説明

アルミニウム又はアルミニウム合金からなる熱交換器

【課題】暖房運転時の着霜を可及的に防止すると共に、フィン表面が結露し易い条件下では凝縮水の水滴を親水性皮膜に接触させてこの水滴を速やかに排除することができ、これによって通風抵抗を増大させることなく良好な熱交換機能を継続して得る熱交換フィンを備えた熱交換器を提供する。
【解決手段】着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜と親水性皮膜を有するアルミニウム板材製の熱交換フィンを備えた熱交換器であり、熱交換フィンの表面の任意の位置における10mm×10mm正方形の面積において架橋撥水性皮膜の占める面積が20〜80%であって、架橋撥水性皮膜がフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含み、樹脂(B)と樹脂(C)の固形分合計100質量部に対する樹脂(A)の固形分が1〜30質量部である水性撥水塗料組成物から形成されている熱交換器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材で形成され、表面に優れた着霜抑制効果と凝縮水排除効果とが付与された熱交換フィンを用いて形成された熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム板材で形成された熱交換フィンを用いた熱交換器は、空気調和機や冷凍機器、自動車機器等に用いられている。上記空調用熱交換器においては、暖房運転時の室外機において、空気の温度が低い場合や冷媒の蒸発温度が低い場合に、フィンの表面に霜が付着することがあり、そして、着霜するとフィン間が閉塞して通風抵抗が増大し、延いては熱交換器に流入する風量が低下し、室外機の熱交換器の蒸発能力が低下する。このため、熱交換器に霜が付着した際には、この霜を取り除くために、暖房運転を停止して除霜運転を行う必要が生じ、快適性が大きく低下するという問題があった。
【0003】
また、このような着霜を抑える技術として、フィンの表面に撥水性皮膜を形成する方法があるが、この方法においては、着霜によって閉塞する時間を延ばすことはできるが、除霜後や比較的冷媒の温度が高くてフィンの表面に水滴が結露するような条件では、フィン間に凝縮水が付着し、この付着した凝縮水がフィン間でブリッジを形成して通風抵抗が増大し、結果として熱交換性能が低下するという問題がある。
【0004】
このため、暖房運転時の熱交換器の熱効率を向上させるためには、フィン表面の凝縮水を着霜前に排除すると共に、フィン表面を着霜し難い表面にすることが求められており、また、この課題を解決するための手段としては、フィン表面に親水性皮膜を形成し、凝縮水を薄い水膜として流下させる親水処理方法(特許文献1〜3)、フィン表面に撥水性皮膜を形成し、凝縮水を早期に排除する撥水処理方法(特許文献4〜6)、及び、フィンの配置や部位に応じて撥水性皮膜と親水性皮膜とを形成し、これら撥水性皮膜及び親水性皮膜の長所及び短所を互いに補う撥水・親水処理方法(特許文献7〜9)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-014,888号公報
【特許文献2】特開2000-028,291号公報
【特許文献3】特開2010-223,520号公報
【特許文献4】特開平08-269,367号公報
【特許文献5】特開平09-026,286号公報
【特許文献6】特開2009-270,181号公報
【特許文献7】特開平08-152,287号公報
【特許文献8】特許第3,761,262号公報
【特許文献9】特開2006-046,695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3の親水処理方法においては、薄い水膜として流下する機能が十分ではなく、暖房運転を行なった際に着霜を抑制する除霜性が十分でなく、また、特許文献4〜6の撥水処理方法においても、撥水性が十分でなく、結露した水滴を確実に排除して着霜を抑制する除霜性が十分でなく、更に、特許文献7〜9においては、フィンの配置や部位に応じて形成される撥水性皮膜及び親水性皮膜、特に撥水性皮膜において、その撥水性能や親水性能、特に撥水性能について必ずしも十分ではなく、満足し得る着霜抑制効果を達成できるまでには至っておらず、また、凝縮水によるフィン間の通風抵抗増大の問題を十分に解決できるまでには至っていない。
【0007】
そこで、本発明者らは、これら従来技術の問題点に鑑み、撥水性皮膜による優れた着霜抑制効果と親水性皮膜による優れた凝縮水排除効果とを両立させ、これによって暖房運転時等に着霜が無く、しかも、凝縮水によるフィン間通風抵抗増大の問題のないアルミニウム板材製の熱交換フィンで構成された熱交換器を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、撥水性皮膜中に特定の架橋構造を導入すると共にこの架橋撥水性皮膜と親水性皮膜とを熱交換フィンの同一面内に共存させることにより、目的を達成し得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、アルミニウム板材製の熱交換フィンの同一面に架橋撥水性皮膜と親水性皮膜とを形成し、この架橋撥水性皮膜による優れた着霜抑制効果と親水性皮膜による優れた凝縮水排除効果とを両立させ、暖房運転時の着霜を可及的に防止すると共に、フィン表面が結露し易い条件下では凝縮水の水滴を親水性皮膜に接触させてこの水滴を速やかに排除することができ、これによって通風抵抗を増大させることなく良好な熱交換機能を継続して得る熱交換フィンを備えた熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材で形成されたフィン基板と、このフィン基板の表面に設けられた着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜及び親水性皮膜とを有する熱交換フィンを備えた熱交換器であって、
前記熱交換フィンの表面の任意の位置における10mm×10mmの正方形の面積において前記架橋撥水性皮膜の占める面積が10〜90%であり、かつ、
該架橋撥水性皮膜が、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含有し、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)とアミノ樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の固形分が1〜30質量部である水性撥水塗料組成物から形成されていることを特徴とする熱交換器である。
【0010】
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材で形成されたフィン基板の表面の全面又は一部の面に、着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜が形成された熱交換フィンを備えている熱交換器の製造方法であって、
前記架橋撥水性皮膜が、前記フィン基板の表面の全面又は一部の面に、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含有し、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)とアミノ樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の固形分が1〜30質量部である水性撥水塗料組成物を塗布した後に焼き付けて形成されており、また、
前記架橋撥水性皮膜が形成された後に、該架橋撥水性皮膜を水、酸溶液、及びアルカリ溶液から選ばれた1種又は2種以上の後処理液で後処理することを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0011】
本発明において、前記フィン基板を形成するアルミニウム板材については、それが純アルミニウムからなるものであっても、また、アルミニウム合金からなるものであっても、特に制限されるものではないが、フィン基板については、耐食性の観点から、その両面に耐食性皮膜が設けられていてもよい。
【0012】
この目的で上記フィン基板の両面に設けられる耐食性皮膜は、フィン基板の両面に耐食性処理剤を塗布又は、浸漬処理して形成されるものであり、ここで使用される耐食性処理剤としては、例えば、クロメート、リン酸クロメート、クロムフリー化成処理液、有機系の耐食性プライマー等を挙げることができ、環境に配慮した耐食性皮膜の観点から、クロムフリー化成処理液、有機系の耐食性プライマー等が好ましい。
【0013】
本発明においては、好ましくは、フィン基板の表面の全面又は一部の面に親水性皮膜が形成されているのがよく、また、この親水性皮膜の表面の全面又は一部の面の上に前記架橋撥水性皮膜が形成されているのがよく、これによって、前記熱交換フィンにおいて、好ましくは、その表面の一部に前記架橋撥水性皮膜が不均一で斑状に形成されているか、あるいは、前記架橋撥水性皮膜と親水性皮膜とが相俟って、架橋撥水性皮膜が海部分を構成し、かつ、親水性皮膜が島部分を構成する海島構造を形成しているのが望ましい。このようにフィン基板の表面に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜と親水性皮膜とを設けることにより、架橋撥水性皮膜による優れた着霜抑制効果及び着霜抑制持続効果により暖房運転時の着霜を可及的に防止すると共に、フィン表面が結露し易い条件下では生成した凝縮水の水滴を親水性皮膜に接触させ、この親水性皮膜の凝縮水排除効果によりこの水滴を速やかに排除することができる。
【0014】
