説明

アルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム層の貼り付け方法

【課題】シワや変形等が生じ難くいため、効率よくアルミニウム層を粘着剤層を介して被着体に貼り付けることができ、特に暖房床における均熱シート用途に好適に用いることができるアルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム粘着テープの貼り付け方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム層、粘着剤層及び離型層がこの順番で積層された構造のアルミニウム粘着テープが、前記離型層が外側になるようにロール状に巻かれているアルミニウム粘着テープ巻状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワや変形等が生じ難くいため、効率よくアルミニウム層を粘着剤層を介して被着体に貼り付けることができるアルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム層の貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床暖房需要の増加により、樹脂発泡体に溝付け加工を施し、温水等の流体を流すための流体配管を配置した暖房床が多く設置されている。
これらの暖房床としては、例えば、捨て貼り材の上部に、温水を通す配管が組み込まれたマット層敷き、該マット層上に均熱シートとフローリング材等の板状体(仕上げ材)とを敷く形式のものが広く普及している(例えば、特許文献1等)。
【0003】
マット層とフローリング材等の板状体との間に設けられる均熱シートは、温水等の流体から発生した熱を効率よく、かつ、均一に放熱面、すなわち、フローリング材等の表面に伝えるために設けられており、このような放熱シートとしては、熱伝導率の高い材料、例えば、アルミニウム箔が一般的に用いられている。
【0004】
このような暖房床の均熱シートをマット層上に設ける方法としては、例えば、アルミニウム層、粘着剤層及び離型層がこの順番に形成された構造のアルミニウム粘着テープを用い、離型層を引き剥がしながらアルミニウム層を粘着剤層を介してマット層上に貼り付ける方法が知られている。
【0005】
しかしながら、アルミニウム粘着テープを用いてマット層上に均熱シートを設ける方法は、アルミニウム層を貼り付ける部分の面積が大きいことから幅広のアルミニウム粘着テープを用いるところ、このような幅広のアルミニウム粘着テープは、ある程度習熟した者が作業を行った場合であっても、シワや変形等が生じさせることなくアルミニウム層を貼り付けることは極めて困難であった。また、アルミニウム粘着テープのアルミニウム層は、破れやすく外部からの衝撃により容易に破損してしまうものであるため、マット層上に貼り付けたアルミニウム層にシワ等が生じた場合、これを剥がして貼り直すことはできず、新たなアルミニウム粘着テープでアルミニウム層の貼り付けを行う必要があり、作業効率が悪いという問題もあった。
【特許文献1】特開平07−217920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、シワや変形等が生じ難くいため、効率よくアルミニウムを粘着剤層を介して被着体に貼り付けることができるアルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム層の貼り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルミニウム層、粘着剤層及び離型層がこの順番で積層された構造のアルミニウム粘着テープが、前記離型層が外側になるようにロール状に巻かれているアルミニウム粘着テープ巻状体である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、従来のアルミニウム粘着テープについて詳細に検討したところ、従来のアルミニウム粘着テープを用いて被着体にアルミニウム層を貼り付ける場合、該アルミニウム粘着テープは、アルミニウム層が外側となるようにロール状に巻かれた巻状体の状態で使用されるが、このようにアルミニウム粘着テープが巻かれたアルミニウム粘着テープ巻状体を用いたアルミニウム層の被着体への貼り付けは、図2に示すように、アルミニウム粘着テープ巻状体20からアルミニウム粘着テープ21を引き出し、離型層22を引き剥がして粘着剤層を露出させ、被着体上でアルミニウム層側から押圧を加えることで粘着剤層と被着体とを粘着させていた。なお、図2は、従来のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いてアルミニウム粘着テープを被着体に貼り付ける様子を模式的に示す説明図である。
ところが、このようにして行うアルミニウム層の被着体への貼り付けは、図2に示すように、アルミニウム粘着テープを引き出す際のアルミニウム粘着テープ巻状体の回転方向と、アルミニウム層を被着体に貼り付ける方向とが反対方向となるため、アルミニウム粘着テープのアルミニウム粘着テープ巻状体からの引き出しと、アルミニウム層の被着体への貼り付けとをスムーズに行うことができず、シワや変形を生じさせることなく被着体に貼り付けることが困難であったことを見出した。
