説明

アルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法

【課題】 原料に低コストな試薬を用い、湿度10〜60wt%の領域において30wt%以上の優れた吸着性能を有する吸着剤を提供する。
【解決手段】 Si源に水ガラス、Al源に硫酸アルミニウムを用い、混合溶液におけるSi/Al比が0.80〜1.6となるように、それぞれの水溶液を混合し、これを酸又はアルカリにてpH6〜10に調製した後、95〜200℃にて加熱し、次いで脱塩処理を行なうことにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体を合成する。得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体は、吸着時の相対湿度60%と脱離時の相対湿度10%の差において30wt%以上の優れた水蒸気吸着性能を有しており、デシカント空調用吸着剤を始めとした吸着剤として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代の産業を支える重要な基盤技術として、実用化が強く期待されているナノテクノロジーの技術分野において、その特異な形状に起因する微細構造により、高比表面積、高細孔容積、イオン交換能、及び吸着能等に優れた物理化学的な特性を示し、革新的な機能性材料としての応用が期待されているアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法に関するものであり、特に、中湿度領域において優れた水蒸気吸放湿特性を有するアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法、及び該アルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする高性能吸着剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズのチューブ状アルミニウムケイ酸塩は、例えば、天然において、イモゴライトとして産出するが、このイモゴライトは、土壌中に存在し、主に火山灰由来の土壌に産する。また、天然のイモゴライトは、類縁鉱物であるアロフェンと並んで、土壌における養分や水分の移動及び植物への供給、更に、有害な汚染物質の集積や残留等に対して影響を与えるものである。このチューブ状アルミニウムケイ酸塩は、主な構成元素をケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた水和珪酸アルミニウムであって、外径が2.2〜2.8nm、内径が0.5〜1.2nm、長さが10nm〜数μmのチューブ状の形態を有し、天然には、火山灰及び軽石等の降下火山噴出物を母材とする土壌に分布している粘土成分である。
【0003】
プロトイモゴライトは、イモゴライトの前駆体物質であり、水溶液中に分散したこの前駆体を100℃程度で加熱することによりイモゴライトとなる。それゆえイモゴライト形成過程途中の加熱前の前駆体物質をプロトイモゴライトと呼ぶ。プロトイモゴライトは、イモゴライトの構造に由来する性質を有しているため、29Si固体NMRでは、イモゴライトと同じ−78ppmにピークを示し、ケイ素はOH−Si−(OAl)の配位を有している。そのため水蒸気吸着特性においてもイモゴライトとプロトイモゴライトとは相対湿度20%以下における吸着挙動がほぼ同じであり、プロトイモゴライトは結晶性のイモゴライトのように比較的長いチューブ状の形態にまでは成長していないが、イモゴライトの構造をそれなりに有していると考えられている。それゆえプロトイモゴライトにおいても、低湿度領域においてはイモゴライトと同様な吸着剤の性質を有している。イモゴライトおよびプロトイモゴライトともに、合成時のSi/Al比は0.35〜0.55である(特許文献1〜3)。
【0004】
さらに合成時のSi/Al比を0.7〜1.0にし、脱塩処理後150℃で2日加熱をすると、非晶質物質と低結晶性粘土との複合体が形成される。この複合体は、非晶質含水アルミニウムケイ酸塩と粘土の複合体からなることから、HAS(Hydroxyl Aluminum Silicate)と粘土(Clay)にちなんで以下ハスクレイとして示す。また合成時のSi/Al比を0.7〜1.0にし、脱塩処理後100℃で2日加熱をすると、この物質についても水蒸気および二酸化炭素の吸着性能に非常に優れている。この物質については100℃で30日以上加熱すると非晶質含水アルミニウムケイ酸塩と粘土の複合体となることから、ハスクレイ前駆体とする(特許文献4参照)。
【0005】
このような、ナノサイズのチューブ状アルミニウムケイ酸塩であるイモゴライトおよびその前駆体であるプロトイモゴライト、さらにはハスクレイおよびハスクレイ前駆体の特異な形状及び物性は、工業的にも有用であると考えられる。すなわち、イモゴライトおよびその前駆体であるプロトイモゴライト、さらにはハスクレイおよびハスクレイ前駆体は、その特異な微細構造に基づいて、各種物質を吸着することができる特性を有することから、例えば、有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、さらには二酸化炭素やメタンなどのガス貯蔵剤等としての利用可能性については、従来から言及されている。また、優れた水蒸気吸着性能を有することから、ヒートポンプ熱交換材、結露防止剤、自律的調湿材料などの応用として期待されている。
【0006】
特に、デシカント空調では外気から導入される空気中の湿分を取り除くことが目的であるため、夏場の高湿度の空気からでも効率的に湿分を取り除けることが必要とされており、そのためデシカント空調において求められる吸着剤は、一般的に相対湿度が10%程度から60%における吸着量が多いことであるとされている。
そのような中で、チューブ状アルミニウムケイ酸塩およびハスクレイの上記特性を失わずに、工業的に安価で大量に合成することが求められており、イモゴライト、非晶質イモゴライトおよびプロトイモゴライト、さらにはハスクレイおよびハスクレイ前駆体の特異な細孔を利用した吸着剤の開発が行なわれてきた。
【0007】