ここで、フィン基板の表面の全面又は一部の面、好ましくはこのフィン基板の表面に設けられた親水性皮膜の表面の全面又は一部の面に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜を形成する方法については、特に限定されないが、例えば、架橋撥水性皮膜を同一面に斑点模様に形成する方法として、撥水塗料にシリコーン系撥水剤を添加し、架橋撥水性皮膜の形成時にその一部を弾かせて斑点模様にする方法、撥水塗料を塗布する際にスプレーで薄膜状に塗装し、塗装部分と未塗装部分とを形成する方法、架橋撥水性皮膜が形成されるフィン基板の表面(粗面化表面)や親水性皮膜の表面(塗膜表面)に凹凸部を形成し、この凹凸部の凹部に架橋撥水性皮膜を形成し、この架橋撥水性皮膜の膜厚を制御して凹凸部の凸部を架橋撥水性皮膜から頭出しさせる方法、架橋撥水性皮膜が形成されるフィン基板の表面(粗面化表面)や親水性皮膜の表面(塗膜表面)に水可溶性の樹脂等を斑点模様になるように塗装した後、撥水塗料を塗装し、その後に、水洗浄、酸洗浄、又はアルカリ洗浄を行って、前記水可溶性樹脂の上に形成された架橋撥水性皮膜を除去し、架橋撥水性皮膜を斑点模様に形成する方法等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記フィン基板の表面の全面又は一部の面に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜を形成した後、この架橋撥水性皮膜を水、酸溶液、又はアルカリ溶液で後処理することにより、親水性を発現させ、優れた着霜抑制効果と着霜抑制持続効果で、暖房運転時の着霜を可及的に防止すると共に、フィン表面が結露し易い条件下では凝縮水の水滴が流れやすくなり、この水滴を速やかに排除することができる。
【0016】
上記、親水性を発現させるための水による後処理は、特に制限はないが、水道水、工業用水、イオン交換水等を用いて、架橋撥水性皮膜形成後の熱交換フィンを、好ましくは常温〜100℃及び5秒〜3時間、より好ましくは40〜100℃及び10秒〜1時間の条件で、浸漬又はスプレーによる水洗を行なうのがよい。また、親水性を発現させるための酸溶液による後処理は、特に制限はないが、架橋撥水性皮膜形成後の熱交換フィンを、好ましくは常温〜100℃及び5秒〜3時間、より好ましくは40〜100℃及び10秒〜1時間の条件で、浸漬又はスプレーによる洗浄を行なうのがよい。酸溶液としては、特に制限はないが、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸の水溶液が用いられる。また、親水性を発現させるためのアルカリ溶液による後処理は、特に制限はないが、架橋撥水性皮膜形成後の熱交換フィンを、好ましくは常温〜100℃及び5秒〜3時間、より好ましくは40℃〜100℃及び10秒〜1時間の条件で、浸漬又はスプレーによる洗浄を行なうのがよい。アルカリ溶液としては、特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム、珪酸ソーダ等の水溶液でもよい。なお、酸溶液やアルカリ溶液で洗浄した後は、アルカリ溶液又は酸溶液で中和後、水洗を行ってもよい。
【0017】
ここで、上記着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜については、その水接触角が好ましくは100°以上、より好ましくは105°以上であり、また、その膜厚は、通常0.05〜5.0μm以下、好ましくは0.1〜4.0μm、より好ましくは0.2〜2.0μmである。この架橋撥水性皮膜の水接触角については、高ければ高いほどよいが、この架橋撥水性皮膜の水接触角が100°より低いと、着霜抑制効果が低くなるという問題があり、また、上記架橋撥水性皮膜の膜厚については、0.05μm未満であると、ロット間での着霜抑制と親水性のバラツキが大きくなり、また着霜抑制と親水持続性の経時劣化が大きくなる等の問題があり、反対に、5.0μmを超えると、これ以上の着霜抑制、親水性の向上は期待できないだけではなく、むしろフィン材に冷媒用の銅管をロウ付けする際の熱による皮膜の焦げが目立つようになり、また、膜厚が厚くなるにつれてコストアップとなる等の問題がある。
【0018】
本発明において、上記着霜抑制効果を発揮する架橋撥水性皮膜は、水性撥水塗料組成物を塗布して形成されるものであり、この目的で使用される水性撥水塗料組成物としては、着霜抑制を長期間維持する観点から、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含む水性撥水塗料組成物を挙げることができる。なお、以下の記載において、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)を「フッ素原子含有基を有する樹脂(A)」とすることがある。
【0019】
<フッ素原子含有基を有する樹脂(A)>
上記水性撥水塗料において、フッ素原子含有基を有する樹脂(A)は、パーフルオロアルキル基及び/又はパーフルオロアルケニル基を有する樹脂であれば公知のものを使用することができ、水又は水を主成分とする媒体(以下、水性媒体と記す)に分散又は溶解したものを用いることができる。このようなフッ素原子含有基を有する樹脂(A)は、例えば下記一般式(1)に示した構造のパーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する重合性不飽和単量体(a-1)[以下「フッ素原子含有基を有する重合性不飽和単量体(a-1)」と記すことがある]と、その他の重合性不飽和単量体(a-2)とを、共重合反応させることにより得られた樹脂であることが好ましい。上記重合反応を行う方法は、公知の重合方法から選択することができ、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、分散重合等を挙げることができ、水性媒体に分散又は溶解した樹脂の製造効率等の観点から、乳化重合が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Rfは炭素数1〜21の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルケニル基を表わす。Rは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、Xは酸素原子又はイミノ基を表わす。Yは酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はリン原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜20の2価の有機基を表わす。)
【0022】
上記フッ素原子含有基としては、パーフルオロアルキル基であることが好ましく、該パーフルオロアルキル基としては、例えば、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3)2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF3) 3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜21、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜16である。
【0023】
フッ素原子含有基を有する重合性不飽和単量体(a-1)の乳化重合は、該単量体(a-1)とその他の重合性不飽和単量体(a-2)との混合物を水性媒体中で、乳化剤、重合開始剤を用いて、公知の方法によって行うことができる。なお、該乳化重合においては、必要に応じて親水性又は疎水性の有機溶剤を使用してもよい。
【0024】
乳化剤としては従来公知の乳化剤が使用でき、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はそれらを組合せて用いられる。上記界面活性剤は、必要に応じてフッ化アルキル基等のフッ素原子が結合した化合物を用いてもよい。
【0025】
重合開始剤としては従来公知の重合開始剤が使用でき、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の油溶性重合開始剤等が挙げられる。
【0026】
また、上記乳化重合反応において、連鎖移動剤を用いてもよく、該連鎖移動剤として、例えば、マロン酸ジエチル(MDE)、マロン酸ジメチル等のマロン酸ジエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;n-ラウリルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等のメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0027】
重合反応は、重合温度20〜150℃、重合時間0.1〜100時間で行うことによって、フッ素原子含有基を有する樹脂(A)の水分散体を製造することができる。該水分散体において、フッ素原子含有基を有する樹脂(A)は、平均粒子径が10〜500nm、好ましくは30〜200nmの粒子として得られる。固形分濃度は5〜50質量%程度が望ましい。
【0028】
上記フッ素原子含有基を有する樹脂(A)の粒子は単層構造或いはコアシェル構造を含む多層構造であってもよく、また、粒子内部は架橋されていてもよく、これらの粒子は、乳化重合において公知の方法によって得ることができる。
【0029】
