説明

アルホルモテロール及びチオトロピウムの組成物及びその使用方法

本発明は、気道疾患及び/又は呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物は、アルホルモテロール((R,R)−ホルモテロール異性体)及びチオトロピウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、2008年10月23日出願の米国仮出願番号第61/107,794号の全体が参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、気道及び/又は呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための、アルホルモテロール((R,R)−ホルモテロール異性体)及びチオトロピウムを含む組成物に関する。種々の態様において、本組成物は、ネブライザーに用いるのに適する。
【発明の背景】
【0003】
喘息、気管支炎及び気腫は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)として知られている。COPDは、慢性気管支炎、喘息、及び気腫の種々の程度の症状に関連した、全身性の気道閉塞症、とりわけ、末梢気道閉塞症と特徴付けられている。世界的に見て、COPDは、世界中で最も流行している非感染性疾患の一つである。COPDは、骨粗しょう症、骨折、呼吸器感染、肺癌、及び心臓血管疾患を含む他の重篤な共存する病的状態(co-morbidities)の一因であるので、COPDの健康及び費用負担はさらに大きくなっている。
【0004】
CODPという用語が導入された理由は、これらの状態がしばしば共存するからであり、閉塞を生じさせている主要な状態がいずれであるかを個々のケースで決定するのは困難となることがあるからである。気道閉塞は、努力呼気(forced expiration)の間の気流に対する増加した抵抗と定義される。これは、内因性の気道疾患に続いて起こる気道の狭窄又は閉塞によって、肺気腫に続いて起こる努力呼気の間の気道の過度の虚脱によって、若しくは喘息に見られるような気管支痙攣によって生ずることがあり、又はこれらの要因の組合せによるものであることがある。太い気道の閉塞はこれらのすべての疾患、とりわけ、喘息において生ずることがあるが、重篤なCOPDを伴う患者は、特徴的に、末梢気道(small airway)、すなわち、内径が2mmより小さい気道に主たる異常を有しており、そしてその気道閉塞の大部分はこの領域にある。気道閉塞は、喘息に原因があるとすることができる場合を除いて不可逆的である。
【0005】
喘息は、気道の増大した反応性を特徴とする可逆的な閉塞性肺疾患である。喘息は種々の刺激に続発して生ずることがある。その内在する機序は知られていないが、気道内径のアドレナリン作動性又はコリン作動性調節の遺伝的又は後天的な平衡失調が原因とされてきた。前記平衡失調を示す人は活動過剰の気管支を有しており、そして症状が現れていない場合でさえ、気管支収縮が存在していることがある。このような人が種々のストレス、例えば、ウイルス性呼吸器感染、運動、感情的動揺、非特異因子(例えば、大気圧又は温度の変化)、冷気又は刺激物(例えば、ガソリンの匂い、塗りたてのペンキ及び有毒ガスの匂い、又はたばこの煙)の吸入、特定のアレルゲンへの曝露、及び感受性の高い個人においてアスピリン又は亜硫酸塩(sulfite)の摂取を受けたときに、顕在的な喘息発作を生ずることがある。心理的要因は喘息発作をさらに悪化させることがあるが、かかる要因が主要な病因的役割を果たすものではない。
【0006】
喘息がアレルゲン(最も一般的には、空中の花粉及びカビ、ハウスダスト、動物の鱗屑)によって引き起こされそしてその症状がIgE媒介性である人は、アレルギー性又は「外因性」喘息にかかっていると言われる。その数は成人の喘息の約10〜20%を占め;別の30〜50%では、非アレルギー性の要因(例えば、感染、刺激物、感情的要因)によって症状の発現が引き起こされていると考えられ、そしてこれらの患者は非アレルギー性又は「内因性」喘息にかかっていると言われる。多くの人において、アレルギー性の要因又は非アレルギー性の要因はいずれも重要である。アレルギーは、成人より子供においてより重要な要因であると言われているが、その証拠は確定的ではない。
【0007】
慢性気管支炎(制限のない)は、非特定的な気管支の刺激物への長時間曝露に関連し、そして気管支における粘液過分泌及び所定の構造的変化を伴う症状である。それは、通常、喫煙に関連して、臨床的には慢性的な喀痰を伴う咳により特徴付けられる。慢性閉塞性気管支炎という用語は、慢性気管支炎が臨床的に重大な気道閉塞に至る末梢気道の広範な異常に関連している場合に用いられる。(肺気腫は、終末無呼吸細気管支より遠位の気腔の拡大であり、肺胞の壁の破壊的変化を伴う。)慢性閉塞性肺気腫という用語は、気道閉塞も存在している場合であってかつ疾病の主な特徴を肺の気腫性の変化によって説明することができることが明らかである場合に用いられる。
【0008】
気道疾患及び/又は呼吸器疾患の予防及び/又は治療のための組成物及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、気道疾患及び/又は呼吸器疾患の予防及び/又は治療のためのアルホルモテロール((R,R)−ホルモテロール異性体)及びチオトロピウムを含む組成物に関する。種々の態様において、ネブライザーへの適用に適したアルホルモテロール及びチオトロピウムの組成物が提供される。
【0010】
種々の態様において、本発明の組成物は、アルホルモテロール及びチオトロピウムを含む噴霧化用液体を含むものであり、実質的にホルモテロールの(S,S)、(R,S)及び(S,R)立体異性体を含まない。種々の態様において、本発明の組成物のホルモテロール成分は、約99重量%より多い量のアルホルモテロール及び約1重量%より少ない量のホルモテロールの他の立体異性体を含む。
【0011】
或る観点において、本発明は、チオロトピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、及びアルホルモテロール又はその薬学的に許容することのできる塩を、水又は水−エタノール混合物中に共に含む。
【0012】
他の観点において、本発明は、(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で含む、噴射剤不含の液体医薬組成物であって、前記チオトロピウム及びホルモテロール成分が共に液体担体中に溶解しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む、前記医薬組成物に関する。
【0013】
或る観点において、本発明は、(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で含む、噴射剤不含の医薬組成物を液体に対して含む医薬であって、チオトロピウム及びホルモテロール成分が共に液体担体中に溶解しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む、噴霧用液体としてアンプルにより提供される前記医薬に関する。
【0014】