そこで、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、アルミニウム粘着テープを引き出す際のアルミニウム粘着テープ巻状体の回転方向と、アルミニウム層を被着体に貼り付ける方向とが同一方向となるようにすれば、アルミニウム粘着テープのアルミニウム粘着テープ巻状体からの引き出しと、アルミニウム層の被着体への貼り付けとをスムーズに行うことができ、シワや変形等を生じることなく被着体へのアルミニウム層の貼り付けを容易に行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体のアルミニウム粘着テープは、アルミニウム層、粘着剤層及び離型層がこの順番で積層された構造を有する。
【0010】
上記アルミニウム層として特に限定されず、市販されているアルミニウム箔を用いることができる。
上記アルミニウム層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は400μmである。20μm未満であると、シワ等を生じることなく上記アルミニウム粘着テープを被着体に貼り付けることが難しく、400μmを超えると、上記アルミニウム粘着テープが堅くなり貼り付け難くなることがある。より好ましい下限は30μm、より好ましい上限は200μmである。
【0011】
上記粘着剤層を構成する粘着剤は、粘着テープとして通常必要とされる粘着特性を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系等のゴム系粘着剤や、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0012】
また、上記粘着剤層を構成する粘着剤の性状としては特に限定されず、例えば、溶液型若しくは乳化又は水分散型粘着剤、ホットメルト型粘着剤、光その他のエネルギーによって重合を開始し得る重合性組成物型粘着剤等が挙げられる。
【0013】
上記離型層としては特に限定されず、例えば、離型紙等従来公知の粘着テープに使用されるものと同様のものが挙げられる。
【0014】
このようなアルミニウム層、粘着剤層及び離型層からなるアルミニウム粘着テープの幅としては特に限定されないが、例えば、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を、暖房床の均熱シートの形成に用いる場合、好ましい下限は300mm、好ましい上限は1800mmである。300mm未満であると、作業に長時間を要し効率が低下することがあり、1800mmを超えると、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体によっても、アルミニウム層にシワや変形等を生じさせることなく貼り付けることが極めて困難となる。より好ましい下限は600mm、より好ましい上限は1200mmである。
【0015】
本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体は、上記構造のアルミニウム粘着テープの離型層が外側となるように巻かれている。
このような構造の本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いたアルミニウム層の被着体への貼り付けは、図1(a)及び(b)に示すように、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体10からアルミニウム粘着テープ11を引き出し、離型層12を引き剥がして露出させた粘着剤層13を介してアルミニウム層14を被着体に貼り付ける。このとき、アルミニウム粘着テープ11を引き出す際のアルミニウム粘着テープ巻状体10の回転方向と、アルミニウム層14を貼り付ける方向とが同一方向となるため、アルミニウム粘着テープ11のアルミニウム粘着テープ巻状体10からの引き出しと、アルミニウム層14の被着体への貼り付けとをスムーズに行うことができ、シワや変形等が生じ難くなる。なお、図1(a)は、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いて被着体にアルミニウム粘着テープを貼り付ける様子を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)中において破線で示した領域Aの拡大断面図である。
また、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体10によると、アルミニウム粘着テープ11から離型層12を引き剥がした後に、アルミニウム層の貼り付け方向と同一方向に回転する本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体10がアルミニウム層14側から押圧を加えることができるため、別個の押圧機等を用いることなくアルミニウム層14の被着体へ強固かつ均一に貼り付けることができる。
【0016】
本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いたアルミニウム層の貼り付け方法もまた、本発明の1つである。
すなわち、本発明のアルミニウム層の貼り付け方法は、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いて被着体にアルミニウム層を貼り付けるアルミニウム層の貼り着け方法であって、アルミニウム粘着テープを引き出す際の前記アルミニウム粘着テープ巻状体の回転方向と、前記アルミニウム層を被着体に貼り付ける方向とが同一方向であるアルミニウム層の貼り付け方法である。
【0017】