上記その他の重合性不飽和単量体(a-2)としては、フッ素原子含有基を有する重合性不飽和単量体(a-1)と共重合反応性を有するものであれば、特に制限なく使用することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート及びヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アルキル基の炭素数が1〜20のビニルアルキルエーテル;アルキル基の炭素数が1〜20のハロゲン化アルキルビニルエーテル;アルキル基の炭素数が1〜20のビニルアルキルケトン;ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のシリル基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-sec-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;酢酸ビニル、「ベオバ」(シェル社製のビニルエステル)等のビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルエチレン、ブタジエン等挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド及びメタクリルアミドの総称である。
【0030】
水性媒体に溶解又は分散させたフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の市販品としては、ユニダインTG−652、ユニダインTG−664、ユニダインTG−410、ユニダインTG−5521、ユニダインTG−5601、ユニダインTG−8711、ユニダインTG−470B、ユニダインTG−500S、ユニダインTG−580、ユニダインTG−581、ユニダインTG−658(以上、ダイキン社製、商品名)、SWK−601(セイミケミカル社製)、FS6810(フロロテクノロジー社製)、NKガードSR−108(日華化学社製)等が挙げられる。
【0031】
フッ素原子含有基を有する樹脂(A)の製造は、上記のフッ素原子含有基を有する重合性不飽和単量体(a-1)と、その他の重合性不飽和単量体(a-2)との共重合反応による方法以外に、パーフルオロアルキル基含有ラジカル発生剤を重合開始剤として用いた重合性不飽和単量体の重合反応により行うこともでき、該重合開始剤としては、例えば、特開平2010-195,937号公報に記載された含フッ素有機過酸化物等を挙げることができる。
【0032】
<4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)>
前記水性撥水塗料は、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の観点から、以下に述べる4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)を含む。
【0033】
該変性エポキシ樹脂(B)は、エポキシ樹脂(b-1)、カルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)及びアミン化合物(b-3)を含む混合物を反応させることにより製造することができる。該反応においては、4級アンモニウム塩基を生成する反応と、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基とカルボキシル基含有アクリル樹脂に含まれるカルボキシル基とのエステル化反応とが、進行して4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)を生成する。また、該反応においては、エポキシ樹脂(b-1)のエポキシ基は、開環して水酸基を生成する。よって、上記4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)は、後述するアミノ樹脂(C)と反応性の水酸基を有している。
【0034】
エポキシ樹脂(b-1)としては、密着性、耐食性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られる樹脂である。
【0035】
上記ビスフェノール化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、4,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン[ビスフェノールS]等を挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂(b-1)の中でも、耐食性の観点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
水性媒体中での分散安定性、得られる塗膜の加工性や衛生性等の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b-1)の数平均分子量が4,000〜30,000、好ましくは5,000〜30,000の範囲内であり、かつエポキシ当量が2,000〜10,000、好ましくは2,500〜10,000の範囲内のものが好適に使用される。
【0037】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(b-1)として使用できるビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER1010、jER1256B40、jER1256等を挙げることができる。
【0038】
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を二塩基酸で変性したビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂であってもよい。この場合、二塩基酸と反応させるビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、数平均分子量が2,000〜8,000であり、かつエポキシ当量が1,000〜4,000の範囲内にあるものを好適に使用することができる。また、上記二塩基酸としては、一般式HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは1〜12の整数を示す)で表される化合物、具体的にはコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等やヘキサヒドロフタル酸等が使用でき、特にアジピン酸が好適に使用できる。
【0039】
上記ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂は、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と二塩基酸との混合物を、例えばトリ-n-ブチルアミン等のエステル化触媒や有機溶剤の存在下で、反応温度120〜180℃で、約1〜4時間反応を行うことによって得ることができる。
【0040】
上記4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)の製造に用いられるカルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)は、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体及びその他の重合性不飽和単量体を含む混合物を、例えば、有機溶剤中にて、ラジカル重合開始剤を用いて、80〜150℃で1〜10時間加熱し、共重合反応させることによって製造することができる。
【0041】
カルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)の製造に用いることのできる上記その他の重合性不飽和単量体は、フッ素原子含有基を有する樹脂(A)について記載した、前記その他の重合性不飽和単量体(a-2)を挙げることができる。
【0042】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等が用いられ、有機過酸化物系では、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系では、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0043】
上記共重合反応においては連鎖移動剤を用いてもよく、例えば、α-メチルスチレンダイマー、メルカプタン化合物等の公知のものが挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)は重量均分子量が5,000〜100,000、好ましくは10,000〜100,000で樹脂酸価150〜700mgKOH/g、200〜500mgKOH/gの範囲内にあることが、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性の観点から好ましい。
【0045】
上記アミン化合物(b-3)としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、N-メチルモルホリン等の第3級のアミン化合物が好ましい。
【0046】
4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)は、エポキシ樹脂(b-1)、カルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)及びアミン化合物(b-3)を含む混合物を有機溶剤中にて、80〜120℃で0.5〜8時間加熱して反応させることにより製造することできる。
【0047】
上記反応におけるエポキシ樹脂(b-1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)との配合割合は、塗装作業性や塗膜性能に応じて適宜選択すればよいが、樹脂(b-1)/樹脂(b-2)の固形分質量比で、10/90〜95/5、さらには60/40〜90/10の範囲内であることがよい。
