説明

アルデヒド基含有共重合体の製造方法

【課題】 原料モノマー中のアルデヒド基を効率よく共重合体中に遊離のアルデヒド基として存在させることが可能なアルデヒド基含有共重合体の製造方法を提供することである。
【解決手段】 少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を配合割合(モル比)2:98乃至45:55とし、非水性溶媒中で重合することにより、共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上が遊離アルデヒド基として存在することを特徴とする共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド基含有共重合体の製造方法に関し、より詳細には、所定濃度の遊離アルデヒド基を含有するアルデヒド基含有共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスバリア性樹脂としては種々のものが使用されており、特にポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体等がガスバリア性樹脂として知られている。しかしながら、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリルは、環境の問題からその使用を控える傾向があり、エチレンビニルアルコール共重合体においては、ガスバリア性の湿度依存性が大きく、高湿度条件下ではガスバリア性が低下するという問題があった。
包装材料にガスバリア性を付与する方法としては、基材の表面に無機物を蒸着したフィルムも知られているが、これらのフィルムはコストが非常に高く、しかも蒸着フィルムの可撓性や基材又は他の樹脂層との接着性に劣るという問題を有している。
【0003】
このような問題を解決するために、基材に、水溶液高分子Aと水溶性または水分散性の高分子Bと、無機系層状化合物から成る被膜を形成したガスバリアフィルム(特許文献1)や、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール類との混合物から成る成形物層の表面に金属化合物を含む層を塗工して成るガスバリア性フィルム(特許文献2)、或いはポリビニルアルコールとエチレン−マレイン酸共重合体と2価以上の金属化合物を含有するガスバリア性塗料(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
下記特許文献1乃至3に記載されたガスバリア材は、高湿度条件下におけるガスバリア性は改善されているとしても、包装材料としての多様な要求に耐え得るものではなく、未だ充分満足し得るものではない。
すなわち下記特許文献1に記載されたガスバリアフィルムにおいては、塗膜中に無機層状化合物が分散されているだけであるため、優れたガスバリア性を得るために無機層状化合物を多量に添加する必要があり、透明性や機械的強度が低下するという問題があると共に耐レトルト性にも劣っている。また下記特許文献2に記載されたガスバリア性フィルムでは、塗膜の硬化に高温且つ長時間の熱処理が必要であり、また下記特許文献3に記載されたガスバリア性塗料においても、短時間で塗膜の硬化を行う場合には高温で熱処理することが必要であり、下記特許文献2及び3に記載されたガスバリア材においてはプラスチック基体への影響が大きいと共に生産性の点で問題がある。
【0005】
このような観点から本発明者等は、アルデヒド基含有ビニルモノマーと他のビニルモノマーから成る共重合体中の遊離のアルデヒド基のアセタール化を利用して架橋構造を形成したガスバリア材を開発した(同日付特許出願)。
一方、アセトアルデヒド含有重合体の製造方法も種々提案されており、下記特許文献4には、遊離のアルデヒド基を重合体中に40%以下の量で含有するアルデヒド基含有重合体が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−151264号公報
【特許文献2】特開2000−931号公報
【特許文献3】特開2004−115776号公報
【特許文献4】特開昭51−125484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アルデヒド基は反応性に富むことから水やアルコールと容易に反応するため、アルデヒド基含有ビニルモノマー中のアルデヒド基の多くを共重合体中に遊離のアルデヒド基として存在させることは困難であり、本発明者等の知る限り、アルデヒド基含有共重合体中の遊離のアルデヒド基を効率よく残存させる方法は本発明者の知る限り提案されていない。
【0008】
従って本発明の目的は、原料モノマー中のアルデヒド基を効率よく共重合体中に遊離のアルデヒド基として存在させることが可能なアルデヒド基含有共重合体の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、優れたガスバリア性及び耐レトルト性を有するガスバリア材を形成可能な所定濃度の遊離アルデヒド基を含有するアルデヒド基含有共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を配合割合(モル比)2:98乃至45:55とし、非水性溶媒中で重合することにより、共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上が遊離アルデヒド基として存在することを特徴とする共重合体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法においては、
