説明

アルミニウム回収設備およびアルミニウム回収方法

【課題】スチール缶に用いられているアルミニウムを、設備コストを下げて、投資費用に見合う採算が得られる方法で、且つ環境の面から問題の少ない方法で、有利に回収して再利用することを可能とするスチール缶またはスチール缶を圧縮成形して減容化したものからアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備およびアルミニウム回収方法を提供することである。
【解決手段】破砕物13から磁気によって鉄を除去する1次磁選機3と、この1次磁選機3を経た破砕物から磁気によって鉄を除去する2次磁選機4と、この2次磁選機4を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機5とを、この順で備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチール缶またはスチール缶を圧縮成形して減容化したものからアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備およびアルミニウム回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒー缶やジュース缶等の飲料用の缶としては、通常、アルミ材料を用いたアルミ缶とスチール材料を用いたスチール缶が広く用いられている。このスチール缶には、胴部および底部を一体成形した缶体と蓋部とからなる2ピース缶と、胴部と底部と蓋部とからなる3ピース缶があり、いずれの場合もスチール缶と言えども、飲口のある蓋部にはアルミニウムが用いられている。
【0003】
アルミニウムは鉄に比べて高価であり、また、鉱石から製造するには多大なエネルギーを必要とするので、スチール缶に用いられているアルミニウムを回収して再利用できれば、資源およびエネルギーの大きな節約となり、また地球環境の面からも望ましい。
【0004】
しかし、使用後のスチール缶の再利用方法をみると、そのまま廃棄されるか、スクラップにして電炉で再製品化されており、電炉での再製品化の場合でも、スチール缶のアルミニウム分は鉄分から分離されることなく電気炉に投入されているのが現状であるため、電気炉の中での溶解時に空気と反応して酸化し、酸化アルミニウムの形態でスラグの一部となってしまい、ほとんど有効利用されないのが現状である。なお、スチール缶の輸送には、スチール缶を集めて圧縮成形により減容化し、一辺の長さが約500〜1000mmの立方体形状のものとし、トラック等による運搬がしやすいようにしている。このように、減容化されたものを、ベール品または単にベールと呼んでいる。
【0005】
スチール缶からアルミニウムを回収する従来技術として、例えば、特開2001−240918号公報(特許文献1)に開示されている技術がある。ここでは、使用済み飲料缶を解砕してから加熱可能な装置に装入し、装置内の酸素濃度を9%以下に保ちながら、アルミニウムの融点以上、鉄の融点以下の温度に加熱・保持して、アルミニウムを選択的に溶融分離するアルミニウムの回収方法が提案されている。
【特許文献1】特開2001−240918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、アルミニウムを選択的に溶融分離するための設備コストが高く、投資費用に見合う採算が得られない、加熱によってダイオキシン等の不純ガスが発生する、また水処理の問題もあって環境の面から難しい等の種々の問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、スチール缶に用いられているアルミニウムを、設備コストを下げて、投資費用に見合う採算が得られる方法で、且つ環境の面から問題の少ない方法で、有利に回収して再利用することを可能とするスチール缶またはスチール缶を圧縮成形して減容化したものからアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備およびアルミニウム回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶のベール品からアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備であって、前記ベール品を解砕する解砕機と、該解砕機による解砕物を破砕する破砕機と、該破砕機による破砕物から鉄を除去する1次磁選機と、該1次磁選機を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選機と、該2次磁選機を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機とを、有することを特徴とするアルミニウム回収設備である。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶からアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備であって、前記スチール缶を破砕する破砕機と、該破砕機による破砕物から鉄を除去する1次磁選機と、該1次磁選機を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選機と、該2次磁選機を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機とを、有することを特徴とするアルミニウム回収設備である。
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のアルミニウム回収設備において、前記1次磁選機が、吊下げ式磁選機であり、前記2次磁選機が、プーリ式磁選機であることを特徴とするアルミニウム回収設備である。
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアルミニウム回収設備において、前記破砕機が、前記解砕物またはスチール缶を最大寸法を25mm以下の破砕物に破砕する破砕機構を有することを特徴とするアルミニウム回収設備である。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る発明は、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶のベール品からアルミニウムを回収するアルミニウム回収方法であって、前記ベール品を解砕する解砕工程と、該解砕工程による解砕物を破砕する破砕工程と、該破砕工程による破砕物から鉄を除去する1次磁選工程と、該1次磁選工程を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選工程と、該2次磁選工程を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選工程とを、有することを特徴とするアルミニウム回収方法である。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る発明は、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶からアルミニウムを回収するアルミニウム回収方法であって、前記スチール缶を破砕する破砕工程と、該破砕工程による破砕物から鉄を除去する1次磁選工程と、該1次磁選工程を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選工程と、該2次磁選工程を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選工程とを、有することを特徴とするアルミニウム回収方法である。