【0048】
該アミン化合物(b-3)の使用量はエポキシ樹脂(b-1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(b-2)の合計固形分を基準にして1〜10質量%の範囲が、得られた皮膜の耐湿性や耐食性の観点から好適である。
【0049】
上記反応によって得られる4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)は、酸価20〜120mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/g、重量平均分子量が1,000〜40,000、好ましくは2,000〜15,000の範囲内であることが、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の観点から好ましい。
【0050】
なお、本明細書において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した保持時間(保持容量)をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。数平均分子量は、その重量平均分子量から計算によって求めた値である。
【0051】
ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0052】
上記4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)は、水性媒体中に中和、分散されるが、中和に用いられる中和剤としては、アミン類やアンモニア等の塩基性化合物が好適に使用される。
【0053】
上記アミン類の代表例としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。中でも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好適である。4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)の中和は、樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.2〜2.0当量中和の範囲が好ましい。
【0054】
本発明では、上記エステル化反応時及び中和によって形成される4級アンモニウム塩基量(樹脂1g当たりに含まれる4級アンモニウム塩基のモル数)が3.0×10-4mol/g以下の範囲内、好ましくは0.6×10-4〜3.0×10-4mol/gの範囲内、より好ましくは0.8×10-4〜2.5×10-4mol/gの範囲内であることが、密着性、耐湿性、耐食性の観点から好ましい。
【0055】
ここで、4級アンモニウム塩基量の測定は、反応開始後の試料を溶媒に溶解した試料溶液に、官能基としてのスルホン酸基及びヒドロキシル基を有する指示薬を溶媒に溶解してなる指示薬溶液を滴下して滴定反応を行い、該指示薬と4級アンモニウム塩化エポキシ化合物とが反応してスルホン酸基及びヒドロキシル基の両者が同時にイオン化された指示薬及びカルボン酸を形成する滴定反応の第1段階、及び該指示薬と該イオン化指示薬とが反応してスルホン酸基のみがイオン化された指示薬を形成する滴定反応の第2段階について滴定量と電導度との関係をプロットし、第1段階におけるプロットを結ぶ直線と第2段階におけるプロットを結ぶ直線との交点における滴定量から第1段階における滴定量t1を求め、下記式(1)により、試料固形分換算1g中の4級アンモニウム塩量(mol/g)を求める。
【0056】
4級アンモニウム塩量(mol/g)
=t1(ml)×2×指示薬濃度(mol/l)×(1/1,000)
×{100/(試料(g)×固形分(%))} ………………式(1)
なお、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)を分散する水性媒体は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)の水性媒体中での安定性を損わない限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0057】
<アミノ樹脂(C)>
上記水性撥水塗料に含まれるアミノ樹脂(C)は、メラミン樹脂、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂等が挙げられるが、加工性、密着性の観点からメラミン樹脂が好ましい。
【0058】
メラミン樹脂としては、例えば、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0059】
これらは、メチロール基がすべてエーテル化されているか、又は部分的にエーテル化され、メチロール基やイミノ基が残存しているものも使用できる。メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンを挙げることができ、1種のみ、又は必要に応じて2種以上を併用してもよい。なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂が好適である。
【0060】
このような条件を満たすメラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル232」、「サイメル235」、「サイメル238」、「サイメル254」、「サイメル266」、「サイメル267」、「サイメル272」、「サイメル285」、「サイメル301」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル701」、「サイメル703」、「サイメル736」、「サイメル738」、「サイメル771」、「サイメル1141」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「マイコート212」、「マイコート715」、「マイコート776」等(以上、日本サイテック社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン2061」等(以上、三井化学社製)、及び「メラン522」等(日立化成社製)の商品名で市販されている。
【0061】
なお、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)の配合割合は、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)/アミノ樹脂(C)の固形分質量比において95/5〜50/50、特に93/7〜60/40の範囲内が好ましい。アミノ樹脂(C)の量が少な過ぎると十分な硬化性が得られず、多過ぎるとアルミニウムフィン材の加工性が低下することがある。
【0062】
上記水性撥水塗料組成物におけるフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の含有量は、着霜抑制、耐食性、塗料安定性の面から前記4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)とアミノ樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、固形分で1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは10〜22質量部である。
【0063】
なお、本発明における水性撥水塗料組成物には、フッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)以外に、必要に応じて、塩基性化合物、アミノ樹脂(C)以外の架橋剤(例えばブロック化ポリイソシアネート)、コロイダルシリカ、防菌剤、着色顔料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系等)、防錆剤(たとえばタンニン酸、没食子酸等のフェノール性カルボン酸及びその塩類、フイチン酸、ホスフィン酸等の有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩等)等の添加剤、並びに水性媒体を加えることができる。
【0064】
上記水性媒体は、水であってもよいし、水と少量の有機溶剤やアミン類やアンモニア等の塩基性化合物との混合溶媒であってもよい。混合溶媒において、通常、水の含有量は80質量%以上である。
【0065】
また、本発明において、上記凝縮水排除効果を発揮する親水性皮膜は、親水塗料を塗布して形成されるものでもよい。この目的で使用される親水塗料としては、例えば、水ガラス系、シリカ系、ベーマイト系等の無機系塗料や、水溶性アクリル樹脂、水溶性セルロース樹脂、水溶性アミノ樹脂、ポリビニルアルコール等を含有する有機系親水塗料や、無機系材料と有機樹脂とを含有する有機無機複合系親水塗料等を挙げることができる。
【0066】
上記有機系親水塗料としては、公知のものを使用することができ、例えば、以下の有機系親水塗料組成物(E)を挙げることができる。
(1)87%以上のケン化度を有するポリビニルアルコール及び300mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部が、180℃未満の沸点を有さず、かつ、180℃未満で分解しない塩基性化合物と塩を形成してなる中和樹脂を含有する有機親水塗料。
(2)ポリビニルアルコール系樹脂及びポリエチレングリコール系樹脂を主成分として含み、かつ、1価又は2価の元素を有する硝酸化合物を含有する有機親水塗料(特開2002-275,407号公報参照)。
【0067】