他の観点において、本発明は、(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で含む、チオトロピウム及びホルモテロール成分が共に液体担体中に溶解しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む、噴射剤不含の液体医薬組成物の投与を含む、気道の可逆性閉塞に関連した症状を治療する方法であって、1日当たり総投与量約6μg〜約150μgのアルホルモテロール及び1日当たり総投与量約8μg〜約150μgのチオトロピウムを投与することを含む前記治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の試験の患者の配置である。
【0016】
【図2A】実施例1の試験からのデータであり、2週間の時点での試験ベースラインからのFEV1の平均的変化を示すものである。
【0017】
【図2B】実施例1の試験からのデータであり、2週間の時点での試験ベースラインからの時間正規化(time normalized)FEV1AUC0−24の平均的変化を示すものである。
【0018】
【図3】実施例1の試験からのデータであり、1週間の時点での試験ベースラインからの最大吸気量の変化を示すものである。
【発明の詳細な記載】
【0019】
ネブライザーは、患者がほぼ通常の速度で呼吸しながら患者の気道に薬剤を投与する手段を提供する。ネブライザーは、年齢若しくは損傷又は他の理由のいずれかのために定用量吸入器又はドライパウダー吸入器による薬剤の投与にしばしば必要とされるかなり速い速度での吸入をすることができない患者に、又は何らかの理由で呼吸の吸入による定用量吸入器の作動を調整することができない患者にとりわけ適しているということができる。ネブライザー装置は薬剤を含む蒸気を作り出し、そして患者はネブライザーに取り付けられたマウスピース又はマスクによりその蒸気を呼吸する。典型的には、ネブライザーを用いて、気道疾患、例えば、喘息及びCOPDの治療のために薬剤を供給する。従って、種々の態様において、本発明は、COPD、喘息及び/又は気道の可逆性閉塞に関連した他の症状の治療に適した新規なネブライザー組成物を提供する。
【0020】
種々の観点において、本発明は、アルホルモテロール及びチオトロピウムの両方を薬学的に許容することのできる担体中に含む組成物をネブライザーを介して投与することを含む、COPD、喘息及び/又は気道の可逆性閉塞に関連した他の症状の治療方法を提供する。
【0021】
《定義》
本明細書中で用いる「ホルモテロール成分」という用語は、本発明の組成物中のホルモテロールのすべての立体異性体の総体を意味する。
【0022】
本明細書中で用いる「ホルモテロールの他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、本発明の組成物の総ホルモテロール成分が(R,R)ホルモテロール以外のホルモテロール立体異性体を約10重量%より少ない量で含んでいるということを意味する。種々の好ましい態様において、本発明の組成物のホルモテロール成分は(R,R)ホルモテロールを少なくとも99重量%及びホルモテロールの他の立体異性体を1重量%以下の量で含む。
【0023】
「気管支拡張効果を生じさせる」とは、限定されないが、呼吸困難、喘鳴、咳、息切れ、胸苦しさ又は胸の圧迫感などを含む閉塞性気道疾患に関連した症状の軽減を意味する。
【0024】
本明細書中で用いる「治療有効量」という語句は、何らかの薬物治療に適用することのできる妥当なリスク対効果比において或る所望の気管支拡張治療効果を生じさせるのに有効な、本発明の化合物若しくは物質又は本発明の化合物を含む組成物の量を意味する。
【0025】
「薬学的に許容することのできる塩」という用語は、限定されないが、本明細書中に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的に無毒性の酸又は塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含む。種々の塩にはその水和物も含まれることがあることは理解されるところである。
【0026】
本発明の組成物の活性成分が比較的酸性の官能基を含んでいる場合には、中性型のかかる化合物をニートに又は適当な不活性溶媒中で充分量の所望の塩基と接触させることにより塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容することのできる塩基付加塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ酸塩(organic amino salt)、若しくはマグネシウム塩、又は同様の塩を挙げることができる。
【0027】
本発明の組成物の活性成分が比較的塩基性の官能基を含んでいる場合には、中性型のかかる化合物をニートに又は適当な不活性溶媒中で充分量の所望の酸と接触させることにより酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容することのできる酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導される酸付加塩、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的に無毒性の有機酸から誘導される塩を挙げることができる。
【0028】
アミノ酸の塩、例えば、アルギネート(arginate)など、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などのような有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66: 1-19(1977)参照)。
【0029】
《アルホルモテロール及びチオトロピウム》
その化学名が(+/−)N−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[[2−(p−メトキシフェニル)−2−プロピル]アミノ]エチル]フェニル]−ホルムアミドであるホルモテロールは、極めて強力であり、そして吸入されたときに長時間持続性の気管支拡張効果を有するβ2選択的アドレナリンレセプターアゴニストである。ホルモテロールは、分子内に2つのキラル中心を有しており、その各々は2つの可能な立体配置で存在していることができる。これにより、次の4つの組み合わせ:(R,R)、(S,S)、(R,S)、及び(S,R)が生じる。(R,R)及び(S,S)は相互に鏡像であり、従ってそれらはエナンチオマーであり;(R,S)及び(S,R)は同様にエナンチオマーの対である。しかしながら、(R,R)及び(S,S)の鏡像は、ジアステレオマーである(R,S)及び(S,R)に重ね合わせることができない。アルホルモテロールはホルモテロールの(R,R)立体異性体である。
【0030】
種々の態様において、本発明の組成物は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるUSP6,268,533に記載の、多形体形態Aにおいて主である(R,R)−ホルモテロールのL−(+)−酒石酸塩を含む。
【0031】
