説明

アルミニウム錯体と分子内閉環反応における触媒としてのその使用

同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を閉環反応させた場合に、閉環化合物のみならず閉環しなかった化合物の光学異性体の比率を豊富化させる方法を提供すること。一般式[Al2(L1n(L23-nmで表される特定のアルミニウム錯体存在下に、同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を閉環反応させることを特徴とする光学異性体の比率を豊富化させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料等の素材として有用であり、メントールの重要な合成前駆体であるイソプレゴール及びその類似化合物の製造方法に関するものである。本発明は、新規な不斉アルミニウム錯体を触媒とし、同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を閉環反応させ、閉環して生成する化合物のd体又はl体のいずれかの比率、又は閉環反応しない光学異性体混合物のd体又はl体のいずれかの比率を豊富化させることができる。
特に、低エナンチオ選択率を有するシトロネラールより、一方の光学異性体のみを優先的に反応させ、前記光学異性体の比率を豊富化することによりシトロネラールを光学分割することができる。又は、このような基質選択的な閉環反応により、閉環反応しない特定の光学異性体の比率が豊富化されたイソプレゴールを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、メントール、特にl−メントールは、清涼感のある香料として非常に重要でその用途は多岐にわたっている。l−メントールを得る方法として、dl−メントールを光学分割する方法と、不斉合成法が知られている(合成香料、印藤元一著、化学工業日報社、106〜114頁)。不斉合成法によるl−メントールの製造工程においては、前駆体であるl−イソプレゴールを水素化してl−メントールが得られるが、このl−イソプレゴールを合成する工程において、d−シトロネラールの選択的閉環反応が重要である。
【0003】
d−シトロネラールの選択的閉環反応については、古くから多くの方法が広く知られている。アルミニウム錯体を触媒として用いた高選択的反応として、近年、2,6−ジフェニルフェノキシ部位を有したアルミニウム錯体を触媒として用いた高選択的閉環反応(特開2002−212121号公報)が見出されている。その他、フェノキシ部位を有したアルミニウム錯体を触媒として用いた閉環反応(WO2006/069659、WO2006/092433、DE102005023953)や、シロキシ部位を有したアルミニウム錯体を触媒として用いた閉環反応も報告されている(WO2007/039342)。しかし、光学活性なアルミニウム錯体を用いたラセミ体のシトロネラールより片方の光学異性体のみを選択的に環化させる反応の報告は無い。また、軸不斉配位子であるビフェノール骨格や不斉炭素を有するジオール配位子を有するアルミニウム触媒については多数報告例があるが(US6090950、US6166260、Angew.Chem.Int.Ed, 2001, 40, 92−138、Synlett, 1998, 1291−1293、Tetrahedron: Asymmetry 1991, Vol.2, No.12, 1295−1304、CROATIA CHEMICA ACTA, 1996, 69, 459−484及びRussian Chemical Bulletin, 2000, 49, 460−465)、アルミニウム:ビフェノール:ジオールの比が2:2:1もしくは2:1:2である触媒は未だ報告例が無い。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、新規な不斉アルミニウム錯体を触媒として用い、分子内でカルボニル−エン閉環反応を行い、生成する化合物若しくは残存する化合物の特定の光学異性体の比率を豊富化させ、光学純度が高められた目的の光学活性アルコール若しくは光学活性オレフィンアルデヒドを得る方法、特にシトロネラールを高選択的閉環反応によって光学分割し、l−イソプレゴール及びl−シトロネラール、又はd−イソプレゴール及びd−シトロネラールを得る方法を提供することである。
【0005】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特殊な触媒を用いることにより、不斉配位子の立体に対応したシトロネラールを優先的に閉環させ、dlエナンチオ選択率の向上を伴い、さらにイソプレゴール、イソイソプレゴール、ネオイソプレゴール、ネオイソイソプレゴールの4種の異性体の内、イソプレゴールが異性体比80%以上の高選択率で、高収率で得られることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち本発明は以下の各発明を包含する。
〔1〕下記一般式(1’)で示されるアルミニウム錯体。
[Al2(L1n(L23-nm (1’)
(式(1’)中、nは1又は2の整数を表し、mは自然数を表し、L1は下記式(2’)で表される配位子を表し、L2は下記式(3−A’)又は下記式(3−B’)で表される配位子を表す。ただし、n=2の場合、下記式(2’)で表される配位子は光学活性体であり、n=1の場合、下記式(3−A’)又は下記式(3−B’)で表される配位子は光学活性体である。)
【0007】
【化1】