また、本発明において、上記凝縮水排除効果を発揮する親水性皮膜は、フィンをロウ付けする工程で使用されるフラックスを塗布して形成されるものでもよい。フラックスとしては、例えば、KAlF4、K2AlF5・H2O、KAlF4とK3AlF6の錯化合物や、KZnF3、K2SiF6、Li3AlF6、CsAlF4等のフッ化物系フラックス等を挙げることができ、これらのフラックスを1種類以上混合して使用する。
【0068】
撥水塗料、親水塗料、フラックスの塗布は、ロールコート法、バーコート法、スプレー法、浸漬法、スピンコート法等の塗布手段により行われ、アルミニウム材にロールコーター等で塗装したプレコートフィン材を用いる方法や、又は、アルミニウムフィン材で構成された熱交換器にスプレーや浸漬で塗布するポストコート法で行う。この際、撥水塗料、親水塗料は、所定の濃度になるように適宜希釈して使用される。
【0069】
また、上記親水性皮膜については、その水接触角が好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であり、また、その膜厚は、通常0.1〜200μm、好ましくは0.2〜100μm、より好ましくは0.5〜100μmである。また、上記親水性皮膜がロウ付けの工程で形成された皮膜である場合、その水接触角が好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下であり、また、その膜厚は、通常0.1〜200μm以下、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜100μmである。
【0070】
この親水性皮膜の水接触角については、低ければ低いほどよいが、この親水性皮膜の水接触角が40°より高いと、凝縮水が流れにくいという問題があり、また、上記親水性皮膜の膜厚については、架橋撥水性皮膜の場合と同様に、0.1μm未満であると、ロット間での着霜抑制と親水性のバラツキが大きくなり、また着霜抑制と親水持続性の経時劣化が大きくなる等の問題があり、反対に、200μmを超えると、これ以上の着霜抑制、親水性の向上は期待できないだけではなく、また膜厚が厚くなるにつれてコストアップとなる等の問題がある。
【0071】
<熱交換器フィンの皮膜形成方法>
(1)プレコートフィンの場合
前記の耐食性皮膜、架橋撥水性皮膜、及び親水性皮膜を種々の硬質材料の表面に塗布する方法については、特に制限はなく、例えば、プレコートフィンの場合は、通常良く用いられるロールコーターを用いる方法や、バーコート法、スプレー法等を採用することができる。
【0072】
例えば、前記の水性撥水塗料組成物を用い、熱交換器用アルミニウム板材製のフィン基板の表面に架橋撥水性皮膜を形成する際には、先ず、ロールコーター等を用いてアルミニウム材に前記水性撥水塗料組成物を塗布し、次いで例えばフローターオーブン等により高温通風下での加熱、好ましくは10〜30m/分の高温通風下に60〜300℃の高温で2秒間〜30分間の加熱を行う。
【0073】
また、前記親水性皮膜を形成した後に、前記架橋撥水性皮膜を形成する際には、熱交換器用アルミニウム板材製のフィン基板の表面に前記親水性処理剤を塗布し、次いで例えばフローターオーブン等により高温通風下での加熱、好ましくは10〜30m/分の高温通風下に60〜300℃の高温で2秒間〜30分間の加熱を行い、次いで、前記水性撥水塗料組成物を塗布し、次いで例えばフローターオーブン等により高温通風下での加熱、好ましくは10〜30m/分の高温通風下に60〜300℃の高温で2秒間〜30分間の加熱を行う。
【0074】
(2)ポストコート塗装の場合
前記の耐食性皮膜、架橋撥水性皮膜、及び親水性皮膜を種々の表面に塗布する方法については、アルミニウムフィン材を用いた熱交換器においては、ポストコートで、親水性皮膜、耐食性皮膜、架橋撥水性皮膜を形成する。
【0075】
アルミニウム板材製の熱交換フィンを用いた熱交換器が、例えば、扁平流路管とコルゲートフィンをロウ付けした熱交換器からなる場合、扁平流路管とコルゲートフィンをロウ付けした熱交換器にポストコートで、前記の親水性皮膜、架橋撥水性皮膜又は、前記の親水性皮膜、耐食性皮膜、架橋撥水性皮膜を形成する。この場合、上記親水性皮膜はロウ付け時に用いるフラックスをスプレー法や浸漬法等で塗布することで形成され、耐食性皮膜、架橋撥水性皮膜は耐食性処理液、水性撥水塗料を浸漬法やスプレー法等で処理し、塗布後、それぞれ60〜300℃で2秒間〜30分間加熱する。
【0076】
例えば、扁平流路管とコルゲートフィンをフッ化物系フラックスでロウ付けする場合、フラックススラリーをシャワー、スプレー、ハケ等で塗布し、乾燥後、590〜610℃で3〜10分加熱することで、扁平流路管及び、又は、コルゲートフィンに無機系親水性皮膜を形成し、冷却後、水性撥水塗料を上記の方法でポストコートしてもよい。
【0077】
また、フラックスを塗布し、ロウ付けすることで、扁平流路管及び、又は、コルゲートフィンに無機系親水性皮膜を形成し、冷却後、上記耐食性塗料を上記の方法でポストコートした後、水性撥水塗料を上記の方法でポストコートしてもよい。
【0078】
本発明の熱交換フィンにおいて、その表面に形成される前記架橋撥水性皮膜と親水性皮膜との割合は、熱交換フィンの表面の任意の位置における10mm×10mmの正方形の面積において、前記架橋撥水性皮膜の占める面積が10〜90%、好ましくは20〜80%である必要があり、この架橋撥水性皮膜の占める面積が10%より小さいと、着霜抑制効果が不十分になるという問題があり、反対に、90%より大きくなると凝縮水排除効果が不十分であるという問題が生じる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の熱交換器によれば、アルミニウム板材製の熱交換フィンの同一面に架橋撥水性皮膜と親水性皮膜が形成されており、架橋撥水性皮膜による優れた着霜抑制効果と親水性皮膜による優れた凝縮水排除効果とが互いに協働し、暖房運転時の着霜を可及的に防止すると共に、フィン表面が結露し易い条件下では凝縮水の水滴を親水性皮膜に接触させてこの水滴を速やかに排除することができ、これによって通風抵抗を増大させることなく良好な熱交換機能を継続し得る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、実施例5〜12及び比較例1〜8で得られたアルミニウム合金製の熱交換器を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
<水性撥水塗料組成物の製造例>
以下の製造例において、「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0082】
(1) アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)の製造に使用するカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca)の製造
〔製造例1:カルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-1)の溶液〕
n-ブタノール850部を窒素気流下で100℃に加熱し、その中に単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸450部、スチレン450部、エチルアクリレート100部、t-ブチルパーオキシ−2-エチルヘキサノエート40部」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、t-ブチルパーオキシ−2-エチルヘキサノエート10部とn-ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、n-ブタノール933部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-1)の溶液を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価300mgKOH/g、重量平均分子量約17,000を有していた。
【0083】
〔製造例2:カルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-2)の溶液〕
n-ブタノール1,400部を窒素気流下で100℃に加熱し、その中に単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸670部、スチレン250部、エチルアクリレート80部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート50部」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート10部とn-ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、n-ブタノール373部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-2)の溶液を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価450mgKOH/g、重量平均分子量約14,000を有していた。
【0084】
(2) アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae)の製造
〔製造例3:アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae-1)の水分散体〕
jER828EL〔ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380〕513部、ビスフェノールA287部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱しながら約4時間反応を行い、エポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量3,700、数平均分子量約1,7000を有していた。