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項5または6に記載のアルミニウム回収方法において、前記1次磁選工程では、吊下げ式磁選機を用い、前記2次磁選工程では、プーリ式磁選機を用いることを特徴とするアルミニウム回収方法である。
【0012】
さらに、本発明の請求項8に係る発明は、請求項5ないし7のいずれか1項に記載のアルミニウム回収方法において、前記破砕工程では、前記解砕物またはスチール缶を最大寸法を25mm以下の破砕物に破砕することを特徴とするアルミニウム回収方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スチール缶に用いられているアルミニウムを、設備コストを下げて、且つ環境の面から問題の少ない方法で、有利に回収することができ、投資費用に見合う採算を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を用いて説明を行う。図1および図2は、本発明のスチール缶からアルミニウムを冷間回収するアルミニウム回収設備の一例を示す説明図で、図1および図2は連続する設備を示している。図中、1は解砕機、2は破砕機、3は1次磁選機、4は2次磁選機、5は風選機、6は鉄回収容器、7はアルミニウム回収容器、8はトラッククレーン、9はホッパー(解砕物用)、10はホッパー(破砕物用)、11はベール品、12は解砕物、および13は破砕物を、それぞれ表す。
【0015】
図1の例では、磁石を吊り下げたトラッククレーン8がベール品11を吸着して、ベール品11を解砕機1に投入している。 本実施形態の、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶のベール品11からアルミニウムを冷間回収するアルミニウム回収設備は、ベール品11を解砕する解砕機1と、この解砕機1による解砕物12を破砕する破砕機2と、この破砕機2による破砕物13から磁気によって鉄を除去する1次磁選機3と、この1次磁選機3を経た破砕物から磁気によって鉄を除去する2次磁選機4と、この2次磁選機4を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機5とを、この順で備えている。
【0016】
なお、部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶からのアルミニウム回収の場合には、スチール缶を破砕する破砕機2と、この破砕機2による破砕物13から磁気によって鉄を除去する1次磁選機3と、この1次磁選機3を経た破砕物から磁気によって鉄を除去する2次磁選機4と、この2次磁選機4を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機5とを、この順で備えていればよい。
【0017】
また、本実施形態のアルミニウム回収設備では、必ずしも必要とはしないが、解砕物を一旦溜めておいて処理量の調整を行うホッパー(解砕物用)9と、同様に破砕物を一旦溜めておいて処理量の調整を行うホッパー(破砕物用)10と、最終的に鉄を回収する鉄回収容器6と、最終的にアルミニウムを回収するアルミニウム回収容器7とを備えている。
【0018】
前記解砕機1は、ベール品を解砕するもので、通常複数の回転軸に複数の刃を有している。また、解砕方式としては油圧タイプと電動タイプとがある。
【0019】
前記破砕機2は、解砕物またはスチール缶を破砕するもので、通常一軸に複数の刃を有している。複数の刃の幅寸法によって解砕物またはスチール缶を最大寸法を25mm以下の破砕物に破砕する破砕機構を有することが好ましい。解砕物またはスチール缶が最大寸法25mmを超えると、蓋の部分の縁がアルミと鉄が付着した状態で回収されるため回収率が減少し、且つ回収アルミニウムの純度が減少するからである。
【0020】
前記1次磁選機3は、強力な電気磁石または永久磁石を用いて鉄とアルミニウムを分離するもので、例えば図3に示すような吊下げ式磁選機を用いるとよい。ここで、吊下げ式磁選機とは、磁石下をベルトコンベヤが回転移動していて、破砕物中の吸着した鉄を、磁石の無い位置までベルトコンベヤで移動することによって鉄を落下させて分離回収する磁選機である。
【0021】
前記2次磁選機4は、1次磁選機3を経た破砕物からさらに磁気によって鉄を除去するためのもので、例えば図4に示すようものを用いると良い。固定軸に設置した強力な電気磁石または永久磁石により、この磁石の表面を通過することで鉄とアルミニウムとを分離するプーリ式磁選機を用いるとよい。前述した図3の吊下げ磁選機は表面の鉄を主体に、図4のプーリ磁選機はベルト表面の鉄を主体に吸着する。
【0022】
前記風選機5は、2次磁選機4を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去するもので、例えば図5に示すようものを用いると良い。ジグザグ状の狭路の構造とし、この狭路を回収したアルミニウムを通過させて、狭路内の空気を下方から上方へと吸引することによって、重量の軽いフィルムプラスチック、塗料屑、鉄粉、タバコ吸殻、その他の異物を除去するとよい。
【0023】
次に、図1ないし図5に示す設備を用いて、本発明のスチール缶のベール品からアルミニウムを冷間回収するアルミニウム回収方法について説明する。
【0024】
スチール缶のベール品11を磁石を吊下げたトラッククレーン8で吸着し、解砕機1に投入する。ここで解砕された解砕物12は定量的にまたは下流設備の要求に応じて下流設備に送るために、これらを一旦ホッパー(解砕物用)9に溜める。
【0025】
下流設備に送られた解砕物12は、破砕機2で25mm以下に破砕され、さらに下流設備に送るために一旦ホッパー(破砕物用)10に溜め、定量的に切り出される。
【0026】
