996号、国際公開第01/58935号、国際公開第03/93465号(Maxygen ApS)、及び国際公開第02/02764号、米国特許出願第20030211094号(ミネソタ大学)に開示されているFVIIコンジュゲート;国際公開第2008127702号(Catalyst Biosciences, Inc.)、国際公開第2005024006号(Novo Nordisk Health Care AG)に開示されている修飾された第VII因子ポリペプチド;国際公開第2007031559号、国際公開第2007039475号及び国際公開第2007115953号(Novo Nordisk Health Care AG)、国際公開第2004029090号、国際公開第2003037932号、国際公開第2003027147号、国際公開第02077218号、国際公開第200222776号及び国際公開第200183725号(Novo Nordisk A/S)にッK委細の第VII因子変異体;国際公開第08025856号、国際公開第05014035号及び国際公開第2006035057号(Novo Nordisk A/S)に開示されているもののような修飾された糖タンパク質;及び国際公開第2005014049号(Novo Nordisk A/S)に開示されているもののようなコンジュゲートが含まれる。
【0052】
様々な実施態様、例えば第VII因子ポリペプチドが第VII因子関連ポリペプチド又は第VII(a)因子配列変異体である実施態様において、本出願に記載されたような「インビトロタンパク質分解アッセイ」(アッセイ2)でテストされる場合、第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率は、少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0又は4.0、最も好ましくは少なくとも約8.0である。
いくつかの実施態様において、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子-関連ポリペプチド、特に変異体であり、ここで、「インビトロ加水分解アッセイ」(アッセイ1)でテストされる場合、第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との比率は少なくとも約1.25であり;他の実施態様において、該比率は少なくとも約2.0であり;さらなる実施態様において、該比率は少なくとも約4.0である。
【0053】
製薬用組成物において、多くの場合、活性成分の濃度は、単位用量の適用が、患者に不必要な不快感を生じさせないようにされることが望ましい。よって、約2-10mL以上の単位用量は、多くの場合は所望されない。よって、本発明の目的にとって、第VII因子ポリペプチドの濃度は少なくとも0.01mg/mLである。別の実施態様において、第VII因子ポリペプチドは、約0.01-30mg/mL;例えば約0.1-30.0mg/mL;例えば約0.01-20mg/mL;例えば約0.1-20mg/mL;例えば約10mg/mL;例えば約15-20mg/mL;例えば0.1-15mg/mL;例えば10-15mg/mL;例えば0.1-10mg/mL;例えば0.5-5.0mg/mL;例えば0.6-4.0mg/mL;例えば1.0-4.0mg/mL;例えば0.1-5mg/mL;例えば0.1-4.0mg/mL;例えば0.1-2mg/mL;又は0.1-1.5mg/mLの濃度で存在している。
第VIIa因子の濃度は、便宜的にmg/mL又はIU/mLとして表され、通常、1mgは43000−56000IU又はそれ以上を表す。
【0054】
液状にするために、哺乳動物、例えばヒトへの直接的非経口投与に有用な液状の水性製薬用組成物は、通常、組成物のpH値が所定の限界内、例えば約4.0〜約9.0で保持されることが必要である。付与された条件下で、適切なpH値を確実にするために、製薬用組成物は、約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適切な緩衝剤(ii)をさらに含有する。
「緩衝剤」なる用語には、約4.0〜約9.0の許容範囲に、溶液のpHを維持する薬剤又は薬剤の組合せを含む。
【0055】
一実施態様において、緩衝剤(ii)は、MES、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、トリス、ヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、イミダゾール、グリシン、グリシルグリシン、グリシンアミド、リン酸(例えば、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム)、酢酸(例えば、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カルシウム)、乳酸、グルタル酸、クエン酸(例えば、クエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム)、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びコハク酸等の酸及びその塩からなる群から選択される、少なくとも一の成分である。緩衝剤は、2又はそれ以上の成分の混合物を含んでいてもよく、ここで該混合物は、特定の範囲のpH値を提供可能なものであると理解されるべきである。包括例として、酢酸及び酢酸ナトリウム等を挙げることができる。
緩衝剤の濃度は、溶液が好ましいpHを維持できるように選択される。種々の実施態様において、緩衝剤の濃度は、1−100mM;1−50mM;1−25mM;又は2−20mMである。
【0056】
一実施態様において、組成物のpHは、約4.0〜約9.0;例えば約4.0〜約8.0;例えば約5.0〜約8.0;例えば約4.0〜約7.0;例えば約5.0〜約7.5;例えば約5.0及び約7.0;例えば約5.0〜約6.5;例えば約5.0〜約6.0;例えば約5.5〜約7.0;例えば約5.5〜約6.5;例えば約6.0〜約7.0;例えば約6.0〜約6.5;例えば約6.3〜約6.7;例えば約5.2〜約5.7;例えば約4.0〜約5.2で維持されている。
【0057】
3つの必須の成分に加えて、液状の水性製薬用組成物は、組成物の調製、処方、安定化、又は投与に有益なさらなる成分を含有していてもよい。
よって、製薬用組成物は、非イオン性界面活性剤をさらに含有していてもよい。界面活性剤(洗浄剤としても公知)には、空気/溶液界面誘発性のストレス、及び溶液/表面誘発性のストレス(例えば、タンパク質凝集に至る)からタンパク質を保護する薬剤が含まれる。
典型的な種類の非イオン性界面活性剤は、ポリソルバート(polysorbates)、ポロキサマー(poloxamers)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンステアラート、及びポリオキシエチレンヒマシ油である。非イオン性界面活性剤の例証例は、トゥイーン(Tween)(登録商標)、ポリソルバート20、ポリソルバート80,ビリジ(Brij)-35(ポリオキシエチレンドデシルエーテル)、ポロキサマー188、ポロキサマー407、PEG8000、プルロニック(Pluronic)(登録商標)ポリオール類、ポリオキシ-23-ラウリルエーテル、ミリジ(Myrj)49、及びクレモポア(Cremophor)Aである。