【0085】
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例1で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-1)の溶液を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、次いでジメチルエタノールアミン30部を添加して1時間撹拌して反応を行った。更に、脱イオン水2380部を1時間かけて添加して固形分約25%のアンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae-1)の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価48mgKOH/g、4級アンモニウム塩量(明細書中の導電率滴定方法による)1.2×10-4mol/g、重量平均分子量26,000を有していた。
【0086】
〔製造例4:アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae-2)の水分散体〕
jER828EL〔ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380〕519部、ビスフェノールA281部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱しながら約4時間反応を行い、エポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量2,800、数平均分子量約12,000を有していた。
【0087】
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例2で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-2)の溶液を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、次いでジメチルエタノールアミン53部を添加して1時間撹拌して反応を行った。更に、脱イオン水2,350部を1時間かけて添加して固形分約25%のアンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae-2)の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価75mgKOH/g、4級アンモニウム塩量(導電率滴定による結果)1.8×10-4mol/g、重量平均分子量18,000を有していた。
【0088】
(3) 水性撥水塗料組成物(D)の製造
〔製造例5:水性撥水塗料組成物(D-1)〕
ユニダインTG−500S(注2の*1)を10部(固形分)、製造例3で得た4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(ae-1)を90部(固形分)、マイコート715(注2の*4)を10部(固形分)加え、更に脱イオン水を加えて固形分を調整して、固形分10%の水性撥水塗料組成物(D-1)を得た。
【0089】
〔製造例6〜12:水性撥水塗料組成物(D-2)〜(D-8)〕
下記表1及び表2に示す配合に従って各成分を攪拌機で十分に混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整して固形分10%の水性撥水塗料組成物(D-2)〜(D-8)を作成した。
【0090】
【表1】

【0091】
<親水塗料組成物(E)の製造例>
〔製造例13:ポリビニルアルコール水溶液(e-1)〕
デンカポバールK−05(電気化学工業(株)製、ケン化度99%、重合度550)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(e-1)を得た。
【0092】
〔製造例14:アクリル樹脂水溶液〕
「ジュリマーAC10LP」〔日本純薬(株)製のポリアクリル酸、重量平均分子量25,000、酸価779mgKOH/g〕80部を3%-n-ブタノール水溶液535部に溶解させ、固形分13%のアクリル樹脂水溶液(e-2)を得た。
【0093】
〔製造例15:アクリル樹脂水溶液〕
「ジュリマーAC10LHP」〔日本純薬(株)製のポリアクリル酸、重量平均分子量250,000、酸価779mgKOH/g〕80部を3%-n-ブタノール水溶液920部に溶解させ、固形分8%のアクリル樹脂水溶液(e-3)を得た。
【0094】
〔製造例16:親水塗料組成物(E-2)〕
製造例13で得た固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(e-1)357部に製造例14で得た固形分13%のアクリル樹脂水溶液(e-2)385部を加え、更にアクリル樹脂のカルボキシル基の中和度が0.6当量となるように14.6部の水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)と3%-n-ブタノール水溶液131.4部との混合溶液(水酸化リチウム一水和物の濃度が10%の溶液)146部を加えて混合攪拌を行い、更に3%-n-ブタノール水溶液112部を加えて均一になるように混合攪拌を行い固形分10%の親水塗料組成物(E-2)を得た。表2に塗料配合を示す。
【0095】
〔製造例17:親水塗料組成物(E-3)〕
製造例13で得た固形分14%のポリビニルアルコール水溶液(e-1)357部に製造例15で得た固形分13%のアクリル樹脂水溶液(e-3)385部を加え、更にアクリル樹脂のカルボキシル基の中和度が0.6当量となるように14.6部の水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)と3%n-ブタノール水溶液131.4部との混合溶液(水酸化リチウム一水和物の濃度が10%の溶液)146部を加えて混合攪拌を行い、更に3%n-ブタノール水溶液112部を加えて均一になるように混合攪拌を行い固形分10%の親水塗料組成物(E-3)を得た。表2に塗料配合を示す。
【0096】
【表2】

【0097】
<比較撥水塗料組成物の調製>
〔比較製造例1:4級アンモニウム塩基を含まない変性エポキシ樹脂〕
jER828EL〔ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380〕513部、ビスフェノールA287部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱しながら約4時間反応を行い、エポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量3,700、数平均分子量約1,7000を有していた。
【0098】
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例1で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂(ca-1)の溶液を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、次いでテトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を添加して3時間撹拌して反応を行った。更に、脱イオン水2380部と25%アンモニア水23部とを混合したものを1時間かけて添加して固形分約25%の4級アンモニウム塩基を含まない変性エポキシ樹脂の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価48mgKOH/g、重量平均分子量24,000を有していた。
【0099】
【表3】

【0100】
<プレコートフィン材を用いた熱交換器の作製>
〔プレコートフィン材用耐食性フィン基板イ及びロの作製〕
実施例1〜4においては、アルミニウムフィン材として板厚100μmのアルミニウム板材(JIS A 1050)を用いて、アルミニウム板材を脱脂処理後、アルミニウム板材の両面に、耐食性処理剤としてクロメート系処理剤(処理剤イ:日本パーをカライジング社製、商品名「アルクロム712」)、又は、有機系処理剤(処理剤ロ:関西ペイント社製、商品名「Cosmer 9105」)をロールコーターで塗装し、耐食性皮膜を形成した。ここで、処理剤イを用いて耐食性フィン基板イを調製するに際しては、アルミニウム板材両面に、ロールコーターを用いて処理剤イをCr量で20mg/m2となるように塗装し、次いでPMT(Peak Metal Temperature)230℃の温度で15秒間乾燥させることにより形成し、また、処理剤ロを用いる場合には、アルミニウム板材の両面に、処理剤ロを膜厚1.0g/m2となるようにロールコーターで塗装し、次いでPMT250℃の温度で10秒間乾燥させることにより形成した。
【0101】
〔親水性塗料組成物を用いた親水性皮膜E-1〜E-3の形成〕
実施例1、比較例9では、上記耐食性フィン基板イの耐食性皮膜の上に、ロールコーターを用いてカルボキシメチルセルロース系の塗料E-1(日本ペイント社製、商品名「サーファルコート160」)を表4に示す膜厚で塗装し、次いでPMT200℃の温度で10秒間乾燥させて親水性皮膜を形成した。また、実施例2、4では、上記耐食性フィン基板イ又はロの耐食性皮膜の上に、表2に示す塗料E-1又は塗料E-2を用い、上記実施例1の場合と同様にして塗装し、PMT230℃の温度で10秒間乾燥した。
【0102】
〔水性撥水塗料組成物を用いた架橋撥水性皮膜の形成〕