(式(2’)中、R1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、及びR4’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、飽和又は不飽和炭素鎖、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、アシル基、置換シリル基、チオ基、メルカプト基、又はポリマー鎖を表す。また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR4’、R4’とR3’、R3’とR2’、R2’とR1’とは結合して環を形成してもよい。
式(3−A’)中、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、又は置換基を有していてもよい脂環基を表し、環Aはヘテロ元素を有していても良い3〜8員環を表す。また、R5とR6及びR7とR8とは結合して環を形成してもよい。
式(3−B’)中、R5、R6、R7、及びR8は前記と同じ意味を表し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、置換基を有していてもよい脂環基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいシロキシ基、又はカルボキシル基を表す。また、R5とR6及びR7とR8とは結合して環を形成してもよい。)
〔2〕下記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物
Al(Lg)3 (1)
(式(1)中、Lgは、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)、
下記一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物、及び下記一般式(3−A)又は下記一般式(3−B)で表されるジオール化合物とを反応させることを特徴とする〔1〕に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
【0008】
【化2】

(式(2)中、R1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、及びR4’は〔1〕の式(2’)の定義と同じ意味を表す。
式(3−A)中、R5、R6、R7、R8、及び環Aは〔1〕の式(3−A’)の定義と同じ意味を表す。
式(3−B)中、R5、R6、R7、R8、Y1、及びY2は、〔1〕の式(3−B’)の定義と同じ意味を表す。)
〔3〕一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物が光学活性体である〔2〕に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
〔4〕一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物が光学活性体である〔2〕に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
〔5〕一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物が光学活性体であり、かつ、一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物が光学活性体である〔2〕に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
〔6〕同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を、〔1〕に記載のアルミニウム錯体の存在下に閉環反応させることを特徴とする、閉環して生成する化合物のd体又はl体のいずれかが豊富化されている光学活性化合物の製造方法。
〔7〕同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物が下記一般式(4)で示される化合物である〔6〕に記載の製造方法。
【0009】
【化3】

(式(4)中、n2は1又は2の整数を表し、R9、R10及びR12はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基又は保護基で保護されていてもよい水酸基を表し、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、波線はE又はZ配置を表す。)
〔8〕閉環して生成する化合物が下記一般式(5)で示される化合物である〔6〕に記載の製造方法。
【0010】
【化4】