本発明のアルミニウム層の貼り付け方法により、アルミニウム層を貼り付ける対象となる被着体としては、その表面にアルミニウム箔等のアルミニウム層を設ける必要のあるものであれば特に限定されず、種々のものが挙げられるが、なかでも暖房床のマット層が好適である。本発明のアルミニウム層の貼り付け方法によりマット層上に貼り付けたアルミニウム層は、いわゆる暖房床の均熱シートを構成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、アルミニウム層の被着体への貼り付けにおいて、アルミニウム粘着テープを引き出す際の本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体の回転方向と、アルミニウム層を貼り付ける方向とが同一方向となるため、アルミニウム粘着テープの本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体からの引き出しと、アルミニウム層の被着体への貼り付けとをスムーズに行うことができ、シワや変形等が生じ難くなり、アルミニウム層の被着体への貼り付け作業の効率が極めて高くなる。
すなわち、本発明によれば、シワや変形等が生じ難くいため、効率よくアルミニウムを粘着剤層を介して被着体に貼り付けることができるアルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム層の貼り付け方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
厚さ50μm、幅900mmのアルミニウム箔(日本製箔社製)、厚さ50μmの粘着剤層(総研化学社製、#1986H)、及び、厚さ100μmの離型紙(サンエー化研社製、70SJA)がこの順番に積層されたアルミニウム粘着テープ50mを、離型紙が外側となるように円柱状の芯材の外周に巻き付け、アルミニウム粘着テープ巻状体を作製した。
【0021】
作製したアルミニウム粘着テープ巻状体を用いて、図1に示した方法により、温水マット(2100mm×2700mm)の表面にアルミニウム箔を貼り付け、均熱シートを作製した。
実施例1に係る均熱シートの作製に要した時間は5分であり、目視にてアルミニウム箔の状態を確認したところ、アルミニウム箔にシワや変形等は殆ど確認できなかった。
【0022】
(比較例1)
アルミニウム箔が外側となるようにアルミニウム粘着テープを芯材に巻き付けた以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム粘着テープ巻状体を作製した。
その後、作製したアルミニウム粘着テープ巻状体を用いてアルミニウム箔の貼り付けを、図2に示した方法で行った以外は、実施例1と同様にして均熱シートを作製した。
比較例1に係る均熱シートの作製に要した時間は10分であり、目視にてアルミニウム箔の状態を確認したところ、アルミニウム箔にシワや変形等が僅かに確認できた。
【0023】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で均熱シートを作製したが、その作業時間が実施例1と同様となるようにした。
作製した均熱シートのアルミニウム箔の状態を目視にて確認したところ、アルミニウム箔に大きなシワが生じているのが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、シワや変形等が生じ難くいため、効率よくアルミニウム層を粘着剤層を介して被着体に貼り付けることができるアルミニウム粘着テープ巻状体、及び、アルミニウム粘着テープの貼り付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いて被着体にアルミニウム粘着テープを貼り付ける様子を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)中において破線で示した領域Aの拡大断面図である。
【図2】従来のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いてアルミニウム粘着テープを被着体に貼り付ける様子を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10、20 アルミニウム粘着テープ巻状体
11、21 アルミニウム粘着テープ
12、22 離型層
13 粘着剤層
14 アルミニウム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層、粘着剤層及び離型層がこの順番で積層された構造のアルミニウム粘着テープが、前記離型層が外側になるようにロール状に巻かれていることを特徴とするアルミニウム粘着テープ巻状体。
【請求項2】
請求項1記載のアルミニウム粘着テープ巻状体を用いて被着体にアルミニウム層を貼り付けるアルミニウム層の貼り着け方法であって、
アルミニウム粘着テープを引き出す際の前記アルミニウム粘着テープ巻状体の回転方向と、前記アルミニウム層を被着体に貼り付ける方向とが同一方向である
ことを特徴とするアルミニウム粘着テープの貼り付け方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−56163(P2007−56163A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244321(P2005−244321)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】