その化学名が(1α、2β、4β、5α、7β−7−[(ヒドロキシジ−2−チエニルアセチル)オキシ]−9,9−ジメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0 2,4]ノナンであるチオトロピウムは、ムスカリン性(muscarinic)レセプターアンタゴニストであり、そして長時間作用性の抗コリン性気管支拡張剤として作用する。チオトロピウムは、遊離のアンモニウムカチオンであり、そして塩の形態のチオトロピウムは典型的には対イオンとしてアニオンを含む。
【0032】
《医薬組成物》
本発明の医薬組成物は、活性成分として(R,R)ホルモテロール及びチオトロピウムを含む。前記活性成分は、その薬学的に許容することのできる塩、水和物又は溶媒和物として存在していることができる。本発明の組成物は、1種又はそれ以上の薬学的に許容することのできる担体及び添加剤も含んでいることができる。「薬学的に許容することのできる担体及び添加剤」という用語は、限定されないが、賦形剤(vehicle)、噴射剤、希釈剤、賦形剤(excipient)、錯化剤、安定剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、共溶媒、佐剤、添加剤及び医薬組成物に添加するのに適切な他の成分を含む。1種又はそれ以上の担体及び1種又はそれ以上の添加剤は、本発明の組成物の他の成分と相溶性でありかつその受容者(recipient)に対して有害とならないという意味において「許容することができる」。
【0033】
種々の態様において、本発明のホルモテロール成分に適している薬学的に許容することのできる塩として、例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸の塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸の塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸の塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などを挙げることができる。種々の態様において、フマル酸塩(フマレート)が好ましい。種々の態様において、酒石酸塩が好ましい。
【0034】
種々の態様において、本発明のチオトロピウム化合物に適している薬学的に許容することのできる塩としては、例えば、対イオンが塩化物、臭化物、ヨウ化物、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及び/又はメチル硫酸塩を含む塩を挙げることができる。種々の態様において、臭化チオトロピウム一水和物が好ましい。
【0035】
本発明の組成物として、例えば、懸濁液、溶液、エアロゾル(例えば、ヒドロフルオロアルカン(HFAエアロゾル))などの組成物を挙げることができる。本発明の組成物の最も好ましい投与手段は、吸入によるものである。吸入による投与は、限定されないが、例えば、吸入用パウダー、吸入用エアロゾル及び吸入用溶液による投与を挙げることができる。投与方法の種々の例として、限定されないが、ドライパウダー吸入器(DPI)による方法、定用量吸入器(MDI)による方法、及びネブライザーによる方法を挙げることができる。
【0036】
噴霧用の液体(例えば、吸入用溶液組成物)を含む種々の態様において、担体は、好ましくは、水又は水−エタノールでありそして他の成分を含むことができる。薬学的に許容することのできる担体は、好ましくは、ヒトが用いるためにpH約3.0〜約5.5に緩衝化される。
【0037】
1種又はそれ以上の等張性調節剤を添加することにより所望のイオン強度の吸入用溶液を提供することができる。本発明に用いる等張性調節剤として、限定されないが、例えば、投与後に薬理学的活性を示さないか又は無視することのできる活性を示すに過ぎない等張性調節剤を挙げることができる。無機及び有機の等張性調節剤のいずれも用いることができる。本発明の組成物は、賦形剤(excipient)及び/又は添加剤も含んでいることができる。これらの例として、限定されないが、例えば、界面活性剤、安定剤、錯化剤、抗酸化剤、又は製品化された本発明の医薬組成物の使用期間を延ばす保存剤、香味剤、ビタミン、又は当業者に公知の他の添加剤を挙げることができる。錯化剤として、限定されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、例えば、二ナトリウム塩、クエン酸、ニトリロ三酢酸及びその塩を挙げることができる。種々の態様において、錯化剤はEDTAである。抗酸化剤として、限定されないが、例えば、ビタミン、プロビタミン、アスコルビン酸、ビタミンE又はそれらの塩若しくはエステルを挙げることができる。保存剤として、限定されないが、病原性粒子による汚染から溶液を保護する保存剤、例えば、塩化ベンザルコニウム又は安息香酸、若しくは安息香酸塩、例えば、安息香酸ナトリウムを挙げることができる。種々の態様において、或る種の保存剤は本発明の組成物に必要とされる効果とは逆の効果である気管支収縮作用に関連していることがあるので、本発明の組成物は保存剤を含んでいないことが好都合である。
【0038】
種々の態様において、本発明の組成物は、水又は水−エタノール混合物中にチオトロピウム及びアルホルモテロール、又はこれらの活性成分の薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を含む。
【0039】
種々の態様において、本発明の組成物は、(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で、(c)水又は水/エタノール混合物から選ばれる担体中に含む、噴射剤不含の液体医薬組成物であって、前記活性成分が前記担体中に溶解しており、前記液体組成物が約3.0〜約5.5の範囲内のpHを有しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む前記医薬組成物を含む。種々の態様において、前記液体組成物のpHは約3〜約4である。種々の態様において、前記ホルモテロール成分は、約99重量%より多い量のアルホルモテロール及び約1重量%より少ない量のアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を含む。種々の態様において、本発明の噴射剤不含の液体医薬組成物は、総液体体積約1mL〜約3mLで提供される。種々の態様において、本発明の噴射剤不含の液体医薬組成物は、2mLより少ない量の総液体体積で提供される。種々の態様において、前記チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物は、チオトロピウムに換算して約5μg〜約15μgの量で存在し、そしてアルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩は、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約30μgの量で存在する。
【0040】