1.ビニルモノマー(A)が(メタ)アクロレインであること、
2.ビニルモノマー(B)がカルボキシル基含有ビニルモノマー、特にアクリル酸であること、
3.非水性溶媒が環状エーテルを80重量%以上の量で含有する混合溶媒であり、かかる環状エーテルがテトラヒドロフランであること、
4.ビニルモノマー(A)とビニルモノマー(B)の配合割合(モル比)が、A:B=5:95乃至30:70であること、
5.重合がラジカル重合であること、
が好適であり、本発明の製造方法により得られた共重合体はガスバリア材を形成するのに好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上を遊離のアルデヒド基として存在させることができ、原料モノマー中のアルデヒド基を効率よく共重合体中に遊離のアルデヒド基として存在させることが可能な製造方法を提供することができる。
また本発明の製造方法により得られた共重合体は、所定濃度の遊離アルデヒド基のアセタール化による架橋構造の形成が可能で、優れたガスバリア性及び耐レトルト性を有するガスバリア材を形成可能であり、本発明によればこのようなガスバリア材を効率よく製造可能な共重合体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては、少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を配合割合(モル比)2:98乃至45:55とし、非水性溶媒中で重合することが重要な特徴であり、これにより少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を共重合して成る共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上を遊離のアルデヒド基として存在させることが可能となるのである。
すなわち本発明の製造方法によれば、共重合体中に反応性の遊離のアルデヒド基を効率よく残存させることが可能となり、アルデヒド基含有ビニルモノマー(A)の仕込み量を増加させることなく、効率よく共重合体中の遊離のアルデヒド基を増加させることが可能となる。これにより本発明により得られる共重合体は、遊離のアルデヒド基を効率的に含有し、アルデヒド基のアセタール化による架橋構造の形成を有効に行うことが可能となるのである。
また本発明の製造方法により得られる共重合体は、高水素結合性共重合体であり、優れたガスバリア性を発現することが可能となる。
【0013】
(製造方法)
本発明の共重合体の製造方法においては、アルデヒド基含有ビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を非水性溶媒中で行う限り、その重合形式は特に問わないが、特にラジカル重合により行うことが好ましい。本発明において非水性溶媒中で重合を行うのは、溶媒中に多量の水が存在すると共重合体中の遊離のアルデヒド基が水和反応をおこしてしまうため、共重合体中の全アルデヒド基の30%以上を遊離アルデヒド基とすることが困難になるからである。
【0014】
本発明における溶媒は非水性溶媒であれば特に構わないが、モノマー及び重合体に対する良溶媒である事から極性溶媒が好ましく、特に環状エーテルが好ましい。その中でもテトラヒドロフランがより好ましい。混合溶媒で用いる場合は前記環状エーテルを80重量%以上含有することが好ましい。遊離アルデヒド基の量を低減させないという点からは、非水性溶媒はアルデヒド基とアセタール化反応をするアルコールを有しないことが望ましいが、共重合を効率よく行う観点からは連鎖移動剤としてアルコールを少量含有していることが望ましい。
【0015】
本発明においてアルデヒド基含有ビニルモノマー(A)としては、少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマーであればよく、アルデヒド基以外にもアルキル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、スルフォニル基等の官能基を有していてもよい。
アルデヒド基含有ビニルモノマー(A)としては、アクロレイン(アクリルアルデヒド)、メタクロレイン(メタクリルアルデヒド)、クロトンアルデヒド等を最も好適に使用することができる。
【0016】
本発明において、アルデヒド基含有ビニルモノマー(A)と共に重合する他のビニルモノマー(B)としては、水素結合性を有するビニルモノマーであれば何でも構わないが、カルボキシル基含有ビニルモノマー(B)であることが好ましく、これにより得られる共重合体は、遊離アルデヒド基のアセタール化による架橋構造と共に、カルボキシル基にイオン架橋による架橋構造を導入することが可能となり、優れた耐レトルト性と高湿度条件下における優れたガスバリア性を発現することが可能となるのである。
上記カルボキシル基含有ビニルモノマー(B)としては、これに限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、フマル酸等のモノ又はジカルボン酸モノマーを挙げることができる。
【0017】