一実施態様において、非イオン性界面活性剤は、0.005-2.0重量%の量で存在している。
【0058】
組成物は浸透圧修正剤(v)をさらに含有していてもよい。ここで使用される場合、「浸透圧修正剤」なる用語には、溶液の浸透圧に寄与する薬剤が含まれる。浸透圧修正剤(v)には、中性塩、アミノ酸、2〜5のアミノ酸残基のペプチド、単糖類、二糖類、多糖類、及び糖アルコールからなる群から選択される、少なくとも一の薬剤が含まれる。いくつかの実施態様において、組成物は、2又はそれ以上のこのような薬剤の組合せを含有する。 「中性塩」とは、水溶液に溶解したときに、酸でも塩基でもない塩を意味する。
【0059】
一実施態様において、少なくとも一の浸透圧修正剤(v)は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、カルシウムラエブラート(laevulate)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、及びマグネシウムラエブラートからなる群から選択される中性塩である。
さらなる実施態様において、浸透圧修正剤(v)には、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、及び酢酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一と組合せて、塩化ナトリウムを含有する。
さらなる実施態様において、浸透圧修正剤(v)は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、スクロース、グルコース、及びマンニトールからなる群から選択される少なくとも一である。
【0060】
種々の実施態様において、浸透圧修正剤(v)は、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも50mM、少なくとも100mM、少なくとも200mM、少なくとも400mM、少なくとも800mM、少なくとも1000mM、少なくとも1200mM、少なくとも1500mM、少なくとも1800mM、少なくとも2000mM、又は少なくとも2200mMの濃度で存在している。
一連の実施態様において、浸透圧修正剤(v)は、5−2200mM、例えば25−2200mM、50−2200mM、100−2200mM、200−2200mM、400−2200mM、600−2200mM、800−2200mM、1000−2200mM、1200−2200mM、1400−2200mM、1600−2200mM、1800−2200mM、又は2000−2200mM;5−1800mM、25−1800mM、50−1800mM、100−1800mM、200−1800mM、400−1800mM、600−1800mM、800−1800mM、1000−1800mM、1200−1800mM、1400−1800mM、1600−1800mM;5−1500mM、25−1400mM、50−1500mM、100−1500mM、200−1500mM、400−1500mM、600−1500mM、800−1500mM、1000−1500mM、1200−1500mM;5−1200mM、25−1200mM、50−1200mM、100−1200mM、200−1200mM、400−1200mM、600−1200mM、又は800−1200mMの濃度で存在している。
【0061】
本発明の一実施態様において、少なくとも一の浸透圧修正剤(v)は、イオン強度修正剤(v/a)である。
ここで使用される場合、「イオン強度修正剤」なる用語には、溶液のイオン強度に寄与する薬剤が含まれる。前記薬剤には、限定されるものではないが、中性塩、アミノ酸、2〜5のアミノ酸残基のペプチドが含まれる。いくつかの実施態様において、組成物は、2又はそれ以上のこのような薬剤の組合せを含有する。
イオン強度修正剤(v/a)の非限定的例には、中性塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムである。一実施態様において、前記薬剤(v/a)は塩化ナトリウムである。
【0062】
「イオン強度」なる用語は、等式:μ=1/2 Σ([i](Z))で定められる、溶液のイオン強度(μ)であり、ここでμはイオン強度であり、[i]はイオンのミリモル濃度であり、Zはそのイオンの電荷(+又は−)である(例えば、Solomon, Journal of Chemical Education, 78(12):1691-92, 2001;James Fritz and George Schenk: Quantitative Analytical Chemistry, 1979を参照)。
【0063】
本発明の種々の実施態様において、組成物のイオン強度は、少なくとも50mM、例えば少なくとも75mM、少なくとも100mM、少なくとも150mM、少なくとも200mM、少なくとも250mM、少なくとも400mM、少なくとも500mM、少なくとも650mM、少なくとも800mM、少なくとも1000mM、少なくとも1200mM、少なくとも1600mM、少なくとも2000mM、少なくとも2400mM、少なくとも2800mM、又は少なくとも3200mMである。
いくつかの特定の実施態様において、浸透圧修正剤(v)とイオン強度修正剤(v/a)の全濃度は、1−1000mM、例えば1−500mM、1−300mM、10−200mM、又は20−150mM;又は例えば100−1000mM、200−800mM、又は500−800mMの範囲であり、浸透圧及びイオン強度を有し得る、任意の他の成分の影響にも依存する。
【0064】
一実施態様において、組成物は等張であり;また他では高張である。「等張」なる用語は「血清で等張」、すなわち約300±50ミリオスモル/kgであることを意味する。浸透圧は、投与前の溶液の浸透圧を測定することを意味する。「高張」なる用語は、血漿の生理的レベル以上の浸透圧レベル、例えば300±50ミリオスモル/kg以上のレベルを称することを意味する。
【0065】
さらに、本発明の特定の実施態様は、極めて高濃度のイオン強度修正剤(v/a)と安定剤(iii)との組合せに関する。その一実施態様において、イオン強度修正剤(v/a)は、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩からなる群から選択される。この実施態様において、イオン強度修正剤(v/a)、すなわちナトリウム塩、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩は、15−1500mM、例えば15−1000mM、25−1000mM、50−1000mM、100−1000mM、200−1000mM、300−1000mM、400−1000mM、500−1000mM、600−1000mM、700−1000mM;15−800mM、25−800mM、50−800mM、100−800mM、200−800mM、300−800mM、400−800mM、500−800mM;15−600mM、25−600mM、50−600mM、100−600mM、200−600mM、300−600mM;15−400mM、25−400mM、50−400mM、又は100−400mMの濃度で存在する。