(式(5)中、n2は1又は2の整数を表し、R9、R10及びR12はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基又は保護基で保護されていてもよい水酸基を表し、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、波線はE又はZ配置を表す。)
〔9〕同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物が光学活性シトロネラールであり、閉環して生成する化合物が光学活性イソプレゴールである〔6〕に記載の製造方法。
〔10〕光学活性イソプレゴールがl−イソプレゴールである〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕光学活性シトロネラールがl−シトロネラールである〔9〕に記載の製造方法。
〔12〕同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を、〔1〕に記載のアルミニウム錯体の存在下に閉環反応させることを特徴とする、光学異性体混合物のうち閉環しないd体又はl体のいずれかを豊富化する方法。
【0011】
本発明によれば、新規なアルミニウム錯体を触媒として使用し、分子内でカルボニル−エン閉環反応を行い、閉環により生成する化合物若しくは未反応のまま残存する化合物の特定の光学異性体の比率を豊富化させ、光学純度が高められた目的の光学活性アルコール若しくは光学活性オレフィンアルデヒドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られた固体のNMRチャートを示す。
【図2】図1で示すNMRチャートの低磁場側を拡大したものを示す。
【図3】(R)−BINOLのNMRチャートを示す。
【図4】実施例1の(R)−BINOLとトリエチルアルミニウムとの反応後に得られた固体のNMRチャートを示す。
【図5】図4で示すNMRチャートの低磁場側を拡大したものを示す。
【図6】(R,R)−TADDOLのNMRチャートを示す。
【図7】図6で示すNMRチャートの低磁場側を拡大したNMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるアルミニウム触媒の調製に用いる一般式(1)で表されるアルミニウム化合物において、Lgは、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
【0014】
Lgで表されるアルキル基としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
Lgで表されるアルコキシ基としては、脂肪族アルコキシ基の他にアリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられる。脂肪族アルコキシ基としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、1−フェネチルオキシ基等が挙げられる。
Lgで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0015】
Lgは、同一でも異なっていてもよく、さらには3つのうち2つが同一となっていてもよい。
Lgは必ずしも光学活性体である必要はない。
【0016】
一般式(1)で表されるアルニミウム化合物の好ましい例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリt−ブチルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリt−ブトキシアルミニウム、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化アルミニウムなどが挙げられる。
【0017】
一般式(2)で表されるジオール化合物及びそれから誘導される一般式(2’)で表される配位子において、R1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、及びR4’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、飽和又は不飽和炭素鎖、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、アシル基、置換シリル基、チオ基、メルカプト基、又はポリマー鎖を表す。一般式(2)及び(2’)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR4’、R4’とR3’、R3’とR2’、R2’とR1’とは結合して環を形成してもよい。
【0018】
一般式(1’)においてn=2の場合、一般式(2)で表されるジオール化合物及びそれから誘導される一般式(2’)で表される配位子は光学活性体である。
一般式(1’)においてn=1の場合、一般式(2)で表されるジオール化合物及びそれから誘導される一般式(2’)で表される配位子は必ずしも光学活性体でなくともよい。
【0019】
一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物及び一般式(2’)で表される配位子のR1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、及びR4’で表される基の具体的な例について説明する。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などである。
【0021】
飽和又は不飽和炭素鎖としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3〜14の脂環基;エチニル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基及びアルキニル基などが挙げられる。
【0022】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アリール基が有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよい複素環基としては、例えば、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等の炭素数2〜14の脂肪族複素環基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の炭素数4〜14の芳香族複素環基が挙げられる。複素環基が有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0024】
アルコキシ基としては、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
アリールオキシ基としては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0026】
アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜15、好ましくは炭素数7〜11のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的にはベンジルオキシ基、1−フェネチルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
保護基で保護されていてもよいカルボキシル基としては例えば、カルボキシル基;メトキシカルボニル基等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0028】
置換アミノ基としては、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8である);N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基(アリール基の炭素数は、好ましくは6〜14である);N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基(アラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜15である);アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基等のアシルアミノ基(アシル基の炭素数は、好ましくは1〜8である)等が挙げられる。
【0029】
アシル基としては、炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜8の脂肪族又は芳香族のアシル基が挙げられ、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、o−,m−,p−トルオイル基、p−ニトロベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。
【0030】
置換シリル基としては、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜18の置換シリル基が挙げられ、具体的にはトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ(p−トリル)シリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
チオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基等の炭素数1〜4のアルキル基と結合したチオ基、フェニルチオ基等の置換基を有してもよい炭素数6〜14のアリール基と結合したチオ基が挙げられる。アリール基が有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0031】
ポリマー鎖としては、6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR4’、R4’とR3’、R3’とR2’、R2’とR1’とが結合して環を形成する場合、一般式(2)および一般式(2’)中のアリール基を包含した環構造としては、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、フェナントレン環、1,3−ベンゾジオキソール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾキノリン環、ベンゾ−1,4―ジオキソラン環、ベンゾオキサゾリン環、ジヒドロベンゾオキサゾリン環、ベンゾフラン環、ベンゾフラザン環、ベンゾ−1,4―ジチオラン環、ベンゾイミダゾリン環、アズレン環等が挙げられる。
【0032】
一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物、及びそれぞれから誘導される一般式(3−A’)又は一般式(3−B’)で表される配位子において、R5、R6、R7及びR8は独立してそれぞれが、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、又は置換基を有していてもよい脂環基を表す。また、R5とR6、又はR7とR8とは結合して環を形成してもよい。
一般式(3−A)及び一般式(3−A’)中、環Aは、ヘテロ元素を有していてもよい3〜8員環である。
一般式(3−B)又は一般式(3−B’)中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、置換基を有していてもよい脂環基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいシロキシ基、又はカルボキシル基を表す。
【0033】
一般式(1’)においてn=1の場合、一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物、及びそれぞれから誘導される一般式(3−A’)又は 一般式(3−B’)で表される配位子は光学活性体である。それぞれの光学活性体は以下で表される。*は不斉炭素原子を意味する。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
一般式(1’)においてn=2の場合、一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物、及びそれぞれから誘導される一般式(3−A’)又は一般式(3−B’)で表される配位子は必ずしも光学活性体でなくともよい。
【0037】
一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物、及び一般式(3−A’)又は一般式(3−B’)で表される配位子のR5、R6、R7及びR8で表される基の具体的な例について説明する。
【0038】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基等が挙げられ、アリール基が有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられ、さらに6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
【0039】
置換基を有していてもよい複素環基としては、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等の炭素数2〜14の脂肪族複素環基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の炭素数4〜14の芳香族複素環基等が挙げられる。複素環基が有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられ、さらに6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
【0040】
置換基を有していてもよい脂肪族鎖としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。脂肪族鎖が有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられ、さらに6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
【0041】
置換基を有していてもよい脂環基としては、炭素数3〜14、好ましくは炭素数3〜8の脂環基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、脂環基が有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられ、さらに6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
【0042】
一般式(3−A)及び一般式(3−A’)の環A中のヘテロ元素としては、硫黄、酸素、窒素、ホウ素、珪素、その他メタラサイクルを形成可能な金属元素などが挙げられる。ヘテロ元素は、環A中に複数存在していてもよく、その場合は同一のヘテロ元素でもよいし、異なるヘテロ元素でもよい。
環Aは置換基を有していてもよく、また、ヘテロ元素において置換基を有していてもよい。
【0043】
環Aとしては、具体的にはベンゼン環、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、ジオキサシクロヘプタン環、トリオキサシクロヘプタン環、ラクトン環、ラクタム環、モルホリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロチオフェン環等が挙げられる。
【0044】
さらに、これらの環構造が有することができる置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖等が挙げられる。
環Aが有する置換基や炭素鎖を介して、一般式(3−A)や一般式(3−A’)で表されるジオール化合物がポリマー鎖を形成していてもよい。
【0045】
一般式(3−B)又は一般式(3−B’)のY1、Y2で表される基の具体的な例について説明する。
【0046】
置換基を有していてもよい脂肪族鎖、置換基を有していてもよい脂環基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基としては、前述のR1、R2、R3、R4、R1’、R2’、R3’、R4’、R5、R6、R7及びR8と同様の例が挙げられる。
【0047】
アルコキシ基としては脂肪族アルコキシ基の他にアリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられる。脂肪族アルコキシ基としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、環構造を有してもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシル基、n−オクチル基などが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、1−フェネチルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
置換基を有してもよいシロキシ基としては、それぞれ炭素数1〜12の炭化水素で置換されたシロキシ基が挙げられ、具体例としてはトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基、ジメチルtert−ブチルシロキシ基、ジエチルフェニルシロキシ基、ジフェニルtert−ブチルシロキシ基などが挙げられる。シロキシ基が有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シリル基、シロキシ基等が挙げられ、さらに6,6−ナイロン鎖、ビニルポリマー鎖、スチレンポリマー鎖などのポリマー鎖を挙げることができる。
【0049】
カルボキシル基としては、カルボン酸由来の、例えば炭素数2〜18のカルボキシル基が挙げられ、具体的には、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
本発明の一般式(2)に表されるビアリールジオール化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下の化合物中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を意味し、以下同様である。
*印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500であり、pは1〜500である。
【0051】
【化7】