本発明の製造方法に用いる非水性溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等の環状エーテルの他、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、トルエン、等を挙げることができるが、前述した通り、本発明においては、環状エーテルとアルコールの混合溶媒、特にテトラヒドロフランとイソプロピルアルコールの混合溶媒を好適に使用することができる。混合溶媒中の環状エーテルとアルコールの配合割合は重量比で、97:3乃至80:20、特に95:5乃至90:10の範囲にあることが望ましい。上記範囲よりもアルコールの量が少ないと重合効率に劣り、その一方上記範囲よりもアルコールの量が多いと得られる共重合体中の遊離アルデヒド基の量が低減するおそれがある。
【0018】
本発明における共重合体中の上記ビニルモノマー(A)及びビニルモノマー(B)の比率は、A:B=2:98乃至45:55であり、好適には、5:95乃至30:70の組成比で含有していることが好ましく、これにより共重合体を優れたガスバリア材として使用することが可能となる。
【0019】
共重合体の重合に用いる重合開始剤としては、従来公知のベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系、過硫酸カリウム,過硫酸ナトリウム,過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用することができるが、中でもアゾ化合物を好適に使用することができる。
ラジカル開始剤の配合量は、特に限定されないが、一般にはビニルモノマー(A)及び(B)の合計量に対して、0.0005乃至0.1モル%の範囲にあることが好ましい。
【0020】
重合温度は、20乃至70℃、特に25乃至55℃の範囲にあることが好ましく、上記範囲よりも重合温度が低いと重合速度が低く、上記範囲よりも重合温度が高いと一部遊離アルデヒド基が反応してしまいゲル化等が生じるため好ましくない。
また重合時間は、重合温度や仕込み量によっても相違するが、一般に0.5乃至144時間、特に2乃至48時間の範囲にあることが好適である。
共重合体は、5000乃至150000、特に10000乃至100000の数平均分子量を有することが好ましい。
【0021】
(ガスバリア材形成用共重合体)
本発明の製造方法により得られた共重合体は、アルデヒド基を有するビニルモノマーから成る共重合体であることから、高度の水素結合を有する高水素結合性の共重合体であり、良好なガスバリア性を発現することが可能である。しかも共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上が遊離アルデヒド基として存在するものであることから、この遊離の官能基を架橋点として、高水素結合性を損なうことなく高水素結合性共重合体同士を自己架橋させることができ、耐レトルト性をも有するガスバリア材を提供することが可能となるのである。
【0022】
更に、他のビニルモノマー(B)として、カルボキシル基含有ビニルモノマーを使用した場合には、ビニルモノマー(B)に由来するカルボキシル基を更に金属イオン架橋することによって、高湿度条件下におけるガスバリア性を更に向上させることができ、高湿度条件下においても損なわれることのない優れたガスバリア材を提供することが可能となるのである。この場合には、本発明方法により得られる共重合体は、カルボキシル基を酸価580mgKOH/g以上含有することが好ましく、共重合体同士の架橋後に、少なくとも酸価330mgKOH/gの量に相当するカルボキシル基を金属イオン架橋することが特に好ましい。
【0023】
本発明の製造方法により得られた共重合体は、これを溶媒中に溶解又は分散させたコーティング液として調製し、フィルム、シート、ボトル、カップ等のプラスチックから成る各種基体に上に塗布してこれを加熱硬化させてプラスチック基体表面或いは層間にガスバリア層を形成して用いることもできるし、かかる共重合体を基体上で形成した後、基体から取外して単層のフィルム又はシートとして形成することもできる。
【0024】
コーティング液は、上述した共重合体を溶媒に溶解又は分散させて成る溶液又は分散液に、必要により酸触媒や無機分散体を配合して、混合後必要に応じて再度機械的な分散を実施して調製することができる。
上記共重合体を溶解或いは分散可能な溶媒としては、これに限定されないが、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等を挙げることができる。また複数の溶媒を組み合わせたものでもよい。
共重合体は、コーティング液中3乃至50重量%、特に5乃至40重量%の固形分濃度で含有されていることが望ましい。上記範囲よりも少ない場合には、必要な膜厚の塗膜を形成することが困難であると共に、充分なガスバリア性を付与できないおそれがある。一方上記範囲よりも多い場合には、コーティング液の粘度が高くなりすぎて塗工性に劣る。
【0025】
本発明の共重合体を含有するコーティング液は、アルデヒド基同士或いはアルデヒド基とカルボキシル基との反応を促進するための酸触媒を含有することが特に好ましい。これにより、前述した本発明のガスバリア性樹脂に特有の架橋構造を効率的に塗膜に導入することが可能となる。
アルデヒド基同士或いはアルデヒド基とカルボキシル基との反応を促進するための酸触媒としては、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、安息香酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等の一価の酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ポリカルボン酸等のニ価以上の酸を挙げることができるが、特に一価の酸が好ましく、具体的にはパラトルエンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0026】