本明細書中で、活性成分(例えば、チオトロピウム及び/又はアルホルモテロール)の量とは、活性成分自体の重量を称し、化合物の塩、水和物などの塩、水等の重量はいかなるものも含まない。例えば、アルホルモテロール酒石酸塩からアルホルモテロール15μg(アルホルモテロール基準)を提供するためには、アルホルモテロール酒石酸塩約22μgを必要とする。同様に、臭化チオトロピウム一水和物からチオトロピウム18μg(チオトロピウム規準)を提供するためには、臭化チオトロピウム一水和物約22.5μgを必要とする。
【0041】
アルホルモテロール及びチオトロピウムを含む本発明の医薬組成物は、例えば、単位用量の形態で(例えば、噴霧化用液体としてアンプルで)、及び複数回用量の形態で(例えば、定用量吸入器として)提供することができる。用量としては、活性成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物または溶媒和物の有効な組合せ用量、又はその適当な一部を含む用量が好ましい。予防的又は治療的用量の程度は、典型的には、治療すべき疾患の特質及び重症度並びに投与経路によって異なる。用量及びおそらく投与回数も、年齢、体重及び個別の患者の反応によって異なるであろう。さらに、臨床医又は治療を行なう医師は、個別の患者の反応に連動して治療を中断し、調節し又は終わらせるべき方法及び時期を承知しているということに留意されたい。
【0042】
種々の好ましい態様において、その態様に関連した投与量及び治療方法は、本発明の組成物の1日1回又は1日2回の投与を含む。種々の態様において、単位投与量は、例えば、アルホルモテロールの1日当たり総投与量が約6〜約150μg(好ましくは、15〜45μg)及びチオトロピウムの1日当たり総投与量約8〜約150μg(好ましくは、18〜54μg)となる投与量である。
【0043】
種々の観点において、本発明は、COPD、喘息及び/又は気道の可逆性閉塞に関連した他の症状を治療する方法であって、薬学的に許容することのできる担体中にアルホルモテロール及びチオトロピウムの双方を含む組成物をネブライザーを介して投与することを含む方法を提供する。
【0044】
種々の観点において、本発明は、(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で、(c)水又は水/エタノール混合物から選ばれる担体中に含む組成物であって、前記活性成分が前記担体中に溶解しており、前記液体組成物が約3.0〜約5.5の範囲内のpHを有しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む前記組成物を投与することによって、哺乳動物において気管支収縮を予防し又は気管支拡張を誘導する方法を提供する。種々の態様において、本発明の液体組成物のpHは約3〜約4である。種々の態様において、ホルモテロール成分は約99重量%より多い量のアルホルモテロール及び約1重量%より少ない量のアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を含む。種々の態様において、総液体体積約1mL〜約3mLの噴射剤不含液体医薬組成物が提供される。種々の態様において、約2mLより少ない量の総液体体積の噴射剤不含液体医薬組成物が提供される。種々の態様において、チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物は、チオトロピウムに換算して約5μg〜約15μgの量で存在し、かつ、アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物は、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約30μgの量で存在する。
【0045】
本発明の種々の観点は、以下のさらなる実施により、さらに理解することができ、それによって、限定されるものではなく、かつ本発明の技術的範囲を限定するように構成されるべきものではない。
【実施例】
【0046】
《さらなる例》
実施例1:臨床試験:COPD患者
【0047】
《試験の概要》
無作為化二重盲検試験を行って、アルホルモテロール単独治療、チオトロピウム単独治療、及びそれらの併用治療によって処理された患者間での肺の機能及び症状の改善を比較することにより、この併用治療がいずれかの単独治療より有意に高い効果を及ぼすであろうという仮説を検証した。
【0048】
この試験は、COPD患者の治療における個別の単独投与に対するアルホルモテロール15μgBID及びチオトロピウム18μgQDの併用(連続投与)の効果及び安全性を評価するために計画された2週間の、プロスペクティブ、マルチセンター(34サイト)、無作為化、修正ブラインド、ダブルダミー、並行群間試験であった。試験はヘルシンキ宣言により確立された原則(例えば、World Medical Association Declaration of Helsinki. Recommendations guiding physicians in biomedical research involving human subjects. JAMA 1997;277:925-926参照)に従って実施した。試験のプロトコルは適切な施設内倫理委員会により承認され、そして患者から同意書を得た。
【0049】
《治験患者》
スクリーニングした429名の患者の中から235名を無作為抽出して治療しそして234名に試験用薬剤を少なくとも1回投与した(包括解析(intent-to-treat population)、[ITT])(図1参照)。すべての患者は非喘息性(non-asthmatic)COPD(気腫及び/又は慢性気管支炎を含む)を有していた。適格患者は、少なくとも45歳であり、≧15箱年(pack-year)の喫煙歴を有し、そして医学研究評議会呼吸困難スコア(Medical Research Council Dyspnea Score)(34)に基づく息切れ度(breathlessness severity)≧2を有していた。適格患者は、FEV1>0.7L、FEV1/FVC比≦70%、及び予測FEV1≦65%の気管支拡張剤投与前(pre-bronchodilator)ベースライン肺機能を有していることも必要であった。スクリーニング受診(screening visit)の30日間以内に生命にかかわる又は不安定な呼吸状態を示した場合にはその患者を除外した。スクリーニング前14日間以内にCODP薬物療法で処方された用量若しくは様式(type)を変更したか又は今までに臭化チオトロピウム吸入パウダーを用いていた患者を除外した。
【0050】
試験期間中、LABA類(LABAs)又は長時間若しくは短時間作用型の抗コリン性気管支拡張剤(試験療法の場合を除く)の使用は禁止した。患者が試験参加前少なくとも14日間にわたり安定した投与計画(regimen)によって投与を受けておりその計画が試験を通して維持される限りにおいて、経口及び吸入コルチコステロイドの使用を許可した。肺機能試験前少なくとも24時間は経口コルチコステロイドを患者に控えさせた。試験参加前少なくとも7日間はロイコトリエン修飾物質(modifier)及びメチルキサンチンを禁止した。試験期間を通して急性気管支痙攣の救急薬として又はCOPD症状の急性治療のために必要に応じて、レバルブテロールMDI(Xopenex(商標)、Sepracor Inc.、マサチューセッツ州マールボロ)を供給して用いた。各臨床的受診前≧6時間は救急薬の使用を控えるように患者を指導した。