【0052】
一般式(1’)においてn=1の場合のアルミニウム錯体の合成において使用される一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物の好ましい具体例としては、上記の化合物に加えて、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
化合物中、*印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500であり、pは1〜500である。
【0053】
【化8】

【0054】
一般式(2’)で表される配位子は、具体的には、上記した一般式(2)で表される化合物の具体例としてあげられた化合物から誘導される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の式(3−A)に表されるジオール化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下の化合物中、Etはエチル基を意味し、以下同様である。
化合物中、*印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500である。
【0056】
【化9】

【0057】
上記化合物中のRは置換基を表し、Rについての具体例としては以下に示す。上記の化合物に示される4箇所のRは、同じ置換基でもよく、それぞれ異なる置換基でもよく、4箇所中の2箇所或いは3箇所が同じ置換基でもよい。
以下に示したR中、*印は結合点、**印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500である。
【0058】
【化10】

【0059】
一般式(1’)においてn=2の場合のアルミニウム錯体の合成において使用される式(3−A)で表されるジオール化合物の好ましい具体例としては、上記した一般式(3−A)のジオール化合物の具体例に加えて、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下に表される化合物中のRの具体例としては、前記したRの具体例と同じものが挙げられる。以下の化合物の4箇所のRは、同じ置換基でもよく、それぞれ異なる置換基でもよく、4箇所中の2箇所或いは3箇所が同じ置換基でもよい。
以下の化合物中、*印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500である。
【0060】
【化11】

【0061】
一般式(3−A’)で表されるジオール化合物は、具体的には、上記した一般式(3−A)のジオール化合物の具体例として挙げられた化合物から誘導される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の式(3−B)に表されるジオール化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下の化合物のRの具体例としては、前記したRの具体例と同じものが挙げられる。以下の化合物の4箇所のRは、同じ置換基でもよく、それぞれ異なる置換基でもよく、4箇所中の2箇所或いは3箇所が同じ置換基でもよい。
以下の化合物中、*印はポリマー鎖結合を示す。oは1〜500である。
【0063】
【化12】