【0066】
これらの実施態様において、ナトリウム塩は塩化ナトリウムであってよく、カルシウム塩は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、及びカルシウムラエブラートからなる群から選択されてよく、マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マグネシウムラエブラート、及び強酸のマグネシウム塩からなる群から選択されてよい。さらなる特定の実施態様において、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩は、塩化ナトリウムと組合せて使用される。
一実施態様において、組成物は、カルシウム(Ca2+)塩及びマグネシウム(Mg2+)塩からなる群から選択される一又は複数のイオン強度修正剤、、例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、カルシウムラエブラート、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マグネシウムラエブラート、強酸のマグネシウム塩からなる群から選択される一又は複数の塩を含有する。
【0067】
一実施態様において、カルシウム(Ca2+)及び/又はマグネシウム(Mg2+)は、少なくとも約0.1μM、例えば少なくとも約0.5μM、少なくとも約1μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約1mM、少なくとも約2mM、少なくとも約5mM、又は少なくとも約10mMの濃度で存在する。特定の実施態様において、組成物は少なくとも2mMのCa2+を含有する。
【0068】
種々の実施態様において、カルシウム(Ca2+)及び/又はマグネシウムイオン(Mg2+)とFVIIポリペプチドとのモル比は:0.001−750;0.001−250;0.001−100;0.001−10;0.001−1.0;0.001−0.5;0.5−750;0.5−250;0.5−100;0.5−10;0.5−1.0;0.001−0.4999;0.005−0.050である。
本発明の一実施態様において、第VII因子ポリペプチドに対する非錯化のカルシウム(Ca2+)及び/又はマグネシウム(Mg2+)のモル比は、0.5未満、例えば0.001−0.499、例えば0.005−0.050の範囲、又は0.000−0.499の範囲、例えば0.000−0.050の範囲、又は約0.000である。本発明の一実施態様において、第VII因子ポリペプチドに対する非錯化のカルシウム(Ca2+)のモル比は、0.5未満、例えば0.001−0.499、例えば0.005−0.050の範囲、又は0.000−0.499の範囲、例えば0.000−0.050の範囲、又は約0.000である。
【0069】
ここで使用される場合、「非錯化のカルシウム及び/又はマグネシウムイオンの濃度」なる用語は、カルシウム及び/又はマグネシウムイオンの全濃度と、カルシウム及び/又はマグネシウムキレート剤に結合したカルシウム及び/又はマグネシウムの濃度との差異意味することを意図している。この点に関し、第VII因子ポリペプチドは、「カルシウム/マグネシウムキレート剤」としてはみなされないが、カルシウム及び/又はマグネシウムは、所定の条件下で、第VII因子ポリペプチドに結合する、又は会合することが予期される。
【0070】
他の実施態様において、 第VII因子ポリペプチドに対する非錯化のカルシウム及び/又はマグネシウムイオンのモル比は0.5以上である。他の実施態様において、第VII因子ポリペプチドに対する非錯化のカルシウムイオンのモル比は0.5以上である。
カルシウム及び/又はマグネシウムイオン(Ca2+)と第VII因子ポリペプチドとの間を、比較的低い比率にするためには、例えばCa2+及び/又はMg2+を除去するのに適した条件下、イオン交換物質と組成物とを接触させることにより、又は過度のカルシウム及び/又はマグネシウムイオンと結合(錯化)させるため、カルシウム/マグネシウムキレート剤を添加することにより、過度のカルシウム及び/又はマグネシウムイオンを除去することが必要又は望ましい。このことは、特に、処方工程に先行するプロセシング工程から、溶液における、カルシウム及び/又はマグネシウムイオンと第VII因子ポリペプチドとの間の比率が、上述した限界を超えている場合に関連している。「カルシウム/マグネシウムキレート剤」の例には、EDTA、クエン酸、NTA、DTPA、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、HIMDA、ADA及び同様の化合物が含まれる。
【0071】
さらなる実施態様において、組成物は酸化防止剤(vi)をさらに含有する。種々の実施態様において、酸化防止剤は、L-メチオニン、D-メチオニン、メチオニン類似体、メチオニン含有ペプチド、メチオニン-ホモログ、アスコルビン酸、システイン、ホモシステイン、グルタチオン、シスチン、及びシススタチオニン(cysstathionine)からなる群から選択される。好ましい実施態様において、酸化防止剤はL-メチオニンである。酸化防止剤の濃度は、典型的には0.1-5.0mg/mL、例えば0.1-4.0mg/mL、0.1-3.0mg/mL、0.1-2.0mg/ml、又は0.5-2.0mg/mLである。
【0072】
特定の実施態様において、組成物は酸化防止剤を含有しないが、その代わり、酸化に対する第VII因子ポリペプチドの感受性を、大気を除去することによりコントロールする。もちろん、酸化防止剤の使用を、大気の除去と組合せてもよい。
よって、本発明は、ここで定められる、液状の水性製薬用組成物と、場合によっては不活性ガスを収容する、気密容器(例えばバイアル又はカートリッジ(例えば、ペン状アプリケータ用のカートリッジ))を提供する。不活性ガスは、窒素又はアルゴンからなる群から選択されてよい。容器(例えばバイアル又はカートリッジ)は、典型的にはガラス又はプラスチック、特にガラスで作製され、場合によってはゴム隔膜、又は製薬用組成物全体を保存しながら貫通を可能にする他の閉塞手段により閉塞されていてもよい。さらなる実施態様において、容器は、シールされたバッグ、例えばシールされたプラスチックバッグ、特にラミネートされたもの(例えば、金属(特にアルミニウム)でラミネートされたプラスチックバッグ)に封入されるバイアル又はカートリッジである。
【0073】
必須の成分、非イオン性界面活性剤(iv)、浸透圧修正剤(v)及び任意の酸化防止剤(vi)に加えて、製薬用組成物は、防腐剤(vii)をさらに含有していてよい。
防腐剤は、微生物の成長を遅らせるために組成物に含有せしめられ、よってFVIIポリペプチドの「多用途」包装を可能にする。防腐剤の例には、フェノール、ベンジルアルコール、オルト-クレゾール、メタ-クレゾール、パラ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。防腐剤は、通常は、pHの範囲及び防腐剤の種類に応じて、約0.1〜約20mg/mLの濃度で含有される。