【0051】
《試験プロトコル》
スクリーニング受診時に、COPD症状、変更された医学研究評議会(MMRC)呼吸困難スケール(Modified Medical Research Council (MMRC) Dyspnea Scale)、心拍数、バイタルサイン、及び肺機能試験についてのベースライン値を得た。毎日完了すべき予定の医療イベントカレンダー(medical event calendar)及び投薬ログ(medication log)、及び救急薬治療も処方した。実施されたUDV/DPI投与の数を監視することにより、投薬ログを用いてコンプライアンスを評価した。
【0052】
適格患者を無作為抽出して、14日間に次の3つの処理:噴霧化アルホルモテロール15μg(Brovana(商標)、Sepracor Inc.、マサチューセッツ州マールボロ)BID及びプラセボDPIをQD、噴霧化プラセボBID及びチオトロピウム18μg(Spriva(商標) HandiHaler(商標) Boehringer Ingelheim、コネチカット州リッジフィールド)DPIをQD、又は噴霧化アルホルモテロール15μgBID及びチオトロピウム18μgDPIをQD、の一つを受けさせた。噴霧化薬剤は、最初にDuraneb 3000(商標)コンプレッサー(Pari: Pari Respiratory Equipment Inc.、バージニア州ミドロシアン)により駆動するPARI LC Plus(商標)ネブライザーを用いて流量3.3L/分で投与し、次いで(5分以内に)DPI投与(HandiHaler(商標))を行なった。チオトロピウム及びプラセボDPIカプセルは大きさ及び形状は同一であるが色が異なっていた。この理由により、前にチオトロピウムを使用した患者を除外し(上記参照)、そして他の点ではこの試験受診に関与しない独立の試験薬コーディネーター(Study Drug Coordinator)によりDPIカプセルが調剤され集められた。
【0053】
0週間及び2週間の時点で、医療イベントカレンダー及び血液サンプルを集めそしてバイタルサイン及び心拍数の測定値を分析した。0週間において、朝の投与前、最初の投与直後(5分以内)、並びに最初の投与後30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、及び12時間において肺活量測定(spirometry)を行なった。12時間での肺機能試験後、患者は晩の試験投薬の用量を自己投与した。2週間においては、0週間のときの場合と同様のほか、さらに晩の投与(朝の投与後12時間で投与)直後(5分以内)並びに朝の投与後12.5時間、13時間、14時間、16時間、23時間、及び24時間においても一連の肺活量測定を行なった。0週間において投与前及び朝の投与後2時間の時点で、及び2週間において投与前並びに朝の投与後2時間、11時間、14時間、及び24時間の時点で、最大吸気量を評価した。すべての最大吸気量測定は、その2回が再現性を有する許容することのできる最大吸気量操作(inspiratory capacity maneuver)の平均であった。患者は、最大吸気量操作の前に、約10回の呼吸の間安定した呼気量を有している必要があった。患者にはその安定した呼気量が達成された後、通常の呼吸の呼気の最後のときに、肺が完全に満たされるまで通常の吸気流量で一定かつ最大限の吸入を行い、そして次に通常の速度で息を吐くことが求められた。
【0054】
用いた肺機能の値はすべて、3回の許容することのできる操作の中で最も高い値であった。すべての肺活量測定は米国胸部学会/欧州呼吸器学会の肺活量測定の標準化ガイドライン(American Thoracic Society/European Respiratory Society Standardisation of Spirometry guidelines)(例えば、参考までにその全体を本明細書に引用する、Miller MR, Hankinson J, Brusasco V, Burgos F, Casaburi R, Coates A, et al. Standardisation of spirometry. Eur Respir J 2005;26:319-338参照)に従ってなされたものであることが治験責任医師(Investigator)により保証された。品質管理のため、肺活量測定及び最大吸気量肺機能測定の集中化オーバーリーディング(centralized over-reading)を用いた。
【0055】
スクリーニング時、最初の臨床投与の前に、ベースライン呼吸困難インデックス(BDI)(例えば、参考までにその全体を本明細書に引用する、Mahler DA, Weinberg DH, Wells CK, Feinstein AR. The measurement of dyspnea. Contents, interobserver agreement, and physiologic correlates of two new clinical indexes. Chest 1984;85:751-758参照)を評価し、そして2週間時点で、最初の朝の投与前に、移行性呼吸困難インデックス(Transition Dyspnea Index)(同文献参照)を評価した。ベースラインフォーカルスコア(レンジ0〜12)及び移行性フォーカルスコア(レンジ−9〜9)は、機能障害、仕事の大きさ(magnitude of task)、及び努力スコアの大きさ(magnitude of effort scores)の合計とした(同文献参照)。高いスコアは、ベースラインにおいて呼吸困難が少ないこと(BDI)又はベースラインからの呼吸困難のより大きな改善が見られたこと(TDI)を示す。
【0056】
《統計的手法》
この試験は、両側検定の5%有意水準を用いて併用療法を単独療法と比較したときに、24時間(主要エンドポイント)を通しての時間平均化FEV1AUC(FEV1AUC0−24)の平均治療差0.075L及び標準偏差0.016Lを検出し、その後2週間の投与を行なって80%検出力による主要比較を行なうように計画された。すべての有効性解析はITT母集団に基づいて実施した。すべての統計的検定は、他に断らない限りは、両側検定でありそして5%有意水準で実施した。主要比較は、チオトロピウム単独群とアルホルモテロール及びチオトロピウム群との間での比較である。重要な二次的解析比較は、アルホルモテロール単独群とアルホルモテロール及びチオトロピウム群との間における比較であった。多重比較をコントロールするために、モデル内の全治療効果が統計的に5%水準で有意であった場合には、平均治療群差の統計的検定は有意であると判断した。GOLD COPDガイドライン(例えば、参考までにその全体を本明細書に引用する、Pauwels RA, Buist AS, Calverley PM, Jenkins CR, Hurd SS. Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease. NHLBI/WHO Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) Workshop summary. Am J Respir Crit Care Med 2001;163:1256-1276参照)に従って患者を分類することによって(それぞれ、<30%、≧30%〜<50%、及び≧50%)、肺機能重症度サブグループ解析を事後に実施した。共変量として試験ベースライン(又は適用できる場合には前投与(predose))を及び固定効果として治療群を用いた線形モデルから最小二乗法(LS法)を用いて、治療群間の対比較を行なった。