【0064】
一般式(3−B’)で表される配位子は、具体的には、上記した一般式(3−B)の具体例として挙げられた化合物から誘導される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
一般式(1’)で表されるアルミニウム錯体について説明する。
[Al2(L1n(L23-nm (1’)
式(1’)中、nは1又は2の整数を表し、mは自然数、好ましくは1〜10の自然数を表す。L1は一般式(2’)で表される配位子を表し、L2は一般式(3−A’)又は一般式(3−B’)で表される配位子を表す。ただし、n=2の場合、一般式(2’)で表される配位子は光学活性体であり、n=1の場合、一般式(3−A’)又は一般式(3−B’)で表される配位子は光学活性体である。
【0066】
次に本発明のアルミニウム錯体の調製法を説明する。
本発明のアルミニウム錯体は、一般式(1)で表されるアルミニウム化合物、一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物、及び一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物とを反応させて得られる。
【0067】
アルミニウム錯体の調製法について、式(1’)において、n=1の場合とn=2の場合にわけて具体的に説明する。
【0068】
式(1’)において、n=1の場合は、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)又はエーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモトルエンなど)等の不活性有機溶媒中で、一般式(1)のアルミニウム化合物とアルミニウム化合物に対して約0.9〜1.3倍モル程度の一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物とを、温度範囲約−30〜60℃程度で、好ましくは約−10〜40℃程度で、より好ましくは約0〜30℃程度で約0.25〜30時間、好ましくは約0.5〜2時間反応させる。次に、前記のアルミニウム化合物に対して約0.4〜0.8倍モルの一般式(2)のビアリールジオール化合物を加え、温度範囲約−30〜60℃程度で、好ましくは約−10〜40℃程度で、より好ましくは約0〜30℃程度で、約0.25〜30時間、好ましくは約0.5〜3時間反応させることにより容易に合成できる。
【0069】
一般式(2)のビアリールジオール化合物を添加する際には、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物との反応溶液に、一般式(2)のビアリールジオール化合物を直接添加してもよいし、一般式(2)のビアリールジオール化合物を溶媒で希釈してから前記反応溶液に添加してもよい。
【0070】
また、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物との反応溶液を一般式(2)のビアリールジオール化合物に添加してもよい。
【0071】
一般式(2)のビアリールジオール化合物と一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物は、一般式(1)のアルミニウム化合物に同時に添加し反応させることはできない。一般式(2)のビアリールジオール化合物は、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物とを反応させた後に、反応させる必要がある。
【0072】
式(1’)において、n=2の場合は、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)又はエーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモトルエンなど)等の不活性有機溶媒中で、一般式(1)のアルミニウム化合物とアルミニウム化合物に対して約0.9〜1.3倍モル程度の一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物とを、温度範囲約−30〜60℃程度で、好ましくは約−10〜40℃程度で、より好ましくは約0〜30℃程度で約0.25〜30時間、好ましくは約0.5〜2時間反応させる。次に、前記のアルミニウム化合物に対して約0.4〜0.8倍モルの一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物を加え、温度範囲約−30〜60℃程度で、好ましくは約−10〜40℃程度で、より好ましくは約0〜30℃程度で、約0.25〜30時間、好ましくは約0.5〜3時間反応させることにより容易に合成できる。
【0073】
一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物を添加する際には、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(2)のビアリールジオール化合物との反応溶液に、一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物を直接添加してもよいし、一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物を溶媒で希釈してから前記反応溶液に添加してもよい。
【0074】
また、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(2)のビアリールジオール化合物との反応溶液を一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物に添加してもよい。
【0075】
一般式(2)のビアリールジオール化合物と一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物は、一般式(1)のアルミニウム化合物に同時に添加し反応させることはできない。一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物は、一般式(1)のアルミニウム化合物と一般式(2)のビアリールジオール化合物とを反応させた後に、反応させる必要がある。
【0076】
本発明のアルミニウム錯体を使用し、同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を閉環反応させることができる。本発明のアルミニウム錯体は、特定の基質を選択的に閉環反応させることにより、閉環して生成する化合物のd体又はl体の比率を豊富化させることができ、又、閉環反応しない前記光学異性体混合物のd体又はl体の比率を豊富化させることができる。
【0077】
同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物とは、例えば一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0078】
閉環して生成する化合物とは、例えば一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0079】
本発明の選択的閉環反応に用いられる一般式(4)及び閉環して生成する化合物である一般式(5)で表される化合物について説明する。
一般式(4)及び(5)で表される化合物において、R9、R10、R11、R12、R13、R14及びR15で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜8のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらアルキル基が有する置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、トリル基等の炭素数6〜14のアリール基等が挙げられる。
また、R11で表される保護基で保護されていてもよい水酸基の保護基としては、アセチル基、ベンゾイル基、メトキシカルボニル基等の炭素数1〜8のアシル基;ベンジル基等の炭素数7〜15のアラルキル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等の炭素数3〜30の置換シリル基等が挙げられる。
【0080】
一般式(4)で表される化合物の例としては、シトロネラール、2,6−ジメチル−5−ヘプタナール、2,6,10−トリメチル−5,9−ウンデカジエナール、3,7−ジメチル−2−メチレン−6−オクテナール、3,7,11−トリメチル−6,10−ドデカジエナールなどが挙げられる。好ましくは、光学活性シトロネラールが挙げられ、さらに好ましくはl−シトロネラールが挙げられる。
【0081】
一般式(5)で表される化合物の例としては、イソプレゴール、2−(2−プロペニル)−5−メチルシクロペンタノール、2−(6−メチル―2,5−ヘプタジエン―2−イル)−5−メチルシクロペンタノール、2−(6−メチル―1,5−ヘプタジエン―2−イル)−5−メチルシクロペンタノール、2−メチレン―3−メチル―6−(2−プロペニル)シクロヘキサノール、2−(6−メチル―2,5−ヘプタジエン―2−イル)−5−メチルシクロヘキサノール、2−(6−メチル―1,5−ヘプタジエン―2−イル)−5−メチルシクロヘキサノールなどが挙げられる。好ましくは、光学活性イソプレゴールが挙げられ、さらに好ましくはl−イソプレゴールが挙げられる。
【0082】
次に選択的閉環反応について説明する。
本発明の光学異性体比を豊富化させる選択的閉環反応について、一般式(2)のビアリールジオール化合物として2,2−ビナフトール(以下 BINOLともいう)、及び一般式(3−A)のジオール化合物として2,2−ジメチル−α,α,α’,α’−テトラフェニル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジメタノール(以下 TADDOLともいう)を用いたアルミニウム錯体を用い、シトロネラールの閉環反応によるイソプレゴールの製造を例に挙げて説明すると以下の通りである。
【0083】
ただし、以下に示す例は本発明をわかりやすく説明するものであり、本発明はこの基質及び生成物に限定されるものではない。
【0084】
【化13】