【0074】
さらに、組成物は、脱アミド化及び異性体化を阻害可能な、一又は複数の薬剤を含有する。
【0075】
ここで使用される場合、「約」として特定されるpH値は、±0.1であると理解され、例えば約pH8.0はpH8.0±0.1を含む。
パーセンテージは、溶液に溶解した固体、及び溶液に混合された液体を言及する場合、双方とも(重量/重量)である。例えば、トゥイーン(登録商標)については、100%ストックの重量/溶液の重量である。
【0076】
本発明の組成物は、第VII因子ポリペプチドの安定した、好ましい使用準備が整った組成物として有用である。さらに、ここで付与される原則、指針及び特定の実施態様は、変更すべきところは変更して、第VII因子ポリペプチドの大量保存に、等しく適用されると考えられる。組成物は、2℃〜8℃の範囲の温度で保存される場合、典型的には少なくとも6ヶ月、好ましくは36ヶ月まで安定している。また組成物は、2℃〜8℃で、少なくとも6ヶ月保存された場合、化学的及び/又は物理的に安定、特に化学的に安定している。
「安定」なる用語は、(i)2℃〜8℃で6ヶ月保存した後、組成物が、本質的に本明細書のアッセイ3に記載したような、一工程の凝血アッセイで測定した場合に、最初の生物活性の少なくとも50%を保持している、又は(ii)2℃〜8℃で6ヶ月保存した後、重鎖分解生成物の含有量の増加度が、第VII因子ポリペプチドの最初の含有量の、最大40%(w/w)であることを示すことを意図している。
「最初の含有量」なる用語は、組成物の調製時、組成物に添加される第VII因子ポリペプチドの量に関する。
【0077】
一実施態様において、安定化組成物は、2〜8℃で6ヶ月保存した後、最初の生物活性の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を保持している。
本発明の種々の実施態様において、安定化組成物は、少なくとも30日、例えば60日、又は90日保存した後、本質的に本明細書のアッセイ3に記載したような、一工程の凝血アッセイで測定した場合に、最初の生物活性の少なくとも50%を保持している。
種々の実施態様において、安定化組成物における重鎖分解生成物の含有量の増加度は、第VII因子ポリペプチドの最初の含有量の、約30%(w/w)以下、約25%(w/w)以下、約20%(w/w)以下、約15%(w/w)以下、約10%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、又は約3%(w/w)以下である。
【0078】
重鎖分解生成物の含有量を測定する目的で、粒子径5μm及び孔サイズ300Åを有する、私有の4.5×250mmのブチル結合シリカカラムにおいて、逆相HPLCを実施した。カラム温度:70℃。Aバッファー:0.1%v/vのトリフルオロ酢酸。Bバッファー:0.09%v/vのトリフルオロ酢酸、80%v/vのアセトニトリル。30分、Xから(X+13)%Bの直線状勾配を用い、カラムを溶出させた。約26分の保持時間で、FVIIaが溶出されるように、Xを調節した。流量:1.0mL/分。検出:214nm。充填:25μgのFVIIa。
【0079】
第VII因子ポリペプチドの「物理的安定性」なる用語は、第VII因子ポリペプチドのダイマー、オリゴマー及びポリマー形態での、不溶性及び/又は溶解性の凝集体の形成、並びに分子の任意の構造的変形及び変性に関する。物理的に安定した組成物には、視覚的に透明性を保持している組成物が含まれる。多くの場合、組成物の物理的安定性は、組成物を種々の時間、異なる温度で保存した後の濁度及び視覚検査で評価される。組成物の視覚検査は、暗色背景で、鋭く集光されたライトにおいて実施される。組成物は、視覚的濁りを示す場合に、物理的に不安定であると分類される。
【0080】
「化学的安定性」なる用語は、加速条件下で、溶液での保存時、第VII因子ポリペプチドにおける任意の化学的変化の形成に関連していることを意図している。具体例は、第VII因子ポリペプチドの断片形成に至る、加水分解、脱アミド化、及び酸化、並びに酵素的分解である。特に、硫黄含有アミノ酸は、対応するスルホキシドの形成を伴い酸化する傾向にある。
「化学的安定性」なる用語は、一工程の凝血アッセイ(アッセイ3)で測定した場合に、2〜8℃で6ヶ月保存した後、その最初の生物活性の少なくとも50%を保持している組成物を称することを意図している。
【0081】
さらなる態様において、本発明は、約4.0〜約9.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤(ii);及びR-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤(iii)を含有する溶液に、少なくとも0.01mg/mL濃度で第VII因子ポリペプチド(i)を提供する工程を含む、第VII因子ポリペプチドの液状の水性製薬用組成物を調製する方法であって、該Rが、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、C1−6-アルコキシ、C1−6-アルキルアミノ、又はC2−6-ジアルキルアミノを表すRC(=O)-を示す組成物を調製する方法を提供する。
【0082】
使用方法
理解されるように、ここで定められた液状の水性製薬用組成物は、医薬の分野で使用することができる。よって、特に本発明は、薬剤、特に第VII因子-反応性疾患を処置する薬剤として使用される、ここで定められた液状の水性製薬用組成物を提供する。
【0083】
従って、本発明は、第VII因子-反応性疾患を処置する薬剤を調製するための、ここで定められた液状の水性製薬用組成物の使用、並びに第VII因子-反応性疾患を処置するための方法、ここで定められた液状の水性製薬用組成物を有効量、それを必要とする被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0084】
本発明の調製物は、任意の第VII因子-反応性疾患、例えば凝固因子欠乏症(例えば、血友病A、血友病B、第XI凝固因子欠乏症、第VII凝固因子欠乏症)、血小板減少症又はフォン・ヴィルブランド病、又は凝固因子インヒビターに起因するものを含む出血性疾患、及び脳内出血、又は任意の原因による過度の出血はの処置に使用されてよい。また調製物は、手術又は他の外傷のある患者、又は抗凝固治療を受けている患者に投与されてよい。
【0085】
「有効量」なる用語は、所望する患者応答を達成するための用量を調節する有資格者により決定される有効な用量である。用量を考慮するための要因には、有効性、生物学的利用能、所望する薬物動態/薬力学的プロフィール、処置状況、患者関連の要因(例えば、体重、健康状態、年齢等)、同時投与される薬物(例えば、抗凝固剤)の存在、投与時間、又は医療実施者に公知の他の要因が含まれる。
【0086】