酸触媒は、コーティング液中の共重合体100gに対して1乃至100mmol、特に2.5乃至80mmolの範囲で用いることが好ましい。尚、ニ価以上の酸触媒を用いる場合には、価数nで上記範囲を割った値を用いることが好ましい。
尚、酸触媒は、アルデヒド基同士或いはアルデヒド基とカルボキシル基との反応を促進するものなので、コーティング液の保存安定性(粘度)を考慮すると、プラスチック基体に塗布する直前に他の成分と混合することが好ましい。
コーティング液には、ガスバリア性向上のために配合し得る上述した無機分散体の他、必要によりそれ自体公知の配合剤、例えば、界面活性剤、充填剤、着色剤、添加剤等を従来公知の処方で配合することができる。
【0027】
コーティング液の基体への塗布の方法としては、このコーティング液中に基体を浸漬して塗布する方法、或いはこのコーティング液をスラッシュコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート等の方法により塗布することができる。一般に必要ではないが、基体への塗布は、所望により二回以上にわたって行うことも勿論できる。またプラスチック基体がコーティング液に対する濡れ性を有していない或いは少ない場合には、プラスチック基体のコーティング液を塗布する面をコロナ放電処理、オゾン処理、短波長紫外線照射処理、火炎処理などに賦してもよい。
【0028】
コーティング液の乾燥及び架橋は、コーティング液の塗布量などによっても相違するが、80乃至170℃という低温で5秒間乃至2分間という短時間の加熱処理によって行うことができる。このため塗膜の加熱による基体への影響が小さく、また生産性にも優れている。
加熱の方式は特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気での加熱処理や、熱ロールとの接触による加熱処理等を行ってもよい。また加熱処理に先立って、ドライヤーによる熱風の吹き付けや赤外線照射等により溶媒を蒸発させて乾燥被膜を形成させた後、加熱処理を行うこともできる。
【実施例】
【0029】
「分子量測定」
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定を行った。測定条件は以下の通り。
装置 :東ソー(株)製 HLC−8020
カラム:東ソー(株)製 TSK−GEL Alpha M
溶離液:N,N‘−ジメチルフォルムアミド
(臭化リチウム及びリン酸を各々10mM/L含む)
【0030】
「遊離アルデヒド基の定量」
共重合体中の遊離アルデヒド基の定量のため核磁気共鳴装置(日本電子社製 JNM−EX270型)を用い、プロトン核磁気共鳴測定を行った。得られるチャートから遊離アルデヒド基由来の9.5〜9.6ppmに現れるピークとビニルモノマー(B)の官能基であるカルボキシル基由来の11.8〜13.5ppmに現れるピークの強度比より、総アルデヒド基に対する遊離アルデヒド基の割合を求めた。即ち
A :遊離アルデヒド基量
A+B:総アルデヒド基量
C :ビニルモノマー(B)の官能基量
遊離アルデヒド基量の割合(%):100×A/(A+B)
【0031】
「酸素バリア性の評価」
共重合体をテトラヒドロフラン、エタノール等の溶剤で固形分濃度を20重量%に調整した後、酸触媒として、パラトルエンスルホン酸を所定量加え十分混合した。このコーティング液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗装、乾燥した後50℃に保った水道水中に3日間浸漬した。このフィルムを120℃―30分のレトルト処理をおこなった後酸素透過量測定装置(Modern Control社製、OX−TRAN2/20)を用い酸素透過量を測定した。測定条件は環境温度25℃、相対湿度80%である。
【0032】
(実施例1)
500mLの四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を装着し、温度制御された湯浴中にセットした。十分窒素置換した後、テトラヒドロフラン63g、イソプロピルアルコール7g、ビニルモノマー(A)としてアクロレイン3.1g(0.05mol)、ビニルモノマー(B)としてアクリル酸68.4g(0.95mol)を加え、30℃に保ち1時間窒素置換を続けた。
続いて、アゾ系開始剤(商品名V−70 和光純薬製)0.77g(0.0025mol)を必要量のテトラヒドロフランに溶解させ、一度に加えた。温度を30℃に維持したまま、24時間重合を続けた。得られた溶液にテトラヒドロフランを100g加え、粘度を調整し、共重合体溶液を得た。一部を200℃で十分乾燥したところ転化率は98%であった。
数平均分子量 :22000
遊離アルデヒド量:100%
酸素透過量 :2.8cc/m/day/atm
【0033】
(実施例2)
ビニルモノマー(A)を18.8g(0.3mol)、ビニルモノマー(B)を50.0g(0.7mol)とする以外は実施例1と同様に行った。転化率は97%であった。
数平均分子量 :30000
遊離アルデヒド量:57%
酸素透過量 :9.7cc/m/day/atm
【0034】
(実施例3)
ビニルモノマー(A)を6.3g(0.1mol)、ビニルモノマー(B)を64.3g(0.9mol)とする以外は実施例1と同様に行った。転化率は99%であった。
数平均分子量 :20000
遊離アルデヒド量:50%
酸素透過量 :0.7cc/m/day/atm