【0057】
ベースライン特性及びそれぞれの有効性評価基準について処理することにより記述統計を計算した。カウント数及び百分率を用いて有害事象を要約した。MedDRA(国際医薬用語集)(例えば、MedDRA and MSSO. The medical dictionary for regulatory activities 2008参照)を用いてすべての有害事象をコード化した。COPD憎悪は、気管支拡張剤以外のいずれかのベースライン変化療法(例えば、抗炎症剤、抗生物質、酸素補給療法等)を必要とし又は患者が追加の治療(入院、救急外来受診等)を要するようになる症状の増大と予め定義した。
【0058】
《結果》
この試験において登録された429名の患者のうち235名を無作為化しそして234名に試験薬剤を少なくとも1回投与した(ITT母集団)(図1参照)。FEV1、FVC、及び最大吸気量値を含む人口学的特性及びベースライン特性は治療群の間で同様であった(表1参照)。ITT母集団の患者の94.4%は、3つの治療群のすべてについて同様の遂行速度で2週間の試験を完了した(図1参照)。中止の場合の最も共通の理由は、有害事象の発生であった(n=5[2.1%])(図1参照)。治療群の中で約97%の患者は、試験を通じて治療を遵守した。
【0059】
【表1】

【0060】
《肺の機能の治療結果》
各時点のFEV1及び時間正規化FEV1AUC0−24は、すべての治療群でベースラインから好転した。2つの単独治療には同程度の改善が見られ、併用治療群は2週間の治療後に最も大きな改善を示した(表2;図2A及び2B参照)。各単独治療に対する併用治療のFEV1AUC0−24(主要なエンドポイント)におけるより大きな変化は有意であった(p<0.001)。FEV1のピーク変化、トラフ(投与間隔のエンド時)の変化、及びFVCのピーク変化は、すべての治療前のベースラインから有意に改善した(表2参照)。各単独治療群は同程度に改善し、そして併用治療群は最も大きく改善した。併用治療のピークFEV1のより大きな増加は、いずれの単独治療に対しても有意であった(p<0.005)。併用治療でのトラフFEV1の150mLの改善は、チオトロピウム単独治療に対して統計的に有意であり(p=0.002)そしてアルホルモテロール単独治療に対して有意性はなかった(p=0.07)。併用治療でのピークFVCの60mLの平均的改善は、いずれの単独治療について観察された改善よりも大きく(チオトロピウム40mL及びアルホルモテロール48mL)、達成された差はチオトロピウムに対しては統計的に有意であった(p=0.03)が、アルホルモテロールに対しては有意性はなかった(p<0.21)。
【0061】
受診投与前からのFEV1のLS平均(±SE)ピーク改善は3つの治療群について同様であった(アルホルモテロールで0.19L±0.02、チオトロピウムで0.19L±0.02、そしてアルホルモテロール及びチオトロピウムで0.22L±0.02)。
【0062】
平均(SD)最大吸気量は3つの治療群すべてで投与2時間後ベースラインから改善し、そして併用治療群では最も大きな改善が見られた(アルホルモテロール、0.20L±0.32、チオトロピウム、0.19L±0.32、そしてアルホルモテロール及びチオトロピウム、0.29L±0.39)(図3参照)。24時間時点(トラフ)で、最大吸気量は、併用治療群で試験ベースラインからの有意に増加しそしてアルホルモテロール治療群に対して有意性に近づいた(表2参照)。
【0063】
《症状反応:救急治療薬の使用及びBDII/TDI》
スクリーニングと無作為化との間(投与前0週間)、全治療群の患者の約80%が救急治療薬としてレバルブテロールMDIを使用した(表3参照)。ベースライン救急薬使用は、平均して1日当たり約3回の作動(actuation)及び1週間当たり約4.5日であった。レバルブテロールMDIの使用は、3つの治療群のすべてで2週間を通した治療の間に減少し、単独治療では1日当たり平均1.8回の作動及び併用治療群では1日当たり平均2.5回の作動まで減少した。単独治療に対する併用治療の差は統計的に有意性がなかった。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
TDIにより測定した呼吸困難は、3つの治療群のすべてでベースラインから改善しそして併用治療群では有意に大きく改善した(表4参照)。3つの治療群の患者の大部分は、臨床的に重要な最小の差である≧1単位のTDIの改善を示した。併用治療群では、他の2つの治療群と比較して≧1単位のTDI改善が見られた患者の割合が大きく、そしてこの差は併用治療とチオトロピウム治療との間で有意であった。
【0068】
《患者のベースライン肺機能重症度により分類された肺の機能及び病徴の治療結果》
ベースライン疾病重症度(投与前FEV1<50%予測値又は≧50%予測値)によって分類された肺の治療の結果、すべての肺機能測定で、ベースラインの低い肺機能の患者はベースラインの高い肺機能の患者より大きい改善があったことが示された(表5、6及び7参照)。より低下したベースラインの肺機能(FEV1<50%予測値)を有する患者についての肺機能測定値のより大きい改善は、絶対的(L)及び相対的(百分率)改善の両方について明らかであった。<50%FEV1予測値を有する患者は、単独治療群及び併用治療群の両方で、評価した5回の努力呼気測定値のすべてについて有意の改善を示した。対照的に、>50%FEV1予測値を有する患者は、いずれの治療群でもトラフFEV1における有意性のある改善を示さず、そしてFEV1AUC0−24だけ併用治療群で改善を示した。
【0069】
救急治療薬の使用は両方の疾患重症度群で減少した(表8参照)。両方の群の患者は、3つの治療のいずれでもその治療後に呼吸困難が改善した(表8参照)。ベースラインにおいて<50%FEV1予測値を有し併用治療を受けた患者は、アルホルモテロール(2.3単位)又はチオトロピウム(1.6単位)のいずれかによって治療された患者より有意により大きいTDIの改善(3.5単位)を示した(表9参照)。
【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】


【0073】
【表8】

【0074】
【表9】

【0075】
《安全性》
有害事象は多くなく、3つの治療群の間で同様の発生状況であった(表10参照)。COPD増悪及び心血管有害事象はごく一部の患者でのみ観察された(0〜3.9%)。1人の患者(アルホルモテロール15μg)だけが重症の有害事象(小腸閉塞)を報告した。
【0076】
【表10】

【0077】
《さらなる考察》
この試験は、2種類の長時間作用型気管支拡張剤の組合せである、ネブライザーにより投与されるアルホルモテロール及びDPIとして投与されるチオトロピウムの有効性及び安全性を調査した。とりわけ、この2種類の薬剤の単独治療との間の有効性を比較しそしてこれらの薬剤の併用がいずれかの薬剤の単独投与より高い肺の機能の改善をもたらすか否かを評価した。