「処置」なる用語は、病気、病状又は疾患の徴候を予防、軽減又は治癒することを目的として、被験者、例えば哺乳動物、特にヒトを管理及び世話することとして定義される。これには、徴候又は合併症の発症を予防し、又は徴候又は合併症を軽減し、又は病気、病状又は疾患を排除するために、第VII因子ポリペプチドを投与することを含む。第VII因子ポリペプチドを含有する本発明の製薬用組成物は、このような処置を必要とする被験者に、非経口的に投与されてよい。このような非経口的投与の非限定的例は、場合によってはペン様装置又は注入ポンプ等の手段により、皮下、筋肉又は静脈注射である。
【実施例】
【0087】
一般的方法
本発明での使用に適した精製されたヒト第VIIa因子は、好ましくは、例えばHagenら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 83: 2412-2416, 1986に記載されたような、又は欧州特許第0200421号(ZymoGenetics, Inc.)に記載されたような、DNA組換え技術により作製される。
【0088】
また第VII因子は、Broze及びMajerus, J. Biol.Chem. 255 (4): 1242-1247, 1980、及びHedner及びKisiel, J. Clin.Invest. 71: 1836-1841, 1983により記載されているような方法により生成されてよい。これらの方法により、検出可能な量の他の血液凝固因子を用いることなく、第VII因子が生じる。さらに精製された第VII因子調製物でさえ、最終精製工程として、付加的なゲル濾過を含むことにより得られる。ついで、第VII因子は、公知の手段、例えばいくつかの異なる血漿タンパク質、特に第XIIa因子、第IX因子又は第Xa因子により、活性化した第VIIa因子に転換される。また、Bjoernら(Research Disclosure, 269 9月, 1986, pp. 564-565)により記載されているように、第VII因子は、イオン交換クロマトグラフィー用カラム、例えばモノQ(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)等に通すことにより、又は溶液における自己活性化により活性化されてもよい。
【0089】
第VII因子-関連ポリペプチドは、野生型第VII因子を修飾、又は組換え技術により生成されてもよい。野生型第VII因子と比較した場合、変化したアミノ酸配列を有する第VII因子-関連ポリペプチドは、公知の手段、例えば部位特異性突然変異生成により、天然の第VII因子をコードする核酸中のアミノ酸コドンのいくつかを除去することにより、又はアミノ酸コドンを変化させることにより、野生型第VII因子をコードする核酸配列を修飾することで生成され得る。
【0090】
置換が、第VIIa因子分子の機能にとって重要な領域外でなされ、さらに活性化ポリペプチドに至ることは、当業者には明らかであろう。第VII因子ポリペプチドの活性化に必須であり、よって好ましくは置換を受けないアミノ酸残基は、当該問題で公知に手順、例えば部位指向性突然変異生成又はアラニン-スキャンニング突然変異生成(例えば、Cunningham及びWells, 1989, Science 244:1081-1085)により同定されてよい。後者の技術において、突然変異は、分子の全ての正に帯電した残基に導入され、得られた突然変異分子は、血液凝固性、それぞれの架橋結合活性についてテストされ、分子の活性に対して重要なアミノ酸残基が同定される。また、基質-酵素相互作用の部位は、核磁気共鳴分析、結晶学、又は光親和性標識等の技術により決定される三次元構造を分析することで、決定することができる(Vosら,1992, Science 255:306-312; Smithら, 1992, Journal of Molecular Biology 224:899-904; Wlodaverら, 1992, FEBS Lett. 309:59-64を参照)。
【0091】
一つのヌクレオチドを別のヌクレオチドに交換するために、核酸配列に変異を導入することは、当該技術で公知の任意の方法を使用する、部位指向性突然変異生成により達成される。特に有用なのは、関心ある挿入物、及び所望の突然変異を有する2つの合成プライマーと共に、スーパーコイル状(super-coiled)の二本鎖DNAベクターを利用する手順である。それぞれベクターの他方のストランドを補完する、オリゴヌクレオチドプライマーは、Pfu DNAポリメラーゼの手段により、温度サイクルの間、伸長する。プライマーの導入において、ねじれ型ニックを有する突然変異プラスミドが生じる。温度サイクルに続き、メチル化、及びヘミメチル化されたDNAに特異的なDpnIを用いて、生成物を処理し、親DNAテンプレートを消化させ、突然変異含有の合成DNAについて選択する。変異体の生成、同定及び単離について、当該技術で公知の他の手順、例えば遺伝子シャッフリング又はファージディスプレイ技術を使用してもよい。
【0092】
起源となる細胞からのポリペプチドの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養からの、所望の生成物を含有する細胞培養培地の除去;非接着細胞を除去する遠心分離又は濾過を含む、当該技術で公知の任意の方法により達成される。
【0093】
場合によっては、第VII因子ポリペプチドはさらに精製されてよい。精製は、限定されるものではないが、例えば、抗-第VII因子抗体カラムにおけるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashiら, J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; 及びThimら, Biochem. 27:7785, 1988を参照);疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動手順(例えば調製用の電点電気泳動(IEF)、微分溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈降)、又抽出等を含む、当該技術で公知の任意の方法を使用して達成され得る。一般的には、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, New York, 1982; 及びProtein Purification, J.C. Janson及びLars Ryden,編, VCH Publishers, New York, 1989を参照。精製後、調製物は、好ましくは約10重量%未満、さらに好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満の、宿主細胞から誘導された非-第VII因子ポリペプチドを含有する。
第VII因子ポリペプチドは、第XIIa因子、又はトリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼ、例えば第IXa因子、カリクレイン、第Xa因子、及びトロンビンを使用し、タンパク質分解的切断により活性化させてもよい。例えば、Osterudら, Biochem. 11:2853 (1972); Thomas, 米国特許第4,456,591号;及びHednerら, J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)を参照。また、第VII因子ポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばモノQ(登録商標)(Pharmacia)等に通すことにより、又は溶液における自己活性化によって活性化されてもよい。ついで、得られた活性化した第VII因子ポリペプチドは、本出願に記載するように製剤化され、投与されてよい。