しかしながら、従来の製造方法によれば、イモゴライトおよび非晶質イモゴライトを大量に製造するには、イモゴライトがSi同士の重合を含まないことからモノケイ酸塩水溶液を出発物質として用いる必要性があった。またアルミニウム源についても、アルミニウムの13量体からなるケギンポリマーがイモゴライトの生成を阻害するため硫酸アルミニウムを出発物質として用いることはなかった(特許文献1〜4参照)。
【0008】
本発明者らは、以上のような事情に鑑み、従来よりも低コストでの合成が可能であり、かつ中湿度領域において優れた水蒸気吸着性能を有する非晶質アルミニウムケイ酸塩を製造する方法を達成すべく検討を重ねた結果、従来合成できないとされていた水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液を用い、高性能な水蒸気吸着剤を開発することに成功した(特許文献5)。しかしながら、前述の非晶質含水アルミニウムケイ酸塩と粘土の複合体からなるハスクレイについては、安価な水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液を用いては製造することができていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−064010号公報
【特許文献2】特開2004−059330号公報
【特許文献3】特開2008−179533号公報
【特許文献4】国際公開第2009/084632号
【特許文献5】国際公開第2010/026975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも低コストでの合成が可能であり、かつ中湿度領域において優れた水蒸気吸着性能及び優れた二酸化炭素吸着性能を有するアルミニウムケイ酸塩複合体(ハスクレイ)及び該複合体からなる高性能吸着剤の製造方法を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、水ガラスとアルミニウム水溶液のSi/Al比を特定な値にすることにより、従来のアルミニウムケイ酸塩複合体(ハスクレイ)においては、合成できないとされていた水ガラスと硫酸アルミニウムから高性能な水蒸気吸着剤を開発することに成功し、従来の製造方法に比べて高濃度での、アルミニウムケイ酸塩複合体(ハスクレイ)の製造ができるという知見を得た。また、同時に、従来のアルミニウムケイ酸塩複合体及び該複合体からなる高性能吸着剤においては、加熱工程の前に遠心分離等により脱塩工程を必要としていたが、脱塩工程を経ずに、高性能な水蒸気吸着剤が得られることが判明した。
【0012】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。
[1]低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法であって、
水ガラスとアルミニウム水溶液をSi/Al比が0.8より大きく、1.6以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH6〜10に調製した後、脱塩処理工程なしに95℃以上で加熱することを特徴とするアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法。
[2]前記アルミニウム水溶液として、硫酸アルミニウム水溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法。
[3]低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする吸着剤の製造方法であって、
水ガラスとアルミニウム水溶液をSi/Al比が0.8より大きく、1.6以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH6〜10に調製した後、脱塩処理工程なしに95℃以上で加熱することにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を得ることを特徴とする高性能吸着剤の製造方法。
[4]前記アルミニウム水溶液として、硫酸アルミニウム水溶液を用いることを特徴とする請求項3に記載の高性能吸着剤の製造方法。
[5]前記高性能吸着剤が、デシカント空調用吸着剤であることを特徴する請求項4に記載の高性能吸着剤の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、水ガラスと硫酸アルミニウムをSi/Al比が0.8より大きく、1.6以下となるように混合することにより、中湿度領域において優れた吸着挙動を有する、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を安価に提供することができるとともに、従来の製造方法に比べて高濃度での、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体の製造を可能にするものである。そして、本発明の方法により得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体は、高性能な水蒸気吸着性能を有し、特に、優れた性能を有するデシカント空調用吸着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の粉末X線回折図形を示す図。
【図2】実施例2の粉末X線回折図形を示す図。
【図3】実施例1、実施例2および比較例の水蒸気吸着等温線を示す図。
【図4】実施例2における、Si/Alモル比と水蒸気吸着性能の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体は、主な構成元素をケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた水和ケイ酸アルミニウムである。
本発明では、この低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を、水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液からなる溶液を混合し、ケイ素とアルミニウムの重合化そして加熱熟成後に脱塩処理を施すことにより製造することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、合成により得られる低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体が、相対湿度10〜60%において30wt%以上の水蒸気を吸着する性能を有することが必要であるばかりでなく、従来公知のチューブ状アルミニウムケイ酸塩であるイモゴライトや非晶質イモゴライト、さらにはハスクレイとは異なり、さらに安価な試薬から合成されることが必要である。