上記耐食性皮膜イの上に上記親水性皮膜E-1を形成した後、次いで、実施例1では、表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-1をスプレーにて、比較例9では、表3に示す比較撥水塗料組成物F-1をスプレーにて、表4に示す膜厚を目標に塗装し、次いでPMT220℃の温度で10秒間乾燥させて、フィン基板の一部に架橋撥水性皮膜を有するプレコートフィンを作製した。
【0103】
実施例2では、上記耐食性皮膜イ、親水性皮膜E-2を形成した後、表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-1をスプレーにて、表4に示す膜厚を目標に塗装し、実施例1の条件で乾燥させて、実施例2の熱交換フィンとして表面の一部に架橋撥水性皮膜を有するプレコートフィンを作製した。
【0104】
実施例3、比較例10では、上記耐食性皮膜イを形成した後、次いで、実施例3では表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-2を、比較例10では表3に示す比較撥水塗料組成物F-2を、表4に示す膜厚をロールコーターで塗装し、実施例1の条件で乾燥させた。
【0105】
実施例4では、上記耐食性皮膜ロ、親水性皮膜E-3を形成した後、次いで、表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-2を表4に示す膜厚をロールコーターで塗装し、実施例1の条件で乾燥させた。
【0106】
〔プレコートフィンを用いた熱交換器の作製〕
実施例1〜2のフィン基板の一部に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜が形成されたプレコートフィンを500×25×0.1mmに切断し、2列×12列のカラー部をプレス加工して、熱交換フィンとし、この熱交換フィンを前記カラー部に一致させて積層し、形成された積層体のカラー部に銅管(JIS-C1220、外径7mm、肉厚0.3mm)を挿入し、次いで前記銅管をマンドレルにより拡管してカラー部を機械的に接合し、表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例1〜2のクロスフィンチューブタイプの熱交換器(外寸500mm×25mm×250mm)を作製した。
【0107】
実施例3では、フィン基板に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜が形成されたプレコートフィンを用いて実施例1と同様に熱交換器を作製した。次いで、後処理として、熱交換器を40℃の水道水に30分浸漬させ、乾燥させ、実施例1と同様にして、表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例3のクロスフィンチューブタイプの熱交換器を作製した。
【0108】
実施例4では、フィン基板に着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜が形成されたプレコートフィンを用いて実施例1と同様にして熱交換器を作製した。次いで、後処理として、熱交換器を80℃の工業用水で1分間スプレー洗浄し、乾燥させ、実施例1と同様にして、表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例4のクロスフィンチューブタイプの熱交換器を作成した。
【0109】
比較例9では、フィン基板の一部に撥水性皮膜が形成されたプレコートフィンを用いて実施例1と同様にして熱交換器を作製した。
【0110】
比較例10では、フィン基板に撥水性皮膜が形成されたプレコートフィンを用いて実施例1と同様にしてクロスフィンチューブタイプの熱交換器を作製した。次いで、後処理として、熱交換器を80℃の水道水で1分間スプレー洗浄し、乾燥させ、実施例1と同様にしてクロスフィンチューブタイプの熱交換器を作成した。
【0111】
<コルゲートフィンを用いた熱交換器の作製>
〔実施例5〜12、比較例1〜8〕
〔コルゲートフィンを用いた熱交換器及びフラックスによる親水性皮膜の形成〕
コルゲートフィンを用いた熱交換器は、扁平流路管として多穴押出扁平管、コルゲートフィン、アルミ製ヘッダーパイプで構成されたパラレルフロー型熱交換タイプである。
【0112】
各実施例5〜8及び比較例1〜8では、多穴押出扁平管(JIS A1050合金、16mm幅、0.93mm厚、肉厚0.35mm)、クラッドブレージングシート(JIS A4343合金/JIS A3003合金/JIS A4343合金、0.9mm厚、フィン高さ7.9mm、フィン幅16mm)からなるコルゲートフィンを積層し、両端にアルミ製ヘッダーパイプをセットし、SUS製治具にて拘束後、KAlF4とK3AlF6の錯化合物フラックスをスプレーで塗布し、150℃5分で乾燥した。乾燥後のフラックスの平均塗布量は、実施例5、6の場合が5g/m2で、実施例7、8の場合が15g/m2で、比較例1、2の場合が3g/m2で、比較例3〜8の場合が9g/m2であった。
【0113】
次いで、N2ガスで置換された不活性雰囲気マッフルを有するメッシュベルト式連続炉で昇温過熱、600℃でロウ付けを行なった。扁平管とフィンとの間及び扁平管とヘッダーパイプとの間がロウ付け接合された後、連続ロウ付け炉で常温まで冷却した。ロウ付け後、フィン材の断面を観察したところ、フラックスで形成された皮膜には凹凸があり、実施例5、6では厚い部分が10μmで薄い部分が0.5μmであり、実施例7、8では厚い部分が35μmで薄い部分が2μmであり、比較例1、2では厚い部分が4μmで薄い部分が0.4μmであり、また、比較例3〜8では厚い部分が15μmで薄い部分が1.2μmであった。塗装の前処理として、ロウ付け後のアルミニウム合金製熱交換器を水道水で水洗し乾燥した。
【0114】
〔耐食性処理、耐食性フィン基板ハを有する熱交換器の作製〕
実施例5、6及び比較例6、7においては、上記の塗装前処理の後、コルゲートフィン(熱交換フィン)をロウ付けした熱交換器を、日本ペイント製アルサーフ375の2%溶液を40℃に温めた浴中に1分間浸漬し引き上げた後、水で十分に水洗し、50℃で1分乾燥し、耐食性フィン基板ハを有する熱交換器を作製した。
実施例7及び8及び比較例1〜5、8では耐食性皮膜を形成しなかった。
【0115】
〔架橋撥水性皮膜の形成〕
次いで、実施例5〜8では、表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-3〜D-6を表4に示す膜厚になるよう浸漬塗布し、液切りをした後、160℃の連続乾燥炉で30分乾燥した。
【0116】
また、比較例1〜7では、表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-1、表3に示す比較例の水性撥水塗料組成物F-1〜F-5を表4に示す膜厚になるよう浸漬塗布し、液切りをした後、160℃の連続乾燥炉で30分乾燥した。
比較例8では、水性撥水塗料組成物の塗料は塗布せず、ロウ付け後のままとした。
【0117】
〔後処理〕
次いで、実施例5では後処理を行うことなく、また、実施例6では、後処理として、50℃の1%-苛性ソーダ溶液に30秒浸漬し引き上げた後、水道水で十分に水洗し乾燥させ、更に、実施例7では、後処理として、60℃の水道水で30分水洗し、更にまた、実施例8では、後処理として、40℃の1%-硫酸溶液に30秒浸漬し引き上げた後、水道水で十分に水洗し乾燥させ、それぞれ表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例5〜8のパラレルフロータイプの熱交換器を作製した。
【0118】
比較例3及び7では、後処理として、80℃の水道水に1分浸漬し引き上げた後、水で十分に水洗して乾燥させ、その他の比較例では後処理することなく、比較例1〜8のパラレルフロータイプの熱交換器を作製した。
【0119】
〔実施例9〜10〕
〔コルゲートフィンを用いた熱交換器及びフラックスによる親水性皮膜の形成〕
各実施例9〜10では、扁平流路管として、JIS A1050合金にCu:0.4%、Zr:0.03%、及びTi:0.1%を添加した多穴押出扁平管(16mm幅、1.93mm厚、肉厚0.35mm)を用い、上記扁平流路管表面に、平均粒径10μm以下のSi金属粉末と、K2AlF5・H2OとKZnF3の混合フラックスと、バインダーとしてのアクリル樹脂とを工業用アルコール中でスラリーとした溶液に浸漬した後、250℃で3分乾燥した。乾燥後の表面には、平均塗布量が4g/m2のSi粉末金属と、平均塗布量が10g/m2のフラックスと、平均塗布量が3g/m2のバインダーとが含まれているSi/フラックス混合皮膜を形成した。
【0120】
表面にSi/フラックス混合皮膜を形成した多穴押出扁平管とJIS A3003合金にZn:1.5%添加した生地のコルゲートフィン(0.9mm厚、フィン高さ7.9mm、フィン幅16mm)を積層し、両端にアルミ製ヘッダーパイプをセットし、SUS製治具にて拘束後、N2ガスで置換された不活性雰囲気マッフルを有するメッシュベルト式連続炉で昇温過熱、595℃でロウ付けを行った。扁平管とフィンとの間及び扁平管とヘッダーパイプとの間がロウ付け接合された後、連続ロウ付け炉で常温まで冷却した。ロウ付け後、フィン材の断面を観察したところ、扁平流路管の Si/フラックス皮膜がコルゲートフィン材に濡れ拡がり、フィン材には凹凸があって、厚い部分が5μmで薄い部分が0.5μmであった。塗装の前処理として、ロウ付け後のアルミニウム合金製熱交換器を水道水で水洗し乾燥した。
【0121】
〔耐食性処理、耐食性フィン基板ハを有する熱交換器の作製〕
実施例9及び10では、耐食性皮膜を形成するため、上記の塗装前処理の後、実施例5、6と同様に耐食性フィン基板ハを有する熱交換器を作製した。