【0094】
第VII因子ポリペプチドの生物活性を測定するのに適したアッセイ
本発明で有用な第VII因子ポリペプチドは、インビトロテストにおけるサンプルの予備試験として実施することが可能な、適切なアッセイにより選択され得る。
【0095】
インビトロ加水分解アッセイ(アッセイ1)
インビトロ加水分解アッセイは、第VIIa因子ポリペプチドの、他のペプチド又はタンパク質を切断する能力を評価数するために使用される。
天然(野生型)第VIIa因子及び第VIIa因子ポリペプチド(双方とも、以後「第VIIa因子」と称する)は、活性についてアッセイされてよい。またそれらは平行にアッセイされて、それらの活性と直接比較されてもよい。アッセイはマクロタイタープレート(Max-iSorp, Nunc, Denmark)において実施される。発色基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288、Chromogenix, Sweden)、最終濃度1mMを、20mMのCaClを含有する、20mMのイミダゾールバッファー、pH6.5に第VIIa因子(最終濃度200nM)が入ったものに添加する。405nmでの吸光度を、スペクトラマックスTM340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)にて、連続的に測定する。酵素を含有しないブランクウェルにおける吸光度を減算した後、30分のインキュベートの間に発生した吸光度の勾配を使用し、第VIIa因子活性の相対的測定値として使用する。
【0096】
一工程の凝固アッセイ(凝血アッセイ)(アッセイ3)
凝結アッセイは、第VIIaポリペプチドの血栓を作製する能力を評価するのに使用される。この目的のために、テストされるサンプルは、50mMのPIPES-バッファー(pH7.2)、0.1%のBSAで希釈され、40μlが、40μlの第VII因子欠損血漿、及び10mMのCa2+と合成リン脂質を含有する80μlのヒト組換え組織と共にインキュベートされる。凝固時間(凝血時間)を測定し、平行線アッセイにおいて参照標準体を使用し、標準体曲線と比較する。
【0097】
第VII因子ポリペプチドの分解度を測定するのに適したアッセイ
rFVIIa重鎖分解生成物の測定(アッセイ4)
以下の実施例において、第VIIa因子の重鎖断片化生成物の含有量は、以下に記載するようにして、RP-HPLCにより測定される:
粒子径5μm及び孔サイズ300Åを有する、私有の4.5×250mmのブチル結合シリカカラムにおいて、逆相HPLCを実施した。カラム温度:70℃。Aバッファー:0.1%v/vのトリフルオロ酢酸。Bバッファー:0.09%v/vのトリフルオロ酢酸、80%v/vのアセトニトリル。30分、Xから(X+13)%Bの直線状勾配を用い、カラムを溶出させた。約26分の保持時間で、FVIIaが溶出されるように、Xを調節した。流量:1.0mL/分。検出:214nm。充填:25μgのFVIIa。
【0098】
40K-PEG-rFVIIa重鎖断片化生成物の測定(アッセイ5)
40K-PEG-rFVIIaの重鎖断片化生成物の含有量を測定する目的で、ACE3μmC4、300Åの4.6×100mmカラム(Advanced Chromatography Technologies, part. no. ACE-213-1046)において、逆相HPLCを実施した。カラム温度:60℃。Aバッファー:0.05%v/vのトリフルオロ酢酸。Bバッファー:0.06%v/vのトリフルオロ酢酸、80%v/vのアセトニトリル。変性バッファー:6Mの塩酸グアニジン、50mMのトリス、5mMの塩化カルシウム、pH7.5。50μlの分析用サンプル+50μlの変性バッファー+5μlのDTT+1μlの酢酸からサンプルを調製し、60℃で15分インキュベートする。
30分、35から80%Bの直線状勾配を用い、カラムを溶出させた。流量:0.7mL/分。検出:214nm。充填:25μgのFVIIa。重鎖分解生成物の最初の含有量を、重鎖分解生成物の測定された含有量から引き、すなわち重鎖分解生成物の最初の含有量を0%にセットする。ついで、x時での重鎖分解生成物の含有量を算出する:
%=(HCDP(x)−HCDP(0))/(HCDP(x)−HCDP(0)+FVII(x))x100%
=(HCDP(x)−HCDP(0))/(FVII(0))x100%
ここでHCDP(x)は、x時での、重鎖分解生成物の測定された含有量であり、HCDP(0)は重鎖分解生成物の測定された最初の含有量であり、FVII(x)は、x時での、無傷第VII因子ポリペプチドの含有量である。
【0099】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施を例証するものである。これらの実施例は、例証目的のみを含み、何らの方法においても、請求された本発明の範囲を限定することを意図しているわけではない。
【0100】
実施例1
第VIIa因子のアミド分解活性におけるアルデヒドの影響を、インビトロ加水分解アッセイ(20mMのイミダゾール、pH6.5、20mMのCaCl)において示し、その結果を図1に例証する。アミド分解活性の明確な阻害が観察された。しかしながら、FVIIa変性による、見かけ阻害の可能性もある。この点に対処するために、FVIIaの変性温度を、アルデヒドの存在下で測定した。測定を、本質的に、Loら, Analytical Biochemistry 332, 153-159 (2004)に記載されている熱シフトアッセイのような、温度-蛍光により実施した。変性温度を、蛍光強度曲線の最大勾配の点として測定した。種々の濃度のアルデヒド(25mMのイミダゾール、pH6.5、20mMのCaCl、60mg/mlのスクロース)での変性温度を、図2に示す。3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド及びベンズアルデヒドのケースにおいては、高濃度のアルデヒドで、変性温度が大幅に低下することが示されている。よって、これら3つの化合物の阻害活性は、変性により引き起こされ得る。しかしながら、5-ホルミル-4-メチルイミダゾールのケースにおいて、変性温度は約約100mMの濃度まで影響を受けず、第VIIa因子の構造的完全性を示唆している。
【0101】
FVIIaポリペプチドにおけるアルデヒドの影響をさらに調査するために、ある分解生成物(1-290の断片)を、5℃で2週間保存した後(15mg/mlのrFVIIa、10mMのイミダゾール、pH6,5、20mMのCaCl2、24mg/mlのスクロース、0.2mg/mlのメチオニンのバッファーにおいて)(「標準体」として使用され、溶解直後に分析されるノボセブン(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)測定した。290位での切断を含む断片のパーセンテージ含有量を、図3において、種々のアルデヒド濃度にて示す。分析された全てのアルデヒドにおいて、FVIIa断片化の量の低下が見られた。