すなわち、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、従来のイモゴライトあるいはプロトイモゴライトさらにはハスクレイにおけるSi源及びAl源となる試薬を、Si源についてはモノケイ酸であるオルトケイ酸ナトリウムから水ガラスに、Al源については塩化アルミニウムから硫酸アルミニウムに換えることにより、安価で且つ高濃度での製造が可能となることが判明したものであり、両試薬からなる出発溶液を混合し、この混合溶液を酸又はアルカリによりpH6〜10に調製した後、加熱することにより、相対湿度10〜60%において優れた吸湿挙動を有する物質を提供しうる低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体が得られる。
【0017】
水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液を上記の所定の範囲になるように混合するために、水ガラスを純水にて希釈させ、硫酸アルミニウムについては純水に溶解させることにより、それぞれ所定の濃度の溶液を調製する。相対湿度が60%において優れた吸着挙動を示すには、ケイ素/アルミニウム比は0.8より大きく、1.6以下、好ましくは、1.0より大きく、1.5以下となるように混合することが必要である。水ガラス中のケイ素の濃度は1〜2000mmol/Lで、硫酸アルミニウム水溶液中のアルミニウムの濃度は1〜2000mmol/Lであるが、好適な濃度としては1〜1000mmol/Lのケイ素化合物溶液と、1〜1000mmol/Lのアルミニウム化合物溶液を混合することが好ましい。これらの比率及び濃度に基づいて、水ガラス溶液中に硫酸アルミニウム水溶液を混合し、酸又はアルカリにてpH6〜10に調製して、95〜250℃にて加熱した後、生成物を脱塩処理(洗浄)により、溶液中の共存イオンを取り除き、乾燥させた固形分が本目的の低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体である。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
Si源として360mmol/Lの水ガラス水溶液50mLと、Al源として380mmol/Lの塩化アルミニウム水溶液50mLを用いた。塩化アルミニウム水溶液に水ガラス水溶液を加え、約10分間攪拌を行った。このときのSi/Al比は0.95である。攪拌後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL/分の速さで滴下し、pHが7程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は5mLであった。このようにして生成させた前駆体懸濁液に、45mLの純水を加えて撹拌を10分行い、前駆体懸濁液を作成した。
調整した150mLの低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体前駆体懸濁液を、100mL用テフロン製容器に75mL測り取った後、ステンレス製回転反応容器に設置し、180℃で18時間加熱を行った。反応後、遠心分離にて2回洗浄し、60℃で1日乾燥させた。
【0019】
(実施例2)
Si源として405mmol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mLと、Al源として368mmol/Lの硫酸アルミニウム水溶液100mLを用いた。塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を加え、約10分間攪拌を行った。このときのSi/Al比は1.10である。攪拌後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL/分の速さで滴下し、pHが7程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は3.1mLであった。このようにして生成させた前駆体懸濁液を遠心分離にて1回脱塩処理を行った。脱塩処理は遠心分離機を用いて、回転速度2000rpm、時間10分で行った。脱塩処理後前駆体を純水に分散させ全体で200mLとなるようにし、10分攪拌を行い前駆体懸濁液を作成した。
調整した200mLのイモゴライト前駆体懸濁液を、100mL用テフロン製容器に70mL測り取った後、ステンレス製回転反応容器に設置し、180℃で18時間加熱を行った。反応後、遠心分離にて2回洗浄し、60℃で1日乾燥させた。
【0020】
(比較例)
比較例としては、上記特許文献4(国際公開2009/084632号)にて示された物質について、以下のように合成を行った。
Si源として360mmol/Lのオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mLと、Al源として450mmol/Lの塩化アルミニウム水溶液100mLを用いた。塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を加え、約10分間攪拌を行った。このときのSi/Al比は0.80である。攪拌後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1mL/分の速さで滴下し、pHが6程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は6.0mLであった。このようにして生成させた前駆体懸濁液を遠心分離にて1回脱塩処理を行った。脱塩処理は遠心分離機を用いて、回転速度3000rpm、時間10分で行った。脱塩処理後前駆体を純水に分散させ全体で1Lとなるようにし、10分攪拌を行い、前駆体懸濁液を作成した。
調整した1Lのイモゴライト前駆体懸濁液を、100mL用テフロン製容器に70mL測り取った後、ステンレス製回転反応容器に設置し、120℃で2日間加熱を行った。反応後、遠心分離にて2回洗浄し、60℃で1日乾燥させた。
【0021】