上記、Al−Lig* cat.は、本発明のアルミニウム錯体を示す。
【0085】
すなわち、低・中程度の光学純度を有するシトロネラールを本発明のアルミニウム錯体を触媒としてエナンチオ選択的に閉環反応を行うことにより、基質のシトロネラールの光学純度より高い光学純度を有したイソプレゴール及びシトロネラールが生成する。
【0086】
本発明の閉環反応に使用されるアルミニウム触媒の量は、一般式(4)で示される化合物、例えばシトロネラールに対して、アルミニウム1モル原子量換算で約0.05〜10モル%程度、好ましくは、約0.5〜5モル%程度の範囲、さらに好ましくは約0.7〜2モル%で使用される。
【0087】
本発明の閉環反応に使用されるアルミニウム触媒の調製方法は、例えば以下の通りである。
(A)(a)予め、反応系中において、一般式(1)のアルミニウム化合物と前記アルミニウム化合物に対して0.9〜1.3倍モルの一般式(2)のビアリールジオール化合物とを混合して反応させ、さらに前記アルミニウム化合物に対して0.4〜0.8倍モルの一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物を混合して反応させて触媒を調製した後、シトロネラールを仕込む方法(in situ法)、(b)一般式(1)のアルミニウム化合物と前記アルミニウム化合物に対して0.9〜1.3倍モルの一般式(3−A)又は一般式(3−B)のジオール化合物とを混合して反応させ、さらに前記アルミニウム化合物に対して0.4〜0.8倍モルの一般式(2)のビアリールジオール化合物を混合して反応させて触媒を調製した後、シトロネラールを仕込む方法(in situ法)、又は(B)上記のように調製された触媒を閉環反応時にシトロネラールとそれぞれ単独に仕込む方法;何れかの方法によっても同等の結果が得られる。
【0088】
閉環反応の温度は、約−30〜50℃程度の範囲で、好ましくは約−10〜30℃程度の範囲で、さらに約0〜20℃程度とすることがより好ましく採用され、前記の温度を保ちながら約0.25〜30時間、好ましくは約0.5〜20時間反応させることによって、一般式(5)で示される化合物、例えばイソプレゴールを円滑に製造することができる。
【0089】
本発明における閉環反応は、無溶媒条件下、又は、不活性溶媒存在下で行うことができる。
使用される溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定するものではないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶媒;シクロヘキサン、メチルイクロヘキサン等の脂環式炭化水素系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモトルエン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系有機溶媒等が挙げられる。これらのうちより好ましくは、トルエン、ヘプタン等の有機溶媒である。
また、反応の際に酸化合物や塩基化合物を加えてもよい。酸化合物の具体例としては、塩酸、硫酸、酢酸、シトロネリル酸、ゲラニル酸、ネリル酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピバロイル酸などが挙げられる。塩基化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどが挙げられる。
これら溶媒の使用量は、シトロネラールの質量に対して約0〜20倍量、好ましくは0.5〜7倍量の範囲である。
【0090】
閉環反応は、窒素ガス又はアルゴンガスなどのような不活性ガス雰囲気下で行うことが、閉環反応の円滑な進行のために好ましい。
【0091】
閉環反応の終了後は、蒸留、晶析、各種クロマトグラフィーなど通常の後処理を単独又は組み合わせることにより反応成績体を精製することができる。また、例えばイソプレゴールの精製においては、低温再結晶を行う事なく、単に蒸留による処理を行うことによって高純度のイソプレゴールを得ることができる。さらに、蒸留処理後の残留物を酸又はアルカリにて通常の処理を行い、アルミニウム不純物などを除去し、晶析を行うことで配位子の再利用が可能である。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を比較例及び実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0093】
生成物の測定は、ガスクロマトグラフィー法(GC)により行った。条件は以下に述べる通りである。
使用分析機器:島津製作所社製GC−2010ガスクロマトグラフ
カラム: 転化率測定 Agilent社製DB−WAX(0.25mm x 30 m)、
光学純度 スペルコ社製beta−DEX−225(0.25mm x 30m)、
検出器:FID
なお本発明において使用した各シトロネラールの光学純度は以下の通りである。
d−シトロネラール:97.8%e.e.
l−シトロネラール:96.6%e.e.
ラセミ体シトロネラール:0.74%e.e.
【0094】
(実施例1)アルミニウム触媒の調製及びl-イソプレゴールの合成
窒素雰囲気、50ml反応フラスコに(R)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(以下 (R)−BINOLともいう)286mg(1.00mmol)を入れ、窒素置換した後、塩化メチレン9ml、トリエチルアルミニウム・ヘキサン溶液1ml(1.00mmol,1.0mol/L)を順次加え、室温にて1時間攪拌した。参考として、この時点で系内の溶媒を留去、減圧乾燥し、得られた固体をNMRにて分析し、そのNMRチャートを図4に、低磁場側を拡大したものを図5に示す。
さらに(R,R)−2,2−ジメチル−α,α,α’,α’−テトラフェニル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジメタノール(以下、(R,R)−タドール若しくは(R,R)−TADDOLともいう)233mg(0.50mmol)を加えて、室温にて3時間撹拌した後、系内の溶媒を留去、減圧乾燥した。得られた固体をNMRにて分析し、配位子の他にアルミニウム錯体のピークを確認した。そのNMRチャートを図1に、低磁場側を拡大したものを図2示す。
上記で得られた固体300mgを0〜5℃に冷却したd−シトロネラール3.08g(20mmol)と塩化メチレン9mlの混合溶液に添加し、0〜5℃で3時間撹拌した。反応終了後、水2mlとトルエン2mlを加えて、有機層をガスクロマトグラフィーで分析した結果、基質転化率96.9%、イソプレゴール選択率は99.0%で、l-イソプレゴールとその他の異性体の比率は96.9:3.1であった。
参考として、(R)−BINOLのNMRチャートを図3に、(R,R)−TADDOLのNMRチャートを図6に、図6のNMRチャートの低磁場側を拡大したNMRチャートを図7に示す。
【0095】
(実施例2)ラセミシトロネラールからl−イソプレゴールの合成
50mlシュレンク管に(R)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル143mg(0.5mmol)を入れ、窒素置換した後、塩化メチレン11.6ml、トリエチルアルミニウム・トルエン溶液0.5ml(0.5mmol,1.0mol/L)を順次加え、室温にて1時間撹拌し、さらに(R,R)−タドール187mg(0.4mmol)を加えて室温にて1時間攪拌して触媒溶液を得た。触媒溶液を0〜5℃に冷却した後、ラセミ体シトロネラール3.86g(25mmol)を滴下し、0〜5℃で5時間撹拌した。反応終了後、水2mlを加えて、有機層をガスクロマトグラフィーで分析した結果、基質転化率55.2%、イソプレゴール選択率は87.2%で、l−シトロネラールのエナンチオ選択率は42.8%e.e.、l−n−イソプレゴールのエナンチオ選択率は58.6%e.e.であった。
アルミニウムに対して1倍モルの(R)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、および0.8倍モルの(R,R)−タドールを配位子として使用した本発明のアルミニウム錯体は、ラセミシトロネラール中のd−シトロネラールを閉環し、l−n−イソプレゴールを生成するという選択性に優れていた。
【0096】
(実施例3〜8)アルミニウム触媒によるイソプレゴールの合成
種々のジオール化合物又はビアリールジオール化合物を用いてイソプレゴールの合成を行った。
50mlシュレンク管にLig1として実施例3〜7では一般式(2)のビアリールジオール化合物、実施例8では一般式(3−A)のジオール化合物を表1に記載量を入れ、窒素置換した後、溶媒3ml、トリエチルアルミニウム(0.32mmol)を順次加え、室温にて1時間撹拌した。さらに、Lig2として実施例3〜7では一般式(3−A)のジオール化合物、実施例8では一般式(2)のビアリールジオール化合物を表1に記載した量を加えて室温にて1時間撹拌し触媒溶液を得た。触媒溶液を0〜5℃に冷却した後、シトロネラール1.00g(6.48mmol)を滴下し、0〜5℃で1時間撹拌した。反応終了後、水2mlを加えて、有機層をガスクロマトグラフィーで分析した。
結果を表1に示す。
表中、conv.はシトロネラールの転化率を、sel.はイソプレゴールへの選択率を、n−sel.はn−イソプレゴールの選択率をそれぞれ表す。
【0097】
(R)−BINOL、(S)−BINOL、(R,R)−TADDOL、(S,S)−NAPH−TADDOL、NAPH−TADDOLはそれぞれ以下の化合物を表す。
【0098】
【化14】