【0102】
活性回復の重要な点に対処するために、第VIIa因子(17mg/ml)を、7mMのベンズアルデヒド(1時間、10mMのイミダゾール、35mMのCaCl2、pH6.5)とインキュベートし、ついで0.1mg/mlの第VIIa因子まで希釈した。ついで、アミド分解活性を測定した。図4には、FVIIa/ベンズアルデヒド溶液を0.1mg/mlのFVIIaに希釈した後(「F7希釈ベンズアルデヒド有り」)、時間に対して、基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix,Sweden)をプロセシングすることにより生じた吸光度を示す。結果を、アルデヒドを含有しない(「F7 w/o 希釈されたベンズアルデヒド」)希釈されたFVIIa溶液(ノボセブン(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)の蓄積活性と比較した。
【0103】
実施例2
rFVIIaの安定性におけるアルデヒド化合物の影響を調査するために、次の初稿物を調製する:
製剤1:
1.0mg/mL rFVIIa
10mM ヒスチジン
10mM 酢酸ナトリウム
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
50mM 5-ホルミル-4-メチルイミダゾール
pH=6.5
【0104】
製剤2:
1.0mg/mL rFVIIa
10mM ヒスチジン
10mM 酢酸ナトリウム
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
50mM 5-ホルミル-4-メチルイミダゾール
pH=7.0
【0105】
製剤3:
1.0mg/mL rFVIIa
10mM ヒスチジン
10mM 酢酸ナトリウム
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
pH=6.5
【0106】
製剤4:
1.0mg/mL rFVIIa
10mM ヒスチジン
10mM 酢酸ナトリウム
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
pH=7.0
【0107】
製剤を、10mMのヒスチジン、10mMの酢酸ナトリウム、及び50mMの5-ホルミル-4-メチルイミダゾール(製剤1及び2のみ)を、上述した濃度でグリシルグリシン、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを既に含有している、1.0mg/mLのrFVIIaのバルク溶液に添加することにより調製する。1Mの水酸化ナトリウム及び1Mの塩酸を用い、pHを、最終的にそれぞれ6.5及び7.0に調節する。
製剤を5℃及び30℃の温度で保存し、重鎖分解生成物の形成についての分析を実施する。
【0108】
実施例3
次の液状の水性製薬用組成物の製剤を考慮する:
A) rhFVIIa 1mg/mL(約50000IU/mL)
PIPES 15.12mg/mL(50mM)
5-ホルミル-4-メチルイミダゾール 10−50mM
ポロキサマー188 0.5mg/mL
塩化ナトリウム 2.92mg/mL(50mM)
塩化カルシウム2HO 1.47mg/mL(10mM)
メチオニン 0.5mg/mL
1MのNaOH/1MのHCl pHが6.5になるまで添加
【0109】
B) rhFVIIa 1mg/mL(約50000IU/mL)
PIPES 15.12mg/mL(50mM)
ベンズアルデヒド 10−50mM
ポロキサマー188 0.5mg/mL
塩化ナトリウム 2.92mg/mL(50mM)
塩化カルシウム2HO 1.47mg/mL(10mM)
メチオニン 0.5mg/mL
1MのNaOH/1MのHCl pHが6.5になるまで添加
【0110】
C) rhFVIIa 1mg/mL(約50000IU/mL)
PIPES 15.12mg/mL(50mM)
3-ヒドロキシベンズアルデヒド 10−50mM
ポロキサマー188 0.5mg/mL
塩化ナトリウム 2.92mg/mL(50mM)
塩化カルシウム2HO 1.47mg/mL(10mM)
メチオニン 0.5mg/mL
1MのNaOH/1MのHCl pHが6.5になるまで添加
【0111】
D) rhFVIIa 1mg/mL(約50000IU/mL)
PIPES 15.12mg/mL(50mM)
4-ヒドロキシベンズアルデヒド 10−50mM
ポロキサマー188 0.5mg/mL
塩化ナトリウム 2.92mg/mL(50mM)
塩化カルシウム2HO 1.47mg/mL(10mM)
1MのNaOH/1MのHCl pHが6.5になるまで添加
【0112】
続いて、製薬用組成物A-Dは、窒素又はアルゴンでフラッシュした滅菌バイアル又はカートリッジに移され、ついで、気密性のアルミニウムラミネートされたプラスチックバッグに包装することができる。
【0113】
実施例4:
FVIIaを含有する液体製剤を用いた安定化実験を実施した。全てのサンプルの条件を、10mMのHis、pH6.5、20mMのCaCl、6%のスクロース、0.5mg/mlのメチオニン、12.5mg/mlのrFVIIaとした。500μlのクリオチューブ(cryotubes)に、0、10、20、40及び80mMのベンズアルデヒドが入った50μl溶液を調製し、5℃で4週間インキュベートし、ついで、−80℃で凍結させた。さらに、ベンズアルデヒドを含有しない参照サンプルを調製し、すぐに−80℃で凍結させた。分析用に、全てのサンプルを解凍し、10mMのヒスチジン、pH5.5において、1ml容量まで希釈し、重鎖断片化について分析した。図5には、全第VIIa因子含有量のパーセンテージとしての断片化(「%断片化」)が示されている。断片化は、ベンズアルデヒドの存在下、特に10mM以上の濃度でかなり低下することは明らかである。
【0114】
実施例5
40K-PEG-rFVIIaを含有する液体製剤を用いた安定化実験を実施した。製剤は以下の組成を有する:

【0115】
PEG部分を、40K-PEG-rFVIIa濃縮物の記述において削除する。全てのサンプルにおいて、pHは6.5であった。0、1/2、1及び2ヶ月において、70μlのアリコートを安定化サンプルから取り出し、1mg/mlの40K-PEG-rFVIIaに希釈し、凝血活性(Δ活性度)、FVIIaポリペプチド断片化(Δ断片)、ダイマー/2-PEG、及び高分子量のタンパク質についてアッセイした。いずれのサンプルも、ダイマー/2-PEG又は高分子量のタンパク質において、何の増加も見られなかった。表2は、3つの製剤について、5℃で2ヶ月後の、FVIIポリペプチド断片化における変化、及び凝血活性における相対的変化を示す。

【0116】
結果には、28mMのベンズアルデヒドを添加することにより、参照製剤と比較して、断片化が少々低下し、活性の喪失に至ったことが示されている。他方、180mMの5-ホルミル-4-メチルイミダゾールは、断片化を大幅に低下させ、FVIIaポリペプチドの安定性をかなり改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも0.01mg/mLの第VII因子ポリペプチド;