【0035】
(実施例4)
ビニルモノマー(A)を19.6g(0.35mol)、ビニルモノマー(B)を46.9g(0.65mol)とする以外は実施例1と同様に行った。転化率は96%であった。
数平均分子量 :36000
遊離アルデヒド量:43%
酸素透過量 :24cc/m/day/atm
【0036】
(比較例1)
500mLの四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を装着し、温度制御された湯浴中にセットした。十分窒素置換した後、テトラヒドロフラン56g、イソプロピルアルコール7g、蒸留水7g、ビニルモノマー(A)を6.3g(0.1mol)、ビニルモノマー(B)を64.3g(0.9mol)を加え、30℃に保ち1時間窒素置換を続けた。
続いて、アゾ系開始剤(商品名V−70 和光純薬製)0.77g(0.0025mol)を必要量のテトラヒドロフランに溶解させ、一度に加えた。温度を30℃に維持したまま、48時間重合を続けた。得られた溶液にテトラヒドロフランを100g加え、粘度を調整し、共重合体溶液を得た。一部を200℃で十分乾燥したところ転化率は98%であった。
数平均分子量 :45000
遊離アルデヒド量:15%
酸素透過量 :88cc/m/day/atm
【0037】
(比較例2)
500mLの四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を装着し、温度制御された湯浴中にセットした。十分窒素置換した後、テトラヒドロフラン63g、イソプロピルアルコール7g、ビニルモノマー(A)を0.6g(0.01mol)、ビニルモノマー(B)を71.3g(0.99mol)を加え、30℃に保ち1時間窒素置換を続けた。
続いて、アゾ系開始剤(商品名V−70 和光純薬製)0.77g(0.0025mol)を必要量のテトラヒドロフランに溶解させ、一度に加えた。1〜2分程度で重合熱による熱暴走が起こり、数分の間激しく突沸した。その後徐々に温度は低下していき、室温程度まで下がった後、得られた溶液にテトラヒドロフランを100g加え、粘度を調整し、共重合体溶液を得た。一部を200℃で十分乾燥したところ転化率は94%であった。
数平均分子量 :25000
遊離アルデヒド量:100%
酸素透過量 :レトルト処理によりコーティング層が溶解
【0038】
(比較例3)
500mLの四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を装着し、温度制御された湯浴中にセットした。十分窒素置換した後、テトラヒドロフラン63g、イソプロピルアルコール7g、ビニルモノマー(A)を28.0g(0.5mol)、ビニルモノマー(B)を36.1g(0.5mol)を加え、30℃に保ち1時間窒素置換を続けた。
続いて、アゾ系開始剤(商品名V−70 和光純薬製)0.77g(0.0025mol)を必要量のテトラヒドロフランに溶解させ、一度に加えた。温度を30℃に維持したまま、72時間重合を続けた。得られた溶液にテトラヒドロフランを100g加え、粘度を調整し、共重合体溶液を得た。一部を200℃で十分乾燥したところ転化率は97%であった。
数平均分子量 :20000
遊離アルデヒド量:65%
酸素透過量 :90cc/m/day/atm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルデヒド基を含有するビニルモノマー(A)と他のビニルモノマー(B)を配合割合(モル比)2:98乃至45:55とし、非水性溶媒中で重合することにより、共重合体中のアルデヒド基の少なくとも30%以上が遊離アルデヒド基として存在することを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ビニルモノマー(A)が(メタ)アクロレインである請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記ビニルモノマー(B)がカルボキシル基含有ビニルモノマーである請求項1又は2記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記非水性溶媒が環状エーテルを80重量%以上の量で含有する混合溶媒である請求項1乃至3の何れかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記環状エーテルがテトラヒドロフランである請求項4記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ビニルモノマー(A)とビニルモノマー(B)の配合割合(モル比)が、A:B=5:95乃至30:70である請求項1乃至5の何れかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記重合がラジカル重合である請求項1乃至6の何れかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記共重合体がガスバリア材形成用共重合体である請求項1乃至7の何れかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−274198(P2006−274198A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99728(P2005−99728)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】