実施例1および実施例2で得られた生成物については、粉末X線回折による物質の同定を行った。
図1および図2に、実施例1および実施例2で得られた生成物の粉末X線回折図形を示す。図1および図2に見られるように、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークが見られ、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体に特徴的なピークが観察された。
この結果から実施例1および2の物質は低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体であることが確認された。
一方、比較例1で得られた生成物の粉末X線回折図形も、2θ=21、26、34、39°付近にブロードなピークが見られ、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体であることが確認されたが、実施例2と比較して加熱後に生成した量は、比較例1では5分の1程度であった。
【0022】
(水蒸気吸着評価)
実施例1、実施例2および比較例で得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体について、日本ベル社製Belsorp18により測定を行った水蒸気吸着等温線から水蒸気吸着評価を行った。図3に、その結果を示す。
実施例1で得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体の吸着時における相対湿度60%における吸着量は48.1wt%であり、脱離時の相対湿度10%における吸着量は15.3wt%であり、両者の差は32.8wt%であった。
実施例2で得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体の吸着時における相対湿度60%における吸着量は45.6wt%であり、脱離時の相対湿度10%における吸着量は15.4wt%であり、両者の差は30.2wt%であった。
比較例で得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体の吸着時における相対湿度60%における吸着量は45.9wt%であり、脱離時の相対湿度10%における吸着量は15.5wt%であり、両者の差は30.4wt%であった。
以上より、Si源を水ガラス、Al源を硫酸アルミニウムに変えても、従来と同等の水蒸気吸着性能を有することが明らかとなった。
【0023】
(実施例3)
本実施例では、実施例2の低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合の製造方法において、Si/Alのモル比を0.7〜1.7の範囲にて条件を変えて、得られた生成物の評価を行った。
生成物の評価は、水蒸気吸着評価試験により行った。評価方法は、秤量瓶に約0.3gの試料を入れ、100℃で1時間乾燥させた際の重量を乾燥重量とし、その後25℃相対湿度60%における恒温恒湿槽に1時間入れ水蒸気を吸着させた後の吸着量から、水蒸気吸着率を求めた。
実施例3の結果を図4に示す。図4のようにSi/Alモル比が0.8より大きく、1.6以下、好ましくは1.0より大きく、1.5以下において、高い水蒸気吸着性能を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、中湿度領域において高性能な吸着性を有する低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体の製造方法に関するものであり、本発明の方法で得られた低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体は、自律的調湿調節剤やデシカント空調用の除湿剤、有害汚染物質吸着剤、脱臭剤、さらには二酸化炭素やメタンなどのガス貯蔵剤を提供するものとして有用である。また、本発明は、上記特性を有する非晶質物質を、大量に、低コストでかつ容易に合成することを可能とするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法であって、
水ガラスとアルミニウム水溶液をSi/Al比が0.8より大きく、1.6以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH6〜10に調製した後、脱塩処理工程なしに95℃以上で加熱することを特徴とするアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム水溶液として、硫酸アルミニウム水溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムケイ酸塩複合体の製造方法。
【請求項3】
低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を有効成分とする吸着剤の製造方法であって、
水ガラスとアルミニウム水溶液をSi/Al比が0.8より大きく、1.6以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH6〜10に調製した後、脱塩処理工程なしに95℃以上で加熱することにより、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなるアルミニウムケイ酸塩複合体を得ることを特徴とする高性能吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム水溶液として、硫酸アルミニウム水溶液を用いることを特徴とする請求項3に記載の高性能吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記高性能吸着剤が、デシカント空調用吸着剤であることを特徴する請求項3又は4に記載の高性能吸着剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−12267(P2012−12267A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152580(P2010−152580)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】