説明

アルミラミネートチューブ容器

【課題】 ヘッド部の肩部内面をバリアシート片で形成したアルミラミネートシート製チューブ容器において、バリアシート片におけるアルミ箔層が露出するのを防止することを目的とする。
【解決手段】 ヘッド部1にもアルミラミネートシート製のバリアシート片6を設けたアルミラミネートチューブ容器において、バリアシート片6の外周端面における内面樹脂層9の層厚を、ヘッド樹脂4と強固に溶着固定できる値に設定し、これにより接合部Sの剥離を防止して、バリアシート片6のアルミ箔層7の露出を確実に阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミラミネートシートを使用して、高いガスバリア性を発揮するチューブ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
優れたガスバリア性を発揮するシート材として、アルミ箔の両面を合成樹脂膜で被覆したアルミラミネートシートが知られており、アルミラミネートシートを巻回して胴部を構成したチューブ容器が広く用いられている。
【0003】
このチューブ容器は、容器の主体部分である胴部のガスバリア性はきわめて優れているのであるが、胴部に連設されるヘッド部が、合成樹脂材料で圧縮成形や射出成形により成形されることから、ガスバリア性が低く、このため容器全体としてのガスバリア性が低くなると云う不都合があった。
【0004】
この不都合を解消する従来技術として、例えば特開2002−225057号公報に示されているように、合成樹脂材料で成形されたヘッド部の肩部にアルミラミネートシートを取り付ける技術が提案されている。
【0005】
すなわち、合成樹脂材料でヘッド部を成形する際に、ヘッド部成形金型に、アルミラミネートシート製のシート片をインサート材として配置しておき、このシート片をヘッド部に成形される合成樹脂材料で成形型面に押付けながら、一体に溶着させるのである。
【特許文献1】特開2002−225057号公報
【0006】
この従来技術は、アルミラミネートシート製の胴部に連設されたヘッド部の肩部にも、アルミラミネートシートの層を設けることができるので、ヘッド部のガスバリア性を高めることができ、これによりガスバリア性の充分に高いチューブ容器を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、リング状に成形されたアルミラミネートシート片を、成形型面上に押付けた状態でヘッド部の成形を達成するので、ヘッド部を構成する合成樹脂材料であるヘッド樹脂と、アルミラミネートシート片であるバリアシート片の端面との間の接着強度が充分ではない、と云う問題があった。
【0008】
すなわち、図3に示すように、バリアシート片6aはヘッド樹脂4の肩部樹脂部5に溶着されて、肩部2の内表面を形成するのであるが、図4の拡大図に示されるように、バリアシート片6aの外周端面とヘッド樹脂4の肩部樹脂部5との接合部sでは、その溶着強度が不充分である、と云う問題があった。
【0009】
バリアシート片6aは、少なくとも外面樹脂層8aと、アルミ箔層7aと、内面樹脂層9aを順に積層して構成されているのであるが、このバリアシート片6aの外周端面とヘッド樹脂4との接合部sの溶着強度不足は、バリアシート片6aの外周端面における内面樹脂層9aとヘッド樹脂4との溶着強度が充分でないことが原因となっている。
【0010】
このように、接合部sにおける溶着強度が充分ではないことと、この接合部sが位置する部分は、チューブ容器の肩部の周端部分であるため、他の物品との突き当たりにより変形力を受け易いことにより、この接合部sが容易に剥離して、バリアシート片6aのアルミ箔層が容器内に露出し、ガスバリア性が低下する、と云う問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、ヘッド部の肩部内面をバリアシート片で形成したアルミラミネートシート製チューブ容器において、ヘッド部に設けたバリアシート片の周端部、特に外周端部のヘッド樹脂との充分な溶着強度を確保することを技術的課題とし、もってバリアシート片におけるアルミ箔層が露出するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主たる構成は、笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定したアルミラミネートチューブ容器において、ヘッド部を、肩部のない表面を形成するアルミラミネート製のリング状をしたバリアシート片と、このバリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂とで構成し、バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と内面樹脂層とを順に積層したものとし、そしてバリアシート片の内面樹脂層をヘッド樹脂と相溶性の高い樹脂製とした、ことにある。
【0013】
そして、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、接合したヘッド樹脂との間に、大きい溶着強度を得ることのできる値に設定した構造となっている。
【0014】
バリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂と、バリアシート片の内面樹脂層とは、相溶性の高い樹脂材料で成形されているので、両者間の溶着強度を高めるのは容易である。
【0015】