【0078】
3つの治療法はすべて、治療の2週間後に、ベースラインからの肺機能の臨床的に重要な改善を示した。しかしながら、24時間を通しての時間平均化FEV1及びFEV1のピーク変化において、アルホルモテロール及びチオトロピウムの併用に、アルホルモテロール又はチオトロピウム単独治療の場合より有意に高い増加が認められた。持続性気管支拡張作用として別の有効性の指標であるトラフFEV1(2週間の時点での投与後24時間)は3つの治療群のすべてについて改善が見られた。このことは投与間隔を通して気管支拡張作用が持続していたことを示している。併用治療は、いずれの単独治療よりもトラフFEV1において70mL増しの改善を示した。
【0079】
この試験では、アルホルモテロール投与後のFEV1の改善が朝投与と晩投与との間で異なっていた。朝投与及び晩投与後2時間の平均FEV1改善はそれぞれ約213mL及び182mLであった。この反応の一時的な相違は、BID投与ラセミ体ホルモテロールについて報告されており、そしてアドレナリン作動系及び迷走神経系の活性の日内変動を反映していることが示唆された。アドレナリン作動系は昼間に最も顕著でありそして副交感神経系活性は夜間に増加する。12時間と23時間との間でのチオトロピウムの効果の相対的低下も、気道機能のこの日内変動による夜間の低下及び1日1回朝投与したチオトロピウムの効果の減衰によるものとすることができる。
【0080】
そのいずれも肺の過膨脹を反映している最大吸気量及び呼吸困難は、この試験の3つの治療のすべてで投与後に改善し、そして併用治療群ではより大きく改善した。トラフFEV1について見出されたのと同様に、トラフ最大吸気量(2週間の24時間時点)がベースラインより高くなったという事実は、この治療結果に対して3つの治療法の効果が24時間持続したことを示す。チオトロピウムとラセミ体ホルモテロールの組合せを試験した従来の報告(例えば、O'Donohue WJ, Jr. Guidelines for the use of nebulizers in the home and at domiciliary sites. Report of a consensus conference. National Association for Medical Direction of Respiratory Care (NAMDRC) Consensus Group. Chest 1996;109:814-820; van Noord JA, Aumann JL, Janssens E, Verhaert J, Smeets JJ, Mueller A, et al. Effects of Tiotropium With and Without Formoterol on Airflow Obstruction and Resting Hyperinflation in Patients With COPD. Chest 2006;129:509-517参照)とは対照的に、この試験で、チオトロピウムとアルホルモテロールとを組み合わせたトラフ最大吸気量への効果がチオトロピウム単独の効果より有意に高いことが見出された。呼吸困難は3つの治療法のすべてで1単位以上(MCID)改善され(Witek TJ, Jr., Mahler DA. Minimal important difference of the transition dyspnoea index in a multinational clinical trial. Eur Respir J 2003;21:267-272参照)、そして併用治療では最も改善された(平均TDI;+3.1単位)。救急の短時間作用型β2アゴニストの使用が3つの治療法のすべてで減少しそしてさらにいずれの単独治療よりも併用治療でわずかに減少程度が増した。
【0081】
この試験において、疾病の重症度のベースラインGOLDガイドライン分類に基づく患者の反応の層別解析(例えば、極めて重症及び重症:FEV1予測値<50%;及び中等症:FEV1予測値≧50%)(例えば、Witek TJ, Jr., Mahler DA. Minimal important difference of the transition dyspnoea index in a multinational clinical trial. Eur Respir J 2003;21:267-272参照)は、より重症なCOPD患者が中等症のCOPD患者より高い気道改善を示すことを証明した。投与前(トラフ)及び投与後のFEV1値は、中等症疾患の患者と比較してより重症なCOPD患者でより高くなった。さらに、トラフ最大吸気量は、より重症疾患の患者についてのみ増加した。対照的に、呼吸困難(TDI)の改善は疾患重症度群の間で同様であった。このことは、疾患の重症度が努力呼気操作及び最大吸気量における気管支拡張剤改善の程度に影響を与えることを示唆する。これらの発見は、極めて重症のCODP患者(GOLDステージIII及びIV)が短時間作用型β2アゴニストラセミ体アルブテロール及び臭化イプラトロピウムの多量投与に対し中等症のCODP患者より反応性が低いことを見出した従来の研究とは対照的である(例えば、Tashkin DP, Celli B, Decramer M, Liu D, Burkhart D, Cassino C, et al. Bronchodilator responsiveness in patients with COPD. Eur Respir J 2008;31:742-750参照)。
【0082】
この試験において、チオトロピウムQD及びアルホルモテロールBIDの併用投与は、薬剤単独のいずれに対しても有意に優れた気管支拡張を生じたばかりでなく、症状緩和においても有意に高い改善を示した。より高い重症度の気道機能障害(compromise)のCOPD患者は、中等症の機能障害患者より大きな肺機能及び症状の改善を示した。
【0083】
実施例2:製剤の例
【0084】
本発明の種々の態様の組成物は、以下のように当業者により製造することができる。例えば、一つの方法によれば、NaClの溶液を約9g/L濃度で調製することができる。この溶液に、総容量2mLに対し臭化チオトロピウムを所望の濃度、典型的には約4〜約10μg/mLまで添加し、さらに総容量2mLに対しアルホルモテロールを所望の濃度、典型的には約3.5〜約8μg/mLまで添加することができる。種々の態様において、次にHClを添加して最終pHを約4.0にする。種々の態様において、次にHClを添加して最終pHを約3.0にする。この組成物をアンプル中に充填して(例えば、ブロー・フィル・シール法により)引き出し可能な必要量の組成物を有するアンプルを得ることができる。
【0085】
本明細書に記載のすべての文献及び同様の資料、例えば、限定的でなく、特許、特許出願、記事、書籍、論文、及びウェブページは、前記文献及び同様な資料の体裁にかかわらず、あらゆる目的でそれらの全体を参考までに明確に引用する。1種又はそれ以上の引用文献及び同様の資料が、限定的でなく定義した用語、用語の使用法、記載した技術などで、本願明細書と異なっているか又は矛盾する場合には、本願明細書が優先する。
【0086】