(ii)約5.0〜約7.0の範囲のpHを維持するのに適した緩衝剤;及び
(iii)R-CHOモチーフを有する少なくとも一の安定剤を含有し、該Rが、ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、C1−6-アルコキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、シアノ、又はハロゲンで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、C1−6-アルキル、C2−6-アルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、C1−6-アルコキシ、C1−6-アルキルアミノ、又はC2−6-ジアルキルアミノを表すRC(=O)-を示す、液状の水性製薬用組成物。
【請求項2】
Rが、ヒドロキシ、メトキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、メチル、エチル、イソプロピル、又はシアノで一回又は複数回置換されていてもよいアリール;ヒドロキシ、メトキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、メチル、エチル、イソプロピル、又はシアノで一回又は複数回置換されていてもよいヘテロアリール;R、R、及びRが独立して、水素、メチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、アミノ、ジメチルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、メトキシ、エトキシ、メチルアミノ、又はジメチルアミノを表すRC(=O)-を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rが、ヒドロキシ、カルボキシル、又はヒドロキシメチルで一回又は複数回置換されていてもよいフェニル;ヒドロキシ、カルボキシル、ヒドロキシメチル、又はメチルで一回又は複数回置換されていてもよいイミダゾリル;R、R、及びRが独立して、水素、メチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、又はジメチルアミノメチルを表すRC-;Rがメチル、エチル、ヒドロキシ、アミノ、メトキシ、エトキシ、メチルアミノ、又はジメチルアミノを表すRC(=O)-を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
安定剤(iii)が、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ピバル酸アルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、イソブチルアルデヒド、4-メチル-5-ホルミルイミダゾール、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシピバアルデヒド、、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、サリチルアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2-カルボキシベンズアルデヒド、4-カルボキシベンズアルデヒド、2-ホルミルピリジン、3-ホルミルピリジン、4-ホルミルピリジン、2-ホルミルイミダゾール、4-ホルミルイミダゾール、及び2-ヒドロキシメチル-4-ホルミルイミダゾールからなる群から選択される少なくとも一である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
安定剤(iii)の濃度が、少なくとも1μM、例えば少なくとも1mM;例えば少なくとも2mMである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
第VII因子ポリペプチドがヒト第VII(a)因子である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
第VII因子ポリペプチドがペグ化又はグリコペグ化されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
第VII因子ポリペプチドは第VII(a)因子配列変異体である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
第VII因子ポリペプチドの活性と天然ヒト第VIIa因子(野生型FVIIa)の活性との間の比率が、ここに記載の「インビトロタンパク質分解アッセイ」(アッセイ2)でテストした場合に、少なくとも1.25である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
第VII因子ポリペプチドが、約0.01−30.0mg/mLの濃度で存在している、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
約5.0〜約7.0;例えば約5.0〜約6.5;例えば約5.0〜約6.0;例えば約5.5〜約7.0;例えば約5.5〜約6.5;例えば約6.0〜約7.0;例えば約6.0〜約6.5;例えば約6.3〜約6.7;又は約5.2〜約5.7の範囲のpH値を有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
緩衝剤(ii)が、MES、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、トリス、ヒスチジン、イミダゾール、グリシン、グリシルグリシン、グリシンアミド、リン酸、酢酸、乳酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びコハク酸からなる群から選択される少なくとも一の成分を含む、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
緩衝剤(ii)の濃度が1−100mMである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(iii)が、約0.5-200mMの濃度の5-ホルミル-4-メチルイミダゾールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
(iii)が、約0.5−100mMの濃度のベンズアルデヒドである、請求項7に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−504477(P2011−504477A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534483(P2010−534483)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065959
【国際公開番号】WO2009/065918
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】