【0122】
〔架橋撥水性皮膜の形成〕
次いで、実施例9及び10の熱交換器を表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-7を表4に示す膜厚になるよう浸漬塗装し、160℃の連続乾燥炉で30分乾燥した。
【0123】
〔後処理〕
次いで、実施例9では後処理を行うことなく、また、実施例10では、後処理として、80℃の水道水に30秒浸漬し引き上げた後、水道水で十分に水洗し乾燥させ、表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例9、10のパラレルフロータイプの熱交換器を作製した。
【0124】
〔実施例11〜12〕
〔コルゲートフィンを用いた熱交換器及びフラックスによる親水性皮膜の形成〕
各実施例11〜12では、扁平流路管として、JIS A1050合金にCu:0.4%、Zr:0.03%、及びTi:0.1%を添加した多穴押出扁平管(16mm幅、1.93mm厚、肉厚0.35mm)を用い、上記扁平流路管表面に、平均粒径10μm以下のSi金属粉末と、K2AlF6とKZnF3の混合フラックスと、バインダーとしてアクリル樹脂とを工業用アルコール中でスラリーとした溶液に浸漬した後、250℃で3分乾燥した。乾燥後の表面には、平均塗布量が4g/m2のSi粉末金属と、平均塗布量が10g/m2のフラックスと、平均塗布量が3 g/m2のバインダーとが含まれているSi/フラックス混合皮膜を形成した。
【0125】
表面にSi/フラックス混合皮膜を形成した多穴押出扁平管とJIS A3003合金にZn:1.5%添加した生地のコルゲートフィン(0.9mm厚、フィン高さ7.9mm、フィン幅16mm)を積層し、両端にアルミ製ヘッダーパイプをセットし、SUS製治具にて拘束後、KAlF4とK3AlF6の錯化合物フラックスをスプレーで塗布し、150℃5分で乾燥した。乾燥後のフラックスの平均塗布量は、7g/m2であった。
【0126】
次いで、N2ガスで置換された不活性雰囲気マッフルを有するメッシュベルト式連続炉で昇温過熱、595℃でロウ付けを行った。扁平管とコルゲートフィンとの間及び扁平管とヘッダーパイプとの間をロウ付け接合した後、連続ロウ付け炉で常温まで冷却した。
【0127】
ロウ付け後、コルゲートフィンの断面を観察したところ、コルゲートフィンにはフラックス皮膜による凹凸があって、厚い部分が15μmで薄い部分が2μmであった。塗装の前処理として、ロウ付け後のアルミニウム合金製熱交換器を水道水で水洗し乾燥した。
【0128】
〔耐食性処理〕
実施例11及び12では、耐食性皮膜を形成しなかった。
【0129】
〔架橋撥水性皮膜の形成〕
次いで、実施例11及び12の熱交換器を表1に示す水性撥水塗料組成物の塗料D-8を表4に示す膜厚になるよう浸漬塗装し、160℃の連続乾燥炉で30分乾燥した。
【0130】
〔後処理〕
次いで、実施例12では、後処理として、常温の工業用水に30分浸漬し引き上げた後、水道水で十分に水洗し乾燥させ、表面の一部に架橋撥水性皮膜を有する熱交換フィンを備えた実施例11〜12のパラレルフロータイプの熱交換器を作製した。
【0131】
図1に、実施例5〜12及び比較例1〜8において、コルゲートフィン5と押出扁平菅4との間及び押出扁平管4とヘッダーパイプ3との間をロウ付け接合した後、連続ロウ付け炉で常温まで冷却して得られたアルミニウム合金製の熱交換器を示す。図1において、一対のヘッダーパイプ3には、その一方に熱媒体の導入口1が設けられ、また、他方に排出口2が設けられている。
【0132】
なお、以下の実施例及び比較例において、架橋撥水性皮膜及び親水性皮膜の水接触角の測定、架橋撥水性皮膜の面積率の測定、及び着霜抑制効果の確認は、以下の方法で行った。
【0133】
〔水接触角の測定〕
各実施例及び比較例で、接触角測定用に7cm×15cmのアルミニウムフィン材を用意し、ロールコーターで塗装した部分をバーコーターで塗装した以外は実施例と同様に耐食性皮膜、親水性皮膜、架橋撥水性皮膜の形成と後処理を行い、親水性皮膜の試験片、又は親水性皮膜の上に架橋撥水性皮膜を有する試験片、又は、耐食性皮膜の上に親水性皮膜を有する試験片、又は耐食性皮膜の上に親水性皮膜を形成し、その上に架橋撥水性皮膜を有する試験片とを作製した。水平に設置した試験片の測定対象の撥水性又は親水性の皮膜上に純水2μLを滴下し、接触角計(協和界面科学社製:CA‐A)を用いて、上記試験片の皮膜上に形成された水滴の接触角を測定した。
【0134】
〔架橋撥水性皮膜の面積率の測定〕
各実施例1〜12及び比較例1〜7で作製した熱交換器からフィン材を約10×10mmのサイズに切り出し、EPMA(X線マイクロアナライザー)で、皮膜表面のC(カーボン)のマッピングを行い、画像解析により、5×5mm2の面積中のC(カーボン)の面積率を算出した。
【0135】
〔熱交換器の評価〕
次に、このようにして作成された各実施例1〜12及び比較例1〜8の試験用熱交換器に冷媒として50wt%-プロピレングリコール水溶液を導入し、室温2℃、湿度RH90%以上の恒温室内で、冷媒温度−6℃、及び冷媒流量1L/minの条件で循環させ、45分間運転して各試験用熱交換器の熱交換フィンにおける着霜状態を観察した。また、着霜した後に30℃の冷媒で3分間の除霜運転を行い、熱交換フィン間に発生した融解水(又は凝縮水)によるブリッジの形成有無を観察した。
【0136】
着霜抑制効果の評価は、全面着霜するまでの時間を測定して、×:15分未満の場合、△:15分以上30分未満の場合、○:30分以上45分未満の場合、及び、◎:45分経過しても着霜のない場合の基準で行い、また、凝縮水排除効果の評価は、除霜運転後のフィン間における融解水(又は凝縮水の付着状況を観察し、×:ほぼ全面にブリッジが発生した場合、△:一部にブリッジが発生した場合、及び、○:ブリッジの発生が認められない場合、の基準で行った。
【0137】
【表4】

【符号の説明】
【0138】
1…熱媒体の導入口、2…熱媒体の排出口、3…ヘッダーパイプ、4…押出扁平菅、5…コルゲートフィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材で形成されたフィン基板と、このフィン基板の表面に設けられた着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜及び親水性皮膜とを有する熱交換フィンを備えた熱交換器であって、
前記熱交換フィンの表面の任意の位置における10mm×10mmの正方形の面積において前記架橋撥水性皮膜の占める面積が10〜90%であり、かつ、
該架橋撥水性皮膜が、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含有し、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)とアミノ樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の固形分が1〜30質量部である水性撥水塗料組成物から形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記親水性皮膜が無機皮膜である請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記架橋撥水性皮膜が前記親水性皮膜の上に形成されている請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
熱交換フィンがコルゲートフィンである請求項1〜3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記親水性皮膜がロウ付け工程で形成された皮膜である請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記架橋撥水性皮膜は、水性撥水塗料組成物を塗布した後に焼き付けて形成されており、その膜厚が0.02〜5.0g/m2である請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱交換フィンの一部に形成されている架橋撥水性皮膜が不均一で斑状である請求項1〜6のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱交換フィンの一部に形成されている架橋撥水性皮膜が親水性皮膜の上に形成されており、前記架橋撥水性皮膜と親水性皮膜とが海島構造を形成する請求項2〜7のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項9】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板材で形成されたフィン基板の表面の全面又は一部の面に、着霜抑制効果を有する架橋撥水性皮膜が形成された熱交換フィンを備えている熱交換器の製造方法であって、
前記架橋撥水性皮膜が、前記フィン基板の表面の全面又は一部の面に、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)及びアミノ樹脂(C)を含有し、4級アンモニウム塩基含有変性エポキシ樹脂(B)とアミノ樹脂(C)の固形分合計100質量部に対して、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素原子含有基を有する樹脂(A)の固形分が1〜30質量部である水性撥水塗料組成物を塗布した後に焼き付けて形成されており、また、
前記架橋撥水性皮膜が形成された後に、該架橋撥水性皮膜を水、酸溶液、及びアルカリ溶液から選ばれた1種又は2種以上の後処理液で後処理することを特徴とする熱交換器の製造方法。

【図1】
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