本明細書中で用いるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけのものであり、いかなる場合も記載した主題を限定するように解釈されるべきでない。
【0087】
本発明は、種々の態様及び実施例と併せて記載してきたが、本発明が前記態様及び実施例に限定されることを意図するものではない。これに反して、当業者によく理解されるように、本発明は種々の選択肢、変更、及び等価物を包含する。従って、本発明の範囲及び精神の中に入るすべての態様及びその等価物を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、及びアルホルモテロール又はその薬学的に許容することのできる塩を共に、水又は水−エタノール混合物中に含む医薬組成物。
【請求項2】
(a)チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、チオトロピウムに換算して約5μg〜約30μgの量で、及び
(b)アルホルモテロールを含むホルモテロール成分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物を、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約40μgの量で
含む噴射剤不含の液体医薬組成物であって、前記チオトロピウム及びホルモテロール成分が共に液体担体中に溶解しており、そして前記ホルモテロール成分がアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を約10重量%より少ない量で含む、前記医薬組成物。
【請求項3】
前記液体組成物が約3.0〜約5.5の範囲内のpHを有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記液体組成物が約3.0〜約4.0の範囲内のpHを有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ホルモテロール成分が約99重量%より多い量のアルホルモテロール及び約1重量%より少ない量のアルホルモテロール以外のホルモテロールの立体異性体を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記担体が水を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記担体が水/エタノール混合物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物が、チオトロピウムに換算して約5μg〜約15μgの量で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ホルモテロール成分のアルホルモテロール部分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物が、アルホルモテロールに換算して約6μg〜約30μgの量で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(a)前記チオトロピウム又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物が、チオトロピウムに換算して約5μg〜約15μgの量で存在し、及び
(b)前記ホルモテロール成分のアルホルモテロール部分又はその薬学的に許容することのできる塩、水和物若しくは溶媒和物が、アルホルモテロールに換算して約12μg〜約30μgの量で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記噴射剤不含の液体医薬組成物が、総液体体積約1mL〜約3mLで提供される、請求項2、8、9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記噴射剤不含の液体医薬組成物が、約2mLより少ない量の総液体体積で提供される、請求項2、8、9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項2に記載の医薬組成物を含む医薬であって、噴霧用の液体としてアンプルにより提供される前記医薬。
【請求項14】
請求項2に記載の医薬組成物を投与することを含む可逆性気道閉塞に関連した症状を治療する方法であって、1日当たり総投与量約6〜約150μgのアルホルモテロール及び1日当たり総投与量約8〜約150μgのチオトロピウムを投与することを含む前記治療方法。
【請求項15】
1日当たり総投与量約15〜約45μgのアルホルモテロール及び1日当たり総投与量約18〜約54μgのチオトロピウムを投与することを含む、請求項14に記載の可逆性気道閉塞に関連した状態の治療方法。
【請求項16】
前記可逆性気道閉塞に関連した症状がCOPDを含む、請求項14又は15に記載の可逆性気道閉塞に関連した症状の治療方法。
【請求項17】
前記可逆性気道閉塞に関連した症状が喘息を含む、請求項14又は15に記載の可逆性気道閉塞に関連した症状の治療方法。
【請求項18】
前記方法が噴霧による前記医薬組成物の投与を含む、請求項14又は15に記載の可逆性気道閉塞に関連した症状の治療方法。
【請求項19】
請求項2、3、4、5、6、7、8、9又は10に記載の医薬組成物を投与することにより哺乳動物において気管支収縮を予防するか、又は気管支拡張を誘導する方法。
【請求項20】
前記方法が、1日当たり総投与量約6〜約150μgのアルホルモテロール及び1日当たり総投与量約8〜約150μgのチオトロピウムを投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、1日当たり総投与量約15〜約45μgのアルホルモテロール及び1日当たり総投与量約18〜約54μgのチオトロピウムを投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、噴霧による前記医薬組成物の投与を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物が、噴射剤不含の液体組成物として、総液体体積約1mL〜約3mLで提供される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物が、噴射剤不含の液体組成物として、約2mLより少ない量の総液体体積で提供される、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506860(P2012−506860A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533326(P2011−533326)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061652
【国際公開番号】WO2010/048384
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(500114922)サノビオン ファーマシューティカルズ インク (14)
【氏名又は名称原語表記】Sunovion Pharmaceuticals Inc.
【Fターム(参考)】