説明

アルミニウム外装体

【課題】 クロメート処理を行うことなく、環境的に安全な処理方法で、しかもクロメート処理と同様に強固な電極タブ等の接着が行えるようにする。
【解決手段】発電要素または蓄電要素を封入する二枚の方形なアルミニウムラミネートフィルム5と、前記発電要素または蓄電要素4に接続され、両アルミニウムラミネートフィルム5間から突出した正負二枚の電極タブ1とを有し、各電極タブ1と前記アルミニウムラミネートフィルム5とがPPテープ2を介して熱溶着されたアルミニウム外装体3において、前記PPテープ2による電極タブ1とアルミニウムラミネートフィルム5との熱溶着にあたり、電極1表面にジルコニウム系処理剤による表面処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタ等に用いられるアルミニウム外装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアルミニウムラミネートフィルムを用いたリチウムイオン電池等では、アルミニウム箔とその内面を被覆する樹脂皮膜層との間にクロメート処理による皮膜が形成されていた。
【0003】
また、他のリチウムイオン電池では、基材層、接着層、化成処理層およびアルミニウムシート層を有する外装体において、前記化成処理層にクロメート処理が施されていた。
【0004】
更にまた、他のリチウムイオン電池では、その電極タブとアルミニウムラミネートフィルムとがPPテープを介して熱溶着されており、そして、通常、前記電極タブはアルミニウム製であって、その表面には陽極酸化皮膜が存在し、該皮膜によって強固な接着が阻害されることから、電極タブとアルミニウムラミネートフィルムとをPPテープで熱溶着するにあたっては、前記電極表面にクロメート処理が施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−196036
【特許文献2】特開2002−245984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したクロメートにはクロム酸が含有されていることから、今後、Roth規制の対象となるおそれがあり、そのため前記クロメート処理以外の方法で電極タブ等を強固に接着させる必要がある。
【0007】
本発明の目的は、前記クロメート処理を行うことなく、環境的に安全な処理方法で、しかもクロメート処理と同様に強固な電極タブ等の接着が行えるアルミニウム外装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、発電要素または蓄電要素を封入する二枚の方形なアルミニウムラミネートフィルムと、前記発電要素または蓄電要素に接続され、両アルミニウムラミネートフィルム間から突出した正負二枚の電極タブとを有し、各電極タブと前記アルミニウムラミネートフィルムとがPPテープを介して熱溶着されたアルミニウム外装体において、前記PPテープによる電極タブとアルミニウムラミネートとの熱溶着にあたり、電極表面にジルコニウム系処理剤による表面処理が施されていることを技術的特徴とするものである。
【0009】
前記電極表面のジルコニウム系処理は、電極の全表面に行っても良いし、PPテープによる熱溶着面だけに行っても良い。
【0010】
請求項2記載の本発明は、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタに用いられる請求項1記載のアルミニウム外装体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアルミニウム外装体は、発電要素または蓄電要素を封入する二枚の方形なアルミニウムラミネートフィルムと、前記発電要素または蓄電要素に接続され、両アルミニウムラミネートフィルム間から突出した正負二枚の電極タブとを有し、各電極タブと前記アルミニウムラミネートフィルムとがPPテープを介して熱溶着されたアルミニウム外装体において、前記PPテープによる電極タブとアルミニウムラミネートとの熱溶着にあたり、電極タブ表面にジルコニウム処理が施されているため、従来のクロメート処理のような環境面での問題がなく、しかも従来のクロメート処理の場合と同様、電極タブとアルミニウムラミネートフィルムとを強固に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】

【図1】実施形態に用いられるリチウムイオン二次電池用電極タブの正面図である。
【図2】実施形態に用いられる電気二重層キャパシタ用電極タブの正面図である。
【図3】実施形態に係るアルミニウム外装体の縦断面図である。
【図4】図3における電極タブ突出部分の拡大縦断面図である。
【図5】実施形態に係るアルミニウム外装体の斜視図である。
【図6】本発明が適用されるリチウムイオン電池の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池用の電極タブ1Aは、全体が方形板状であって、銅ニッケル合金で構成されており、その一端寄り部分には市販のPPテープ2が貼着されている。
【0015】
PPテープ2は、本実施形態では三層構造であって、両面を構成するポリプロピレン層の間に耐熱性シートやパルプシートが挟まれているものである。
【0016】
図2に示すように、電気二重層キャパシタ用の電極タブ1Bは、全体が方形板状であって、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)で構成されており、その一端寄り部分には前述した市販のPPテープ2が貼着されている。また、当該電極タブ1Bは、前記リチウムイオン二次電池用の電極タブ1Aよりも縦長である。
【0017】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るアルミニウム外装体3は、発電要素または蓄電要素となる電気機構部4を封入する二枚の方形なアルミニウムラミネートフィルム5と、前記電気機構部4に接続され、両アルミニウムラミネートフィルム5間から突出した正負二枚の電極タブ1とを有し、各電極タブ1と前記アルミニウムラミネートフィルム5とが前記PPテープ2を介して熱溶着されている。そして、前記PPテープ2による電極タブ1とアルミニウムラミネート5との熱溶着にあたっては、予め電極タブ1の表面にジルコニウム系処理剤(例:日本パーカライジング株式会社 商品名:パルコートE100等)による表面処理が施されている。
【0018】
なお、電極タブ1は、具体的には前述したリチウムイオン二次電池用電極タブ1Aや電気二重層キャパシタ用電極タブ1Bである。また、前記アルミニウムラミネートフィルム5はアルミニウム箔にポリプロピレンフィルムがラミネートされたものである。
【0019】
図5に示すように、本実施形態のアルミニウム外装体3は、従来のものと同様に、両端から電極タブ1の一部が突出した構造となされているが、本発明はこれに限定されず、図6に示すような構造のリチウムイオン電池におけるアルミニウム外装体23において、その一側に正負それぞれの電極タブ1が突出する場合もある。
【0020】
なお、図中25はセパレータを示す。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、アルミニウム外装体におけるアルミニウムラミネートフィルムと電極タブとの接着において、従来のクロメート処理と同様の接着強度が得られ、しかも環境面でも全く問題がないため、電池やキャパシタの分野において幅広いが利用が期待できる。
【符号の説明】
【0022】
1 電極タブ
2 PPテープ
3 アルミニウム外装体
4 電気機構部
5 アルミニウムラミネートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素または蓄電要素を封入する二枚の方形なアルミニウムラミネートフィルムと、前記発電要素または蓄電要素に接続され、両アルミニウムラミネートフィルム間から突出した正負二枚の電極タブとを有し、各電極タブと前記アルミニウムラミネートフィルムとがPPテープを介して熱溶着されたアルミニウム外装体において、前記PPテープによる電極タブとアルミニウムラミネートとの熱溶着にあたり、電極表面にジルコニウム系処理剤による表面処理が施されている、アルミニウム外装体。
【請求項2】
リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタに用いられる請求項1記載のアルミニウム外装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113966(P2012−113966A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261922(P2010−261922)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【特許番号】特許第4898952号(P4898952)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(592219684)株式会社イー・ピー・アイ (21)
【Fターム(参考)】