これに加えて、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、接合したヘッド樹脂との間に、大きい溶着強度を得ることのできる値に設定したので、バリアシート片の外周端面とヘッド樹脂との突き当たり部分である接合部において、バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂は、強力に溶着結合することになる。
【0016】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、バリアシート片の外周端縁を、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートに近接させた、ものである。
【0017】
バリアシート片の外周端縁を、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートに近接させたものにあっては、バリアシート片のアルミ箔層と、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートのアルミシート層との間に位置する肩部樹脂部の厚みが小さくなる。
【0018】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、50〜500ミクロンに設定した、ものである。
【0019】
バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、50〜500ミクロンに設定したものにあっては、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層とヘッド樹脂との接合面積が、従来と比べて充分に大きくなるので、その分、大きな溶着強度を得ることができる。
【0020】
また、本発明の別の構成は、上記した第一の主たる構成に加えて、バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂を、ポリエチレン樹脂製とした、ものである。
【0021】
バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂を、ポリエチレン樹脂製としたものにあっては、内面樹脂層とヘッド樹脂を同一樹脂材料としたので、強い溶着強度を得ることができると共に、高い耐内容物性と良好な成形性を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、ヘッド樹脂とバリアシート片の内面樹脂層との溶着強度を高めるのが容易であるので、バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂の溶着結合を確実に得ることができる。
【0023】
また、バリアシート片の外周端面とヘッド樹脂との突き当たり部分である接合部において、バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂は、強力に溶着結合することになるので、接合部の剥離によりバリアシート片のアルミ箔層が露出する不都合の発生を、確実に阻止することができる。
【0024】
バリアシート片の外周端縁を、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートに近接させたものにあっては、バリアシート片のアルミ箔層と、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートのアルミシート層との間に位置する肩部樹脂部の厚みが小さくなるので、この肩部樹脂部からのガスの透過を極力抑えることができ、よりガスバリア性が高められる。
【0025】
バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、50〜500ミクロンに設定したものにあっては、バリアシート片の外周端面における内面樹脂層とヘッド樹脂との接合面積が、従来と比べて充分に大きくなるので、その分、大きな溶着強度を得ることができ、接合部における溶着強度を確実に強大化させることができる。
【0026】
バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂を、ポリエチレン樹脂製としたものにあっては、強い溶着強度を得ることができると共に、高い耐内容物性と良好な成形性を得ることができるので、溶着強度の大きい接合部を簡単にかつ確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、図1と図2を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明によるチューブ容器のヘッド部1付近の構成を示す、半縦断面図で、アルミラミネートシート11を巻回して円筒状に成形された胴部10の上端に、笠状の肩部2の上端開口部に、外周面に螺条を刻設した短円筒状の口筒部3を立設したヘッド部1を、肩部2の外周端で溶着固定して構成されている。
【0029】
ヘッド部1は、肩部2の肩部樹脂部5と口筒部3を形成するヘッド樹脂4と、肩部樹脂部5の内面側に位置するバリアシート片6とから構成され、バリアシート片6および胴部10の上端部をインサート材として、ヘッド樹脂4を、周知の圧縮成形や射出成形して成形され、この成形と同時に、肩部2の外周端部が胴部10の上端部に溶着されると共に、バリアシート片6が肩部樹脂部5に溶着される。
【0030】
バリアシート片6(以下、図2参照)は、アルミ箔層7の外面と内面に、外面樹脂層8と内面樹脂層9をそれぞれ積層して構成されており、外面樹脂層8および内面樹脂層9の成形樹脂材料は、ヘッド樹脂4と相溶性のある樹脂が選択され、特にヘッド樹脂4および内面樹脂層9には、耐内容物性と高い成形性が要求されることから、ポリエチレン樹脂(PE)が使用されている。
【0031】