【0099】
【化15】

hは時間を表す。
solvは、溶媒を表す。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1’)で示されるアルミニウム錯体。
[Al2(L1n(L23-nm (1’)
(式(1’)中、nは1又は2の整数を表し、mは自然数を表し、L1は下記式(2’)で表される配位子を表し、L2は下記式(3−A’)又は下記式(3−B’)で表される配位子を表す。ただし、n=2の場合、下記式(2’)で表される配位子は光学活性体であり、n=1の場合、下記式(3−A’)又は下記式(3−B’)で表される配位子は光学活性体である。)
【化1】

(式(2’)中、R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、飽和又は不飽和炭素鎖、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基、アシル基、置換シリル基、チオ基、メルカプト基、又はポリマー鎖を表す。また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR4'、R4'とR3'、R3'とR2'、R2'とR1'とは結合して環を形成してもよい。
式(3−A’)中、R5、R6、R7、及びR8はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、又は置換基を有していてもよい脂環基を表し、環Aはヘテロ元素を有していても良い3〜8員環を表す。また、R5とR6及びR7とR8とは結合して環を形成してもよい。
式(3−B’)中、R5、R6、R7、及びR8は前記と同じ意味を表し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい脂肪族鎖、置換基を有していてもよい脂環基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいシロキシ基、又はカルボキシル基を表す。また、R5とR6及びR7とR8とは結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表されるアルミニウム化合物
Al(Lg)3 (1)
(式(1)中、Lgは、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)、
下記一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物、及び下記一般式(3−A)又は下記一般式(3−B)で表されるジオール化合物とを反応させることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
【化2】

(式(2)中、R1、R2、R3、R4、R1'、R2'、R3'、及びR4'は請求項1の式(2’)の定義と同じ意味を表す。
式(3−A)中、R5、R6、R7、R8、及び環Aは請求項1の式(3−A’)の定義と同じ意味を表す。
式(3−B)中、R5、R6、R7、R8、Y1、及びY2は、請求項1の式(3−B’)の定義と同じ意味を表す。)
【請求項3】
一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物が光学活性体である請求項2に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
【請求項4】
一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物が光学活性体である請求項2に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
【請求項5】
一般式(2)で表されるビアリールジオール化合物が光学活性体であり、かつ、一般式(3−A)又は一般式(3−B)で表されるジオール化合物が光学活性体である請求項2に記載のアルミニウム錯体の製造方法。
【請求項6】
同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を、請求項1に記載のアルミニウム錯体の存在下に閉環反応させることを特徴とし、閉環して生成する化合物のd体又はl体のいずれかが豊富化されている光学活性化合物の製造方法。
【請求項7】
同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物が下記一般式(4)で示される化合物である請求項6に記載の製造方法。
【化3】

(式(4)中、n2は1又は2の整数を表し、R9、R10及びR12はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基又は保護基で保護されていてもよい水酸基を表し、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、波線はE又はZ配置を表す。)
【請求項8】
閉環して生成する化合物が下記一般式(5)で示される化合物である請求項6に記載の製造方法。
【化4】

(式(5)中、n2は1又は2の整数を表し、R9、R10及びR12はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R11は置換基を有していてもよいアルキル基又は保護基で保護されていてもよい水酸基を表し、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、波線はE又はZ配置を表す。)
【請求項9】
同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物が光学活性シトロネラールであり、閉環して生成する化合物が光学活性イソプレゴールである請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
光学活性イソプレゴールがl−イソプレゴールである請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
光学活性シトロネラールがl−シトロネラールである請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
同一分子内にカルボニル−エン閉環反応を行い得るホルミル基と二重結合とを有する化合物の光学異性体混合物を、請求項1に記載のアルミニウム錯体の存在下に閉環反応させることを特徴とする、光学異性体混合物のうち閉環しないd体又はl体のいずれかを豊富化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−512135(P2012−512135A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525768(P2011−525768)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2009/071509
【国際公開番号】WO2010/071227
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】