このようにして、切り出された破砕物13を、強力な1次磁選機3を通すことによって破砕物の鉄を除去し、さらに1次磁選機3の下流の強力な2次磁選機4を通すことによって鉄をさらに除去し、回収後のアルミニウムを風選機5を通すことによってフィルムプラスチック、塗料屑、鉄粉、タバコ吸殻、その他の異物を除去する。 回収後の鉄およびアルミニウムは、それぞれ鉄回収容器6と、アルミニウム回収容器7に回収される。
【0027】
また、図1ないし図5に示す設備を用いて、本発明のスチール缶からアルミニウムを冷間回収するアルミニウム回収方法については、スチール缶を解砕機1には投入せずに、スチール缶を破砕機2で25mm以下に破砕することからスタートして、後の工程は前述したスチール缶のベール品からアルミニウムを冷間回収する方法と同じである。
【0028】
本発明では、スチール缶を解砕、破砕で細かく破砕することで、鉄とアルミニウムが接合、接着されている部分からのアルミニウム分離がなされてアルミニウム回収率向上を達成することが可能となる。さらに、1次磁選機、2次磁選機を通すことによって鉄を除去することができ、風選機を通すことによって回収アルミニウム中に含まれる粉体等の異物を除去することができ、アルミニウムの純度向上を達成することが可能となる。
【0029】
特許文献1に記載のアルミニウムを選択的に溶融分離するアルミニウムの回収方法においては、アルミニウム回収率が約80%、回収アルミニウムの純度が90%であるのに対して、本発明のアルミニウム回収設備を用いたアルミニウムの回収方法は、アルミニウム回収率、回収アルミニウムの純度とも変わらないが、設備投資費用が約60%となる。さらに、本発明のアルミニウム回収設備を用いたアルミニウムの回収方法は、アルミニウムを選択的に溶融分離するアルミニウムの回収方法において発生した、燃焼による大気汚染がないこと、水処理設備が不要となること等有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の具体的構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の具体的構成の一例を示す図であり、図1に続く一連の設備を示す図である。
【図3】1次磁選機の一例である吊下げ式磁選機を示す図である。
【図4】2次磁選機の一例であるプーリ式磁選機を示す図である。
【図5】風選機の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 解砕機
2 破砕機
3 1次磁選機
4 2次磁選機
5 風選機
6 鉄回収容器
7 アルミニウム回収容器
8 トラッククレーン
9 ホッパー(解砕物用)
10 ホッパー(破砕物用)
11 ベール品
12 解砕物
13 破砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶のベール品からアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備であって、前記ベール品を解砕する解砕機と、該解砕機による解砕物を破砕する破砕機と、該破砕機による破砕物から鉄を除去する1次磁選機と、該1次磁選機を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選機と、該2次磁選機を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機とを、有することを特徴とするアルミニウム回収設備。
【請求項2】
部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶からアルミニウムを回収するアルミニウム回収設備であって、前記スチール缶を破砕する破砕機と、該破砕機による破砕物から鉄を除去する1次磁選機と、該1次磁選機を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選機と、該2次磁選機を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選機とを、有することを特徴とするアルミニウム回収設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアルミニウム回収設備において、
前記1次磁選機が、吊下げ式磁選機であり、前記2次磁選機が、プーリ式磁選機であることを特徴とするアルミニウム回収設備。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアルミニウム回収設備において、
前記破砕機が、前記解砕物またはスチール缶を最大寸法を25mm以下の破砕物に破砕する破砕機構を有することを特徴とするアルミニウム回収設備。
【請求項5】
部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶のベール品からアルミニウムを回収するアルミニウム回収方法であって、前記ベール品を解砕する解砕工程と、該解砕工程による解砕物を破砕する破砕工程と、該破砕工程による破砕物から鉄を除去する1次磁選工程と、該1次磁選工程を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選工程と、該2次磁選工程を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選工程とを、有することを特徴とするアルミニウム回収方法。
【請求項6】
部材の一部にアルミニウムを用いたスチール缶からアルミニウムを回収するアルミニウム回収方法であって、前記スチール缶を破砕する破砕工程と、該破砕工程による破砕物から鉄を除去する1次磁選工程と、該1次磁選工程を経た破砕物から鉄を除去する2次磁選工程と、該2次磁選工程を経た破砕物からアルミニウム以外の異物を除去する風選工程とを、有することを特徴とするアルミニウム回収方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のアルミニウム回収方法において、
前記1次磁選工程では、吊下げ式磁選機を用い、前記2次磁選工程では、プーリ式磁選機を用いることを特徴とするアルミニウム回収方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載のアルミニウム回収方法において、
前記破砕工程では、前記解砕物またはスチール缶を最大寸法を25mm以下の破砕物に破砕することを特徴とするアルミニウム回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−68579(P2006−68579A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251512(P2004−251512)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】