このバリアシート片6は、アルミラミネートシートから打ち抜き成形されるが、この打ち抜き成形に際して、打ち抜きと同時に笠状への成形も達成するが、笠状への成形が平坦状に戻り変形しないように、アルミ箔層7の厚みを、20〜60ミクロンと大きく設定して、塑性加工が可能であるようにする。
【0032】
バリアシート片6の内面樹脂層9は、その外周端面における層厚が、50〜500ミクロンと大きな値に設定されており、このように内面樹脂層9の外周端面の層厚を大きくすることにより、バリアシート片6の外周端面における内面樹脂層9とヘッド樹脂4の溶着面積が大きくなるようにしている。
【0033】
内面樹脂層9の層厚の下限を50ミクロンとしたのは、層厚が50ミクロン以下であると、内面樹脂層9の外周端面とヘッド樹脂4との間の溶着強度が、必ずしも充分に強いものとなるとは限らないからであり、また内面樹脂層9の層厚の上限を500ミクロンとしたのは、500ミクロンの層厚で必要とする溶着強度を充分に得ることができ、それ以上の溶着強度の増強は不要となるからである。
【0034】
このように、バリアシート片6の外周端面における内面樹脂層9の層厚を充分に大きくしたので、接合部sにおける内面樹脂層9とヘッド樹脂4との間の溶着強度を充分に大きくすることができ、これにより接合部sの剥離によるアルミ箔層7の露出を確実に阻止することになる。
【0035】
また、バリアシート片6の内面樹脂層9の層厚を大きくすることにより、その分、バリアシート片6のアルミ箔層7が、肩部2に位置しているアルミラミネートシート11のアルミシート層12に近接して、このアルミラミネートシート11のアルミシート層12との間隔を狭め、肩部2におけるガスバリア性を高めている。
【0036】
胴部10を構成するアルミラミネートシート11(以下、図2参照)は、外側から、外樹脂層13、接着樹脂層15、アルミシート層12そして内樹脂層14を順に積層して構成され、外樹脂層13は、胴部10の必要とする機械的強度を確保できる厚みを有しており、接着樹脂層15は、アルミシート層12と外樹脂層13を強固に接合しており、そして外樹脂層13と内樹脂層14は、強度、耐内容物性、柔軟性そして成形性等の点から、一般にはPEが適していると考えられる。
【0037】
なお、バリアシート片6の内周端面は、ヘッド部1の成形時におけるヘッド樹脂4の流動動作から、比較的安定してヘッド樹脂4と溶着し、また殆ど変形することのない口筒部3に位置していることから、溶着を剥がす外力の作用する恐れがないので、そのヘッド樹脂4との溶着は安定して維持される。
【0038】
また、バリアシート片6の内周端面における内面樹脂層9の層厚も、バリアシート片6の外周端面における内面樹脂層9の層厚と同様に、大きくすることは可能であり、この場合には、当然のこととして、バリアシート片6の内周端面におけるヘッド樹脂4との強固な溶着を得ることができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明の覆い樹脂片の構造技術は、バリアシート片の外周端面とヘッド樹脂との強固で確実な溶着固定を得ることができるものであり、アルミラミネートシートと合成樹脂製構成部分との溶着接合に関する技術として、幅広い利用展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、ヘッド部付近の半縦断面図である。
【図2】図1中、丸印Aで示した部分の拡大断面図である。
【図3】従来例を示す、ヘッド部付近の半縦断面図である。
【図4】図31中、丸印Bで示した部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ;ヘッド部
2 ;肩部
3 ;口筒部
4 ;ヘッド樹脂
5 ;肩部樹脂部
6 ;バリアシート片
7 ;アルミ箔層
8 ;外面樹脂層
9 ;内面樹脂層
10;胴部
11;アルミラミネートシート
12;アルミシート層
13;外樹脂層
14;内樹脂層
15;接着樹脂層
s ;接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定したアルミラミネートチューブ容器において、前記ヘッド部を、前記肩部の内表面を形成するアルミラミネートシート製のリング状をしたバリアシート片と、該バリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂とで構成し、前記バリアシート片を、外面樹脂層とアルミ箔層と内面樹脂層とを順に積層したものとし、前記内面樹脂層をヘッド樹脂と相溶性の高い樹脂製とし、前記バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、接合した前記ヘッド樹脂との間に、大きい溶着強度を得ることのできる値に設定したアルミラミネートチューブ容器。
【請求項2】
バリアシート片の外周端縁を、肩部に位置した胴部形成用アルミラミネートシートに近接させた請求項1に記載のアルミラミネートチューブ容器。
【請求項3】
バリアシート片の外周端面における内面樹脂層の層厚を、50〜500ミクロンに設定した請求項1または2に記載のアルミラミネートチューブ容器。
【請求項4】
バリアシート片の内面樹脂層とヘッド樹脂を、ポリエチレン樹脂製とした請求項1〜3にいずれか1項に記載のアルミラミネートチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−83550(P2010−83550A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255055(P2008−255055)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】